人気シリーズ第10弾
本作では、市の按摩の師匠と言うのが明らかになる。
久しぶりに訪ねたその師匠が殺されていたと知った市は、その復讐をすることになる…と言うのが大筋だが、師匠の娘役を演じているのは、市の剣の師匠である奥村紀之介の妹役も演じていた坪内ミキ子である。
シリーズもこの辺りになると、初期の頃とは違い、ただシリアスなだけではなくユーモアシーンも増えており、より幅広い客層にアピールするような娯楽映画に変化している。
最初の方で登場する下足番丑松を演じている平参平は、当時、吉本新喜劇で活躍していた人だが、彼が市にアカンベエをすると、眼が見えないはずの市もアカンベエをして返すなどと言うのは、明らかなギャグシーンだろう。
後半、杖を盗まれた市が、おでん屋に化けて伝六を待ち受けているなどと言う趣向も、市は杖を盗まれた後、すぐにお鶴の後を追い、密かに伝六の行動を尾行して、杖を奪い返すチャンスを待ち受けており、屋台に近づいたので、先回りして、店の主人に入れ替わってもらった…と言うことなのだろうが、酔った伝六が都合良くおでん屋に立ち寄るかどうかの保証はなく、理屈で考えてしまうとかなり無理がある設定なのだが、ここも、のり平相手なので、客の意表をつくナンセンスと言う風にも解釈できるようになっている。
しかも、このシーンは、のり平演じる伝六と市が心を通わす良いシーンになっている。
最初に出会って、肩を揉みながら互いの身の上話を話し合うシーンも素晴らしく、のり平はこの作品で、基本的にはシリアスな芝居をやっており、それがかえって、時々トボケたことを真顔でやってみせるギャップを引き立たせている。
後半は、その伝六とお鶴の親子の情愛が強調されているのも良いし、のり平ファンとしては嬉しくなるシーンが多い。
三木のり平は後年、勝新自身が監督し、傑作と言われる「座頭市」(1989)にも再登場している。
その伝六の娘を演じているのは、子供時代の歌手の小林幸子であるのは比較的知られていると思うが、子供が市から仕込み杖を盗んでしまうと言うアイデアは、北野武版「座頭市」の冒頭でも使われている。
定番の悪代官と岡っ引きコンビはと言えば、今回、かなり小悪党風と言うか、キャラクター的にも強面と言うよりも、どこかコミカルに描かれていることもあり、復讐劇の方はやや弱く感じないでもない。
今回、市と対決する用心棒役を演じているのは、東宝金田一シリーズで、「良し!分かった!」と手を叩いて早合点する警部役でお馴染みの加藤武である。
この当時はまだ若々しく、馬に乗って市を襲って来るなど、野性的な行動を見せる。
作品全体の出来としては、普通くらい…と言った所だろうか。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
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1965年、大映、子母沢寛原作、犬塚稔脚色、井上昭監督作品。 タイトル 握り飯を頬張りながら、農民が連れた牛が引く荷車の藁の上に寝そべっていた市は、あったけえなぁ〜…、ありがとうございますと空に輝く太陽を見上げながら、お天道様に恵んで頂いた握り飯食っておりますなどと呟いていた。 その時、もう一つの握り飯が、足下に転がって行ってしまったので、慌ててつかみ取ろうと手を伸ばした市だったが、掴み損ね、荷車から落としてしまったので、早く食っちゃえば良かった…とぼやく。 その後、霧の中を歩いていた市は、細い丸太橋にさしかかり、恐る恐る横向きに渡り終える。 その様子を、近くのあばら屋の中から観ている2人がいた。 本当にあいつが座頭市か?何だ、ただのメ○ラじゃねえかと2人の浪人者の1人がもう1人に聞き、間違いない。下舘の宿で代官や昇天一家を殺して大暴れした奴だと浪人者が教える。 斬れば10両、手付けに1人3両、昇天の吉兵衛がくれたくらいだからな。ふいを突いて叩き斬ろうと男が言う。 やがて、そのあばら屋の前にあった小さなたき火に近づいた市が、しゃがんでタバコを吸おうとしたとき、おいメ○ラ、貴様、名前は何と言う?