TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

はやぶさ 遥かなる帰還

同時期に3社が同じ素材で映画化した「はやぶさ」ものの1本

正直な所、小惑星探査機の実話を元にした映画なんて面白いんだろうか?…と言う危惧があったが、実際に観て観ると、それなりに人間ドラマも描かれており、素直に楽しめる作品になっていた。

平行して描かれている、山崎努演じる町工場の経営者と、その娘で新聞社の記者の親子関係が徐々に修復して行く過程のドラマも、それほど嫌味はない。

…が、「はやぶさ」の行動を監視する宇宙研のスタッフたちは、基本、パソコン画面を眺めているか、話し合っているだけだし、その他の場面も全体的に地味な絵柄が多いのは、こうした内容である事からやむを得ない所か?

一応、低予算なりにそつなくまとめた感じはするものの、渡辺謙さんファンとかこの手のテーマに興味がない人間にとっては、金を払ってまで観たいと言うほどの内容でもないような気もする。

「はやぶさ」自体はCGIのようだったが、出来はまずまずと言った所か?

部分部分で平面的な絵に見えてしまうようなカットもなくはなかったが、素人目には実物大模型と言われても気づかないレベルにはなっているような気はする。

最近のこの手の邦画、デジタル技術の定着もあってか、低予算なりに「そこそこの出来」になっているものが多いように感じるのだが、今ひとつ冒険がないと言うか、けれん味に欠けると言うか、無難な着地点ばかり狙っているようで、飛び上がるほど、面白い!と興奮させられるようなものになかなか出会えないのが寂しかったりする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会、山根一眞原作、西岡琢也脚本、瀧本智行監督作品。

「はやぶさ」打ち上げ

誰もいない管制室に灯を灯し、1人中に入ってきたのは、プロジェクトマネージャー山口駿一郎(渡辺謙)だった。

無人の司令室を歩いていた彼は、テープが剥がれかけて浮いていた床のコードに引っかかりそうになったので、その部分をテープでしっかり留めておく。

2013年5月9日

内之浦宇宙開発センター

NASAから山口に会いに来たクラーク博士は、発射を見物するため椅子を勧められるが、座ろうとしたジム椅子がぼろぼろなのに気づく。

ロケット発射を取材するカメラマンの中には、自ら志願して宇宙担当になった朝日新聞社の女性記者井上真理(夏川結)もいた。

一般の見物客の中には、その父親東出博(山崎努)も混じっていた。

打ち上げロケットが発射され、東出は空高く舞い上がるロケットをいつまでも見上げていた。

長野野辺山電波天文台がロケットの行方を追尾する。

はやぶさ搭載部分が宇宙で分離する。

監視センターに拍手が巻き起こる。

山口は、いよいよだね…と呟くのだった。

クラーク博士も、NASAも協力すると山口に約束する。

丸川靖信(藤竜也)に、まだまだ長い旅の始まりですと山口は告げる。

タイトル

2003年

宇宙科学研究所

はやぶさが目指す小惑星1998SF36が「ITOKAWA」と命名された。

ロケット開発の父、糸川英夫先生の名前に由来するものであった。

井上真理もその記者会見に参加していた

小惑星から資料を採取して地球に戻って来るサンプルリターンは困難なミッションだった。

1984年8月 18年前か…

貴社して資料を読んでいた真理に声をかけて来た先輩記者(田中要次)は、志願してゲットしたんだ。気長にやると良いとアドバイスしてくれる。

その頃、宇宙研の山口はいら立っていた。

システム上のエラーが発見されたからだ。

1からやり直しましょうと山口は決定する。

はやぶさの総重量510kg

燃費の良いエンジンが必要だった。

そこで目をつけたのはイオンエネルギーだった。

委託されていたNEC社員森内安夫(吉岡秀隆)は、研究グループ内でプレゼンのやり直しを指示していたが、宇宙研の藤中仁志(江口洋介)から電話を受けたので出かける事にする。

