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唐澤俊一編著「ガメラを創った男 評伝 映画監督・湯浅憲明」によると、大映はこの次の作品の途中で倒産したらしいので、これが実質的に大映最後の作品になるらしい。

この作品、山形の鶴岡とのタイアップで大映は1銭も金を出してないらしく、山形県議会の「商業映画製作委員会」の積立金から650万くらい出してもらってロケに行ったらしい。

山形県は、今でも庄内地方に映画村があるし、映画のロケ誘致なども盛んな土地で、「おくりびと」や時代劇も近年ここで撮られており、すでにこの当時から、そう言う製作委員会的なものが存在していたと言う事は驚きだ。

バスは庄内交通とタイアップで、エキストラは観光課の人たちなので、高校生役の中に白髪の人がいたりするらしい。

湯浅監督は、高橋氏の脚本を読んだ途端、20年前に戻ったようなホンですねと口走ってしまったので、高橋さんが激怒されたらしい。

すでに、会社が倒産すると言う噂があったので、契約者連合会の人たちが、賃金闘争に利用しようと、会社が金を払うまで音楽ダビングを拒否しろと言って来たらしいが、湯浅監督はそれを拒否して、音楽費35万だかを会社が何とか工面して音を入れ、何とか、地元鶴岡大映での上映にこぎ着けたらしい。

そこで、製作費の残金100万くらいをを鶴岡市役所で受け取って、会社の経理に渡したら、湯浅監督には、金を取りに行った手間賃か何かのつもりか3500円払ってくれたと言う。

そこに、永田社長が、女子社員に支えられながらやって来て、「出来たかぁ、出来たかぁ」と泣いたと言うから、経営的には最後の最後と言った状況だったのだろう。

ただしこの作品、もう配給などはちゃんとされたのかどうかも怪しく、どのくらいの人が映画館で観たかと言う事は定かではないらしい。

確かに、全編、地元の風景や祭りが登場し、まさしくPR映画になっており、ドラマの方は、そんなに潤沢な予算があった訳でもないだろうから、地味と言えば地味な内容で、地方の純朴な青年と娘の純愛物語を軸に、地元の農業問題なども絡めたまじめなドラマになっている。

当時新人だった関根恵子(=高橋惠子)と篠田三郎が初々しいし、その関根恵子の許嫁役で出ている菅野直行と言う人が、ダウンタウンの浜ちゃんそっくりなのが見物でもある。

いかにもまじめな好青年に見える篠田三郎と、清純そうな関根恵子のラブストーリーはともかく、ライバル校の写真部同士が不良みたいにバイクで互いに煽りあったり、ラストで、桂先生がいきなり辞表を提出し、東京へ去って行くと言う等と言った強引な展開などは、ちょっと違和感がないでもない。

脚本の高橋二三氏は、「おヤエの初恋先生」(1959)などですでに、教師がラストで他校へ転勤して行き、生徒たちがそれを見送る…と言うお涙パターンを書いているので、又、その手の落ちに持って行きたかっただけかもしれないが、どう考えても、乱闘騒ぎに桂先生は関係ないと思うし、それをあっさり受理する校長の態度もおかしい。

無理矢理、先生との別れと言う展開に持って行っているとしか思えない。

悪役としてのミキの行動も、不自然と言えば不自然で、好きになった正夫から偶然とは言え抱かれているのだから、その時点でそれを正夫に打ち明け、自分は正夫を好きだと言う事も伝えていれば自分は優位に立てるはずで、何故わざわざゆう子を貶めるような面倒な事をしているのか良く分からない。

まあ、この手の学園ものでは良くある騒動と言ってしまえばそれまでだが…

伴淳と言うベテランがしっかり脇を固めてはいるが、当時の新人2人が主役では興行性は弱かっただろうと思われるが、あくまでも地元PR映画としては、それなりにまとまった作品になっているのではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1971年、大映、高橋二三脚本、湯浅憲明監督作品。

「厳嶋神社」の幟の下に来た加納ゆう子(高橋惠子)は、うわ~!やってる、やってる!と嬉しそうに叫ぶと、祭りの場所まで海辺を駈けて行く。

タイトル

ここ、山形県庄内平野の一角、鼠ケ関は、その昔、源義経が日本海から上陸したと伝えられている。

そして、この鼠ケ関の神輿流しには古くからの1つの言い伝えがある。それは、神輿を担いで海に入る男たちの濡れた身体は、将来を誓い合った娘以外は拭いてはならない。万一、拭いた娘と拭かれた若者が結婚しないと、龍神の祟りで、2人とも必ず不幸な目に会う。

この伝説は、この町の老人の間では、今も堅く信じられている。

日本海の荒波の上で一生を送る漁師たちにとって、龍神様の祟りは、生と死に密着しているのである。(…とキャストロールが流れる中、ナレーションが重なる)

そんな祭りをやっている近くにバイクで乗り付けた集団がいた。

リーダー格の田辺茂(小野川公三郎)は、反対方向からやって来た別のバイクグループを観て、水産高の写真部だと睨みつけ、クラクションを鳴らして煽り出すと、水産校の写真部の方も、リーダーの熊井修作 (五島宏)が農業高の写真部の連中と気づき、クラクションで応ずる。

