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悪名一代

シリーズ第13弾

日常ドラマ風のハッピーエンドだった前作とは打って変わり、今作は、当時流行っていた東映任侠映画を意識したような暗いタッチの作品になっており、終始、武器を使わず、暴れん坊の痛快譚だったはずのこのシリーズのイメージを根底から覆すものになっている。

それを暗示するような冒頭から、清次と別れて1人旅に出かけた朝吉が、とある旅館で、奇妙な不良娘と何も語ろうとはしない暗い女性と出会う所から話は展開し始める。

妙に人懐っこいお澄(森光子)との奇妙な出会いもあり、いつもの朝吉の御節介が始まるが、やがて沖縄の源八や2代目シルクハットの親分と言った、シリーズ初期の思い出させるようなキャラクターが登場、さらに、女房をもらっていた清次とも再会して行く中、事件は悲劇的な結末を迎える。

源八の養女で不良娘を演じている勝山まゆみや、2代目シルクハットの妾を演じている浜田ゆう子は、馴染みの薄い女優さんと言うこともあり、妙に印象に残る暗いキャラクターになっている。

小池朝雄演じる敵役のお十夜も憎々しいキャラになっているが、最後の朝吉の行動を正当化するほどのことはやっていないような気がする。

最後の朝吉の行動は、身内同然だった清次を刺されたことによる動揺から激情に駆られて…と言うことだろうが、観ていてあまり後味は良くない。

善し悪しはともなく、これまでシリーズが築き上げて来た八尾の朝吉のヒーローイメージを崩してしまったことは否めないだろう。

一方、珍しく、着流し姿で殴り込みに出かける清次役の田宮二郎は、なかなか格好良く、これが「悪名」シリーズでなかったら、それなりに魅力的なヤクザ役になっているとは思うが、従来のおっちょこちょいで底抜けに明るい清次のイメージとは全く違っていることも確かで、シリーズファンとしては評価が分かれる所ではないだろうか。

森光子演ずるあっけらかんとした陽性のキャラと、長門勇演じる2代目シルクハットの親分は、なかなか興味深いキャラクターになっている。

余談だが、上田吉二郎と言えば、「ヴハハハッ」と笑う悪役と言うイメージが一般的だと思うのだが、実際に、そんな笑い方をしている映画と言うのはあまり観たことがない。

その数少ない特長的な笑い方をする上田吉二郎が出て来るのがこの作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1967年、今東光原作、依田義賢脚色、安田公義監督作品。

路地裏でチンピラたちと喧嘩していた清次(田宮二郎)は、相手が手にしたナイフを奪い取り暴れるうちに、つい、そのナイフで飛びかかって来た1人のチンピラに突き刺してしまう。

驚いた清次は、ナイフをその場に投げ捨て逃亡するが、「やくざ風の男に刺される 組関係のもつれか? 一命はとり止める模様」と新聞に載ったのを八尾の朝吉(勝新太郎)が海辺で1人読む。

「刃物だけは持つなのお言葉に背いてしまいました。ご迷惑かけてすみません。しばらくお別れします」と書かれた清次からの手紙を受け取っていた朝吉は、その手紙を破り捨ててしまう。

タイトル

清次と別れて1年…

列車で旅をしていた朝吉の隣の席に、行李を抱えた1人の女が座りかけ、朝吉を観るなり、ケイちゃん!と呼び掛けるので、人違いと違いますか?わて、そんな男と違いますでとう朝吉は否定するが、うち、お済やで…と名乗ったその女(森光子)は、昔の面影残ってるわぁなどと食い下がる。

ケイちゃんと言うのはどんな人ですねんと聞いた朝吉に、幼なじみですねん。でもわてが10の時で、もう20年も会うてへんなどと説明したお済は、これからこの先の温泉に働きに行く「渡り仲居」だと自己紹介する。

