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おさな妻('70)

もう倒産間際の大映作品なので、観るからに低予算で、テレビドラマでも観ているような印象である。

映画産業自体斜陽の時期で、観客を呼び寄せるには、テレビではやれない「エロ(お色気)」か「グロ(バイオレンス)」「ナンセンス」などで凌ぐしかなかった時期の作品で、この頃にデビューした新人女優たちは、脱ぐ事を拒否しては、出られる作品は限られていたと思われる。

関根恵子=高橋恵子は、そうした大映末期を、渥美マリなどと共に、お色気で支えた新人女優の一人だったと思う。

関根恵子は、その容貌から、バンプ役と言うより清純派っぽいお色気路線を担当していたようなイメージがある。

要するに、無理矢理お色気路線をやらされていたと言うのが正直な所だろう。

一部の観客は、意味ありげなタイトルやポスターから、何かあらぬ妄想を抱いて、映画館へ足を運ぶと言うだけ。

かつての新東宝末期の戦略に近いと言えば近い。

しかし、内容は富島健夫原作だけに、意外とまじめで、エロ要素もほとんどなければ、テレビドラマ「奥様は18歳」のようなコミカルな展開もない。

タイプが違うとは言え、石坂洋次郎のようなからっとしたユーモアではなく、ちょっとじめっとしたウェットな感じがする。

若い女性層向けの性教育ものと言う印象もあるが、このタイトルで映画館に来る女性客は、当時ほとんどいなかったのではないかと思う。

ホームドラマとしても学園ドラマとしても中途半端な印象で、結婚したての高校生が、もう亭主と昔の女とのドロドロの三角関係に巻き込まれ…と言う展開も泥臭い。

せっかく、高校生妻と言う設定にしていながら、その特殊性から生まれて来る面白さを巧く引き出していないような気がする。

特に学園ドラマとしては、高校生設定のはずの共演者たちが妙に大人びていて、青春ものっぽい爽やかさに欠けるのも辛い。

タイトルで何かを期待して映画館に来た当時の男性客たちは、この内容に肩すかしを食ったのではないだろうか?

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1970年、大映、富島健夫原作、白坂依志夫+安本莞二脚本、臼坂礼次郎監督作品。

体育の授業中、黛玲子(関根恵子=高橋惠子)が得意の床運動を披露していたが、次の瀬川に交代した時、担任教師の石垣先生(福田豊土)が体育館の入口にやって来て、すぐに着替えろ!お母さんが危篤だと声をかけて来る。

タイトル

ジャージに着替え終わった令子は、校門前で待っていてくれた石垣先生のバイクに乗って帰宅する。

病院に駆けつけた玲子だったが、母親の病室前で出迎えた叔母は、しっかりしなきゃダメよと声をかけたので、母親の死に間に合わなかった事を悟った玲子は、病室に入るなり、お母さん!と泣き崩れる。

その後、泉恵高校に戻った玲子は、体育の着替えをしている時、暑いので窓を開けている同級生に対し、向うの校舎から双眼鏡で覗いているのよ、音の小たち!と文句を言う。

見せてやりましょうよ、ばっちり!と自ら、胸をはだけようとした子は、男が女を女が男の子を欲しがるのは自然の理よなどと平然と言う。

寒気がするわ。若い男の子の飢えた獣みたいな目を想像するだけで…と瀬上和子(八代順子)が言うと、セックスに対して理由のない恐怖感を抱いているのでありますとからかうと、他の同級生は、言った女の子がセックスに関心があり過ぎると混ぜっ返す。

和子、井村友子(三笠すみれ)と一緒に下校する玲子は、自分を引き取ってくれたおばさんが私の事を孤児だと思い、優しくしてくれるが、重荷でもあると告白すると、大学生の従兄弟がいるんだって?と好奇心満々で聞かれたので、女手一つで育てられた息子なので、可愛がられ過ぎてわがままって感じと教える。

帰宅した玲子が、子供時代からやりなれていた料理を作っていると、叔母の静江(近江輝子)が感心しながらも、亡くなった玲子の母親が、ちゃんと玲子が高校を卒業するまでのお金を預金してあったと教える。

