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兵隊やくざ大脱走

シリーズ第5弾

前半は、従来通り、理不尽な下士官たちの横暴に力で対抗する大宮の暴れん坊振りと、女との関わりが描かれているが、後半は、危機に陥った開拓団の村を、少人数の兵隊たちと共に助けに行くと言う救援話になっている。

ユーモア色も健在で、有田と大宮が将校に化けて軍隊に潜り込む件のハラハラ感とハチャメチャ振りは面白い。

このシリーズだけではなく、「悪名」シリーズの方でも良くゲスト出演している芦屋雁之助、小雁兄弟と大宮との風呂場での掛け合いなどは、特に楽屋落ちが入っており愉快。

憲兵青柳役の成田三樹夫も再登場しており、意外な展開を見せる。

今回のヒロイン役は、従来の慰安婦ではなく慰問団の娘であるのも異色。

大宮が初恋の人に似ていると言い惚れる初心な娘を大楠道代(=安田道代)が演じているが、世間知らずのお嬢さんと言った感じではなく、生きることに執着する強いタイプの女性になっており、これまでのシリーズに出て来たヒロインたちと、又ひと味違う魅力を持っている。

その弥生と父親を汽車に乗せに町へ行っていた大宮が、部隊に戻ってみると、すでに部隊は全滅、上等兵殿〜!と絶叫しながら号泣する姿は感動的ですらある。

その後の展開は、まじめに考えるとおかしなご都合主義なのだが、その辺の無茶さを強引に見せてしまう魅力がこのシリーズにはある。

若き清島見習士官を演じているのは平泉征(=平泉成)であるのにも注目したい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、有馬頼義原作、舟橋和郎脚色、田中徳三監督作品。

ソ連の大軍が黒龍江を渡河し、今や南下中である!

だが、世界に冠たる関東軍の名を辱めるようなことは断じて出来ない。我が朝倉隊は、当地点に辺かとなって、最後の1兵まで戦って戦って戦い抜く。お前らの命は、この朝倉が預かる。異存はないな?

隊長の朝倉中尉(仲村隆)の訓辞を聞く兵隊の中に、大宮貴三郎(勝新太郎)と有田上等兵(田村高廣)コンビがいた。

スタッフロール

今より直ちに壕掘りに取りかかれ。今日1日で対戦車壕を掘るのだ。1台でも多くの敵戦車をこの壕で食い止めるのだ。お前ら1人1人が敵戦車を1台ずつ確さ炎上せしめれば、100台の戦車をこの壕で食い止めることが出来るのだ。

キャストロール

壕堀りを始めた有田と大宮に、佐藤兵長(勝村淳)が、おい、新入り!お前ら国境にいたんだろう?ソ連の戦車を観たか?と聞いて来たので、監視哨から1度観たと有田が答え、どんな戦車だった?と聞かれた大宮は、日本の3倍はあるよと答えたので、兵隊たちは、玉砕か…と諦めたような声を出す。

大宮も、俺たち死ぬんですか?と不安げに聞くと、有田は、戦車と命の交換なんて馬鹿げた死に方はしたくない。俺たちは死なんよ…と慰める。

その後、部隊に戻った兵隊たちは花札などに興じていた。

長谷上等兵(藤山浩二)に対し負け続けている佐藤兵長(勝村淳)の勝負を横で観ていた大宮は、にやりと笑いかけると、兵長殿、取り返してあげましょうか?と声をかけ、自分が兵長に代わって勝負をすることにする。

最初の勝負は、「かぶ」だった大宮が勝ち、次の勝負では、「かぶ」と言った長谷上等兵が金を取ろうと手を伸ばすが、その手を押さえた大宮は、長谷上等兵の左手首をそのままゆっくり裏返すと、袖口から1枚の花札が覗いていた。

それを観ていた佐藤兵長は、イカサマだったと気づき、長谷上等兵と喧嘩を始める。

他の兵隊たちは両者を押さえつけて喧嘩を止めようとするが、興奮した佐藤兵長は軍刀を抜き、「お前ら、ぶっ殺すぞ!」と廻りを脅し、長谷上等兵の方も軍刀を抜いて殺気立つ。

