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座頭市あばれ凧

人気シリーズ第7弾

白黒だった初期の渋いシリアスさとは違い、カラー化された座頭市シリーズの、一つの頂点とも言うべき完成度の高い娯楽映画になっている。

前半は、これまでなかったユーモア表現の連続で楽しませてくれる。

さらに、眼が不自由な市だけではなく、耳が遠い花火師久兵衛に吃音の安五郎と、ハンデのある者をそろえる悪趣味と言うか、ブラックユーモア要素まである。

そして、人情味のある仏の文吉と欲の深い安五郎と言う、善悪はっきり別れたキャラクターの対立構図を見せることで、観客を分かりやすい勧善懲悪の世界に引き込んでくれる。

冒頭から登場している文吉の息子、清六と言う頭の悪いキャラクターの使い方も巧く、文吉のあまりに人を疑うことを知らない人の良さが、最後は我が身をも滅ぼす所も皮肉が利いている。

文吉は、ヤクザとしては致命的なほど甘い人間に描かれているが、観客は市同様、あっさり文吉の方に肩入れをする仕掛けになっている。

こうした下準備が整っているので、最後は、徹頭徹尾、市が悪を倒して行くカタルシスに身をゆだねることが出来るのだ。

この作品は、ユーモアのアイデアだけではなく、殺陣のアイデアも豊富で、川の中での戦い、影だけで見せる戦い、桶の「たが」を使った戦い、狭い廊下で蝋燭照明を斬っての戦い、花火で彩られた屋根越しの俯瞰での戦いなど、視覚的にも変化に富んでいる。

悪役の安五郎を演じている遠藤辰雄の存在感も申し分なく、頭から血を垂らしながら無言で敵に迫る市の鬼気迫る迫力は、「燃えよドラゴン」で、ハンの義手に腹を引き去られたブルース・リーが、その血を自ら嘗め、飛びかかって行くシーンを連想させたりする。

ただ、あまりにアイデアを盛り込み過ぎているためか、所々首をひねりたくなるような箇所がないではない。

例えば、子供たちから、道に穴が開いていることを教えられた市が、それを噓と思って本当に穴に落ちるシーン。

ユーモア表現としては分かりやすいのだが、仕込み杖を使って旅をしなれている市が、そんな大きな穴に気づかないだろうか?

又、お国と出会った市が、そのお国が部屋の奥に引っ込んだことにも気づかず、ずっとしゃべりかけているシーンも同様で、ユーモア表現としては理解できるものの、人一倍勘の良い市らしくないと言えば言える。

「恋は盲目」と言うことの表現かも知れないが、まだ出会ったばかりで、恋慕の情を抱いたりする前のシーンだからだ。

一番解せないのは、お仙と密談中の安五郎の家に潜り込んだ市が、キセルや簪を、壁にかかったひょっとことおかめの面に突き刺すシーン。

目の見えない市に、どうして壁に飾られた面のことが分かったのだろう?

ここは偶然が生んだユーモアと解釈しても、その直後、気絶させられた安五郎とお仙が、ひょっとことおかめの面をかぶせられているのは理解不能である。

市が、その面の存在を知っていたとしか思えない所行だからだ。

廊下の両脇に立てられた蝋燭を次々に斬り落として行くのも、どうしてその市に蝋燭が立っていると予測しているのか良く分からなかったりする。

市が人を斬るのは、相手が斬ってきた風の動きを察していると、前の方の作品で自ら語っていたので、その部分は理解できるのだが、こうした、あたかも何でも見えているかのようなアクションは、確かに理屈抜きで痛快であることは確かだが、市をスーパーマン化して行く危険性も孕んでいるような気がしないでもない。

とは言え、前半の緩やかなユーモア描写から、後半のサスペンスフルなアクションに変わる展開も見事で、理屈抜きの娯楽映画として成功している。

花火師久兵衛が言っていた「10発目の仕掛け」が、最後まで種明かしがないままで終わるのがちょっと心残りではあるが…

ちなみに、按摩の揉み賃を踏み倒された市が、その腹いせに、出された飯を部屋中にばらまいて嫌がらせをして帰ると言う趣向は、「新・座頭市物語」で、すでに同じようなことをやっている。

市の、意外な人間的な小ささが表現されていて面白い部分かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、大映、子母沢寛原作、犬塚稔脚色、池広一夫監督作品。

