TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

座頭市兇状旅

人気シリーズ第4弾

目の見えない市が相撲大会に出て、5人抜きをしてしまうと言うユーモラスな出だしから始まるが、上州の親分衆が集まる花会を催す地元の頼りない二代目親分と関わることから、かつて、市の嫁になりたがっていた女との再会、その女が連れていた浪人が市と同様に居合いの名人だったと言う皮肉、そして悲劇的な大団円に向かう見事な展開になっている。

万里昌代演じるたねに関するエピソードがまだ続いていたと言うのも意外性があるし、かつて市も愛しかけた清純な娘がすっかり別人のような大人の女に変わっていたと言う展開も哀しい。

クライマックスでの浪人者のセリフは、女性に対し男が抱きがちの幻想を根底から覆すような怖い内容である。

ラストで市が見せる怖い表情は、そうした現実を突きつけられた男の心そのものである。

敵を演じるのが、この手の役をやらせたら右に出る者がいないほどの強面、安倍徹なので、それだけでも申し分なさそうなのだが、この作品ではさらに、上州中の親分が子分を引き連れて、大挙して市にかかって来ると言う設定も迫力がある。

座頭市の初期の物語の大団円とも言える作品と言っても良いのではないだろうか。

のぶと言う娘役で登場している高田美和の愛らしさは、変貌したおたねの対比であると共に、暗い話の中で唯一の救いと言うか、光とも言うべきものになっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、大映、子母沢寛原作、犬塚稔+星川清司脚色、田中徳三監督作品。

汗を描いている座頭市(勝新太郎)の顔のアップ

炎天下、日傘をさす市

タイトル

村では、祭りをやっている最中で、その催し物として相撲大会が開催されていた。

市も眼が見えないながら観戦席に紛れ込んでいたが、勝ち抜きの挑戦者がいないか?と求められると、市が土俵に上がると言い出す。

眼が見えない按摩が対戦相手と言うことで、観客たちは冷やかし気分で観ていたが、市はあっという間に相手をはね飛ばしてしまう。

さらに、按摩で鍛えた揉みの技で次々と勝ち進み、とうとう5人抜きを達成してしまい、賞品の酒をもらったので、1人で川の側で飲み始める。

その時、いきなり見知らぬヤクザが襲撃して来て、てめえ、座頭市だろう!くたばれ!ドメクラ!などと罵倒したので、とうとう俺を怒らせてるようなこと言っちまったな!と言うと、相手を斬ってしまうが、倒れた相手に、何で俺を殺さなけりゃいけない?訳を言え!と迫るが、てめえのその首にかかった10両が欲しかった…と言うので、その金は誰が出すんだ?あんたの名は?と問いつめると、文珠の喜助(小林勝彦)とだけ何とか答える。

おふくろはどこにいるんだ?と聞いても、もう相手は答えなかった。

その頃、下仁田佐吉(成田純一郎)の組では、大西の親分が訪れたと言うので、昔から住み込んでいるはちまき婆さんと呼ばれるおまき(村瀬幸子)が出迎えていた。

その直後、おまきは、入口に立っている市に気づくが、文珠の喜助のおふくろさんに会いたいと言うので、自分がそうだと教えると、その場に土下座した市は、あっしが斬りましたと詫びる。

おまきは、持っていた棍棒を振り上げるが、自分から名乗って来た所を見るとてめえも満更悪者でもなさそうだと気持ちを落ち着かせ、五分と五分の勝負だったと聞くと、それだけ聞けば良いんだと諦めたようだった。

市は、10両預かって来ました。小遣いだから渡してくれと…とおまきに渡すが、それは、相撲大会で市がもらった賞金だった。

取りあえず、文珠の喜助の棺桶を埋葬したおまきは、この罰当たりが!せめて、のたれ死にしなかっただけ、てめえにも功徳があったんだろうと嘆いてみせる。

その場に同行していた市が、立ち去りかけようとしたとき、近づいて来たヤクザの一団が市を取り囲み、矢切の東九郎(安部徹)と名乗ると、てめえには、舎弟の恨みがあると切り出す。

それを聞いた市は、お前さんだな?あっしの首に賞金を賭けたのは?と納得し、ここで騒いだら仏はゆっくり眠れないよ…と言い、場所を変えようとするが、側で聞いていたおまきが、この按摩さんは心はきれいなんだと助け舟を出してくれる。