そんな騒ぎを聞きつけて、止めに来たのは、先ほどから一升瓶を持って酒をくらい、酔っていた地元の漁師笹尾吾助(伴淳三郎)だった。

バカたれ!畜生!こら!年に一度のめでてえ祭りをなんだと思ってやがるんだ!ばかやろう!と管を巻いたので、田辺等はしらけて、その場を立ち去って行く。

祭りの写真を撮っていた加納ゆう子は、写真部の部長で園芸科教師桂先生(早川保)も、写真を撮りに来ていたのとかち合う。

バスでは、車掌(桜京美)が、発車時間なのに、なかなかバスに近づこうとしない老婆(松村若代)に声をかけせかしていたが、その夫の老人(木田三千雄)は、あいつは耳が遠いので、何か語りかけると、何を言っているのか貴公としてその場に立ち止まってしまうので、ますます動かないと注意する。

そんなバスに乗っていた水産高校女子空手部の女学生たちは、神輿流しに遅れちゃうじゃないの!と焦るが、若者の背中を拭きに行くのか?わしなんか、あの婆さんの背中を拭いたばかりに、50年の不作じゃと老人が冗談を言って笑わせる。

そんな中、ようやく老婆が乗り込みバスは出発する。

ゆう子は、海から上がって来た神輿の担ぎ手の青年笹尾隆二(篠田三郎)が1人、誰からも拭いてもらえず、自分で身体を拭いていたので、その様子を写真に収めていたが、俺にもガールフレンドなどたくさんいる!と空威張りする隆二のやせ我慢につい同情心が湧き、そのガールフレンドに成り代わり、私が拭いてあげると声をかけ、汗を拭き始める。

隆二は、伝説の事、覚えているか?と確認するが、今頃あんな物…とゆう子はあざ笑う。

その時、ようやく祭りに到着した女子空手部の3人娘は、すでに目当ての隆二の身体を拭いている女子を見つけ、がっくりする。

一方、写真を撮り終えて一服していた桂先生に声をかけて来たのは、地元の芸者浜奴(赤座美代子)だったが、実は彼女は、桂先生の教え子中島だったので、桂先生は喜ぶ。

そんな2人を見つけた田辺たちは、冷やかし半分で2人を写真に収める。

バイクで自宅に戻って来た隆二に、背中拭かせた娘はどこのだ?と、先に帰って来ていた父親の吾助から聞かれるが、知らねえと答えると、急に怒り出し、亡くなった隆二と兄の写真を持ち出し、3年前、兄さんが死んだのは、背中ふ化した女との縁談を断ったからだ!と言い聞かせる。

しかし、隆二は、あれは、時化の海でエンジンが故障しただけだと言い返すが、それすなわち、龍神様の祟りだ!と吾作は言い張るのだった。

娘の正体を知りたい吾作は、そのまま又祭りの場所へ戻って来るが、それを見かけたかき氷を食べていた浜奴に呼び止められる。

顔が広い浜奴に、さっき隆二の背中を拭いていた娘を知らないか?と尋ねた吾作だったが、その娘なら観ていたが、知らないと言うので落胆するが、一緒にかき氷を食べていた芸者の千鳥(深沢裕子)が、あの子なら、姉さんの後輩に当たる農業高校の加納ゆう子と言う同じ地域に住む仲良しだと教えたので、喜んだ吾作は、その場にいた芸者衆に、かき氷をおごってやることにする。

ところが、あのゆう子を嫁にするのは無理で、親が決めた許嫁がいるのだと千鳥が言い出したので、その相手を聞くと、鶴岡高校3年の坂井正夫だと言う。

その頃、当の坂井正夫(菅野直行)は、ボウリング場で女子たちと遊んでいたが、許嫁が既に決まっていると言う事は皆に知れ渡っているので、本気で正夫に言い寄って来る相手はおらず、それが正夫を欲求不満にしていた。

そんな正夫にコークを手渡し声をかけて来たのは、農業高校のゆう子の同級生だと言う小谷ミキ(八並映子)だった。

正夫は、親が勝手に許嫁なんて決めたばかりに、他の女がさっぱり寄り付かないとぼやいてみせる。

ゆう子が自宅に帰って来ると、正夫がバイクでやって来て、ゆう子を外に呼び出したので、一緒に行くって言って…、人に待ちぼうけさせて…、どこで何してたの?とゆう子は文句を言う。

すると、すまん、すまんなどと言いながら、お詫びの印に…などと言いながら、いきなりキスをしようとするので、はねつけたゆう子は、そんな事は嫁に行くまでは絶対嫌!と拒否する。

すると、正夫は、どうせ俺のことが嫌いなんだろう?などとすねるので、こんな事は、お互い愛情が一致して求めあった時に…などとゆう子は困ったように言うので、俺は今求めているんだと言って再び迫ろうとするが、逃げられてしまったので、正夫は、一方通行か…とがっかりする。

庄内平野は日本一美味しいササニシキと言われる庄内米の故郷です。それを一握り入れてご飯を焚くと味が良くなるので、「味付け米」と呼ばれ、この地方の特産物として全国で有名です。(と、庄内平野の風景を背景にゆう子のナレーション)

