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悪名一番勝負

シリーズ第15弾

相棒役の清次が登場しない事を筆頭に、時代設定も戦前風に戻っており、その内容は従来の朝吉ものとは全く違っている。

刃物や武器の類いを使うのは大嫌いだったはずの朝吉が、普通にドスを振り回して殴り込みをかけている。

はっきりした描写はないが、酒を飲めないと言う辺りの設定も、この作品では忘れた事になっているようだし、「死んでもらわなあかんな!」などと朝吉が言うセリフは、健さんの「死んでもらいます」の模倣にしか聞こえない。

これだけでも、従来の朝吉のキャラではないし、映画の性格も別物と言うしかない。

劇中に八尾駅も登場しているが、もはや「八尾の朝吉」と言う呼び方は出て来ず、「河内の朝吉」と言っている。

やはり、ここまで凶暴なヤクザ色が強いキャラになると、特定の地名と結びつけるのはまずいと言う判断かもしれない。

組に入ったヤクザではないながらも、刃傷沙汰を起こしてムショ帰りでは、以前の底抜けに明るい、暴れん坊の朝吉に感じたような愛着感は、もはや持ちにくい。

シリーズ自体のマンネリ化に加え、東映の任侠映画人気に押されていたであろう当時の風潮を鑑み、当時、もう1つの大映人気シリーズだった女賭博師こと江波杏子まで登場させ、若干原点回帰も意識したような任侠映画風に仕立て上げてみたのだろうが、10作以上もシリーズを続けて来て、朝吉のキャラクターを不動のものにしてしまった勝新が、今さら健さん風ヤクザになれるはずもなく、ごく普通の任侠映画の1本と言った印象になってしまっている。

シリーズが変化すること自体に異論はないが、そのシリーズが本来持っていた独自性を捨て、他に似たようなものがたくさんある凡庸なものになれば、人気がなくなるのも仕方ないと思う。

マキノ監督は、それなりに手堅く話をまとめあげてはいるが、特に従来のシリーズ以上のインパクトを付け加えたとも思えず、朝吉人気を再燃させる事は出来なかったようだ。

ただ、この作品単独で観れば全く見所がないではなく、安田道代演じるあっけらかんとした(しようとしている)芸者や、辰巳柳太郎演じる豪快なヤクザ河徳など、それなりに魅力的なキャラクター も登場している。

飄々とした朝鮮人を演じている金子信雄や、おふざけ調ではなく、意外とまじめな役を演じている芦屋小雁なども珍しい。

「兵隊やくざシリーズ」で勝新と名コンビを組んでいる田村高廣も、ちょっと風変わりなヤクザとして登場し、朝吉とは奇妙な仲になるが、このキャラクターも特に強烈な印象を残す…と言うほどのものではないような気がする。

シリーズの中の1本と解釈すると、かなり異色なものになっているが、これを、独立した勝新主演の任侠映画だと解釈すれば、普通に楽しめる出来ではあると思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1969年、大映、今東光原作、宮川一郎脚色、マキノ雅弘脚本+監督作品。

闘鶏する朝吉(勝新太郎)の姿を挟み、タイトル

朝鮮人の金やん(金子信雄)と染物屋の銀三(芦屋小雁)は、飲み屋で、朝吉が来るかどうかで言い合いをしていた。

共に、朝吉には金を貸しているからだった。

そこにやって来た朝吉は、勝ったと言いながら、2人に借金を返すと、懐に入れていた大金をちらつかせて愉快がる。

2人はうらやましがりながらも、自分たちも金が入ったので、喜んで女を買いに行こうと席を立つが、そんな銀三に足を蹴られたと因縁を付けて来た男がいた。

先ほどから、銀三たちの後ろの席で酒を飲んでいた客で、明らかにヤクザらしかった。

その客は、朝吉を、こいつの兄貴分か?落としまえつけたらんかい!と言いながら銀三を捕まえて近づいて来たので、朝吉は、目の前に置いてあったお銚子の中の酒を盃に移すと、そのお銚子を台に叩き付けて割ると、その割れて尖った方を相手に突きつけながら、わい、自分から足出しとったやないか!と言いながら、相手を威嚇すると、その男の懐から2円を取り出し、その場に置いて店の払いにすると、自分は入口で店に向かって、すまなんだなと詫びて出て行く。

そんな朝吉の前に立ちふさがったのは見知らぬ女(江波杏子)で、来て下さいと言うので、不審がりながらも好奇心から後を付いて行く。

すると、とある店の中に招き入れ、そこには、3人の番頭や従業員のような男がおり、女のことをお嬢さん、こんな事は止めて下さいと呼びかける。

しかし女は、その3人を表に出すので、朝吉はますます怪しみ、何の真似や?と聞くと、私の店が潰れてしまい、自分が行く宛はあるのだが、今日まで付いて来てくれたあの人たちの身の立つようにしてやりたいので、どうしても300円欲しいので、淫売とやらになりますと女は告白する。

観ると、店ののれんには「えり吉」と染め抜かれており、それなりに格式がある店だったようだったので、ええとこの娘やったんやなと朝吉が同情すると、芸があれば芸者にでもなれたんでしょうが、私には何にも…と女は言う。