その時、大宮が両者の間に割って入ると、殺す?殺してみろ!シャバにいたら、お前らなんかに嘗められる俺じゃないんだ!殺してやろうか?と怒鳴りつけると、佐藤兵長の軍刀を奪い取り、殴り倒し、長谷上等兵の方も同じように殴り倒す。

他の兵隊たちは、今度は大宮を取り押さえようとつかみ掛かるが、それまで静観していた有田が、止めろ、大宮!と制止する。

そこへ、木部准尉(北城寿太郎)がやって来て、今夜中に全員手紙を書け。これはただの手紙ではない、遺書だ。髪の毛と爪を入れるように。後方に移動する部隊に託すと命じる。

その夜、有田は遺書をしたためていたが、隣のベッドで大宮が何もせず寝ていたので、書かんのか?と聞き、すぐに、そうか…、お前は字が書けんのだったな…と気づく。

有田が代筆してやると言い、相手は?と聞くと、起き上がった大宮は、女ですよ…、音丸、染香、珠子、ももこ…と、これまでで会って来た女の名を挙げたので、1人にしろ。桃子にしたらどうだ?仮にも、結婚式を挙げて、嫁に下相手だと勧める。

大宮は、有田が書いたと言う「思えば空しい24年」と言う書き出しを参考にし、「思えば、お前のからだは良かった。俺はお前のことを忘れないよ。ひょっとしたら、俺は死ぬかも分からん。どうせ死ぬなら、お前の腹の上で死にたかった。お前はもう誰とでも結婚して良いのだ。巧くやれよ。」と言うので、少し呆れながらも、有田は、その言葉を元に手紙を書いてやることにする。

その夜、見張りに出ていた有田は、近くで寝転がってタバコを吸っている大宮の側に来ると、お前はあいからわずのんきだな…と呆れる。

大宮は、敵さんはもう来ませんよと言い、孫呉まで来たそうだと言う情報を有田が教えると、孫呉ならここより南でしょう。ここは通り過ぎたんですよ。将棋だって、金と歩が並んでりゃ、金の方を取るでしょう?等と言い出したので、ありはは、巧いことを言うなと感心する。

一服終えた大宮が、次に監視に出かけると、草むらの向うから2人の人影が近づいて来たので緊張する。

しかし、その人影は、日本人だと声をかけて来て、自分たちは親子の慰問団なのですが、逃げ遅れてしまって…、3日間飲まず食わずで歩いて来たので助けて下さいと言うので、取りあえず上等兵に声をかけ、部隊に連れて帰ることにする。

有田に連れられて来た親子に会った朝倉中尉は、一目で子供の方が女であることを見抜き、助けてやりたいのは山々だが、我々はこの地で玉砕する。保護してやるわけにはいかん。と教える。

親の笹原(南都雄二)が、玉砕する時は、自分たちが代わって鉄砲でも何でも持って…と気丈に答えると、それだけの覚悟が出来ておるなら良かろうと言うことになり、木部准尉を呼ぶと、この連中を泊めてやれ。1人は娘だ。女を兵舎に泊める訳にはいかんなと伝えると、そうですな…、兵隊たちは気が立っていますから、納屋が空いてますと木部は応ずる。

納屋に案内した木部准尉は、当番兵に風呂を沸かせ、そのドラム缶風呂に娘が入っている時、わざと中に入り、人を呼ぶわよと睨まれると、お前は初心だな?お前が初心か、すれっからしか確かめてみたかったんだなどとにや付きながら出て行く。

