TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

兵隊やくざ 俺にまかせろ

シリーズ第6弾

すでに敗色濃厚な昭和20年の北満州が舞台なので、さすがに部隊の中での苛めと仕返しと言うパターンを描くだけではすまず、現地のゲリラとの戦いのシーンも多くなっている。

その分、初期の「兵隊やくざ」とは幾分イメージが違って来ており、普通の戦争娯楽映画に近くなっているような印象を受ける。

娯楽映画としては、かなりバランス良く組み立てられている感じで、アクションやユーモア、恋愛など、色々な要素が盛り込まれている。

とは言え、決して大作として潤沢な予算で作られている訳ではないので、戦争映画としては、全体として地味な印象がないではない。

そうした中でも、大宮の人を食った横柄さは健在で、運が強くて死なない有田と共に、もはや不死身のヒーローみたいな荒唐無稽キャラになっている。

喧嘩で負けないのはまだ分かるが、どんなに弾が飛び交う戦場でも、弾も当たらない。死ぬこともないと言うのでは、もはやギャグと解釈するしかないだろう。

冒頭の、全滅した部隊内で、岩兼曹長が瓦礫の下からのっそり立ち上がった大宮を発見するシーン、大宮の上に乗っていた壁のようなものは、明らかに発泡スチロールである。

この当時から発泡スチロールが使われていたことが分かるし、ひょっとすると、この時代の雪の表現も発泡スチロールを使用していたのかもしれないなどと想像してしまう。

そう言えば、雪の大魔神と言われる「大魔神逆襲」(1966)では、明らかに発泡スチロールの雪が大量に使われていたのを思い出した。

今回も、色々魅力的なキャラクターが登場しているが、ただ厳しいだけではなく、叩き上げの軍人としての誇りを持っている、内田良平演ずる岩兼曹長。

一見悪人面ながら、実は部下思いの須賀不二男演じる木崎隊長、そして、憎々しい渡辺文雄演じる田沼参謀など、印象的な軍人が登場している。

ヒロイン役としては、第1作目に登場した音丸の妹分だと言う長谷川待子演じる桃代と、両親を日本人に殺された渚まゆみ演じる中国人娘秀蘭との2人が登場している。

2人とも、あまり有名な女優さんではないこともあり、ヒロイン役としての強烈さはどちらも希薄な気がし、若干もったいないような気がする。

酒も飲まず、ひたすら時計の修理をするのが趣味の、酒井修演じる竹内二等兵なども印象的だが、途中でいきなり、洗濯物を盗む辺りの説明が足りず、意味が良く分からなかったりする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、大映、有馬頼義原作、高岩肇脚色、田中徳三監督作品。

昭和20年 北満州

累々と死体が転がる部隊を背景にタイトル

そこに援軍として駆けつけて来たのは、木崎隊の岩兼曹長(内田良平)たち。

全滅かと思われたが、まだ息がある兵隊が見つかったので、トラックに収容して撤収しようとしかけた時、どこからか、お~い!と呼びかける声が聞こえたので、壊れた建物の中に入ると、瓦礫の下から起き上がって来たのは大宮貴三郎(勝新太郎)と有田(田村高廣)上等兵だった。

木崎隊に編入された大宮と有田は、対戦車攻撃の訓練に参加させられるが、戦車に見立てたトラックの荷台に乗って、兵隊たちにダメ出しをしていた岩兼曹長は、トラックを降りてあれこれ注意をしている時、近くの壕から煙草の煙が上がっていることに気づき中を覗き込むと、それは大宮だと気づく。

上がって来た大宮は、岩兼兵長から睨まれても動ずる様子もなく、笑いながら、殴りたいんですか?と逆に詰問する始末。

部隊長の木崎隊長(須賀不二男)は、自室に岩兼兵長ら下士官を集め、関東軍陸軍大将西條四郎より拝領した感謝状を読み上げていた。

そして、2ヶ月間に3度も名誉あるかんじょうをいただいたのは、着任以来作戦指導に当たられた田沼参謀(渡辺文雄)のお陰であると言って、謝意を現すため頭を下げる。

その田沼参謀は、今回、作戦は本日付けを持って全面変更されたとその場で発表する。

一方、外では、寝っ転がった大宮と有田が、戦争はどうなっているんですかね~?あまりぱっとしないことは確かだなどと雑談をしていた。

大宮は、この博打に勝ち目はない。俺たちは部隊から部隊へ渡り歩いて一宿一飯の義理に預かる旅ガラスと同じなんだとぼやく。

その時、兵舎の方がにぎやかになり、1人お兵隊が近づいて来たので訳を聞くと、今日は練兵休で、田沼参謀から酒が出たんだと聞くと、大宮は喜ぶが、有田の方は、田沼?名前は何と言うんだ?と聞き、田沼誠一と知ると厳しい顔つきになる。

