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兵隊やくざ脱獄

シリーズ第4弾

冒頭は、あっさり憲兵隊に捕まってしまった有田と大宮が、警務所暮らしを始める様子が描かれている。

そこでは、これまでの軍隊や憲兵隊とは違った試練が2人を待ち受けていた…が、そこも逃げ出した2人はあっさり捕まり、もはや銃殺は免れない所まで追いつめられる。

ところが、そこから急転直下、2人は再び軍隊へ戻されることになるのだが、この辺の展開は、かなりご都合主義と言うしかない。

後半は、いつもの軍隊内でのしごきになるかと思いきや、何と、殺人事件の謎解きと言う趣向になる。

何となく「独立愚連隊」のような趣もあるが、観客は犯行現場を目撃しているので、謎解き趣味はない。

いよいよソ連が参戦して来た歴史的な背景の中、有田と大宮の堅い絆はどう言う運命を辿るのか…?

大宮のおとぼけ演技も絶好調で、それを、田中邦衛、中谷一郎、草薙幸二郎、小川真由美と言ったゲスト陣がしっかり支えている。

何となく、こじんまりとした印象がないではないが、娯楽作品としてはこなれて来た感じで、素直に楽しめる作品になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、有馬頼義原作、舟橋和郎脚色、森一生監督作品。

(サイドカーの車輪を背景に)タイトル

トラックの荷台に乗った憲兵隊が銃撃をしながら、大宮貴三郎一等兵(勝新太郎)と有田上等兵(田村高廣)を乗せたサイドカーを追跡して来る。

サイドカーは、やがて、ぬかるみに車輪を取られ、動けなくなったので、有田と大宮は乗り捨てて逃げようとするが、すでに憲兵隊に包囲されてしまう。

降りた有田は、大宮、どうやら年貢の収め時が来たらしいと呟く。

2人は、従軍逃脱と抗命の罪で、奉天の陸軍刑務所に未決囚として入れられた。

有田上等兵は30号、大宮は31号と番号で呼ばれることになる。

彼らを迎えた看守の椎名伍長(五味龍太郎)は、彼らの罪状が逃亡と知ると、泥棒より悪い。軍隊を逃亡して楽としようとしたら、たどり着いたのは地獄の一丁目だと2人に告げる。

30号は3号室、31号は4号室に入ることになるが、毎回、入る前に、腰紐をゆるめ、両手大上段、中腰、大口…と言うスタイルで身体検査を強要される。

房内では、壁に向かって正座30分、安座30分と言う姿勢を強要される。

椎名伍長は、大宮の隣に座っていた26号こと沢村(田中邦衛)から、130ヶ条ある獄則を教えてもらえと言う。

その沢村に何をやったんだ?と大宮が話しかけると、でかいことをやったんだと人差し指を曲げながら言うので、殺しか?と聞くと、将校用マント、長靴、砂糖などと言うので、単なるかっぱらいだと分かる。

看守は、そんな大宮に、目も動かしてはいかん。動かしたいときは看守に言えと言い、夜中は、まっすぐ上を観て寝なければいけないなどとうるさいので、俺は生まれつき寝相が悪いんだ!寝た後のことは知らん!と言い捨てて、ふて寝する大宮だった。

翌朝、起床して顔を洗った大宮は、支給されて手ぬぐいが半分の長さしかないことに気づき、けちくさいなと文句を言うが、一人前の手ぬぐいだと、脱走や自殺に使われるからだと沢村が教える。

各房内の点呼が始まるが、大宮が頑として番号を言おうとしないので、大宮は罰として、銃を背中に衣紋掛けのように担ぎ、1600回も廊下を往復して歩かされる。

そうした大宮の姿を、隣の房には言っていた有田上等兵はじっと見つめるしかなかった。

廊下の往復を終えた大宮だったが、ふらふらになって房に戻る時、又もや、中腰大口!と命令して来た椎名伍長につかみ掛かると、相手が取り出した小刀をへし折ってしまったので、看守への反抗と兵器破損の罪で、本日より10日間、減食を命じられてしまう。