翌朝、女が部隊内にいると長谷上等兵が兵舎に知らせに来たので、兵隊たちは騒然となるが、大宮も興味津々と言った顔になり、寝ていた有田を起こしてそのことを教える。

すると有田は、バカ!慰安婦じゃない、慰問団だ。お前が連れて来たんだと言ってあきれかえる。

笹原とその娘は、兵隊たちの前で芸を披露することになるが、衣装も楽器もなくしたので、兵隊さんに借りたハーモニカを笹原が吹いて、娘の方が歌うと説明する。

「桜」を歌い終えた娘は、続いて、兵隊さんの故郷の歌を歌いますと前置きし、「会津磐梯山」を歌い始める。

すると、兵隊たちから手拍子が起き始め、自分の初恋の女に似ていますと隣の有田に囁いた大宮は、すっかり浮かれて来て立ち上がると、ニコニコしながら前列まで出て来てしまったので、周囲の兵隊たちから取り押さえられそうになる。

その後、納屋の娘を1人訪ねた大宮は、その娘の名が弥生(大楠道代)である事を知ると、自分の初恋の人に似ていると打ち明ける。

そんな2人に近づいて来たのは、班長の黒沼軍曹(五味龍太郎)ら2人の上等兵だった。

大宮!貴様、誰の許可を受けてここへ来た?これが読めんのか?と言って、「部隊ノ者、許可ナクシテ、立ち入りヲ禁ズ 隊長」と書かれた立て札を示すが、これは何と書いてあるのでありますか?自分は字が読めないのでありますと大宮が平然としていると、初年兵の分際で!と言うなり、殴られる。

しかし、あまりの大宮の面の皮の厚さに手を痛めた2人の下士官は、腹立ち紛れに軍刀で大宮を殴りつけ始める。

納屋の中からでて来た笹原は、その様子に眉をひそめるが、弥生の方は比較的平然としていたが、堪忍袋の緒が切れた大宮は、相手の軍刀の鞘を奪い取ると、それで、2人の上等兵をめった打ちにし始める。

そこに、駆けつけて来た有田が、止めろ、大宮!みんな暴れたいんだ。みんなが暴れ出したらどうなる?良く考えろ!と言って大宮を制止し、黒沼ら上等兵にも自重を促して帰る。

その後、木部に呼ばれた笹原は、お国のためにご奉公してもらいたい。俺たちは明日をも知れぬ身だ。分かってくれと言われたので、弥生を差し出せと言う意味だと気づくと、そんな殺生な…と泣きそうになる。

すると、木部は、ここにいる3人だけで良いんだ。自分と黒沼軍曹らだけの相手をしろとほのめかすと、承知してくれたら、お前を親子を安全な所へ逃がしてやる。明日、神武遁から最後の引揚げ列車が出るなどと言って迫る。

納屋に戻って来た笹原が、えらいこと言うて来た。お前にそんなことをさせるくらいなら死んだ方がマシじゃと事情を打ち明けると、弥生は、私は死ぬのは嫌よ。死んだらお終いよ。今まで何のために苦労してここまで逃げて来たの?みんな生きるためじゃない。私、准尉にくれてやる。生きるためなんですもの。平気よ…、平気だわと自分に言い聞かすように答える。

木部准尉の待っていた離れ小屋にやって来た弥生は、明日必ず、汽車に乗せてくれるんでしょうね?と念を押す。

その頃、ベッドから抜け出ようとした大宮に気づいた有田がどこへ行くんだ?と聞くと、便所に行くと言うが、その手に羊羹を2本持っていたので、納屋に行くんだろ?と言い当てる。

納屋にやって来た大宮は、弥生の姿が見えないので、その場にいた笹原に聞く。

笹原から事情を聞いた大宮は、外で見張り番をしていた黒沼軍曹らに近づくと、2人を殴り倒す。

小屋の中に入った大宮は、弥生を抱こうとしていた木部准尉に飛びかかり、銃を奪い取ると、外に連れ出し、黒沼らと共に木の柵に縄で縛り付ける。

小屋の中に戻って来た大宮に弥生は、あんなことして、大宮さん大丈夫なの?すみません、私のために…と恐縮する。

そんな弥生に、俺、助けちゃったんだから、こんなこと言うとまずいんだけど…と照れながら、俺も弥生ちゃんの所に夜ばいに…と言いながら跪く。

それを聞いた弥生は、そうだったの…、分かるわ、兵隊さんの気持ち…と言ってくれたので、俺、弥生ちゃんのこと、好きになったんだ。お願い!1回だけ!と頭を下げる。

しかし、弥生が、あの人たち、明日の汽車に乗せてもらうと言う交換条件だったのと打ち明けると、急にしょげ返った大宮は、これ、後で食べてよ…と羊羹を渡すと帰ろうとする。