同じ駅で降りた2人は、駅前の食堂で、遺書に「冷やしうどん」を食べることにし、おしゃべり好きらしいお済は、自分は小学校を出てすぐに奉公に出され、親も兄弟もいてしまへん。わてはすぐに男に惚れますねん。そして騙されても、又好きになるなどと自分を説明し、八尾の朝吉と言う名前を聞くと、自分がこれから行くのは「ゆあさ」と言う旅館なので、良かったら来てくれと言い、食後、バスに乗って出かけて行ったので、バスまで行李を運んでやった朝吉は、駅前で手を振って見送ってやる。

「ゆあさ」に付いたお澄は、横柄そうな板前(杉山昌三九)から食事をもらうと、食べたらすぐに、今来た客の部屋に行ってくれと女将おきさ(近江輝子)から頼まれる。

食事もそこそこに部屋にお茶を持って行ったお澄は、そこで浴衣に着替えていたのが朝吉だと知り驚くが、あの後のバスで来たんや。どこへ泊まっても良かったのでここに来たと朝吉が言うと、本当に嬉しそうに出迎える。

風呂に出かけた朝吉は、何だか暗い表情の女とすれ違うが、脱衣所の前に若い娘が立って見つめて来たので、女湯はあっちやでと教えてやるが、おっさん…言うたら失礼やね。兄さん、どこから来はったん?

大阪やと朝吉が答えると、どっかの組の人とちゃうか?何や、観たとこ堅気やなさそうやね?などと馴れ馴れしく聞いて来る。

お前は何や?と朝吉が聞き返すと、私は女子高生よ。あんた、誰ぞ探しに来たんじゃないの?さっきのスケが何か言ったんやない?と娘は聞いて来る。

そりゃ、わしは極道もんじゃ。だが、どこの組にも関係ないんじゃと朝吉が苛つくと、へぇ~…、一匹狼?素敵!後で部屋に遊びにおいで、離れやし…などと誘って来る。

風呂から上がり、部屋に戻って来た朝吉が、夕食の準備をしに来ていたお澄に、離れの女の客のことを聞くが、知らないと言う。

調理場に戻って来たお澄が、同僚の仲居に離れの客のことを聞きかけると、あの女のことを聞くのは止めとけ!身のためだぜと、休んでいた板前が叱りつける。

片付けに来たお澄から板前の言葉を聞いた朝吉は、何でそんなこと抜かしやがるんやろな?と首を傾げ、離れの女にはけったいな不良みたいな娘が付いてるやろ?気になるガキやな…と独り言を呟くと、すぐに立ち上がり離れに向かう。

離れの部屋にやって来た朝吉は、ウイスキーあるけど飲まはるか?と勧めて来た娘に、酒は飲めんと断る。

さっき、この人に何言うたん?と娘が、窓際に座っていた女に聞くので、朝吉が何も言うとらん言うたやろと怒ってみせると、それなら何しに来たん?と娘は食い下がる。

何か訳がありそうなので話を聞きに来たんやと朝吉が言うと、娘は女に、訳言うたり。言えへんのやったらうちが言うたろか?この人、3億円の手形同然の人なんやで、そたさかい、大事に扱わないないかんのや。びっくりしたやろと教える。

何でそんな金持っとるねん?と朝吉が聞くと、この人のおばあちゃんが財産を相続させるためにアメリカが帰って来るのやと娘は面白そうに教え、そのおばあちゃんをお前らどないしよう言うんや?と朝吉が聞くと、それは明日来るお父ちゃんに聞いてんか。この宿もお父ちゃんの組関係やし、兄さんみたいな怖い人にこの人が何か言うたちゅうて、もうちゃんと電話かけてるわと娘は言う。

その言葉通り、宿の女将はどこかに電話を入れ、離れに図々しく入っている。顔は観たことない。明日の一番で来てつかあさいと頼んでいた。

一緒にいた板前は、何してるんだ!

