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悪名無敵

シリーズ第11弾

このシリーズも、善し悪しは別にして、この辺りになると、さすがに初期のイメージとは別物になって来ている。

売春婦に身を堕としかけた家出娘とホステスを救おうとする朝吉の義侠心は、初期の琴糸を逃がしてやる動機と同じものように見えるが、戦前の身分が低かった女性が、貧困から逃れるため、望まないまま苦界に身を堕している哀れさと、家出娘やヒモ付きのホステスの哀れさでは、観ている側の印象はかなり違う。

いつの時代にも、弱い女性を食い物にする悪人はおり、虐げられた女性を助けるため、敢然と朝吉が挑んで行くと言う構図は共通なのだが、どうもこの作品での朝吉は、お節介な説教親爺にしか見えないのだ。

朝吉が、助ける女に惚れてしまい…と言う、観客が共感できる純粋さや恋愛絡みがなかったり、ユーモア要素が消え、若い娘らを更生させようとする保護司みたいな話が中核になっているせいかも知れない。

初期の作品は昭和初期の時代劇のような雰囲気があったので、理屈抜きで朝吉の義侠心(御節介)振りと大暴れを楽しんでいれば良かったのだが、途中から、明らかに現代劇になってくると、単純な勧善懲悪では納得できない部分が出て来る。

一番気になるのは、悪人相手に武器を使わず、殴りつけて終わりと言う収め方。

これでずっと朝吉が無事でいられると言うのが不思議なのである。

座頭市だって、ヤクザを痛めつけるとずっと付けねらわれることになる。

現代劇では、いくら相手が悪人であろうと殺すと犯罪になるので、主人公が警察に捕まらないようにこうした終わり方にするしかないのだろうが、普通に考えれば、朝吉はどこかでモートルの貞のように殺されるのがオチではないだろうか?

地方のちょっとした権力者との小競り合いとは訳が違うと思うのだ。

こうしたことが、時代劇だとファンタジーとしてそれなりに忘れられても、現代劇だと気になってくる。

旅先で知り合った玄人女に、いきなり気に入られ、すぐにベッドインと言う展開も、後半のきっかけとは分かっているがかなり無理を感じる。

朝吉の心の中には、もう初期の頃のように、操を立てるような特定の惚れた女はいないと言うことになっているのだろうか?

朝吉は、何となく近寄って来る女をあっさり抱く、単なる遊び人風になって来ているような気がする。

眠狂四郎ほどではないが、八尾の朝吉も、いつも金に不自由をしていないように見えるのも気になって来る。

働いている描写はないので、博打で儲けていると言うことなのか?

八千草薫の売春婦役と藤村志保の役は意表を突かれたが、両者とも、いつものイメージとかなり違うキャラクターにチャレンジと言うことだったのだろうか?

ただ、どちらとも従来の清純派のイメージが強いので、この作品の役には何となく違和感がないではない。

シリーズが長くなると、ある程度知名度があり、こういう役が出来る女優さんが限られてしまって来ると言うことなのかも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、今東光原作、依田義賢脚本、田中徳三監督作品。

デパートの女性服飾コーナーでマネキンを観ていたのは、八尾の朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)だった。

清次が競輪で儲かったので、ふらり立ち寄ったのだが、変なもんを買うなよと、場違いな場所に来てバツが悪そうな朝吉に、清次は、ちがいまんがな、あれでんがなとそのコーナーにいた家出娘らしき少女を観る。

朝吉は清次の意図を察し、その娘の側に近づくと、お前家出して来たんと違うか?大阪なんかに…と説教しようとするが、怖いとこやと言うんやろ?放っといてと娘は睨みつけて立ち去ってしまう。

その後、近くで遊んでいる子供らを観ながら、わいらにも、あんな自分があったんや…などと朝吉が佇んでいると、横で呆れていた清次が、あれ、さっきの子、違いますか?と街路樹の側で、チンピラ風の男から何事か話しかけられていた娘を見つける。