大宮さん、ここにいても良いのよと弥生は引き止めようろするが、俺は帰社に乗せられないもん…と大宮は悲し気に言う。

すると、弥生は、自ら服を脱ぎ始める。

その後、大宮はすっきりした顔になって寝所に戻って来る。

遅かったな、何かあったのか?と有田は聞くが、大宮は、否、別に…と答え、枕を人の顔のように持ち上げると唇を合わせ、有田の視線を逃れるように毛布の中に顔を隠すのだった。

翌朝、見張り兵が、離れの家の前に縛られていた木部准尉や黒沼軍曹らを発見する。

朝食をかき込んでいた大宮は、准尉が呼んでいると知らせが来たので、1人出かけて行くが、気になった有田もこっそり後を付けてみる。

やって来た大宮に、夕べは楽しかったか?と嫌味を言った木部准尉は、話を聞かせてもらおうか?と言い、クロム軍曹らと共に大宮を外に連れ出す。

ある場所にやって来た木部准尉は、自分がかぶっていた帽子を投げ捨て、拾えと大宮に命じる。

大宮が、その帽子を拾おうと近づくと落とし穴に落ちてしまう。

這い上がれなくなった大宮の頭の上から、3人がスコップで土をかけて来て埋め始める。

その様子を見た有田は、兵舎に取って返し、朝倉中尉に報告する。

首だけを出して全身を埋められた大宮だったが、右手を土から出すと、そこには銃が握られており、その銃口は、愉快そうに見下ろしていた木部准尉に向いていた。

助平野郎!と大宮が叫んでいた時、有田と共にその場に駆けつけて来た朝倉中尉は、この喧嘩、俺が買うと言い、大宮には、慰問団を神武遁まで護送しろと命じる。

町に向かう道中、大宮は弥生に又羊羹を手渡し、笹原には、タバコを数本恵んでやる。

神武遁に着き、2人を引揚げ汽車に乗せてやると、急に、笹原が、大宮さん、この列車で帰りましょうと言い出し、無理矢理列車に乗せようとする。

この列車に乗ったら、内地に帰れるんですよ。部隊に帰っても玉砕するだけじゃないですかと言い、地元民の服に着替えさせようとするが、大宮は、俺は帰るわけにはいかないんだと拒む。

