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かっこいい若者たち

スリーファンキーズが主役を演じた音楽映画。

テレビの人気時代劇だった「水戸黄門」で長らく「うっかり八兵衛」を演じていた高橋元太郎が所属していたアイドルグループであるが、途中でメンバーが入れ替わっているため、この初期メンバーが出ている映画は珍しい。

最後まで唯一メンバーとして残っていた長沢純が、この作品でも苦悩する主役のような形になっている。

高橋元太郎は、童顔で可愛らしいタイプと言えば良いだろうか?

この作品では、姿美千子扮するヒロインと恋人役と言う美味しい役を演じている。

動物園の飼育係と言う役柄も地味だが、全体的におとなしい印象で一番影が薄いのは、健太を演じている高倉一志か?

ストーリー自体は、良くあるたあい無いサクセスストーリーで、この手のものを作り慣れていない感じの大映作品だけに、全体的に泥臭く、タイトルにあるような「かっこいい若者」などどこにも出て来ない印象で、ポップな感じもなく、今観るとあまり面白い作品ではないが、当時の人気者が何人か登場しているので、昭和の芸能史を語る上では貴重な作品と言えるかも知れない。

劇中で「チャコ」と呼ばれている飯田久彦とか、寺本圭一(実はこの人は個人的には見覚えがなく、ネットで調べて出て来た名前なので、自信はないのだが…)、さらに、渡辺プロダクション(通称:ナベプロ)の創業者である渡辺晋氏などの姿はかなり珍しいような気がする。

余談ではあるが、この映画のキネ旬データには中尾ミエが出演しているような記述があるが、キャストロールにも本編にも、中尾ミエは出ていない。

スリーファンキーズの面々は、イケメンと言うより、どこかやんちゃそうで可愛いタイプなのだが、飯田久彦などは、今スクリーンでドアップで観ると、今ならまず売れないのではないかと思えるような独特の容貌である。

ただ、この当時の若手歌手の歌は、今聞くとどうも素人同然にしか聞こえないし、歌っている歌も、ロカビリーとかジャズと言う感じではなく、普通の平板な青春歌謡のような感じだ。

飯田久彦が歌っている「コーヒーデイト」など、「コーヒー♬」の部分が「コーピー♬」にしか聞こえないので、この映画で初めて聞いたこともあり、観ている間中、その意味が分からなかった。

さらに、通常、ゲスト歌手が登場する映画では、一応、歌の一番くらいは全部歌わせるのが普通のような気がするが、この映画で後半出ている伊東ゆかりや寺本圭一などは、曲のほんの一部しか使われてない。

音楽映画と言うと、ドラマ自体は退屈でも、歌のシーンになるとそれなりに浮き浮きと楽しめるものなのだが、この作品では、なぜか歌のシーンになってもあまり浮き浮きした気分になれない。

スリーファンキーズはまだデビュー直後と言う事で、持ち歌が少なかったためかもしれないが、「聖者の行進」とか「紅葉」「雪山讃」等と言った歌で、客に乗れと言う方が無理かもしれない。

また、予算を使ってないので、東宝の音楽映画のように、歌のシーンにはレビュー風の豪華なセットが出て来たり、ロケシーンを多用しと言うような工夫もないし、映画的な見せ場がほとんどないのが残念。

「おみず」こと水原弘が、過去のあるミュージシャン崩れで、スリーファンキーズを育てると言う役所を演じているが、この人は歌手だけではなく、俳優としても映画に結構出演していると言う事が最近分かって来た。

玉川良一がユーモラスな黄金焼き屋の主人を演じ、若者映画にしては面白い部分がほとんどないこの作品を若干助けている。

独特の風貌とアクションでテレビでも知られていたスマイリー小原も、とぼけた役で登場しており愉快。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、大映、池田一朗+山崎忠昭脚本、弓削太郎監督作品。