※文中に、今では差別用語と言われる言葉がいくつか出ていますが、それを省略しては話が通じない部分もあり、一部伏せ字にしてそのまま使用しております。なにとぞご了承ください。

片瀬にあるヤクザの家の部屋の隅で寝ている座頭市の姿を俯瞰で捉えた画面。

食い散らかした飯の側で、じっと市の様子をうかがっている組の子分たち。

1人が刀に手をかけ、座頭市ににじり寄ろうとしていると、さっきから顔にたかるハエに苛ついた市が起き上がり、仕込み杖を抜くと、飛んでいた2匹のハエがまっ二つになって畳の上に落ちて来たので、子分たちは眼を見開いて息を止める。

ざまあみろと笑う座頭市

タイトル

翌早朝、朝霧の中をひた走る男衆の足下。

先頭を走っていたのは鉄砲を握りしめた清六(江田島隆)、その後を走るのは、今朝方旅立った市を追って来た片瀬の組の代貸紋十(水原浩一)とその子分たちだった。

やがて、霧の中に銃声が轟き、江戸の花火師久兵衛(左卜全)を連れ、村に戻る途中だったお国(久保菜穂子)も何事かと振り返る。

久兵衛は、カワウソでも撃ったんだろうとのんきに答える。

静六は紋十たちに、これで、市をやったぜ!上州一円の親分衆が誰もやれなかった市をやったぜと手応えがあったことを伝えるが、紋十は、金が欲しいからだろうが芝居は止めな。渡世人仲間に名を挙げたいんだろう?証拠を見せてみろと迫る。

その頃、川に落ちた市は、近所の農民たちに引き上げられていたが、引き上げてもらった直後、今度は3人の農民の方が足を滑らせて川に落ちてしまう。

市は、皆さん、大丈夫ですか?と声をかける。

とある農家の老婆(小林加奈枝)の家で布団に寝かせてもらい、粥まで振る舞われた市は、親切な人もいたもんだ。医者代から路銀まで、見ず知らずの他人のために置いて行ってよ。何でも鰍沢に花火を作りに行くと言っていた人だと老婆から教えられると、渡る世間に鬼はねえな…と嬉しそうに粥をすするのだった。

礼を言うため、鰍沢に向かうことにした市は、途中、飴屋とすれ違ったので、飴を一つ買おうとすると、近くから、飴欲しいなと子供の声がしたので、その子に飴をやって下さいと頼む。

ところが、何だかにぎやかになったので、何人くらいいるんです?と聞くと、飴屋は、15、6人いますよと答えたので、そんなにいるんですか…と市は硬直してしまう。

子供たちを別れ、歩き始めた市に、子供たちが左側に大きな穴があるよ!と声をかけて来るが、大人をだまそうったてそうはいかないよ。左側に行かせないようにして、翻弄は右側に穴があるんだろうなどと言いながら右側に寄った市だったが、見事に大きな穴にはまってしまい、やっぱり子供は正直だと感心するのだった。

その頃、静六は、市はとっくに鰍沢に旅立ったと市の世話した老婆から聞いた紋十たちに殴られていた。

ヤクザたちが、市は俺たちの手でやるんだ!と言い残して去った後、静六は、鰍沢か…、よ〜し…と何事かと決意したようだった。

近くのものたちが楽しむ道場で、道場破りしようとしていた5人組の浪人たちがいた。

5人に1両ずつ、計5両出せば許してやると、道場主に無理難題突きつけていたが、近所の農民たちが大勢覗いていたので、見せ物じゃないぞと外に出て追い払うと、そこに残っていたのは、たまたま通りかかった市だけだった。

市が、近づいて来た浪人にメ○ラの私には見せ物にもなりませんと言いながら愛想笑いをすると、なぜ笑った?と因縁をつけられ、道場の中に引きずり込まれる。

メ○ラ相手にやっとうやろんですって?と戸惑いながらも、壁にかかった竹刀を手にすると、千葉周作と言う人が、眼をつぶって相手が振るのを待てってね。それで振り下ろせば、まずく行っても相打ちになるって。皆さん、ご一緒にやって下さいと声をかけたので、市を取り囲んだ4人の浪人が一斉に竹刀を振り下ろそうとすると、瞬時に市は4人を竹刀で殴り倒してしまう。