その頃、田沼参謀は木崎隊長と、全部隊を転進させるには、通過地点は孟家屯になりそうだが、孟家屯はこれまでもたびたび襲撃を受けている。通過点として適当かどうか?などと打ち合わせをした後、密偵の張が帰って来たとの北沢軍曹(上野山功一)の連絡を受け、別棟で待っていた張に会うため向かっていたが、その姿を有田は近くからで確認していた。

密偵の張(杉田康)は、孟家屯周辺のゲリラは近頃鳴りを潜め平静、この辺りまで下がっているようですと地図を示しながらと田沼参謀に報告、

その後、帰りかけた張は、田沼参謀の運転手滝口兵長(大川修)から、参謀から頂いた酒を飲めと呼び止められるが、自分は酒が飲めないと断ると、貴様密偵のくせに…と絡んで来る。

そこに通りかかったのが酔った大宮で、木崎隊の滝口と言えば、関東軍の中でもちっと走られているなどと威張る滝口に対し、俺はあっちの部隊からこっちの部隊へと流れ歩いた一匹狼だと言い返すと、こっちはボクシングをやっていたノックアウトの虎だ!と息巻き、勝負をしようと庭先に出る。

それを知った兵隊たちが集まり、互いに手をつないで円陣を作るとリング代わりになってやる。

最初は、滝口のパンチが優勢に観えたが、すぐに大宮が仕返しを始め、滝口を叩きのめす。

兵舎内では、有田が、熱心に時計の修理をしていた竹内二等兵(酒井修)と話していたが、そこに荒山上等兵(北城寿太郎)が、大宮貴三郎と言う奴がこの内務班にいるか?とやって来る。

有田が返事をしないでいると、大宮ならここに1人いるぞと言いながら、まだ酔いが残り寝ていた大宮が起き上がり、そのまま荒山上等兵に付いて外に出て行く。

そこには、東京浅草、隅田の鉄と呼ばれている黒田上等兵(橋木力)、大阪の板前、仙場千太郎伍長(早川雄三)、九州若松の沖仲仕、福原鉄五郎(九段吾郎)ら、ごろつきどもが待ち構えていた。

関東軍を又にかけた一匹狼とほざいた大宮を痛めつけてやろうと言うのだったが、なんてことはない、ヤクザの顔見せか?と笑った大宮は、あっという間に全員を叩きのめしてしまう。

そこに心配して様子を見に来た有田は、落ちていた大宮の帽子を拾ってやって手渡すと、派手にやったな、すっきりしたろう?と言葉をかけ、一緒に兵舎に戻って行く。

部隊長室では、岩兼曹長が木崎隊長に、孟家屯近辺地区が本日8時ゲリラに襲撃され応戦したと報告していた。

張の報告と食い違っているので、田沼参謀は、転進作戦は4日後の15日12時を持って、レイアンコウに各部隊が集結することになっていると打ち明け、この作戦、骨が折れるぞ…と心配する。

大宮と有田は、喧嘩に負けた炊事班の仙場伍長に無理を言い、好き放題に飲み食いをやっていた。

その頃、外の物干場の側で時計の修理をしていた竹内二等兵は、干してある洗濯物の数を数えると、シャツを一つ盗んでしまう。

缶詰類や田沼参謀のために特別に用意しておいたと言う酒まで手を付け、内務班に大宮たちが持って来ると、そこに北沢軍曹(上野山功一)がやって来て、いきなり内務班の中を調べ出す。

兵隊たちの軍服のボタンを外させ、1人ずつの胸元まで調べ出したとき、小隊長の岩兼曹長がやって来て、小隊長の俺に一言の断りもなく、俺の小隊の兵隊を調べるとはけしからんじゃないかと文句を言うと、物干場から自分のシャツを盗んだ奴がいます。監視兵がこの内務班に逃げむ後ろ姿を目撃したと申しておりますと、北沢軍曹が答えると、確かにこの内務班に間違いないんだな?と岩兼曹長はその監視兵に確認する。