上野公園の階段を駆け下りる地元のチンピラグループ

タイトル

西郷像 アメヤ横丁

質屋にガラクタを持ち込み無理矢理売りつける愚連隊グループ

キャバレーの中に入り込み、ドラムを叩きまくって、マネージャーから小遣いをせびる愚連隊グループ

飲み屋で因縁をつけ、酒をただにしようとする愚連隊グループ

そんな上野でも、まじめに働く青年もいた。

上野公園で、動物の飼育係をしている小松健太(高倉一志)や、黄金焼きの見習いをしている石川元 (高橋元太郎)は、歌が大好きで、いつも歌っている明るい青年だった。

「しのばず興行」と言う地元のヤクザ一家に入っていた内山淳(長沢純)はある日会長から呼ばれ、今、上野界隈を荒らしている愚連隊たちをこの際スカウトして「少年予備隊」と言うものを作ろうと思う。そいつ等に色々教え込んで、その内、組に入れるつもりだが、そのリーダーとして、同じ年頃で気持ちが通じやすい淳一がリーダーになれと言う指示だった。

さっそく、愚連隊グループに会いに行った淳は、自分は内山淳と言い、ネリカン(東京少年鑑別所)歴3回だなどと自慢し、リーダーシップを取ろうとするが、チンピラたちの方はビビるどころか、逆に、五郎(今井荘一郎)と言う若者はネリカン5回も言っていると言い返し、慎次(三夏伸)は4回、明(池崎新一郎)に至ってはネリカンどころか少年刑務所にまで行ったことがあると言うではないか。

さらに、グループの中の紅一点、イサム(小桜純子)と言う女の子もネリカンに3回行った経験の持ち主だと言うので、キャリアでは敵わないと感じた淳は、適当にごまかして、おれに付いて来い!と無理矢理グループを引き連れて行く事にする。

黄金焼きを焼いていた元は、火の加減を間違えて、商品を焦がしてしまい、親方である丸岡耕作(玉川良一)から、いつもうた何か歌いながらやってるからダメなんだ!仕事はもっとオーソドックスなものなんだよと叱られ、娘のミチ子(姿美千子)から、又指導を受ける事になる。

ミチ子は元に好意を持っていたので、なかなか上達しないことに呆れながらも、励ましてやる。

そして、今夜、動物園で若者グループの臨時集会があり、そこで、近頃はびこって来た愚連隊たちの対策を練る事になったからあなたも参加しなさいと命じる。

その夜の会合では、地元の7、8名の男女が集まったが、1人の若者(丸井太郎)が、最近愚連隊がはびこり、今までもひどい目に会って来たので、この際浄化運動をしなければいけないと思うと経緯を説明する。

下手に抗議して暴力を振るわれたらどうする?と言う弱気発言に対しては、金を出して、施設保安官のようなものを探したらどうだろう等と若者は発言するが、そんな夢のような話ではダメよと、女性軍から指摘がある。

話を聞いていた元は、話せば分かるんじゃないか?などと発言する。

「山の上会館」と言う簡易旅館では、いつも焼酎を飲んでいるのでチュウイチと呼ばれる男(水原弘)に、鉄くず拾いが商売の敬七爺さん(星ひかる)が、あんた、昔トランペットフキだったんだってな?どうして今は流しなんてやってるんだ?と話しかけるが、チュウイチは、お互い昔の話なんて止めようぜと不機嫌そうだった。

それでも敬七爺さんは、お節介だとは思うが、誰か待っている人でもいるんじゃないか?そんな気がするんだと呟く。

翌日、喫茶店で落ち合った元と健太が、カレーを食いながら、どうやって愚連隊のグループに話をつけるかを話し合っていた。

元は、グループのリーダーに直接会ってみれば良いんじゃないかと言う。

そんな2人の甘い会話を隣の席で聞いていて急に笑い出したのは、芸者屋の娘矢野みどり(高野通子)だった。

そこに入って来たのが、件の淳をリーダーとした愚連隊グループで、お冷やを飲むなり、色々因縁をつけて、コップを床に投げつけ割ってしまう。

元と健太は、その時、リーダーと覚しき淳の顔を覚えておき、その後、パチンコ屋に1人入った淳を誘い出すと、愚連隊から足を洗ってくれないか?と下手に頼む。

いきなりそんなことを言われても淳が聞くはずもなく、今度お説教に来たらパンチを食らわすぜ。おれは例え、力道山が来たって、言う事なんか聞くもんかと睨み返す。

しかし、元と健太も簡単には諦めず、不忍池に来た淳に、淳ちゃん、足を洗ってくれよと友達口調で頼む。

淳は、このいけに浮いて、土左衛門になりてえのか!と切れる。

しかし、その後、店で丼ものをかき込んでいた淳は、そんな所まで付いて来た2人に、この無責任時代に、人のために働くなんて珍しい奴等だなとちょっと感心しながらも、その後、商店街の中で2人をまいてしまう。