市は、下仁田の客分でしょう?だとしたら、喧嘩をするしないは下仁田の二代目さんが決めることですと言い、その場に同行していた二代目の佐吉は、今日は祭りの初日だから騒ぎを起こしたくないと言うので、東九郎は手出しすることが出来ず、市はそのまま去って行くことにする。

それを見送る東九郎は、このまま放っておいていいのか?下仁田一家は手も足も出なかったと、野郎、行く先々で言いふらすぜ。あの按摩を斬った奴に20両賭けるぜ!誰でも良い!と言い出す。

賞金をなくしてしまった市は、祭礼の幟が立つ道を歩きながら、腹減った…とぼやいていた。

小幡屋と言う旅館にやって来た市は、泊まり賃だけはあると、応対に出て来た娘ののぶ(高田美和)に伝えていた。

その時、二階から階段を降りて来た女は、玄関口にいた市を観て凍り付く。

女は、一緒にいる浪人のための酒をもらいに来たおたね(万里昌代)だった。

そんなおたねに、市は、姉さん、洗濯したいんですけど?と声をかけるが、おたねは何も答えず二階へ上がってしまう。

何も持たずに戻って来たおたねを観た浪人棚倉蛾十郎(北城寿太郎)は、酒はどうした?と聞く。

のぶは、幼なじみである下仁田佐吉から話があると呼ばれ、あんたがやっているのは弱いものいじめにしか見えないわと嫌みを言うが、面倒が起きないうちに、この土地から出て行けと按摩に言ってくれと頼まれる。

女中が市を洗濯場へ案内して来ると、その外では、小幡屋の主人島蔵(松居茂美)と矢切の東九郎(安部徹)が密会していた。

棚倉と言う浪人者が来ているだろう?腰抜けの佐吉を殺すのにちょうど良い。佐吉は、おめえん所ののぶを嫁に欲しがっているそうだな?と東九郎が聞くと、娘を道具に使うつもりはないと島蔵は断る。

先代の佐平と付き合いがある国定が今夜下仁田に来るそうだ。棚倉には、花会をぶち壊してもらいたい。飯岡助五郎を斬った座頭市も来ているだろう?俺が佐吉をやって、借り貸しなしって寸法だと東九郎は島蔵に迫る。

噂に出ていた棚倉は、同じ宿に泊まっている市を見るとその腕を見抜き、階段ですれ違う時には互いに殺気を意識しあう。

物干し台にいたのぶは、やって来た市の洗濯物を観ると干して上がると声をかけるが、市は恥ずかしがり、これは自分で干しますと言いながらふんどしを竿にかける。

市がのぶに、お嬢さんの家は昔は渡世人ですね?と聞くと、5年前に佐吉さんに縄張り取られたの。村を追い出される代わりに今じゃ宿をやっているのよとのぶは答える。

二代目のこと好きなんでしょう?と市が聞くと、好きよ。でも好きになるとお父っあんが怒るの。私、捨て子よ。お父っあんは昔の夢が忘れられないのよ。何だか恐ろしいことが起こりそうな予感がするの。私どうしよう…とのぶは打ち明けるのだった。

その頃、下仁田一家では、二代目佐吉が音頭を取り、各地から集まった親分衆を前に花会を開いていた。

そこに、予定通り棚倉が現れると、子分衆は花荒らしだ!と立ち上がる。

東九郎は無関係を装い、野暮じゃないかと抗議するが、八州見回り役前田守月の代理で来た。花代全部出すか!と佐吉に迫る。

花会は緊張するが、そこにやって来たのが市だった。

のこのこやって来るとは良い度胸だな…と東九郎は凄んでみせるが、市は「金二両」と自分で花代を書いた紙を差し出すと、宜しくと佐吉に言い、あっしは手前の方から仕掛けたことはありません。ドメ○ラにこれだけの親分衆が立ち向かっちゃ恥でしょう。賽の目でケリをつけましょうと集まった親分衆に伝え、その場にいた棚倉に勝負を挑む。

それを聞いた親分衆はいきり立つが、市が居合いの技でとっくりを斬ってみせると黙り込む。

市は、サイコロを東九郎のとっくりの中に見事に投げ込むと、自分も居合いでとっくりを縦にまっぷたつに斬ってみせる。

その凄技を観た棚倉は、御一党さん、今にあいつの首にどえらい賞金がかかるぞ。それまで待とうわい…と言い残してその場を立ち去る。

宿に戻って来た棚倉は、階段で再会した市に、そう警戒するな。さっきは俺の負けだった。見事なもんだなぁ〜…と感心してみせる。

その頃、下仁田の家には国定忠治(名和宏)がやって来て、出迎えたおまきに会って喜んでいた。

一方、村の飲み屋では、座頭市が安入寺での花会での居合い切りを披露したと言う噂で持ち切りだったが、それを耳にした市は、恥ずかしくなって四つん這いになって逃げ出してしまう。