この宿は出るだけにも難しいけど、ここ出ても電話するだけでも十重二十重や。命は異常なくてもカ○ワにされるわね。それでも助ける?この人…と娘は朝吉をからかうように言う。

止めといて、いらんことせんと、止めといて。気の毒やけど、そんなことに関わって、カタワにでもされたらどないしますねん…と、布団を敷きに来たお澄は、朝吉から離れの話を聞かされると心配する。

じゃあ、止めとくわと朝吉が答えると、お澄は、ほんまですな?と安堵するが、お目見えしたとたんにこんな気色悪い…。今夜1晩だけと言わず、2、3日いて頂戴と頼み、さらに、朝吉に顔を近づけると、ちょっとだけキスして!と図々しくねだって来る。

朝吉が軽くキスしてやると、おおきに、これで機嫌良う眠れるわと喜んだお澄は、歌を歌いながら、寝ていた朝吉の足に躓いて部屋を出て行く。

翌朝、「ゆあさ」にやって来たのは、沖縄の源八(上田吉二郎)と子分2人だった。

源八は連絡があった図々しい客のことを女将に聞くと、お嬢さんに脅されて黙ってしまったらしいと聞くと、子分たちと一緒に笑い出す。

その直後、階段を上りかけていた朝吉に気づいた源八は、朝吉さんじゃないですか?わしは新世界にいた沖縄の源八だと声をかける。

朝吉も、若いもん集めてパンパンさせていた源八を思い出し、自分は出雲大社に参ろうと思うと、当地にいる訳を説明すると、源八の方も、今はさっぱり耄碌して、花咲の方で不動産をやっていると近況を教え、朝飯でも一緒に食べないかと誘う。

朝吉も賛成し、預かりもんに手を出そうとするアホがおりますのやとぼやく源八と一緒に離れに来ると、源八はそこにいた娘の環(勝山まゆみ)を自分の娘で、女子大に行きたい言いますねんと紹介すと、夕べ、妙な奴が来よったって、どんな奴や?と環に聞く。

すると、環は目の前にいる朝吉を顔で指したので、驚いた源八は、朝やんどうするつもりや?と聞く。

朝吉の方は、年寄りが苦労して貯めた金を取るそうやないか?と聞くと、源八は、自分はただこの娘を助けてやろうと思って…と言い訳をする。

聞けば、その女は蔦江(浜田ゆう子)と言い、シルクハットの親分の手に押さえられていると言う。

因島の?と朝吉が聞くと、そのシルクハットの2代目が3億円を財産を目当てに、相続するこの蔦江はんを手込めにし妾にしてたので、自分が助け出して、おばあちゃんが帰って来るまで、ここに保護していたのだと源八は言う。

しかし、朝吉は源八の言葉を鵜呑みにはせず、蔦江に本当のことを聞かせてくれと頼むが、夕べから蔦江は一言も口を聞かない。

今日も環が、お父ちゃんは私を養女にして家の山を自分のものにしたように、あんたを養女になれ言うて口説いてんのやでと口を挟み、手を引いてもらおうかと言い出した源八に、おんどりゃ誰に向かって口聞いてるねん?訳を聞いて黙っている朝吉やないんやと凄むと、絡んで来た子分衆を突き飛ばし、朝飯を食って来ると言って部屋を出て行く。

すると、源八は、宿を移そう。朝吉がどうこう言うんじゃない。シルクハットの方でもこの辺に目を付けて来たらしいからやと子分たちに言い、蔦江にも、シルクハットの目の届かん所へ移ろうと優しく説得する。

部屋に戻っていた朝吉は、お澄から、離れの連中が宿を出ると聞いて、自分も出ると言い出す。

朝吉は、蔦江と環を連れ「やあさ」を出発した源八一行の後を付いて行くが、お澄も送って行くと言い付いて来る。

その途中で、地回りらしき連中が前後を囲んで来たので、お澄は怯えるが、朝吉は、こっちは何もせえへんから心配せえかてええと言って、そのまま歩き続ける。

源八が、朝吉はん、あんたもお発ちか?どこに行くのや?と聞くと、出雲やと答えた朝吉は、源八一行を追い抜くと、走って来た宮島運送のトラックを停め、運転手に掛け合う。

お澄は、トラックなんかで行くのか?みっともないことは止めなはれ。お金なら私が…と朝吉に声をかけるが、朝吉は、源八と子分を叩きのめすと、蔦江を助手席に乗せ、自分は荷台に飛び乗ってトラックを走らせる。