翌朝、農業高校へ登校したゆう子は、ミキから、写真部のうるさ方が放課後に顔貸せって…と伝えて来たので、放課後、何事かと温室内にいた田辺の所に来ると、君は母校の名誉を傷つけた。これが何よりの証拠だよなどと言いながら、昨日の祭りで、ゆう子が隆二の背中を拭いてやっている所の写真を見せられる。

加納君はライバル公である学生の背中を拭いた。それは母校愛の欠如以外の何ものでもないと田辺が言うので、ゆう子は初めて、あの時の青年が吸い参考の生徒だった事を知るのだが、田辺はなおも、おれがたは神輿流しに置ける非科学的な名神は断固否定する物であるが、いやしくも他校の学生を…などと文句を言って来る。

その時、おい!男のくせにみっともないぞ!と声をかけて来たのは、黒板の陰にいた桂先生だった。

お前が言いたいのは、美人No1でミス農業高校の加納が、他校の青年の背中を拭いていたので焼きもちを焼いた。田辺、そうだろう?と、その桂先生が指摘したので、恥をかいた田辺は、先生!立ち聞きするなんて言論の自由の侵害だがや!と抗議するが、園芸科の教師が温室にいてどこが悪いと逆に叱られたばかりか、水田に生える雑草の群落蘇生を言ってみろ!と問いつめられてしまう。

田辺がしどろもどろになっていると、すぐさま、ゆう子が模範解答のような答えを言う。

それを聞いて満足した桂先生は、水産校に理由のないライバル心を抱くのなら、雑草は米作りのライバルだ!と田辺に言い聞かす。

水産校で、ヨットの練習をしていた隆二の元にやって来たのは、女子空手部の3人の女子で、神輿流しでは随分熱い所を見せてくれたもんだの!我が水産高校にも女子学生がいない訳じゃなし、頭に来ない方が無理だ!問答無用!と迫り、あの人の事は知らなかったと言い訳する隆二を海の中に落としてしまう。

鶴岡市 人口約10万 南には即身仏で有名な湯殿山、夏スキーの月山、修験道山伏の本拠地羽黒山と、いわゆる出羽三山に囲まれ、北に鳥海山を臨む元酒井家の城下町です。(と、ゆう子のナレーション)

ゆう子の家を訪れた吾作は、ゆう子の両親加納徳一(近藤宏)と咲江(目黒幸子)に、何とかお嬢さんをうちの嫁にくれと頭を下げるが、両親が困ると断ると、しかし龍神様の祟りが…と言い出したので、つい咲江(目黒幸子)は、バカバカしい。月に人間が行く世の中だでば…と笑ってしまう。

吾作は、そんな咲江に、うちは長男を龍神様の祟りで時化の海で殺してしまうた。たった1人生き残った隆二を兄貴の二の舞は踏ませたくないと思ってな…と説明するが、徳一は、うちのような百姓が1人娘を嫁にやると言う事は百姓を辞めろと言う事ですけの~。皆の生活もかかっている事ですし…と言う。

それじゃあ、ダメと言う事ですか、あの2人を一緒にしないと龍神様の祟りが恐ろしい!おっかねえぞ〜などと、わざとらしくぼやきながら帰ったので、ゆう子の奴、とんでもないな男の背中など拭きおって…と徳一はため息をつく。

その頃、又、ボウリング場に来ていた正夫は、持っていた「現代朝鮮の農業政策」と言う本を手に取ったミキから、進学コース専門の鶴岡高校に行っているにしてはおかしなもの読んでいるのねと声をかけられ、農家に婿に行く身だからなと答えると、意外とまじめなのね。もしゲームで勝ったら、私の事自由にして良いわなどと挑発して来る。

ところが、ミキの誘いに挑戦した結果は無惨な敗退。ミキは自分が勝って悔しいかのように、本当にダメな人だの…とふてくされて帰ってしまう。

すっかり欲求不満になった正夫は、エロ映画館の前でポスターなどを凝視していたが、警官が背後にやって来たので、バツが悪くなり立ち去る。

旧渋谷家前で、写真撮影していた農業高校写真部女子たちは、近くの蕎麦屋に隆二がいるのを発見したので、イタズラ心を起こし、1人気づかずカメラを覗いていたゆう子に、帰りに蕎麦屋「山内庵」に寄ろうと誘う。

