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フレンズ もののけ島のナキ

話の骨格は、誰もが知る有名なストーリーなのだが、巧くアレンジがしてあるので、全く新しいファンタジーとして楽しむ事が出来る。

日本人好きなウェットな要素もあるが、ユーモア要素も盛りだくさんで、小竹を小舟に乗せて人間の村へ送り返そうとするナキの気持ちとは裏腹に、何度も先に小竹の方がナキの家に戻って来てしまう繰り返しギャグや、魚とトカゲの中間小用な化物を野球のボールのように、グンジョーと2人で海に打込んで行くシーン等は、昔のワーナーアニメのギャグを連想させたりする。

W監督作品だが、ひょっとすると、ウェットな部分は山崎貴監督が担当し、ナンセンスギャグのシーンは八木竜一監督が受け持っているのかもしれない等と想像した。

この作品での乾いたギャグ感覚は、従来の山崎作品には観られない感覚だからだ。

2人の共同監督作品と聞くと、何だか最初から失敗しそうな先入観を持ってしまいがちだが、昨年観た「のぼうの城」と言いこの作品と言い、娯楽作品においては比較的巧く行っているのではないかと思う。

2人の力量がプラスして2倍の面白さになっている!…と言うほどではないが、互いの弱点を巧く補い合っていると言った感じだろうか?

話としてはシンプルながら、過不足なく巧くまとまっており、臭くなりがちなお涙話も巧く処理してある感じで、なかなかの良作になっている。

子供を意識したような下ネタが出て来るのは、ナキの声をつとめた香取慎吾主演の「西遊記」辺りからの発想か?

CGIもなかなか良くできており、かなり癖は強いが、思い切ってディフォルメされたキャラクターの造形と相まって独特の魅力を生み出している。

特にナキの家などは、わざわざ暖かみを出すために2m×3mくらいのミニチュアが作られており、それを元に作られているらしかったり、風にそよぐ植物の描写等も自然な感じを受け、日本のCG技術も年々着実に進化しているように思えた。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2011年、浜田廣介「泣いた赤おに」原案、山崎貴脚本+監督、 八木竜一監督作品。

巨大な海に浮かぶ不気味な鬼のような顔に見える島に近づいていた小舟を漕いでいたのは、海辺の村に住む子供、竹市(声 - 鈴木れい子)だった。

さすがに、間近で観る島の姿にはビビっていた竹市だったが、仕方ねえな…と呟くと、その巨大な鬼の形をした島の口の部分に当たる空洞に船を進ませる。

すると、一気に島の向こう側に出る。

そこには、別の島が横たわっていた。

本当にあったんだ!とその島を観て興奮した竹市は、浜辺に上陸すると、物の怪がいると言う感じじゃないな…と安堵しながら億へと歩き始めようとしていたが、その時、自分が乗って来た小舟から、幼い弟の小竹(声 - 新堂結菜)が降りて来た事に気づき、小竹!何で付いて来たんだ?と驚く。

すると、小竹は、船に積んで来たザルを持って見せたので、お前もキノコを採りに来たのか?と聞くと、小竹は嬉しそうに頷くではないか!

仕方ないので、その小竹と一緒に森の中に分け入ると、そこには見たこともないキノコがたくさん生えていた。

竹市が、夢中でキノコを採っている時、小竹の方は、森の奥に何かの気配を感じ、じっと見つめ、兄ちゃん…と囁く。

その言葉でようやく顔を上げた竹市も、奥の方に青と赤色の不気味なもののけが2体出現した事に気づくと、慌てて砂浜に逃げるが、いつの間にか青いもののけが目の前に先回りしていた。