その時、先に入浴していた静江の息子の淳一(炎三四郎)が、石鹸がないと声をかけて来たので、玲子が気を利かせて浴室の前に持って行き、そこに置こうとした途端、わざと浴室の扉を開けた淳一が、自分の裸体を見せびらかして、驚いた玲子をあざ笑う。

別の日、夜の公園の横を通って帰宅していた玲子は、公園の芝生内で抱き合っているカップルを観てしまい嫌悪感を覚える。

洋品店をやっている静江の家に戻ると、店員の明美(桜井純子)が、むしむしするわねなどと話しかけて来たかと思うと、急に吐き気に襲われたようで、洗面所で嘔吐する。

案ずる玲子だったが、明美は淳一の部屋に行って、子供が出来た事を打ち明ける。

しかし、淳一は誰の子かな?証拠はないな…などとギターを弾きながらとぼけるだけなので、明美は結婚を約束されていながら、騙されてもてあそばれた事を悟る。

そんな2人の会話を、玲子は廊下で聞いてしまう。

明美が帰ると、淳一が目の前に来たので、恐ろしい人ね、あなたって…と玲子が言うと、色んな男と寝てるんだ、あいつ…と淳一は明美を侮辱するようなことを言う。

さらに、玲子に急に抱きついて来て、部屋の中に押し倒すと乱暴しようとして来たので、必死で抵抗した玲子は、床に置いてあったギターを思わず握り、それで淳一の頭を叩いて逃げ出す。

夜の公園のブランコの前までやってきた玲子は、子供時代、夜遅くまで働いて自分を女手一つで育ててくれた優しい母親文子(坪内ミキ子)と一緒にブランコ遊びを下押さない日の事を思い出していた。

しかし、優しい笑顔だった文子は、いつしか夜の闇の中に隠れてしまい、1人ブランコに乗っていた幼い頃の玲子は、いなくなった母親の姿を探して自分も闇の中に走り込んで行く。

ママ〜!ママ〜!と呼びかけながら…

静江がまだ帰宅していない家に帰りたくなかった玲子は、町をさまよい歩いていたが、1匹の犬を見つけたので抱いていると、ハニー!とその犬のらしき名を呼びかけながら1人の酔った女が近づいて来る。

犬を抱いていた玲子に、その女が絡んでいるように見えたのか、逆方向から歩いて来た男性が、酔った女に、お連れのお嬢さんが可哀想じゃないかと注意するが、玲子は連れじゃありませんと否定する。

酔った女は、何かの縁だから3人で飲みに行こうかと誘って来るが、男は、女の子が待っているのでと断って帰ってしまう。

残った女は、玲子の年を聞き、17と知ると、今頃どうしてこんな所に?と聞いて来る。

玲子は、帰りたくないんですと答えると、女は、自分はこれでも舞台女優で、前の前の男には、ジャンヌ・モローに似ていると言われたから、フランスで生まれていれば大スター!と上機嫌で自己紹介して来ると、良かったら、私に離さない?良い知恵が湧くかもよと言ってくれる。

その後、洋品店に帰った玲子は、1人店の中で待っていた静江から、何かあったの?明美ちゃんは、訳の分からない事を言って辞めるって言うし、淳一は飛び出して行くし…と聞いて来る。

玲子は、私、この家を出て、1人で暮らしたいんですと言ってみる。

それを聞いた静江は驚きながらも、淳一ね!淳一が何かしたのね!と気がつく。

そこに帰って来た淳一は、2人に何も言葉をかけず、黙って奥へ消えてしまう。

静江は、今夜はもう遅いから、明日話しましょう。あなたの生活費のこともあるし…と言い聞かせる。

こうして玲子の1人暮らしが始まる。

玲子は、友子、和子と共に、久々にサイクリングに出かけ、新しい生活への希望に満ちていた。

玲子は、お母さんの貯金があるから、何とか生活できるけどバイトしないといけない事、アパートは舞台女優のジャンヌさんこと高山由紀子(渡辺美佐子)から紹介してもらったと2人に教える。

