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座頭市逆手斬り

シリーズ11弾

シリーズも、この辺りに来ると、すっかり雰囲気が変わっており、シリアスな雰囲気が影を潜め、どこかしらユーモア時代劇のような様相を呈し始めている。

そもそも冒頭から、凶状持ちのはずの市が郡代所に捕まっているのに、何の詮議もされないで、もぐり賭博の罪だけで百叩きの刑を受けてあっさりシャバに出ているのが解せない。

役人たちの方は座頭市のことに気づかなかったにしても、叩けばすごい埃の出る身体であることは重々承知しているはずの市の方まで、牢屋の中で、隣の島蔵に百叩きのことを教えられるまで自分の処分に気づかないのは奇妙過ぎる。

市は取り調べを嫌い、捕まる前に一暴れして逃げるはずなのだが、そう言う気配は全くない。

第一、青田の宿のチンピラたちも座頭市のことを知っているのに、役人が全く按摩に無関心と言うのも変なのだが、その辺はもう、物語の展開上、忘れたことになっているのだろう。

銚子の近くまで来て宿に泊まる時、宿改めが来ていると主人に教えられても逃げようとはしない。

手形等持たないはずの市が普通に旅を続けているのがどうも不思議だ。

市自体の容貌もすっかり様変わりしており、紙は坊主どころか、普通の横分け風にしているし、ひげも生えていて、目をつぶっていなければ、もはや兵隊やくざの大宮なのか、悪名の朝吉なのかすら区別できないような有様。

上映時間も、もはや1時間20分にも足らず、テレビの1時間ドラマに近くなって来ている。

もう少し尺が短くなると、中編と言ってもおかしくない長さである。

映画としての出来も、中の下くらいと言った印象で、シリーズ中期のお気軽な一本と言った印象。

後年、勝新主演の座頭市はテレビの1時間連続ドラマになるが、映画版の方も、徐々にそうした雰囲気に近づいていたのかも知れない。

それでも、見所がないではなく、何と言っても、この手のシリーズではお馴染みの「偽者」出現のエピソードが入っている。

その偽座頭市になるのが藤山寛美と言うのだから、これだけでも一見の価値はある。

ただし、こちらもいつの間にか仕込みの錫杖を持っていたりして、いつそんなものを作る金と時間を費やしたのか分からないまま。

これも、ギャグと言うことで、理屈無用と言うことなのだろう。

銚子が後半の舞台と言うこともあり、市が海にはじめて出会うシーンは印象的である。

市は、小さな頃は眼が見えていたらしいが、さすがに笠間の生まれでは海を見たことはなかったはずで、眼が見えない市にとって、海と言うものが想像すら出来ない存在なのが良く分かる。

そんな市に、道中しつこく付いて来るお米の明るさも救いである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、子母沢寛原作、浅井昭三郎脚色、森一生監督作品。

座頭市はもぐり博打で捕まり、郡代所で百叩きの刑を受けていた。

途中、後何回くらいでしょう?と市が聞くと、今、半分くらいだと叩いていた役人が答え、又、背中を打ち始める。

すると、又、市が、島蔵さんって…と話しかけようとしたので、うるさい奴だと役人は顔をしかめる。

(回想)前日、牢に入れられていた市は、隣の牢に入っていた男が、俺は何のために一生懸命やって来たんだ…などと、横になってぼやいている声を聞く。

市に気づいたのか、起き上がった隣の男は、按摩さん、人1人助けるつもりで話を来てくれ。どうせお前さんは、明日、50か100叩かれてシャバに出るんだと話しかけて来る。

男は、片瀬の島蔵(水原浩一)と言い、出入りのほとぼりを冷ますためと親分の身替わりとして、半月前に銚子の宿を出て来たのだと言う。

それが、この下倉で捕まってみると、どうしたことか、強盗、火付け、罪もねえ人まで殺したことになっていたと言うのだ。

自分の身の証しを立ててくれる人間は2人おり、1人は黒馬の仙八、もう1人は銚子の荒磯の重兵衛だと言い、この2人の所に自分が捕まってお仕置きされていると知らせて欲しい、さらに、利根川縁に女房と子供もいるので、そいつらにも、俺がきっと返って来ると伝えてくれと頭を下げられる。