それを、残りの1人柴山天玄(五味龍太郎)は興味深そうに観ていた。

市は、川越人足権平(三角八郎)に肩車され、鰍沢に渡っていた。

権平は、市を重そうに運びながらも、江戸から花火職人を呼んだのは文吉親分で、4、5日前からこちらに来ていると教えてくれる。

向こう岸に着いた権平に、金を渡した市は、お釣りを…と言うので、もらえるのかと早合点した権平は良いのかい?と喜ぶが、頂きますと市から手を出されてしまう。

花火師の久兵衛が、火薬の調合を行っている小屋にやって来た市は、片瀬の宿外れで、助けて頂いたものですと言いながら頭を下げるが、返事はなく、ボン!と小さな火薬の爆発音が聞こえただけ。

どうやら、耳が遠いことに気づいた市は、ツ○ボかな?と言いながら、顔を近づけて話しかけると、お前さんを助けたのはお国さんだよと言うではないか。

その方はどちらにいるので?と聞くと、あっちだよと久兵衛は指を指すが、観えない市は、あっちですかと方向違いの方を指差す。

お国の家に向かう途中、市は、草を食んでいる牛と出会うが、腹減ったな〜…と思わず口走ってしまう。

文吉親分の津向組にやって来た市だったが、そこに三味線の練習から帰って来た下の娘のお志津(渚まゆみ)は、玄関先に立っていた市を見ると驚き、忘れちゃったじゃないと言いながら、又、三味線の音を口ずさみながら奥へ消える。

親分の文吉も、竹屋の安五郎に会うために刀も持たず出かけて行く。

誰も市を気にするものもいなかったが、ようやくお国(久保菜穂子)が市に気づいて声をかけて来たので、市は助けてもらった礼を言う。

その時、その時、目吉(中村豊)が渡しの様子を見に行くと出かけて行こうと下のd、お国は、お前は短気だから。花火が終わるまでは騒動を起こさないように気をつけるんだよと声をかける。

お国は下働きのお峰(近江輝子)に、遠慮する市に食事を出すように命じる。

市は、奥に下がったお国に向かっていつまでも話しかけるが、食事の用意をして来たお峰に指摘されるまで気づかなかった。

きれいな方なんでしょうね?とお国のことを小峰に聞くと、女のきれいってのも考えもんでね。男になかなか縁がなくてと言う。

お峰が下がると、空腹だった市は、勝手に飯を山盛りに継ぎ足し、かき込み始めるが、又戻って来たお国から、よっぽどおなかが空いていたのねと声をかけられたので、市は照れ笑いを浮かべるしかなかった。

金と祭りと正月は、俺たちに獲って稼ぎ時だ。それを何だ!ただで花火を見せるなんて、人気取りもいい加減にしろ!やって来た分吉に対し、そう悪態をついていたのは、代貸松次(杉田康)と将棋を指し終えて対座した竹屋の安五郎(遠藤辰雄)だった。

川の手前に位置する安五郎は、川渡しの権利を独占している分吉から権利を譲って欲しいとかねがね主張し、今日も300両出そうと条件を提示したのだが、文吉は今日は花火の話だけにしてくれと頼んでも、聞きたくねえ!と怒鳴り返す。

あげくの果てに、川の差配をお前に代わって俺にやらせたいと言うのはお代官様の意向なんだ等と言い出す。

文吉は重い気持ちを抱えたまま川を渡って帰って来る。

その頃、津向一家にわらじを脱いだ市は、せめてもの恩返しと、廊下の拭き掃除などを手伝っていた。

帰宅して来た文吉は何も言わなかったが、同行していた子分は仲間たちに、話はついちゃいない。安五郎は前々から川越人足の権利を狙っているんだ。今は、仏の文吉と言われているうちの親分がやっているから安い渡し賃で喜ばれているのに、安五郎は、今の3倍も4倍も渡し賃取って甘い汁を吸おうってんだ。自分の妹が代官の妾なもんだから…と打ち明ける。

その話を近くの拭き掃除をしていた市も聞いていた。

その頃、片瀬の紋十たちも、橋を渡って鰍沢に近づきつつあった。

庭先で薪割りをしていた市に気づいたお国は、そんなことしないで、のんびり遊んでていいのよ。花火の時に来て頂戴と言いながら浴衣を手渡してくれる。

浴衣等何年も来たことがないと喜んで受け取った市は、眼が開いていたら、とてもお国さんのそばには寄れないでしょう等と言いながら、しっかりお国に身を寄せるのだった。

そんなお国に、何でもども安と言う奴が、こちらさんに横車押しているとか…、そんな奴がのさばっているからいけねえんだと市は聞いてみるが、お国は、市さんって良い人ねと答えて、その場を離れる。

