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続・新悪名

人気シリーズ第4弾

時代が移り変わり、かつて世話になった麻生の女親分も他界していたりで、朝吉は自分の生き方に迷い始めるような展開になっている。

ひろみと言う薄幸な少女との出会いや、芸人一座との出会い、かつて愛し合った琴糸との再会など、それなりにドラマは用意されており、娯楽作品としては申し分ないのだが、朝吉はもはや、若い頃のように、正義感だけで突っ走る暴れん坊と言うだけでは生きにくい世の中になっている。

まだこの作品辺りまでは、戦前とは違うが、終戦直後特有の貧しい社会状況と、その中で暮らす不幸な庶民、弱い立場の女性などと言う比較的分かりやすい素材が取り入れられているため、そう言う庶民の苦しみを発散させてくれる存在として朝吉が暴れ回る余地が、まだかろうじて残されている気がするだが、この後徐々に、世の中の景気が良くなって来ると、そう言った無鉄砲な朝吉の存在意義自体が薄れて行くような気がする。

実際、この後のシリーズでは、朝吉が活躍するために、毎回、悪い奴を登場させ、朝吉と清次がヒーロー的にその悪と戦うと言う、比較的単純な勧善懲悪の世界になって行くような雰囲気がある。

貧しさ故の不幸と言うテーマは、この作品辺りまでが限界だったのではないだろうか。

この作品の見所の一つは、何と言っても、ひろみと言う小生意気な少女の存在であろう。

子供にしては歌もうまいし、芝居心もあり、映画の衰退がなければ、この後も何かしらの女優になっていた人かも知れない。

このシリーズは関西圏を舞台にしているだけに、毎回、関西の芸人さんがゲスト的に出演していたりするが、今回もミヤコ蝶々が登場しており、軽妙な芝居を見せてくれる。

コンクールの司会者が、若き日の浜村純と言うのも意外に気づきにくい。

清次役の田宮二郎が、センチメンタルジャーニーを歌ってみせる所なども貴重である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、大映、今東光原作、依田義賢脚色、田中徳三監督作品。

八尾駅

買い出しを終え列車を並んで待つ間、八尾に帰ったら、三男坊に継がせる土地はないと言われたし、闇市も潰されたと地元の仲間にぼやく朝吉(勝新太郎)は、列を乱して割り込んで来たヤクザの一団を観て、わいは、お前らみたいな虫けらは嫌いなんやと難癖をつけ、喧嘩になりかける。

その時、手入れや!と言う声が聞こえ、警官が近づいて来るのが見えたので、闇物資を担いで並んでいた者たちは一斉に逃げ出す。

朝吉も逃げ出そうとするが、警官に捕まってしまう。

ところが、その警官は、朝吉の顔を見るなり、村上やないか?と声をかけて来たので、朝吉もその警官の顔を観ると、顔なじみの中島だったので、娘はどうした?などと世間話風に話しかけ、その場をごまかそうとするが、警官は逃がすまいと押さえながらも、堪忍やでと謝る。

大阪のガード下

ひろみ(赤城まり)と言う、10才くらいの女の子が客の靴を磨いている。

そこに近づいて来た少女の母親、お政(ミヤコ蝶々)は、金を貸してくれと娘に言い、わずかばかりたまっていた売上を全部持ち去って行く。

哀し気に母親を見つめるひろみに近づいて来た地回りらしき般若の竹(西川ヒノデ)が、売上はどうした?と言いながら、逃げ回るひろみを追いかけ回す。

ひろみは、たまたま通りかかった朝吉の背後に隠れたので、朝吉は竹を止めるが、竹は、この子供に後で手こずんなよ!と捨て台詞を残して去って行く。

もう、家に帰りなとひろみに声をかけた朝吉だったが、お金あらへんと言うではないか。

朝吉は仕方なく、自分が泊まっていた簡易旅館「相生館」に連れて来ると、ひろみは、父ちゃんも母ちゃんも死んで…、戦災孤児って言うんだわと自分のことを説明する。

あのおっちゃんとはどう言う関係や?と朝吉が聞くと、私はシューシャインガールよなどと言うので、お前、どこでそないませたんやと朝吉は呆れると、どうせ、悪い星の元に生まれて来たんだもの…などと、又、生意気なことを言う。