宇宙研にやって来た森内は、藤中と共に、はやぶさの4基あるイオンエンジンの1基Aが不調なのを必死に修正しようとしていたが、どうやっても回復しそうにもなかった。

宇宙研のパソコンには、三ノ輪不動のお札が張り付けてあった。

その2人の作業を観ていた山口は、残り3基でやりくりして行くしかないと決断する。

森内は藤中に、自分が開発した4基のエンジンには夫々自分の家族と同じニックネームが付けてあり、Aは父ちゃん、Bは母ちゃん、Cはしゅん、Dははるかと言うんだと教える。

Aはお前か…、出来が悪い訳だと…と藤中は冗談を言う。

その夜、2人はワインを飲んで研究所内で寝る事にする。

火星探査機「のぞみ」が、火星接近直前で通信が途絶、200億円がパーになったと報道で叩かれた事があった。

山口は大下治夫(石橋蓮司)に、「のぞみ」を見捨てないで欲しいと陳情しに行くが、大下は、これはもう決定済みと言うだけで、私の立場も分かって下さいと言うだけ。

その会話をちょうど、洗面所内で聞いてしまった藤中がトイレから出て来るが、目の前にいた山口とは互いに発言はなかった。

「のぞみ」は運用中止となり。探査できないまま、宇宙のゴミとなってしまった。

はやぶさは、「地球スウィングバイ」に成功し、惑星「イトカワ」に向かって一気に加速した。

2005年9月12日

打ち上げから2年と4ヶ月

はやぶさはデートポジションに到着した。

はやぶさからの電送写真が送られて来て、それを感慨深気に見る丸川。

その頃、町工場の「東出機械」に銀行から戻って来た東出は、神棚に手を合わせると、銀行は客に長居させたくないため冷房が効き過ぎていたとぼやく。

金策が巧く行かなかったようだった。

冷蔵庫からビールを取り出すと、二階の自宅に登って行く。

そして、新聞に載っていた惑星「イトカワ」の写真に見入る。

その記事の最後に書かれていた「井上真理」の署名に気づくと、新聞社に電話をかけ、久々に喫茶店で会う事にする。

東出が、卓也どうしてる?幼稚園に行ってるか?と聞くと、もう小学生よと真理は呆れたように答える。

真理は母親の葬儀以来、父親と会っていなかったのだ。

旦那、元気か?と東出が聞くと、別れたと言うので、驚く。

去年の話で、理由は色々だと言葉を濁した真理は、自分だって離婚したから分かるでしょう?と嫌味を言う。

東出は、そんな話には興味ないように、頼めねえかな?すぐ返せるあてがある。繋ぎにちょっとだけ…と金の無心をしだす。

彼はもう銀行辞めたのよ。友人とIT関連の仕事を始め、案の定、相当困ってるみたい…と別れた亭主の事を教えてやる。

人間、お金ばかりじゃないんだよと東出が諭すと、そう言ってる人がお金を借りに来てるじゃないと真理はバカにする。

真理は帰り際、喫茶代を払おうとビル(勘定書)を取ろうとするが、東出は父親の見栄なのか、それだけは手で押さえて渡さなかった。

そんな父親に真理は、お父さん、内之浦に行った?私も取材で行ってたんだけど…と尋ねるが、東出はいや…と答えただけだった。

帰宅した真理は、しばし、ぼーっとしていたが、息子の卓也から夕食をせかされ、急いで用意をしてやる。

卓也は、イトカワの写真に落書きをしていたので、おじいちゃんの事覚えてる?と真理が聞き、宇宙関係の仕事をやっていたのと教えると、すごいね、おじいちゃん!と卓也は素直に感心する。

会社に戻った東出は、工作機械で仕事をしていた。

はやぶさの装置には、100社を超える企業が参加しており、多くの人の知恵と技術と熱意が詰まっている。

真理は、そんな技術者たちから、一つ一つの部品や装置を開発した経緯の説明等を聞いて廻っていた。

ターゲットマーカーは、地表に落下した時、跳ね返らないように、お手玉からヒントを得た等と言う話等も聞けた。

彼らの中には、本当に帰って来ますかねぇ…と期待半分、不安半分と言った声があった。

そんな真理は、ある時、宇宙研に取材に言った時、丸川から、今度の連載楽しみにしていますと言葉をかけられる。

丸川は、研究所内で遊ぶ子供たちを見ながら、宇宙開発に失敗はありません。次に繋がります。でもやっぱり、この子たちが全員研究者になってくれれば良いんですが…と期待する。

