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007 スカイフォール

シリーズ最新作で、ダニエル・クレイグがボンドになってのリブート作としては3作目に当たる。

新シリーズでは、旧シリーズで定番だった、荒唐無稽な秘密兵器や大掛かりな秘密基地での攻防戦と言った嘘くさい見せ場は極力避けており、あくまでも、生身の肉体同士がぶつかりあうハードボイルドタッチのアクションに重きを置いて描かれている。

リブート3作を観て来て、クレイグの顔は何となく、「007/ロシアより愛をこめて」(1963)でショーン・コネリー扮するボンドと対決するロバート・ショウのイメージに近いような気がする。

無表情で筋肉質、金髪…、どう考えても、一般的な若い女性が夢中になりそうな甘いマスクとも思えず、昔なら悪役になっていた顔のような気がする。

そのクレイグが、今やスーパーヒーローを演じる時代になったと言う事だろう。

そういう部分も含め、子供からお年寄りまで楽しめる、明るいファミリー映画風だった旧シリーズの軽快なタッチは影を潜め、大人の男性向けと思われる、陰鬱で渋い画調に変化している。

これだけイメージが大転換すると、その作品評価も、新しいファン層はともかく、旧シリーズファンの間では分かれるはずである。

明るく荒唐無稽な見せ物映画タッチが好きだった人たちには、このクレイグボンドシリーズは、何かピンと来ない部分があるに違いない。

実は私もその1人で、「カジノロワイアル」は素直に楽しめたが、続く「慰めの報酬」と本作は、どうも今ひとつ乗り切れない部分がある。

あくまでも、個人的な好みから言うと、本作は「カジノロワイアル」ほどではないが、「慰めの報酬」よりは楽しめた…と言った感じであろうか…

評価が伸びない最大の理由は、アクションアイデアに新鮮さが乏しい事であろう。

本作は、近作では一番アイデア不足に感じた前作「慰めの報酬」ほどではないが、何となく、全体的に新鮮味に乏しいアクションが多いようにも感じる。

アバンタイトルでの追跡部分などは、まだこのシリーズらしい、けれんに富み、派手な見せ場も用意されているが、本編に入ると意外と凡庸である。

通常のアクション映画で観かけるアイデアの焼き直しと言った印象の物ばかり。

マカオの賭博場での、大トカゲ(?)のいる中庭シーンなどは、久々の危険動物ネタで来たか!と期待したが、いつもの通り、今回も子供騙しのようながっかりな展開で終わっている。

そもそも、大トカゲ(?)って人を襲うのか?と言う疑問も残る。

このシリーズでの危険動物ものは、「007/ドクター・ノオ」(1958)の毒蜘蛛タランチュラ以降、ろくなアイデアがないような気がする。

特に、ロジャー・ムーアが、虎とかワニを使って子供騙しをやってしまったが為に、不毛の地になってしまった感がないではない。

今回は、クレイグが挑むので、もっと本格的な恐怖動物アクションを見せてくれるかと思ったが…

クライマックスの田舎の屋敷を使った攻防戦などは、確かに派手と言えば派手だが、特に007シリーズでなければいけない見せ場だろうか?と言う気がしないでもない。

別に、敵の秘密要塞での荒唐無稽な戦いに戻せと言うのではない。

あれはあれで、すでに凡庸で退屈なアイデアになっていたのである。

でも、この手のゲリラ的な戦い方なら、他の類似アクションものでやってもおかしくないアイデアのように思えるのだ。

むしろ、長崎の軍艦島をモデルにしたと言われる「デス・シティ」をフルに生かしたアクションなどの方が観たかったような気がする。

確かに、クレイグに変わってからのボンドは、そう言うアクションの新奇さに重点を置いてないのは分かるし、50周年記念として作られた今回の作品は、特に「007/ゴールデンアイ」(1995)からMを演じて来たジュディ・デンチをメインに据え、過去の007とジュディ版Mへのレクイエムのような雰囲気で描かれているのも分かる。

そう言うドラマ部分を高く評価する意見もあるだろうが、私はそれほど買わない。

せいぜい、ジュディ・リンチへの花道としての締め方としては悪くはないけれど…と言った程度である。

前評判から、もっと魂を揺り動かされるような深い人間ドラマがあるのかとも若干予想したが、正直、それほどではなかった。

ただ、記念作らしく、過去の作品へのオマージュ要素が随所に登場しており、旧シリーズファンもにやりとしたくなる部分も少なくない。

ボンドが一旦死んだような雰囲気になり、その後、現場に復帰するなどと言う冒頭部分は「007は二度死ぬ」(1967)を連想させる。

なぜ、撃たれたはずのボンドが生きていたかの説明が明確でない所などもそっくりである。

ただ、そうした旧シリーズファンへのサービスが裏目に出ているように感じる部分もないではなく、アストンマーチンの登場などは、正直観ていて混乱するばかりである。

この車、装備などから観て、約半世紀前の「007/ゴールド・フィンガー」(1964)で初登場した車のような気がする。

クレイグ演ずるボンドは、「007/カジノロワイアル」(2006)で、初めて00要員に選ばれた…新人扱いだったはずである。

その時のMはジュディ・リンチで、MI6本部は、もうどう観てもバリバリのデジタル世界だった。

そして、今作でのボンドは、若いQとの出会いで、新旧交代か…と呟いているようなベテランだと言う事になっているが、ここでのMもやはりジュディ・リンチで、本部内はやはりデジタル最前線と言った印象の世界。

…とすると、本作のクレイグボンドは、どこでこのクラシックなアストンマーチンと出会っているのだろう?と言う疑問が出て来る。

ボンドが、カミソリナイフなど、古風な物を愛する嗜好であるのは劇中で説明されている。

しかし、アストンマーチンの助手席に乗ったMは、ボンドがクラッチの赤いボタンを示すと黙り込んでいる。

…と言う事は、そのボタンを押すと、助手席の屋根が外れ、助手席に座っていた者が外に放り出されるアナクロな仕掛けを知っていると言う事だ。

つまりMは、かつて諜報部で使った特殊車両だから、そうした仕掛けも知っていたと言う事だろう。

だとすると、クレイグボンドが、個人的な趣味でこの妙な仕掛け付きアストンマーチンを購入したのではない事になる。

クレイグがボンドを演じている世界では、「ゴールドフィンガー事件」も、クレイグボンドが活躍したと言う事になっているのだと解釈すると、ボンドもジュディ・リンチ演ずるMも、「カジノ・ロワイアル」事件から約半世紀も情報部に籍を置いていたと言う事になる。