チンピラ風の男は常公(千波丈太郎)と言い、家出娘の君子(大杉育美)に、あんたみたいな別嬪やったら月10にはなるなどと甘い言葉で誘っていたのだが、そこに朝吉と清次が近づいて来ると、君子は怒って常公を引っ張って行ってしまったので、清次は、アホやな…、みすみすひどい目みるの知らんと…と呆れる。

その夜、バー「赤い貝」のホステスとして雇われた君子だったが、その店が売春を強要される店だと知り、すぐにこんな衣装脱ぐわと常公に文句を言っていたが、ビンタをされ、おとなしせんとあかんやろと脅されてしまう。

その側にぶらりやって来た朝吉は、清次から、金もあることやし、久しぶりにばーっとしまひょうやと勧められていたが、そんな朝吉に、良い女いまっせとチンピラが声をかけて来る。

朝吉が追い払おうとしていると、常吉が近づいて来たので、朝吉も常公も昼間会った相手だと気づく。

朝吉は、お前ぽん引きやったんかと言いながら、常公を捕まえると、昼間の女の子、どうしたんや?会わせろと迫る。

すると、他のチンピラたちが集まって来たので、客になってやる言うんや、案内しろと朝吉は常公に言う。

「赤い貝」の席に着いた朝吉の横に座って来たのは、朱美(八千草薫)だった。

あけみは一目で朝吉に惚れたようだった。

そして、常公に連れて来られ、清次の横に座らせられたのが昼間の家出娘君子だった。

君子は明らかに客を取らされるのを嫌がっていたが、常公が奥へ連れて行って着替えさせて来ると、路地の奥にある旅館「若松」で待たされていた朝吉と清次の元に連れて来られる。

清次はあけみに、こちらは八尾の朝吉親分やと紹介するが、あけみはあっさり、知らんなと言うとうちこっちにするといて朝吉に抱きつくと、あんたこっちにしと、君子には清次をあてがおうとする。

アホ!おれら女抱きに来たんと違うぞと朝吉が叱りつけると、ひょっとしたら、この娘を連れ出そうとしに来たんか?あいつらにカ○ワにされるでと驚きながら、2階へ朝吉と清次たちを案内する。

朝吉は君子の方と部屋に入り、あけみを追い出したので、仕方なくあけみは清次と同じ部屋に入る。

朝吉は君子に国を聞くと北陸だと言うので、帰れと勧める。

一方、清次は、あけみを抱こうとしていたが、あけみは軽くいなしていた。

そこに朝吉が入って来て、清次にそろそろ行くでと言うと、あけみは急に態度を変え、うちはこの人と好き勝手に遊ぶわと清次にもたれかかるが、朝吉が自分の部屋に君子を呼びに戻ると、あけみは又清次に冷たく当たるのだった。

しかし、すぐに君子を連れて朝吉がやって来て、部屋の灯を消して、外から怪しまれないようにすると、ほんまに、この娘を逃がす気か?殺されるんやでとあけみは繰り返す、

そんなあかみに、お前なんでこんなことやっとんや?と朝吉が聞くと、バーで働いていたら、常やんが一緒に暮らそう言うてくれたんで喜んだら、実はヒモになるだけやったと言い、でもこの子はまだ立ち直れる。でも、あんたら怪我無しで行けるやろか?と心配する。

やがて、通りの方からヤクザたちが数名固まって近づいて来たので、裏は何や?と窓から監視しながら朝吉が聞くと、なんかの工場や、そこから通りに出られるとあけみが言うので、朝吉は、したはわいがやるから、この娘はお前が連れて行け。待ち合わせは大阪駅の地下の北口やと清次に命じる。

清次と君子が窓から裏の工場に降りると、朝吉はあけみを連れて旅館の下に降りると、そこで待ち受けていた常公立ち相手に殴り合いを始める。

一方、工場の敷地に降り立った清次と君子は、戸を開けて外に出ようとするが、何と鍵がかかっており開かない。こら、しもた…と清次はシャレを言う。

ヤクザたちを全員気絶させた朝吉は、常公にだけ水をかけ目を覚まさせると、あけみと一緒に連れて外に逃げ出す。

その時、工場の社長と従業員らしき2人が鍵を開けて中に入って来たので、戸の影に隠れていた清次と君子は、2人が奥へ言った隙に外へと逃げ出す。

ところが、通りに出ようとした所で、猟銃を持ったヤクザたちが道を塞ぐように並んで迫って来たので、清次は覚悟を決め、君子だけを逃がすと、自分はヤクザたちの前に進み出て、あっさり捕まることにする。