風呂に入れさせ、一緒の布団で寝かせると、夜中、ごめんなさい!もう起きるから…などと、ひろみは寝言を言う。

翌朝、共同の洗面所に行った朝吉は、先に顔を洗っていた美しい女性に気づく。

女性も朝吉に気づくと、お客さんが歯磨き欲しいんだって!と店の者に声をかけてくれ、自分の部屋に戻って行ったので、それをこっそり観ていたひろみは、一目惚れねなどと言って朝吉をからかう。

その時、同じ宿に泊まっていたらしいお銀が、朝吉親分じゃないのと、嬉しそうに声をかけて来る。

やっぱりおかまで食っているのか?と朝吉が聞くと、きっぱり足を洗って、役者よ!おやま…と言うではないか。

そんなお銀に、おばちゃん、男みたいとひろみが声をかけたので、何、この子?とお銀は不思議がるので、わいの子分や、女の子分が出来たんやと朝吉は説明する。

怪訝そうなお銀だったが、それでも、助けてよ、一座が困っているのよと朝吉に何か頼み事があるようで、自分たちが泊まっている部屋に案内すると、座長の五月淳子(近藤美恵子)に、良い親分を連れて来たと紹介する。

その座長こそ、さっき洗面所であった美人だったので、顔を突き合わせた2人は苦笑する。

その場には、大磯文次(杉田康)と言う興行ブローカーもおり、今度、演芸館の隣に小屋を張ってやるつもりが文句が出まして…と言う。

さっそく朝吉は、ストリップなどをやっている演芸館「寿劇場」に出向き、社長の玉島甚五郎(遠藤辰雄)に会う。

すると、玉島は、五島組のチンピラを呼び入れて来るが、その中に清次(田宮二郎)が混じっていたので、朝吉は、われ、用心棒やりくさってるのか?と睨みつける。

清次の方は、朝吉を観ると、玉島に、やめとき、あの人には勝てしまへんからと忠告すると、改めて、八尾の朝吉親分ですと紹介する。

清次を表に出した朝吉だったが、急に態度を変えて低姿勢になった玉島は、隣で芝居をするのに賛成し、私も手足になって働きますと頭を下げて来る。

それを五月に伝えに帰って来ると、喜んで感謝した淳子だったが、急に思い出したように、大磯に子役は?と聞く。

その時、寂しがったひろみが朝吉の元にやって来るが、お銀が言うには、誰も子役のことは聞いてなかったと報告したので、考えた淳子は、この子を子役に借りても構いませんか?と朝吉に頼む。

その後、小屋で朝吉と会った清次は、国民に娯楽を与えんといかん思うて、興行の世界で一旗揚げようと思って今この仕事をしていると説明する。

朝吉は呆れていたが、そこに、化粧をしてもらったひろみがやって来たので、これ何ですねん?と清次が聞くと、子分やと朝吉は答える。

五月淳子は、ひろみを子役に使い、女剣劇で沓掛の時次郎を披露することになる。

ひろみはなかなか勘の良い子だと分かったお銀は、なかなかの拾いもんよと、袖で観ていた朝吉と清次に笑いかける。

客の入りも情状だった。

初日の舞台が終わり、淳子、朝吉、ひろみは揃って屋台のラーメンをすする。

食べ終わったひろみは、子供ながらに気を利かせたつもりか、屋台から離れて行く。

あんた、1人ですかいな?と朝吉が聞くと、もう懲りましたよと淳子は言うので、亭主も役者やったんか…、わいは何もない。さっぱり金と縁がないわいと朝吉が自嘲すると、噓おっしゃいと淳子が笑いかけ、宿に行って飲みましょうよと誘って来る。

わいは飲めへんけど…などと言いながらも、淳子の部屋に付いて行く朝吉、そんな2人がいちゃついている様子を、宿に戻って来たひろみは、襖の隙間から覗き込み、自分が取り残された気持ちになったのか、泣きながら、芝居小屋に戻って来ると、時の流れに〜♩と1人歌い始める。