ボンドはその間、ずっと同一キャラだったと無理矢理解釈しても、Mがずっと老婦人だったと言うのはさすがに無理があるだろう。

これが、ピアーズ・ブロスナンがボンドを演じていた頃の記念作なら、単なるお遊びとして特に問題にする気もない部分だが、リアル設定になったクレイグ版でこういった趣向が出て来ると、おいおい、ちょっと待ってくれよ…と言う事になるのだ。

もちろん、そういう風にファンをあれこれ楽しく悩ませることも予期した意図的な仕掛けなのだろう。

そう言う意味では、本作は、旧シリーズファンにもあれこれ見所を見つける事が出来る作品だし、クレイグボンドから観始めた新しいファンたちにも、十分に楽しんでもらえるよう工夫された作品になっていると思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2012年、イギリス+アメリカ映画、ニール・パーヴィス +ロバート・ウェイド+ジョン・ローガン脚本、サム・メンデス監督。

ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、銃を手に廊下を警戒しながら近づいて来る。

ある部屋に入ると、ロンソンが撃たれて椅子に座っており、探していたハードドライブは見つからなかったので、そうボンドは、本部に伝えるが、イヤホンから聞こえて来たM(ジュディ・デンチ)の指令は、持ち去った奴を追って!だった。

ボンドは、ロンソンの出血がひどいので止血を優先しようとするが、Mの声は冷たく、追うのよ!と一言。

仕方なく廊下に出たボンドは、表通りに出たので銃をしまい、そこに停まっていたトルコの連絡員イブ(ナオミ・ハリス)の運転する車に乗って、ハードドライブを盗んだ男が乗った黒のアウディを追跡始める。

さらに、バイクに乗った3人の男たちも後を追い始める。

ヘリ到着まで後5分!と教えたイブは、狭い道路に入りながら、両方のサイドミラーを壁にすりつけて折ってしまう。

やがて、追っていた黒のアウディは、市で溢れる市場の中に突入、仕方なく、イブの車もその後をつける。

ボンドは助手席からハンドルを切り、アウディにわざと車をぶつけ、相手の車を横転させて止める。

2台の車が停まった場所に後から追って来たバイクが3台が接近しそうになり、滑って横転する。

横転したアウディから降りた敵は、転がったバイクの一台に股がると逃げ出したので、ボンドも別の1台に股がり後を追い始める。

イブは、割れたフロントガラスを殴って取り外すと、後を追跡し始める。

リストを取り返して!Mの声が、無線越しにボンドのイヤホンから響く。

ボンドと敵は、グランドバザーツの屋根の上を走っていた。

やがて、敵は屋根からジャンプし、建物のガラスを突き破りバザールの中に入り込んだのでボンドもジャンプして追尾する。

一方、車で並走していたイブも、Mからの指令で、高架橋で防げば?と指示を受け、高架橋上を走っていた輸送トラックを横転させると、荷台に積まれていた鉄製の筒が路上に転がり落ち、通路を塞いでしまう。

そこに近づいて来た敵は、高架橋から飛び降り、下を通過中だった列車に飛び降りる。

ボンドも、橋の上から列車に飛び移り後を追う。

Mはイブに、追いなさいと冷酷に命じたので、イブは、線路と平行する道を車で追跡し始めるが、もうじき国外ですと連絡する。

本部では、通信圏外になりそうだったので、通信をCCTVか衛星放送に切り換えようとしていた。

ボンドは、もう銃をあらかた撃ち尽くしていたが、飛び乗った貨車にブルドーザーが乗っている事に気づくと、その操縦席に乗り込み、アーム部分を前方に回し、敵の縦断避けにしながら、前に積んであった高級車を踏みつぶしながら、前方車両に接近して行く。

貨物車から路上に落下し、並走していたイブの車の前で大破した音を聞いたMが、今のは何なの?と聞いて来たので、車を回避させながら、ワーゲンのビートルですと答えるイブ。

前方車両の屋根の上にいた敵は、ボンドのブルドーザーの乗った貨車を切り離そうと、連結器を撃つ。

ボンドは、ブルドーザーのアームを、前方車両の山に食い込ませ、自らは、そのアームの上を橋代わりに前方の車両に移ろうとするが、その途中で、前方車両の後部が壊れ、ブルドーザーの乗った貨車より後ろの車両は取り残される。

ボンドは、その瞬間、壊れた前方車両に飛び移り、ちょっとカフスを直す。

屋根によじ上ったボンドは、敵と屋根の上で戦い始めるが、それまで横の道を並走していたイブは、道が線路から離れて行き止まりになっている事に気づく。

列車の屋根の上のボンドたちは、迫り来るトンネルにぶつかりそうになると身をかがめ、やがて列車は、鉄橋の上にさしかかり、車を捨てたイブは、前方の山の上から狙撃しようと銃を構えて列車が接近して来るのを待つ。

しかし、スコープの中に移るボンドと敵は、互いに組み合っており、敵だけを倒すのは至難に見えた。

列車は次のトンネルに入ろうと指定いる。

その状況をイブから伝え聞いたMは、撃って!と命じて来たので、ボンドに当たりますとイブは抵抗するが、撃つのよ!と重ねて命じられたので、やむなく引き金を引く。

撃たれたのはボンドの方で、列車の屋根の上から落ちると、下方の川に落下する。

エージェント、フォール!(007 落下!)イブが報告する。

それを聞いたムァ、無言で、雨が降りしきる窓の外を観る。

川に落ちたボンドの身体は、下流に流され、やがて、水中から伸びて来た女の手のシルエットに引きずり込まれるように・

タイトル(タイトルバックに時々登場するボンドのスーツの右胸には、銃に撃たれた穴が開いている)