わいが金持ちに見えたんかい?と聞くと、お持ちになっているように見えたんですと女は言う。

朝吉は、手持ちの金を全部その場に出すが、200円とちょっとしかなかったので、足りんがな…と言うと、外に出て、そこで立っていた番頭たちにどアホ!と怒鳴りつけると、又酒屋の方に向かう。

番頭たちは女に、こんなことしてはいけません、そんな事をなさっては、こののれんに…と止めようとするが、女は、長い間辛抱してくれて…、もうこんなものいらないわと言いながら、のれんを外す。

先ほどの飲屋街に戻って来た朝吉は、そこにいた男を捕まえると、何か腹が立たんか?と聞き、立つと言うその男を道の真ん中に連れて来て、周囲の通行人に、良く見ておけよと言うと、レンガをその男に渡し、俺の頭を叩かんかいと勧める。

男がそのレンガで朝吉の頭をどつくと、どうや?すっとしたろと聞き、男ははいと答えて帰ろうとしたので、頭叩いたんやから、20円置いて行かんかいと言い出す。

男は驚くが、言われるまま20円出して去って行く。

朝吉はさらに通行人たちん向かい、誰かどいつてくれんかい?と頼むが、それに応じて近づいたのは、先ほど酒屋で脅した男とその兄貴分のような男だった。

兄貴分らしき男はレンガを受け取ると、二度と俺のシマで商売すんな!と言いながら思いっきり朝吉の頭を殴り、朝吉は流血してしまう。

さすがに跪いて痛がった朝吉だったが、すぐに立ち上がると、60円頂戴、血付いとるから70円出せと言うと、2人を殴り倒し、周囲の見物人たちに、わい泥棒と違うでと言いながら、気絶した兄貴分の懐から70円を取ると、先ほどの女に見せに向かう。

奥に上がり込むと、女は襦袢姿になっていたので、今稼いだ90円を出すと、女を抱こうとするが、女の方はこういう事に不慣れなせいか、座ったまま動こうとしないので、どないせいっちゅうんや?と言いながらふて寝をすると、お前みたいな奴は気安うならんと言い捨てて帰りかける。

女が、お気に召しませんか?と哀し気に聞くと、そんな事あらへんけどな…と言って振り向いた朝吉は、持っていたサイコロを、丁と出いよ…と呟きながら転がしてみる。

しかし、2と5の半だったので、あかんと言って店を出る時、そこに置いてあったのれんを持って行く。

その直後、ガード下の所で、先ほど殴り倒した男の仲間らしき数人に襲われ、相手が振り回した日本刀を奪い取った朝吉は、気づくと相手を斬ってしまった事に気づき、その日本刀をその場に捨てて去って行く。

それから3年…

駅裏の長屋は以前のままで、金さんは、勤めに出かける芸者のお浜(大楠道代)に声をかけると、染物屋に入って、隠れてもあかんで、貸した金はちゃんと期限通り返してもらわんとなと呼びかけるが、銀三は留守らしかった。

その銀三は、賭場で、商売ものの染め物を元手に金を作ろうとしていたが、商売ものに手をつけたらあかんでと後ろから声をかけて来たのが、刑務所に言っていた朝吉だったので、何時出て来たんや?と喜ぶ。

そんな賭場に乗り込んで来たのは、花島一家のもんやと名乗る青年で、賭場の上がりの入った銭函を持って行こうとしたので、朝吉はその青年を表に出す。

朝吉の頭をはたいて来た青年だったが、自分の手の方が腫れてしまう。

その川流れの仙次(津川雅彦)と言う青年をミルクホールに誘った朝吉は、花島組は先代が亡くなってからちりじりになり、代貸の白石と言うのは、大西組に色目を使っており、自分が1人で花島組を守っているのだと事情を聞く。

仙次は吃音だったが、5つの時、天王寺の土手下に捨てられ、川の中であっぷあっぷしていた所を先代に助けてもらったと言うので、「川流れの仙次」の名前の由来を知った朝吉だった。

そんな朝吉に、ぜひ親分に会って欲しい。あんた、強いもん…と、仙次は頼んで来る。

花島一家に行ってみた朝吉だったが、彼を迎えた花島卯之助(山本學)と言う親分は、痩せたインテリにしか見えず、観るからに頼りなかった。

そうですね…、賭場の方は代貸の白石に、稼業の方は、女房のお妙に任せているから…と苦笑した花島は、僕はあなたのご親切を受けるような男じゃない、縄張りの事で誰にも迷惑はかけたくないと言い残して部屋を出て行ったので、どないなっとるねん?と朝吉が仙次に聞くと、そこにやって来たお妙(小川真由美)が、自分が説明すると言い出す。

うちの人は先代の後をついだが、ヤクザではなかった。喧嘩は嫌い、博打は打てん、仁義は切れん…と言うので、朝吉は、じゃあ、あんた、先代の娘はん?と聞くと、仙次がそうだと言う。