と聞きながら近づいた2人の浪人は、瞬時に市の居合いで倒される。 しかし、1人の浪人の方は、かろうじて身を避け、倒れただけだった。 市は、お前たち、誰に頼まれたか知らんが、命はたった1つ、大事にしな…と言い残して去って行く。 その直後、倒れたままじっとしていた浪人は、急いで殺された浪人の懐から3両を奪い取ると逃げ去って行く。 麻布橋にやって来た市は、ここまで来て素通りって手はないな…と呟くと、橋を渡って町に向かう。 屋台のおでん屋に市が立ち寄ると、店の親爺が、通り過ぎる駕篭を観て、ここの所毎日来ているけど、一体なんだろうねと呟く。 そんな中、市がおでんに大量のカラシを付けるので、親爺は目に悪いよと注意するが、おでんなんて、おでんにカラシを付けるんじゃなくて、カラシにちょっとおでんを付けるくらいが旨ぇんだと言いながら口に入れるが、あまりの辛さに悶絶し、あんまりカラシが旨いもんだから目玉が飛び出して、親爺さんの顔が見えなくなったなどと冗談を言う。 面白いことを言う按摩さんだと苦笑していた親爺だったが、市の顔をしみじみ見て、おめえさん、市さんでは?と聞くので、市はどちらさんで?と聞くと、矢作(寺島雄作)、駄菓子屋をやっていた…と説明すると、思い出した市は、俺が出てからもう10年になる。この辺もすっかり変わったろうね〜と市は懐かしがる。 すっかり変わっちまったと答えた矢作は、師匠の彦市さん大変だったなと言うので、市は、師匠がどうかしたんで?と驚く。 知らなかったのかい?てっきりそれで来たのかと…と戸惑ったような矢作は、死んだよ。半月ほど前殺されたぜと教える。 誰に殺されたかは分からないが、よっぽどの腕利きだったらしいと言う。 さらに、娘のお小夜さんは、今、丁字楼と言う女郎屋に、錦木と言う名でいると言うではないか。 その丁字楼にやって来た郡代の磯田幸右衛門(春本富士夫)は、女将のお鹿(倉田マユミ)に錦木を指名するが、あいにく今日は臥せっているので、代わりにお初を用意しておりますなどとお鹿はお愛想を言う。 磯田は錣山の辰五郎(沢村宗之助)に、新しい遊女屋を作りたいと申しておったが、約束の50両は用意してあるかなど、露骨に賄賂を要求すると、年貢の取り立ても、百姓の顔色をうかがっていては行かんぞなどと発破をかけて、女の待つ部屋に入って行ったので、辰五郎はいい気なもんだと呟く。 そんな郡代と辰五郎を横目で観ていた遊女たちは、自分たちをこんな目に遭わせている2人に対し、泣き言や文句を並べ立てる。 そんな丁字楼にやって来た座頭市は、下足番の丑松(平参平)に祝儀の小銭を与え、錦木さんに会いたいと告げるが、今日は出かけていて戻りそうもないと言うので、それでは縁がなかったようなので…と言いながら帰ろうとして、今の祝儀を返せと手を出したので、怒った丑松が小銭を市の脱いでいたわらじに投げつけると、杖でわらじの端を叩き、その小銭を跳ね上げて受け取ると言う技を見せたので、丑松は驚く。 ところが、店を出ようとした市を、下女のお辰が呼び止め、郡代様の肩を揉んでもらうからちょっとここで待っててくれと呼び止める。 市が腰掛けて待っていると、先ほどの丑松が顔を近づけて来てアカンベエをするが、何故かそれに気づいたらしい市が、同じようにアカンベエをして返したので、丑松はぎょっとしてしまう。 待ちくたびれて郡代の部屋に行ってみた市は、郡代の相手をさせられ拒絶した新入りの遊女が、お鹿から、お前も土蔵の中で食うや食わずになりたいのかいなどと叱責されながら引きずり出されて行く声を耳にする。 お鹿は、目の前に立っていた市の姿を観て驚き、追い返そうとするが、そのまま横になっていた磯田から招かれ、肩を揉むことことになる。 その按摩の最中も、お鶴が新人を叩いている音が聞こえて来る。 その頃、辰五郎は、土蔵の牢の中に入れられていたお小夜(坪内ミキ子)に、彦の市が検校になって帰って来るならともかく、今になっても、客に抱かれるのは嫌だとか言ってもしようがないだろうと言い聞かせていた。 