動物園に集まった、ミチ子、みどり、敬七爺さんらは、元と健太から話を聞き、巧くいかなかったと気落ちする彼らを慰めていた。

敬七爺さんが、動物なら得意なんだが…と呟いた言葉を聞いた健太は、動物も歌が好きだから、リーダーに歌を聞かせてみたらどうだろう?と言い出す。

しかし、現実派のミチ子は、そんな夢みたいな事が出来るわけないじゃないと呆れる。

翌日、ポップコーンを食いながら地元の路地裏を歩いていた淳を見つけた健太と元は、いきなり拳銃を突き出して淳を捕まえたので、お前等どこのヤクザだ!と驚いた淳は、持っていたポップコーンを道にこぼしてしまう。

その後、ジャズ喫茶に向かった3人は、人気歌手の飯田久彦の舞台を観る事にするが、チャコこと飯田久彦が「コーヒーデイト」を歌い始めると、淳はすぐに歌の魅力に取り憑かれ、チャコ、イカしているぜ!などと声援までする。

その後、元と会ったミチ子は、リーダーと巧くいったんだぜと自慢する元に、お父さんがかんかんに怒っていると教える。

仕事をさぼってばかりいる元に怒っていた耕作だったが、妻のとめ子(橘喜久子)は、今は人手不足なんだから、一時の短気で元を止めさせちゃダメよと釘を刺していた。

家に戻って来た元は、チンピラのリーダーの足を洗わせようとして歌手にさせようと思い、ジャズ喫茶に連れて行って歌を聴かせたのだと説明するが、聞いていた耕作は頭に来て、首だ!出て行け!と怒鳴りつける。

仕事場に戻って来た元は、ジャズ喫茶はいけないんだってさと訳が分からないようだったが、母屋の方から聞こえて来た耕作の歌う浪花節を聴いたミチ子は、安心なさい。お父さん、期限直ったわよと教える。

それでも元は、自分の気持ちが収まらなかったので、その場でプレスリーの「ハウンド・ドッグ」を歌い始めるが、その声が母屋にも聞こえ、歌っていた浪花節の邪魔になるので、うるさがりながらも、その内、負けないように唸っていた浪花節が、いつの間にかロカビリー風に影響されてしまう。

仕事場に文句を言いに来た耕作に、思わず持っていた玩具の拳銃を出して脅した元は、玩具じゃないのとなだめるミチ子の言葉も空しく、怯えた耕作から今度こそ本当に首になってしまう。

耕作の家を出る事になった現に付いて来たミチ子は、これからどうするの?と心配し、取りあえず自分が持っていた金を渡すと、これで旅館にでも泊まりなさいと勧めるが、そんな玩具を持っているからダメなんで、買った所に強引に引き取らせなさいと言う。

モデルガンの店に来たミチ子は、この人は失業して、今13円しか持ってないので、何とかこの銃を買い戻して欲しいと頼むが、元が首になったと聞いた店主は同情し、うちも人手不足で困っていたので、今日からこの店で働いてくれ。銃は普段は絶対引き取らないのだが、今回は特別に引き取ってやると言ってくれる。

思いもかけず職が見つかった元とミチ子は喜ぶが、そこにやって来た淳は、今まで巧くいっていた事は忘れたように、元に因縁をつけて来る。

その時、店頭に並べてあったリボルバー式のモデルガンを手に取っていた妖し気な客が、見事なガンさばきを披露し、淳の方を睨みつけたので、恐れをなした淳はその場から逃げ出す。