タイトル

夏の盛り、市は房総へ向かっていた。

青田の宿の道しるべに行き当たった市は、いつもこんなことを頼まれては危ない思いをする。止めようかな…、でも島蔵酸の言うことが正しかったら気の毒だな…などと迷い始め、人の命より自分の命…、やっぱり止めようと決めて歩き始める。

やがて宿場に着いた市は、的に矢を当てるたびに、1両ずつ加算され、10回連続で当てて10両までこぎ着けていた僧侶姿の百太郎(藤山寛美)が、次は20両だよと見せの女から勧められ、ここで止めとこうと言っているのを聞き、近づいて行くと、自分にやらせて下さいと申し出る。

眼が見えないお前さんが当たる訳ないじゃないかと百太郎は呆れるが、太鼓の位置を叩いて教えてもらえば何とかなるはずですと市はせがむ。

それでも百太郎は、お前さんが外したら、俺が今まで積み重ねて来た10両までふいになると言うので、それならその10両は私が差し上げましょうと言うと、巾着袋の中から10両を取り出し百太郎に渡す。

店の女が小さな的を叩いて場所を教えるが、それは振り子のように上から吊り下げられており、女は的を大きく振り始める。

しかし、市は、その動く小さな的のど真ん中に見事命中させてしまう。

次は30両の的と言うことになり、さらに的は小さくなるが又命中…、結局、市は50両の的まで射抜いてみせたので、横で観ていた百太郎は唖然としてしまう。

市は平然と、店を仕切っているヤクザの子分から50両を受け取ると、百太郎がこっそり取ろうとした1両にも手を差し出し受け取る。

店から離れた市に付いて来た百太郎は、どこまで行くのか?土浦だったら自分も一緒だ。このらには悪い奴がいるから金を預かっておいてやろうなどと市から離れまいとするが、気がつくと、今の店のヤクザたちが市を取り巻いていた。

しかし、市が瞬時に居合いで全員斬ると、最後に逃げようとした男が、座頭市だ!と叫ぶと倒れてしまったので、側で観ていた百太郎は唖然としてしまう。

翌日、旅を続けていた市に、百太郎はぴったり同行しながら、昨日の50両は、俺の10両まで積み立てた手間が元になっているのだから、儲けは山分けにしようじゃないか等、しつこく絡んでいた。

ところが、市が、道に落ちていた大きな石に蹴つまずくのではないかと観ていた百太郎は、市が何事もなく、その石を踏み越えてしまったので、首を傾げながら、自分もそこを歩いてみて、危うく自分の方が躓きそうになる。

それからしばらくして、2人は道ばたで休んでいると、3人組の浪人者が誰かを探しているように2人を観ながら通り抜けて行く。

その直後、百太郎は、自分たちが座っていた桑村のすぐ背後に、怪我をした商人風の男が身を潜めていたのに気づく。

訳を聞くと、今の3人の侍に追われているのは自分で、喜平(上坊泰三)と言うその男は、自分を大洗の宿まで連れて行って欲しい。今日の日の暮までに、商売用の手形を持って帰らないと店が潰れるのだと言う。