しかし、アパートの部屋で1人勉強をしていると、お茶の葉を借りに来た向かいの部屋のミドリ(藤道子)が、あんた良い身体してるのね。バージン?私のいる店で働かない?いくらでも稼げるわよなどと誘って来るが、玲子は断る。

その後、玲子は部屋でうたた寝をし、又、1人暗くなるまでブランコをしている時、仕事から帰って来た母親に飛びついていた幼い頃の夢を観ていた。

ある日、玲子は、自分の通っていた保育園に来ると、青山先生に挨拶をする。

先生は一瞬、誰だか思い出せないようだったが、小池の金魚を捕ろうとして叱られた玲子ですと名乗ると、ようやく思い出してくれて、お母様そっくりにと喜んでくれる。

舞台に出ていた高山由紀子を訪ねた玲子は、あんな変なアパート紹介しちゃって、でも安いからねと言う由紀子に、今度、保育園でアルバイトする事になったんですと知らせる。

由紀子は、会うたびに女らしくなって行くのを観るのが楽しみなのと喜び、トニーがあなたの事を恋しがっているわと微笑みかける。

保育園で保母のバイトを始めた玲子は、まゆみ(佐藤久里子)と言う園児から、ゴリラの絵を描いてとねだられて困る。

そのまゆみを保育園に迎えに来た男性を観て、玲子は驚いてしまう。

ジャンヌこと高山由紀子と出会った夜、声をかけて来た男だったからである。

あの時の女の子ってまゆみちゃんの事だったんですか?と話しかけると、まゆみの父親である吉川(新克利)の方も玲子の事を覚えていたようで、奇遇に驚いたようだった。

まゆみは、吉川に、先生はママにそっくりでしょう?と話しかける。

吉川が言うには、まゆみは気に入った人はみんな亡くなった母親に似ていると言うのだそうだ。

ある日、他の園児たちが全員帰った後、最後まで残っていたまゆみをブランクに乗せて遊んでやっていた玲子の元に、吉川が迎えに来る。

まゆみが玲子に、一緒に行こうと誘い、吉川も、良いレストランがあるので宜しかったらと誘ってくれたので、玲子は2人と一緒に車に乗り、とあるレストレンに食事に出かける事にする。

まゆみは無邪気に、先生ってステキでしょう?と吉川に言うし、どうして先生は1人で暮らしているの?などと聞いて来るので、吉川は恐縮しながら、先生にはパパもママもいないんだと教える。

レストランから出ると、まゆみは吉川にゴリラの真似をやってとせがむ。

建築デザイナーをやっていると言う吉川はそんなまゆみの望み通りにやってやると、仕事が忙しくて、なかなかまゆみをかまってやれないのだと玲子に寂し気に打ち明ける。

玲子も、自分の母親も、毎日どんなに忙しいときにも迎えに来てくれましたなどと思い出話を打ち明ける。

後日、吉川が保育園にまゆみを迎えに来ると、青ざめた玲子が、ちょっと目を離した隙にまゆみちゃんがいなくなったと伝え、謝る。

吉川はすぐに、あそこに違いないと心当たりの場所へ向かう。

そこは、まゆみの母親が生きていた時に、良く連れて来てやていた公園だった。

玲子は、そこで1人遊んでいたまゆみを見つけ抱き上げると、まゆみは急に泣き出してしまう。

そんなまゆみを連れて、吉川は帰ろうとするが、その時、まゆみの誕生日に来てくれますね?と誘って来る。

まゆみの誕生日に吉川家にやって来た玲子は、誕生日のプレゼントに何でも欲しいものを言ってご覧と言う吉川に言葉に、まゆみが、先生をまゆみのママにして頂戴などと言い出したので困ってしまう。

吉川は玲子を気遣って、訂正させようとするが、じゃあ、パパのお嫁さんになってと同じことを言うので、吉川は困り、もう9時なので寝なさいと言いつける。

まゆみが寝室に向かうと、吉川は玲子に詫びるが、玲子の方は、私だって、小さい事お父さんが欲しかったのと打ち明ける。

じゃあ、僕をお父さんとして観ているんだ?僕は君を女性として観ていると吉川が言うと、玲子は、自分でも分からないの、私、吉川さんの事好きなの。でもお父さんとして好きなのか、立派なあなたが好きなのか良く分からないと戸惑う。

