TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

悪名桜

シリーズ第13弾

すっかり堅気になった朝吉と清次が、親から見放されグレた青年を、親代わりに面倒を見て立ち直らせようと立ち上がると言う展開になっている。

2組のヤクザがしのぎを削る町で焼鳥屋を開業している…と言う設定からして騒動が起きないはずがなく、いつものように、最後は2人が組に殴り込んでヤクザたちを叩きのめすと言うパターンになっているが、拳銃で殺し合いをやっているヤクザの中に入った2人が、素手で戦って丸く収まると言う話自体が、もはや違和感の固まりにしか感じられない。

いつものように、2人は、騒動の後、ふらりと土地を離れるというわけでもない。

騒動を起こした土地で、その後もずっと堅気の商売を続けている風なのに、何故、朝吉や清次はヤクザから報復されないのか?

このシリーズ全体に言えることだが、敵役として登場するヤクザの親分は、強面の割りに朝吉の腕力で黙ってしまうくらいの小者ばかり。

このシリーズをヤクザ映画と解釈すると、その辺がどうも不自然なのだが、暴れん坊ヒーローの無鉄砲な喧嘩映画と考えれば、敵方はそう言うキャラにするしかないのだろう。

敵がやられた後、執拗に復讐してくるようなタイプだと、「座頭市」のような逃亡者的内容になってしまう。

猛役を演じている酒井修は、「透明剣士」(1970)や「男一匹ガキ大将」(1971)など主演作もある、目鼻立ちがはっきりした、どちらかと言えばイケメン系の若手だが、主役を演じるには爽やかさが不足しているような感じで、かと言って脇役に向いているとも思えず、中途半端な二枚目の印象が仇になったのか、あまり目立った役に恵まれないままだったような気がする。

今回の見所は、朝吉の家に転がり込む菊枝役を演じている市原悦子の存在だろう。

一見世話好きな好人物のように見え、実は手前勝手な理由から朝吉に甘えて来る、ちょっとイラッとするような女を巧く演じている。

朝吉も生来のお人好しだし、幼なじみと言うこともあり、黙って彼女を置いてやるが、その存在が自分の行動の邪魔になると悟ると、国に帰るように勧めるしかなくなる。

お調子者の清次の存在も、相変わらず朝吉にとっては苛つきの種なのだが、こちらはどこかで分かりあっている部分があり、その辺が、男同士の友情と、男と女の関係の違いなのかも知れない。

最後には菊枝もその辺に気がついており、清次を朝吉の元に送り出すと言う粋な計らいをして見せる。

心底、勝手なだけの女ではなかったと言うことなのだ。

因業親爺を演じている多々良純と、その妻役の沢村貞子、そして、2組のヤクザの親分を演じている須賀不二男、藤岡琢也らの堅実な芝居も見逃せない。

ヤクザたちがその後どうなったのか?と言う疑問は残るものの、ラストは爽やかに締めている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、今東光原作、依田義賢脚色、田中徳三監督作品。

(現代風にアレンジされたテーマソングで)タイトル

キャバレー「ABC」にやって来たABCクラブの幹部政(守田学)は、女と会ってきた帰りだと掃除をしていたバーテンに言い、コーヒーを頼むと、店内の椅子で寝ていた若い衆に用があると言う。

そこに1人の若者が起きて来て近くを通ったので、政が足を引っ掛けて転ばせると、その若者猛(酒井修)はABCクラブの兄貴だとバーテンダーが止めるのも構わず睨み返して来たので、ええ根性してるやないか?小遣い欲しくないか?と政は聞く。

毎朝新聞がABCクラブを叩いているので社会部の奴ら痛めつけたらはずむでと政は言うと、ABCクラブには若いもんがおるのやろ?俺らにやらせるのか?名前は出せんちゅう訳だ?良し引き受けたる。金はいらん、クラブのバッジと交換やと猛が言い出したので、政は言いだろうと承知する。

美室山の桜祭りに取材に来ていた毎朝新聞の記者2人は、いきなり集まって来たチンピラが見物客たちに絡み出した様子を撮ろうとカメラを向けるが、そのチンピラに混じっていた猛に殴られる。

その時、騒動に割って入って来たのが、たまたま近くにいた八尾の朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)だった。