弥生も、私たちと一緒に日本に帰りましょうと勧めるが、そんな弥生を大宮は思わず抱きしめる。

大宮さん、生きていてね。生きていれば又会えるわ。あなたのこと忘れないわと弥生は言ってくれるが、列車を飛び降りた大宮は、俺は玉砕しないよと弥生に告げ、去って行く。

それを見送る弥生に、行こうと声をかける笹原。

部隊に戻って来た大宮は、すでに部隊が攻撃を受け、全滅しているのを発見する。

累々と横たわっている死体の中から、必死に有田上等兵を探す大宮だったが、見つからないと分かると、上等兵殿~!と叫びながら号泣し始める。

跪いて泣く大宮の方に手を置く者がいた。

振り返ると、有田だった。

2人は互いに見つめあうと、感極まって抱き合う。

部隊がなくなった今、2人は南下することにするが、大宮は、どうせ先は長いんだ。のんびり行きましょうと言う。

そんな2人は、一軒家を見つけたので、その庭先にあった井戸で水を飲もうとするが、その時、突然、家の中から攻撃を受ける。

慌てて物陰に身を隠した2人だったが、有田が手榴弾を家の中に投げ込み、中で爆発させる。

銃声が止んだので、恐る恐る家の中に入ってみると、そこには、日本軍から奪ったと思われる武器や衣料が置いてあった。

ゲリラが増えて来たと聞いたが…と考え込んだ有田は、この先、単独で行動するのは危険だ。部隊に入ろうと言い出す。

すると、大宮は、どうせ戻るんなら、将校になりましょうよと言いながら、そこにあった将校の軍服を見せる。

衣装を替えた2人は、大宮少尉と有田中尉と言うことにし、途中で、103部隊へ行く途中だと言うトラックを見つけ止めると、それに便乗する。

部隊に着いた2人は、この部隊長の名は、柳田大尉だと運転手から聞くと、さっそくその部隊長に会いに行く。

柳田大尉(内田朝雄)は、今までいた部隊が全滅したと言う話を聞くと、2人だけが逃げたのかと嫌味を言う。

有田は、自分は爆風のため気絶していたと噓を言い、大宮は?と聞かれると、避難民輸送の任務で、神武遁に派遣されていたので…とごまかそうとするが、大宮本人が答えないので怪しみ出す。

幹部候補生上がりであります。予備士官学校はどこだ?大学はどこだ?などと執拗に聞き、特殊教育は何を受けた?聞かれた大宮は、返答に困り、喧嘩でありますと答えたので有田はひやりとするが、俺はインテリは嫌いなんだと柳田大尉は気に入ったようだった。

ところが、お前ら、手みやげを持って来たか?と柳田大尉は言い出す。

今、他所の隊に、言わば居候として入り込もうとするなら手みやげが必要だと言うので、互いに顔を見あわせた大宮と有田だったが、何を思ったか、柳田の机の前に乗り出した大宮は、急に浪花節をうなり始める。

有田もとっさに間の手を入れ、これが気に入られたらしく、2人は何とか103部隊に入り込むことに成功する。

大宮は、軍隊って所は不思議な所だな?逃げようとしてもいけないと言い、入ろうとしてもいけないと言われると呟く。

部屋で待っていた2人の元に、当番兵の2人が食事を運んで来る。

それは、いつも食べている兵隊の食事とは違う豪華なものだったので、将校って良いですねと大宮が喜ぶと、有田も、将校とコ○キは3日やったら止められないそうだと同意する。

そこに、清島見習士官(平泉征)が挨拶に来るが、柳田大尉も顔をのぞかせると、食事が済んだら、対戦車攻撃を教えてやってくれと頼みに来る。

双眼鏡で前を観ながら、兵隊を率いて出発した大宮だったが、対戦車攻撃など知るはずもなかったので、みんな聞け!今から対戦車攻撃の訓練をする!…つもりだったが、ソ連の戦車はバカでっかくて、とても敵いっこない!あんなもん相手に喧嘩をする奴はバカだ。一に離れりゃ旅の空、分かるか?ここまで来ると分かりっこない。だから、訓練を止めて昼寝をする!部隊長来るとまずいからな、みんな交代で見張りをしよう。夕方になったら起こしてくれよと提案すると、兵隊たちは愉快そうに笑うだけだった。

夜、兵舎の風呂で、少尉殿のような頼もしい方に会ったのは初めてですなどと、やたらとおべんちゃらを言う当番兵2人から身体を洗ってもらっていた大宮だったが、小さい方の当番兵(芦屋小雁)が、失礼ですが、少尉は大前田英五郎みたいな所がありますね?とお世辞を言うと、俺も大前田英五郎は尊敬しているだ。お前らも侠客は好きか?と聞くと、大きい方の当番兵(芦屋雁之助)が、清水の次郎長、大前田英五郎、飯岡助五郎、みんな好きですなどと調子良く答える。

俺もヤクザは嫌いじゃない。どこで遊んでいる?と大宮が聞くと、大きな当番兵は、関西の方で、八尾の朝吉言うたら、大概知ってますと言うと、大宮は、朝吉か…と呟いたので、知ってはりますか!と当番兵が聞くが、知らんとあっさり答える。