竹市は肝をつぶし、急いで小舟で海に漕ぎ出すが、追って来たもののけの赤い方が足の裏が黄色く発光すると、海の上をジャンプして近づいて来る。

砂浜に残された大きな魚籠の影に、小竹は取り残されていた。

赤いものけは、竹市の乗った小舟を一瞬で破壊してしまう。

浜に戻って来た赤いもののけナキ(声-香取慎吾)は、友人の青いもののけグンジョー(声-山寺宏一)に、あのガキ、渦巻きの飲み込まれて捕まえ損なったと報告するが、その時、小さな小竹を発見する。

人間の漁村の方では、流れ着いた竹市を大人たちが運んで来ていた。

ご免…、母ちゃんの事が心配で…、掟を破って真ん中島の向うのもののけ島に行ったんだ。だって、母ちゃん、最近変な咳が止まらなくて、父ちゃんが死んだ時とそっくりなんだもんと生きていた竹市は説明するが、小竹はどうした?と村人たちから聞かれると、島には珍しいキノコが生えてて、もののけが出て来て…と言うだけなので、置き去りにしたのか?と大人たちは呆れ、助けに行く!と海に向かおうとする母ちゃん(声 - 湯屋敦子)をみんなが止める。

そこにやって来た小柄な大ばばさま(声 - 鈴木れい子)は、もののけの怒りが真ん中島の方から渦巻いている。残念だが、小竹の事は諦めるしかない。すでに食われておるやも知れぬ…と呟く。

岬にある地蔵を祭る場所にやって来た大ばばさまは、もののけがいたのはわしの婆様の又婆様の時代で、200年も昔じゃと村人たちに教える。

もものけたちは人間との戦に負け、あの島に追いやられたので、その後、その時の怒りを貯めに貯めておるに違いない。その数も今では増え、千はおろう…と大ばばさまは怯える。

しかし、実際にもののけ島にいたのは、ナキとグンジョーの他には、長老(声 - 大木民夫)と呼ばれるナマズのもののけを筆頭に、コロポックルもののけのコロポ、手長足長もののけテテとソクソク、からす天狗+牛鬼のもののけヤーネン、タコもののけ鐘タコ、大サンショウウオ+竜もののけデブー、ネギもののけネギ坊、双子の五口鳥ゴッチーとクッチー、一つ目亀小僧カメッピ、かまいたち+一反木綿もののけかまさん、ネコもののけミッケ(声 - YOU)、ゴーヤもののけゴーヤン(声 - 阿部サダヲ)の15、6匹だけだった。

彼らは今、ナキとグンジョーが連れて来た小さな小竹をどうするべきか話し合っていた。

前の戦から200年、ここにこれだけしかおらぬ事を人間どもに知られたら、我らは皆殺しだ…と長老は、逃がした子供が村に戻ったときの事を心配していたが、それを寝転んで無関心そうに聞いていたナキは、一発おならをかましたので、その場にいたもののけたちはパニック状態になる。

あいつは渦巻きに巻き込まれて死んだに違いねえよとナキは言い切る。

俺たちとは別に、幻山の方に逃げ込んだもののけたちは、全部人間どもに滅ぼされたそうだと長老は怯える。

こいつも生かしておくわけにはいかないと、小竹の髪の毛を掴んで持ち上げたナキは、崖の上に建っているもののけ集会場から下へ落とそうとするが、人間どもが襲って来たときの人質にした方が良いだろう。人間は、10年、20年で凶暴になる生き物だ。こいつは連れて来たお前が面倒観ろ!聞けぬとあらば、島を出ろ!と長老は一方的に命じる。

しかし、ナキは知るか!と無視して帰って行く。

それを観ていたミッケが、困ったわね。面倒見るったって、誰がこの子をナキの所へ連れて行くのよ?と言い出すと、その場に残っていたグンジョウが、ナキの事はこのグンジョーでしょう?でも、こんな厄介な事を頼むのに手ぶらってことないよね?と他のもののけたちに言う。