「桜見の英雄 町のダニをひねる」そんな見出しで、チンピラたちを追い払った朝吉の写真が毎朝新聞に載る。

ABCクラブの理事長乾(藤岡琢也)は、その記事を観て不機嫌そうだった。

乾の前に来ていた政は、こいつらは大鯛組の奴らか?と幹部に聞かれ、梶川町の市場で最近、焼き鳥屋をやっている連中だと答えると、一緒に連れて来ていた猛を梶川町の質屋の息子だと乾に教える。

乾は、それじゃあ、あの辺の地主の息子か?梶川町は大鯛組のシマやと興味を示したので、猛は、俺はABCクラブに入りたいと申し出る。

そしたら、あいつら刺して来い、そしたら入れたるわと幹部は猛に命じる。

朝吉と清次は、極道を辞めて、まじめに屋台の焼き鳥屋をやっていた。

その日の客の中には、先日、朝吉たちのことを記事に書いた毎朝新聞の社会部の記者とカメラマンたちも混じっていたが、店じまいして、向かいの寿司屋で飯でも食おうとやって来た朝吉と清次は、そこに河岸を変えて飲んでいた記者たちと合流する。

そこに、大鯛組の2人がやって来て、朝吉が桜見の時やっつけた連中は、大鯛組に頼まれたと言われているが、ABCの差し金じゃないのか?などと記者たちを前に因縁を付ける。

寿司を食った帰り、清次は、わいたちも第3勢力でバーンとやりまへんかなどと調子良く勧めるが、わいらはここに堅気になるために来たのやないか?と叱りつける。

その直後、朝吉にナイフで突きかかって来たのが猛で、それを止めた清次は、新聞屋をやってた奴やと朝吉に教える。

朝吉はそのまま自分たちの家に猛を連れて来ると、お前、親、いてるのか?年なんぼや?つまらんことやって死にとうないやろ?などと説教をし、そのまま家に置いてやるようなそぶりだったので、清次はそのお人好し振りに呆れてしまう。

翌朝、新聞記事を観て、そんな朝吉と清次の家を訪ねて来たのは、八尾で朝吉の隣に住んでいた菊枝(市原悦子)だった。

菊枝は、まだ清次と猛が寝ていた家に上がり込むと、手みやげとして天津甘栗を渡し、自分のお父ちゃんは4年前に死んだし、朝吉の父親も死なはったと言うので、朝吉は仰天する。

年明けたら急に悪うなって…、最期まで、朝やんのことばかり言うてたと言うので、死に目に会えなんだ…と朝吉は神妙にうなだれる。

すぐには八尾に帰ろうと言い出した朝吉だったが、おばちゃんも、兄ちゃん、姉ちゃんも帰って来るな、お墓に参らせるなと言っていると菊枝は伝えると、起きたばかりの猛が、お前も愛想付かされてるやないかと朝吉をバカにしたので、清次が殴って謝らせようとし、お前の親はどこにいるんや!と聞くと、この町の地主や、お前らに店貸しとる家主やと言うではないか。

その後、朝吉と清次が、地主である質屋の沢村亀之助(多々良純)の所へ猛を連れて行くが、亀之助が猛を叱っている時、外出していた母親の房枝(沢村貞子)も帰って来て、長い間家を空けていた猛を観ると、PTAの介護でも噂が出ているんだよと話しかけ、朝吉たちに気づくと、何か迷惑かけたんか?と聞いて来る。

清次が、実は…と話そうとするが、それを止めた朝吉は、わてもこのボンくらいの時、勘当されましたんや。今、その親はいてませんのやけど、今、ボンを暖こう抱いてやらんと遁でもない所へ行ってしまいますよと朝吉は説得しようとする。

ところが房枝は、人情主義やダメなのよ、社会が悪いのよ。暴力団だの、深夜喫茶、競輪競馬、そう言うもんが改まらない限り、私たちがどんなに頑張ってもダメなのよなどと反論して来たので、朝吉は、今の話は、あんたんとこのボンの話です。ボンが人に怪我させたり、警察沙汰にでもなったらどうにもなりまへんとさらに言い聞かそうとするが、亀之助はいくら欲しいんだ?わしは忙しいんだなどと言うので、かちんと来た朝吉は、このボンはしばらく家で預かりますと言い残して帰ることにする。

房枝は、焼き鳥屋をやらすなんて恥ずかしいことは辞めてくれなどと追いすがって来るが、朝吉と清次はそれを無視して猛を連れ帰る。

家に戻って来た清次は猛に、お前んとこの親、あれ何や?と呆れたように聞くと、あいつらが腰抜かすようなでかいことやったるわと猛はうそぶく。

それを聞いていた朝吉は、でかいことするて、何するんや?お前、俺刺し損なったんや。極道やったら指詰めさせられる所や。お前、指、詰めらるんかい?おのれの指1本詰められん奴に何ができる?殴れるか?と挑発する。

