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新・兵隊やくざ

シリーズ第3弾

大宮と有田が軍隊の中でしごかれると言うパターンは踏襲されているものの、それだけではなく、大宮と有田コンビが外に出て新しい商売を始め、とうとう結婚式まで揚げてしまうと言う予想外の展開になっている。

瑳峨三智子演じる桃子と大宮の夫婦関係が、この作品だけの一時的な設定なのか、この後のシリーズでも絡んで来るものなのか、この時点では何とも言えない。

軍隊生活の中だけの話から離れて来ている部分もあり、今後の展開にも目を離せないが、かなりユーモア要素が増しており、軍隊批判などと言ったメッセージ性よりも娯楽色に重点を置かれているように見える。

もはや完全に、荒唐無稽なバディアクションものと言うべきかも知れない。

大宮と有田の関係も夫婦の仲以上のものとして描かれており、バディものとしてはますます強固になりつつも、男同士の友情と言うには、あまりにも互いに依存しあう奇妙な関係になりつつあるようにも見えてしまう。

その辺の奇妙さも、この作品の面白さであることは間違いないのだが…

ちなみに、最初の第3部隊で、練兵休を取った大宮相手にビンタを振る舞った木崎軍曹を演じているのは、「大魔神」の中味としても有名な橋本力で、「ドラゴン 怒りの鉄拳」(1974)では、ブルース・リーと戦った日本刀を持つボス鈴木である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、有馬頼義原作、舟橋和郎脚本、田中徳三監督作品。

私と大宮は、再び軍隊からの脱出を計った(と4242部隊からトラックで脱出する前作のラストシーンをバックに有田の声)

タイトル

荒野を走っていたトラックは途中で停まってしまい、どうやらガソリン切れのようだったので、大宮一等兵(勝新太郎)と有田上等兵(田村高廣)は歩ける所まで歩いてみることにする。

有田上等兵は大宮に、さっきから同じ所を歩いていないか?と聞くが、大宮は、大丈夫ですよ中国は広いですからなどと返事をする。

その時、彼らに向かって銃撃して来る者がおり、観ると、八路軍だと分かったので、2人は慌てて走り出すと、近くで見つけた廃墟に入り込む。

そこには、古代の人形が置いてあった。

八路軍も一部がその屋敷の中に入って来るが、そこには人形が床に倒れており、人形が2体立っていた。

その人形は、実は大宮と有田が人形が着ていた衣装をはいで自分たちが人形に化けていたのだが、八路軍はそれに気づく前に背後からさらに銃撃音が聞こえて来る。

観ると、それは日本軍だった。

両者の銃撃戦が始まるが、その時、屋敷の中で応戦していた八路軍の兵士の1人が、大宮たちに気づくが、大宮が急に暴れ出し、屋敷が少し崩壊し出したので、慌てて八路軍は外に逃げ出して行く。

その後外に出た有田と大宮を見つけた日本軍の鬼頭中尉(北城寿太郎)は、貴様たちは日本兵か?と聞いて来る。

有田は機転を利かせ、斥候に出ていたのだが、本体とはぐれてしまい…と説明すると、どこの部隊か?と聞かれたので、4242部隊と聞いた隊長は、その部隊ならもう前線に移動した。貴様らのその格好はどうした?と言うので、途中で八路にも捕まって…などと説明する。

お前たちのようなクズはどうせ役に立たんだろうが、俺の中隊に編入してやると中隊長が言うので、2人は仕方なく、中隊の後に付いて行くことにする。

大宮は、上等兵殿、我々はよっぽど軍に縁があるみたいですねと話しかけると、有田は、憲兵たちの目をごまかすには軍隊に入っとる方が良いと教える。

しかし、2人は編集した部隊は、ハヤブサの異名を持った鬼部隊で、討伐のないときは猛烈な訓練が続いた。上官たちは何かに取り憑かれたように兵隊を鍛えた。

ある日、起床の号令がかかっても、大宮が起きようとしないので、有田が起こそうとすると、バカバカしいから寝ています。早々しごかれてたまるかって言うんです。当分は練兵休ですよなどと言うので、有田も付き合うことにする。