感情で色が変わる、小さな風船のようなプチ虫が、恐怖を感じたのか一斉に赤くなって飛び出して来たのはナキの家からだった。

小竹を家に連れて来たグンジョーとそれを迷惑がるナキがにらみ合っていたのだ。

連中から、この子の面倒観る代わりにコブ岩の権利を貰ったんだ。

それをお前に4割やる。おれはたった6割で良いからとグンジョーが伝えると、一瞬喜びかけたナキだったが、さすがに4割の方が少ないじゃねえか!と気づき激高し出すが、キノコ採りが終わったら、こいつを小舟に乗せてピューッとほっぽり出せば良いのさ、そこんとこよろしく!と言い残して、グンジョーは小竹を残しさっさと帰ってしまう。

ナキは、小竹をこの悪たれ坊主!と睨みつけて背を向けるが、小竹は何かを思いついたように、笑顔になる。

次の瞬間、ナキは大きな悲鳴を上げて家を飛び出す。

尻に、小竹から火をつけられたからだ。

そのナキの叫び声が届いた岬の地蔵の前にいた大ばばさまは、もののけが怒りの声だ!と怯え、村人たちと懸命に祈祷を続ける。

その声を聞いて駆けつけたグンジョーは、かっとなっちゃいかんね。獣の子は獣だ。コブ岩のキノコだとナキをなだめるが、次の瞬間、そのグンジョーも悲鳴を上げて家を飛び出す。

いつの間にか、小竹がグンジョーの衣装の背中にも火をつけていたからだった。

熱さでナキの家を飛び出したグンジョーは、近くで、きれいな自宅をこしらえたばかりのゴーヤンの家にぶつかりぶっ壊してしまう。

そのグンジョーの叫び声を聞いた大ばばさまは、恐ろしい…、もののけの怒りが…とますます怯え切って祈るのだった。

グンジョーは、やっぱりこいつ海に捨てようと小竹を睨みつけるが、コブ岩のこと良いのか?と、今度はナキの方がなだめる。

小竹は身の危険を感じたのか、後ずさっているうちに床に置かれたキノコに躓いて、後ろに転んでしまい、大泣きを始める。

そのうるささに耐えかねたナキは、何とかしろ〜!と叫ぶ。

なかなか泣き止まない小竹に手を焼いたナキが、脅かそうと怖い顔をして見せると、何故か、小竹は泣き止み、嬉しそうに笑い出す。

吼えるのを止めると又泣き出したので、また仕方なく吼えると、小竹は嬉しそうにガオー!と言って笑い出す。

それを何度か繰り返していたナキだったが、さすがに疲れ果ててしまい、お前も何かやれ!とグンジョーに頼む。

グンジョーは得意技の姿を消す技を見せるが、小竹は喜ぶどころか泣き出してしまう。

姿を現したグンジョーは、がっかりしたように、次はとげのあるキノコを食べて、恐ろしい魔物風に変身すると、食っちまうぞ!と脅すと、小竹はようやくキャキャと喜ぶ。

ようやく、小竹が寝入った時、この島に来たときの事覚えているか?とグンジョーが泣きに聞く。

お前はずっと泣いてばかり…、それでナキ。

あの時、もう一生分泣いてしまった。もう泣かないときっぱり言い切ったナキは、200年泣かなかったら、もうナキと呼ばないって言ってたな。おれは昔から我慢して来たんだ。今さら知らんとは言わせんとグンジョーに確認する。

人間に村を襲撃され、燃え盛る村の中で死んだ母親を前にした子供時代のナキ(声-加藤清史郎)は、もうダメだ、逃げるんだ!と側で呼びかけていた子供時代のグンジョーの言う事も聞かず、母親の死体から離れようとはしなかった。

その時、人間が放った矢が、グンジョーの母親にも刺さり、子供ナキの左頬から口元をかすったのだった…

翌朝目を覚ましたナキの左頬から唇にかけて、まだその時の傷が生々しく残っていた。

小舟を作って、それに小竹を乗せて砂浜にやって来たナキは、とっととお前の村に帰れ。今は満潮だ、途中で止まったらこれで漕ぐんだと言って櫂を渡し、海に流す。

しかし、小竹は器用に櫂で小舟をUターンさせ、あっさりもとの浜辺に戻って来てしまったので、とっとと帰れ!ガオー!とナキは脅すが、小竹は昨日同様喜ぶだけなので、しまった!これ大好きなんだと後悔する。