その後、真理を連れ、山口の所に案内して来た丸川だったが、山口は何か急用があるようで、田舎がどうこう言いながら出かける準備をしていたので、お父さん?と丸川は察して聞く。

青森、弘前のジョッパリですよと山口は父親の事を形容するが、列車で帰省した山口を待っていたのは、病院で酸素マスクをはめ、もはや意識不明の父親だった。

山口は、父の手を握りながら、父さん!駿一郎だよ!と呼びかけるしかなかった。

森内は、会社で、管理職の立場と技術者の立場の間で苦悩していた。

そんな森内の苦労を知っている藤中は、宇宙研の新人松本夏子(中村ゆり)らと食事をしながら、森内は20年以上、イオンエンジンを開発しているんだと教えていた。

その後も、ハヤブサのトラブルは起き、山口は岸本先生がへこんでいたと言う。

森内と藤中は、久々に居酒屋で飲んでいた。

日頃の鬱憤が溜まっていたのか、その日の森内は妙にハイテンションだった。

はやぶさの3つあるリアクションホイールの内2つが調子が悪くなる。

岸本も会議に出席して善後策を検討するが、山口は、時間がないと焦っていた。

広芝さん、何か良いアイデアありませんか?色川さん、出来ますよねと強引にリーダーシップを取り、やりますと言う返事を強引にもらう。

ある日、真理は、息子の卓也を、父親の元に連れて来る。

卓也が来たいって言うものだから…と弁解しながらも、これから自分は宇宙研に泊まらなくてはいけなくなるから預かって欲しいと頼む。

東出は、断るでもなく、卓也が興味を持っていそうな工作機械を回してみせてやる。

2015年9月19日 

はやぶさの惑星「イトカワ」へのタッチダウン当日

真理も他の取材陣に混じって、その日の発表を待ち受けていた。

山口は、ではタッチダウン行きましょうか?と告げる。

30億キロの彼方から通信が届くには156分かかる。

つまり、プロジェクトメンバーたちは、16分前の結果を必死で追いかけている事になる。

ハヤブサから発射されたターゲットマーカーは、成城に着地しました!と計器を観ていた係員が言う。

しかし、どうも様子がおかしかった。

ターゲットマーカーの印が、どんどんその後も地面に沈んでいるように見えたからだ。

地表面温度は100度、これ以上続けるのは危険と判断された。

山口は、緊急離脱の信号を出す事を決意する。

はやぶさの着地は失敗!と新聞紙上に載る。

弾丸は発射されなかったのである。

岸本は、帰還させた方が良いのではないかと意見を述べる。

しかし、山口は、採石できているかどうか疑問だった。

重要なのは、「サンプルリターン」だったからだ。

それを聞いていたスタッフたちもそれは全員承知している事だった。

しかし、帰還できなかったら元も子もない事も明らかだった。

リスクから逃げたら、私は一生後悔しますと苦悩する山口。

やりましょう、もう1回!と山口は決意する。

2005年11月26日、タッチダウンリベンジ

計器にWCT表示が写り、撃った!と分かる。

山口、丸川、大下等は、待ち構えていた記者室に向かうと、会見を始める。

真理も、その様子を写真に収めていた。

しかし、その後、ハヤブサの燃料漏れが発見され、また、山口は悩んでいた。

藤川が駆けつけて来ると、イオンエンジンだけが頼りになりました。はやぶさの姿勢制御が出来ません。キセノンガスを打ち上げの時、余分に積んでいたはずですと山口は頼む。

しかし、藤川はそれは出来ませんと答え、森内をすぐに呼び出す。

宇宙研にやって来た森内は、こんな自体を想定しておらず、困惑していた。

変則的な使用方法を強要された森内は、イオンエンジンはイオンエンジンらしく運用してくれませんか?僕には認められません!と抗議する。