辰五郎が立ち去った後、牢の中に1人取り残されたお小夜は、自分の名を呼びかける声に気づく。 牢に近づいて来たのは市で、お小夜さんが8つか9つの時、山王のお猿さんは赤いおべべが大好きで♩と歌いながら、一緒に太郎山に登った笠間生まれの市でございますと名乗ると、思い出して下さいましたか!お久しぶりでございます。師匠の声を久しぶりにうかがいたいと思いまして…と話しかけ、師匠が殺されたことも聞いたと打ち明ける。 お小夜は、私がいけなかったんです…と、父の彦の市(嵐三右衛門)が、検校の位を得るために200両貯めていることを知った辰五郎が、自分が100両貸すから、3年と言わず、すぐに買ってくれば良いじゃないか、村から検校が出れば、みんなの自慢にもなるなどと親切ごかしにやって来たのを真に受けた自分が、その金を受け取るように父親に勧めたばかりに、一緒に京へ上る途中、自分が川に水を汲みに行って離れていた隙に、浪人ものに斬り殺されてしまったのだと打ち明ける。 その時、斬られた父は、相手の根付けに付いていたと思しき鈴を引きちぎって握りしめていたと言い、その鈴を市に渡す。 市は、虫が知らせたって言うんでしょうか、今日、麻布橋を渡ったのも、師匠が呼んだんでしょうと呟く。 その時、お辰がお小夜の飯を持って来たので、市はその場を離れる。 そんな市に、おじちゃん、按摩さん?お父っつあんをもんでくれる?と話しかけて来た少女がいた。 お鶴(小林幸子)と言うその少女は、二階に泊まっているらしき父親の最後っ屁の伝六(三木のり平)の所に連れて来る。 伝六は、ちょっと酒でも飲んで待っていてくれと市に勧め、お鶴に買ったばかりの着物を着せてやると、観てやってくれ、按摩さんなどと聞くので、市は適当に、きれいな花柄でとか、赤に黄色に…などと適当に答えるが、その答えに伝六は呆れるのだった。 お鶴が下に降りると、さっそく伝六は市に揉んでもらうことにするが、その右手を触った市は、旦那の商売当ててみましょうか?と言い出し、手妻師のような…、この腕を持っていると、お天道様の下を歩けないんじゃないですかい?等と言い出す。 それを聞いた伝六は、お前さん、按摩ばかりじゃなく鍼もやるのかい?ちくりとするよなどと驚いたように答える。 市が、師匠を訪ねてこの宿場に来たと話すと、それじゃあ、この前死んだ彦の市では?と伝六は驚くが、それ以上は知らないと口をつぐみ、こちらの親分は、御上から十手捕り縄をもらっているだけではなく、博打場まで持っていると言うので、それで、旦那のこの腕を買われたんですね?と市は笑う。 そんな市に、明日の昼頃来なよ。たんまり儲けさせてやるぜ、この腕でな…と伝六は耳打ちして来る。 丁字楼の土間では、子分が連れ戻して来た、逃げ出した遊女をお鹿が殴りつけて折檻していた。 遊女は、自分はこんな嫌らしい所で働くつもりはない。みんなあんたらが汚い罠で引っ掛けたんじゃないか!と抵抗するが、辰五郎が裏に放り込んでおけ!と命じ、そのまま引きずられて行くのを市は物陰で聞いていた。 その直後、市は裏から外に出ると、按摩笛を吹き始めるが、その様子を見かけたお鹿や子分たちは、今の話を聞かれたのか怪しみ、うさん臭そうに裏口を見つめる。 その市が持っていた根付けの鈴を、物陰からじっと見つめる浪人がいた。 辰五郎に雇われていた用心棒門倉小平太(加藤武)であった。 翌日、外を歩いていた市に、近寄って来たお鶴が手を引いてやると言う。 お鶴は、お父っつあんがこの世で一番好きだわと言い、おじちゃんは何が好き?と聞くので、お天道様だね、お天道様って良いもんだねと市は答える。 するとお鶴は、あたいは、お父っつあんと…、後、歌!と言い出したので、一つ聞かせておくれよと市が頼むと、おじちゃん、この歌知っている?と言うと、山王のお猿さんは赤いおべべが大好きで〜♩とあの馴染みの歌を歌い始める。 市はそんなお鶴に、捕まっているお姉ちゃんに何か旨いもん買って行ってやってくれ。そして、何かあったら知らせてくれ。おじちゃんは馬田屋に泊まっているからと頼む。 