しかし、監視兵がはっきり答えることが出来ないので、北沢軍曹は、自分としては内々にすまそうと思っていたが、曹長殿がそう正面切って出て来られると、こちらも週番士官に報告し、正式に調べてもらうことにしますと言い出す。

竹内二等兵が、班長殿!と名乗り出そうとした時、それを制した有田が、盗んだのはそっちが先じゃないのか?その監視兵に聞いてみろ。さっきから妙におどおどしているじゃないか。図星だろう?と指摘し、どうやら相打ちらしいな?勝負なしだと有田が言うと、それが上官に向かって言う言葉か!と北沢曹長は逆上する。

すると、上官もへったくれもあるか!俺が盗んだんだよ。盗んだらどうだって言うんだ!と大宮が絡んで来たので、怒った北沢軍曹は大宮の胸ぐらを掴むが、俺の正体の始末は俺がつけると割って入った岩兼曹長が、貴様、今、上官もへったくれもないと言ったな?軍律を何だと思っているんだ、貴様!よし、今日こそ木崎隊の神髄を思い知らせてやる、来い!と言い出す。

耐えきれなくなった竹内が、盗んだのは自分でありますと名乗り出るが、これは大宮と俺の問題だ。貴様は引っ込んでろと岩兼曹長は指示する。

木崎隊の神髄って何です?行けば分かるか…と有田に言い、

表に出た岩兼曹長は、俺は現役で入営して7年目に曹長になった。軍人精神では誰にも負けない自信がある。軍人精神の根本は軍律を守ることだが、今日は軍律は忘れて、貴様と俺のどっちの根性が勝つか、はっきりけじめを付けてやる!と言うので、本当に軍律はなしですね?と大宮は確認する。

そして2人は殴り合いを始めるが、それを目撃して、こら、貴様ら、何をしとるか!と怒鳴りながら近づいて来たのは田沼参謀だった。

上官に向かって殴るとは何事か?と大宮を殴って来たので、岩兼は事情を説明し、大宮も、軍律がないと言うからやっていたのに…と文句を言うが、こんな兵隊が出来たのもお前のせいだ!俺が根性を叩き込んでやる!と言うなり、田沼は岩兼を殴り始めたので、大宮は田沼の胸ぐらを掴もうとして、参謀勲章を引きちぎってしまう。

岩兼が大宮を押さえ、田沼参謀は、無礼者!と叱りつけて立ち去って行くが、大宮は上官に逆らった罪で営巣に入れられてしまう。

有田は、何とかならんかと田沼参謀に掛け合いに行く。

実は2人は、20年前、大野村の小学校で机を並べていた秀才同士だったのだ。

田沼参謀は、大宮は上官である参謀を殴ったばかりか、陛下から賜った参謀勲章を踏みにじった以上、軍法会議で処罰されるのは当然だろうと言い、今や、俺とお前の立場は天と地ほどの開きがある。1兵卒が参謀に特別な配慮を求めるなどもってのほかだと言う。

1人間の願いとして聞いて頂きたいのです!と有田は迫るが、一切の私情を捨てる。それが今日の俺を築いたのだと田沼が拒否するので、君がそこまで言うんならでは、俺にも言わせてもらいたいことがある。君の信念なるものが、野本絹子を不幸に陥れたのを誰も知らないと思うのか?君は彼女と関係があったにも関わらず、岡村中将の娘、正枝との縁談が持ち込まれるとすぐに結婚し、絹子は間もなく自殺した。君はまだまだ出世がしたいんだろう?君の今日が絹子の犠牲の上に成り立っていると公表したらどうなる?と有田は言い出す。

脅迫か?と田沼が気色ばむと、取引だ。大宮を営巣から出してやるためのと有田は平然と答える。

それでも、田沼は、公私混同はしないと断る。

有田は、夜中、営巣の窓から、煙草や飯を棒の先に吊るした袋に入れて大宮に渡してやる。

缶詰もあると、有田が窓から手を延ばすが届かず落としてしまったので、再度、別の缶詰を渡そうと手を延ばすと、見張り兵に見つかり、何ばしとっとや?と声をかけられる。

その頃、野口兵長(藤山浩二)が田沼参謀の部屋に孟家屯からの緊急連絡を持って来ていた。

それを読んだ田沼参謀は各隊長らと張を全員呼集する。

有田は、大宮と同じ営巣に入れられていた。

田沼参謀は各隊長らに、転進作戦を明後日に控え、通過地点である孟家屯が本未明襲撃された。ゲリラたちはこのまま引き下がるとは思えず、むしろ我が方に対して探りを入れて来たと思われる節がある。敵はおそらく孟家屯周辺に待機しているに違いない。敵前でしかも短時間で各部隊作戦を完了するのは至難の業である。よって各部隊を無事通過させるため、孟家屯に増援部隊を送り込みたいと思うと伝える。