その頃、朝吉は、あけみと常公を連れて、大阪駅の地下北口で待っていた。

何で俺まで連れて来たんやと膨れている常公に、お前ら夫婦の約束したんやろ?そやから堅気の所帯持たそうと思ったんやと朝吉は説明する。

その時、君子だけやって来て、清次は捕まったと知らせたので、あけみは、どないするねん?と朝吉に迫る。

一方、捕まった清次は、新湊興行と言う会社の事務所で、組幹部の磯辺(藤岡琢也)から、君子やあけみをどこへやったんや!と尋問され、答えないと、子分たちに痛めつけられていた。

同じく幹部の横川(戸田皓久)も、このままではうちとこの組の外聞にかかわる。社長はんの留守の間、下手打ったらあかんと案じていた。

大阪駅の方では、朝吉が、清次が捕まったままで放っとけるかと悩んでいたが、それを側で観ていたあけみは、両方助けるのは無理やな…とからかい、もうすぐ北陸行きの最終やでとせかす。

結局、朝吉は、清次は何とかやるやろと諦め、北陸行きの列車に乗り込むことにする。

常公は、途中、小便と言って車両を離れようとするが、朝吉が目を光らせ、せんでええと言って止める。

粟津駅に着いた朝吉らに、お情けは忘れませんと礼を言って、君子はバスに乗り故郷へ帰って行く。

後に残ったあけみと常公には、近くに温泉でもあるやろ。温泉泊まって思案しよと朝吉は声をかける。

温泉に泊まった朝吉は、常公に対して、自分のかかあに売春させて何とも思わんのか?と問いつめると、あんまり良い思いやおまへんなと常公は渋々答える。

すると、朝吉は、わいかて、人に意見できる立場やない。悪名も流して来た。そやから言うんや。棺桶に片足突っ込んだ時、少しはまともな人間になっとこてと常吉に言い聞かす。

しかし、常吉は、この土地にもうちの組の兄弟分がいるので、すぐ見つかってしまうと怯えるが、今晩、お前ら2人、新婚旅行来た思え、わいもビール飲んでやるわと無理にビールをつがせると、ガチャッって言うのやろと言い、3人で乾杯する。

常吉は改心したかのように、明日ここで働き口探そうと言い出し、朝吉はあけみにも、宿の仲居でも女中でもあるやろ、どうでも堅気の所帯持たなあかんと言い聞かす。

その夜、久々に、常吉と2人きりになったあけみは、思い出すわ…、あんたに騙されているとも知らず、捨てんといてと言った頃が…と呟くが、朝吉さんの顔を立てて一緒に部屋に入ったけど、あんたは信用でけへんわと言い、常吉を側に近づけようとしない。

常吉は真剣やでと言うが、大阪は大阪や、今日からちょっと違うねんとあけみは態度を変えなかった。

翌日、近くの宿に仕事の口を探しに来たあけみを外で待っている間、夫婦になってくれんとぼやく常吉に、良いかかになるまで辛抱せんかと言い聞かす。

朝吉は、仕事が決まったと言いながら宿を出て来たあけみらは、通いにしてもらった良い所を紹介してもらったと言うので、マッサージ師の奥の間に向かう。

掃除を始めたあけみにわいは片山津の温泉へ行くと朝吉が告げると、そうやな…助けた女に手を出す訳にもいかんなとあけみは冗談で返す。

片山津温泉のホテル「あらや」にやって来た朝吉は、ホテル内のバーで清次と呼ばれているバーテンがいるのに気づき、ついカウンターに座ると、色の付いたやつでブクブク出る奴と注文したので、大山田清次(平泉征七郎)と名乗ったそのバーテンは困惑するが、そこに、ソーダ水のことやありせんかと声をかけて来た女性(藤村志保)がいた。