お鶴は、又歌い始めるが、その時、背後から走って斬り掛かって来た浪人がいたが、市は瞬時に居合いで倒すと、どうしたの?と後ろを振り向こうとしたお鶴に、後ろを向いちゃ行けないと言いながら去って行く。 斬り殺された浪人は、以前、あばら屋で市を襲撃し、助かった浪人だったが、その死体の側に近づいた門倉小平太は、忌々しそうに遠ざかって行く市の後ろ姿を見送っていた。 その後、市は、辰五郎の賭場で勝ち進んでいた。 そこに、やって来た伝六は、大分勝ってるね、少し儲け過ぎじゃないかなどと嫌みを言って中盆の席に座る。 負けている代貸(伊達三郎)は苛ついており、市に、今度は1つ、でっかく仕掛けてみては?と話しかけ、旦那、お乗りになるんですか?と賭場にやって来た門倉小平太に聞く。 門倉は、その杖を賭けたらどうだ?と挑戦して来る。 市は驚き、この杖は按摩の命ですから…と断ろうとするが、その杖で100両と言われると、こんな汚ねえ杖に100両!賭けましょうと、掛け札の上に投げ出す。 伝六が壺を振り、市は、仕込みを一瞬ひらめかせる。 壺が置かれると、群十郎はそっと門倉に合図をすると、門倉は丁と言い、市は半でお願いしますと答え、伝六が壺に手を置こうとすると、その手を押さえ、半になってますねと確認する。 しかし、壺を開けると、46の丁だったが、市が、前に置いた掛け札の1枚を取り、伝六の横に置かれていた酒とっくりに投げつけると、とっくりの上部分は横に滑り落ち、下の酒の中には、別の賽子が43の半になっていた。 とっくりの中でも賽を振るんですかい?と市が皮肉を言うと、門倉は、勝負はこれからだなと言い残して去って行く。 市は、勝った金を要求するが、子分たちが動こうとしないので、全くこの賭場は、手妻はするし、賭け金は払わないなんて、どう言うことだろうね…などとぼやきながら、こっそり子分が持ち出そうとしていた銭函を押さえ、中からきっちり100両貰い受け、軍十郎に1両投げてやると、そのまま帰って行く。 子分たちはその後を追い、町の裏手で市を取り囲むと、今の100両を返しやがれと迫る。 市は懐から100両を取り出すと、それを相手に渡そうと手を伸ばした瞬間、子分たちを5人斬り殺してしまう。 それを観た代貸は、座頭市だ!と腰を抜かす。 その後、歩いていた座頭市の前に現れたのは伝六で、按摩さん、お見それした。許してくれ。俺は言われた通りにやっただけなんだと詫びて来る。 分かってるよと許した市だったが、賭場であっしにこの仕込みを書けさせたお侍さんは?と聞くと、門倉小平太と言って、親分の用心棒みたいな奴だと軍十郎は教える。 その頃、金を奪われ、子分も斬られた辰五郎は激高し、その按摩を探せ!と子分たちに命じると、伝六の奴、どこに行きやがった!と苛ついていた。 その横で、門倉は、きやつ、座頭市に間違いない。言われんでもやる。彦の市やった時、持っていた根付けを奴は持っていやがったと言う。 その部屋に飛び込んで来たのは、藩の見回りが役所中を調べに来ている。横領金のことがバレたらただではすまんので、100両出せと辰五郎に要求しに来た磯田だった。 門倉が見回り役は誰だと聞き、大館甚吾だと磯田が教えると、磯田が受け取った100両を横取りし、大館は100両どころか、例え千両積んでも抱き込まれるような奴ではない。ようするに御主たちの悪事が藩にバレなければ良いんだろう?この始末、俺が100両で引き受けると言い出す。 殺すのか?と磯田が聞くと、俺もかつては見回りを夢見たこともある。貴公は上役にごまをすり郡代になり、大館は実直一本で見回り役になった。そして俺はこんな奴の用心棒になり下がった。同じ藩の3人…、妙な巡り合わせだが、それも仕方あるまい。大館は引き受けた。しかし、大館よりもっとうるさい奴がいる。座頭市だ。俺は奴を斬って宿を出ると門倉は言う。 その頃、役所内で種類の検査をしていた大館甚吾(木村玄)は、そのあまりのでたらめさに憤慨していた。 役所から馬で引き上げる大館を、同じく馬に乗った門倉が追いかけて来て、すれ違い様に斬り捨ててしまう。 