兵力は?と木崎隊長が聞くと、軍に2個分隊を持ってすると田沼が答えたので、それは少な過ぎる!せめて一個小隊は必要だと思うが…と意見を述べるが、現状で2個分隊以上の兵力を割いては作戦は立てられなくなると田沼参謀から拒絶される。

さらに田沼は、隊長だが、誰か名乗りを上げてもらいたいと言い出したので、誰も答えるものがない中、後ろの方に立っていた岩兼曹長が名乗りを上げる。

木崎隊長は、この間の掃討作戦に出たばかりだから…と岩兼を止めようとするが、この際そう言う思いやりは捨てよう。岩兼曹長は実戦経験もあるし、適任だと思うと言う田沼の一言でことは決定してしまう。

その後、岩兼曹長と、遅れて部屋に入ってきた張だけを残し解散した田沼参謀は、転進作戦は予定通り15日12時に決定し、岩兼曹長が向かう。先行して敵の動きを探ってくれと命じて帰したので、軍の機密は、密偵に漏らさぬ方が宜しいかと存じますが…と岩兼は進言する。

しかし田沼参謀は、張は日本の教育を受け、軍に協力を誓った男だ。参謀の言葉が信じられんと言うのか?貴様は任務の完遂に邁進すれば宜しい。人選は俺がする。分かったな?と言い聞かす。

増援部隊に選ばれた兵隊たちには、もう2度とここに戻って来るかどうかも分からんので、私物は整理することと手紙を書くようにと命令がある。

竹内二等兵は、孟家屯とは、そんなに厳しい場所なのでありますか?と先輩兵に尋ね、横井二等兵(竹山洋介)は、母親の写真が見つからないと探していたが、その場所を教えてやった仲間は、畜生…、大宮と有田の奴、巧い時に営巣に入りやがった…と悔しがる。

ところが、その有田と大宮も牢から出され、増援部隊に加えられていた。

トラックの荷台に乗って出発した大宮は、岡の向こう側で合図する鏡の光に気づくが、岩兼曹長も気づいていた。

やがて、馬に乗った現地民とすれ違うが、その男が懐に何かを忍ばせていたようだったので、トラックを停めた岩兼曹長は、その男を呼び止め、身体検査をしてみると、通信機を持っていた。

その現地民は、いきなり横井に向け発砲すると逃げ出したので、岩兼曹長が背中を射って射殺する。

岩兼曹長は、動かしたら死ぬと言う有田の言葉を無視し、時間がないんだと言うと、横井を無理にトラックに乗せその場を出発させる。

荷台の上で、仲間たちは、横井が落とした母親の写真を彼の手に握らせてやるが、間もなく横井は息絶えてしまう。

その横井の死体を焼き、兵隊たちは英霊に対し全員敬礼する。

その後、小休止が与えられたので、有田は大宮に、お前と俺とは色々なことをやって来たが、軍隊の枠から逃れることは出来なかったな…。もう逃げられない。廻りは敵だらけだと語りかける。

田沼は、出世の邪魔になる俺を消そうとしている。お前をその巻き添えにしてすまんと有田が詫びると、営巣に入ったのは俺のせいです。すみません…と大宮の方も謝り、くよくよせずのんびり行きましょうよと有田を励ます。