そんな風呂場の様子をこっそり外から覗いている兵隊がいた。

部屋に戻った大宮は、遊びに来た清島見習士官相手に花札の腕を披露していた。

清島見習士官は、花札が商売だなどと冗談を言う大宮に感心しながらも、部隊長から聞いたらしく、東大出身なんでしょう?何科なんですか?などと聞いてきたので、大宮は面食らうし、横で本を読みながら話を聞いていた有田は、大学の話は止せと注意する。

その時、山岡一等兵が、部隊長がお呼びですと清島見習士官を呼びに来る。

有田は、大学の話が出るたびにヒヤヒヤするぞと大宮に打ち明けるが、そんな2人の部屋に、どうも似た奴がいると思ったら…などと言いながら部屋に入ってきた兵隊は、あろう事か憲兵の青柳(成田三樹夫)だった。

何故兵隊になっている?と有田が聞くと、憲兵は止めたんだ。上等兵に化けたのさ。貴様たちと同じにな…。兵隊が一番気楽だからななどと言いながら、大宮の頭をなでて来たりする。

青柳はさらに、それにしてもお前らは馬鹿だ。日本は戦争に負ける。ソ連は下士官以上の者を全員殺す。お前らも殺されるって訳だなどと嘲笑する。

話を聞いていた有田は、また、取引に来たな?と青柳の意図を見抜く。

すると青柳は、俺と一緒に逃げないか?トラックを奪って朝鮮に逃げるんだ。あそこなら毎日のように引揚げ列車が出ている。俺1人でやるよりお前らと一緒にやった方が巧く行きそうだ。何しろお前らは、逃亡にかけては達人だからな…と言って来るが、有田は即座に断る。

お前らはもっと利口かと思っていたよ。見損なったよと言いながら青柳は部屋を出て行く。

その夜、非常呼集がかかり、作戦で、北方6km辺りに朝鮮ゲリラの大部隊が集結しているとの情報があるので、これを殲滅せんとす。大宮少尉は将校斥候で一個分隊連れて敵の様子を見て来て欲しいと柳田大尉が命じる。

意味が分からず戸惑う大宮に、斥候に行けば良いのだ。分かったなと耳打ちするが、大宮は真顔で、分からないと言う。

又もや、双眼鏡を絶えず覗きながら、斥候に出た大宮だったが、前方から接近して来る1人の男を発見、その男は開拓団の人間で、村がゲリラに襲われたが、病人と女子供が孤立しているので助けて欲しいと言う。

大宮は対処に困るが、あなたは日本陸軍の将校でしょう!とすがりつかれると無視する訳にも行かず、取りあえず、部隊に連れて行き有田の指示を仰ぐことにする。

有田と一緒に部隊長の所にその男を連れて行くが、柳田大尉は、余裕がないので救助に行くことは出来ん。途中でゲリラに教われるかもしれんし…と言う。

有田は、トラックで行けば2時間足らずで行けます。ゲリラを怖がっていては何も出来ません。自分は日本人として同胞の危機を観て観ぬことが出来ません!トラックと下士官1人、兵隊5人を貸して下されば自分たちだけで行きます。部隊長にご迷惑はおかけしません!と説得し、何とか許可を得ることが出来る。

川部上等兵(伊達三郎)、長谷上等兵(藤山浩二)、村上一等兵(橋本力)、後藤一等兵(志賀明)ら、抽出組の5人に選ばれた中には青柳も含まれていた。

有田と大宮は運転席に乗り、兵隊5人は荷台に乗って出発するが、その途中、青柳は他の4人に、あの2人を追っ払って、朝鮮に逃げるんだ。生きるか死ぬかの、今は分かれ目だよ。あの将校たちは俺がやる!と説得し始める。