その後、「蕎麦屋」に入った女学生たちは、盛り4つ!と注文し、2人でどうぞと言い残してさっさと帰ってしまう。

その時、ゆう子は、ようやく隣の席で蕎麦をすすっていたのがあの隆二だと気づき、こんなことになったのはあんたのせいだと文句を言う。

隆二の方も、君が農業高校のイモ娘とは知らなかったと不機嫌になったので、ゆう子も、あなたが水産校の海賊とは知らなかったとむきになって言い返す。

それでも、盛り4枚が運ばれて来たので、2人は仕方なく食べ始めるが、その時、店の外で、人が騒ぎながら走っているのに気づき、何事かと外に出る。

どうやら、街路樹を調べていた人が、害虫の「アメリカシロヒトリ」が発生した事に気づいたらしい。

このままでは、町中に害虫が広がってしまうと気づいたゆう子は、急いで、桂先生に公衆電話から連絡する。

一方、隆二の方も、水産高校に帰ると、仲間たちを呼び集める。

害虫駆除が専門の桂先生がバスで到着し、ゆう子から事情を聞いていたとき、隆二を先頭に、水産高校の連中が、トラクターに農薬タンクを繋いだものに乗ってやって来る。

水産校の面々は、すぐさま鶴岡公園の街路樹に農薬散布を始める。

この高校生の活躍は、市民たちから大歓迎を受ける。

桂先生も、それを見ていて感心するが、ゆう子の方は、隆二に農業高校のお株を奪われた形になり、ひどいの抜けがけをするなんて!あの海賊!と悔しがる。

農業高校では、田辺がこの問題を取り上げ、集まった生徒を前に、その場に居合わせた我が校の生徒がもっと敏速に適切な行動をとっていたら、我が校の方でトラクターも出動できたかもしれないなどとアジり、その場にいたゆう子の責任のような雰囲気になってしまう。

これにはゆう子もいたたまれなくなり、そっと仲間たちの中から離れるしかなかった。

そんなゆう子を、ミキはにやつきながら見送っていた。

後日、ゆう子は正夫と共に海に泳ぎに来ていたが、偶然、その近くにバイクでやって来た隆二は、ゆう子の水着姿をカメラに収めてしまう。

しかし、隆二は、正夫と仲良くしているゆう子がねたましかった。

観光地を紹介すると言うテーマの、庄内交通主催学生写真コンクールのポスターが、桂先生によって農業高校に張り出される。

優勝者には1年間の無料パスがもらえると知ったミキは、私も燃えて来た!と張り切るが、桂先生から、カメラを持っているのか?と聞かれると、しまった!すぐに買わなければ…などと言い出したので、周囲の生徒は笑い出す。

一緒にポスターを観ていた田辺は、ここ数年、水産高校の写真部が優勝を独占しており、我が校は万年2位に甘んじている。今年こそは絶対負けないぞ!と部員たちに発破をかける。

湯田川温泉里かぐらを写真に収める部員たち。

羽黒山、三山神社

山伏 五重塔

友子など、レンズのキャップがついたままシャッターを押そうと慌てぶり

水産校の方では、写真屋に行くと言う熊井修作に、隆二は、自分の写真の中から海の中に女の子が立っている写真をキャビネに伸ばすように言ってくれと頼む。

ところが、このゆう子の水着写真が、たまたま写真屋に来ていた庄内交通の宣伝課長木内 (青空はるお)の目に留まってしまう。

写真屋の主人佐山(青空あきお)と2人で、女学生の水着姿に鼻の下を延ばし上機嫌。

戻って来た水産校で話を聞いた隆二は、自分がコンクールに出すのは水着写真じゃない。何だってこんな写真を宣伝部長に見せたんだ?と憤るが、部長の好反応を目の当たりにした熊井は、写真部リーダーとして、本年度の写真コンクールは水着を狙え!中年紳士の心理の弱点を突いてセクシーピンクで行こう!モデルは手近にいる!と写真部の仲間に指示する。

男子学生はすぐさま乗り気になるが、女子たちは当然反対する。

しかし、男子たちは芸術のためと拝み倒し、勇気のある女子空手部の猛者が、自ら水着姿を披露する。

海辺で、その空手部女子をモデルに撮影会を開いていた水産校の写真部に気づいたのは、バイクで近くにやって来た農業高の田辺とミキたちだった。

水産校のテーマが「海と女」だと気づいた田辺は、海だけじゃないぞ!おれがたは「土と女」だと部員たちに発破をかけ、ミキ自らモデルを買って出る。

この両校のテーマを知った正夫は、農作業をしていたゆう子に、自分は「山と女」で行きたいので脱いでくれと頼むが、ゆう子は、冗談じゃねえと断り、あんなバカな裸騒動が起きたのも、あの水産校の海賊が、私の水着姿を盗み撮りしたからだ!と怒り心頭のようだった。

家で料理をしていた吾助は、訪ねて来たゆう子が、いきなり隆二の頬を叩いたので驚いて振り向く。

おめえ、生まれる所、間違えたんじゃねえか?漁師の家に生まれてたら、良い母ちゃんになっていたのに…と吾助が声をかけると、ゆう子は不思議そうに、何をしているんだ?と聞き返す。

夕飯の支度をしてるんだと吾助が教えると、この家には女手がないのか?とゆう子が言うので、おふくろは10年前に死んだんだと隆二は打ち明ける。

こいつは男手一つで育てたんだと吾助が言うので、じれったいなと言いながら上がり込んだゆう子は、見かねて、自分で料理を作ってやる。

料理を作り終えたゆう子が帰りかけると、殴り込みに来たんなら、毒でも盛られたら溜まらない。毒味をして行けと吾助が留め、敵に背中を見せるのは嫌だからとゆう子は、一緒に夕食を呼ばれる事にする。