蕎麦屋に入ってかけを注文した市は、同じ店で飲んでいた門倉から声をかけられる。 酒を振る舞われた市だったが、いつやる?といきなり聞かれたので戸惑う。 しかし、持っていた鈴を鳴らし、牢の中に入れられているお小夜のことを思い出した市は、出来ることならやりたくねえと言いながらも、勝負の場所と時間を聞く。 門倉は、暮れ六つ、街道のうずね橋と指定する。 この勝負、どうやらあっしの方からお願いする筋のようですね…と市が言うと、忘れるな!と言い残して門倉は店を後にする。 その頃、牢のお小夜の所に食べ物を運んで来たお鶴は、あのおじさん優しいし、歌もうまいわ。山王のお猿さん、良く知っているわよと伝えたので、お小夜は市のことを思い浮かべる。 一方、伝六は、辰五郎から、勝負でのいかさまを市に見破られたことを叱られていた。 お前はお払い箱だが、娘はおいて行け、もう2、3年経てば十分役立つと言い、狼狽する伝六に、市の杖でもふんだくってくりゃ話は別だがよ…と辰五郎は意味ありげに話しかける。 しょんぼりとして出て行く伝六の姿を、こっそりお鶴は見守っていた。 郡代の磯田は、子分を集めて宿場中固めるんだ!座頭市の奴を大館殺しの犯人に仕立ててあげれば良いのだと辰五郎に入れ知恵をする。 その日の暮六つ、うずね橋の袂で待っていた市は、馬で駆け寄って来た門倉を避けようとして道の脇に倒れ込み、背中を強打して動けなくなる。 そこに馬を下りた門倉が近づいて来たので、これはお前さんのものだね?と持っていた鈴を取り出してみせた市は、師匠を斬れって言った人は?と聞く。 門倉はためらわずに、辰五郎!黒幕は磯田だと教える。 それだけ聞けば…と呟いた市は、急に立ち上がると、斬り掛かって来た門倉を二度斬って倒す。 丁字楼の二階の部屋に戻って来た伝六は、餅を焼いてお鶴に食べさせようとするが、お鶴は、あたい、お父っつあんと別れるのは嫌よと言い出す。 さっきの話、聞いていたのかいと寂し気に笑った伝六は、お父っつあんは離しはしねえよ。しかしな…、あの杖さえあれば…などと、火鉢の上の持ちを気にしながらしゃべっていたが、気づくと、目の前にいたはずのお鶴が黙って下に降りて行ってしまったので、親の気持ちも知らねえで…、何、膨れているんだろう?などとぼやくが、持ちが膨らんだので、こっちの方が膨れたいよ!と寝っころがり、その時、足が火鉢に触れたので、熱ぃ!と指先を押さえる。 馬田屋の市の部屋にやって来たお鶴は、お小夜姉ちゃんに何か用がないと思って…などと言いながら近づくと、側に置いてあった仕込み杖に手をやろうとする。 市は、いなり寿司でも買って行ってやってくれと言いながら、財布を取り出すが、その隙に、お鶴は仕込み杖を手にすると、そっと部屋を抜け出し、父親の元に持って来てしまう。 伝六は杖を観て驚き、どうやって持ち出して来たんだと聞くと、お鶴は、これさえあれば、あたいたち別れなくてもすむんでしょう?おじちゃん、ごまかして持って来ちゃったのと言う。 それじゃあ、イカサマ…と言いかけた伝六だったが、それ以上は言えず、ありがとうと感謝する。 磯田と辰五郎は、門倉が死んだと知り、大喜びしていた。 宿場中で、辰五郎の子分たちが、市の人相書きを配っており、役人たちも座頭市捜索に加わっていた。 町人たちは子分たちの話を真に受け、役人を殺したのは座頭市と言うメ○ラだそうだと話し合っていた。 そんな騒然とした町中を、酔って辰五郎の所に向かっていたのは伝六だった。 伝六は市の仕込み杖を持っていたが、途中のおでん屋の屋台に寄ると、又酒を注文する。 子供って良いもんだなぁ〜、涙が出るほど良いもんだ…と独り言を言い出した伝六は、それにしいぇも、辰五郎の奴、どこに行ったんだ?イタチの伝六は最後っ屁が得意なんだ!メクラも杖取られちゃ困るだろうが、俺だって、お鶴を取られたら困るんだ。お鶴は、俺に取って掛けがねのない杖なんだ!とぼやきながら、酒のお代わりを要求する。 主人はすぐに銚子を用意し、自ら、伝六の盃に注いでやるが、その手つきを観ながら、改めて主人の顔を凝視した伝六は魂消る。 