すると、木崎軍曹(橋本力)が、何故寝取ると聞きに来たので、有田は、腹が痛み盲腸らしいと答え、こいつは?と大宮の方を聞くと、大宮は急に、アバ〜!バ〜バ〜などと意味不明なことを言いだしたので、こいつは頭に来たようです。夕べからおかしくなりましたと説明する。

すると、良し寝取れと言って木崎軍曹が出て行ったので、タバコを吸いながら、そろそろ酒と女が恋しくなりましたねなどと大宮は有田に話しかけていたが、そこへ、部隊の兵隊たちを引き連れて木崎軍曹が戻って来ると、2人を正座させ、貴様ら、たるんどるから病気などになるんだ。俺が治療してやる。荒療治だが良く利くぞと言うと、大宮に歯を食いしばれ!と命じる。

大宮が、わざとらしく歯を食いしばると、木崎軍曹は殴りつけるが、自分の手の方が痛かったので、1人ずつ、兵隊たちに殴らせる。

しかし、殴った方がダメージを受けてしまい、途中で怒り出した大宮が、兵隊たちや木崎軍曹相手に大暴れし出してしまう。

その後、第3分隊全員が練兵休と言う前代未聞の事態になるが、実際動けるのは、有田と大宮の2人しかしないと言う有様だった。

大宮は、のんきに1人で風呂に入りに行く。

兵隊たちが全員負傷して寝込んでいる部隊があると言うので憲兵(夏木章)がやって来ると、精神に異常を来した者が暴れてと言うので、そいつの名前は?と聞くと大宮一等兵だと付き添いの兵隊が言う。

有田は、急いで、腹痛なので厠に行くと言って出て行く。

大宮貴三郎と言う奴ではないか?そいつには有田と言う上等兵が一緒にいるはずだと憲兵が聞くと、それなら今厠に言った男ですと兵隊が教えたので、憲兵は何〜!と言い出す。

風呂場に来た有田は、湯船に浸かっていた大宮に、憲兵が来たから逃げるんだと声をかけ、服を着ようとした大宮にそんな暇はないとそのまま裏口から外へと連れ出す。

その直後、入浴場にやって来た憲兵は、大宮のふんどしまで残されている事を知ると、裸か?と呟く。

実際、素っ裸の大宮と有田は、外を逃げていた。

そんな2人が出会ったのは、中国人の農夫2人、やがて、大宮と有田は中国人の服を着込んでおり、中国人2人は素っ裸にされて逃げ出していったので、大宮が、風邪ひくなよ!と声をかけてやる。

その後、2人は貨車に忍び込んで天津へ向かった。

無一文の2人は食うものにも事欠き、大宮は露天商の食い物を盗もうとして店の女に叱られたりする。

上等兵殿と大宮が呼びかけると、もうその呼び方は止めろと有田が言うので、じゃあ何と呼んだら良いんです?と聞くと、有田さんかな?などと言うので、大宮は、それじゃ大将ではどうです?とまとめる。

金作りましょうよと言いながら、大宮が人差し指を鍵型に曲げてみせたので、盗むのか?どうやって?と有田は驚くが、あそこですよと大宮の指差したのは、日本の貨物省の倉庫だった。

あそこなら物資は有り余るほどあるでしょうからと大宮は言うが、有田は、衛兵もおるぞと有田は危惧する。

しかし、見張りをしていた衛兵を遠目で観察した大宮は、あいつに渡り付けませんか?こんな所にいる奴でろくな奴いないでしょう?と有田に聞く。

見張りに近づいて日本語で話しかけると、その見張り役は、大阪出身の豊後(藤岡琢也)と名乗り、人なつこそうな奴だった。

大宮が煙草をくれとねだると、仕方なさそうに渡してやりながら、何かおもろい話ないか?などと聞いて来る。

軍隊にはどのくらいいるのかと大宮が聞くと、4年半もいて一等兵だと言うので、上官に睨まれましたかね?などと交わし、折り入って頼みたいことがあると切り出した大宮だったが、そこに高倉小尉(村上不二夫)が近づいて来たので、自分たちは芸人で浪花節語りをやっていると大宮はごまかす。