吾助が食事をしないので酒だけ飲もうとするので、ゆう子は、酒はお米から作るんだ。こぼさないでと注意すると、死んだ母ちゃんの若い頃とそっくりだと吾助は呟く。

やがて吾助が酔いつぶれたので、隆二は法被をその上にかけてやるが、その姿を観ていたゆう子は、優しい所があるのねと感心する。

しかし、隆二は、こんな分からず屋、早く死んでくれた方が良い。そうしたらおれが生命保険を手にして新しい船が買えるなどと隆二が言い出したので、ゆう子は嘘つき!隆二さんは言ってる事とやってる事がまるっきり逆さまなんだから…とからかう。

その時、飯台に突っ伏して寝ていた吾作が、うるさい!2人とも出て失せろ!新しい船買うんだって?…などと寝言を言って、又飯台に突っ伏したので、2人はバイクで出かける事にする。

飛ばすぞ!と声をかけた隆二の背中に、いつしかゆう子は、顔をしっかり寄せていた。

その後、温海温泉花笠祭りで踊る隆二とゆう子。

近くの川にやって来た2人は、おい、何で農家なんかに生まれたんだ!そっちこそ、何で漁師町なんかに生まれたんだ!と互いに哀し気に罵りあう。

ゆう子が、川に流れて来た小さな花笠を素足で止めようとしていたので、隆二は自分がそれを取ってやろうとし、川に落ちてしまう。

ゆう子は、その小さな花笠を受け取ると帰ると言い出し、隆二も送って行くと言う。

天神祭(化物祭り)別名をお化け祭りと言い、菅原道真公を祭るために、この日はお化けから盃をもらったら断ってはいけないと言う奇習があります。(と、ゆう子のナレーション)

お化けに扮したゆう子から一升瓶を差し出された正夫は、相手が誰だか分からず立ち去ろうとしたので、ゆう子からからかわれる。

ゆう子に話があると止めようとした正夫だったが、すぐに見失ってしまう。

すっかり酔って千鳥と共に歩いていた浜奴は、桂先生と会ったので嬉しくなって絡み付くが、あまり飲まない方が良いぞと注意されたので、酔ってないと見栄を張りながら、学生時代良く叱られていた、雑草の蘇生群を言ってみせる。

それを聞いた桂先生は驚きながらも、今は満点だと褒めてやる。

その後、鶴ヶ岡神社でゆう子らしきお化けに出会った正夫は、公園の中に連れ込むと、そこで強引に抱きついて犯してしまう。

その時、近くにやって来ていた隆二は、浜奴から、ゆうちゃんなら、さっき公園の方で見かけたとからかわれたので行ってみると、それらしきお化け姿の女性を見つけたので声をかけるが、何故か相手は逃げ出してしまう。

一方、正夫の方は、目的を達した事ですっきりしたのか、その後、ボウリング場でも調子を上げ始める。

後日、農業高校の運動の後のシャワー室で、隣りでシャワーを浴びていたゆう子の身体をのぞき観たミキが、ゆう子のおっぱい黒くの?妊娠してるんじゃないか?などと突然言い出す。

変な言いがかりは止めれとゆう子は怒るが、ミキは、相手は、婚約者ではなく、祭り流しの時に背中を拭いたあの人だなどと他の女子たちに言いふらす。

たちまちこの噂は学校中に広がり、写真部にまで話が飛びして来るが、そんな話を聞いた田辺は、そんな事より、明日までにコンクールの応募作品をまとめてくれと叱る。

そんな様子を観ていたミキは、部室の側で何やら考え事をする。

酒田市の日和山公園に隆二を乗せて来てやった「酒王 初孫」の従業員は、隆二、たっぷりデートを楽しんで来いやとからかうが、隆二は冗談言うな!デートなんてもんでねえと否定して降りて行く。

先に待っていたゆう子と会った隆二は、自分から手紙をもらったとゆう子が言うので驚く。

隆二の方も、ゆう子からハガキをもらったのでここへやって来たからだった。

2人は互いが受け取った手紙を見せあい、筆跡が両方とも同じである事から、同一人物の仕業である事に気づく。

化物祭りの時、呼びかけたのに逃げ出したゆう子らしき女性の事を思い出した隆二は、頼みがある。今日1日だけ休戦条約を結ばないか?君に婚約者がいる事は知っている。でも、今日1日だけでも友達として付き合ってクッレないか?と頼み、ゆう子もそれを承知し、誰だか知らないけど、この人に感謝しなくちゃ…と偽手紙の差出人に礼を言うのだった。

その後、2人がデートを楽しんでいる所を目撃した「初孫酒造」の従業員は、やっぱりデートじゃねえか!と隆二に声をかけて来る。

本間美術館にやって来た2人だったが、ミキから連絡を受けた田辺等は、こっそりその様子を覗き見していた。

そんな目撃をされているとは知らないゆう子は、その日のデートを楽しみ、誰かに観られたら困るのでバスで帰る。今度こそさよなら!と言い残し、宮の浦バス発着所で隆二と別れる。

翌日、農業高に登校したゆう子は、出会った友人たちに挨拶するが、全員に何故かシカトされてしまう。

誰かかからの手紙を読んだ吾助は、帰って来た隆二に、お前、あの子を腹ぼてにさせたのか?と聞き、隆二は唖然とする。

父親が持っていた手紙の字を観た隆二は、この前の偽手紙と同じ筆跡だと言う事に気づく。

自転車で帰っていたゆう子は、農作業をしていた男連中から、自転車は止めて方が良いんじゃないか?流産しやすくなるって言うからなどとからかわれ愕然とする。

帰宅してみると、両親まで、ゆう子の妊娠を知っていて喜んでいるではないか!