晩飯時、大宮だけは飯が配給されなかったが、そんな中、26号こと沢村が椎名伍長に呼ばれ、慰問袋が届いたが、渡すわけにはいかないので、ここで開封すると言うと、牢の外で慰問袋を明けられる。

中には1枚の写真が入っており、そこに写っているのは、愛妻のひさ子だと沢村は喜び、渡せるものはちり紙だけだと言われた沢村だったが、他のものはいらないので、伍長殿が使って下さいとべんちゃらを言う。

それを聞いていた大宮は、何だ、おべんちゃらなんて使いやがって、反吐が出ると飯の席に戻って来た沢村に文句を言うと、飯の1食や2食、抜いたって、どうってことないやと負け惜しみを言う。

そんあ大宮を不憫に思ったのか、沢村は自分の飯を少しちり紙に乗せて包むと、そっと大宮に手渡し、早く懐に入れろと勧める。

ある日、又名前を呼ばれ、牢の外に出た26号こと沢村二郎一等兵は、窃盗の罪で起訴されたが、情状酌量され起訴処分を取り下げられ、明朝出所し、現隊に復帰することになったと椎名伍長が伝える。

沢村は、放免されるんでありますか!ありがとうございます!みんな、看守どののお陰であります!ありがたくあります!などとおべんちゃらを並べたので、分かってれば良いと上機嫌になった椎名伍長は、みんな、放免されたければ、26号のように模範囚になるんだなと房内の囚人たちに伝える。

ある日、使役として穴掘りをさせられていた大宮は、こっそり有田上等兵の元にやって来ると、朝飯だけでは辛いだろうと言われるが、飯なんかより、酒と女ですよなどと答え、看守にゴマをすると早く出られるそうですよと教えるが、有田は、俺たちは窃盗などとは訳が違う。銃殺、良くて無期懲役だと言い聞かせる。

すると大宮は、じゃあ、脱獄しましょうよなどと言い出す。

その夜、房内の蛇口を強引に引き抜いて壊した大宮は、水が溢れ出したので看守を呼ぶ。

看守が房内に入って来て蛇口の様子を観ると、もう1人の看守に元栓を締めさせに行かせたので、大宮は、寝具用の毛布を房内に残っていた看守の頭からかぶせ、殴って気絶させると、帽子と上着、鍵を奪い、牢の外に出ると、隣の房の有田も出して逃げ出す。

ただし、牢を出る時、鍵を外から締めたので、他の囚人たちは逃げることが出来なかった。

棟の外に出た有田は、自分のメガネを大宮に貸し変装させる。

見張り兵に出会うが、有田と大宮が堂々と現れると、上官と思い込み、異常ありません!と伝達して、2人を見逃してしまう。

入口にやって来た有田は、門番の兵隊に、急病人が出ましたので医者を呼んできますと噓を言い、門の鉄扉を開けさせることに成功する。

門番兵は、腕章をつけておらんな?などと言って来るが、急だったので、後でこちらに連絡があるそうですと有田がごまかすと、医者に行くのならアルコールを手に入れて来い。メチルじゃないぞと門番兵に頼まれ、一旦門を出かかる。

ところが、門番の小屋に電話がかかって来たので、門番兵は有田と大宮を中に呼び戻す。

その時、門番室に戻って来た3人の見張り兵の1人が、有田と大宮の顔をじっと見つめ、やがて、貴様!と怒鳴り出したので、2人は一目散に門から外へ脱出する。

夜の闇に紛れ、近くの鉄道までたどり着いた2人は、追手もいないことに気づき一安心するが、次の瞬間、周囲の草むらから憲兵たちがずらりと姿を現す。

刑務所を脱獄した奴は、みんなここに来ると、最初から分かっていたらしかった。

我々の銃殺は、これで決定的になった…と有田は感じる。

刑務所の尋問室に戻された2人の前に現れた法務官は、有田の捕縛を解いてやると、有田、俺だよと親し気に声をかけて来る。

やっぱり永井か!と有田も、かつての大学の旧友を思い出す。

永井中尉(中谷一郎)は、検事に聞いて来たが、相当なことをしたなと有田に話しかけ、死刑にはせん。お前を死刑にはさせんよ。俺の力で何とかしてやると約束してくれる。

有田は、軍法会議にも閥があるのか?とちょっと驚き、自分だけ捕縛を解いてもらえず放っておかれた大宮は、自分も助けてもらえるんですか?と永井に聞く。

しかし、永井は大宮に、お前は実行犯だからな…、うやむやにするにはいかんから、責任を取ってもらうことになるなどと冷たく言うので、有田は、俺の命令で大宮はやったんだと弁解する。