ロンドン MI6本部

Mは自室のパソコンで、ジェイムズ・ボンド中佐への追悼文を打っていた。

そのMは、今回の事件の事情を聞かれるため、委員会に呼ばれる。

3ヶ月前、MI6のメンバーリストが入ったハードドライブを盗まれ、その後を追っていたのだとMは説明するが、呼び出したガレス・マロリー(レイフ・ファインズ)は、今回の失態を契機に、Mの引退プランを打ち明ける。

引き際も毅然とせんと…などと言われたMは憤慨し、そのプランを蹴って帰る。

MI6に帰る車の中、同乗していたビル・タナー(ロリー・キニア)の携帯が鳴り、誰かが盗まれたハードドライブを解析を始めたようですとMに伝える。

Mは、すぐにその場所を特定するように命じるが、場所は英国…、ロンドン…、MI6本部内…と、意外にも自分たちのシステムの中である事が判明し、とうとう発信元は、Mのパソコンであった事が分かる。

Mが自分用のパソコン画面を車の中で開いてみると、そこには明らかにハッキングされた後が残されており、Mをからかう画像と、「自分の罪を思い出せ」と描かれた文字が残っていた。

やがて、橋の向こう側にMI6本部が見えて来るが、何か事故でもあったのか、橋の上で警官が通行止めをしている。

Mは車を降りて、この車が分からないの?と警官に文句を言うが、その時、川向こうにそびえていたMI6の建物が突如大爆発を起こす。

その頃、ジェームズ・ボンドは、海辺のどこかで女とベッドの上にいた。

ボンドは、洗面所で薬を飲み、浜辺の飲み屋に出かけると、サソリを手の甲に乗せたまま、刺されないように、グラスの中身を開けると言うスリリングな飲み方を披露し、店にいた男たちを熱狂させていた。

翌朝も、1人その店に残っていたボンドは、新しい酒瓶を買い、飲もうとしていたが、その時、背後のテレビから、ロンドンの中心部でテロ事件が発生し、英国諜報部がサイバーテロによって破壊され、6名が死亡したと伝えるニュースが聞こえて来たので、思わずボンドは振り向いて、テレビ画面を見つめる。

イギリス国旗に包まれた6名の棺の前に立ってたMは、必ず犯人を捕まえると決意していた。

自宅マンションに帰り、酒瓶に手を取りかけたMは、窓際に人の気配を感じ緊張すると、今までどこにいたの?と問いかける。

部屋に侵入していたボンドは、死の世界に…と答える。

ボンドは、何故撃ったんです?僕に任せてくれれば良かったのに…と、イブに狙撃を命じたMの判断に意義を申し立てるが、Mは、あなたを失うか、裏切った部下のどちらを選ぶか、ぎりぎりの判断だったのよと苦し気に答える。

ボンドは、ロンソンは死んだ…、もう十分ですと、Mの冷酷な指示に賛同できない旨を伝える。

何故、戻って来たの?MI6が壊され、自分が必要だと?とMが皮肉まじりに問いかけ、テストに合格しなければ現場復帰は無理よと言い渡す。

自分のアパートのことを尋ねたボンドに、あなたのアパートは売ったし、私物も処分したと教え、ここには泊めないわとも付け加える。

ボンドは、タナーの車で、新しいMI6本部に案内されていた。

車中、MI6の内部システムにはキングした犯人は、ガス栓を自動的に開閉し爆破させたんだとタナーはボンドに教える。

車が到着した場所は、古いチャーチルの地下壕だった。

ボンドは、新しい情報部のボス、新Mとして、ガレス・マロリーになったこと、今回のハッカーは、1000以上のサーバーを使っており、追跡は不可能だったなどと教えられ、新しい、地下の本部内に案内される。

ボンドは、さっそく、休んでいた時間を取り戻すため、体力作りや銃の訓練を再開するが、予想通り全部衰えていた。

心理テストにもかけられ、相手の言う言葉から連想する言葉を瞬時に言うように求められたボンドは、「銃」-「撃たれる」、「スパイ」-「囮」、「女」-「罠」、「鳥」-「空」、「M」-「くそったれ」、「日光」-「水泳」…などと順調に答えていたボンドだったが、「スカイフォール」と言う言葉が出た瞬間黙り込み、それまでだ…と言って、自ら席を立つ。

そうしたボンドの様子を、Mやマロリーがハーフミラー越しに観察していた。

ボンドは、洗面所に行くと、自らナイフで左胸の傷を切開し、体内に残っていた金属片をビニール袋に入れると、それを分析して、Mだけに伝えるよう係員に頼む。

本部に戻ったボンドは、そこで働いているイブを発見したので、なぜこんな所にいる?と聞くと、「007を殺したため」現場を一時外され、今はマロリーの助手をやっているのだと言う。

ボンドはイブの狙撃失敗を慰めるため、動く標的は難しいと言ってやるが、イブは、これからもずっと動き続けていてと返して来たので、にやりと笑う。

ボンドがMとタナーのいる部屋に来ると、ガレス・マロリーもやって来て、ボンドのテスト結果を聞く。

Mはぎりぎり合格よと答える。

マロリーは、何故生き返った?静かな生活が出来たのに…とボンドに聞き、現場は若者の世界だと言って、Mやボンドなど古参の者は必要なくなって来ているのだと言う事を暗にほのめかす。

しかし、Mは毅然と、部下は私が決める!とマロリーに言い返したので、007、しくじるなよ!と釘を刺して部屋を出て行く。

タナーはボンドに、君が分析依頼した弾の破片は劣化ウラン弾で、それを使用しそうな連中としてピックアップした数名の写真を見せ、この中に知っている顔があるかと聞く。

ボンドがトルコで戦った1人を指差すと、それはパトリス・ゴーストで、今もCIAに知人がいる。2日以内に上海に来るはずだとタナーは教え、出国の準備はQから受け取るようにとMが指示を出す。

007が部屋を出て行くと、タナーはMに、本当に彼はテストに受かったんですか?と聞くが、Mは一言、不合格…と呟く。

ボンドは、指定の美術館に来ると、イギリスのロマン主義画家ウイリアム・ターナーの絵の前に座り、絵に見入っていると、横に座った青年が、物悲しい絵ですね…と話しかけて来る。