おれはお前が大嫌いなんだ!この人間め!と小竹を睨みつけたナキは、又小舟に乗せ、思い切り遠くの海まで放り投げる。

そして、森を通って家路に付いたナキだったが、また、漕いで浜に戻って来た小竹は、森の脇道を通って、先に、家を造り直したゴーヤンとグンジョーがいる場所に戻って来る。

その後、自宅に帰って来たナキは、グンジョーと小竹が待っているのを観て愕然とする。

ナキは、また、小竹を小舟に乗せて海に捨てに行き、急いで森の中を帰って来るが、前と同じように、小竹の方が先に家に戻ってしまう。

4回同じ事をやっても、小竹の方が先に戻って来てしまうので、小竹を迎えたグンジョーが、とっておきの必殺技を教えてやると言い出す。

そこに、また、ナキが帰って来るが、家の中で後ろを向いていた小竹とグンジョーが、くるっと振り返ると、2人とも、炭で顔に太眉を書いており、おどけた表情を同時にやってみせたので、あっけにとられたナキはしばらく2人を睨んでいたが、とうとうたまりかねたように笑い出す。

な、あいつは何百年もこれで笑ってるんだと言うグンジョーは、付き合いが長い友達であるナキの弱点を知り抜いていた。

お前、こいつに気に入られちまったんじゃないのか?と小竹を刺してグンジョーがからかうと、ナキは、こいつだってすぐに獣になっちまうんだぞと答える。

再び小竹を海岸に連れて行ったナキは、おれはお前等人間が大嫌いなんだ!と小竹に言い聞かせると、帰ってくんな!と叫びながら、小竹を乗せた小舟ごと、足で蹴飛ばして海に投ずる。

その後、ようやく家に戻って来たナキは、ちょっと脅かしてやったら帰ったよと待ていたグンジョーに伝えるが、グンジョーは真ん中島の方を眺めながら、風が吹いて来たな…と不安げに呟く。

小竹の乗った小舟は、真ん中島で挫傷しており、小竹は真ん中島の海岸にいたが、そこに海から、魚とトカゲの中間のような四つ足が何匹も這い上がって来る。

小竹にその化物たちが襲いかかろうとした時、いきなりその化物を掴み、ゴーヤンと一緒に船でやって来たグンジョーの方に投げつけたのはナキだった。

グンジョーは持っていた櫂をバット代わりに、次々とナキが投げて来る化物をかっ飛ばして、海に飛ばすのだった。

気がつくと、小竹がナキの足のしがみついて泣いていたので、それを優しく抱き上げたナキは、男なら泣いちゃダメだと優しく言い聞かせると、ナキを自分の頭の上に乗せ、海面をジャンプしてもののけ島へと戻る。

島の森の上をジャンプすると、頭の上の小竹は喜び、驚いたたくさんのプチ虫が跳ね上がって来る。

家に戻って来たナキは、自らキノコを切り、鍋にして、小竹とグンジョーに食べさせていた。

その時、グンジョーが、天女茸と言う透明なチューリップのようなキノコを食べようとしているのに気づいたナキは、自分が仕舞っておいた容器を開けてみて、ない!と騒ぎ出す。

それはおれが食べる為に取っておいたものだ!返せ!と言いながら、グンジョーと天女茸を取り合っていたナキだったが、2人の手からこぼれ落ちた天女茸は小竹の方に飛んで行き、小竹がそれをあっさり口に入れてしまう。

ナキは驚き、何年も取っておいたものなんだ!と言いながら、小竹をひっくり返して口から吐き出させようとするが、小竹はあんぐり口を開け、もう飲み込んでしまったと教える。