永井はそんな有田に、この際、縁を切った方が良いのでは?と助言するが、2人は今まで苦労を共にして来たんだ。今更別々にはなれんと有田は力説し、永井に懇願する。

我々は九死に一生を得た…と有田は思った。

2人は刑務所を出ると、ちゃんこうつうへ行く部隊に編入され、2人だけはそこからさらにソ満国境の最前線部隊に転属されることになる。

有田は一等兵に降格されていた。

どうして俺たちは軍隊から縁が切れないんでしょうね?と輸送列車の中で大宮がぼやく。

ちゃん交通に到着した列車から、他の兵隊たちは降りて行き、有田と大宮は、そのまま貨車の中に残っていた。

この町で降りませんか?遊んで行きましょうよ、これからは看守付きじゃないんですからなどと大宮は言い出すが、有田は、永井の顔を潰す訳にはいかんと断る。

その時、彼らが乗っていた貨車の中に、1人の女が乗り込んで来る。

その女を追って来たらしき男(水原浩一)も乗り込んで来て、嫌がる女ともめ始める。

見かねた大宮が立ち上がり、男に、嫌だと言ってるんだから止めろと注意すると、貴様はどこの部隊だ?わしは将校待遇の軍属じゃなどと威張り始めたので、頭に来た大宮は殴りつけ、貨車から突き落とす。

女は、胸がすーっとしたと言って喜ぶと、自分は、有田たちが向かうしんかどうの「花月亭」で働いている珠子(小川真由美)だと自己紹介する。

有田は、自分たちは奉天の特別部隊から来たと噓を言う。

しんかどうに着き、部隊に合流した有田と大宮だったが、到着が遅かったので、ピー屋に寄って来たのだろう?などと、いきなり佐々木軍曹(草薙幸二郎)から言われのない叱責を受ける。

すでに、他の兵隊が寝ていた部屋に案内され、適当な所に寝ろと言われた大宮は、寝ていた兵隊の毛布をはぎ取ろうとするが、その兵隊は毛布を放そうとせず起き上がって大宮を睨みつけて来る。

それは、刑務所にいた26号こと沢村だったので、有田は、大宮が色々世話になったなと礼を言う。

有田と大宮は、翌日から、初年兵教育の最初からやり直させられた。

軍人勅諭を言ってみろ!と佐々木軍曹から命じられた大宮だったが、最初の行すらまともに言えなかった。

そこに体長がやって来て、第一班は近日中に、監視哨に向かうことになったと知らせる。

久々に町に出て「花月亭」の珠子に再会した大宮と有田は、音丸を思い出すな〜、へそ酒でもやりましょうかなどと上機嫌になる。

泊まっていくんでしょう?と珠子から聞かれた有田は、夕飯までに戻ると答え、3人はビールで乾杯をする。

その時、珠子を指名しにやって来たのは佐々木軍曹で、今、先客があると聞くと、今日外出したのは、我が小隊だけのはずだが…?と首を傾げる。

珠子の部屋を覗いた佐々木は、そこにいるのが一等兵の有田と大宮と知ると、貴様ら、ここをどこだと思っている!将校、下士官の部屋だ!出て行け!と怒鳴りつけ、2人を追い出す。

廊下に出された大宮は、このままじゃ我慢できんといきり立ち、他の女で我慢しろと諭す有田に耳打ちすると、廊下に置いてあった防火用の砂バケツを取ると、有田に踏み台になってもらい、珠子の部屋の仕切りの上から、中にいた佐々木軍曹の頭の上に、砂をぶちまけて帰る。