店の名を聞くと、廻漕問屋上総屋だと言うが、とてもその男の足ではたどり着けそうもなかった。

話を聞いていた百太郎は、それじゃあ自分が届けてやると言い出し、お前さんはこの按摩さんと馬でも駕篭でも止めて、後から来れば良いと言い出す。

喜んだその男は、手形を百太郎に渡し、百太郎は走り去って行く。

それまで黙って聞いていた市は、大洗か…、せっかく避けて来たのに、又逆戻りだ…とぼやく。

その後、男は駕篭に乗り、その駕篭に繋いだ紐を握って市も小走りで大洗へ向かう。

夕暮れ時、何とか上総屋の前までやって来ると、店の前で待っていた主人(南部彰三)や番頭たちが、駕篭の中の男を嬉しそうに出迎え、手形は届いたと言うではないか。

ところが、市の顔を見た主人は、礼は座頭市と言う人に渡したから、お前さんも分け前をもらいなと言ったきり、店の中に入ってしまう。

それを聞いた市は、人の名前を使いやがって…、金のためにここまで来た訳じゃねえが、茶の一杯くらい出してくれても良いのに…と汗だくのままぼやく。

翌日、市は腹を空かせて旅を続けていた。

通りの木に紐を引っ掛け、ブランコをしていた男の子が、腹が減っていると呟いた市の言葉を聞くと、それなら店に連れてってやろうか?駄賃がもらえるんだと声をかけて来る。

どこで食べたって同じだからな等と言いながら、子供に手を引かれてとある家にやって来た市だったが、そこはどう観ても飯屋ではなく、応対に出て来たのはヤクザだった。

市の前にやって来たヤクザは、いきなり3両出してくれと言い出したので、市はメシ代にしては高過ぎると驚くが、子供への駄賃が2分、今、この部屋まで連れて来た奴の手間賃が1両、この部屋代が1両などと言い始めたので、ぼったくりの店と気づいた市は、可愛い子供を使って、あっしの有り金全部巻き上げようとするんだね?と呟くと、部屋の中を飛んでいた蛾をまっ二つに斬り落としてみせる。

そして、3両欲しけりゃ、お前さんらの供養料にやろうか?とすごみを利かせ、どこの組のものか聞くと、黒馬の仙八一家のものだと言うではないか。

それを聞いた市は驚き、親分に会わせてくれと頼む。

座頭市が来たことを知った黒馬の仙八は驚き、俺の知らねえ所で、子分たちが飛んだことをしていたなどと詫びながら、酒を馳走する。

そんな仙八に、片瀬の島蔵を知っているかと市が聞くと、兄弟分だと言うので、今、郡代所の牢に入れられ、無実の罪でお仕置きを受けているので、身の証しをして欲しいと言っていたと教える。

それを聞いた仙八は、明日にでも下倉へ行くと言い、お前さん、銚子の方まで足を伸ばしてみないか?ちょうど祭りがあるし、荒磯の貸元と言うのがおり、盆ゴザも立つそうだ。俺も島蔵を連れ銚子へ行くかも知れんなどと言う。

市はすぐに家を出ようとするが、その時、市さん、開けておくれよ!お米(よね)よと言う女の呼び声が聞こえる。

市はいぶかりながらも、調子を合わせ、今、何をしてるんだい?と返事をすると、部屋から見知らぬ女が出て来て、縛られてるよと言うではないか。

それに気づいた仙八は、誰だ?こんなことをやったのは?仏の仙八の名がすたらぁなどと言いながら、知ってるのか?とお米に聞いて来る。

その後、そのお米を連れ外に出た市は、お前さんとはどこで会ったんだっけ?と聞いてみる。

するとお米は、一芝居打ったのさとしらっと答えるではないか。

そして、お前さん、本当に、仙八を良い親分と思っているのかい?などと聞いて来たので、そうじゃないんですか?と市がとぼけてみると、私はあんたに恩返しがしたいのよ。さっき、あんたと仙八の話をみんな聞いた。荒磯の重兵衛も一筋縄では行かないから…等と言い付いて来ようとするので、市はきっぱり付いて来なくて結構です!と言って追い払う。