地回りたちが後を追って来るが、朝吉は乗り込もうとする連中を蹴落とすと、お澄に手を振りながら走り去る。

環と源八たちは、なすすべもなく立ち尽くしていた。

バス停の所でトラックを降りた朝吉は、蔦江と食堂に入る。

シルクハットの2号になっとったってほんまやな?と話しかけた朝吉は、蔦江に冷たいものを頼んでやり、自分は、こう…皿の上に飯があって、それに黄色いのがボタボタッとかかっているのあるやろ?と注文する。

外国のおばあちゃん帰って来るってどこやねん?わしが恐いのか?ちっとも口を聞いてくれんなと朝吉が問いかけると、原坂です。この13日に故郷のお盆を迎えたいと言いまして…と蔦江は始めて口を開く。

せっかく帰って来る年寄りに悲しい思いをさせたくないやないか?わしがこれからシルクハットの所に乗り込んで話を付けてやるから心配せんでええと朝吉は言う。

ライスカレーがやって来ると、これが好きやねんと言いながら、カレーと飯をスプーンでかき混ぜながら食べ始めた朝吉は、あんたとわいは出来た仲と言うことにする。ええな?ほんまと違うねん。そう言う振りをするだけやないか。話つけるのに水臭い中やったら具合悪いやろ?相手が相手やらからきっぱりけじめを付けんと、一生逃げられんようになるでと説得する。

カレーを食べ終わった朝吉は、店の女に次の原坂行きのバスの到着が12時半と間もないことを聞くと、食堂の裏で顔を洗って戻って来るが、そこに蔦江の姿はなかった。

道を戻り始めていた蔦江に追いついた朝吉は、私はもうこれ以上、あなた方と…と逃げようとする蔦江に、お前、わしをあいつらと同じような人間と思うているのか?あほらしゅうなって来たと真顔になる。

すると、蔦江は、私怖かったんですと詫びるので、分かっとるわい。確かにわいは極道や。そやけど、わしはそんな人間やないつもりやと朝吉は答える。

蔦江は、誰も信じることが出来なくなっていたのです。私だけではあの人たちからは逃げられないのです。私は仕方ありませんけど、何も知らないで帰って来るおばあちゃんのことを考えると、私…と言いながら泣き始める。

初代シルクハットの親分こと瀬戸鉄五郎の写真と掛け軸がかかった居間で、マメを食っていた2代目シルクハット(長門勇)は、経営している原坂運輸の事務員の女性が、蔦江さんと男の人が帰って来ましたと知らせに来たので、慌てて居住まいを正す。

蔦江の姿を観た2代目は良う帰って来たと喜び、朝吉に対しては、あんた、どこの組の人や?と聞く。

八尾の朝吉だと名乗ると、先代からあんたのことは聞いていると2代目は喜ぶ。

そこに、蔦江はん、帰って来はったんですか?と言いながらやって来たのは清次だった。

清次は、そこに朝吉がいることに気づくと驚くと共に、バツが悪そうな顔になり、あちこち逃げ回っているうちに、ここに…と照れくさそうに言い訳をする。

そんな清次を無言で睨みつけた朝吉だったが、2代目に対しては、願いがありますのや。蔦江をもらいとうおますのや。わいと蔦江は出来てしまいましたんやと、打ち合わせ通り噓を言う。

すると2代目は、出来た仲なら、この女がどんな女か知っとるなと聞くので、3億人の相続人と言うことで、あんさん…と朝吉が言いかけると、おいおい、わしは2億や3億の金に目がくらむような男やない!蔦江に惚れたんやと2代目は言い返す。

朝吉がどんな仕置きでも受けますから蔦江をくれと重ねて頼むと、仕返ししてくれ言うても、あんたの手足を折ってもどうってことないもんな…、出来たことはしょうがないもんな…と、堪忍できんとこじゃがな…と、一見穏やかに2代目は応ずる。

しかし、2代目蔦江はやれんときっぱり言い、ここからは逃げられんぞ。腕づくでも取るんなら別やけどな…。逃げられるなら、始めからここへ連れて来んやろな…と2代目は朝吉に笑いかける。