その歌声を聴き、小屋の中を覗き込んだ清次は、巧いな、のど自慢コンクールに出る気ないか?一等取れるかも知れんぜとひろみを褒める。

そして、昔、進駐軍と仲良くしていたから英語の歌、教えたるわと言うと、ギターを弾きながら英語でセンチメンタルジャーニーをひろみに聞かせると、今月の15日、神戸でコンクールがあるので覚えてんかと言う。

そこに、朝吉もやって来て、清次が歌っている姿に呆れる。

その後、無事公演が終了し、宿では、すき焼きを食べながら一座の面々たちが打ち上げを行っていた。

その席に混じっていた朝吉も、飲めない酒を少し飲んでいた。

そこにやって来た玉島は、大入りのお祝い金を持って来たので、淳子もお銀も喜んで感謝するが、清算させてもらいますと言い出した玉島は、テント代18000円、宿屋の雑用16000円、小屋で働いた労働賃15000円、私たちへのギャラ15000円などと言い出し、後、2万もらわなあかんと言い出す。

売上は?と聞くと、大磯に渡したと言うではないか。

その大磯は、姫路に出かけると言った切り帰っていなかった。

もう大磯は帰ってこんで…、わいの落ち度や、わいが何とかすると、大磯が金を持ち逃げしたと気づいた朝吉は申し出る。

この興行は始めからケチがついていたんですよ…と淳子も落ち込む。

2万と一座に渡す4万5千円を貸してくれと朝吉は玉島に頼むが、断られたので、当てがある。因島の麻生の親分や。われも一緒に付いて来て金を受け取ってくれと頭を下げる。

玉島も、シルクハットの親分なら知っていると言い、朝吉について行くことを承知する。

翌日、トラックに荷物を積み出発する一座を見送る朝吉は、これでわいも心置きなく別れられるわと、ひろみを一座に託そうとするが、ひろみはすね、うちはお母ちゃんに会いたい。神戸にいるのだと言い出す。

お銀が、出発の準備ができたと淳子を呼びに来て、五月一座は去って行く。

そこに、清次がやって来て、コンクールに出そう思うてるので、この子、出しとくんなはれと朝吉に頼む。

その後、朝吉と清次はお照とすき焼き屋で会うが、お照は、琴糸はん、どないしてはりますやろ…と思い出す。

清次は、朝吉に義姉さんと一緒になったら?などと勧めるが、朝吉はお照に、ひろみの洋服を観てやってくれと頼む。

その後、神戸にやって来た朝吉は、ひろみを連れて繁華街を歩きながら、ひろみの母親とやらを探しまわるが、なかなか母親は見つからなかった。

実は、ひろみは、飲み屋で飲んで騒いでいるお政を発見していたのだが、朝吉には知らせないでいたのだった。

ひろみは、母ちゃん、おる言うたんは噓なのなどとすました顔で言うので、再三からかわれたと思い込んだ朝吉は、もうお前なんか、コ○キの子でもなりさらせ!と叱りつけ、1人で立ち去ろうとしたので、ひろみは泣きながら、連れて行ってよと謝る。

それに気づいた清次は、どないしたんや?とひろみに聞き、朝吉に、ここで捨てられたら、これから先の負い目になります。気持ち良う別れてやって下さいと泣きながら訴える。

その涙を観た朝吉は、わいが滅多に見せたことない涙に免じて許したると言うと、ひろみに、お前とさしで話そうと言い出す。

ひろみと2人きりになった朝吉は、わいはお前のこと、子供と思わん。今度の戦争で犠牲になった、お前らちっこい子に何かしたいんや。素直な良い子になって欲しいいんやと頼むと、ひろみは、泣かせないでよとわざと憎まれ口を叩く。

玉島を連れ、因島に到着した朝吉だったが、朝吉の顔を見て声をかけて来た床屋のおしげ(阿井美千子)は、麻生の「親分半に会いに来たと言う朝吉に、先に墓参りするかと言うではないか。