その頃、仙八は子分から、このままあいつを行かしていいんですかい?と聞かれ、島蔵を知ったからにはこのままでは放っておけない。銚子に行く前に消すんだと命じる。

銚子の海に近づいた市は断崖から潮風の匂いを初めて嗅いで感激していた。

そばにいた女の子が、おじちゃん、海を見たことないの?と聞き、利根川より広いんだろうね。向こう岸は見えるかい?などと聞く市に、海の向こう岸なんてあるもんかい。ずっとずっと向うまで海だよと言って去って行く。

その後、茶店でスイカを市が食っていると、座頭市と言うメ○ラのくせに人を斬る按摩が、助っ人を頼まれた親分の所でさんざん飲み食いしたあげく、出入りの時に逃げ出したらしいなどと、ひでえメ○ラもいたもんだなどと店にいた2人の旅人2人(越川一、堀北幸夫)が話し合っているのを聞く。

主人に多めの金を渡し、釣りは良いよと断って、店を出る市は、わざと、今悪口を言っていた客にぶつかると、その足を踏んで、食べていた握り飯を地面に落とすと、慌てて、その握り飯を土にこすりつけて返しながら、食べなよと意地悪と言う。

それを観ていたお米が座頭市って悪い奴だねと笑いかけて来たので、その足の甲も踏みつけて、市は旅を続ける。

その頃、座頭市を騙るようになっていた百太郎は、木島の佐平次(島田竜三)の家の厄介になり、酒等馳走になっていた。

近々、出入りでもあるのかと聞いた偽座頭市は、助っ人料はいくらで?などといきなり金の話をし出す。

佐平次は、まだ出入りがあると決まった訳でもないしなどと呆れながらも、片手を広げてみせると、偽座頭市がその指を触って勘定し出したので、慌ててもう二本指を付け足すが、偽座頭市は、5、7両じゃ…、もう一声などと要求する。

同じ宿の飲み屋で安酒を飲んでいた市は、店の主人から、ここの貸元の家で太平楽なことをやっている座頭市とか言うメ○ラがいると聞く。

偽座頭市は、相変わらず、俺は口がおごっているので、酒や食い物も吟味したものじゃなくちゃとか、女も美人が良いなど好き放題のことを親分に要求していた。

そこに、按摩の笛が聞こえて来たので、按摩を呼んでくれとまで言い出す始末。

仕方なく、外を歩いていた市を呼び寄せた佐平次だったが、子分に、仙八の追っ手はまだ来ねえか?と聞く。

座敷では、すっかり上機嫌になっていた偽座頭一個と百太郎が横になって、やって来た市に気づかないまま、肩をもませ始める。

市が、左腕を揉んでいると、居合いをしていると腕が吊るねなどと言っていた百太郎だが、あまりに腕をつまむ按摩の力がきついので、思わず按摩の顔を見て市に気づくと、慌てて団扇を扇いでいた子分に水が欲しいと言って下がらせると、急に態度を替え、本物の市に謝る。

市はそんな百太郎に、黙って目をつぶりなと命じると、何事もないように、又、その肩を揉み始める。

佐平次の元に、黒馬の仙八たちが、用心棒を連れ、やって来たことに気づいたのだった。

市が百太郎の肩を揉んでいた座敷にいきなり入って来た用心棒と仙八の子分らだったが、あっという間に市の居合いに斬り殺される。

百太郎は、市さん…、ほなアホな…と呆然としながら、すっかり腰を抜かしていた。

翌日、2人は川を渡っていたが、その間も百太郎は、信濃路を出てから食い詰めて…と言い訳をしていた。

川の中に土下座をし、うちは銚子にあるので寄って行かないかなどと愛想を言って来た百太郎だったが、川下に立っていた市は、あんたやったね?水が暖かくなって来たなどと叱ると、お前さんはアホだ。人の名を騙って金や酒にありついているうちは良いが、夕べみてえに命を狙われたらどうすると言い聞かす。