孟家屯の町に来ると、慰安所の女たちが大勢手を振って来たので、トラックの荷台の上に立っていた兵隊たちも嬉しそうに手を振り返す。

その夜は、明日引き上げると言う慰安所で、日本人の慰安婦たち相手に兵隊たちは飲み始める。

音丸の妹分だと言う桃代(長谷川待子)は、音丸を知っていると言う大宮に、明日引き上げると言う時会えるなんて音丸姐さんの執念ねと嬉しそうに話しかける。

大宮はすっかり上機嫌になり、久しぶりにへそ酒でもやりましょう!と声をかけるが、有田の方は何か考え込んでおり、後でな…と言って、大宮と女を先に部屋に行かせる。

そんな元気がない様子の有田に気づいた女将(清川玉枝)が、ビールを注ごうと声をかけて来るが、日本の女を観るのも今夜が見納めか…と言うと、この店も今夜限り、寂しいね〜…と答え、何かを思いついたように、これから先はお酒もビールもただだから、じゃんじゃん飲んで!と他の兵隊たちに声をかけたので、喜んだ兵隊たちは、「さらばラバウルよ」などと歌い始める。

大宮と一緒に部屋に来た桃代は、音丸姐さん元気かしら?と案じるので、あいつのことだから、南方へ行ってへそ酒でもやってるだろうと大宮は明るく答える。

今度は決死隊だって?と桃代が聞くと、大宮は、良く知らないんだと答え、死んじゃダメよとすがって来た桃代に、俺は殺されたって死なないんだ!と笑い飛ばす。

その頃、張は、合図の明かりの方へ夜道を進んでいた。

翌日、出発した大宮たちが乗ったトラックは、待ち受けていたゲリラの攻撃を受ける。

敵は、近くの民家から撃って来るようだった。

トラックを降りた岩兼曹長は、矢部伍長(豪健司)に左翼側に廻らせ、自分は右翼側に進む。

しかし、敵の銃撃は激しく、仲間の沢木一等兵(山上友夫)が撃たれたのを観た大宮は、畜生!ふざけやがって!と叫ぶと、にわかに立ち上がり、2個の手榴弾を両手に持ったまま家に向かって走り、1個ずつ家に向かって手榴弾を投げて爆発させ、敵を撃滅させる。

一番乗りで家の中の様子を見に入った大宮は、そこで左腕に怪我をした女を発見する。

やがて、有田も側に来て、岩兼曹長も、何だ、その女は?と聞いて来る。

しかし、現地の女は全く言葉が通じなかったので、双城鎮に送って調べることにしようと岩兼曹長は言い出す。

ところが、トラックの運転手であった沢木一等兵が負傷したので、トラックを運転するものがいないことに気づく。

誰か運転できるものはいないか?と岩兼曹長が聞くと、有田が大宮がおりますと答える。

結果、その女は、有田と大宮がトラックの運転席に乗せて双城鎮へ送り届けることになる。

大宮は、言葉は分からないけど、女が側にいると良いですねなどと嬉しそうだったが、悪路を進むうちに、女の様子がおかしいことに有田は気づく。

どうやら、まだ腕の中に銃弾が残っているようで、熱を出していたのだった。

有田はトラックを停めさせると、大宮にガソリンを抜かせ、それで火を焚いてナイフを焼くと、それで自分が腕の切開をして弾を取り出そうとする。

しかし、素人の有田には、弾の在処を探し当てるだけで精一杯だったので、それまで女の身体を押さえつけていた大宮が役を交代し、何とか、女の腕から弾を抜き取ると、又、運転席に乗せ、出発する。

ところが、その直後、トラックの前にゲリラの一団が現れ、突破しようとした大宮だったが、後輪を撃たれてしまい、やむなくトラックを止めると、降りてゲリラたちに取り囲まれる。

大宮は、銃で頭を殴られ気絶させられ、有田の方は、銃で脅され、崖から突き落とされてしまう。

その頃、岩兼曹長ら増援部隊は、孟家屯のトーチカの中に到着していた。

その時、無線係の野口兵長が双城鎮からの通信を受け、タイヤに弾痕があるトラックは見つかったが、大宮と有田の姿は見えない。奴ら、投降したのじゃないですか?と岩兼曹長に伝えていた。

崖を這い上がって来た有田は、トラックの側で、落ちていた大宮のヘルメットを見つけるが、いくら呼びかけても、大宮の姿もゲリラたちもいなくなっていた。

その大宮の方は、気がつくと、見知らぬ部屋のベッドに寝かされており、側には、あの現地の娘が立っていた。

可愛い顔して、人を騙しやがって…と大宮は1人で膨れていた。

そこに入って来たのは、密偵の張だったので、大宮は驚きつかみ掛かり、待ち伏せしてただろう?車を狙ったろう!と迫るが、張は動じず、騒いでも無駄です。この辺は徹底した光琳地区ですからと言い、秀蘭は私の妹ですとそこにいた娘を指して打ち明ける。