その後、VTV主催の素人参加番組「青春ジャズコンテスト大会」が開かれ、淳も、元と健太も出場する事になる。

最初に「コーヒーデイト」を歌った淳は鐘が1つしか鳴らず、和田昭二、松本英彦と共に審査員をしていた渡辺晋氏から寸評を受ける。

次いで登場した、元と健太は「聖者の行進」を歌うが鐘2つ、アンサンブルに欠けていたが、もう少し練習すれば合格していたでしょうと松本英彦氏から指摘される。

そんな舞台の司会を勤めていた中島百合子(叶順子)は、客席で観ていたチュウイチの姿に気づくと、一瞬、黙り込んでしまう。

チュウイチの方も、百合子の視線に気づいたのか、途中で席を立ち会場から出て行ってしまう。

モデルガンショップに来たミチ子は、大会から帰って来た元を励ますが、そこに近づいていた淳は、かっこ悪くて会社に帰れない。今日は休戦と言う事にして、今夜だけ仲間に入れてくれないか?と話しかけて来る。

そこに、又あの妖し気なガン使いが近づいて来て、TVで観たけど、2人とも悲観しない方が良い。これから一緒に練習すれば巧くなるよと言い残して帰って行く。

その夜、動物園に集合していたみどり、健太、チュウイチ、敬七爺さんの元に、しのばず興行の淳を連れて元とミチ子がやって来る。

淳は、お近づきの印として買って来たアイスクリームを全員に配る。

元や健太に歌を教えていたチュウイチは、お前たち、今日は鐘1つと2つだったが、3人でトリオを組めば鐘3つだぜと勧める。

淳は、そんな事をしたら、会社に帰れなくなると拒否するが、今夜だけだよと全員で納得させ、チュウイチは3人に、「聖者の行進」をその場で歌わせてみる。

ちょっと聞いてみたチュウイチは、こうリズムに乗せてみなと指を鳴らしながらコツを伝授してもう1度歌わせる。

そして、歌の難しさが分かったか?歌は趣味だけでやっているのが良いんだと教える。

元は、先輩頼りにしてるよとチュウイチに声をかけるが、その時、昼間の番組で司会をしていた中島百合子が来た事にチュウイチは気づく。

2人の関係を察した敬七爺さんが、他の若者たちをその場から遠ざける。

弘さん…と呼びかけた百合子は、今日のコンテストの出場者名簿からこの場所を探し当てたのと打ち明ける。

あんたの知っている人は3年前に死んでいるんだ。今いるのは、焼酎が好きなチュウイチって言うル○ペンさとチュウイチは答える。

それでも百合子は、私がテレビのアナウンサーになったのは、テレビを通じてどこかで観ているはずのあなたに呼びかけていたのよ。あなたはペット吹きのジョージ落合じゃない。前はあんなひどい麻薬中毒だったのに…と問いかける。

チュウイチは、あの薬のためにその後全くペットが吹けなくなったんだ。唇がダメになったんだ。ペットが吹けないんだったら死んだ方がマシだと言うので、意気地なしね…と百合子が嘆くと、ここにいるのは君とは縁もゆかりもない男だ。こんな所にあんたのような人が入ると浮浪者に何されるか分からないぜ…と忠告したチュウイチは、酎を一杯おごって下さいよ。100円で良いんだ…と言いながらいきなり百合子の手からバッグを奪い取ると、中味を漁りだす。