有田の方は、三味線引きだったが、三味線を盗まれたので…と説明すると、それを真に受けた高倉小尉は、2人を隊長に紹介してやると言い出す。

部隊の中に入り込んだ有田は、大宮に銃を隠せと耳打ちし、大宮は歩きながら、銃をふんどしの中に移動させる。

堀内大尉(見明凡太朗)は、部屋に連れて来られた2人の身体検査を命じるが、大宮の股間を触った高倉小尉は、何だこれは?と問いかけ、大宮がそらっとぼけていると、立派だな…と感心する。

結局、大宮の浪花節は堀内大尉の気に入る所となり、2人は祝儀の酒などもらって、控え室で嬉しそうに飲んでいた。

そこに豊後もやって来て、自分は元64部隊にいたが、ここに志願してやって来た。討伐に行かんですむしな…などと打ち明け、ここの将校たちは全員倉庫の品物を横流しして儲けているなどと話し始める。

夏場でもマントを着込んで、その中に品物を隠して外に持ち出すのはまだいい方で、中には、トラックに荷物を満載して堂々と外に持ち出すものまでいると言う。

それを聞いていた大宮は、少しくらい運び出しても分からんでしょうなと興味ある風を装うが、豊後は突然、あんたらほんまは浪花節語りやないやろ?兵隊やろ?脱走兵か?兵隊は匂いで分かるんや。一丁乗らないか?儲けは山分けやと言って来たので、大宮は喜んで酒を飲ます。

夜、見張りの豊後が倉庫の鍵を外し、大宮と有田を呼び込むと、2人は中から砂糖の袋をリヤカーに運び込み始めるが、途中で、見回りに来た高倉小尉に見つかってしまう。

すぐに羽交い締めに始終を突きつけた大宮は、騒ぐなこのやろう!と脅し、有田は冷静に、見逃すと言えば分け前をやると伝える。

大宮の方が、楽にしますか?と有田に聞くと、高倉小尉は許すと言う。

有田は、分け前は、明日の午後、取りに来いと言って高倉を去らせる。

大丈夫ですかね?と案ずる大宮だったが、あいつは分け前を欲しいに決まっとると有田は断言する。

翌日、持ち出した砂糖を金に替えた2人だったが、盗みは今度だけにしとこうと言う有田に対し、後3回くらいやりましょうと大宮は言う。

そこに、約束通り高倉小尉が来たので、少し色をつけた分け前を渡すが、高倉は、これでは少ない、この10倍は欲しいなどと言い出し、銃を突きつけて来ると、外には部下を待たせてあるんだと言って脅して来る。

堀内大尉の所に連れて行かれた2人は、先に捕まっていた豊後が殴られており、貴重な軍用物資を盗んだ罪は重い、憲兵隊に突き出す!と堀内から威嚇されるが、憲兵隊に突き出すなら、こちらも、ここの部隊の将校たちが全員、貴重な軍用物資を持ち出す常習者であることをぶちまけてやると有田が逆に脅す。

それまで黙っていた大宮も高倉を殴りつけると、堀内は、面倒なことは好まん。今回のことは黙っておいてやる、軍人に二言はない。その代わり、すぐ出て行ってくれと2人に命じる。

ところが、大宮と有田は部屋を出て行くと、堀内は高倉に、軍隊の怖さを教えてやれ!と命じたので、高倉が2人の後を追おうと入口に来ると、帰ったはずの大宮が戻って来て、高倉を殴り飛ばし、銃を突きつけながら、こんなことだろうと思った。何が軍人に二言はないだ!二言も三言も言えないようにしてやる!と言うと、堀内も叩きのめす。