頬かぶりをして主人に化けていたのは座頭市だったからだ。 市は伝六の横に座ると、お前さんは良い娘を持って幸せだ。お鶴ちゃんがあっしの杖を持って行った時、心底お前さんがうらやましかった。伝六さん、そろそろ足を洗った方が良いんじゃねえかいと勧める。 その時、いきなり暖簾をめくって役人が覗き込んで来たので、驚いた伝六は、親爺、酒だ!と管を巻いてごまかす。 巧くごまかせた市が笑いかけると、伝六は、自分の盃を市に持たせ酒を注いでやる。 それを飲んだ市は、盃を伝六に返す。 郡代の磯田と辰五郎は、もうそろそろ袋のネズミになるはずだと市が捕まる知らせを待ち受けていたが、となりの部屋から、その袋のネズミならここにいますよと言いながら、市が現れたので驚く。 2人に近づいた市は、ここの所はつまらねえ小細工はしない方がようござんすよと言いながら、座布団を宙に放り上げると、十字に切り裂き、4分割してしまう。 動くと、こうなりますよと言いながら、その座布団に磯田を無理矢理座らせた市は、辰五郎に茶を入れさせると、磯田の背後に廻って肩を揉み始める。 そこに役人がまだ見つからないと報告に来たので、磯田は、もっと近くを探せと命じるが、役人は、磯田の肩を揉んでいる按摩が市とは気づかず去ってしまう。 茶はまだですか?と言われた辰五郎は、煮えたぎっていた鉄瓶の蓋を取ると、それを市の方に投げつけるが、市が磯田を盾にしたので、蓋は磯田の顔にぶつかってしまう。 その時、牢からお小夜を助け出した伝六が部屋に入ってきたので、辰五郎、おめえは、このお小夜さんに100両貸していると言っているそうだが、てめえは、この師匠から200両取っているんだ!証文を出せ!と市は迫り、伝六が引き出しから証文お束を見つけ出す。 こんな薄っぺらい紙切れ1枚が、大勢の娘さんを泣かせて来たんだな…と伝六から受け取った証文を手にした市は嘆き、伝六に、この屋敷から鐘を全部出して、娘さんらを逃がしてやってくれと頼み、お小夜には、明日、師匠の墓を参らせてもらいますよと声をかけると、自分は、磯田と辰五郎の口の中に証文を押し込み、玄関口に引き連れて行く。 そんな市を観た子分たちは驚き、表に出ると、役人たちも仰天する。 子分らは一計を案じ、磯田と辰五郎の足下に紐を延ばす。 2人がそれを乗り越えると、その背後から歩いていた市に紐を巻き付けて縛ろうとするが、市の居合いが子分たちを倒して行く。 磯田と辰五郎は、宿場中を逃げ回り、子分衆と役人たちが次々に市にかかって行くが、みんな斬られてしまう。 一方、女たちを救い出した伝六は、銭函を抱え裏口から逃げ出そうとしていたが、そこに残っていた子分たちに見つかってしまう。 伝六は思わず、迫って来た相手ともみ合い、刀を奪うと無意識に振り回すが、あっさり相手が倒れ、自分が刀を逆手に持っているので、座頭市の真似をし始める。 銭函の中の小判を投げ、それを集まって来た子分が拾おうと背を向けた時、逆手切りで全員斬り殺してしまう。 追いつめられた磯田と辰五郎は、市に命乞いをし始めるが、2人とも丁字楼まで来てくれ、待っている人がいるんだと刀を柱に突き刺して脅す。 丁字楼の店の前、女たちがいつも座らされていた格子のある張見世の前に2人を連れて来ると、伝六と遊女たちが側で観ている中、格子を背に立たせた磯田と辰五郎を市は瞬時に斬り捨てる。 伝六や女たちは、市の気迫にたじろぎ、思わず道を開けると、その真ん中を無言の市が立ち去って行く。 翌朝、お小夜は、父、彦の市の墓に行ってみるが、そこには、市に預けた根付けの鈴が置かれていた。 お鶴といっしょに待っていた伝六は、すっかり座頭市になり切ったつもりで、逆手切りの練習をしていたが、そこに戻って来たお小夜は、市はいなかったと報告し、市さ〜ん!と呼びかけてみる。 お鶴も、おじちゃ〜ん!と呼びかけるが、遠くでその声を聞いていた市は、お天道様、みんな、幸せにしてやって下さいと空を見上げ、1人旅立って行くのだった。 |
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