時の流れに取り残されたでかい船…などと言うので、無関係な青年だと思ったボンドは、立ち上がりかけるが、007、武器開発課ですと、その青年(ベン・ウィショー)が言い出したので、ボンドはその青年を観て、まだにきびがあるじゃないか!と驚く。

しかし、取りあえず、その青年がQだと認識したボンドは握手する。

Qはボンドに小さなケースを渡し、蓋を開けて観ると、中には銃が収まっていた。

ワルサーPPK/S、グリップ部分に指紋認証装置が付いているので、あなた以外の者には撃てないと説明したQは、小型の無線発信装置も手渡しながら、お好みはボールペン型爆弾?あれは旧時代の遺物ですよと皮肉っぽく言うと、装備は無傷で返して下さいと頼む。

ボンドは思わず、世代交代か…と呟く。

上海

とあるホテル内のプールで、夜1人泳ぐボンド。

バーで時間を潰していると、携帯にIWA22便が到着すると言う表示が入る。

列車の屋根の上で逃がしたパトリスが空港に降り立ったのを、サングラスで顔を隠して確認したボンドは、相手の車を尾行し始める。

パトリスは、人気のないとある高層ビルの入口に到着したので、近くに停めた車の中から携帯で写真を撮りながら様子を見ていたボンドだったが、いきなりパトリスがガードマンを殺し、中に侵入したので、ボンドも車を降りて後を付ける事にする。

パトリスが、ビルの側面を登るエレベーターに乗って上昇し始めた事を確認したボンドは、そのエレベーターの底に飛びつき、そのまま自分も階上へと引き上げられて行く。

途中で、手の疲れを感じ、片手を離した時、ようやくエレベーターは停まり、中に乗っていたパトリスが降りたので、ボンドも、シャフト内から扉をこじ開け、廊下に出る。

用心深くそのフロアを中を見て回っていたボンドは、灯りを点けない空室内で、何事かをしているパトリスの姿を確認する。

どうやらパトリスは、向かいのビルの部屋に向かった窓ガラスを、カッターを使って小さな円形に斬り取り始めたようだった。

同時に、狙撃中を組み立て始める。

相手は、向かい側のビルの室内で椅子に腰をかけている人物のようだった。

ボンドは音を立てないように、パトリスに接近して行く。

パトリスは、自動ガラス切り機が丸い穴を開けた部分から狙撃中を突き出し、向かいのビルで、椅子に座っていた人物が、その前に置かれていた布を取られたモジリアニの大きな絵に見入った瞬間射殺する。

ボンドは、次に瞬間、パトリシアに飛びかかり、格闘を始める。

パトリシアは、ビルの窓から落ちかけ、その片腕だけを握りしめたボンドが、誰に雇われた?と聞くが、パトリシアは答えないまま、ボンドの手をすり抜けて、パトリシアは地上に落下して行く。

ボンドは証人を失った事を悔むが、部屋に残されていたパトリシアの銃やガラス切り機などが入ったケースを慎重に調べた所、マカオと刻印された竜の絵が入ったメダルのような物を発見する。

その頃、Mは、又、自分のパソコンに「罪を思い出せ」と悪戯書きをハッカーにされているのに気づく。

そこには、MI6の5人の情報員の名前が暴露されており、これから毎週、5人ずつ公表すると書かれてあったので、すぐさまその事をタナーに知らせる。

マカオ

ホテルでひげを剃りかけていたボンドは、ノックの音に気づき、銃を手に警戒してドアの側に来ると、ルームサービスですと声がしたので、怪しみながらもドアを開けると、そこにいたのはイブだった。

部屋に入ってきたイブは、Qは飛行機嫌いで…と、自分がここに来た理由を説明し、敵は盗んだリストを解析し、5人の情報員の名を公表してしまったと伝達する。

ボンドが、旧式のカミソリでひげを揃うとしていたのを観たイブは、古い物は良いわよねと声をかける。

ボンドは何を思ったか、そんなイブにカミソリを手渡して来たので、また命を私の手にゆだねるの?とイブは驚く。

それでも、イブは、そのカミソリでボンドのひげを剃りながら、ボンドの質問に答え始める。

マロリーの事を聞かれたので、陸軍中佐だと教えるが、ボンドが自分の胸元に興味を持ちそうな気配を察すると、動かないで!手元が狂うからと釘を刺す。

蝋燭が入った灯籠が無数に海に漂い、空には花火が上がる中、小舟に乗って大きな龍の行灯型アーチを潜り、海上賭博場にやって来たボンドは正装をしていた。

パトリスが持っていたコインをヒントにここを突き止めたのだった。

賭博場の中に客として潜入したボンドは、同じく、客を装ってドレス姿で先に潜入していたイブに、耳に手を当てるなと注意して、出口は3つ、死角が多いなどと室内の情報を無線通信で伝える。

換金場所にやって来たボンドは、例のコインを係員の女性に渡し、これを換金したいと申し出る。

待つ間、ボンドは、賭博場内でひときわ目立つ美人に目をやっていた。

香港で狙撃された男の室内に一緒にいた女だった。

その女の横には、耳に手を当てている用心棒らしいひげ面の大男が立っていた。

その時、ボンドは、係員が持って来たトランクを受け取ると中を確認する。中には2万ドル入っていた。

さらに、サービスですと言って、係員が渡して来たコインを受け取って、ルーレットの方へ向かいかけるが、そこへ例の女が近づいて来て、一杯おごって下さる?と声をかけて来る。

ボンドが承知すると、女は、誰が換金しに来るかと思っていたわ…と言いながら、ミスター…と名を聞いて来たので、ボンド、ジェイムズ・ボンドとボンドは答える。

女はセブリン(ベレニス・マーロウ)と名乗る。

友達も誘っていいか?とボンドは聞くが、誘わなくても付いてくるわよとセブリンは言い、仕事の話をして良いと切り出して来る。

ボンドが、ドレスのスカートの下に銃を隠しているな?と言うと、セブリンの方も、あなたもタキシードの下にワルサーを隠しているじゃない?と逆襲し、パトリスをやったのねと聞く。