その女性は、大阪のお方ですのね?と朝吉の隣に座って来て聞く。

東京の方ですか?と朝吉が聞くと、いや大阪と答えたその女性は、いたずたしましょう。うちの部屋に行きませんか?と誘って来る。

付いて行くと、花札が置いてあったので、1回勝負で、勝った者が好きなものを取ると言う条件ではどうかと女性は言い、賭け金として10万出すが、朝吉は5万しか持ってないと言うと、それで良いと言う。

勝負は朝吉が負けたので5万払うが、女性は、うちはあんたが欲しいのやと言いながら迫って来る。

あんた、堅気やないな…と朝吉が戸惑うと、女性は部屋の電気を消し、窓辺に立っていた朝吉にキスをして来る。

常吉は、女中の仕事を始めてからきつくて朝寝していたあけみを無理矢理起こすと、これが夫婦か?お前、朝吉さんに惚れてるやろ?と嫌みを言って来るが、あけみは、大阪ではあんたの言いなりやったけど、ここでは違うんや。もっと朝吉はんみたいな情のある男になったらどうやと言い返して来る。

面白くなくて家を飛び出した常吉は、そのまま地元の親分の所へ向かうと、女はここの宿屋の女中をしており、朝吉は片山津温泉にいますと密告し、自分は無理矢理連れて来られたと言い訳する。

すると、親分は、片山津には、お前の親分さんが来ているはずだと言う。

「あらや」のベランダでは、あの女性が朝吉に、あんた、女を泣かせて来たでしょう?現に虐めてるやないの…と甘えていた。

朝吉は、旅の上のお遊びちゅうたのと違うか?ととぼけると、あんた、うちが嫌いなの?と迫って来たので、嫌いやったら、こんな所におるかいと朝吉は答える。

一緒に大阪に帰らへん?と女性が聞くので、あんたが幸せになるなら帰ってもええと朝吉は言うと、結婚しても良いわ。知らん所で思い切って賭けてみいへん?と迫る。

その時仲居が電話ですと知らせに来たので、女性は電話口に向かう。

八尾の朝吉?総絞りの帯に着流し…?と聞いた女性は動揺するが、その女も常公も良く観ておくようにと頼むと電話を切る。

彼女こそ、常公の親分で新湊興業の社長、百合子だったのだ。

その後、朝吉を部屋に呼んだ百合子は、うち、これでお別れにするわ。あんたは当分、大阪に帰って来てもあかんと態度を急変させると、どうしたんや?と聞いて来た朝吉に、聞かんといてて!と言いながらもすがりついて来るのだった。

その頃、あけみの方は、女中仕事の大変さに耐えながら、くじけたら朝吉さんに笑われるがなと意地を見せ、常公にも、あんたの男衆の話は、もうちょっと待ってくれと話していたが、そこに地元のチンピラがやって来たので、あけみは常公が売った事を知ると、あんた!と叫びながら、常公の頬を叩く。

その後、朝吉が帰って来るが、大家のマッサージ師小寺(春本富士夫)が、あの2人ならヤクザみたいな連中が来て大阪に帰ったと言うので、驚いて事情を聞くと、金はきちんと払って行ったし、男の方は納得づくみたいやった。女の人は、私のこと気にせんといてくれ、2、3日やったけど人間らしい生活できて嬉しかったと言うといてくれと言付かったと言うではないか。

そこに、又、地元のチンピラが2人やって来て、新湊から、あんたを引き渡せ言われとると言って来る。

おとなしく表の道まで付いて行った朝吉は、表で待機していた仲間たち相手に暴れ始める。

一方、大阪の新港興業へ戻って来た常公とあけみは、磯辺らに徹底的に痛めつけられていた。

常公には、朝吉に無理矢理連れて行かれたとは聞いたが、何で北陸までのこのこ付いて行ったんや!と怒鳴りつける。

そんな事務所に、百合子が戻って来たので、横川らは、元締めはんが待っていると伝える。

元締め(花澤徳衛)は、温泉行ってたんやって?と帰って来た百合子に聞くと、ちょっと女の子を捜しに…と百合子は答える。

横川と磯辺は、留守中の不始末を百合子に詫びると、朝吉の連れの清次ちゅうのを捕まえて可愛がっておきました。そしてら、意気地のない奴で、ころっと寝返って、今ぽん引きやってますと報告する。