こんな花島一家やけど、わては違います。不良上がりの大西の奴が憎うて…けどどうにもならしまへんねん。それでも、駅裏だけは何としてでも守らんと…とお妙は言う。

その頃、大西運送を営む大西寅松(河津清三郎)の家にこっそりやって来た白石鉄之肋(水島道太郎)は、大西から、お前んとこに仙次って奴いるのかい?と聞かれると、あんなガキ、がたがた言うたかて物の数やおまへん。カタつけまんがなと答える。

すると大西は、実は駅裏の件、関鉄の島田常務の話で決まった。急ぐのや。駅裏に貨物の停車場作るのやと教えられ、親分、おまんまの方は?と手を差し出す。

夕方、梯子をかけ、ガードの上に仙次と昇って来た朝吉は、もったいない話やろ。自分のシマで大西の賭場が開かれていて悔しいんやと聞かされ、その場所を教えられると、縄張りの糞もあるかい。相手のタマ取ったら取り徳なだけやないか、遊びに行こかいと言う。

単身、大西組の提灯がかかった家にやって来た朝吉は、始まってまっか?と見張りの若衆たちに、客を装い近づくと、その場で見張りを倒してしまう。

中に入って、上がりの入った銭箱を奪い取った朝吉は、それを外で待っていた仙次に渡すと、追おうとした大西組の子分らに、大量の胡椒を撒いて逃げ出す。

その頃、関西鉄道の島田常務(内田朝雄)に料亭で会っていた大西は、あの駅裏は、花島一家のシマだと知って、うちに荷役一切任せてくれるんですね?と念を押していた。

今度うちで花会やって、花島の奴にうんと言わせるつもりですと伝えた大西は、芸者を呼び寄せる。

島田の相手に呼ばれていたお浜は、小さなわらじの飾り物を売りつけようとするので、大西から、そんなものを売るなとたしなめられる。

それは刑務所のヤクザが着物の糸をほぐして作るものですと大西から教えられた島田だったが、当てがわれたお浜を気に入ったのか、買ってやると相好を崩す。

大西は、ちょっと席を外すと、庭先に来た子分の久光(木村元)に、朝吉らはまだ見つからんか?と聞く。

屋台で仙次とうどんを食っていた朝吉だったが、そこにやって来たお浜が、あんた、見ん顔やな?と朝吉に聞く。

河内の朝吉を知らんのか?と仙次が教えるが、あんた、大西一家に楯突いたんと違う?今、連中が探しまわってるわとお浜は教える。

仙次は親分の所へ帰り、朝吉も屋台を出ると、ええ男やな…とお浜が言うので、うどん屋の主人(西川ヒノデ)は、あんな男に惚れたらあかんで、河内の朝吉言うたら悪名やど…と言い、女房(西川サクラ)も、3年前、ガード下で…とお浜に教えかけるが、その朝吉は、作次郎(五味龍太郎)ら大西組に見つかったらしく、近くで大喧嘩を始める。

それを見た喧嘩好きのお浜は、ええ立ち回りしはるわ!と朝吉を気に入り、喧嘩で迷惑をかけた近所の住人たちに自腹で金を渡して謝るのだった。

そんなお浜を見た金さんは、悪い虫が出たのと違うか?と心配し、銀三は、もう寝よ…と答えるだけだった。

朝吉を自分の家に連れ込んで朝を迎えたお浜は、うちなぁ…、悪い病気出てしもうたんやと抱きついて来て甘えかかる。

そんな中、銀三は長屋の連中を呼び集め、外に出て来た朝吉を自分の家に呼ぶ。

そこには、長屋中の住民が集まっていたんで、朝吉は面食らい、お浜の事やったら、勘ぐらんといてくれと先に制する。

しかし、銀三は、わいが花島組と関係があるとは知らなんだ。駅裏で喧嘩でも始まってみい、わしら商売も出来へんようになるんやでと説明する。

金さんも、こんな事言いとうないけどな、わしら、花島でも大西でもないねん。わしら、あいつらに出て行ってもらいたいねんと言うので、せやったな…、ええ気になって花島の味方してしまって…と反省した朝吉は、知らなんだ、悪かったなと自分の軽率さを詫びながらも、わし、この長屋を出て行かへんどと言い張り、自分でまいた種は自分で刈らんといけんやろ?わしがこの長屋の用心棒になってやると言い出す。

そやけど大西はお前を狙うとんやどと銀三が言うと、大西は花島ともめとんのやないか?このわしに関係あるか?そうやろ?と反論する。

すると、金さんは、それはそう言う事で…と、あっさり妥協してしまったので、銀三は不満そうだったが、そこにやって来たお浜は、朝吉はん、良かったなと声をかけて来る。

それでも銀三は、朝吉は今日から内に泊める。色々もめたらあかんからなと言い出したので、朝吉はお浜に、お前亭主持ちかい?と聞く。

しかし、お浜は、亭主などいないと否定すると、朝吉を外に連れ出し、いちゃつきながら歩き出す。

そんな2人の様子を物陰から見かけていたのは、3年前、朝吉から300円受け取った女のようだった。

しかし、女は、手にサイコロを転がしていた。

ある日、そんな長屋のお浜の家に、政やん(田村高廣)と呼ばれる1人のヤクザものらしき男が帰って来る。

しかし、お浜が不在な事を知った政やんが、どこにいる?と聞くので、金さんたちは、今朝早く、商売に行ったよなどと言ってごまかす。

その後、泥酔したお浜を背負った朝吉が長屋に戻って来たので、金さんや銀三たちは、お浜のこれ、帰って来たよ、政やん帰って来たよと、親指を立てながら注意し、お浜のこれな、元ヤクザと銀三は教える。