そんな玲子に、僕を観てご覧、お父さんかい?それとも男に見えるかい?ともう1度確認すると、両方と言って泣き出したので、甘えん坊だな…と吉川は優しく慰める。

気を取り直した玲子は、部屋に置いてあった奇妙な模型に目を留め、これは何?と聞いたので、それは「デザートイン」と言うクラブだと吉川は教え、行きたいと言いだした玲子に、明後日の夜、連れて行ってあげると約束する。

「デザートイン」にやって来た2人のテーブルに近づいて来た滝沢喜久子(真山知子)は、この間はどうしたの?黙って帰ったりして…と、玲子は無視して吉川に話しかけて来る。

仕事だったんだと詫びる吉川に、今月の13日の金曜日にブラックパーティを開こうと思っているので来てくれるわよね?と喜久子は頼むが、吉川は考えとくと答えただけで、玲子に踊ろうと誘う。

ゴーゴーを吉川から教わって踊った後、店を後にした玲子は、あの人作詞家でしょう?きれいな人…と、喜久子の事を吉川に聞く。

車でアパートまで送ってもらった玲子だったが、ちょうど酔っぱらいジュン(三夏伸)とホステス(甲斐弘子)がアパートから出て来たので、それをやり過ごした後、吉川は玲子に、この一言で君を失うかもしれないが、結婚してくれないか?君の父親役はもうたくさんだ。君をこんな所に1人で住まわせるのは絶えられない。僕の所に移って来てくれと頼む。

車から降りた玲子は、私が孤児なので、可哀想だからプロポーズしたのね?と哀し気に告げるが、吉川は、バカだな…と苦笑する。

学校で、結婚しようと思うことを相談された石垣先生は、新しがりやの校長は反対しないだろうが、結婚は逃げ場所じゃないぞ夫は大きな赤ん坊だし、小さな赤ん坊もいるのだから大変だと忠告するが、1人で苦労するより、2人で苦労する方が良いと思うんですと玲子がしっかりした考えを持っている事を聞くと安心する。

しかし、味方ばかりじゃないから、変に刺激するんじゃないぞと、その時職員室に入って来て、玲子の方に厳しい目を向けて来た女性教師井上先生の顔をうかがいながら囁きかける。

アパートへ帰って来た玲子は、亡き母親の写真立てに向かい、お母さん、みんな賛成してくれたの…と報告するが、玲子、一生ついて行く自信はあるの?と母の文子が問いかけたような気がして、怖いの、不安なの、どうしたら良いの?とつい写真に訴えかけてしまう。

その時、向かいのミドリの部屋を叩くホステスの怒鳴り声が聞こえて来る。

どうやら、自分の男がここに来ているはずだと言っており、それに対し、ミドリが否定しているようだったが、気がつくと、パンツ一丁のジュンが、玲子の部屋の窓の外にへばりついているのに気づき玲子は愕然とする。

ジュンは中に入れてくれと頼み、仕方なく窓を開けた玲子だったが、匿って下さいと頭を下げたジュンは、あの女は生理中でいら立っているんです!などと露骨なことを言うので、いたたまれなくなった玲子は部屋を飛び出すと、吉川の家を訪ね、もうあのアパートにはいたくないのと吉川に打ち明ける。

吉川はそんな玲子を優しく招き入れてくれる。

吉川さんの顔を観たらすーっとしたわとベランダに立った玲子が打ち明けると、目は観るためだけじゃなくてつむるためにもあるんだよと優しく吉川が肩を抱いて来たので、玲子は言われるがまま目をつむり、そのまま吉川のキスを受け入れるのだった。