呆れたゆう子は怒って部屋に駆け込むが、その際、バッグからこぼれた写真に写っていた隆二の姿を観た両親は、これは誰だ?と不思議がる。

ゆう子の相手は正夫とばかり思っていたからだった。

翌日、登校したゆう子は、田辺から、学校の品位を落とすような事は止めて欲しいなどと言われ、カッとなったゆう子は、私が処女かどうか、お医者さんに言って証明してもらうからと言い残し下校するが、産婦人科の前にやって来ると、さすがに中に入るのはためらわれた。

そんなゆう子の様子を、ミキたち女学生は、こっそり監視しており、やっぱりよと互いに頷きあうのだった。

困り抜いたゆう子は「双月橋」に来ると千鳥を訪ね、親にも言えない悩み事の相談に乗ってくれる人がいないだろうかと話す。

千鳥は、雑草の蘇生群を暗唱しながら農作業をしていた浜奴に会わせに行く。

ゆう子を家に連れて来た浜奴は、乳首が黒ずむのは妊娠した証拠か?とゆう子から真剣に聞かれたので、それはメラニンとか言う色素のせいであって、関係ないのではないかと教え、自分も黒いたちでなどと言いながら胸元を拡げてみせるが、そこにはキスマークが残っていたので笑ってごまかす。

その後、羽黒山でゆう子と会った隆二は、通りかかった他校の学生の視線を避けながら、人目ばかり気にしている、おれ等、犯罪者観たいだの…と嘆く。

ゆう子も、私たちの故郷は、空気は良いし、のんびりしているし、食べるものは新鮮だし…、言う事は1つもないと思っていたけど、この頃は逃げ出してえ…と言い出す。

なして?と隆二が聞くと、私が妊娠しているとか、その相手が隆二さんだとか、根も葉もない事がまことしやかな噂が流れているし、隆二もおれもそうだと賛成する。

広々とした庄内平野に住んでいるのに、何だか息が詰まりそうだと言うゆう子は、親が決めた婚約者も私は今まで、農家の跡継ぎ娘として当然の宿命として受け止めて来た。1人娘の私が嫁に行けばうちのように家族だけでやっている百姓は止めなければいけない。でも、それがどうして宿命なんだ?でもよく考えたらまるで人権無視じゃねえの、頭さ来た!と憤る。

すると、隆二は、ゆうちゃん、おれに賭けてくれねえかの?2人で東京さ行こう!俺のこと好きか?と聞く。

ゆう子は好きだと答え、隆二も、おめえの事忘れようとしたが、ダメだと打ち明けたので、ゆう子は、2人して東京さ行こう!と賛成すし、2人はその場で口づけを交わす。

羽黒山八朔祭

後日の早朝、まだ、吾助が寝ている間に起き出した隆二は、旅支度をして家を出ようとするが、まだ寝ていると思っていた吾助が、待てや!持ってけや!と言いながら、布団の中から何かを投げて来る。

それは笹尾吾助名義の預金通帳だった。

漁師はな、空観て見切りを付けるんや。お前も、今、人生の見切りを付ける時やと言うと、吾助は布団の中に潜り込んで涙を流す。

隆二は黙ってその通帳を受け取ると家を後にする。

一方、ゆう子の方も、旅行鞄に小さな花笠を付けた旅支度をして家を出ていたが、途中の田んぼで、稲の異変に気づき立ち止まる。

田んぼに入り稲を確認したゆう子は、アキウンカの発生だと知り、家に駈け戻ると、両親に知らせる。

直ちに、トヨタ地区に緊急放送が流れ、アキウンカが発生したとの連絡が住民たちに伝えられる。

安堵した咲江だったが、その時になって、ゆう子の旅支度に気づき、おめえ、そのなりはどうしたんだ?と聞く。

湯野浜温泉

鶴岡駅にやって来た隆二は、電車の中に乗っていたゆう子を発見し嬉しそうに声をかけるが、ゆう子は哀し気に、ごめんしてくれ、やっぱりダメだ。行けないだと言うので、それを聞いた隆二も、おれも同じだ。生まれた土地から離れなれない…と告白する。

ゆう子は、隆二さん、時化にあって死んだりしないでくれと頼み、隆二の方も、ゆう子ちゃんも、美味しい米を作ってくれと伝え、今度こそ本当にさようならと言って握手する。ゆう子は、以前、隆二から拾ってもらった花笠を差し出す。