部隊を後にして町中に出た大宮は、大将、久しぶりに行きましょうよと有田に頼む。

2人は、妓楼「竜宮」と言う店で、桃子(瑳峨三智子)朱実(真城千都世)よし子(紺野ユカ)花子(田中三津子)紅子(緋桜陽子)ら芸者を総動員してドンチャン騒ぎをする。

しかし、有田は、途中で止めろ!泣きたくなる!俺は泣き上戸だ!などと言い出す。

俺たち兵隊も芸者たちも、皆、哀れな立場だなどと言うので、大宮は、大将、考え過ぎだよと慰めながらも、一応その場はお開きにすると言い出し、あんまり飲み過ぎるとダメになるからなどと言う。

同じ「竜宮」には、中国人に化けた山本憲兵隊(神田隆)と青柳憲兵伍長(成田三樹夫)がやって来て、主人の根上(遠藤太津朗)に、桃子を指名していた。

大宮は、その桃子に抱きつこうとしていたが、そこに、婆あ(町田博子)がやって来て、憲兵隊のお偉いさんが来たと桃子を連れて行ったので、大宮たちが不満そうにしていると、顔を出した根上が、お慰みに面白い所へ案内しましょうと言う。

大宮と有田が案内されたのは、中国人がやっている賭博場だったので、博打なら任せといて下さいと張り切った大宮が参加すると、最初は面白いように勝ち進んだものの、途中から全く当たらなくなり、とうとう根上が金を回しましょうか?と言う誘いに乗ってしまうし、持っていた拳銃まで賭けて全部失ってしまう。

翌朝、夕べの酒代、花代、自分が貸した金をどうしてくれるのか?と根上から迫られた有田は、ここで働いて返すしかないだろうと申し出、大宮もふてくされながらも受け入れざるを得なかった。

結局、1日30銭と言う安さでこき使われる羽目になる。

大宮が洗濯をしていると、桃子が近づいて来て、自分は、上海、北京、天津と流れ歩いて来た。最初は金をためたら内地に帰ろうなんて思っていたけど、たまって行くのは借金ばかり、もう考えないことにしているのなどと打ち明け、ここの親爺が連れて行く博打はイカサマよなどと教えたので、騙されたと知った大宮は怒り出し、洗濯の仕事ぶりが悪いと文句を言いに来た婆あに洗濯物を頭からかぶせてしまう。

大宮と有田は、芸者たちとわびしい食事を一緒に取ることになるが、芸者たちも、客を10人以上取らないと1食抜かれてしまうのだと教える。

そんな話を聞いていた大宮は、我慢できん。暴れたいな…と呟くと、憲兵とつるんでいる根上の奴の鼻を明かしたいなと有田も言い出し、何かやりませんか?と頭をひねった大宮は、この連中を足抜けさせ、夜逃げしませんか?と言い出す。

その夜、芸者たちを裏の塀から外に押し出し、何とか外に逃げ出した大宮と有田は、一晩中歩き通した辺りで休憩を取ることにする。

日頃、歩き慣れない女たちが、ばて始めたからだった。

有田は芸者たちに、ここで解散する。後はみんなの自由だと言うが、それを聞いた桃子たちは、あんたたちを頼りにして来たんだから、こんな所で解散されても困る。だったら竜宮に帰ると言い出す。

困った有田は、大宮にどうする?と相談するが、大宮は、こいつら使ってピー屋(女郎屋)やりませんか?と言い出す。

それを聞いた有田は、俺はやらん。いくら何でもピー屋の主人などになるつもりはない。俺は別行動を取ると言い出す。

大宮は、何故ダメなんです?やれば面白い商売ですよと説得しようとするので、お前、やったことあるのか?と有田が聞くと、やったことないけど、面白そうじゃないですか?と嬉しそうに言う。

それでも有田が別行動を取ると言い張るので、大宮は女たちに、みんな、止めた!帰れ!大将がダメだって言ったらダメなんだからと、聞こえよがしに言うと、それを聞いていた有田が、負けたよ。みんなやろう!と決断する。