すると、頭に来た猛は朝吉に飛びかかって来るが、それを叩きのめした朝吉は、わいが叩き直したる!と睨みつける。

そんな朝吉に清次が、この人、あんたの嫁に来たそうやでと菊枝を紹介する。

一方、大鯛組の社長後藤(須賀不二男)は、沢村亀之助からの電話を受け、息子の猛が焼き鳥屋に連れて行かれたと知ると、そらあかん、お宅には先代から可愛がってもろてるのに…と同情する。

その後、猛を連れ戻そうと焼き鳥屋にやって来た大鯛組の子分たちを、清次が痛めつけて追い返す。

これですむと思うたら大間違いやで…と捨て台詞を残して去って行った子分を観ていた菊枝は、警察に知らせた方が…と店を出て行こうとするが、それを清次が止める。

夜、案の定、大勢の仲間を集めて大鯛組の連中が仕返しに来たので、朝吉と清次は盛大に殴り合うが、その間、肝心の猛は黙って立ち去ってしまう。

家に戻って来た清次は、殴り込みに行きましょうと息巻くが、菊枝は、堅気になるのやないの?ここで悪名さらしたら墓参りも出来しません。堅気になると決めたのはどうなりますのや?私はどうなりますの?と言うと、二階に駆け上がって行く。

そんな菊枝を慰めに、清次は二階の菊枝の様子を見に上がる。

翌朝、清次は、わてが邪魔やったら、邪魔言うておくんなはれと神妙に言い出したので、朝吉は何を言うてるのや?と面食らう。

わいに堅気になる。女房もらうことにした言うたら良いのやないか?水臭い。あんさん、あの菊枝、菊やんのお腹が言うてます。腹ぼてやと言うではないか。

朝吉は、わしは知らんと否定するが、わても女探しに行ってきますわと言い残して、清次はさっさと家を出て行ってしまう。

菊枝に事情を聞くと、店で働いていた時、ヤクザに捨てられましたねん。八尾のおじさんも死んで、ヤヤ出来てること分かって…、朝やんが嫁はんにしてくれたらごまかせる思うて…と、この家に来た本当の理由を打ち明けると、堪忍しておくれと泣き出す。

翌日、朝吉が菊枝を鍋屋に連れて行くと、菊枝は八尾に帰ると言い出す。

しかし、朝吉は帰らんで良いと言い、ビールを勧めてやったので、少し機嫌が良くなった菊枝は、店の女が勧めたこともあり、河内音頭を謳い出す。

いつしか朝吉もそれに唱和していた。

その頃、1人、家に帰ろうと道を歩いていた猛を呼び止めたのは、車で後ろからやって来た大鯛組のヤクザたちだった。

彼らは、猛が親爺の所に帰るとこやと言うのを聞くと、1人で行かれたら金にならんと言って拉致しようとしたので、思わず、猛は、持っていたナイフで、ヤクザの1人の腹を刺して逃げ出す。

一方、大鯛組の前に来ていた清次は、後藤が車で帰って来ると、気安く語りかけ、一緒に大鯛観光協会と書かれた事務所の中まで付いて行く。

社長室で2人きりになり、後藤があんた誰や?思い出せんのやが…と聞くと、わても初めてお目にかかりますのやなどとしらっと言い、八尾の朝吉知っとりますやろ?あの相棒の清次でんねんと自己紹介すると、店壊されましてな…と言いながら、呼び出しブザーを押し掛けた後藤に銃を突きつけて辞めさせる。

10万も出してくれたら…と脅した清次は、金庫から後藤が金と一緒に銃も取り出そうとしたので、それも奪い取ると中の弾を抜き出し、企業見舞いとして金10万円出すと一札書いてくれと頼む。

後藤が仕方なく書いてやると、清次は銃で後頭部を殴って気絶させ、そのまま社長室から何事もなかったかのように、銃を回しながら出て来たので、子分たちはビビる。

清次は、これは玩具やで、良かったらあげまっさ…と言い、銃を投げ捨てると、そのまま事務所を出て行ってしまう。

その直後、定やんが刺された!と言いながら、猛を拉致しに出ていた子分が血相を変えて帰って来る。

鍋屋から上機嫌で帰って来た朝吉と菊枝の家にやって来た大鯛組の子分たちは、お前んとこの若いの、どこへ行った?若いもん寄越しやがって、金は取るし、質屋の息子は、うちの若いの刺すし…と因縁をつけに来たので、取りあえず朝吉は殴りつけて、追い返す。