ボンドは単刀直入に、ボスに会いたいと頼むと、セブリンは煙草の煙を吐きながら、それって危険よと忠告する。

君は先ほどから、用心棒たちの方をちらちら観ている。ボディガードにしては3人は多過ぎる。監視されているんだろう?君の腕にある刺青は君が元売春婦の証拠、それをボスが身請けしたんだろう?君は恋愛だと思っていたがそれも遠い昔の話、今は恐怖に怯えている…とボンドが見透かすと、あなたは恐怖に付いて詳しいの?とセブリンは聞き返し、ボンドが肯定し、僕が君を助ける。だから会わせろと重ねて頼むと、あなたなら彼を殺せそうねと呟いたセブリンは、用心棒はあなたを襲撃するわ。それを回避できたら、第7桟橋のキマイラ号に来て。出航は1時間後よと言い残してセブリンは席を立つ。

ボンドはトランクを持ち、中庭の架け橋を通って帰りかけるが、橋の途中でひげの男ら3人のボディガードがボンドの前後に立ちふさがる。

ボンドは瞬時に戦い始めるが、ひげ面の大男と共に、巨大な大トカゲが這い回っている中庭に落下する。

ひげ男は、ボンドのワルサーを奪い取り、ボンドに向けて来る。

ボンドが撃てるかな?と言うと、ひげ男は引き金を引くが、指紋認証が合わないので弾は出ない。

その時、ひげ男の足下に迫っていた大トカゲが、ひげ男の足を加えて闇の中の引きづり込んで行く。

ボンドにも、別の大トカゲが迫って来たので、急いでジャンプし、架け橋に這い上がろうとするが、そこに倒れていた別のガードマンが銃を突きつけて来る。

しかし、その手を踏みつけたのは、トランクを確保していたイブだった。

第7桟橋のキマイラ号は、予定通り、1時間後に出航する。

ボンドが来なかった事にちょっと落胆した様子のセブリンは、1人、シャワーを浴び始めるが、そこに裸で入って来たのはボンドだった。

2人はシャワールームの中でキスを交わす。

その頃、テレビのニュースでは、イギリスの情報員が残虐な殺され方をしたと言うニュースが流れ、マロリーはMの失態に文句を言っていた。

キマイラ号の甲板に上がってきたボンドは、密かに小型無線発信器のスイッチを入れていた。

甲板上には、セブリンの他に、5人のガードマンが乗っており、ボンドに迫って来る。

キマイラ号は、デス・シティと呼ばれる廃墟と化した離れ小島に接近していた。

セブリンが言うには、ネットで化学汚染の噂を流し、一夜にして住民が島を去ったため、今や無人となってしまった島なのだそうである。

島に上陸したボンドとセブリンは、すでに後ろ手に縛られていた。

壊れたビルの一室の椅子に座らせられたボンドの前に、エレベーターが降りて来て、中から1人の男が降り立つと、ボンドの方に近づいてきながら、昔自分の祖母が、ココナッツが生えているだけの小さな島を持っていた…と話し始める。

島はきれいだったが、ある時、船に潜んでいたネズミが上陸してしまい、後で訪れてみたら、島はネズミだらけになって降り、ココナッツは食い荒らされていた。

祖母はどうしたか?島の真ん中にドラム缶を埋め、その上に餌を仕掛けた。

すると、ネズミたちは餌を目当てにドラム缶に集まり、皆、地中に埋めていたドラム缶の中に落ちてしまった。

その後どうしたかって?何もしなかったのさ。

ドラム缶に落ちたネズミたちは、空腹のあまり、共食いを始めたからさ。

最後に2匹だけネズミが残った。

その2匹はどうしたかって?何もせず、そのままジャングルの中に放ったのさ。

もうその2匹はココナツは食べず、ネズミの肉しか食べなくなっていたから…。

分かるだろう?それが君と私だ。

俺もかつては、君以上に活躍していたんだ。

まだあの婆さんを信じているのか?君はテストで不合格だったんだよ…と言いながら、部屋に置いてある複数のパソコンの1つのモニターを観ながら、その元英国情報部員ラウル・シルバ(ハビエル・バルデム)はボンドに告げる。

婆さんとは、Mのことのようだった。

シルバは、共食いする気か?と言いながら、椅子に縛られているボンドのシャツの胸元を拡げ、そこにある傷を優しくなでて来たりする。

本気でこういう事をされたらどうする?とシルバはねちねちとボンドの身体を触り始めるが、最初ではないかもしれんとボンドが答えると、そのやり方は止め、スパイがスパイを追う?時代遅れだ!英国のMI6はここと同じだ。Qのアホな玩具はない。君も俺のように、自分のミッションを選んだらどうだ?ネットで株を操作し儲けたり、スパイ情報を探ったり…とシルバが勧めると、ロンドンのガス爆発もか?とボンドは切り返す。