町中で、「いろは」と言うピー屋を始めた大宮たちだったが、すぐに兵隊たちがやって来て、その中には豊後も混じっていた。

しかし、大宮が買い出しで留守にしている間、根上たちがやって来て、こんな所で潜りのピー屋をやりやがって…と因縁をつけて来るが、来ると思ってた。お待ちしてましたよ。あんたはこの娘たちに借金があると言うのだろうが、そんなもんはとっくに返している。どこからもいちゃもんを付けられる覚えはないと言い張る有田を殴りつけると、店も破壊して帰る。

その後、帰って来た大宮は、店の様子を見て驚くと、倒れていた有田を助け起こして、根上たちだなと言うと仕返しに行きかけるが、それを止めた有田は、奴らはお前と一対一の勝負をしたいと言っていた。明日8時、64部隊倉庫の裏だと教えるが、奴らは拳銃を持っているぞ、大宮、止めてくれ、これは命令だ!と懇願する。

しかし、翌日、大宮はどこで手に入れたのか、新しいサラシを巻いて出かけて行ったので、有田も心配で後を付いて行った。

約束の場所に来て観ると、根上は1人ではなく、山本憲兵隊長を連れ、その素性を教えることなく、介添えだとうそぶくので、約束違うじゃねえかと大宮は立ち尽くすが、そこに有田も近づいて来ると、自分も介添えだと主張する。

すると、山本が急に銃を取り出し発砲したので、その腕を押さえ着ていたマントを剥ぐと下に軍服を着ていたので、大宮は相手が軍人だと気づく。

その時青柳憲兵伍長が近づいて来たので、根上と山本は逃げ出し、後に残った大宮は、今銃声がしたがと青柳から聞かれると、試し撃ちをしていただけですよと、山本から奪い取った銃を見せながらとぼける。

青柳は、やたらと銃など撃つなと注意しただけで立ち去るが、それを観ていた有田は、偶然にしてはおかしいな?最初からこういう筋書きだったんじゃなかったのかな?と怪しむ。

だがその後、竜宮から仕返しが来る訳でもなし、女たちも陽気に働いて、平穏な日々を過ごしていた。

有田と大宮がいる部屋に遊びに来ていた豊後は、ええ拾いもんしたなと、桃子が千人か1万人に1人くらいの奴だと褒めるので、それを聞いた大宮は好奇心をかき立てられる。

それに気づいた有田は、夜中、大宮の隣の布団の中から、お前、桃子に手を出す気か?桃子に手を出したら、他の女たちが承知しない。統率が取れなくなる。結婚するなら別だがな…と忠告する。

それを聞いた大宮は、大将は時々、学校の先生みたいだからな…としょげるが、一緒に暮らしていると、あの娘らはみんな身内みたいな気になり哀しくなる。兵隊は死んだら靖国に入るが、女たちは墓一つ作ってもらえない…などと有田は呟くが、大宮からの返事がないので、もう寝てしまったと思い込む。

ところが、大宮は寝てなどおらず、有田が寝入ったようなので、こっそり布団を出ると、桃子の部屋に夜ばいしに出かける。

寝ていた桃子は、部屋の中でうろうろしていた大宮に気づくと、どうせ来ると思っていたけど…と言いながら、はい前金と言いながら手を差し出す。

何言うてるんや。わしはお前を好きなのに…と大宮が呆れると、ダメ、ダメ、規則だから。私、お金もらえんと気分でないのよなどと言うので、大宮が諦めて帰りかけると、バカ!と言って引き止め、私もあんたが好き!と抱きついて来る。

その後、こっそり布団に戻って来て、すごいよ、あれ…、参ったなどと1人大宮が喜んで、桃子、おやすみなさいと言って寝返りを打つと、そこにはぱっちり目が開いた有田がいた。

翌日、事情を聞いた豊後は、それは結婚せなあかんわ。大将の言う通りや。他の女に示し付かんなどと言い、呼び寄せた桃子に、お前はどうだと有田が確認すると、女房にしてくれないんだったら、もうこれっきりよと大宮に迫る。