そんなチュウイチの姿を哀れむように百合子が見つめると、何を観てるんだ!と怒鳴ったチュウイチは、バッグをその場に捨てて、笑いながら去って行く。

そんな2人の会話を、敬七爺さんと若者たちは、近くの木の陰から、そっと見守っていた。

その日、「山の上会館」に戻って来たチュウイチは、珍しく泥酔して暴れ、それを関取と呼ばれる常連客の1人があぐらおとしの技で投げ飛ばし、今はベッドに横になっていた。

その様子を観ていた数名の常連客たちは、チュウが酒に飲まれたのを観るのは初めてだなどと噂しあっていた。

そこに戻って来た敬七爺さんは、チュウイチは、若者の歌の先生だったんだと仲間たちに教えると、ベッドのチュウイチに、起きて練習を始めるんだと声をかける。

気を取り直して、動物園に戻って来たチュウイチは、待っていた淳等3人に、基礎からみちりやるぜと宣言すると、自らギターを弾いて、発声練習から始める。

その単調な練習が1週間も続いたので、そろそろ歌わせてくれよと淳はすねるが、そんな調子じゃ、後10年はダメだとチュウイチは言い切る。

練習は、雨の紐傘をさして続けられ、淳たちは「秋の夕日に照る山紅葉〜♬」などと「紅葉」の歌でハーモニーの練習をやっていた。

そんな3人組の練習を、ミチ子もいつも一緒に見守っていた。

大分、良くなって来たなとチュウイチは褒める。

すると、用意していた焼酎を飲んでくんなと言って淳が渡そうとするが、今、腹を壊しているんだと言って、チュウイチは受け取らなかった。

そんなある日、動物園にやって来た淳は、俺、お前たちと友達になっちゃいけないんだと言うと、そのまま帰ってしまう。

「しのばず興行」に戻った淳は、兄貴分の高岡テツ(高村栄一)から「おめえは悪い事をしなさすぎるんだ」と言われ、殴られる。

一方、元は、黄金焼きを土産に持って来たミチ子から、お父さんがすっかり機嫌直したと言う話を公園で聞いていた。

久しぶりに味わう黄金焼きも懐かしかったが、元は、やっぱり歌でやりたいと言う思いが強かった。

そこに淳が「しのばず興行」の連中と一緒にやって来て、高岡から殴れと命じられると、いきなり淳は元を殴りつける。

大勢に取り囲まれたミチ子は、卑怯よ!と言って、ヤクザたちを睨みつけるが、そこに、あのモデルガンで出会った妖し気な男がやって来て、どうした?喧嘩はいけないなと声をかけて来る。

その姿を観た淳は高岡に、あいつ、ガンさばきがすげえ巧いので、香港かどこかの殺し屋だぜと教える。

その時、その妖し気な男が高岡に、おい!と呼び掛け、緊張した高岡に、ガムが付いてるよと言うので、慌てて靴を確かめた高岡だったが、あの…、ガムは付いてませんでしたと下手に出る。

そうかい…と答えた男は、そのななミチ子と元を連れてその場を去って行く。

その後、元と健太は、2人で「雪よ岩よ〜♬」と練習をしていたが、やはり2人だけでは巧くいかないので落ち込んでいた。

元は、淳もバカな奴だ。ヤクザのメンツかなんか知らないが、おれを殴りやがって…と悔しがる。

それを聞いていたチュウイチは、今に帰って来るよと慰める。

すると、その言葉に呼応するかのように、淳が側に黙って立っているのが見えた。

元たちの側に近づいて来た淳は、この間はご免なと謝ると、俺、ヤクザから足洗うよと誓い、畜生…、涙が出てきやがったと泣き笑いする。

そして、また3人で歌の練習を始めると、そこに、この前助けてくれた妖し気な男が、もう1人の男を連れて来て、どうだヤマさん、ご機嫌だろう?と問いかける。

ヤマさんと呼ばれた男は、チュウイチと3人の若者に近づくと、買った!4人とも、山中プロと契約してくれないかと声をかけて来る。

その男こそ、芸能事務所「山中プロダクション」の社長で、ここに彼を連れて来た妖し気な男は、バンド「スカイライナーズ」のリーダー、スマイリー小原だと言うではないか。

淳はその時、ようやく、TVで良く観ていたスマイリー小原の顔を思い出すのだった。

淳や元たちは、その申し入れに大喜びするが、チュウイチは気乗りしない様子で、ヤマさん、おれは断るよ。3人の事、頼むよと言い残し、1人立ち去って行く。

「山中プロダクション」に所属する事になった3人は、さっそく事務所で歌を披露してみるが、その場で聞いていた渡辺晋氏らも気に入り、もっとテンポの速い歌を歌わせた方が良いと山中にアドバイスする。