教会のイメージ

幸せにして…と吉川に願う玲子

ウェディングドレス姿で駈ける玲子のイメージ

いよいよ吉川と玲子の結婚式が教会で執り行われる。

出席したまゆみはニコニコ顔だった。

そんなまゆみに、今日からママよ、よろしくねと挨拶した玲子は、結婚式に出席してくれた叔母の静江、石垣先生、和子や友子らに見送られ、吉川と共に新婚旅行へ出かける。

ホテルに着いた玲子は、湖畔を散策しながら妙にはしゃいでいた。

こんな所にお母さんと来る夢を見たわと玲子が言うと、お母さんの思い出に吹けるのはかまわないけど、今日から、君もお母さんになったんだ。その重さを自覚して欲しいんだと吉川は頼む。

2人きりの食事中、玲子は、エックスのイメージが頭をよぎり、食べ物が咽を通らなかった。

夜、歯を磨きながら、震えてるわね?逃げ出しちゃおうか?などと、鏡に映る自分自身に問いかける玲子。

おばさんからネグリジェをもらって来た玲子だったが、透け透けで丸見えなので、恥ずかしく、いつものパジャマ姿のまま鏡台の椅子にちょこんと座る。

友子ったら、初めての晩はひどく痛いらしいって言ってたけど、ねぇ、どうしてもやらなくちゃいけない?メイクラブ…と言ってしまう。

それを聞いた吉川は、僕たちはハネムーンに来たんだぜ。好きな男のそばにいると胸が痛くなるだろう?そんなもんさと説得し、灯を消して、おいでとベッドに誘う。

玲子は思い切ってパジャマを脱ぐと、吉川がその身体をお姫様だっこしてベッドに寝かせてくれる。

湖面のきらめき、リス、バラのイメージなどが重なる。

新婚旅行から戻って来た玲子に、学校の同級生たちは、興味津々と言った様子で、初夜の様子を聞いて来る。

真面目な顔で教室に入って来た石垣先生まで、姓が吉川に変わった玲子に、新婚旅行の事を聞いて来る有様だった。

家で歴史の教科書を読みながら、夕食の準備をする玲子だったが、吉川が、机の下に置いてあった雑誌知らないかと聞いて来たので、ちり紙交換の車が来たので、トイレットペーパーに替えてしまったと打ち明けると、呆れた様子で、これから書斎の中のものは触らないでくれと言われてしまう。

さらに、学校では、友子と和子が妻と母と学生の3役だからね…などと女性教師の井上先生から呼び出され、高校を卒業するまで結婚は待つべきだったと思うの。生徒たちはあなたの事に大変な関心を持ってるわ。あなたの影響で勉強までおろそかになるのが

あなたの影響って?と玲子が聞くと、例えばセックスの問題とか…と井上先生は言う。

玲子が、学校がセックスの事を及び腰で扱うから、みんな歪んだ知識しか持ってないんですと反論すると、大変な自信ね?学校に代わって、あなたが性教育をクラスメイトにするつもり?と井上先生はいきり立つ。

玲子は、プールサイドで和子や友子に、井上先生にあんなこと言ったけど、それだけの資格が今の自分にあるかしら?昨日も、勧誘保険に入っちゃっててんと自分の失敗談を打ち明ける。

友子から、夫婦って突き詰めればそう言うものなの?と聞かれ、強い結びつきがあるもの。身体よと答え、最近はあまり、お母さんの事は思い出さなくなって来た。廻りの世界がどんどん変わって行くのよ…と打ち明ける。

セーラー服姿のまま、保育園のまゆみを迎えに行った玲子は、帰宅途中、玲子が欲しがったお人形を買ってやる。

キッチンにいた玲子がかかって来た電話に出ると、それは滝沢喜久子からのもので、まだ吉川は工事現場から帰っていないと伝えて切る。

そこに帰って来た吉川は、人形を見ると、玲子を書斎に呼び、あまりまゆみを甘やかさないでくれと頼む。

玲子の方は、喜久子さんからあなたによろしくって電話があったと伝え、ぷいっと部屋を出て行ってしまう。

喜久子の家に出向いた吉川は、家に電話して来るなんて困るよ。僕は結婚したんだよ。それに今は、橋本美術館の仕事で忙しいんだと詰め寄るが、明日来てくれたらもう電話しない。来なかったら、じゃんじゃん電話する!などと喜久子は意地悪そうに言う。