それを観た珠子は、ネズミがいるわ!ネズミ!ネズミ!と愉快そうにはしゃぎ出す。

部隊に帰って来た佐々木は、出発は午前8時、我が監視哨は黒龍江支流を挟んでソ連と向かい立っている場所にあり、300m置きに4カ所ある。その第一監視哨を受け持つ、一応地図でこの当たりの状況を説明すると言いながら、ポケットから地図を取り出すが、その中に砂が入っていたんで、思わず、大宮は笑ってしまう。

すると佐々木軍曹は有田と大宮を下士官室に呼ぶと、ベルトで執拗に殴りつけて来る。

佐々木は、珠子は俺の女だ。身請けして内地に連れて帰るんだ。今後珠子と付き合うことは許さん!お前ら、俺の報告一つでな、貴様らの仮釈放を取り消させるんだ。そうなりゃ、お前たちは又刑務所へ逆戻りだ!そうして欲しいのか?と威嚇して来る。

その夜、大宮は、外で虐待を受けた有田の手当をしながら、すみません!上等兵殿にまで迷惑をかけてと詫びつつも、今まで色んな上等兵に会ったけど、あの野郎が一番たちが悪いや、いずれ、この借りは返しましょうと話していた。

その時、近くの暗がりに出て来た兵隊が地面に何か埋めていた。

それは沢村一等兵だったので、近づいた大宮は、今何を隠していた?金だろう?この辺は砂金が出るからななどと聞く。

観られていたと知った沢村は、翡翠だよ。溜め込んでたんだと教え、まさかお前、狙らう気じゃないだろうな?と大宮を睨みつけて来る。

俺はそんなケチな奴じゃねえよと大宮は憤慨する。

これで内地に帰って、もっとひさ子を可愛がってやんなきゃ、俺は死ねねえよと沢村は哀し気に呟く。

翌日、監視哨に登って、望遠鏡でソ連の方を眺めていた大宮は、ソ連はドイツに男ばかり出して、後は女ばかりと聞いたんだけどなぁ〜などとのんきなことを言うので、呆れながらも有田は、俺は内地のことを考えていた。俺たちは、内地に帰りたいばかりに色んなことをやったが、結局、内地から一番遠い所に来てしまったな…と感傷に耽る。

その後、兵隊たちを整列させた佐々木軍曹は、誰か、皮で鴨を撃って来るものはおらんか?と言い出すが、誰も返事をしない。

大宮、お前も怖いのか?と挑発して来たので、大宮は行きましょうと言い、その代わり、鴨を撃ったら外出させてくれますか?と願い出る。

佐々木は、良かろうと言い、自分の銃を大宮に貸してやるが、横にいた有田は、止めろ大宮、行けば、必ず撃たれる。相手は熟練した狙撃兵だと声をかけ、佐々木に対しては、下手をすると、日ソ開戦になる恐れがありますと進言する。

しかし大宮は、内地にいた時、一度も弾に当たったことはないなどと言うので、バカ!ヤクザの弾とソ連の弾は違う!と有田は怒る。

それでも大宮は川に出向いて行き、近くで泳いでいた鴨に向け発砲すると、すぐに、ソ連兵から狙撃される。

一瞬、大宮が倒れたので、やられたかと思った佐々木は薄ら笑いを浮かべるが、何とか大宮は弾を避けており、自分が撃った鴨と、ソ連兵が撃って殺した鴨の二羽を拾い上げると、嬉しそうに戻って来る。

佐々木は鴨を受け取ると、今夜は鴨鍋だ!と言いながらも、約束通り、出かけようとする大宮に対しては、ただし、珠子の所へは行ってはならんぞと注意する。

「花月亭」にやって来た大宮だったが、女たちはほとんどおらず、病気で残っていた女が、珠子は将校宿舎に言ったと教えてくれる。

それでも大宮は、その女を珠子の部屋に連れて来たので、女も酒を持って来るわねと言って出て行く。

大宮は、ベッドの上に置いてあった枕を投げ捨て、ちょっと残念がる。

その夜、佐々木は沢村を自分の部屋に呼び出すと、頼みがあると言い出し、今、大宮が外出した。珠子に会うなと言ったが、花月亭に行って確かめて来て欲しいと言う。

今から行くと1時になるので、泊まって来て良いと言うので、沢村は承知して、1人町に向かうが、その途中、後ろから追って来た佐々木が呼び止め、お前、そこに翡翠を持っているだろう。隊にいた時、それを埋めていたな?それはどうした?盗んだのか?刑務所に戻りたくなければ、その翡翠、俺に渡さないか?言うことを聞けば、黙って置いてやるぞと言い出す。