その後、はやぶさのリアクションホイールが故障、はやぶさの帰還は2011年6月に延期を余儀なくされ、それを記者会見で発表する事になる。

弾丸が発射されませんでした。火薬が爆発したと言う連絡が切れたと説明すると、サンプルは採取されなかったんですか?時社は質問して来る。

可能性はまだあります。諦めてはいません…と山口は答える。

東出の工場ではベテラン従業員2人が、志願して工場を辞める事になる。

そこに真理が卓也をやって来たので、社長に楽させてやりたいと…と言いながら、辞めた2人の辞表を見せる。

そんな大人の事情も知らず、卓也は、お母さん、これターゲットマーカーだって!と部品を見せる。

真理は、父親が作っていたはやぶさ関係のファイルを見つけ、お父さん、内之浦の打ち上げを観に行ったでしょう!どうして噓言ったの?と迫るが、東出は、あれは温泉に言った帰りだと言うだけだった。

そんな意固地な父親に、知ってる?はやぶさ、3年後よと教えると、さすがに落胆したのか、東出は、そんなに延びたのか…と呟く。

中小企業なんてもういらないでしょう?本物は大手が作るんでしょう?お母さん、私を連れて出て行ったの、分かる…と真理が責めると、下を向いて現mん請うかいてるだけじゃ何も見えねえぞ。たまには上を見ろ。人間には割り切れない事が一杯あるんだと東出は答える。

卓也を連れ、自宅に帰る途中、真理は思わず夜空を見上げてみる。

「LOCK OFF」の緊急報告がはやぶさから届き、宇宙研でデータを監視していた松本夏子は驚く。

はやぶさの機体を見失ったのだ。

宇宙研の相模原キャンパス(JAXA)にスイープを依頼すると、宇宙科学研究所の方でも、あらゆる周波数ではやぶさに送信する試みを始める。

山口は、何としても地球に帰しますとスタッフたちに檄を飛ばす。

その日から、行方不明になった「はやぶさ」を発見するため、根気強く監視が続けられる。

しかし、「はやぶさ」は杳として発見できず、第2の「のぞみ」になりかけていた。

NASAからはアンテナの優先使用を見直したいと言う連絡を受けるし、丸川は政府の予算担当者に、我々の仕事はすぐに結果が出るようなものではないので…と必死に予算確保の嘆願をしていたが、担当者の課長は、財務省が…と、上からの指示なのでどうしようもないと言うような答え方だった。

山口も、「はやぶさ」の捜索に焦燥感を募らせていた。

これまで、一旦行方不明になった探査機が見つかった事がなかったからだ。

ある日、台東区にある飛不動尊にやって来た東出は、建物の中で祈祷を受けている山口の後ろ姿を見つけ、出て来た所で声をかける。

西大島で工場をやっているものですと東出が言うと、すぐに、はやぶさを支えてくれた中小企業の一つと気づいた山口は、頭を下げて一緒にベンチに腰を降ろすと、今買って来たかりんとうを東出に勧める。

社員は5人いたんだが、みんな辞めてしまって…。若いもんはうちなんか寄り付かない…。残したいもの、教えたい事が一杯あるんだけどね…と東出は寂し気に語るが、山口の気持ちを察してか、あんなでっかい空を相手にしてるんだから大変だと同情すると、山口は、歯医者から、奥歯がすり減っていると教えられたと明かす。

日頃から、歯がすり減るほど食いしばって耐え忍んでいる事が多いと言う事だった。

もう20年もやってるんだけど、今頃、どこをほっつき歩いているんだか…と山口がため息をつくと、先生、はやぶさは帰って来るよ。必ず帰って来る!と励まして、東出は立ち去る。

その後、渡米し、フロリダのケネディ宇宙センターにやって来た山口は、カー博士らNASAのメンバーに、もう少し「はやぶさ」にアンテナ優先使用権を認めて欲しい旨、依頼していた。