その後、宿の物干し台で苦笑いする市だったが、そこにおたねが近づいて来る。

市は、おたねさん…と匂いで気づくと、今、2階のお侍さんと一緒にいるんですねと言い当てる。

おたねは、今の私は別人…。眼が見えるのと見えないのとどっちが幸せなんだろうね等と言い出す。

大工の嫁になっているとばかり思っていたでしょう?女って業の深いものね。一旦、男って者を信じられなくなると、糸の切れた凧のように風の吹くままに男から男へ…。棚倉蛾十郎と言うの。他人にはあまり好かれないんだけど…。食べるためにあくどいこともやったのよ…などと淡々と語るおたね。

聞いていた市が、あっしにとっては、昔のまんまのおたねさんです…と慰めるように答えると、惨いことを…、眼が見えないで良かった…、市さんだけには会いたくなかったの…と言っておたねは自分の部屋に戻って行く。

そこには、寝そべって酒を飲んでいた棚倉がいたが、おたねは自ら行灯を吹き消すと、抱いて!しっかり抱いて!と棚倉にしがみつくのだった。

のぶは村祭りに市を連れて来てやる。

下仁田八幡でのぶが手を合わせると、お嬢さん、何を祈ったか当ててみましょうか?と市が語りかけ、みわは顔を赤らめ、意地悪!と恥ずかしがる。

その頃、下仁田を去ろうとしていた国定忠治は、二代目佐吉に、しっかり後を継げよと言い聞かせていたが、その時、市の姿を観た忠治は、笠間の市さんじゃねえか!と驚く。

市の方もその声に反応し、国定の親分!お久しぶりでございますと挨拶を返す。

とうとう首に賞金がかかったと言う忠治に、あっしの首にも…と市が答えると、お互い長生きできめえ…と忠治は告げ、市は御縁があったら、又…と別れを告げる。

生きているうちは、精一杯暴れようと言い残し、国定忠治は佐吉にも別れを告げ去って行く。

その後、のぶの側に近づいた佐吉は、親爺さんに言ってくれ。言いがかりを捨て、無駄な争いは止めようってと頼む。

しかしのぶは、縄張りがある限り、聞く父さんじゃないわと言うと、佐吉と別れ、市を、自分が前に住んでいた屋敷跡に連れて来る。

廃墟となった屋敷の中に入ってみたのぶは、30年以上も住んでいたことあると話すが、それを聞いていた市は、あっしに何か、手助けになるようなことはねえでしょうか?昔、お嬢さんにそっくりな人を知っていたもんですから…と笑いながら語りかける。

ぱっと白い花が開いたような…、大工の所に嫁に行った…。今でも幸せにやっている…と思い出に浸っていた市だったが、突如戸を蹴破ると、そこには佐吉が立っていた。

俺が好きかどうか聞きたかったんだ…と、つけて来た佐吉はのぶに言い訳をする。

のぶは、旅籠屋の婿にやれる?と聞いたのぶはその場から逃げて行く。

ほっときなせえ…と佐吉に語りかけた市は、その側に大きなため池があることに気づくと、小さい頃、鮒釣ったもんだ…と昔話をすると、佐吉も、ガキの時分、身体弱くて…、婆さんも親爺も苦労したと話し出す。

おのぶさんが好きなら、はっきり話をつけるんだよと言う市に、ヤクザのしきたりなんて言ったって、腹の中は黒いもんだと佐吉が自虐的にぼやくので、それが分かってりゃ、あんた見所あるよと市は答える。

その後、佐吉は祭りの様子を見て廻っていた。

その佐吉の後ろから同行していた子分清六(志賀明)と菊三(黒木英男)は、女等をからかっているうちに遅れ、森の中に待ち構えていた棚倉からいきなり斬り殺されてしまう。

佐吉は、気がつくと、子分たちが誰も付いて来てないことに気づく。

森の中を探し待っていた佐吉は市に出会う。

今夜は嫌に寂しい晩ですねと話しかけて来た市は、そっちには行っちゃいけねえよ。あっしの側にぴったり付いてて下さいよ。すっかり酔っちゃって…と佐吉に話しかけた市は、反対の方向へ佐吉を連れて行こうとするが、そこに立っていたのは棚倉だった。