菊枝が何事かと聞くと、猛が大鯛組の若いの刺した言うんやと朝吉は教え、外に出て行こうとすると、ちょうど猛が戻って来たので、なんちゅうことしたんや!とビンタすると、猛は逃げ去って行く。

その足でABCクラブに駆け込んだ猛だったが、政から事情を聞いた乾は、質屋にはうってつけの質草やと笑い、大事に預かっておけと命じる。

政は猛に、理事長が良くやったと褒めてくれたと伝える。

その後、乾から電話でお宅のご子息はえらいことをやってくれましてね…と呼び出された沢村亀之助は、警察に突き出せば良いんですが…、刺した相手が悪い。大鯛組の小頭クラスのものらしい。その辺うろちょろしていたら仕返しされまっせ。うちでお預かりしても良いんですがな、お宅と大鯛組の示談だけでは、うちと大鯛組の始末が付かん。一旦ここへ逃げ込んで来た以上…などとと乾から持ちかけられ、あの子をヤクザには…とさすがに躊躇する。

しかし乾は、我々の盃は親の承諾なしに出来ることになっとりますのや。新興ヤクザと言われているけど、うちのクラブにはボーイスカウト並の厳しい規則があって、全員が社会奉仕すると言うのを目的に掲げとる。あんたも大鯛組みたいな昔ながらの暴力組織と手を組んで海外利益を守っているとエラいことになりますよ。両方の勢力を手中にしていると安心やないですか。私も梶川町に娯楽センターを作る計画がある。共同経営でやりませんかと持ちかけて来る。

家に帰って来た亀之助は、猛のことを案ずる妻の房枝に、猛は勘当した。あいつはABCクラブの組員にしたからなと伝える。

その後、猛はABCクラブで誓約書を読み上げ、欲しがっていたバッジを乾からもらう。

そこに朝吉がやって来るが、猛は、新聞屋のときの焼き鳥屋のおっさんや、相手にするような奴やおまへんわと教える。

やって来て朝吉が、猛をもろうて帰りたいと申し出、こいつの入会取り消してくなはれと頼むが、玄関シャッターを締められ、乾は酒でも飲まんかとビールを進める。

朝吉が飲めんのやと断ると、頭からビールをかけられるが、朝吉が耐え抜き、困ったことあったら、わいこと相談に来るのやと猛に伝え、その場は帰ることにする。

後藤は、亀之助を事務所に呼び出すと、あんたんとこのボンが家の若いの刺したんやで…と言い聞かせていた。見舞いにも来まへんな?と子分が嫌味を言うと、倅のバカがABCクラブに駆け込み、人質にされ、わしは脅迫されたんやと亀之助は言い訳する。

警察に突き出すと言うねや…と亀之助が詫びると、家も傷害事件抱えているけど、お宅のボンのことやから黙っていたんだ!これでは娯楽センターも出来んと子分たちが嫌味を言うので、ABCとのことはそっちで始末してくれと亀之助は頼む。

後藤は、傷害その他、一切の詫び料300万でどないや?と切り出して来て、亀之助が黙って小切手を書くと、これであんたんとことうちとはもう赤の他人やと言って帰す。

あれで良いんですか?と聞く子分に、あいつから絞るだけ絞ったら、ABCには改めて挨拶したるわと後藤は言う。

その後、沢村亀之助を連れたABCクラブの大隅(高杉玄)が、町内会の面々に、この辺を再開発するので立ち退いてもらわなあかんといきなり宣言したので、朝吉は、丸でヤクザやないかと抗議する。

すると、大隅は、それなりの保証金は払うが、ごね得はあきまへんで。あんまり出しゃばるとろくなことにならんでなどと威嚇して来る。

朝吉はいきり立つが、それを菊枝がなだめる。

亀之助が勧め、寿司屋に入ったABCクラブの大隅だったが、そこへ大鯛組の子分がやって来て、銃を撃ち込む。

亀之助は逃げ去っていたが、大隅と店の主人が射殺される。

寿司屋の主人の葬式の席に、後藤が焼香にやって来るが、女房は、帰っておくんなはれ!主人を返して!と叫ぶが、撃った本人は自首したと言い訳する朝吉は後藤に、焼香くらいしたり…と朝吉は上げる。