シルバは、君の趣味は?と聞いて来る。

ボンドは、復活かな?と無表情に答える。

この廃墟を観てみろ。人間は必要な物さえあれば良いんだと言いながら、ボンドの縛りを解いてやったシルバは、一緒に外に出てみる。

そこは、廃墟と化したビルの間だったが、その中央部に、セブリンが繋がれていた。

顔を観ると、ボンドをここへ案内した事で、拷問されたようだった。

シルバはボンドに酒を注いだグラスを渡すと、俺たちの女に乾杯と言う。

ボンドが酒を飲み干すと、シルバは自分のグラスを持ってセブリンの元に近づくと、その頭の上にそのグラスを乗せ、まっすぐ立ってろと命じる。

そして、ボンドの横に戻って来ると、旧式の銃をボンドに渡し、どっちが先にあのグラスを落とすか勝負しようと言い出す。

もちろん、ボンドの背後にはガードマンが銃を向けており、ボンドが反抗しないように目を見張っている。

007はやはり死んだのか?伝説のボンドはどうした?とシルバから揶揄されると、ボンドは銃をセブリンの頭上のグラスに向け発砲するが外してしまう。

続いて、シルバが銃を向け発砲するが、それは最初からグラスを狙っていたのではなかった。

グラスは落ち、セルビンも崩れ落ちる。

悪いか?と悪びれる風もなくシルバがボンドに尋ねると、ボンドは瞬時に動き、背後のガードマンの銃を押さえつけ、他のガードマンたちも倒すと、シルバに銃を突きつける。

シルバは、どうする?俺をMの所へ連れて行くのか?と嘲笑するが、その時、3機のヘリが頭上に接近する。

ボンドは、Qの新兵器「無線」だと教える。

逮捕され、英国MI6の拘束室に収容されたシルバに会いに、Mがやって来る。

ガラス張りの狭い空間に幽閉されていたシルバは、Mが目の前に来ると、そんなに小柄だったのかと驚いたようだった。

俺のこと覚えているか?とシルバが聞くと、あなたは読めない部下だったとMは答える。

俺は、敵に捕まり、5ヶ月間、来る日も来る日も、連日執拗に拷問を受けたが、口を割らず、あんたを守った。

しかし、誰も助けに来ない事が分かると、あんたに裏切られていたと思った。

奥歯の奥に仕込んだ毒のカプセルを噛んだ。

毒は内蔵を破壊した。

だが死ななかった。

何故死ななかったか、訳が分かった。あんたにもう1度会うためだとシルバはMに告げる。

それに対し、あなたの名は殉職者として墓碑に刻まれていると教え、立ち去ろうとしたMだったが、真実の姿を良く観ておけよ、シアン化水素の威力を…と言いながら、シルバは口を開くと入れ歯を外しながら、あんたがこうさせたんだと言い放つ。

口の中には、ほとんど歯が残っておらず、口の中は暗闇のように黒ずんでいた。

Mはボンドに、彼の本名はティアゴ・ロドリゲス、中国ハッカー2名を逮捕するために、こちらの6名と中国で交換した中の1人だったのだと過去を教える。

本部内では、Qが入手したシルバのパソコンを分析していた。

すると、中央スクリーンに奇妙な図形が出現し、それを観たQは、オメガサイトだ、これは超難しいぞと表情を引き締める。

Mは、政府主催の「未来の安全を考える審問会」に呼ばれ、出席していた。

女性議員クレア・ダワー(ヘレン・マックロリー)は、情報が漏れて諜報部員が殺された。これはあなたのせいでは?とMに詰問する。

複雑な文字がアットランダムに浮かぶスクリーンを観ていたボンドは、その中に、地下鉄の駅名と同じ言葉を見つけ、それをキーワードとして入力してみろとQに告げる。

すると、複雑な図形は、ロンドンの地下鉄の路線図に変化する。

その時、本部内の床面の仕切りが次々と開き始める。

シルバにハッキングされると気づいたQは、急いでシルバのパソコンからコードを引き抜く。

ボンドは、シルバが収容されていた拘束室に向かうが、そこにはすでに護衛の死体が転がっており、ガラス張りの拘束室は無人で、地下に通ずる仕切りが開いていた。

Q!奴が逃げた!と無線で報告しながら、ボンドは近く降りて行き、Qの方も、ボンドの位置を補足していると伝えて来る。

Qは、奴はわざと捕まったんだ。MI6本部を爆破すれば、本部がここに移って来る事も予測していた。最初からここに来て、内部のシステムにハッキングする計画だったんだ!と悔しがる。

ボンドは、地下鉄の路線トンネル内に入り込むが、Qの言う避難用通路への扉を見つけ、開けようとするが、錆び付いているのか開かない。

ボンドは、ついてる!電車が来た!とQに伝える。

やがて、地下鉄が、通路に立っていたボンドに接近し、ボンドは銃を取り出すと、扉のノブ部分を撃ち、間一髪中に避難する。

地下通路にやって来ていたシルバは、警官姿の2人とすれ違う際、紙袋を受け取る。

ボンドは、地下通路の人ごみの中に出ていた。

そこはテンプル駅だった。

Qは、中央スクリーンに映った役の監視モニターの中からボンドの姿を確認するが、シルバの方はなかなか見つけられなかった。

そこへ地下鉄が到着し、乗降客でごった返し始める中、ボンドはこれに乗るのか?とQに尋ねる。

Qは、必死に、電車に乗り込んだ客の中からシルバの姿を探し出そうと焦っていた。

やがて、電車のドアが閉まり、地下鉄はゆっくり走り始めるが、その時、警官姿で乗り込んでいたシルバを特定したQが、ボンド、乗って!と指示を出す。

ボンドはホームを走り、地下鉄の最後尾車両にしがみつく。

そこに乗っていた車掌は、車両にしがみついているボンドの姿に唖然としていたが、ここを開けて!と言われると、開けるしかなかった。

Qは、シルバは警官に化けたと無線で知らせ、それを聞いたボンドは、だろうね…と返す。

電車は、国会議事堂が近いウエストミンスター駅に迫っていた。

目的はMだ!とボンドは気づく。

国会内の、審問会に出席していたMの隣に座ったタナーのパソコンに、緊急連絡が入る。

タナーはMに、シルバが逃げ出したのですぐに避難を!と勧めるが、Mは、今、彼女の前で背中を見せられると思って?とクレア・ダワー議員の方を観る。

ウエストミンスター駅に到着し、シルバがホームに降りると、その姿を確保していたボンドも後を追うが、駅構内はすごい混雑でなかなか近づけない。

シルバは、エスカレーター中央部分を滑って降り、ボンドもそれに続く。

シルバは、笑いながら、地下鉄通路脇のドアの中に消える。

その直後にその場に駆けつけたボンドは、ドアが少し開いている事に気づき後を追うと、地上へ続く鉄梯子をよじ上っていたシルバを発見、銃撃して動きを封ずると、側に近づいて行く。

鉄梯子の途中で止まっていたシルバは、玩具屋で見つけた「無線」と言いながら、左胸に付いていたボタンを押すと、ボンドの右奥の天井部分が大爆発を起こす。

俺を狙っていないとボンドは皮肉るが、狙っているとシルバは笑う。

次の瞬間、壊れた天井部分から、上の層を走っていた地下鉄車両がボンド目がけて落下して来る。

必死に避けるボンド。

その間に、地上に上がったシルバは、事故を知り集まって来た警官たちが置いていたパトカーの1台に乗り込むと、その場を離れる。

審問会では、マロリーがクレアに、少しは彼女にも話させたら?と提案し、ようやくMが発言を始めていた。

Mは、今や敵は、国家ではなく、地図にも載っていない相手である。私の亡くなった夫は、良く詩を読んでいた。それはテニソンの詩だったと思うが…と言うと、詩を引用し出し時間稼ぎをする。