その表情は嬉しそうで、おいちいねと喜ぶ。

翌日、グンジョーと小竹を連れ、ナキは、山の高い所に生えているが滅多に見つからない幻のキノコ天女茸を探しに行く。

花火茸はすぐに見つかるが、なかなか天女茸は見つからない。

その時、小竹が見つけたのは、風船茸だったので、それを食べちゃダメだぞとナキが言ってる側から、小竹はそのキノコを食べてしまい、お腹が風船のように膨れ上がり、フワフワと空中に浮かび上がってしまったので、慌ててナキはそれを抱きとめる。

すると、小竹がいつの間にか、手に天女茸を掴んでいるではないか。

小竹はそれをナキに差し出すと、おいちいねと笑う。

おれにくれるのかい?と驚いたナキだったが、貰っとく。今度見つけたらお前にやるなと言って小竹からありがたく受け取り、その場で口に入れると、こりゃ本当に旨いなと唸るのだった。

その時、小竹はくしゃみをする。

家に戻り、夕食の準備をしていたナキは、小竹が返事もしないで寝転がっていたので、起こしに行くが、その顔が赤くなっており、額を触ると熱がある事が分かる。

それを知ったナキは、本当にバカやろう!凶暴なくせに弱いってどう言う事だ?等と言いながら、グンジョーが持って来た薬を飲まし、必死に看病を始める。

寝かせ付けた小竹は、母ちゃん…とうわごとを言ったので、それを聞いたナキは、今まで我慢していたのか…と呟く。

母ちゃんか…とグンジョーが言うので、何だ?とナキが聞くと、渡り鳥の乗って飛んで来たもののけが教えてくれたんだが、ずっと南の島で、おれに良く似たもののけがいたって言うんだと言い出す。

それを聞いたナキは、そりゃ絶対、お前の母ちゃんだよ。生きているかもしれねえんだぞ、なぜ会いに行かないんだ?と不思議がるが、人間の世界を通らなくちゃいけないし、別人かもしれないしな…とグンジョーが煮え切らない態度を取るので、それがビビっているって事なんだとナキは叱りつける。

ナキは夜通し小竹を看病し、うたた寝をしているうちに朝を迎えていた。

目を覚まして、小竹の額を触ってみたナキは、熱が下がっている事に気づくと、側でうたた寝をしていたグンジョーも起こして教える。

ナキは、起き上がった小竹のために、小さなスプーンを作ってやり、一緒に食事をさせると、その後も、家から一緒に釣り糸を垂らして釣りを楽しんだりする。

小竹の釣り竿には、タコが釣れたりする。

小竹はすっかり、他のもののけとも仲良くなっていた。

ナキとすっかり打ち解けた小竹は、山の上から海に沈む夕日を一緒に観たりする。

その後、小竹の漁村に、ゴーヤンら5人のもののけが積み重なり、その上から衣装を羽織り人間に化けたてやって来ていた。

彼らは、草むらの中から伸びて指示を出すナキの手に従うしかなかった。

漁村には、高い柵がこしらえてあり、入口には行灯を持った見張りが1人立っていたので、それに近づいたゴーヤンは、この村は何で物々しいんだ?と人間をまねて聞くと、もののけが出て、人間が食われたんだ。生きたまま目ん玉えぐって食べられたそうで、人間の味を覚えたから、もののけが襲って来るに違いないと見張りの男は言う。

その内、見張りの男は、ゴーヤンの顔をまじまじと観て、お前の髪のとげとげは何だ?と聞いて来たので、これはニキビだと言ってごまかす。

ところが、ゴーヤンを肩車していたもののけの一番下にいたもののけが、ビビって逃げ出してしまったので、その分、ゴーヤンの身長が縮んでしまう。

それに気づいた見張りが、おや、お前、ちょっと小さくなってねえか?と聞いて来たので、顔の部分担当のゴーヤンは、人が縮むなんてことがあるはずないじゃないかと必死にごまかそうとするが、下のもののけたちがどんどん逃げ出して行ったので、ゴーヤンの身長は子供並みになってしまう。