朝吉は後藤に、仏さんの前で話がある。あんたらの縄張り争いのため、町の者は困っている。この界隈にそちらの組は立ち入らんでくれ。組同士で話し合ってくれと頼むが、後藤は、わしんとこは話し合いをする気はない。お前、中に入てみたらどないや?納得の行く話やったらどこでも出向いたるでろと答えるだけだった。

朝吉はABCクラブの乾に会いに出向き、大鯛組と話し合ってくれと頼むが、子分は、うちの大隅がバラされたんやど!といきり立ち、乾も、私んとこは被害者なんだよ。お前やろ?娯楽センターに反対してるの。今度はビールくらいではすまんぞ!と脅して来る。

しかし、乾には話し合いそのものに反対する様子もなかったので、朝吉は仲介役として、久しぶりに着流し姿で出かけようとするが、それを寿司屋の女房と菊枝が必死に止める。

それでも、お前は黙っとれ!と菊枝に言い聞かせた朝吉は1人で出かけて行く。

その直後、菊枝の所へやった来たのは清次で、朝吉が出かけたと知ると、殴り込みでっか?新聞観てきましたんやと言う。

あんたが行ったらぶち壊しやと案ずる菊枝に、親分だけが無事に帰ってもらわんと…と必死に迫ると、菊枝は、朝吉の行く先をキャバレーABCと教える。

キャバレーABCにやって来た朝吉の顔を観た後藤は、もう話し合いはすんだと笑う。

乾さんも紳士的に出てくれて、娯楽センターは作る。経営はABCクラブにやってもらう。3階建てや。1階には、あんたら町の者に入ってもらい商店街を作ってもらうと後藤が説明する。

しかし、朝吉は娯楽センターを作るのは止めてくれと言うので、乾は、どないもなりまへんな。いっそのこと水に流しましょうか?などと言い、大鯛組のシマ内のことに文句は言わせん。第一、あんたの顔を潰す訳にはいかんなどと後藤は言う。

この話から、両方とも手を引いてくれと重ねて頼む朝吉は、ABCクラブの連中に囲まれてしまう。

その時、キャバレーにやって来たのが清次だったので、金を奪われた後藤は、どの面下げて来たんやと睨みつける。

それでも清次はにやけながら、あれを元手に儲けさせてもらいましたでと言いながら、ドスを後藤に突きつける。

そんな清次を殴りつけた朝吉は、お前はすっこんでろ!と叱りつけ、乾は、こんな所で刃物持って暴れられたら困るな~と嫌味を言う。

後藤は朝吉に、話し合え言うたり、手を引け言うたりむかしやがって!お前らグルやないか!お前ら組んで、わしのシマを取ろうとしているだけやないか!わしとことABCは手を組んだんじゃ。お前らがゴチャゴチャ言うたら、町の者の邪魔をすることになるんやと迫り、もうあらかた、電話で町の者の承認は取っているんだと教える。

朝吉は帰ることにし、清次も付いて行くが、以前、後藤からもらった10万円を後藤に投げて渡して行く。

家に帰って来ると、菊枝が、清次、行きましたやろ?と言うので、朝吉は、お前が教えたんか!と怒る。

清次も家に入って来て、わしはここに居座らせてもらいますわと言いながら、朝吉が加えた煙草にライターの火をつけようトッッし出すが、朝吉は自分のマッチで火をつける。

その頃、後藤と乾、沢村亀之助の3人は、料亭「たま家」で密談をしていた。

亀之助が握手してくれと頼むと、後藤と乾は握手する。

その席の護衛で同行していた政は、一足先に事務所に帰ると、机の引き出しから銃を取り出し、猛にそれを渡しながら、大鯛組の理事長やって来い。これはお前の一存や。今お前は、クラブを辞めたんや。警察では、ただ兄貴の仇を討とうと思いましたと言うんや。ムショから出てくりゃ、お前はABCの大幹部やと焚き付ける。

料亭「たま家」から出て、車に乗り込もうとしていた後藤は、待ち構えていた猛に射殺される。

清次は、そのことを朝吉に知らせに来るが、その直後、猛本人がやって来て、大鯛組の組長をやったのは俺や。どうや、大きなことやったやろう!と朝吉に自慢し、俺は人殺しをやったんじゃ。10万くらいくれへんか?高飛びするのやと言う。