ボンドも地上に出ると、走って国会議事堂へ向かう。

一足先に議事堂内に入って来ていたシルバは、次々とガードマンたちを射殺し、審問会が行われていた部屋に入って来る。

部屋付きのガードマンや、マロリーが次々と撃たれて行く。

シルバがMに銃を向けた時、ボンドが駆けつけて来て、シルバに応戦し始める。

室内にはイブもいたので、ボンドは床に転がっていた銃を彼女の方に蹴ってやる。

左肩を撃たれたマロリーも、シルバに応戦を始める。

ボンドは、マロリーの側に置いてあった消化器を発見、マロリーに眼で合図をすると、その消化器を撃ち抜き、室内は白い消化剤で視界が利かなくなる。

その間に、マロリーは、クレアやMたちを横のドアから外へ逃がす。

シルバは、Mの姿が確認できなくなると、外へ出て、停めてあったパトカーに乗って逃亡する。

ボンドも外に出ると、車に飛び込む。

タナーはMを、公用車の後部座席に押し込み、自分も乗ろうとするが、その前に公用車は走り出していた。

運転していたのはボンドだった。

後部座席のMは、私を利用する気?と憮然とするが、私のせいで犠牲者が出た…とも吐露する。

ボンドは無線でQを呼び出すと、Mと一緒にいると報告し、何か、シルバにだけ分かる餌を落としとけと頼む。

それを聞いたQは、上に知られたらどうなるんです?僕の出世はこれでダメになる…とぼやきながらも頭を絞り始める。

ボンドは公用車を人気のない路地に停めると、こんな所に隠れるの?といぶかしがるMに、車を替えます。公用車には追尾装置がついているので…と説明し、ある場所の戸を開けると、そこには年代物のアストンマーチンが置いてあった。

それを観たMは、とても目立たない車ねと皮肉を言う。

助手席に乗り込んだMは、乗り心地が悪いわねと悪態をつくが、運転していたボンドは、ギアレバーの握り部分を開き、現れた赤いボタンに親指をかけると、気に入らなければ降りてもらいましょうか?と無表情に返事をする。

無人の本部内で、タナーと一緒に密かにシルバへかける罠を考えていたQは、背後に人の気配を感じ振り向くと、そこには、負傷した左手を吊ったマロリーが立っていたので、もはやこれまでと観念するが、マロリーは意外にも、シルバを国道A9へ誘い込め。首相に知れたら地獄行きだぞとアドバイスをくれてその場を去って行く。

スコットランド

アストンマーチンを降り、近くの荒涼たる風景を眺めていたMは、ここで育ったの?何才で親を亡くしたの?などと聞いて来るが、ボンドは、全部ご存知なんでしょう?と皮肉で返す。

エージェントにするには、身寄りがない方が良いと思ったのとMは答える。

嵐が来ます…とボンドは言い、アストンマーチンに乗ると、鹿の像が飾られた「スカイフォール」と言う門が建つ土地へ入って行く。

そこには、廃墟のような館が1軒建っていた。

中に入ったMは、ここなの?あなたの家は…、あなたが戻らないのは当然…とボンドに話しかける。

その時、猟銃を構えた髭もじゃの老人がボンドの前に現れ、その顔を観たボンドは、生きていたのか!キンケイド!と驚く。

ボンドは、キンケイド(アルバート・フィニー)を猟場の番人とMに紹介し、Mをキンケイドに紹介するが、キンケイドは彼女の名を「エマ」と勘違いしたようだった。

何でここに戻った?とキンケイドが聞くと、ボンドは、俺を殺しに来る奴がいるので逆に殺すと教え、武器はどれだけ残っている?と聞く。

しかし、キンケイドは、武器庫の武器は全部アイダホに売られてしまい、残っているのは狩猟用のライフルだけで、後は、採石場のダイナマイトが少々と答える。

他に残っているのは、1本のナイフだけのようだった。

久々に猟銃を手にしたボンドは、キンケイドと共に外に出ると、試し撃ちをしてみるが、1発で命中させたボンドの腕前を観たキンケイドは、何の仕事だって?とボンドの職業を知りたがる。

家の中で待っていたMには、毛布を貸し与えたキンケイドは、地下通路へのドアを開けてみせ、あいつも両親を亡くした時には、2ヶ月間ここに閉じこもっていたが、出て来た時には大人になっていたと、ボンドの過去を教える。

ボンド、M、キンケイドの3人は、急いで、有り合わせの材料でトラップや武器を作り始める。

ボンドはMに、自分への追悼文読みましたよと語りかける。

ボンドが不満そうだったので、やっぱりね…と答えたMは、「不滅の英国人の鑑」と言う部分でしょう?と聞くと、ボンドは素っ気なく、そこではないと答えただけだった。

やがて、スカーフォールに、シルバの部下のテロリストたちが集結して来る。

屋敷の前まで来た彼らは、ドアに爆弾を仕掛け始めるが、その時、その後ろに停まっていたアストンマーチンの運転席に隠れていたボンドが起き上がり、フロントライトの下部分を開き、秘密の仕込み機関銃を出すと、テロリストたちを背後から撃ち始める。

それをきっかけに、銃撃戦が始まり、屋敷内に侵入したテロリストは、そこで銃を構えていたキンケイドを見つけると撃ち始めるが、それは姿見に写ったキンケイドの虚像だった。

逆方向に立っていた本物のキンケイドは、そのテロリストを撃ち殺す。

Mは、室内に侵入して来たテロリストが、床に仕掛けた爆弾を踏んで吹き飛ばされると、シャンデリアに仕込んでいた爆弾を、電気のスイッチを入れて爆発させ、後続部隊を撃破する。