血の匂いがするでしょう?今頃仏になっている。斬ったのは、矢切とグルになっている人で、訳あって言えねえけど、佐吉さん、あんた刀を抜いちゃいけないよと釘を刺すと、棚倉と対峙する。

2人は刀を抜きあうが、市は右手を斬られてしまう。

物陰からこの様子を観ていた矢切の東九郎は、しめた!一気にかかれ!と子分たちに命じたので、佐吉はその場を逃げ出す。

しかし、市は手強く、怯えた東九郎は、棚倉さん、助けて下さい!と援護を頼むが、こちらも右手に傷を負っていた棚倉は、止めたと言い残して去って行く。

東九郎も仕方なく、その場を後にするのだった。

市は、佐吉を呼びかけるが、もう佐吉は近くにいなかった。

子分を斬ったのは市の仕業だと、噓を他の親分衆に報告した東九郎だったが、親分衆は刀一つ抜かなかったと言う二代目佐吉に対し、ふがいねえな、身内斬られて、刀一つ抜けねえとは…と呆れ、久方の親分は、佐吉にやらせるのが定法だろう?と迫る。

他の親分衆も佐吉に説教を始め、勢いを得た東九郎は、縄張りで起きたもめ事は、時分でカタをつけると言ってたね?カタをつけられねえなら縄張りを任せられねえ!長州ヤクザを笑いもんにしねえでくれと凄んでみせる。

その話を影で聞いていたおまきは、佐吉を外に呼び出すと、本当に1人でやれるんですか?と心配して聞く。

俺を狙っているのは矢切なんだよ。しかし、何一つ証拠がないことだ。何としてでもこれを切り抜けないと…。力がない者は縄張り取られる。やらなきゃならない、どんなことをしても…と佐吉は苦悩する。

おまきは、のぶの目を避け、市に、この宿から出て行ってくれ。今夜今すぐに…。見当はついているはずだと頼む。

市は、どこへ行っても疫病神なんですね…と自嘲するが、お前さんさえいなくなれば騒ぎは大きくならないんだとおまきは頭を下げる。

喜助はお前に斬られ、たった1人残った子供みてえな佐吉さんまで殺されそうになっている…と言っていたがおまきだったが、急に気が変わったのか、もう良いよ、もう頼まないよ。おめえの好きにしな。気をつけるんだぜと言い出し帰ろうとするので、おふくろさん、夜道お大事に…と市は語りかける。

翌日、のぶは、おたねさんと侍、どうして発って行ったのかしら?と首を傾げていたが、おたねさんの心づくしに違いねえと市は言う。

それでも、分からないわ…と言うのぶは、私もう大人よ!と大人の話風に語る市に膨れてみせる。

それを聞いた市は、自分の好きな人と添い遂げるんですよと言うと、話をつけて来るからねと言う。

そこに上がって来た島蔵は、佐吉の渡合いがすむまで行かせるもんかと言いながら、市に銃を突きつけて来る。

目明きは欲が深くていけねえ。メ○ラだから説法できるんだ。おのぶさんが可愛かったら、昔の夢を捨てることだと島吉に言い聞かす。

そこにやって来た佐吉が、おたねを知っているかと市に聞いて来る。

矢切に捕まって、あの侍を味方の引き入れたんだと言う。

その時、宿の番頭が島蔵に、おのぶさんがいないと言いに来る。

のぶが昔住んでいた屋敷の廃墟

佐吉が市を連れて来ると、廃墟の中で待っていた棚倉は、ご苦労と佐吉に呼びかけて来たので、やっぱりこんなことだったんですね。罠にかける相手は俺のことだけだったんですね?おたねさんもこの仲間かい?と聞いた市だったが、棚倉は違うと言う。

お前の首にかかった賞金が300両に跳ね上がったぞ。かけたのは佐吉だ。貴様と言う奴が生きていると、俺の癇に障ると棚倉は市に迫る。

その時、のぶが入って来て、その場にいた佐吉に、卑怯よ!あんた市さんに助けられたくせに…と食って掛かる。

しかし、佐吉は、ヤクザの二代目に生まれて来たのが悪いんだ!と開き直るが、市は、そんな佐吉に、表に出てみろ。矢切に殺されるぞと言い聞かす。

屋敷の周囲には、東九郎を始め、近隣の親分が率いた大勢のヤクザが集結していたが、外に出た棚倉は、バカもん!お前たちに市が斬れるか!と怒鳴り始める。

そんな棚倉に、後生よ、止めて!とおたねが呼びかける。

そんな棚倉に、東九郎に良し、やってみろ、ゆっくり見物してやると任せるが、そこに駆けつけて来た島蔵は、縄張りなんかいらねえ。俺の娘を返してくれ!と銃を構えて来るが、それを発砲した途端、背後から子分に斬られる。