朝吉はそんな猛に、自首するんやと説得し、清次は、逃げ出そうとした猛を捕まえる。

たったいっぺんの人生潰しやがって…。ABCは、一緒に仕事しよう言う奴に人殺しをさせるような組や!と朝吉は嘆く。

その後、清次は、猛の母親の房枝に電話を入れ、猛が人を撃ったと教えると、警察に自首する前にそちらに連れて行くと連絡するが、房枝は、連れて来ないで下さいと言い、電話を代わった亀之助は、そんな子、うちの子やない!好きにやってくれ!と怒鳴りつける。

朝吉は猛に、決心付いたか?わしも一緒に付いて行ったると言い、警察まで同行してやるが、その途中、車で通りかかった政が、車中から猛を撃って逃げて行く。

清次は亀之助の元にやって来ると、猛が撃たれたことを伝え、ボン、死ぬで…と説得しようとするが、亀之助は放っといてくれ!と突っぱねるだけだった。

入院した猛は、来へんのやろ?もうええわ…、朝吉さん、側にいてくれたらええわ。俺、やっと分かったわ、バカやったと…と言う。

朝吉は、今頃になって分かったって遅いやないか…と嘆くが、ほんまや…、遅過ぎたよな…、朝やん、俺のこと一生懸命思うてくれたの、嬉しかったんや。親爺がこんな気持ち持っててくれたらな…。朝さん、親爺や思うて、死んで行くわ…と呟いた猛は、何や、寒うなって来たわと言うので、朝吉が抱いてやる。

朝方、病室の廊下に立ちすくんでいた朝吉の元に、ようやく、亀之助と房枝が駆けつけて来て、猛は?と聞く。

寒い、寒い言うて、今朝方死んだ。あんたら、何ぼわめこうが手を合わそうが、猛は戻ってけえへんで。猛を撃った撃った政ちゅうのは自首したそうや。社会のために清算したと政は言うとんね。倅の仇、どないして取るねん?と言い捨てて去って行く。

亀之助はがっくり崩れ落ち、房枝は泣き崩れる。

考えてみたら、可哀想な奴でしたな…、こうなったらABCをたたき壊しましょうと言う清次に、菊ちゃんのために甘栗買うて来てくれと頼む朝吉は、先に家に戻って来ると、菊枝に話があると言う。

すると菊枝は、聞かんでも分かってます。八尾に帰れ言うんでしょう?子供は1人で生みますと言う。

朝吉は、分かってくれたんかい。腹の子はわいの子や。猛も、わいのことを親爺と言うてくれたんやと伝える。

そこに、清次が甘栗を買って戻って来たので、菊ちゃんを八尾へ送ってくれと頼むと、自分は公衆電話からABCに電話すると、理事長はんいてはりまっか?といてはりまんのやな?と確認する。

山本の停留所に菊枝を連れて来た清次だったが、あの子、朝やん親や思うて死んだんやてな?あの子のために、どうしてもやらんと行かんことがある言うてた…。清ちゃん、急がな間に合わへんのやろ?気つけてな。朝やんに、たまには八尾に顔を出すように言うてやと菊枝が言い出したので、その意をくんだ清次は、あんさんも機嫌良う生んでおくんなはれや。ほな、行かしてもらいますと頭を下げて、朝吉の元へと向かう。

キャバレーABCに向かっていた朝吉は、途中で待っていた清次が、1人でええ格好しようしてもそうは行かしまへんで…などと笑いかけて来たので、苦笑して一緒に連れて行く。

キャバレーABCに到着した2人は、大暴れを始める。

乾は、話があると朝吉に話しかけるが、朝吉は問答無用とばかり殴りつける。

ボコボコにされた乾は、どつきたけりゃ、どつけよ、なんぼどついても、新しい組は出来るんや。お前一生どついてんのか?と聞くので、わいが立川町におる限り、お前らのような極道もんに指一本指させんのじゃ!と言うと、乾から土地の権利書を奪い取る。

その時、大鯛組の連中がやって来て、えらい気の利いたことしてくれたな。土地の権利書渡してもらおうか?と朝吉に迫って来る。

清次は、ついでや、掃除しましょうと朝吉に言い、2人は又又、大暴れを始める。

その後、市場から仕入れをすませて自転車で戻って来る途中の朝吉を呼び止めた清次は、八尾から電報届きましたで。生まれましたんねん!男の子やと言う。

不良にならんような名前つけたらないかんなと朝吉が喜ぶと、1人じゃ足りまへんで、3人もや。わいも1人受け持たせてもらいまっさと清次は言い、2人は焼き鳥屋を始めるため、店へと向かう。