その頃、日本の宇宙研では、「はやぶさ」を諦めるか否かで、スタッフたちがもめていた。

宇宙センターで、山口の言い分を聞いたクラーク博士は、相変わらずタフだとその忍耐力を褒め、みんな「はやぶさ」に嫉妬してるんですとアメリカ側の意向を山口に伝える。

2006年1月23日 行方不明になってから46日目

山口はNASAの会議で講義をするため出席していた。

JAXAの電波監視でとあるパルスを発見する。

「はやぶさ」からのものだった。

すぐさまその知らせは、アメリカにいる山口の携帯にも知らされる。

山口は会議室を飛び出ると、何事かと近づいて来たクラーク博士に「はやぶさ」が見つかった事を知らせ、講義は他の人にしてくれと頼むと、自分は一路日本へと戻る。

ボロをまとったマリリン・モンローからですと、携帯を指して笑う山口。

1ビット通信を続けていた「はやぶさ」だったが、やがて地球へ帰還の途に就いた。

2009年11月4日

すでに満身創痍になっていた「はやぶさ」は、地球帰還を目前にして、さらなる危機が訪れていた。

その頃、宇宙研では、松本夏子が新人スタッフに、自分が昔教わった事を教えていた。

「はやぶさ」の状態をモニターしていた森内と藤中は、イオンエンジンの出力が6割の状態になっており、もう寿命が尽きかけていると判断する。

山口はマスコミ相手の記者会見で、4基のイオンエンジンが役目を終えようとしていると報告する。

すると記者から、それじは、地球帰還の時期が延びると言う事ですよね?と質問がある。

真理もその場で聞いていた。

藤中は、後4ヶ月動いてくれたら地球に帰れるのに…、エンジンが、後3年も保つとは思いたくないと苦悩すると、森口に、もうあれを試すしかないぞと話しかける。

スタッフ会議の席で、藤中は1つ提案があると発言するが、その場にいた森内は反対ですと言う。

スラスターAと中和機Bを組み合わせると藤中がアイデアを説明するが、その「クロス運転」は地上での実験もやっていない未知のやり方だったので、「はやぶさ」全損の可能性があると森内は指摘する。

しかし藤中は、もう2年半オーバーしていると指摘したので、藤中先生もおっしゃってたじゃないですか!エンジンを売るには日本だけではなく世界中で成功しなくてはダメだと森内は反論し、口喧嘩になってしまう。

藤中は試してみたいんだと強調するが、森内は、私はメーカーの人間ですと立場を説明する。

2人の言い合いを黙って聞いていた山口は、自分が責任を負うのでやりましょうと決断する。

森内はスタッフルームを飛び出して行ったので、それを追った夏子が、戻りましょう。戻って下さいと説得する。

藤中先生はいつも森内さんの事を褒めていました。会社と宇宙研の板挟みになってもイオンエンジンを作ったのは彼だって…。20年間やって来たじゃないですか!と夏子は迫る。

藤中先生は優秀です。あの人の発想には敵わなかった…と森内が呟くと、はやぶさが待っていますと言いながら、夏子はスタッフルームに戻る。

森内も、その後、会議室に戻って来ると、藤中が使っていたパソコンの前に座る。

MOに新たなコマンドを入力し、通信の準備を完了する。

だが送信したものの、「はやぶさ」は加速しなかった。

電圧が下がっていた。

「はやぶさ」のパラメーターもバッテリーも全滅しているようだった。

森内は、新たなプログラムを作り始める。

その後、「はやぶさ」は加速している事を藤中は気づくと、山口に、何とかなりそうだと知らせに行かせる。

岸本(嶋田久作)が森内の肩を叩いてねぎらう。

階段で藤中に出会った山口は、良かった!めどが立ったって?と聞きながら、紙袋を藤中に渡す。

おいつは不死身です…と藤中が答えると、迎えに行ってくれませんか?オーストラリア…と山口は頼む。

その後、スタッフルームを出て帰りかけていた森内を待ち構えていた藤中は、2人で飲めって山口先生にもらったと言いながら、ワインが入った紙袋を見せる。

森内は、中学受験を控えている息子に算数教えないと…と断ろうとするが、出来の悪い父さんに教えてもらわなくても、中学には合格するよと藤中が言うと、森内もそうだな…と相好を崩す。