川にやって来た市は、気づいて、わざといない振りをしていた権平を指名し、川を渡ると、今度は金を渡した後釣りはいらないと言うので、急に態度が分かった権平は、お足下に気を付けて!とお愛想を言う。

竹谷の家の前では簾の影で、安五郎の妹のお仙(毛利郁子)が行水を使っていたが、それを男たちが覗き見している。

そこにやって来た市は、覗き見の中に混じって簾の中をのぞこうとしたので、何だ?お前は?と気づいたとなりの男が聞く。

へへ…、うっかり眼が見えると思っちまって…と市が笑うと、誰だい!と言いながら、逃げ出した男の中でただ一人残っていた市は水をかけられてしまうが、あんま?ちょうど良いや、後でもんでおくれとお仙が声をかける。

安五郎がいる座敷で、お仙を揉み始めた市だったが、お前、今夜泊まっていくんだろう?と安五郎が聞くと、市がうっかり返事してしまう。

そんな市を叱りながら、安五郎はお仙に、代官の方に良く頼んでくれたかい?と聞き、お仙も、川越の差配のことかい?何かきっかけがあれば、乗り出すと言っていた。喧嘩に理屈はいらないよなどと悪いことを吹き込むので、その旅に市の按摩の力が入り、お仙は痛がる。

安五郎はど○りながら、文吉の悪口を並べ、お仙もその兄に乗じたような悪口を言うので、市は揉み方も荒くなる。

按摩を終えた市が揉み賃を要求すると、お仙は、あんな下手な按摩に金が払えるかい!と無視し、別室に連れて行かれた市は、子分から、揉み賃代わりだと言われ飯を差し出される。

子分が引っ込むと、市は、そのおかずに付けられたメザシの匂いを嗅ぎ、やおら立ち上がると、飯を座敷中にばらまき、みそ汁もぶちまける。

さらに、水瓶の水まで、ご丁寧に座敷に撒いて帰る。

その頃、津向の家を垣根越しに覗いていた清六を見つけた目吉が、清六を捕まえて顔を確認すると、若親分!と驚く。

清六は、文吉の家を飛び出していた息子だったのだ。

文吉は盆栽を縁側でいじりながら、座敷にいた清六を一喝し、妹のお志津は、兄さん、どんな小としてこの鰍沢から出て行ったの?人から金を借りて、酒代を踏み倒し、鰍沢の二代目なんておだてられて素人怪我させて、代官所のお尋ね者にまでなりかけたじゃない!津向の家に泥を塗って!ときつい口調で叱りつける。

清六は、お父っっあんの二代目として恥ずかしくないようになろうと、修行していたんだ…と弁解するが、それを聞いていたお国は、目吉に風呂の用意をさせる。

その後、お国は、花火師の久兵衛の所に、今日は内祝いがあったのでと言いながら、夕食と酒を運んで来ると、打ち上げまで後2日だけど大丈夫だろうね?と念を押す。

風呂から上がった清六は、薪を運ぼうとしていた市と顔を合わせてしまい、固まってしまう。

その後、目吉に、座頭市のことを聞くと、土左衛門になりかけた所を姐さんが助けたらしく、3日前に転がり込んだと言うので、清六は、野郎も気づいちゃいないんだな…と安心する。

一方、清六が戻って来たことを聞いた安五郎は、あんな奴…と無視し、いまに渡しの縄張りは全部握ってみせるぞなどと松次らと話しながら、河原を歩いていたが、その時、近くで身体を洗っている5人組の浪人たちに気づく。

まさか、文吉の所に行くんじゃないですかね?と松次に耳打ちされると、抱き込んどきゃ、何か役に立つかもな…と思いついた安五郎は、子分数人に話しかけさせる。

ところが、チンピラが話しかけたのに機嫌を損ねたらしく、柴山天玄は子分の腕をへし折ろうとしたので、詫びに来た分五郎は、今の気分直しに…と言いながら金を出してみせて、腹ごなしか、子供の遊びみてえなことをちょっとやってもらえませんかと下手に出て頼む。