偉いな。この朝吉つぁんは、我が身痛めても、蔦江をわしから縁切って、おばあちゃんに会わそうと言うんじゃ。朝吉はんと言う人はそう言うお人じゃ。清次もおることやしな。あんた、家でゆっくりして行きなはれと勧め、蔦江を別室に連れて行く。

シルクハットは蔦江を正妻のおまき(園千賀子)のいる室に連れて来ると、それまで猫なで声で話していた態度とは急変し、思い切り頬を叩く。

その場に残った清次は、えらいことになりましたなと心配そうに声をかけて来るが、朝吉は、われとは、あのハガキ1本で縁切ったんやと答えるだけだった。

あの親分は、人が良さそうに見えて相当な悪ですで…と清次が教えていると、その言葉が聞こえて来たらしいシルクハットが笑いながら戻って来たので、朝吉は、しばらく居させてもらいますと頼む。

すると、嬉しそうになったシルクハットは、清次に、嫁はんを紹介せえと命じ、お前、結婚したのか?と驚いた朝吉に、わしの妹やと教える。

その後、清次は朝吉を自宅に連れて来て、女房のお美津(坪内ミキ子)を紹介する。

お美津は、兄には似ても似つかぬしっかり者で、何や知らんけど、兄がご迷惑をかけたそうで…と朝吉に詫びると、この人にはヤクザの道を歩かせんつもりですときっぱり言う。

シルクハットから、清次とはすでに出来た仲だと聞いて来た朝吉がおめでたは何時でんねん?と聞くと、恥ずかしそうに、11月ですとお美津は答える。

お美津が氷水の用意をしに台所に向かった後、朝吉は、ええ女子やなと褒め、煙草をくわえると、ライターの火を差し出して来た清次を無視し、お前とわいとは何の関係もない人間やと言いながら、自分でマッチの火をつける。

朝吉の怒りは収まっていないと感じ、神妙な顔つきになった清次だったが、お前がややこをおぶっている姿考えてみい…と言いながら朝吉が笑い出すと、思わず顔をほころばすのだった。

シルクハットの家の二階に居候することになった朝吉は、窓から、下の廊下にいた蔦江の姿を観かける。

すると、シルクハットの舎弟中木(北城寿太郎)らが、何、勝手に窓開けてるねんと因縁を付けて来る。

朝吉はこらえて、その場に正座をすると、丁寧に謝罪するが、その姿を観た清次は複雑な表情になる。

さらに、中木は、朝吉に花札をせんか?胴を取ってみいなどと無理強いして来る。

それでも朝吉が黙って言うことを聞くので、あまりの中木の態度に切れた清次は、表に誘い出すと殴り合いを始める。

中木を叩きのめした清次が戻って来ると、シルクハットは、アホンダラ!と叱りつけながらも、朝吉はんと言うのは、いつも辛抱強いのか?無駄な争いはせんと言うことか…と聞き、清次、お前もこの辺で腹を決めんとおえんぞ。おばあちゃんが帰って来る、前の晩辺りが楽しみやな…と笑いかける。

その頃、沖縄の源八は、お十夜(小池朝雄)と文珠の銀次(早川雄三)に、シルクハットの所から蔦江を連れ出す援助を頼んでいた。

蔦江が3億円の相続人になると知ったお十夜は、あんただけではシルクハットは無理や。3億円の分け前は4-6で、こっちが6を取ると無茶な条件を突きつけて来ると、源八に一札書けと命じる。

清次は暗い思いで帰宅するが、そうとは知らないお美津は夫婦茶碗など買っていたが、清次の表情を観るなり、あんた、何かあったの?と聞く。

電報が来たんや。明日の朝、神戸に着き、午後3時に花咲におばあちゃんが来るんや…。もし、朝吉親分が危なくなったら、助けなあかん。これは義理や。分かるな?と清次はお美津に言い聞かす。

翌朝、2代目シルクハットから、朝吉どないしとる?と聞かれた中木は、二階でごろ寝していた朝吉の元に来ると、お前、どないする気や!と言いながら、起きようとしない朝吉の背中を蹴る。