沢村は断固として渡そうとしなかったので、その場でもみ合いになり、逃げかけた所を、佐々木から背中を撃たれてしまう。

監視哨で、その銃声に気づいた有田は、佐々木に報告に戻るが、部屋にはいなかった。

それで、外に探しに向かおうとしていると、隊に戻って来た佐々木と出会う。

班長殿、今、銃声が聞こえましたと有田が報告すると、佐々木は、俺が撃った。沢村を射殺した。死体を監視哨まで運べと命じる。

翌日、佐々木は兵隊たちに、昨夜消灯後、俺が監視哨の巡察を終えて帰って来た時、沢村が出かけるのを観た。どこへ行くのかと問いただすと、奴は逃げた。逃亡をしようとしたのである。だから俺は後ろから射殺した。敵前で戦線離脱したものは直ちに処刑される。ここは敵前である。ソ連とは交戦状態ではないが敵前に変わりない。俺はこの手で部下を射殺したくなかったのであるが、それが軍律である!と説明し、刑務所で一緒だった有田に、中隊へ遺体を届けろと命じる。

沢村には愛妻もいる。出来れば逃亡の汚名を着せたくない。戦死の扱いにしてやりたい。俺が中隊長殿に手紙を書くから、お前はそれを持って行けと有田に言う。

リヤカーに沢村の遺体を積んで中隊に向かっていた有田は、花月亭から戻って来た大宮と出会う。

沢村が死んだよと教えると、どうして死んだんです?と大宮が聞くので、夕べ、逃亡しようとして撃たれたそうだ。沢村は、脱走するほど気も狂っておらんし、度胸のある男じゃないと思うんだと有田は付け加える。

それを聞いていた大宮も、おかしいですね?私も行きます。こいつには、ムショで世話になってますからと言って、リヤカーに付いて来る。

俺たち、さんざん逃亡しても殺されなかった。軍隊なんて、バカな話だらけだよと有田は言う。

何で死んじまったんだよ、もう母ちゃんを可愛がってやることも出来ないじゃないか。せっかくちょろまかした翡翠を…と大宮が、沢村の死体に語りかけるのを聞いていた有田は、翡翠?俺は沢村の所持品も調べたが、そんなものは持ってなかったぞと教える。

翡翠も持たずに逃亡するはずないな…、きっと班長が盗んだんだ!と大宮は気づき、隊へ戻ろうとする。

有田は、班長は最初から翡翠が目的だったのかも知れん。相手は相当な悪党だ。締め上げても簡単には泥を吐かんぞ。証拠を掴むんだとなだめる。

遺体を送り届けた帰り、花月亭に立ち寄った有田と大宮は、珠子の部屋で、お通夜のまねごとをする。

しかし、有田も大宮も、少しも酔えなかった。

寄ってセンチメンタルになった有田は、珠子に内地に帰りたくないかと聞く。

珠子が帰りたくないと答えると、そんなはずはない。満州にいる奴は誰でも内地に帰りたいはずだと有田は食い下がる。

珠子、お前、惚れた男はいるのか?いるんなら、そいつと一緒に内地に返してやりたいと有田は言う。

珠子は、ここにいるじゃないと戯け、内地に帰りたくないと強がる。

佐々木班長が、お前を身請けして内地に帰ると言っているぞと有田が教えると、あんな奴、お断りよと珠子は言い、沢村も内地に帰りたがっていたんだ。だから翡翠を集めていた…と言う大宮の言葉を聞くと、そう言えば、佐々木が、兵隊の中に翡翠を集めている奴がいると言ってたわよと教える。

畜生、やっぱり、奴は翡翠の事を前から知ってたんだよと大宮は悔しがる。

翌日、ドラム缶風呂に入っていた佐々木の所に近づいた大宮は、火の加減を見る振りをしながら、背中を揉みましょうか?自分は地方で三助をやったこともありますと声をかける。