そんな市に、百太郎は、一緒に行くと言いながら無理矢理付いて来るので、私は1人旅が好きなの!と言って市は先を急ぐ。

その頃、牢に入っていた島蔵は、銚子からも仙八からも何も来ないと役人から知らされて、俺は何もしてねえ!調べ直してくんなせい!と必死に冤罪を訴えていた。

夜、百太郎は市と同じ宿に泊まり、部屋の準備が整うまで、横の川に繋いであった小舟の中で時間を潰していた。

そんな百太郎に市は、あっしは人を説教できる立場じゃないが、人を騙して生きるのは止めた方が良いと言い聞かす。

百太郎は、俺、自分が時々分からんようになる。自分が適当に喋ったことがその内、本当に思えて来たりするんだと弁解すると、明日、一緒に銚子に行かへんか?と誘って来る。

そう言えば、祭りがあると言っていたな…と市が、仙八の言葉を思い出すと、百太郎は、黒磯一家の大貸しが俺の親爺だと言い出したので、市は驚き、じゃあ、片瀬の島蔵 って人は…と聞くと、俺の親爺のこと知っているのか?座頭市が知っているとすると大したもんだななどと百太郎は喜ぶ。

そこへ、宿の主人が部屋の用意ができたと知らせに来て、宿場役人のお改めがあると言うと、百太郎は慌てて、川の中に入り込むと、浅瀬を渡って逃げ出して行く。

部屋に向かいかけた市に話しかけて来たのは又しても付いて来ていたお米だった。

島蔵って人が、明日の朝、唐丸籠で付くとお米は教える。

その時、遠くで、追え!追え!と、役人たちの声が聞こえて来たので、何だろうとお米は不思議がるが、今言った島蔵さんの倅だ…と、今度は市は教える。

翌日、死罪と書かれた札を付けた唐丸籠が銚子に近づいていた。

そのことが書かれた高札を呼んだお米が市に教える。

銚子では、子分と外出していた荒磯の重兵衛(石山健二郎)が、雨が降り始めたので、子分に傘を取りに走らせ、自分は近くの苫屋で雨宿りをしようとするが、そこに先客がいたので、旅の按摩か?と聞き、後で揉みに来いと誘う。

そこにいたのは市で、親分と呼びかけて、子分が笠を持って来たので、それに入って帰りかけた重兵衛に、どちらへ行けば?と聞き、子分から重兵衛の名を知らされる。

家に戻って来た重兵衛は、上総屋の喜平から手形を奪えなかった3人の浪人たちに、あの手形さえ手に入っていれば、廻漕問屋の縄張りも俺にものになるはずだったと文句を言っていた。

仙八の話だと、座頭市と言うのが来るらしいので、今度はしっかりやって下さいよと言い聞かせると、座敷に来ていた仙八にも、お前さんも、座頭市をむざむざ取り逃がすこともからろうぜと嫌みを言う。

梶浦の縄張りをお前さんと2人で握ろうと思うが、楯突く島蔵が邪魔だ。だけど、奴は賭場の旦那衆にも妙に人気があるので、このままでは俺の縄張りまで取られてしまう。そこで、奴を、飛んでもねえ凶状持ちと言うことにしたのだが、それに気づいたらしい市は、お前さんにきちんと始末を付けてもらおうと重兵衛は有無を言わさず仙八に迫る。

さらに、この利根縁に、島蔵の女房と子供がいるので、市を誘う罠になるとも入れ知恵する。

その頃、島蔵の妻で病身のおその(村瀬幸子)は、亭主が捕まってお咎めを受けると知り、今まで隠していた娘のお千代を責めながら、無理して起き上がると、娘の制止を振り切って重兵衛の所へ相談に行こうとしていた。

そこにやって来たのが、仙八と、重兵衛の子分たちで、親分が話があると言っていると言うと、無理矢理、おそのを連れて行こうとする。

そこへ声をかけて来たのは市だった。

そこにいなさるのは、島蔵さんのおかみさんですか?と聞きながら近づいて来た市は、明日の朝になったら、きっとご主人は無事に帰って来ますよと伝える。

あなたは?と戸惑うおそのに、つまらねえ所で一緒になったもので…と言いながら、その場にいた子分たちを一瞬にして斬り殺してしまうと、1人残した仙八の前に刃を突きつけ、てめえには案内してもらい手え所があるんだと迫る。