それを背中で聞いたお浜は目覚め、家の中に入ると、政やん?帰って来たん?もう帰って来ん、思うてたと喜ぶ。

九州行っとんたんやと政やんが言うので、目の具合どうなの?とお浜が聞くと、相変わらずやと答えた政やんは、土産やと言って博多人形を渡すと、お前に似てるやろ?と言う。

外では、金さんと銀三が、もめると悪いよ、分かるな朝やん…と朝吉に言い聞かせていた。

朝吉は、わいは女に縁ないなとぼやいてみせる。

ガードの上には、いつものように、仙次が登っているのが見えた。

政やんは、あんまり作れんかったけど…と言いながら、ムショ内で作り貯めていたわらじの飾り物をお浜に渡しながら、お浜が金を渡そうとすると、九州で、喧嘩一つまとめて来たので、銭はあるんやと言って断る。

そして、俺の留守中、男出来たらしいな?と言うので、お浜が、あんな悪い男、惚れへんで、どこでそんな話聞いたん?と聞くと、今、自分で言うたやないかと政やんは苦笑する。

金さんらと喫茶店にやって来た朝吉だったが、奥の席に、3年前に会ったあの女が座っていたので驚く。

しかし、金さんが、遠くて近いの女よ、近くて遠いのも女よと言って注意するので、あえて声をかける事はしなかったが、女が帰りかけて近づいて来ると、辛抱できなくなり、その前に立ちふさがる。

すると、その女に付いていた若い衆が、どかんか!と威嚇して来る。

女が店を出ると、ええ女やな…と、金さんも感心する。

朝吉は、染め物をしていた銀三の家に来ると、政やんと言う男の事を聞く。

政やんは、絵図屋と言い、ヤクザのあちこちの家系に詳しいのだと銀三は教える。

その時、その政やんが、わいが朝吉言うんか?話つけたいんや、出て来い!と声をかけて来たので、朝吉が応じようとすると、銀三は、行ったらあかん、殺されるで!と止めようとする。

それでも外に出た朝吉に、お浜、どないする気や?と政やんは聞き、俺、何もせえへんがなと朝吉が答えたので、そんなええ加減な気持ちであの女は…と言いながら、政やんは持っていたドスを突いて来る。

そんな酔った政やんを観ていた長屋の住民は慣れているらしく、急いで、バケツの水を持って来ると、政やんの頭から水をかけて酔いを醒まそうとする。

朝吉も一緒になり、政やんにバケツの水をぶっかけて、政やん、どや、酔い、醒めたか?と聞く。

そんな騒動を家の中で仕事をしながら観ていた金さんの所に銀三が、金さんの出る幕なしやと言いながら来ると、わいは朝鮮の侠客やで、素人の喧嘩に口出しできるか!と金さんは負け惜しみを言う。

その後、大西の賭場に朝吉が来たと報告を受けた大西は、あいつは花島とは手を切ったらしいなと、その場にいた白石に聞くと、あれだけの悪名、何かの役に立ちますぜと言うので、そうや、身替わりでも鉄砲玉にでもなんでもなる。ケツの毛羽抜いてやれと久光に命じる。

そんな朝吉のいる賭場に、お待ちになって!と声をかけて入ってきたのはあの女だった。

使われていたサイコロを手にし、耳元で転がして音を聞いた女は、私に替わらせて…と壺振り役になると、作次郎にこれはいけないわね…、お金は返しましょうねと言い、朝吉から取った金を返すと、この方とさしで…と、他の客人たちに詫びて朝吉との勝負に出る。

朝吉が、女が出してみせたサイコロがえらい汚いなと言うと、これは噓のないサイですと言い、壺に入れて振る。

朝吉は丁に賭けるが、女が壺を開ける前に、どんなサイコロを使っても負けは負けやと言って、今女が戻した金を投げ捨てると、壺を自分で開き、中のサイコロが2-5の半である事を見て帰って行くので、それを見た女は微笑む。

そんな朝吉を招いた大西は、うちの身内にならんか?ええ目見せるわ…と誘って来ながら、金を投げて来る。

しかし朝吉は、わい、義理や仁義ちゅうの性に合いまへんのや。勝手に暮らしてますさかい。それにどこでどないな目に遭うて殺されても泣いてくれる人もいてまへんしな…と答え、その場にいた女には、わいはヤクザと違うさかい知らなんだけど、あんた、壺振りの名人やてな?あんまり昔知っていた女に似ていたので…、でも人違いや言う事分かった。3年前までええとこの娘はんやった人がヤクザになんてなるかい、そうやろ?と笑いかける。