起き上がった朝吉は、殴って来た中木に得意の頭突きを食らわせ、一発で倒すと、下に降り、おばあちゃん、迎えに行こか?と蔦江に声をかけると、2代目に、沖縄の源八、知ってはりまっか?と聞く。

その内、たっぷり可愛がってやると答えた所を観ると、良く知っているようで、この町には、わしの息がかかっとるのが100や200や聞かん。下手すると命のうなるわいと見栄を張って来る。

その頃、その源八は、環と共に、蔦江のおばあちゃんお菊(本間文子)の乗った豊岡行き列車に同乗しており、愛想良くアイスクリームを渡しながら、駅には新聞記者らが来てますと噓を教える。

すると、お菊は、墓参りをしたら誰でも会うが…と言うので、それに調子を合わせるように源八は、1つ前で降りましょうと勧める。

環は、蔦江さんの方はどうするの?と源八に聞くが、心配せんと任しときと源八は余裕を見せる。

しかし、花坂の1つ前の駅でお菊を降りた源八と環だったが、改札口の前には、お十夜たちが待ち受けていた。

原坂駅で待ち構えていた2代目シルクハットは、到着した列車からおばあちゃんが降りて来ないので、タキシードに身を固めた清次に確認させるが、客車の中に入ってみた清次は、乗ってないと言う。

同じく、1人で駅のベンチに座っていた朝吉を牽制するように中木ら舎弟連中が取り囲む。

そんな朝吉に客車の中から声をかけて来たのはお澄だった。

聞けば、あのことが会って以来「ゆあさ」にいづらくなって、この先の湯山に行くのだと言う。

おばあちゃんが乗っ取るはずやと朝吉が聞くと、そう言えば、1つ前の小山駅であの親爺と娘と一緒にいるのを観たと言う。

源八のことだと気づいた朝吉は、おばあちゃん来んことには話にならんと、シルクハットに聞こえるように言いながら、駅を出て行く。

その頃、源八は、お十夜たちに、抜け駆けをした罰として拷問を受けていた。

あまりにも無惨に痛めつけられている父親の姿を観た環は、もう止めたってとお十夜に頼むが、お父ちゃんに言うたりや。何でも好きにやりんさいとと皮肉りながら、源八に書かせた約定をその場で破り捨てる。

お菊は、老松楼と言う旅館に軟禁されていた。

朝吉は、入院した源八を見舞うと、ええ年して、いつまでも極道しとったらあかんぞ。この娘にも、もっと親らしくしろよと言い、それを聞き泣き出した環にも、一生懸命きばって、女子大行かなと言い聞かす。

その後、お十夜の経営する遊郭にやって来た朝吉は、源八からの預かりもん、帰してもらいに来たとお十夜に伝える。

婆がどうなっても良いのか?俺の一声で命ないんやど!と凄むお十夜は、シルクハットの身内か助っ人か知らんが、お前と入れ違いで挨拶行かしとるんや。いっぺん帰って、改めて出直して来いと言う。

その頃、シルクハットの家を訪ねた文珠の銀次は、お菊婆さん、何であんたんとこいるんかな?と苦笑いしながら皮肉を言う2代目に、老松楼がぜひ観たいと言うて来んさったんじゃ。おばあちゃんは老松楼がすっかり気に入って来たがらん。蔦江さんを連れて来て、一緒に墓参りしたいと言ってはりますと伝えていた。

どこぞで歩み寄りせな、この話いつまで経ってもまとまらへんのと違いますのか?と銀次が言うので、シルクハットは、その内返事をすると答える。

銀次らが帰ると、源八が駆け込んだんやな。悪い奴が絡んできた。蔦江はここに置いといたらあかんな…と2代目が言うので、どう落としまえつけるんや?と朝吉が迫ると、あんた、町から出て行きなはれと勧める。

朝吉は清次に、蔦江はどこにいるんや?と聞くが、知りまへんねんと言うので、お前、嫁はんもいるんや。秋には子供も出来るんやろ?とっくり考えてみい!と叱りつけ、ここ出は返事できへんやろうから、市の宮の灯籠の前で待ってると言い残してシルクハットの家を出て行く。