朝吉来るやろか?あけみが戻って来たんやから、そう荒立てんでも…と百合子は話を収めようとするが、横で聞いていた元締めは、あんたんとこでそんな癖付けてもろうたら困る。連合会全部の問題やと口を挟んで来る。

清次は、常公と表で話していたが、親分が御呼びだと言われると、素直に事務所に戻って来ると、元締めを親分と勘違いして挨拶する。

しかし、百合子の方が親分やと聞くと、ちょっと驚いた風だった。

その時、電話がかかって来て、それを取った横川は、朝吉が北陸から帰って来るそうですと百合子に伝える。

元締めは、連合会の寄り合い「末広」でやろうか?と声をかけられた百合子は、自分は先に行っていると言い、清次に付いて来いと命じる。

朝吉は列車で大阪に戻って来ていた。

「末広」で百合子の肩を揉んでいた清次は、突然、百合子を口説き始める。

百合子が頬を叩き付けると、親分!朝吉親分を堪忍しておくれやす!と頭を下げて来たので、お前、朝吉を助けるために…と百合子も気づく。

口説いて、何したら…、聞いてもらえるかも知れん思いましてな…と清次が言うので、百合子は、うちを口説いてもあかん。連合会が承知せん言うんや。お前これから大阪駅に行って、朝吉にここへ来たらあかんと言うて来い。ここの様子を話しても聞かなんだら、片山津の「あらや」で会うた女がそう言うてた言うんや。それでも聞かなんだら…と、言うと、バッグからふろしき包みを渡す。

開いてみると、中には銃が入っていたので、うちの親分にでっか?と清次は驚くが、うちの子分らに気取られんように行け、広い駅や、見逃すなよと言うので、清次はありがとうございますと頭を下げて部屋を出て行く。

大阪駅前の陸橋で大阪駅から出て来た朝吉を見つけた清次は駆け寄って行くと、近くの食堂に連れて行き、今、事務所でぽん引きしていると近況を報告する。

すると、朝吉は怒って、縁切りすると言い出すが、泣くで、わいは…、恒哉あけみが戻って来たら助けたろ思うて残っていたんや。連合会の元締めが待ってますのや。あけみのことは諦めてくれ。あんさん、殺されますでと忠告する。

しかし朝吉は、この2、3日だけでもまじめに暮らせて楽しゅうございました言われて、放っとかれるか!と怒鳴るので、片山津の「あらや」で会うた女と言うてと…、どないでも来るちゅうんやったらこれ渡して来いと…と言い添えながら、清次は朝吉に銃を取り出して見せる。

「末広」にやって来た元締めたちは、座敷で待っていたのが、清次と朝吉と知り驚愕する。

何しに来たんや?と問いかける元締めに、これに決まってるやろ?女親分いるやろ?出せ!と言いながら朝吉が銃を取り出すと、奥の部屋から百合子が顔を出す。

元締めは、落としまえ付けに来たんなら話し合いで行こう。今日の所は帰れと言うが、百合子が、この人と2人で話付けとうおますねんと頼み、朝吉を奥の部屋に招く。

百合子と2人きりになった朝吉が、お前、こんな女やったんか!と睨みつけると、あんたも、ただの極道もんやないことは分かったと百合子は答える。

人を泣かすようなこと止めとけ言うんや。女やったら、好きでもなんでもない男に抱かれる女の気持ち分かるやろ?と説得する朝吉に、そんな話なら、片山津の女に言えば良いと百合子が突っぱねるので、その片山津の女に話してるんやないかと朝吉は詰め寄る。

百合子はまとまった金を取り出すと、あんた、このままやと殺されるんやでと忠告するが、朝吉は立ち上がると、わい、こんなもん使うたことないんや。片山津の女に返しといてくれと言って銃をテーブルに置くと、そのまま部屋を出て行ってしまう。