仕方なく、翌日の喜久子の誕生日にやって来た吉川だったが、あなたと2人きりで過ごしたかった。昨年の今日、この部屋でラブをしたわなどと言って来る喜久子に、僕はあの時、プロポーズしたのに…と吉川は不満を述べる。

結婚だけが幸せではないって思って断ったけど、それから何度も恋をした。でも空しかった。私を満たしてくれるのはあなたしかいないって分かったの。お願い!時々会って!決して奥さんには見つからないようにするからとすがりついて来た喜久子だったが、家庭を壊さないでくれ。僕には玲子がいると吉川はきっぱりはねつける。

それでも喜久子は、今夜はここにいて!と叫びながら抱きついて来る。

その後帰宅した吉川の上着を脱がしていた玲子は、ワイシャツに着いた口紅を発見、喜久子さんね!酷いわ!結婚したばかりなのに、もう他の女の人と…と興奮し、既に寝ていたまゆみを起こしてしまう。

翌日、直接、喜久子に会いに出向いた玲子だったが、喜久子は、心配しないで、彼は見事に私を振ったわと教えるが、猜疑心に取り憑かれた玲子は、噓だわ!あなたは皆に好かれる人。吉川は今でもあなたの事が好きなのよ!と反論する。

しかし喜久子は、夕べ、私は初めて嫉妬したわ、あなたに。あの人がここに来た事を責めないで、許してあげてねと言うだけだった。

玲子は次に、吉川が働いている工事現場に来てみるが、一生懸命働いている吉川の姿を遠目で観ているうちに、何も言わずに立ち去ってしまう。

玲子の頭の中には、君のお父さんになるのはもうたくさんだと言う吉川の言葉や、まゆみのママになって頂戴とせがむまゆみの声、一生ついて行く自信はあるの?と言う母の声をのようなものが渦巻いていた。

その日、まゆみを先に寝かせた吉川は、いつまで経っても戻って来ない玲子の事を案じ、喜久子のところへ電話をして、玲子がそちらに行かなかったか?何か言ったのか?と聞く。

睡眠薬を飲んで眠りかけていた喜久子は、何を興奮しているの?あなたと寝たとでも言ってやれば良かったの?などと投げやりな答えをして来る。

吉川は、キッチンのテーブルに置いてあった人形のねじを回してみる。

その頃、玲子は、やっぱり無理だったの、若過ぎたのよ…と、高山由紀子の楽屋に来て1人泣いていた。

由紀子は、泣いてはダメ、何も解決にならないわと叱る。

翌日、吉川は、高校に行ってみるが、玲子は休んでいると言う。

まゆみも、1人お絵描きをしているだけなので、そんな娘の姿を観た吉川は、パパを責めているんだね…と呟く。

その時、高山由紀子から電話が入り、奥様を愛しているのなら「デザートイン」へいらっしゃい。思い出の場所でしょう?と告げられる。

「デザートイン」へ向かった吉川は、そこで踊っている玲子を発見するが、一緒に帰って来てくれるよな?と声をかけても、玲子は無視し、ここが良いのよ、楽しいのよ、今!と言うだけだった。

そんな2人の様子を、カウンター席でじっと見つめる高山由紀子。

吉川は落胆し、先に帰って行く。

由紀子はまだ踊り続けていた玲子に近づくと、一緒に帰ることにする。

その途中、玲子は、夜間の道路工事をしている人たちの働く姿に目を止める。

由紀子は、そんな玲子に、彼を愛しているのなら、帰る時期を間違えちゃダメよと忠告する。

翌日、保育園にまゆみを迎えに来た吉川は、先生から、まゆみちゃんなら、さっき奥様が連れて帰られましたよと聞かされ、驚いて車で家の方へ向かってみる。

すると、そこには、まゆみと手を繋いで帰宅する玲子の姿があった。

玲子は、吉川の車の気づくと、逃げちゃおうか?とまゆみに囁きかけ、一緒に近くの公園の方へ走って行く。

吉川も車を降り、そんな玲子とまゆみの元に駈けて来る。

それを笑顔で振り返る玲子の顔でストップモーション。


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