それを聞いた大宮は覚悟することになるが、結婚ってどうやるんや?と聞くと、牧師か神主を呼んで来て、永久に愛すると誓うんだと有田が説明する。

永久って…と大宮は躊躇するが、豊後が、内の部隊に上州と言う坊主がおり、仏式の結婚と言うのもあるはずやと言い出す。

部隊に戻って来た豊後から話を聞かされた上州一等兵(玉川良一)は、こういう所では鐘も木魚もないので…と断ろうとするが、豊後は、枕経でも読んでくれれば良いんだと強引に連れ出す。

かくして、上州が念仏を唱え、大宮と桃子の結婚式が執り行われることになる。

奇妙な結婚式だった。新婚夫婦が部屋に引き取ると、有田は急に孤独になった。

ところが、そんな有田の気持ちを見抜いていたのか、大宮が1人戻って来ると、上等兵殿が1人になっているのに…、これからもずっと上等兵殿と一緒に寝ますよなどと言い出す。

しかし有田は、俺とお前は全く異質の人間なんだ。別れた方が良いのではないかと思うと告げる。

しかし大宮は、上等兵殿が寂しくなった時は、自分も寂しくなってます。上等兵の世話はこれからも自分がします!と言い切ると、大将もこれもらったらどうです?と言いながら小指を立てる。

有田は苦笑しながら、女房なんて足てまといになるだけだと負け惜しみを言う。

そんな所にやって来たのは青柳憲兵伍長だった。

有田上等兵に大宮一等兵だな?と言って来たので、逮捕する気か?と有田が聞くと、これからお前らがやったことをじっくり調べる。大分、景気が良さそうだななどと青柳は言う。

こいつが結婚したんだと大宮を指差し、相手は桃子だと有田が教えると、竜宮にいた女だなと青柳は知っている様子。

黙って聞いていた大宮は、虫の好かん奴だな…と言いながら青柳を睨みつける。

青柳は、目下の所、貴様らを撃つ気はないととぼけていたが、そこに酔った豊後がやって来て、青柳やないか?何しに来たんだと声をかける。

憲兵は楽でええやろ?と嫌みを言うと、憲兵志願する奴なんてろくな奴おらんわと吐き捨てる。

青柳が帰りかけると、俺、あのこと知ってるんやどと豊後は呟く。

豊後は青柳が去った後、あいつは兵隊1人と女1人を殺しとるんやと有田と大宮に教える。

その後、上州と共に「いろは」を後にした豊後は、ちょっと酒を買って帰ると言って1人暗闇の中に歩いて行くが、次の瞬間、銃声が轟き、上州が、豊後さんが撃たれた!と叫びながら店に戻って来る。

豊後は戦死者として葬られたが、有田たちは、軍隊とは別に、ささやかなお別れ会を開くことにする。

そのとき、なぜか青柳も来た。

大宮は焼香するとき、俺、あのこと知っているんやど!…などと、元気なことを言っていたが…と、青柳の面前で嫌みを言う。

青柳は有田を外に呼び出すと、お前たちの調べは大隊付いた。終わったら裏に来い。待ってると告げ、立ち去る。

そこに大宮が近づいて来て、何だったんです?と聞くので、帰ったよと有田が言うと、あいつが豊後さんを撃ったのは間違いない。これじゃ豊後さんは浮かばれないと悔しがる。

しかし有田は、俺たちは奴が犯人だと言う確信を掴んどらんが、奴は俺たちの証拠を握っている。それに奴は拳銃の名手だ。俺は俺なりの方法でやると言って大宮を帰そうとするが、大将の後ろには俺がいなくちゃいけないんだ!と大宮が迫って来たので、思わずビンタした有田は、大宮、貴様には女房がいる。後のことを考えろ!と叱りつける。

気がつくと、声を聞いたのか、桃子が姿を見せており、大宮が近づくと、嬉しいわ、私のために…、でもどうせ行くんでしょう?良いの、私のことなんか、さ、行ってらっしゃいと言ってくれたので、思わず大宮は桃子を抱きしめてやる。