キンケイドは、猟銃の弾を込めようと焦っていたのか、弾丸を床に落としてしまう。

その時テロリストが入って来て、銃をキンケイドに向けるが、それを横から撃ち殺したのはボンドだった。

Mも、日頃持ち慣れない銃で応戦していた。

そんなMに、怪我は?と聞きながらボンドが駆けつけると、プライドだけよ!私は銃は苦手なの!と癇癪を起こす。

ボンドは、襲撃者の中にシルバの姿がない事に気づいていた。

その時、どこからともなく大音響の音楽が聞こえて来る。

窓から外を観ると、スピーカーを下部に取り付けたヘリコプターが屋敷に接近していた。

派手な登場だなと呆れたボンドは、キンケイドとMを、キッチンへ避難するよう勧める。

ヘリは、上空から屋敷を銃撃して来る。

危険を察知したボンドは、キンケイドに、あのトンネルへ!と命じる。

屋敷の側に着陸したヘリから、シルバと数名の部下たちが降りて来る。

キンケイドはMを案内し、地下トンネルを進んでいたが、Mは苦痛に顔を歪めていた。

先ほどの銃撃戦で、左足を負傷していたのだった。

屋敷に近づいたシルバは、室内目がけ、手榴弾を投げ込んで来る。

部下には、女には手を出すな!あいつは俺のものだと。Mを殺さないよう命じると、友達に挨拶させろと言いながら、次々と屋敷内に手榴弾を投げ込んで来る。

爆発を避けながら、必死で屋敷内を逃げ回っていたボンドは、プロパンガスのボンベが2本置いてあるのを見つける。

その頃、キンケイドとMは、地下トンネルの反対側から地上に出ていた。

シルバは再浮上したヘリに合図をし、ヘリは、下に停めてあったアストンマーチンを集中的に銃撃し、爆発炎上させてしまう。

その間、ボンドは、プロパンのボンベを部屋の中央部に運んで来ると、そのガス噴射口に導火線をつけて引火すると、「こんな家なんか…」と呟いて、自分も地下トンネルに逃げ込む。

次の瞬間、プロパンガスが大爆発を起こし、屋敷のすぐ上を飛んでいたヘリも衝撃を受け、コントロールを失うと、プロペラを屋敷の側面にぶつけながら墜落する。

ガス爆発の炎は、ボンドが逃げていた地下トンネルの背後にも迫る。

この大爆発の中、シルバと部下2人だけが何とか生き延びていた。

立ち上がって周囲を見回したシルバは、遠くの闇の中、動く懐中電灯を発見、Mたちが脱出した事を悟ると、部下2人にボンドをやるように指示し、自分は女をやると言って追いかけ始める。

ボンドも何とか地下トンネルから地上に出ていた。

燃え盛る自分の生家をバックに、ボンドは、先に逃げていたキンケイドをMの後を追う。

途中で、テロリストの1人を蹴り倒す。

ボンドは、地上に落ちていたMの血溜まりを発見していた。

その時、ボンドは銃撃を受け、その場に立ち止まる。

撃ったのはシルバで、こんなに走り回って何になるんだ?一息つこう。お前も休めと声をかけて来る。

ボンドの背後には、もう1人のテロリストが接近、マシンガンを突きつける。

シルバは、近くの家の窓に、懐中電灯に光が動くのを見つけると、観ろ、母さんが呼んでいるとボンドに教える。

ボンドは、自分に向けられていたマシンガンの銃口を押さえつけ、地面を撃たせると、そこは湖の上に張った氷だったので、氷が割れ、ボンととテロリストは組み合いながら水中に落下する。

ボンドは、テロリストの首を後ろ足に挟んで窒息しさせるが、上を観ても、もう先ほど落ちた穴は見つからなかった。

ボンドは、今死んで沈んで行ったテロリストの死体を追って、さらに水中深く潜ると、テロリストが身につけていた照明弾を取り、湖面に向けて発砲する。

一方、シルバは、一軒家に近づいていた。

その建物の横には墓碑があり、そこには「アンドリューとモニカ・ボンド ここに眠る」と記されていた。

ボンドの両親の墓だと知ったシルバは、笑いながら建物の入口から中に入る。

そこは、民家ではなく、教会だった。

その椅子に腰を降ろしていたMを発見したシルバは、ここは最高の場所だと喜びながら近づくと、何かを探しに行っていたらしいキンケイドが横の扉から戻って来ると、銃を突きつけ動くなと命じる。

Mと向かいあったシルバは、さあ、俺と一緒に自由になろうと言うと、Mにも銃を持たせ、自分の腹に突きつけさせると、自分は銃をMの側頭部に密着させ、あんたが撃つんだ!早く!とMに迫る。

その時、シルバの表情が固まる。

シルバがゆっくり、入口の方に向き直ると、そこには全身濡れ鼠になったボンドが立っており、僕が最後のネズミだと言う。

シルバの背中には、今、そのボンドが投げたナイフが深々と突き刺さっていた。

シルバはボンドに歩み寄ろうとするが、途中で力尽き倒れる。

007、遅いじゃない!とMが文句を言うと、途中で深みにはまってしまって…と謝りながら、ボンドはMの側に近づく。

Mはその場に倒れる。

ボンドが抱き起こすと、その腕の中で、もう、逃げるのは無理ね…とMが呟く。

僕がついていますとボンドは呼びかけるが、私は1つだけ正しかった…と言ったMは動かなくなる。

ボンドは、Mのまぶたをそっと閉じてやると、その額にキスをするのだった。

後日、ボンドは英国に戻り、M16本部の屋上から周囲の風景を観ていた。

そこにやって来たイブは、現場に戻るのでは?と聞いて来たボンドに、断ったのと答えると、Mからの遺言であなたに渡すように言われていたのだと言いながら、持って来た箱を渡す。

中を観たボンドは、デスク仕事に戻れと言う意味かな?と聞くイブに、逆の意味さ、ありがとうと答える。

イブと共に、彼女の仕事部屋について来たボンドは、君の正式な自己紹介をまだ聞いてなかったね?と話しかける。

秘書机に腰を降ろしたイブは、イブよ。イブ、マニーペニーと教える。

よろしく、ミス・マニーペニーと呼びかけたボンドに、横の扉が開き、顔を出したタナーが、中へと呼びかける。

中に入り、新Mになったマロリーの前に来たボンドは、腕の方は?と聞く。

良くなったよと答えた新Mは、仕事が待っていると言いながら、「極秘指令」と書かれた作戦書類をボンドの前に滑らせる。

ボンドは、喜んで…と答える。