その後、わらじの飾り物を作っていた政やんの所に来た朝吉は、酔い醒めたんかい?と聞くと、大西の系図を教えてくれと頼む。

政やんが、筆箱を取る時、眼が不自由そうに見えたので、朝吉が、お前、目悪いんか?聞くと、誰にも言わんといてくれと政やんは頼む。

大西一家に女の壺振りが来ている。どこのもんかしらんかと朝吉は聞くが、政やんは知らんと言う。

何が絵図屋や…と落胆して朝吉が帰りかけると、大西と言うのは不良上がりやけどな、運送の商売が当たって二枚看板や…と政やんが言い出す。

まず兄貴分は天王寺の畑中、飲み分けの兄弟が村尾俊介、その又舎弟が大前裕司、五分の兄弟分が生駒の兼吉、それらの元締めが柳太左衛門(石山健二郎)やと政やんは教える。

その柳や大西らが一堂に会していた座敷で、河内の河徳こと河田徳次郎の身内、りんと申しますとあの女の壺振りが挨拶していた。

女の壺振りとは珍しいなと柳が感心すると、大西は、花会の通しを河徳の親分に頼んだら、一も二もなく、このおりんをさし向けてくれましたんやと柳に説明する。

大恩ある河徳の親分のお顔を潰さぬよう勤めますとおりんは誓う。

その頃、政やんも、女の出元は川田徳次郎やと調べ上げていた。

その名を聞いた朝吉は、何や…と呆れる。

朝吉が子供時分から良く知る風変わりなヤクザだったからだ。

こいつやないと女の壺振りなんて寄越さへんと政やんも確信したようだった。

その夜、関鉄の島田常務は芸者たちに取り囲まれ、すっかり上機嫌になっており、大西や柳らが待つ座敷に来ると、関鉄としては、今までの大西運輸の実績から見て、駅裏の貨物駅の荷扱いは大西君に任せる。花島に関しては我々は関知しないので、親分周たちの間で巧くやってくれんと…と頼む。

そして、おりんを見つけると、あんたは、この親分衆の誰かのコレかななどと言いながら小指を立てて来るが、おりんが、私はしがない女の壺振り、ヤクザですと答えると、珍しがって迫って来る。

そんな島田に詰め寄って来たのはお浜で、廊下に引っ張り出すと、この助平!と嫉妬したように責めて来たので、島田は嬉しそうに困ってみせる。

さらに、駅裏の長屋どうするの?と聞くので、車庫になるんやとつい口を滑らせてしまい、その場にいた大西らを慌てさせる。

その頃、白石は、お妙に対面しており、代貸させて頂き、縄張り言うても客が来てくれへん所でやれまっか?口惜しいけど、大西から金ごっそり取って売ってしまった方が…とシマを売るように勧めていた。

お妙は、父が血みどろでこしらえたシマだよといきり立ち、縁側にぽつんと座っていた花島に判断を聞こうとするが、僕には分からんよと頼りない事を言うので、親分、土地や建物を売るんやない。顔を売りまんのや、死んだ親分の値打ちを金にしますのやと白石は焚き付ける。

考えとくよと花島が答えたので、あなた!とお妙は気色ばむが、俺、親分なんだよ、そうだろう?白石…と聞き、そうだんがな…と白石を喜ばせる。

一方、料亭から帰って来たお浜は、長屋の連中に、ここは車庫になると言う情報を教えていた。

代わりの場所はどこね?工事始まってみい、あっという間に放り出されてしまうぞと住民たちは騒ぎ出し、銀三は、朝吉に用心棒として何か打つ手はないんか?用心棒は喧嘩にならな、どないにもならんがなと朝吉も答えるしかなかった。

それを知った銀三は、男気出して、大西の女になってよと言い、金さんも、巧い事やってくれたらみんなが助かるなどと言い出したので、内はコレでも女子や、男毛の持ち合わせはないわとお浜は答える。

政やんが朝吉に、花島が黙ってへんで…と話しかけて来たので、お前、系図知っとるやろ?花島の親分、頼りないで…と朝吉は小声で答える。

けどな、ヤクザにはヤクザの筋道と言うのがあると政やんは言う。

その筋が通らんのと違うんかい?白石ちゅうのはえげつない男らしいな?子分言うたら仙次1人しかおらんやないかと、いつものようにガードの上に登って周囲をぼーっと見つめている仙次を朝吉が指すと、銀三は、困った事になったなと頭を抱え、政やんも何事かを考え込み始める。

相談は又明日と言う事になり、めいめい家に戻る事にする。

政やんは、家に戻ると、お浜の脱いだ着物を畳み始めるが、一杯飲むか?とお浜が声をかけると、1杯ぐらいやったら、飲まん方が増しやと答え、お浜、大西の女になったりな。お前、大西に借金あるんやろ?と聞いて来る。