家の中で、酌をさせていた女に下がらせ、手酌で酒を飲み始めていた重兵衛は、障子の裏から仙八の声を聞くと、何をしている?入んねえと勧める。

すると、入って来たのは仙八だけではなく市もいると知り驚く。

市は、昼間、揉みに来いと言われたので来ました。肩を捕まらせてもらう前に、ちょっとお願いがあります。罪のない島蔵さん咎人に仕立てる話、今、仙八さんから聞きました。片瀬の島蔵さんに罠をかけたこの話を一札書いて下さいと迫る。

何を!と重兵衛がいきり立つと、書けねえとおっしゃるんですかい?と言いながら、市が仙八をその場で叩き斬ると、肝をつぶした重兵衛は書くよと言い出す。

そうしてもらえれば島蔵さんも助かりますし、お前さんもね…と言いながら重兵衛に迫った市は、だけど、座頭市を殺せなんて書かないで下さいよと頼むが、その時、入って来たお米が、私が見届けてやるよ。こいつには骨の髄までしゃぶられ、あげくの果てに仙八の家にやられたんだと言う。

市は、そんなお米に、一札の中味を確認させることにし、子分衆なんか呼ばずに書いておくんなさいよと重兵衛に笑いかける。

その後、子分衆や用心棒を集めた重兵衛は、座頭市を行かして代官所と押すんじゃねえ!どうやっても彼が書いた一札を取り戻すんだ!と命じていた。

朝もやの中、市は港の石畳を降りていた。

その時、突然、銛が数本飛んで来たので、市は、刺さったその柄を斬ると、あたしゃ、斬りたくないんだ。道を開けておくんなさいなと浜に集まった子分や用心棒たちに呼びかける。

浜に降りて来た市は、子分たちに囲まれながら足を進めていたが、やがて、足下に落とし穴が掘られていることに気づくと後戻りする。

そんな市が、砂浜に置かれていた網に足を取られると、もやい綱で首を引っかけられ引きずられる。

しかし、居合いで綱を斬った市は、次々と子分たちを斬り倒して行く。

そんな市を、集まった用心棒たちはじっと観ながら側ににじり寄っていた。

10人ほども集まった浪人たちを次々に斬っていた市だったが、側に立ててあった網が頭上に倒れかけて来てかぶさってしまう。

そこに浪人たちは斬り込んで来るが、市は網の中から周囲の浪人を斬ると同時に網も斬り裂いていた。

頭にかぶさった網を取り除いた市は、斬った相手の剣も奪い取ると、二刀流の構えになり、残りの浪人たちを全員倒して行く。

そんな市を火縄銃で狙っていた重兵衛だったが、気配に気づいた市は、奪った刀をその重兵衛の胸に投げて突き刺す。

浜で全員死に絶えると、市さん!と叫びながらお米が駆け寄って来る。

そんなお米に市は、すまないけどこれを代官所に届けてくれ。お前さんがあたしの恩を返したかったら頼むよと言いながら、重兵衛に書かせた一札を手渡す。

それを受け取ったお米が、心配そうに、お前さんは?と聞くので、市はここで待っているよと答えるが、お米が去って行くと、すぐにその場を離れ、海岸の方へ向かう。

その時、近くでもめるような声が聞こえたので様子を聞くと、どうやら、百太郎が役人に捕まった所らしかった。

百太郎は、わいが足抜けしたこと分かったんか?などと抵抗していたが、役人は別件で捕まえたようだった。

百太郎が連れて行かれるのを聞いていた市だったが、それには無関心そうに1人砂浜に腰掛けて、海の音を聞く。

やがて、立ち上がった市は、どこまでも続く砂浜を歩いて行くのだった。