その後、自宅に帰って来た清次は、着物を出してくれと頼む。

すると、お美津は、お十夜の所に行くんでしょう?話がこじれるようなことはないんでしょうね?と心配するので、朝吉はん来ても、蔦江のことを話したらあかん。血を観る事になるかもしれんのやと言い聞かし、着流しに着替え終わった清次は、今夜は盆踊りや。後で行こか?と笑いながら出かけて行く。

単身、お十夜の元にやって来た清次は、うちからは蔦江連れてきますから、こちらからはお菊はん連れて来て、話し合いましょうとシルクハットの伝言を伝える。

その話を承知したお十夜は、あんたんとこに、朝吉いるな?奴がここに来よってな…と伝えると、清次は驚く。

その後、清次は、お十夜や銀次たちから酒を振る舞われ、それとなく蔦江の居所の探りを入れられる。

清次は答えなかったが、生まれて来る赤ん坊のため、産着を編んでいたお美津の家に勝手に入り込んで来たお十夜の子分たちは、二階に匿われていた蔦江を探し出すと連れ去ろうとし、それを止めようとしたお美津は腹を刺されてしまう。

その直後、約束の場所に来なかった清次を訪ねて来た朝吉は、死んでいるお美津を発見する。

シルクハットの子分も清次の家にやって来るが、お美津を抱き起こした朝吉の姿を見つけると、腰を抜かして逃げ帰る。

清次は酔って上機嫌になり、手みやげ片手にシルクハットの家に帰って来るが、お美津さんが刺されたんやとおまきが教えると瞬時に真顔になる。

お美津の死体の前に跪いた清次は、奴ら、もっともらしい話受けやがって…!と悔しがる。

遺体の側に付き添っていた朝吉は、胸騒ぎがしたんや。とっくり観とけ!と清次に言うと帰って行く。

2代目は、清次と2人きりになるとドスを手渡し、この落としまえ、お前と2人でつけような…と語りかける。

分かっとりまと答えた清次だったが、これで朝吉親分との縁もほんまに切れよるわと呟く。

2代目シルクハットは、ツルハシの金具部分を抜いた柄を道具として選ぶと、清次と2人でトラックに乗り出発する。

飯屋で1人飯を食っていた朝吉だったが、面を通り過ぎるトラックの運転席に乗った2代目と清次の姿に気づく。

原坂新地の遊郭の玄関先にトラック後と突っ込んだ2代目と清次は、お十夜はどこだ!と叫びながら暴れ始める。

そこに、朝吉も駆けつけ、喧嘩に加わる。

その場にいた環から、蔦江とお菊の居場所を教わった朝吉は、環に2人を外に逃がさせる。

一方、お十夜に襲いかかっていた清次だったが、銀次から刺されると、次々に他の子分たちからもドスで突かれ倒れる。

棒を振り回し二階へ駆け上がって来た朝吉は倒れ込んだ清次を見つけると駆け寄る。

抱き起こされた清次は、不細工なとこ見せてすんまへん!と詫びるが、その手に握りしめられていたドスを奪い取った朝吉は、お十夜に向かって行き、とうとう腹にドスを突きさしてしまう。

2代目シルクハットも、1人で暴れていたが、そこに子分たちがトラックで乗り付けて来て加勢をする。

瀕死の重傷を負い入院した清次を見舞った朝吉は、親分に、刃物持たせんようにしたつもりが…、とうとう持たせてしまいましたと恐縮する清次に、お前のような奴、冥土が迎えるか!と叱りつけていた。

小便くらいさせろやと笑いかけ、清次のベッドから離れた朝吉に、入口の所で付き添っていた2代目シルクハットは、お美津殺され。その上、清次まで死なせん。死なせてたまるかと約束し、お前さん、お勤めに行きなさるのか?と聞く。

さんざん悪名をさらした身体や。いっぺんくらい勤めてもおかしゅうないやろと言い、互いに目で頷きあうと廊下に出て行く。

そこには蔦江が待っており、こんなことになって…と詫びるが、二度と極道と付き合うたらあかんでと言い残し、病院を後にする。