わしは絵図屋や、色事まで知らんと商売にならんからなと言う。

そんな事せんとあかんのやったら、わて死んでもうたるわとお浜は怒り出すが、頼むわ…、長屋の衆、可哀想やないか…と政やんは真剣に頼む。

そんなお浜の家に入って来た朝吉は、死んでもうたれ、死んでもうたれ!と茶化して帰って行く。

翌日、八尾にやって来た朝吉は、河田徳次郎(辰巳柳太郎)の家を訪ね、徳次郎本人におりんの事を聞いていた。

すると、徳次郎は、確かに、おりんを預かったのはわいや、おりんの親爺のつながりでな。気の強い女子やで、親爺やお袋を死なせた博打打ちに自分からなろう言うんやからな…と答える。

そのおりん言う人に、花会出んように言うてくれと朝吉は頼むが、おりんは女でもヤクザじゃ、義理も人情も良う知っとるぞ。われ、おりんに惚れよったな…と聞いて来る。

惚れたとしたらおりんの方やなと朝吉がとぼけるが、お前がここに来たのは長屋の立ち退きの事やろ?花島一家もことっちゃろ?お前はいつからそんなええ格好しいになったんや?花会は潰したいけど、先方さんには惚れた女がいよる。それでくつ悪い、そうやろ!と見透かされたので、図星やで、親爺さん…と朝吉は認める。

けど、わいもヤクザじゃ、花会に出んなかん。わいが花島連れて行き、花島のケツ押したったらええのやろ?老いぼれててもな、わいは河徳じゃ、花握り潰したるわい。けど誰にもしゃべるなよ。花会までに知られたら、花島の奴、殺されてしまうからなと言いながら、老いぼれにしてはえ所あるなと言う朝吉の頭を子供時分のように殴るが、殴った自分の手の方が痛かった。

その頃、長屋には、大西組を率いて白石がやって来て、この辺駅裏の界隈は、花島から大西一家が買ったんや、すぐに立ち退いてくれとは言わんが測量させてくれと長屋の連中に告げる。

朝やん、どないしたんや?と政やんが聞くと、知らんけどな、夕方にならんと帰って来ない言うとったと銀三は困惑する。

そこにやって来た仙次が、兄貴、何してはりますねん?親分は知ってはりますんやろうな?と聞くと、親分には、わいが話を付けたんやと白石は答える。

そんなバカな!親分が承知しはるはずがない!姐やんが…と仙次が詰め寄ると、姐やんが知ろうと知るまいと、親分に金は渡してあるんだと白石は睨みつけて来る。

そこに出て来たのは政やんだった。

その姿を見た白石は驚き、お久しぶりですと挨拶する政やんに、あんた、なんでこんな所に?と聞く。

大阪に来たら、ここにおりまんねん、今、売った、売らんでもめてるようやけど、本当の事が知りたいんやったら、この白石はんと一緒に、花島の親分さんの所で聞いて来たらええがなと住民たちに声をかける。

そして、白石はん、わしな、又旅に出るつもりや。宜しゅう頼むわ。そうせんと、わい、又、無理せなあかんやろ?と意味ありげに迫って来たので、白石は反論できなくなり、測量もその日は取りやめて帰ると言い出す。

政やん、ええ顔やな…と金さんは感心するが、お浜は政やんを家の中に呼び入れると、うちな、腹決めたで。あては何もかも知ってるんや。あの大西が止めん限り、どうにもならん。あのどスケベ、口説いてくるわと伝える。

ほな、又、旅に出んとあかんな…と政やんが答えると、出んでもええ、あてが時々、浮気しに来るがな…とお浜は言う。

花島の家にやって来た長屋の連中から、ことの次第を聞かれた花島は、白石から受け取った小切手をその場で白石に返すと、皆さん、許して下さい。皆さんの迷惑になるとは思わなかったんですと長屋のみんなに頭を下げる。

そして、お前の顔はどうやったら立つんや?と白石に聞くと、長い間、お世話になりましたが、盃返しますと白石は言い出す。

代貸を辞めるって言うのかい?とお妙が驚くと、こんな所にくすぶってられへんと白石は吐き捨てる。

その後、大西の家にやって来たお浜は、ごろ寝していた大西に甘えかかる。

そんなお浜の態度を見た大西が、わいの女になるんやな?ほなあの300円…と聞くと、約束して欲しいんやとお浜が言うので、捨てたりへんと約束すると、そうやなくて、長屋をあのままにして欲しいんやと言い出したので、誰かに頼まれて来たな?300円返し!と大西は不機嫌になる。

しかし、お浜は、気の毒やけど、ないわ…とあっさり答える。

そこに入ります!と声をかけ、障子を開けたのはおりんだった。

おりんは、私がこのお浜さんを買います。長屋の事も、どうせなるようにしかならへんのやからねと言い、300円を取り出すが、お前からは受け取らんと大西が拒否したので、一旦、お浜にその金を渡し、お浜がその場で大西に返すと言う形を取る。

ガードの上に仙次と一緒に登っていた占い師(小瀬朗)は、縄張りがこっちのもんになったらな、賭場を開きよるから、荒らしたるねんと言う仙次に、あかん!星が流れた!今日は死人出る!と不吉な事を言い出すが、賭場が開いた明かりを見つけた仙次は出かけて行く。

喫茶店にやって来たおりんは、言いたくないと言い、聞かないと一生返せまへんわと困惑するお浜に、返さなくて良いんです。あの300円は、朝吉はんが…と言うので、知ってはりますの?とお浜は驚く。