その後、飲みに出かけた清六は、怪我をしている3人の人足を見つけ、訳を聞くと、安五郎が川向こうに来いと言うので、断ったら乱暴されたのだと言う。

それを聞いた清六はいきり立ち、川に1人で向かうと、そこには柴山ら浪人と、安五郎一味がたむろしていたので、文句を言おうと近寄るが、逆に浪人たちに捕まり暴行を加えられる。

翌朝、文吉は、夕べも帰らなかった?と清六のことを口に出すが、その時、松次ら竹屋の子分たちはやって来て、清次が安五郎に斬りつけて来たと言い、これは貸元さんの差し金でしょうね?などと因縁をつけて来て、こんなことをやられたのでは、渡しの権利をそっくり竹屋に渡すか、清六さんをこっちの気の済むようにやって良いのか、親分散の返事を暮六つまで待ちましょうと言い残して帰って行く。

子分たちはいきり立つが、慌てて奴らの手に乗るんじゃねえ。竹屋の手口は分かっている。喧嘩に巻き込んで、渡しの権利を横取りする気だ。清六はこっちを引っ掛けるわなだ。勝手な真似をするんじゃねえ!と言い、落ち着かせる。

松次から報告を聞いた安五郎は、文吉が簡単に罠に引っかからない事を知ると、お仙を呼びに行かせる。

柴山たち、浪人もいつの間にか安五郎の家に居着いていた。

その夜、単身、安五郎の元に向かうため、川を渡ろうと裸になっていた市を見つけたのは、片瀬の紋十たちだった。

取り囲まれたことを知った市は、そのまま水の中に入り、相手を誘い込むと、どっからでも斬ってきな!と言うや否や、水中に潜ってしまう。

唖然として川の中で棒立ちになった紋十たちは、あっという間に水中で斬られ倒れて行く。

その後、安五郎の家に呼ばれて来たお仙は、代官は、引っ括った倅を叩き斬って、喧嘩に持ち込めってさと安五郎に伝えていたが、その時、庭先から市が顔をのぞかせたので驚く。

安五郎が、一体どこから入ってきやがった?と怒鳴りつけると、そうど○らないで!親分さんの口がきけねえようにしましょうか?と言うと、安五郎が吸っていたキセルと、お仙が机の上に置いていた簪を取り上げると、ひょいと壁に投げつけ、そこにかかっていたひょっとことおかめの面に刺す。

そして、畳の上で応需しようとしたら、あまり邪な心はお持ちにならない方が良いですと説教する。

その間、床の間に飾っていた刀ににじり寄ろうとしていた安五郎だが、それに気づいた市は、床の間の前で仕込みを抜く。

次の瞬間、床の間に飾ってあった釣瓶と日本刀がまっ二つに斬れ落ちてしまう。

ども安、てめえ、ヤクザの道を知っているか?俺たちゃ、お天道様の当たる場所を歩いちゃいけねえんだよ。お前は、ヤクザの風下にも置けねえ野郎だ!と罵倒すると、子分に案内させ、清六が縛られて閉じ込められていた小屋に案内させる。

その直後、安五郎の部屋にやって来た子分は、おかめとひょっとこの面をかぶらさせて気絶している安五郎とお仙の姿を発見し、大騒ぎになる。

すぐに、追っ手が差し向けられるが、その頃、市と清六は川を渡って津向の縄張りの方に逃げ込んでいた。

清六は市に、おらぁ、ちっとも恩に着ねえぜ。今晩、自分で逃げ出すつもりだったんだ。キザな真似をしやがって!と憎まれ口を叩くと、1人先に帰ってしまう。

家に帰って来た清六は、文吉から出てうせろ!と叱りつけられるが、これから仕返しに行くんだと1人意気込む。

お国は、そんな清六に、お前、どうやって逃げて来たんだい?と尋ねるが、清六は満足に答えない。

そんな清六の頬を叩いたお志津は、バカバカ!みんなで、どんなに兄さんのことを心配していたか!と怒って自ら泣き出してしまう。

その頃、安五郎の家で騒動を知った柴山は、メ○ラでこれだけ洒落たことをするのは座頭市しかない。上州路では悪名高い凶状持ちだと安五郎に教え、奴が文吉側に付いている以上厄介だな。だが、引き離す手はあると言い出す。