さすがに驚いた見張りは、もののけだ〜!と叫び出したので、村から、竹槍を持った漁民たちが一斉に入口から出て来て、彼らを海の方へ追って行く。

その隙に、草むらに隠れていたナキ、グンジョー、小竹が道に出て来て、村に近づく事にする。

先頭に立ったグンジョーは姿を消し、両手に持っていた二本の矢印型「↓↑」の木の枝を組み合わせて、止まれと進めの合図をするので、その指示に従ってナキと小竹は匍匐前進をし始める。

無事入口にたどり着いたナキは、小竹、お前の村だ。ここからは自分で歩いて行けと声をかけるが、小竹はナキの手を引いて、一緒に行こうと言うような真似をする。

おらは一緒に行けねえよ。ガオッ!と脅してみたナキだったが、いつも通り、小竹を喜ばせただけだった。

放っておいて、自分だけ帰ろうときびすを返すと、小竹がナキの足にしがみついて放そうとしない。

そうした別れがたい2人の心根が分かるだけに、グンジョーは側で哀し気に待っていた。

ナキは小竹を抱きしめると、持って来た花火茸を村の方に向かって投げ上げ、言ってしまえ!男が泣いちゃダメだ!と叫ぶ。

花火茸は空中で花火のように光って広がったので、それに目を奪われた小竹は、とことこと村の中に入って行く。

そこに、何か気配を感じたのか、小竹の母ちゃんが外に出て来て小竹に気づく。

お母ちゃん!と小竹も気づき、小竹かい?お前、生きていたのかい?と呼びかけた母ちゃんの胸に抱きしめられる。

それを複雑な思いで確認したナキとグンジョーは村を後にする事にするが、しかし、おっかあって良いものだな…と呟くグンジョーに、お前もおっかあに会いに行ったら良いじゃないかとナキは勧める。

しかし、グンジョーの方も、小竹の事が忘れられないらしいナキの事をからかう。

もののけ島に戻ったグンジョーとナキは、勝手に人間の村に行った罪で、2人とも縛られて、高い崖から一緒に吊るされると言う罰を受ける事になる。

2人背中合わせで縛られていたグンジョーは平気なようだったが、ナキの顔が青いので、お前こういうのダメ?と意外そうにグンジョーは聞くが、どうやらナキは、高い所を怖がっているのではなく、便意を我慢しているのだと気づくとグンジョーはパニックになる。

翌日、小竹も、海の向うを眺めていたが、母ちゃんが迎えに来ると、地面にナキの顔を描いて、ガオッ!と叫ぶ真似をする小竹を抱き上げる。

そこに近づいて来た大ばばさまも、よっぽど恐ろしかったのだろう等と言い、足でその絵を踏み消すと、もう悪いもののけは入って来れんと呟く。

村と海の間には、長い柵が作られていたからだった。

もののけ島では、家に戻っても何かしょんぼりしてしまったナキに、もう小竹の事は忘れろ。しょせん、もののけと人間は仲良くやれねえんだとグンジョーが説得していた。

お前こそ、おらになんだかんだ言う前に、何で、おっかあ探しに行かないんだ?とナキが聞くと、てめえのせいだ。お前、1人じゃやっていけねえだろう?お前はここでもみんなに嫌われているんだ。おれが中に入っているからこの島にいられるんじゃないか!勝手にしろ!とグンジョーは言うと、家を出て行く。