私こそ、あの人に買われたままの女なんです。あの人、私が今、お返しても受け取ってくれませんわ。長屋の事も解決してくれるはずですわ。御心配なく…とおりんは言う。

その頃、1人、賭場に向かっていた仙次は、大西組のトラックに追われ、必死に逃げていたが轢かれてしまう。

助手席から降りて来た久光は、血まみれの仙次の身体を、道路脇の川に投げ捨てる。

トラックのハンドルを握っていたのは白石だった。

近くの下流に小便をしようと降りて来た金さんは、上流から流れて来た仙次を発見する。

夕方、長屋に朝吉が帰って来るが、それを迎えた長屋の連中は、えらいこっちゃと、昼間の出来事を教え、政やんが花島はんに聞いてくれたんやと言う。

さらに、お浜が朝吉を呼び寄せると、あんた、3年前に300円で買うた女いたやろ?その人があてに300円くれて、あんたの女になれって言うのと打ち明けて来たので、政やんに聞こえたらどないするねん?と朝吉は慌て、わいは女、嫌いやねん!ええわ、こっちへ来いと言うと、お浜を政やんのいる家に連れて来ると、お前の勘と系図、間違いないなと褒める。

そこに、金さんが駆けつけて来て、仙やんが川に流された!と知らせる。

一方、おりんは大西に会いに戻ると、駅裏は花島のシマと聞いてますけど?と聞いていた。

すると大西は、この男は白石言うて、花島の代貸やと言うので、おりんはそれ以上追求せず下がる。

大西は白石に、あれには手を出すな、河徳やと釘を刺す。

医者が治療をして帰り、布団に寝かされていた仙次は何とか命はとりとめていた。

駆けつけて来た花島が、仙次!と呼びかけると、白石や…、あいつや…、気をつけてや…と仙次はうわごとのように呟き、わいは溺れへんで…、河流れでも河童や…と続けたので、朝吉らと共に聞いていた金さんは、偉いもんや、ド○リ、直ってしもうたんやと感心する。

確かに、仙次の吃音は直っていた。

堪らなくなり、長屋を後にしかけた花島に、暗がりから声をかけたのは政やんだった。

先代とは何年ほど一緒にいましたねん?と政やんは聞き、2年ほどですが…と花島が答えると、それじゃあ、聞いた事おまへんやろか?離れ駒の政吉の話を?と政やんは尋ねる。

確か、先代が可愛がっていた人で、大分前喧嘩で刑務所にとか?じゃあ、あんたが?と花島が思い出すと、勇み駒が斬られてから離れ駒の政吉、言われるようになって…、その後、足洗うて、しようもない事やってますのやが、花島一家のことが気になって、ちょいちょいこの辺に来るんやと政やんは打ち明ける。

ヤクザは、バカにならんとこの面は売れるもんやおまへん。そんなバカにならんといて下さいと頭を下げた政やんだったが、お妙がやって来た事に気づくと去って行く。

お浜は、戻って来た政やんに、何言うたん?と聞き、朝吉は、花島に何か話があるようで、もう帰ったか?と残念がるが、何や?と政やんが聞いても、あんたには言われへんのやと言うだけだった。

お妙と喫茶店にやって来た花島は、さ、お出しと言って手を出すと、知っているんだよ。お前が行ったら角が立つ。俺が行った方が素人扱いされるだろうと言うので、お妙は黙って、持って来た拳銃を花島に手渡す。

私がこんなもん使うような話したら殺されるよ…と女房に言い聞かせた花島は、全ては諦めるね?と確認し、お妙と手を取り合う。

大西組にやって来た花島は、ちょうど出て来たおりんに大西に会いたいのだがと尋ねるが、おりんは、お留守じゃないかしら?ととぼける。

しかしすぐに、久光が奥にいた大西の部屋に案内する。

障子を開くと、大西が座っていたので、話がありますと言いながら部屋に入りかけた花島だったが、障子の影に隠れていた白石にドスで突かれてしまう。

倒れた花島の懐から銃を抜き出した白石は、先代はいつも、こいつをちらつかせながら話をしてましたんやと大西に教えると、なあ、久光と言いながら、廊下にいた久光に向けて急に発砲する。

驚いた大西に、久光に自首させますのや。お前を撃ったのは花島で、その花島を刺したんわお前や、つまり正当防衛やと、白石は、左肩を撃たれた久光に言い含める。

それを聞いた大西は、巧い事やるな〜と感心する。

「珈琲館」にやって来たおりんは、そこで待っていた若い衆2人に、国に電話して!花島の2代目が刺されたんだよと告げるが、同じ店内で夫の帰りを待っていたお妙はその話を聞くと驚いて近づいて来る。

花島の金井どすとおりんに話しかけたお妙は、どkだす?大西に家だすか?と聞くと、外へ飛び出して行き、大西の家から担架で運び出されていた花島にすがりつくと、誰がやったんや!と周囲を怒鳴り、堪忍して〜…と泣き崩れる。