大宮は、上等兵も一緒か?と聞くが、張は首を振る。

その頃、有田の方は、必死に大宮を探し歩いていた。

大宮は、秀蘭(渚まゆみ)が乗って来てくれた食事を旨そうに食べ始めるが、待てよ?死刑にする前にはごちそうするって言うけど…とつぶやき、ま、良いか…と1人で納得すると全部平らげる。

兄さんが言うよう通り、全部、食べましたと兄の張に秀蘭が報告すると、そうだろう。あいつはそう言う人間だと納得した張は、出発は?と聞かれると、1時間後だ。夜明け前に孟家屯に集結することになったと教え、ためらっているような妹の様子に気づくと、秀蘭、お前まさか、あの日の事を忘れたんじゃないだろうな?俺たちの両親は、俺たちの観ている前で、この戦争で殺されたんだと訴える。

部屋に秀蘭が戻って来ると、いよいよこれか?と大宮は、両手で自分の首を絞める真似をしてみせ、何時なんだ?と問いかけるが、言葉が通じないと悟ると、秀蘭の髪の毛の匂いを嗅ぎ、どうせ死刑になるんだからな…、やっちゃおうかな…などと呟くが、秀蘭が黙って部屋を出て行くと、あぁ…、上等兵殿に会いてえな…と呟く。

その頃、有田は歩いているうちにゲリラの一団に遭遇し、取り囲まれていた。

ベッドで寝ていた大宮の元に秀蘭が近づいて来たので、いよいよ呼び出しか?と大宮は覚悟を決める。

しかし、秀蘭は、ろうそくの火を消し、大宮にあなたの思い通りにして下さいと突如日本語で話しかけて来る。

何だ日本語喋るのか?と驚く大宮に、騙すより仕方なかったんです。ごめんなさいと秀蘭は詫びる。

翌朝、ベッドで寝覚めた大宮は、隣にもう秀蘭の姿がなく、代わりに、匂い袋と手紙が置いてあることに気づく。

そこには、もう二度と会えないでしょう。いつもでもお元気で 孟家屯へは行かないで下さい さようなら 秀蘭 大宮きさぶろう様と書かれてあったが、文字が読めない大宮には何が書いてあるか分からなかった。

しかし、起きて様子を観ると、部屋の戸に鍵がかけられていないことに気づいたので、思い切ってそのまま外へ逃げ出してみる。

しかし、外にはゲリラたちがいたので、家の裏側に逃げようとするが、背後からゲリラたちが撃って来る。

必死に逃げた大宮だったが、やがて観えて来たのは、木に誰から逆さ吊りにされている姿だった。

近づいて顔を確認すると有田上等兵ではないか。

驚いた大宮は、有田を木から降ろし、顔を叩きながら呼びかける。

すると、気絶していた有田が目を開き、大宮…、どこへ行っとった?と小さく聞いてきたので、色々やってたんですよ。一言では話せませんと大宮は答える。

タバコを吸わせようとしていた大宮の軍服の胸の中から、匂い袋が転がり落ちたので、それを拾い上げた有田は、これは何だと聞く。

大宮は、秀蘭からもらった手紙を有田に読んでもらう。

それを読んだ有田は、孟家屯へ行くなと書いてある。孟家屯は襲撃を受けると言う警告だ。秀蘭としては、せめてもの恩返しのつもりなんだろうと教える。

どうなります?と大宮が聞くと、まず全滅だろうと有田は答える。

穴生に兵長がどうなるか、観に行って良いですか?と大宮が聞くので、良し行こう!と有田も賛成する。

11時50分、岩兼曹長たちが籠っていた孟家屯のトーチカは、集結したゲリラの大軍の総攻撃を受け始める。

野口兵長は必死に無電で本部に連絡を送る。

敵の攻撃は凄まじく、トーチカ内の兵隊たちは次々に死に絶えて行く。

攻撃をするゲリラの背後から、大宮と有田が近づいて来ていた。

大宮は、1人のゲリラの背後から近づくと、殴りつけ、機関銃を奪い取ると、敵の背後から連射し始める。

トーチカの中では、転進部隊の姿がなかなか見えないので、岩兼曹長も兵隊たちも焦っていた。

そんな中、一瞬の静寂が訪れ、トーチカの中でも仲間の時計を修理していた竹内二等兵が、ポケットに入れていた時計との刻む音が聞こえたので、直った!と喜び、隣で銃撃をしていた持ち主の兵隊も、まさか直るとは思わなかったなと時計を受け取って喜ぶが、次の瞬間、爆発が起き、2人とも死んでしまう。