そして佐々木の背中を揉み始めた大宮は、佐々木が胸から下げているお守り袋に気づき、何のお守りですか?と聞くと、触るな!と急に警戒した佐々木は、武運長久のお守りだと言うと、大宮を追い払う。

有田に会った大宮は、班長の奴、翡翠を持っていますぜ。首から下げたお守り袋の中と教え、今夜、奪いましょうと言う。

有田は、午前3時にお前を起こすと約束してその場は別れる。

その夜、監視哨にいた有田は、午前3時きっかりに交代の兵隊に場所を譲ると、下に降りていたが、その時、監視哨が突然砲撃を受け破壊する。

有田は、敵襲!と叫ぶ。

昭和20年、8月9日、午前3時、突然、ソ連軍は攻撃して来た。

その騒動の最中、佐々木が逃げた事を知った有田は、珠子の所じゃないか?と、一緒に探していた大宮に告げる。

その言葉通り、花月亭に来ていた佐々木は、ソ連軍が攻めて来る。逃げるんだ!と珠子を連れ出そうとしていたが、珠子は動こうとはしなかった。

そこに駆けつけて来た有田と大宮は、銃を佐々木に突きつける。

大宮から突き飛ばされた佐々木は、貴様ら刑務所に逆戻りだぞ!と脅して来るが、こうなったら、刑務所も軍法会議もないじゃないかと言うと、佐々木を叩きのめし、お守り袋の中の翡翠を見つけると、この翡翠のために、こいつが沢村を殺しやがったと呟く。

この人が兵隊さんを?何だって、兵隊さんを殺したのよ!と側で観ていた珠子が泣き出す。

立ち上がりかけた佐々木だったが、それを射殺した有田は、生きていても、どうせソ連軍に殺されるんだと言う。

嫌がる珠子を連れ駅に来てみると、爆撃で線路が破壊され、列車は動かないと言う。

部隊本部からトラックが出ると言うので、他の群衆と一緒にその場所へ向かった有田たちだったが、珠子は帰りたくないとぐずる。

大宮は、そんな珠子の頬を叩くと、状態ちょうどのはお前だけでも内地に帰したんだよと言い聞かす。

ところが、部隊本部に来てみると、軍人の家族が優先で、それ以外のものは許可証がなければ乗れないと言う。

珠子を自分の家内だと申告した有田だったが、兵隊の家族は後で、将校の家族の方が先だと輸送指揮官は言う。

有田は、大宮に翡翠を出させると、それを係の兵隊に渡し、許可を許される。

翡翠のお陰だと呟いた有田は、トラックの荷台に珠子を乗せると、残りの翡翠を何かの時に使うんだと言って渡す。

珠子は急に号泣し始める。

大宮は、もう1度3人で遊びたかったなと言い、珠子は、死なないで!と2人に呼びかける。

その時、将校たちが荷台に乗り込んで来たので、女子供を乗せないで軍人が先に逃げると言う法があるか?と有田は憤る。

将校の1人が、荷台に据え付けてあった機関銃を取って2人に向けて来るが、次の瞬間、撃たれて倒れる。

銃を撃ったのは珠子だった。

地面に落ちた機関銃を奪い取った大宮は、将校たちをトラックから降ろして並ばせると、機関銃を受け取った有田が、奴らの階級章をはぎ取れと大宮に命じる。

大宮は、こんなものをべらべらとつけやがって…と言いながら、階級章をはぎ取ると、1人ずつ殴り倒して行く。

外で待っていた一般人をトラックに乗せた有田は、輸送指揮官に命じ、トラックを発車させる。

大宮は、珠子のトラックに飛び乗ると、珠子と熱い口づけを交わすが、その間も、トラックは本部を出て遠ざかっていた。

途中でそれに気づいた大宮は戻ろうとするが、珠子は、私より上等兵の方が好きなの?と止めようとする。

それでも、トラックから飛び降りた大宮は、上等兵殿〜!と叫びながら、軍隊本部で1人立っていた有田の元に戻って来るのだった。