長屋にいた朝吉を探しに来た河徳の若い衆は、今、大西の家で、花島の2代目が刺されはったと知らせる。

それを側にいた政やんも聞いて緊張する。

朝吉は、死んだんか?と聞くと、今、病院にいると若い衆は答えるが、政やんが立ち上がり、どこかへ行こうとするのに気づいた朝吉は、あんた、花島と何か関係あるのか?と聞く。

しかし、政やんは、何もないと否定する。

若い衆と朝吉が病院へ向かうと、政やんに近づいて来たお浜は、そんなに睨んだら、目悪うなるでといたわりの言葉をかける。

大西の家では、白石が、実は偉い奴に会うたんや。離れ駒の政吉やと教えると、仰天した大西は、頼む!と白石に言い、白石の方は、高うおまっせと苦笑する。

家に戻った政やんは、一升瓶を抱えて飲んでいた。

すでに、一升瓶1本が空になっていた。

無理矢理酔った政やんは、お浜、早よ、ドス返してくれよ。隠したのを見とったんやと頼んでいた。

ドスを持っていたお浜は、あんた、やっぱりバカやったんやな?と寂しそうに聞き、バカやさかいヤクザになったんやと言う政やんに、死んでしまえと憎まれ口を叩きながら、ドスを投げてやる。

政やんは、目の前に落ちたドスさえもう見えない様子だったので、お浜がその手に握らせると、おおきに…、ええ男といたりぃな。もう焼きもち焼かへんよってな…と政やんはお浜に言い残して家を出て行く。

泥酔した政やんに気づいた長屋の連中が取り押さえようとするが、後から家を出て来たお浜は、やめとき!今夜の酒は水では醒めんのや…と長屋の仲間たちに声をかける。

花島が運ばれた大浪病院にやって来た朝吉だったが、花島はもう死んだと聞かされる。

大西の家に向かっていた政やんは、もう前方さえも見えなくなっている事に気づき、そんな自分の目を呪うが、ガード下に来た時、待ち伏せしていた白石と大西一家の連中に刺し殺されてしまう。

白石が斬り裂いた政やんの背中には、見事な馬の刺青が描かれていた。

その直後、水を入れたバケツを手に追って来たお浜や長屋の連中は、倒れていた政やんを発見する。

大西の元へ戻って来た白石は、すぐに喧嘩の支度をしなはれ、朝吉が殴り込みに来ますでと教える。

政やんが殺されたと聞かされた朝吉が、長屋の家に運び込まれた政やんの遺体の元へ駆けつけて来るが、その背中に描かれた馬の刺青を観ると、離れ駒の政吉やったんか…と気づく。

そこに集まっていた長屋の連中に、寂しい奴やったんや、政やん…、みんな泣いたり!と勧め、自分は家を出て行く。

ガードの上を汽車が通り過ぎ、汽笛が響き渡ると、寝込んでいた仙次が、あ〜あ!と目を見開いて叫ぶ。

大西の家に向かっていた朝吉の前に立ちふさがったのはおりんだった。

どかんかい!と朝吉が言うと、おりんは、行かせないと言い、それでも進もうとした朝吉の背後に回り込んで身体をぶつけて来る。

痛いよと朝吉が言うと、憎いのよ、あんたが…とおりんは言い、惚れてけつかるのか?惚れてるのやろ?と聞いた朝吉は、お前に渡そうと思うて持ってたんやと言いながら、3年前に持ち帰った「えり吉」ののれんを懐から取り出して渡す。

右の尻の辺りをおりんに刺されたまま、大西の家にやって来た朝吉は、親分、呼んだり!と言いながら、家の中に踏み込みながら、邪魔する子分をドスで斬りつけ始める。

白石と大西を見つけた朝吉は、おんどれ白石言うんか?死んでもらわなあかんな!と言いながら近づくが、逆に右肩を斬られ、他の子分からも背中を斬られてしまう。

斬りやがったな!と逆上した朝吉は、庭に降りると、白石を捕まえ、その腹を二度刺して倒す。

さらに、怯えて逃げかけた大西も捕まえると、殺すぞ!とドスを突きつけたので、大西は、何でも聞く!と言い出す。

しかし、今、聞いたらあかん。証人がおらんと朝吉が言うと、ここにおるぞ!と言う声が聞こえたので顔を上げると、そこにはおりんと共に、河田徳次郎が立っていた。

その河徳が、早よ、約束言うたらんかいとせかすので、1つ!長屋の連中、あそこに置いたれ。良い家建てたらんかい?2つ、家賃取ったらあかんぞ!と言い、3つ目は、おやっさん頼むわと河徳に頼むと自分は外へと向かう。

河徳はおりんに、あのガキの後を追わんか!と言いつけ、表に置いてあった人力車に乗り込もうとしていた朝吉は、近寄って来たおりんに、側寄ったらあかん!血が付くやろ!人力車、どこへ行くんや?病院か?警察かと聞く。

おりんが、病院よと教えると、おおきにと言った朝吉は気を失う。

その人力車が病院へ走り出し、それをおりんが見送る中、知らせを受けた警察隊が大西の屋敷に走り込んで行くのだった。