山中は、3人に「スリーファンキーズ」と言うグループ名を与え、これからは3人一緒に暮らした方が良いので、ここに住み込むと良いと伝える。

その頃、「山の上会館」にいるチュウイチを訪ねて、百合子が訪ねて来るが、その場にいた敬七爺さんは、あいつは昼間黙って出て行った。行き先は何も言わなかった。酎好きだったあいつが、このところきっぱり酎を止めていたくらいだから、きっとどこかで立ち直っているよと伝える。

その後も百合子は、最寄りの飲み屋等で、チュウイチことジョージ落合を探し続けるが、杳として行方は掴めなかった。

その頃、そのチュウイチことジョージ落合は、場末のキャバレーでペットを吹いていた。

一方、スリーファンキーズとなった3人の若者たちはたちまち売れっ子となり、地方巡業の旅でもファンからもみくちゃにされる人気振りとなっていた。

自宅のテレビで、スリーファンキーズの歌を嬉しそうに聴いていたミチ子は、父親の耕作が、さりげなく廊下を通りかかった振りをしてテレビをちら観しているので、一緒に観れば良いじゃないと勧める。

不承不承と行った顔つきで娘の横に座り、「何だ、下らねえ歌、歌いやがって」などとぼやきつつも一緒にテレビを見始めた耕作だが、ついいつもの癖で、曲に合わせて自分も浪花節を唸り始めると、ミチ子から、うるさいわね!と叱られるのだった。

ジョージ落合も、バンド仲間と一緒に夕飯を食いながら、テレビで歌っているスリーファンキーズを観て喜んでいた。

その時、仲間がビールを勧めて来るが、ジョージはきっぱり断る。

「しのばず興行」の事務所でも、少年予備隊の面々が淳の活躍を喜んでテレビを観ていたが、そこに帰って来た高岡は、現代社会はこんな連中に甘い汁を吸わせるようなねえってことを思い知らせてやると言いながら、忌々しそうにテレビのスイッチを切ってしまう。

ある日、山中社長はスリーファンキーズの面々に、今度、故郷に錦を飾ってもらうために、上野の水上音楽堂でショーをやってもらう事になったと告げていた。

それを聞いた3人は大喜びする。

その時、事務所にやって来たのは、「しのばず興行」の高岡で、スリーファンキーズに出てもらいたいんだが、来月の月、木、土のスケジュールは空いてますか?おれは淳の古い友達なんでねなどと言って来る。

淳たち3人を外に連れ出した高岡たちは、ちょっとばかり儲けさせてやろうと思う。今度、しのばず興行でも芸能プロモートをやる事になったので、俺たちに身柄を預けた方が良いと言う。

しかし彼らの素性を良く知る淳は、お前たちの仲間になったら、スリーファンキーズの信用はがた落ちだ!と言って帰ろうとするが、子分たちが取り囲みつかみ掛かろうとする。

その時、高岡が、止めろ!商品に傷を付けるんじゃないと子分衆を制したので、淳たち3人は何とかその場を逃げ出す。

花火が打ち上がり、いよいよ「江戸の納涼大会」と名付けられたショーの本番日になる。

客席でスリーファンキーズの出番を待ちわびていたみどりは、健ちゃんは、しっかり者の恋人がいる元ちゃんが羨ましいんですってなどと隣に座っていたミチ子に言う。

しかし、健太とみどりも仲良しなのを知っているミチ子は、恋人とか、しっかり者なんて古いわと言い返す。

その現場中継に来ていた中島百合子は、何故か、心ここに非ずと言った様子で、カメラマンからあれこれ話しかけられても上の空だった。

会場の控え室にやって来た山中社長は、スリーファンキーズの淳だけがその場にいない事に気づく。

元と健太は、さっきまで一緒だったんですと困惑していた。

その時、本日のゲスト伊東ゆかりが山中社長に挨拶をする。

その頃、淳は、高岡らヤクザたちに外に連れ出され、近くの「上野南小学校」の校舎内の人気のない部屋に連れ込まれる。

その様子を見つけたのは、「少年予備隊」の紅一点イサムだった。

高岡は、黙って身柄を俺たちに任せなと言いながら契約書を淳に突きつけるが、淳はその場でその契約書を破り捨ててしまう。

子分衆は反抗的な淳にナイフを出して脅かす。

出番は何時だと高岡が聞くと、淳が8時だと答えたので、今日はテレビ中継もあるんだったな?2人だけのスリーファンキーズと言うのも面白いぜ。信用が落ちりゃ、二度とリバイバルは難しいだろうななどと嫌味を言い、孝雄かは何枚も用意しているらしき契約書をまたさし出す。