麻生の親分ことイトはすでに死亡していたことを知った朝吉は愕然とする。

おしげは、琴糸はんに知らせましょうか?亭主は戦争で死んで、今は造船所の孝允さん相手の飲み屋をやっていると言う。

しかし、それを断った朝吉は、玉島と一緒にシルクハットの親分(永田靖)の所へ行くと、おのれの好きなようにしさらせ!と腹をくくる。

シルクハットの親分は、子分たちを部屋から出すと、滅多に忘れられん手があるやないか?困っていると一言言うたら、その金を持って駆けつけてくれると朝吉に告げる。

その時、琴糸が入って来て、金の入った風呂敷を持って来ると、何も言わずにこのお金を…と朝吉に渡そうとする。

それを受け取ろうとしない朝吉に、玉島は、因島の鱶の餌食になってもらおうか?と脅し、シルクハットの親分は、蜂の巣になるぞと言い、観ると、子分が朝吉に銃を向けていた。

やむなく、琴糸から金を受け取り、それを玉島に渡した朝吉は、一枚一枚、涙で濡れていること忘れるなよと睨みつける。

おしげの経営している「渡海屋」と言う旅館に戻って来た朝吉と琴糸は、2人きりになると、初めて熱いキスを交わす。

琴糸は恥ずかしがり、松島の初回の間みたいだわなどと言う。

辛い地獄を逃げ出したいと言った時、あんた20、私は19だったわ…と、かつて島から逃亡したときのことを琴糸は思い出す。

それから、シルクハットの親分の目を盗んで逃げたら、又元に戻って…。お絹さん、他所に片付いたんですってねなどと琴糸があれこれ話していると、急に室内の電気が消えたので、琴糸はおしげさんのいじわる…と言いながら笑うと、もう放さない。ずっとこのままいて!と朝吉に迫る。

15日、神戸では、「第3回素人のど自慢大会」が行われていた。

22番で舞台に登場し、会津磐梯山を歌って鐘1つ鳴らしただけなのに、いつまでも引き下がろうとせず、司会者(浜村純)を困らせたあげく、参加賞のタオルをもらって舞台袖にようやく引っ込んだのはお政だった。

お政は、舞台袖で26番として順番を待っていたひろみを発見し驚く。

清次が袖で見つめる中、舞台に登場してセンチメンタルジャーニーを歌ったひろみは、合格の鐘を鳴らす。

お政も清次の隣で、娘の晴れ姿を見守っていた。

舞台袖に戻って来た戻って来たひろみは、お政を無視すると、優勝間違いなしや!と太鼓判を押す清次に抱きついて来る。

お政は愛想を振りまきながら、清次にわたい、この子の母親でんねんと言いながらひろみに近づこうとするが、清次は、この子は親なし言うてたでと不思議そうな顔をする。

その時、係員(桂三千秋)がひろみと清次を控え室に呼び込む。

一緒に控え室について来たお政は、猫のように捨てた言うたな?とひろみを睨むと、日雇いやっているうちに、昔覚えた酒の虫が起きて…と清次に弁解するが、その時、部屋に入ってきたチンピラたちが、今歌っている奴を優勝させろと拳銃をちらつかせながら係員を脅し始める。