兵隊たちは、そう言われても迷うが、その時、トラックが急停車すると、大宮が降りて来て、立ち小便を始め、お前たちも今のうちにやれよと勧める。

再びトラックが走り出すと、川部上等兵は俺は嫌だ、気が乗らん。大宮少尉らを裏切るのが嫌なんだと言うので、青柳は、大宮も有田もただの兵隊よ。憲兵隊のお尋ね者だと正体を明かし、あいつらのために命を落とすことが出来るか!と言う。

運転席の後ろの窓から、青柳が他の兵隊に何か話しているのに気づいた大宮が、そのことを有田に告げると、荷台に言ってろと命じる。

その後は、大宮が荷台に乗って走り始めたので、兵隊たちの私語はなくなるが、やがて、トラックのタイヤがぬかるみにはまり動けなくなってしまう。

運転席から降りた有田が、みんなで押すんだ!と兵隊たちに声をかけるが、降りて来た5人の兵隊は、有田と大宮に銃を向けて来る。

すると大宮は、撃つなら撃ってみろ!と言いながら、手榴弾を取り出す。

有田も、お前らこいつの正体を知ってるか?憲兵だぞと有田を指し、狼狽した青柳に大宮が飛びかかる。

有田は、こてんぱんに叩きのめしていた大宮に、こいつも連れて行くんだ。この先、1人でも多い方が良いと言い、他の兵隊には、バレた以上、こんなもんは捨てると言いながら、自らの階級章をはぎ取ってみせると、でも任務だけは最後までやり遂げようじゃないか。子供の中には赤ん坊もいると言う。その赤ん坊を自分の子だと思え。女は自分の女房だと思え。誰が指揮を取っても良い。俺たちが見捨てたら、敵に嬲り殺しに遭うと説得する。

それを聞いた兵隊たちは行こうと言い出す。

全員でトラックを押し、再び出発するが、やがて、ゲリラたちの攻撃に出会う。

荷台の兵隊たちも応戦し始めるが、大宮は、隣にいた青柳に、自分のヘルメットをかぶせてやる。

そして、手榴弾を投げようと立ち上がったので、今度は青柳が、危ない!と言って大宮の身体に抱きついてしゃがませる。

何とかゲリラたちを襲撃を通り過ぎたトラックの荷台で、青柳は、弾の穴が開いたヘルメットを返そうとするが、大宮は、お前んだよと言って受け取ろうとはしなかった。

トラックは、開拓団の村に到着する。

兵隊さんが来た!と喜びの声が上がり、有田たちは、病人と幼い子供を優先的にトラックに乗せ始める。

有田は、学校に行っている子供には歩かせる!と告げるが、小学生の子供の母親は、この子を乗せてくれと必死に頼んで来る。

しかし有田は、歩かせた方が後々本人のためになると言い聞かせ、自分たちは先発する。ばしょうまで行く。行程約50kmと村人たちに告げると、歩ける者たちを護衛して村を出る。

病人と幼児を乗せたトラックが、先発隊を追い抜いて行く。

途中、休憩を取ると、日没まで仮眠し、夜も歩くことにした有田だったが、翌日、歩いていると、案の定、ゲリラから攻撃を受ける。

有田は、開拓団の連中を後方に逃がすと、他の兵隊たちと共に応戦を始める。

青柳も必死に銃撃をしていたが、急に動かなくなる。

ゲリラの銃撃が止んだので、有田は、兵隊たちの名を呼び、無事を確認するが、青柳の返事だけがなかった。

有田の側に有田と大宮が駆け寄ると、まだかろうじて息があった青柳は、両手で2人の手を握り、俺は悪党だったな…と言うので、バカ!お前は生まれ変わったんだ!と有田が呼びかけるが、今度生まれて来るときも、又、悪党さ…、じゃあな…と言い残して息絶える。

大宮は、青柳がかぶっていたヘルメットを片手に出発する。

有田は、後4kmほどでばしょうだ。先に行った家族とも会えるんだ!と開拓団の一行に声をかけ、大宮は、最後尾で遅れがちになっていた小学生の所に来ると、ヘルメットをかぶせ、だっこしてやり前進を始めるのだった。


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