隆二は電車を降り、ゆう子は泣きながら、そのまま電車で故郷に戻って行く。

吾助は、いつも通り1人で飲んだくれていたが、一升瓶はもう空っぽだった。

そんな吾助の前に、真新しい一升瓶が置かれる。

隆二が買って来たのだった。

吾助は不機嫌そうに、バカヤロー!と怒鳴り、素直に謝った隆二に対し、栓を抜かなきゃ飲めねえだろうが!と照れ隠しに叱りつけながらも、台所に隆二が栓抜きを取りに行くと、嬉しそうに、飯台に置いていた妻と長男の遺影に、帰って来よったんだ…と言って笑いかけるのだった。

写真屋の佐山が、一枚の写真を手に、良く撮れています。ダイナミックなヌード、お尻の曲線がどうの、おっぱいの辺りが…などと電話をしていると、電話を借りに寄った木内課長が興味を示し、その写真を受け取ってのぞき観るが、それは裸の赤ちゃんの写真だったので急に不機嫌になる。

農業高校では、桂先生が、3年B組の加納ゆう子の応募作品が、写真コンクールの審査委員会から連絡があって、優勝候補に挙げられているそうだと生徒たちに知らせていた。

ゆう子の応募作は「ササニシキの一生」と言う題で、苗代作りから稲刈りまで米作りの描写を撮ったんだと桂先生が説明すると、芸術のためだとか母校の名誉のためとか言われ、私たちが水着にされたのはどうなったんや?と女子が聞くと、あんなものは全部ボツだと桂先生はあっさり答える。

加納以外にもう1人有力候補作が残っており、審査委員も甲乙が決められず困っているそうだ。なんでも水産校の笹尾隆二と言って「海の若者」と言う水産高校生の実習を写したものらしいと言う。

それを聞いた田辺は、畜生…、あいつかと悔しがる。

そんな話を聞いていたミキは、優勝者の資格は学生として母校の品位を落とすような人ではダメだろう?だば、ゆう子には資格ねえな…と意地悪そうに言い出したので、それを聞いていたゆう子は、何かを決心したように応募を辞退しますと言い出す。

驚いた桂先生は、辞退すると自動的に水産高校の優勝になるぞ。今年もうちは万年2位か…と落胆し、女子たちは、勝ちを譲りたい訳でもあるのでは?などと囁きあうが、ゆう子は訳は聞かないで下さいと謝って、教室を飛び出して行く。

こうなったのは、元はと言えばあいつのせいだ!ぶっころしてやる!ゆう子を婚約者から奪った奴だ!と言い出した田辺は、水産校に殴り込みだ!などと叫び、男子たちをけしかけると飛び出して行く。

それを見送ったミキは、少し発破かけ過ぎたかの〜…と呟きあう。

一方、水産校の方では、熊井修作が、農業高が降りたんで、おめえが応募作が優勝だ!と駆け込んで来ていた。

農業高が降りたとはどう言う事だ?と隆二は聞き、それがゆう子の事だと知ると、そんなら自分も辞退すると言い出す。

それを聞いた熊井が、あの噂本当なのか?おめえがあの子を妊娠させたと言うのはと聞いたので、誰か、偽手紙でおれと彼女をスキャンダルに巻き込もうとしていると隆二が答えると、それは農業校の連中で、お前を陥れようとしているのだ!と熊井は言い出す。

隆二は必死に止めようとするが、興奮した熊井たち男子は、バイクに乗って出発して行く。

町中の広場に集結した両校のバイクだったが、一発触発になろうとする時、ゆう子と桂先生が駆けつけて、何をする気だ!と叱りつける。

隆二とゆう子を農業高校へ連れて来た桂先生は、おれは妊娠云々と言う噂は一笑にしている。しかし、何故、応募を辞退するのか理由を教えてくれと聞くが、2人が何も答えようとしないので、おれは生徒の人生相談の相手も勤まらんダメな教師だったのか…、恥ずかしいよと嘆く。

違うのよ…とゆう子が口を開きかけたとき、農業高校に騙されるな!と言いながらやって来たのは熊井たち、水産校の連中だった。

それを迎えた田辺たち写真部が飛びかかり、桂先生の制止も空しく、両校の生徒で乱闘が始まる。

君たちは分からんのか!と止めに入った隆二も乱闘に巻き込まれる形となる。

そこにバイクで乗り付けて来たのは正夫で、ゆう子を妊娠させたのはおれで、婚約者だぞ!と止めようとするが、ゆう子は、自分は妊娠してないと言う。

だども、あのお化け祭りの日…と正夫は不思議がるが、ゆう子はそれは私じゃないと言う。

そう言えば、あの人、顔見せなかったな…と正夫も気づいたので、一番の慌て者はあなたでねえかよ!ゆう子は睨みつける。

そのとき、桂先生が、君たちに偽手紙を出した奴がいると言っていたな?そのニセ手紙と全校生徒の答案用紙を調べれば、誰が書いたか分かる。水産校の方にも頼んでみようと言い出す。

そうか!あの偽手紙の差出人が事件の鍵を握っているんだと隆二も気づき、ゆう子は、こげな不愉快な話、一刻も早く解決してもらわねば…と言いながら、その偽手紙を取りに家に帰ろうとするが、その時、待って!行く必要ねえ。んだ。これで手紙を調べる手間省けたろう?と言い出したのはミキだった。