勝手にするさ…と1人呟いたナキは、小竹に食べさせようと採っておいた天女茸を手に持っていた。

ある日、小竹のいる村に、我助、 吉兵衛、 兵馬(声-FROGMAN)の3人の浪人者が近づいて来る。

この柵を観ろ!怯えている…、こいつは金になるぞ…と彼らは笑う。

彼らに気づいた見張りは、侍が来なすった!と喜び、その声で村中のものが集まって来る。

お前さんかい?この手紙をくれたのは?と侍が手紙を出してみせたのは、大ばばさまだった。

彼らは、もののけ退治の名人たちと言われているらしく、俺たちが来たからにはもう大船に乗った身持ちでいてくれと言って、村人たちを安心させる。

そんな事を知らないナキは、天女茸を持って、1人で人間の村に近づいていた。

それをやぐらの上から見つけた見張りが、もののけだ!と叫びながら半鐘を打ち始める。

ナキは、私はもののけ島のナキと申します。怖がらないで下さい。今日は取っても良いものを持ってきましたと丁寧に挨拶するが、知らせを受けた我助、 吉兵衛、 兵馬たちがボウガンを発車しながら柵の方に走って来る。

ボウガンの矢はナキの左足を射抜き、ナキは慌ててその場を逃げ出す。

我助たちは、ナキがその場に落として行った天女茸を踏みつけて、後を追う。

海岸に逃げて来たナキは、いつものジャンプ力で海を渡ろうとするが、足を怪我しているためか、パワーが出ない。

そこに、あいつの皮をはいで新しい上着になるなどと言いながら近づいて来た我助、 吉兵衛、 兵馬たちは、ナキの姿が見えないので帰ることにする。

その時、あいつ、命拾いしたぜなどと悔し紛れに鉄棒で崩して行った岩から、それまで消えてへばりついていた姿を現したのはグンジョーだった。

ナキは、その岩の影に隠れていた。

助けに来てくれたのか?と感謝するナキを背負い、グンジョーは、海岸側の洞窟の中にナキを運び込むと、あれほど止めとけって言っただろう…と言いながら、傷の手当をしてやる。

さすがに反省したのか、ナキも、お前の言う通りだ…。お前がいなければ今頃…と納得する。

人間どもとは仲良く出来ねえんだとグンジョーは哀し気に言う。

おれはただ、天女茸を食べさせたかったんだ…、あの美味しそうな顔が観たくて…と言いながら、ナキは、小竹用に作ってやった小さなスプーンを取り出していた。

その時、おれちょっと出て来るよ…、日の出でも観ようと言い残して、グンジョーが外に出る。

しょっとしたらウ○コだろう?とナキはからかうが、グンジョーは黙って洞窟の外に出て行く。

ウ○コにしては帰りが遅いの気づいたナキが表に出てみると、海岸の岩に腰掛けていたグンジョーは、ナキの気配を背後に感じたのか、おれは人間と言うものをどうしても許せなくなったと呟く。

本当は俺たちも人間も、どっかで繋がっているんだろうけどな…、おれだって行きたくはないんだ。ようやく分かったよ…、自分が何をしたかったかを…と言うと、グンジョーは持っていたあのとげとげのキノコを口に含み、恐ろしい化物に変身する。

俺たちを起こらせたらどうなるか、あいつらに思い知らせてやる!と叫ぶと、止めようとするナキを無視して、巨大な魔獣に変身したグンジョーは村に向かう。

グンジョーが迫って来るのを発見したやぐらの上の見張りは、又、もののけだぁ〜!と叫んで半鐘を打ち鳴らす。

グンジョーは、そのやぐらを打ち壊す。

村人たちは逃げ出し、我助たちが前に出る。

3人の前に出た大ばばさまが、先生たち、あのもののけをお願いいたしますと頼んで振り返ると、そこには、顔を描いた紙を貼ったかかしが3つ立っているだけで、あんなの無理だって〜!と叫びながら、我助たちは我先にと逃げ去っていた。

大ばばさまと村人たちは、地蔵が祭ってある岬に逃げ込むが、グンジョーがその後を追って来て、彼らを崖っぷちに追い込んでしまう。

結界用の飾りも地蔵も、崖から海に落ちて行ってしまう。

じりじりと村人たちに迫るグンジョーの前に、待て〜!と言いながら廻り込んで来たのはナキだった。

落ち着くんだグンジョー!勘弁してやれ!と、村人たちの前に立ちふさがったナキは説得しようとするが、お前はどっちの味方なんだ!こんなひどい事をする人間をかばうなんて…とグンジョーが叫ぶと、誤解されてるだけだとナキは言う。