控え室では、テレビ放映は8時半からなので、淳が戻って来ないと大変な事になると山中社長が焦っていた。

伊東ゆかりは、事故で車に轢かれたのかもなどと言い出すが、警察と連絡を取っていると言う社長は、今の所そのような連絡はないと否定する。

その話を聞いていたもう1人のゲストの寺本圭一は、もし淳が遅れても、僕とゆかりが2曲ずつ歌いますよと山中社長に声をかける。

小学校から仲間の元へ戻っていたイサムは、途中で顔見知りのチュウイチこと、ジョージ落合に会ったので、高岡に淳がさらわれたと教え、関取を連れて小学校に助けに言ってくれと頼む。

ジョージはすぐに「山の上会館」へと走る。

その後、イサムは、納涼大会の会場で客として淳の出番を待っていた「少年予備隊」にも淳の危機を知らせる。

高岡は、そろそろ8時だなと淳に迫っていたが、淳が子分たちを振り切って部屋から逃げようとして取り押さえられたのをみると、いい加減、サインしたらどうだ?と淳に迫り、嫌だ!と拒否する淳の頬を殴りつけるのだった。

納涼大会が始まり、ステージ上では寺本圭一が歌い始めていた。

元と健太は、気が気ではなく、自分たちが探しに行きましょうか?と山中社長に言っていたが、この期に及んで、2人も行方不明になられては大変だと言う社長に止められる。

小学校に向かっていた少年予備隊の面々は、俺たちがテツの兄貴に楯突くのは筋違いだが、淳の方が好きだからななどと話し合っていた。

そんな予備隊の面々に、「山の上会館」から関取を連れて来たジョージが合流する。

その頃淳は、負けたよ、サインするよと降参した振りをして、相手が油断した隙を狙い、暴れ始める。

男が怒ったらどんなに強いか見せてやる。お前たちなんか、兄貴と思わなければ、ただの虫けらだ!と声をあげた淳は、高岡と殴り合いを始める。

その頃、納涼大会のステージでは、伊東ゆかりが「送ってきてね おうちの側まで♬」と歌っていた。

淳は痛めつけられ、もう商売は止めた!と言い出した高岡は、淳の指を詰めるように子分たちに命じる。

嫌がる淳の小指にナイフを押し付け、その上からバットで叩こうとしていたその時、扉が開いて、予備隊とジョージ、そして関取が顔を見せる。

ル○ペンごときに勝手な事をやらせてたまるか!と睨みつけた高岡だったが、予備隊の綿々と関取が部屋の中に乱入し、大乱闘が始まる。

ジョージは淳に、ここは関取に任せて、早く行くんだ!と言ってその場を逃がす。

ようやく納涼大会の会場にスリーファンキーズの3人が揃い、ステージに登場した山中社長は、遅れた詫びを客たちに言うと、今日は嬉しいプレゼントがあります。有名なトランペット吹きで日本のアームストロングと呼ばれた男が3人の育ての親だったんです。

今日は、その男が伴奏をしてくれます。

その名はジョージ落合!と4人を呼び入れる。

テレビ中継をしていた百合子は、ステージに現れ、昔のようにトランペットを吹くジョージの姿を観て唖然とする。

スリーファンキーズは、ファンたちから投げ込まれたテープの中で歌い始める。

その様子を伝える百合子は、地元が生んだスリーファンキーズですが、あまりのファンの声援でその声が聞こえません。姿もテープに隠れて見えません。

地元上野は、嵐となって彼らを向かえています!とマイクに伝える。

ファンの中には、「少年予備隊」の面々も、上野の若者仲間も、そして耕作、とめ子、ミチ子の親子の姿もあった。

みんな笑顔で、出世したスリーファンキーズを応援していた。

ステージ上では、スリーファンキーズの3人も嬉しそうにファンを見守るのだった。