だども、なしてあげな真似?と隆二が聞くと、同じ農家の跡取り娘に生まれ、婚約者のいるゆう子がうらやましかったんだ。そして、正夫さんを好きになってしまったんだと言い、泣き出す。

正夫は、だば、お化け祭りのあの時の…と気づく。

それを聞いていた男子生徒たちは、しらけたように座り込み、こりゃ、婿取りの組み合わせをチェンジせねばいかんなと桂先生は呟く。

その後、桂先生は乱闘事件の責任を取るので、生徒たちからは1人の責任も問わないで欲しいと好調に辞表を提出し受理される。

後日、吾助は、婿取りの組み合わせが代わって、あんたは自由な身体になったのでな…と言い、ゆう子の元を訪ねるが、ゆう子は、ダメだと言い、私は家を継がなければいけないので、隆二さんが婿に来てもらえなければ無理、2人で話し合って別れる事にしたと言う。

わしはあんたをな、自分の娘として呼びたかったんだと吾助が打ち明けると、だったら、1日だけ娘にしてくれとゆう子は言い出す。

海で働く人の守り本尊である善宝寺に2人で参ったゆう子は、境内で買ったお守りを隆二に渡してくれと言って吾助に手渡すと、バスで帰って行く。

桂先生は、正夫とミキカップルと、ゆう子と隆二カップルと一緒に釣りに来ていたが、こっちの2人がこのままでは心残りだな…と、どうだお前たち、一つ若者らしく、青い日本海に向かって自分の気持ちを叫んでみろと沈んでいるゆう子と隆二に言う。

隆二は、おれは加納ゆう子が大好きだ〜!と叫び、ゆう子は私も笹尾隆二を愛してる〜と叫ぶ。

だども、おれは海に生まれ海で死ぬ男だ〜!私も農家の跡継ぎ娘だ〜!ゆう子のイモ娘〜!海賊〜!

それを横で聞いていた正夫は、お前たちバカだの…、悔しかったら、おめえ等も早く結婚してみろと言い、旦那が船乗りでが遠洋漁業で出かけてしまったら、留守に女房1人で米が作れるわけねえろ?とゆう子が嘆くと、何言ってるだ。その時は俺がた2人が田んぼに助っ人に行くよと正夫は言い出す。

そげにまで私たちの事を…とゆう子が感激すると、ミキも、それが友達って言うもんでねえか?と笑う。

そうだ、これは単純な友情だけじゃないと桂先生が発言する。

これからの農家は一軒一軒が自分の田んぼを耕していたんじゃ耕作機械を買うのも大変だし、共同作業の方向へ持って行く以外生産高を上げる方法はない。

隆二の留守の時にミキが手伝うのも農業の近代化の1つだ。農家の跡継ぎ娘のゆう子が嫁に行く事と、そのために加納の家が農業を続けて行けなくなるのは本来別の問題なのだ。

しかし、個人1人の力ではどうしようも出来ないのが現実だ。近くの仲間が手を取り合って、助け合っていかなければなと桂先生は言い聞かせ、4人の男女はがっちり手を取り合う。

桂先生が鶴岡駅から出発することになる。

浜奴だけが見送りに来て、庄内米のおいしさ、噛み締めての…と言いながら、手作りのおにぎりを弁当として手渡す。

しかし、生徒たちが1人も来ていなかったので、浜奴は、現代っ子ってドライだの…と呆れるが、動き始めた車窓から、雑草の蘇生群を言ってみろと言われたので、泣きながら、暗記していた雑草群の名を挙げ始める。

遠ざかって行く列車を見送りながら、先生、お元気での…と浜奴は涙ぐんでいた。

列車が走り出すと、桂先生はさっそく握り飯を頬張ろうとするが、そのとき、車窓から、線路の横を走る道路をバイクで追って来る生徒たちに気づく。

手を振って答えながら、1人だけ肝心なのがいないなと桂先生は呟くが、そのとき車内で声をかけて来たのは、農作業着を着たままのゆう子だった。

連絡を受けた時、田んぼさ出ていたので…遅、直接列車に乗り、次の駅で他の子と合流するのだと言う。

土産を先生に渡したゆう子は、東京さ行って、仕事の当ては?と聞くが、ないと答えた桂先生は、失業も又楽しからずや…と言って明るく笑う。

そして、どうして皆、駅まで見送りに来なかったんだと桂先生が聞くと、だって、先生の顔を観ると泣いてしまうっちゃと恥ずかしそうにゆう子は答える。

そのとき、桂先生は、バイクで追って来ていた生徒たちが何かを叫んでいるのに気づき、ありがとう!と答え始める。

しかし、生徒たちが叫んでいたのは、桂先生のバカやろ〜!俺たち置いてずらかる気かよ〜!大バカ先生、何で行っちゃうの〜!等と言った、別れを悔しがる悪態だったが、はっきり聞き取れなかった桂先生は、あいつらなんて言ってるんだろうと笑うと、みんな、手を取り合って助けていくんだ〜!と窓から叫び返す。

その言葉を聞いていたゆう子は思わず泣き出してしまうのだった。


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