その時、母ちゃんに抱かれて村人たちの中にいた小竹が、無理矢理母ちゃんの手を振り切って地面に降りると、ナキと一緒にグンジョーの前に立ちふさがる。

うるさい!と怒鳴ったグンジョーが、2人をなぎ払おうとしたので、ナキは小竹を抱いて助ける。

どうして一緒に戦ってくれねえだ、裏切り者!とグンジョウは歯向かって来るナキにいら立っているようだった。

そのグンジョーの足にしがみついたナキだったが、地面に叩き付けられる。

ナキ!頑張れ!と小竹が応援する。

何と言うことじゃ!人のためにもののけが戦っている!と大ばばさまも驚いていた。

力づくでもどかしてやる!と唸ったグンジョウの手の爪が長く伸びる。

しかし、変身キノコの力がなくなったのか、グンジョウの身体は爆発のようなものを繰り返しながらいつの間にか元の姿に戻る。

そのグンジョーを殴りつけたナキは、島に戻るか?グンジョー!と迫ると、お前はそうやって、一生人間と仲良くやってろ!と言い残し、グンジョーが掻き消えて行く。

小竹はナキに抱きつき、戦い振りを目の当たりにした村人たちからは、良いもののけもいたんだな等と言う声が起き、一斉に拍手が巻き起こる。

友人との壮絶な戦いを終えたナキはその場に倒れる。

目を覚ましたナキは、小竹と竹市の家で、母ちゃんからお粥を食べさせてもらっていた。

小竹は、おいちいねとナキの方を観て笑っている。

身体が良くなって来たナキが小竹と一緒に家の外に出てみると、家の物陰に村の子供たちが、物珍しそうにナキの方を見つめていたので、一緒に遊んでやる事にする。

ようやく人間たちと仲良くなれたナキは、海に浮かぶ真ん中島の方を観ていた。

その後、船に乗ってもののけ島に戻って来たナキだったが、ゴーヤンたちがみんな、浜に並んで黙り込んで待っているではないか。

グンジョーと何があったの?これを渡してくれって…と言いながら、ゴーヤンが一通の手紙を船から降りて来たナキに手渡す。

その手紙を読んだナキは、あのバカ、どこ行ったんだ!と叫んだので、島の奥に…、何があったんだよ…とゴーヤンが教えると、ナキは島の奥へと走り出す。

「ナキ…

お前がこれを読んでいると言う事は芝居が巧く行ったってことだ…」とグンジョーは手紙に書き綴っていた。

「おれがいつまでも一緒にいたら、お前は人間と仲良く出来ない。

おれは旅に出る事にした。長い旅になると思う。

もうお前は大丈夫だ。

人間とも、もののけ島のみんなとも巧くやって行けると思う。

どこまでもお前の友達 グンジョー」

島の反対側の海辺に出たナキは、グンジョー!いるんだろ?姿隠しているだけなんだろ?分かっているぞ!と周囲を探すが返事はない。

気がつくと、目の前の地面に「↓」「↑」を2つ上下に合わせた「止まれ」の合図が大きく描かれてある事に気づく。

それを目の当たりにしたナキは、もうグンジョーがいないことを悟り、「グンジョー!!」と号泣し出す。

その頃、船に乗ったグンジョーは、真ん中島の中央を通り抜けていた。

涙ながらに、自分が乗って来た船がある浜辺に戻って来たナキは、そこで待っていた小竹が、男は泣いちゃダメだと言う可愛らしい言葉を聞く。

泣き笑いの表情になったナキは、そんな小竹を抱き上げると、ぎゅっと抱きしめるのだった。