優勝させんと、わいの命ないと言うたれ!と凄む相手に、お政は文句を言い、清次は殴り合いを始める。

チンピラたちは逃げ出すが、その際、拳銃を発砲し、清次は右足を撃たれてしまう。

すぐに、警官と救急隊員が駆けつけ、清次は病院に運ばれるが、お政もそれに付き添って病院に向かう。

その混乱の最中、大磯が部屋の中を覗き込んで来たのをひろみが発見する。

清次が入院した病室には、お政が付き添っていたが、そこに優勝トロフィーを持ったひろみが係員と一緒にやって来る。

一位ですと言われ、係員が差し出した賞金1万円を受け取ったのはお政だった。

そんなお政に、同行して来たレコード会社の人間(岩田正)が話があると言いす。

そんな中、はるみは清次に、朝吉親分はどこにいるの?大磯と言う悪い男がいるのよ。審査員を連れて因島へ行くのよと伝える。

そこへ、ニコニコ顔のお政が戻って来る。

翌日、めかしこんだお政はひろみを連れ、因島に向かう大磯らと同じ連絡船に乗っていた。

因島に着いた大磯は、同行したバンドマンたちと一緒に、おしげがやっている「渡海屋」に泊まる。

同じ宿に泊まったはるみは、おしげに朝吉のことを聞こうとするが、忙しいおしげは行ってしまう。

お政も、別の仲居に朝吉がいないかと聞くが、要領を得ないので、あの男、今晩一晩しかいない言うのに…と、大磯のことを気にしながらお政は焦る。

しかし、因島には1万人もいると聞くと探しようがなかった。

その頃朝吉は、琴糸の部屋に居候していたが、琴糸は、退屈だったら因島劇場に覗きに行ったら?と勧める。

一方、ひろみは、大磯を見失うまいと、宿から劇場へ出かけて行くバンドマンと一緒に同行することにする。

「クラウンレコード 歌のカーニバル」と看板が出ている因島劇場にやって来たひろみは、近くにいた朝吉を発見したので、あの男がそこにいる!と指差して教える。

朝吉に気づいた大磯は逃げ出し、朝吉はその後を追う。

大磯は浜辺に置いてあった小舟の陰に隠れ、見失った朝吉はすごすごと戻って来る。

戻って来た朝吉から事情を聞いた琴糸とおしげは、島で逃げ込むとしたらシルクハットの親分の所しか考えられないが、大磯と言うその男を匿っているとすると、シルクハットの親分とどう言う関係やろと話していた。

琴糸は朝吉に、私のためにお金を取り戻そうと思っているなら、もう…と、これ以上の深入りを止めさせようとするが、朝吉は、人を騙して生きている根性が気に食わんのじゃ。

その頃、大磯はシルクハットの親分の家で寝ていたが、そこに訪ねて来た朝吉は、まさか匿もうとるようなことないな?とシルクハットの親分に聞く。

わいと同じ河内者や。芸人を騙した金や。その男をわいに渡しておくんなはれと手をついて頼むと、わいは頼んで来た者を断れん男や。見つけ出して渡そ。どこへ連れて行けば良いのや?と言うので、朝吉は、岩見の浜に12時に連れて来ておくんなはれと伝え、出て行く。

その頃、話を隣の部屋で聞いていた大磯は、シルクハットの親分に助っ人を頼んでいた。

しかし、親分は、悪党なら悪党らしく、身体張って来いと言いながらドスを手渡す。

深夜12時、浜にやって来た大磯は、待っていた朝吉に、逃げたのは悪うございましたと謝るが、朝吉は、何ぼ金積んでも許さんぞ!と言うので、やけになった大磯は隠し持って来たドスを突き出して来る。

それを振り払った朝吉は、座らんかい!と怒鳴りつけ、砂浜に大磯を正座させると、この場所はな、女親分にステッキで、血反吐くまで叩かれた場所や。わいも足腰立たんようにしてやると迫る。

すると大磯は、あの時、言うこと聞かんと片腕取ると玉島に言われ、やむなく自分が4万5千円受け取ったことにしろと言われたが、受け取りもらって、実際に自分がもらったのは1万だけだったと告白する。

それを聞いた朝吉は、今の話、玉島の前でも言えるんやな?と念を押すと、畜生…、玉島のガキめ…とつぶやき、鬼の形相になる。

玉島は、手に入れた金で買った新しい土地の祝いをしている所だったが、そこに、大磯と松葉杖をついた清次と共にやって来た朝吉は、利子ももらおうやないかと玉島に迫る。

玉島の子分たちが飛びかかって来たので、朝吉と清次は大喧嘩を始め、「五島興行社」の事務所内に逃げ込みドスを抜いて来た玉島も朝吉はこてんぱんに叩きのめす。

玉島は、分かった!堪忍してくれ!と詫びを入れると、渋々金庫を開けるが、その中には大金が詰まっていた。

そこへ、あっちはきっちりやっつけましたでと言いながら、清次もにこやかに入って来る。

朝吉は、ほな行こかと声をかけ、清次は威勢よく、へい!と答える。

郵便局に寄った朝吉は、因島の琴糸に電報を打ち、金返す。達者で暮らせと書いて40円払う。

外に出た朝吉は、これで何もかも済んだと晴れやかな顔になり、清次も、巧いこと行って何よりだとお愛想を言うが、急に朝吉が寂し気な表情になっていることに気づいたので、どないしましたん?と聞く。

清次、これから何するんや?そう問いかけて来た朝吉に、清次は、そりゃ…へい…と言ったきり、何も答えは出て来ない。

からっ風邪が吹き抜ける中、朝吉と松葉杖をついた清次はどこへともなく去って行くのだった。