宇宙研の山口に会いに来た真理は、今度、宇宙担当から部署が移動になると報告していた。

カプセル切り離して、もう帰って来ちゃうんですね…と真理は、いよいよ地球に帰還間近になった「はやぶさ」のことを感慨深気に呟く。

父が昔から宇宙関係の仕事をしていたので、私ももう7年も宇宙と付き合ってきました…と打ち明けた真理が、先生のお父様は?と尋ねると、高校の教員をやっていました。もう死にましたけど…と山口が答えたので、はじめて取材した時に…と真理は、急いで帰郷しようとしていた山口と最初に出会った時の事を思い出す。

帰った時にはもう意識をなくしていましたが、手を握って呼びかけると、かすかに手を握り帰してくれたような気がしました…と山口も、病院で最後に父親とあった時の事を思い出したようだった。

「はやぶさ」も、1ビット通信のかすかな送信を送ってたんです…と山口も感慨深気だった。

オーストラリア ウーメラ

藤中たちは、地球に落下する「はやぶさ」の到着を待ち受けていた。

その頃、東出の工場では、中学生になっていた卓也工作機械をいじっており、真理が、どう?と聞くと、東出はもうちょっとだなと答える。

何作っているの?これが、設計図なの?と真理は、落書きのようなものが書かれた紙を見る。

最初は設計図なんてないんだ。先生とああでもない、こうでもないって話し合いながら形を作って行くんだ。金にはならないけど…と熱く語る東出に、ウーメラに一緒に行かないかとマリは誘う。

すると、卓也は行かないと言い出し、東出もここ出留守番をしていると答える。

自分でしっかり観て、卓也にしっかり教えてやれ。それを又後の奴等に教えて行く…。順繰りだと東出は真理に伝える。

2010年6月13日

真理は、オーストラリアのウーメラに来ていた。

藤中が挨拶をする。

「はやぶさ」はカプセルを分離、大気圏に突入する。

宇宙研に残っていた丸川は、山口の側に来ると、地球を見せてやりたいな…、「はやぶさ」に故郷を見せてあげたいなと言う。

いよいよ、「はやぶさ」最後のミッションだった。

終わった…。これをもちまして、「はやぶさ」の全運用を終了する。7年間、本当にありがとうございましたと山口がスタッフたちに挨拶する。

そこに遅れて駆けつけて来た森内は、山口の姿を観ると、最後はみんなと一緒にいたいと思って…と恥ずかしそうに説明する。

山口は、いつも無理を強いて来た森内にも感謝の言葉を贈る。

「はやぶさ」が最後の電送写真を送って来た。

それを観た丸川は、地球を観て泣いてるのかも…と呟く。

その写真に、地球の姿が移っていたからだ。

東出がベランダから夜空を見上げている頃、ウーメラでも、真理が夜空に落ちて来る光を発見していた。

「来た!」

「はやぶさ」は大気圏の中で燃えていた。

真理はいつの間にか泣いていた。

ウーメラ試験場の会場内に拍手が巻き起こる。

夏子も泣いていた。

カプセルだ!戻って来た!

真理は、東京の父親に電話をかけ、お父さん!「はやぶさ」が帰って来たよ!と告げる。

東出は卓也を電話口に呼ぼうとするが、気がつくと、卓也は作業机に突っ伏してもう寝ていた。

燃え尽きたか…と東出も感慨深気に呟くと、卓也に、もう寝ろ!じいちゃん、明日も朝から仕事だと声をかける。

翌日、ヘリコプターが、「はやぶさ」落下地点に飛び、地上に落ちていたカプセルを発見する。

山口は、スタッフたちと一緒に写った記念写真を眺めながら微笑んでいた。

その後、宇宙研を出て帰りかけていた山口は、車に乗った藤中から駅まで送って行きますよと声をかけられる。

山口が歩いて行きますと答えると、先生、おみやげが…と言いながら藤中が渡したのはかりんとうだった。

オーストラリアから帰って色々あって…と藤中は照れくさそうに言い訳する。

2人は握手して別れようとするが、山口の手が冷たかったと知った藤中は、昔から、手が冷たい人は心が温かいと言いますねとお世辞を言う。

すると山口は、論理的じゃないねと笑い返し、歩いて宇宙研を出る。

2011年11月

1500個の微粒子が「はやぶさ」のカプセルから見つかる。

2014年、「はやぶさ2」打ち上げ予定

糸川博士のペンシルロケット事件の写真と共にエンドロール