その後、1人で裏にやって来た有田に、待っていた青柳は、お前たちは、脱走3度、貨物省の荷物の横流し…などと罪状を並べ、お前、捕まりたいのか?お前らしょっぴいても、大した点数にならん。貴様、情報を売って欲しいなら、売ってやっても良いぞ。1人5千、2人で1万だと金の要求をして来る。

そんな金は持ってないと有田が言うと、持ってなければ作れば良いじゃないかと青柳は迫る。

そこに、銃を持った大宮が近づいて来るが、あっという間に青柳の発砲で銃を弾き飛ばされてしまい、有田と共に手錠をかけられ、2人は憲兵隊に連行される。

憲兵隊では、山本憲兵隊長がにやりと笑って観ている中、憲兵隊の制裁を教えてやると言われ、噂以上の拷問を2人は受ける。

 

このままでは、自分だけではなく、大宮の命も危ないと考えた有田は、隊長とさしで話したいと申し出る。

山本憲兵隊長以外の憲兵たちは部屋の外に出たので、俺たちを虐めるのももう満足しただろう。そろそろ釈放しないか?俺たちは逃亡以外は大したことをしていないのだから、捕まえても大した点数にもならん。今すぐ釈放した方が貴様のためになる。もし俺たちを軍法会議に回したら、貴様らがピー屋の「竜宮」で賭博やアヘンをやっとるのを全部ばらしてやると有田は伝えるが、そんなことでびくつく俺か!と山本は逆上する。

有田はさらに、貴様の部下の青柳は、女と兵隊を殺している。責任はお前にもあるぞと続けると、お前の言いたいのはそれだけか?憲兵の力を見せてやると返した山本は、青柳憲兵伍長を呼ぶと、今夜こいつらを釈放しろと命じる。

牢に戻された2人と部屋に残った青柳は、お前らも大分アホだな。俺と取引していれば死なずにすんだんだと笑いかけて来る。

殺されると悟った有田だったが、どうせお前らは、軍法会議でも死刑なんだ。憲兵隊はその手間を省いてやるんだと言いながら、大宮の手錠を外そうと牢の中に手を入れて来る。

その青柳の両手をがっちり掴んだ大宮は、鉄柵を利用し、腕をへし折ると、青柳のポケットから牢の鍵を抜き取り外に出る。

そして、徹底的に青柳を痛めつけると、有田と自分の手錠を外し、青柳の日本刀と銃を奪うと隊長室へ向かう。

拳銃を突きつけながら、室内にいた憲兵たちに銃を出させると、それを有田が奪い取り、大宮は、憲兵隊の制裁を教えてやると言ったな?今度は大宮貴三郎の制裁を教えてやる!と言うと、憲兵1人ずつ前に出し、こてんぱんに殴りつける。

山本隊長は、隙を観て、部屋にあった手榴弾を握ると威嚇して来るが、それを知った大宮は、オクすることなく山本に近づき、ぶっ飛ばしてみろ!と睨みつけながら、自分もその場にあった手榴弾を自分のジャンパーのポケットにねじ込む。

そして、大将!と叫ぶと有田と共に部屋を飛び出すと、手榴弾の1個を部屋の中に放り込む。

憲兵たちも慌てて建物から脱出した瞬間、大爆発が起きる。

あいつらを捕まえてくれ!と憲兵が応援を頼むと、大宮は又手榴弾を投げ、憲兵たちを混乱させる一方、広場に置いてあったサイドカーを見つけると、それに乗り込んで逃げ出す。

憲兵たちは発砲して来るが、その間をぬいながら、入口の側まで来た大宮は、最後の手榴弾を入口横のってものに投げ込み、爆発した破片で入口を防ぐと、そのまま山間部へ逃走する。

又やったな、大宮!お前って奴は…と有田が笑いかけると、これからどこへぶっ飛ばすか…と呟いた大宮は、サイドカーをすっ飛ばすのだった。