大宮と有田は、側面からゲリラたちを攻撃しながら、トーチカに近づきつつあった。

12時20分、野口兵長が本部から応答があり、現在地を死守せよとの指令ですと岩兼曹長に告げる。

それを聞いた岩兼曹長は、それだけでは分からんではないか!といら立つ。

12時32分、田沼参謀は、そろそろ転進部隊がそろそろ集結を完了する頃だな。景徳鎮の桜花部隊に、各部隊の集結状況を報告させろと副官(佐伯勇)に命じていた。

作戦は成功したよと言う田沼に対し、孟家屯を転進の拠点にするのは偽装だったのか?!と部屋に残っていた木崎隊長は驚くが、大本営の作戦は当初から景徳鎮を通過することだったと田沼は答える。

では、孟家屯へ援軍を送ったのは?と木崎隊長が聞くと、敵の攻撃を集中させるためだと田沼。

全滅を予期した上でのことか?と木崎隊長が問うと、もちろんだ。1個師団を生かすために20数人を失う…、作戦としては至極単純明快ではないかねと田沼は冷静に答える。

今からならまだ救出できる。ただちに主力を持って救出に向かう!と木崎隊長は訴えるが、許さん!この作戦の指揮は本官が執る。これは師団命令だ!岩兼などは死んで本懐だろう。それにあの隊にはならず者が多過ぎる。木崎隊も掃除が出来て良いではないかなどと田沼参謀は言う。

みんな俺の部下だ。参謀も兵も人間には代わりはない!と木崎隊長が憤ると、失礼ながら、その考え方を変えない限り、いつまでも野戦部隊からは足を洗えんぞと田沼は嘲る。

一方、トーチカの中では、通信係の野口兵長が、景徳鎮の桜花部隊からの緊急報告を傍受していた。

作戦 成功 桜花部隊…それを聞いた野口兵長が、曹長殿!自分たちは一体どうなるのですか?と聞くと、参謀は俺たちを囮にしたんだと悔しそうに岩兼曹長は答える。

その後も、次々と兵隊たちが死んで行き、とうとう岩兼曹長も倒れる。

そんなトーチカ内に、大宮と有田がやって来て、倒れていた岩兼曹長に気づく。

曹長殿!と大宮が呼びかけると、貴様…、やっぱり来たな。大宮、田沼参謀は、やっぱり俺たちを殺す気だった。俺は軍人だ。敵と戦って死ぬのは覚悟の上だったが、味方に騙されて死ぬのは…。帰れ!貴様たちだけは生きるんだ…と言いながら死んで行く。

大宮は、このままでは我慢できねえ!と叫ぶと、トーチカを飛び出して行くと、弾薬箱を持ち出しゲリラがいる正面の方に出ると、思いっきり弾薬箱を投げ、それに向かって機関銃を撃ち、大爆発を起こす。

さしものゲリラたちもこれには驚き後退して行く。

木崎隊長は、又してももらった、孟家屯での働きに対しての感謝状を泣きそうになりながら読んでいた。

田沼参謀は、車で移動していた。

有田と大宮は、トラックに乗って本部に戻っていたが、道の反対側から近づいて来る田沼の乗った車を観かけると、その前で横付けし車を停める。

トラックを降りた大宮は、車の運転をしていた滝口兵長を引きづり出すと、後部座席に乗っていた田沼参謀に降りろと迫る。

すると、沼田は拳銃を突きつけて来るが、それに対して機関銃を突きつけた有田が近づいて来て、大宮は銃を取り上げると、滝口と副官を脅して車で立ち去らせる。

大宮は、残された沼田参謀をこてんぱんに叩きのめし、上等兵殿、まだやりますか?と聞く。

もう、勘弁してやれと有田は言い、トラックに大宮と乗り込むとそのまま走り去って行く。

一人道に残された田沼参謀は、悔しそうに、自らの参謀勲章を引きちぎる。

運転していた大宮は、上等兵殿、これからどうします?と聞き、助手席の有田は、お前に任せる!と答える。