それを廃墟の中から観ていたのぶが飛び出そうとするが、市は行っちゃいけねえと止める。

死んだ島蔵の鉄砲を奪い取った東九郎は、それを子分に渡す。

市は、廃墟に入り込んで来た子分たちを斬り捨てると、戸を閉めるが、そこに今奪い取った銃を撃ち込んで来る。

外から、市をやるんだとけしかけられた佐吉に、のぶは寄らないで!と叫んび、市に寄り添う。

廃墟の中に井戸があったので、水があるわよとのぶは市に知らせるが、それはすでに枯れていた。

外に出ていた棚倉は、奴をやるのは俺を置いて他はないと屋敷の方を観ていたが、それを聞いていたおたねが、死ぬのはあんたの方よと言うので、棚倉の表情が変わる。

それに気づいたおたねは、私は一生、あんなと離れるつもりはない。あんたに死なれたくないのよ。だから分かって…とすがりながら、棚倉の刀を奪い取ろうとする。

そんなまとわりついて来たおたねを、棚倉はその場で斬ってしまう。

廃墟の中でのぶの悲鳴を聞いた市は、お嬢さん、何を観たんです?と聞く。

あの女が侍に斬られたんだと佐吉が教えると、たねさん…、あのサンピン…と市は逆上し、自ら外に出るが、佐吉は腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまう。

そんな佐吉に近寄ったのぶは、意気地なし!と言いながら頬を叩く。

市はため池に入りながら、親分、子分問わず、次々に斬り捨てて行く。

やがて、東九郎まで斬り捨てたので、子分たちは怯えて逃げ出してしまう。

片肌を脱いで戦っていた市が着物を着直すと、棚倉と対峙する。

棚倉は、市、やっと2人きりになれたぞと言うので、なぜ、おたねさんを斬っちまったんだ?と市は問いかける。

それに対し、俺の手にかかって本望とうれし涙を流していたぞなどと棚倉が冗談で返して来たので、てめえのような獣と関わったばかりに…。てめえとは、やっぱりこんな羽目になったなと吐き出した市は、棚倉と斬り結ぶ。

棚倉は、倒れた市の仕込み刀を折ってしまう。

近づいた棚倉が、折れた市の仕込みの握りの部分を握って、立て!と引っ張るが、その握りの部分が外れ、仕込みの反対部分にも刃が付いており、市は、その刃を棚倉の腹に押し付けて倒す。

倒れた棚倉は、市いるか?と呼びかけ、貴様、知るまい。あの女、たねの本当の姿を…。きれいな夢を抱いているんだろうが、貴様の首に賞金がかかったのを知り、罠にかけようとしたのはあの女だと振り絞るように告げたので、思わず市は、噓だ!と遮ろうとするが、聞くのが苦しいか?女はいつまでも小娘ではおらんぞ。ざまあ見ろ…と言って息絶える。

市は、おたねさんは美しい人だ!と叫ぶ。

おまきとのぶを連れて、村を出発しようとする市に近づいて来た佐吉は、市さん、すまねえ。俺、男じゃなかった…と土下座して詫びる。

のぶが、これからどこに行くの?と聞くと、凶状持ちと無宿者は八州廻りの目に触れてはいけませんと市は答える。

そんな市に対し、おまきも急に土下座をしたので、気配で気づいた市が何の真似だよ?と聞くと、喜助の金、あんたの金だったんだねとおまきは言う。

いや、あれは…と市は否定しようとしかけるが、あんたが、俺の息子だったらなぁ〜…と言いながら、おまきは市に抱きついて来る。

市も、おっかあ!と呼びかけると、土下座していた佐吉も立たせ、のぶと手を握らせると、2人とも末永くな…と告げる。

佐吉とおまきは、市さん…と感激し、市は、じゃあ、あばよでござんすと別れを告げた市は、祭りに合わせるかのように、踊りながら歩き始めるが、すぐに何かを思い出したかのように厳しい真顔に戻るのだった。


(LD)座頭市 全18巻セット

(LD)座頭市 全18巻セット
価格:51,408円(税込、送料別)