百合子は、悔しそうに銃を握ると、引き金を引いたので、

そして、座敷で待っていた横川らに、あけみは必ず連れ戻しに来るからなと言い残し、清次と共に店を出て行く。

悄然とする百合子を観た元締めは、わいらに任しとき。親分言うてもやっぱり女や、裁きは無理やなと慰める。

旅館「若松」の一室に閉じ込められていたあけみは、あの人来たら殺されてしまうわ。あんた、朝吉さん殺されてもええんか!と一緒に閉じ込められていた常公に聞く。

屋台で腹ごしらえをした朝吉が、主人に水を頼むと、コップを2つ出そうとしたので、1つで良いがなと言う。

自分は残されると感じた清次は、朝吉が半分飲んだコンプの水を自分が飲み干し、死ぬときは一緒やと言うと、朝吉は嬉しそうに清次の頬をつねる。

バー「赤い貝」のカウンターに座って黙り込んでいた百合子だったが、子分たちは、店の周囲で朝吉が来るのを待ち受けており、元締めは横川と磯辺たちに、朝吉が女を連れ出したら殺せと命じていた。

やがて、朝吉と清次が来たのに見張りが気づき、元締めの所に知らせに来る。

「赤い貝」の側にやって来た朝吉は、誰もおらん所を観ると、袋のネズミにしようとしてるのと違うか?飛んで火にいる夏の虫になったろかいと清次に囁きかける。

清次は「赤い貝」に入ると、待ち受けていた子分衆と喧嘩を始める。

朝吉の方は「新湊興業」の事務所に来て横川や磯辺に対峙するが、待ち伏せしていた子分から背中に猟銃を突きつけられる。

磯辺が朝吉に近づき、殴りつけて来るが、その磯辺を盾にし、後ろを振り向くと、猟銃を奪い取り、組員たちを並ばさせると、猟銃の弾を抜く。

それをきっかけに殴り合いが始める。

戦いながら外に出た朝吉は、そこで戦っていた清次と合流する。

その様子を「若松」の二階から覗いていたあけみは、えらいことなってるわ。あの人殺されてしまうわ。何とかしてえなと常公に頼む。

すると、それまで黙って座り込んでいた常公が立ち上がり、階段横に置いてあった消化器を取り上げると、下に降りて行く。

喧嘩中の朝吉の所にやって来た常公は、親分、悪うおましたな、堪忍しておくれやっしゃと詫びると、目覚めたかと言う朝吉に頷くと、自分を痛めつけた組員たちに立ち向かって行く。

朝吉は横川と磯辺を痛めつけると、そこに、元締めと百合子を連れて清次がやって来る。

元締めは諦めたように、お百合はん、あんたの好きなようにしなはれと言い、横川は金庫から金を出すと、これで社長と元締めには手荒なことはせんといてくれと頼む。

せっかくやからもろとくわなと朝吉が、あっさりその金を受け取ったので、八尾の朝吉は金で決着付けるんかい?片山津の女が泣いとるちゅうんや。用がすんだら出て行き!と百合子は凄むが、まだ話はついとらん。お前にはとっくり話があるんや、付いて来いと言い、「若松」のあけみのいる部屋に連れて行く。

そして、あけみの前で、お前を買うたる。裸になれちゅうんや!と朝吉は百合子に迫る。

百合子は諦めて、なるから、この子を下に降ろしてと頼むが、部屋を出て行きかけたあけみに、降りんで良いと朝吉が言うので、もう親分は分かってはりますのやとあけみはすがりついて止めさせる。

何でかばうんや?お前が買われたこの親分に、女の哀しさ辛さを、裸にして分からせてやらんかい!と朝吉は怒鳴りつける。

そして、常公は今度はええ亭主になってるらしいからと言い朝吉はあけみに部屋を出て行かせると、片山津の女に言ってくれ。これからは堅気になって幸せに暮らせ。遊びじゃなかったと…とと言い残して自分も出て行く。

部屋に1人残された百合子は泣き崩れる。

夜が空け始めた陸橋の所に、あけみと常公を連れやって来た朝吉は、これから飯食いに行って、三三九度でもしてやろと言うと、一緒にいた清次が、自分がおごると言い出し、4人は陸橋を登って行くのだった。