その後、安五郎からの手紙をもらった文吉は、代官が仲裁に入ってくれるそうだと言いながら出かける準備を始める。

しかし、その手紙を読み直したお国は、おかしいじゃない?ここには安五郎の所へ来いと書いてあるけど、どうして代官は2人を代官所に呼ばなかったの?と指摘する。

そんな娘の言葉に耳も貸さず、安五郎の家にやって来た文吉は、代官の姿がないので不審がる。

すると、安五郎は、代官を呼ばなかったのは俺の情さ。お前さん、座頭市と言うドメ○ラの面倒見てるんだってな?どう言う了見で代官に楯突いているんだ?市が凶状持ちと知らねえ訳じゃあるめえ!と迫る。

それを聞いた文吉は驚いて、本当にあの男が座頭市か?と聞き返すが、俺が恐れながらと代官に訴えりゃ、市は捕まるんだぜと安五郎は笑いかける。

その頃、花火が完成した久兵衛は、訪ねて来ていた市に、今夜、10初女にあげる花火は、江戸の人も観たことがない仕掛けがしてあるんだと自慢する。

その頃、津向の家に戻って来た文吉は、お国に座頭市の素性を話し、俺もあの人が悪い人とは思えないが、このままいてもらうと安五郎の奴がどう出て来るか分からないと話していた。

それを聞いたお国は、今夜の花火をあんなに楽しみにしていたのに…と顔を曇らせる。

その後、帰って来た市は、台所でお峰に会うと、今夜は自分も、お国さんからもらった浴衣を着て見ようと思っているんだと嬉しそうに打ち明けるが、そんな市を親分が呼んでいると言うので部屋に向かう。

文吉はやって来た市に、今すぐ出て行ってくれ。鰍沢を離れてくれと言い出し、路銀を包んだ紙包みを投げ与える。

あまりに突然の話に呆然とした市は、皆さんに気に入らねえことでも?と問いただすが、文吉は答えようとはしない。

あれこれ自分が気を使って来たことを説明しようとした市だったが、文吉は、分かっているよ、俺はメ○ラじゃないんだからと冷たく言い放つので、むっと来た市は、随分長い間、お目障りだったでしょうねと捨て台詞を残し、路銀をその場に置いたまま出て行くことにする。

部屋を出た市は、やっぱりメクラは一つ所に長居をしちゃいかねえんだ…と独り言を言うと、子分衆に別れを告げ、自室に閉じこもっていた清六にも、もう人を鉄砲で撃つような真似をしちゃいけねえよと釘を刺す。

夕方、お国からもらった浴衣に着替えた市は、鰍沢を去って行くが、その様子を柴山たちがにや付きながら見送っていた。

その直後、津向の家に、安五郎と竹屋一家が殴り込んで来て、市を出したそうだな?まんまと罠にかかりやがって。これで渡しの権利はこっちがもらうぜ。文句がある奴には死んでもらうと言うと、斬り込んで来る。

何の準備もしていなかった津向一家は、抵抗する間もなく次々と惨殺されて行く。

その頃、夜道を歩いていた市は、花火が始まった音に気づくが、10発目に仕掛けがしてあると自慢していたが、気になるなぁ…、今が5発目だな…と勘定していた。

ところが、6発目の花火は鳴らなかったので市は立ち止まる。

花火を上げていた久兵衛が、津向の子分たちに刀を突きつけられ、発射を中止したのだった。

津向の家では、文吉は、数人の竹屋の子分から串刺しにされ、清六も惨殺されていた。

一方、村はずれにたむろしていた浪人たちは、安五郎の奴、喜んで殴り込みをかけやがったな。バカをみたのは文吉だなどと、安五郎からもらった金を分け合いながら笑っていた。

金を受け取り、旅立とうとした彼らは、暗がりに立っている市に気がつく。

今の話は本当ですかい?と聞いて来た市に、今頃はもう片がついていることだろう。どうするんだ?行くのかよ?と嘲って来た柴山たち浪人だったが、あっという間に、市の居合いに全員斬られてしまう。

市は安五郎の家に向かう。

津向の家の玄関戸が激しく叩かれるので、お国が出てみると、そこにいたのは川越人足の権平で、市さんからの伝言で、親爺さんのためにも花火を上げてくれってと言う。

その頃、自宅に戻っていた安五郎は、これで何もかも俺のものだと笑い、子分たちと酒盛りの最中だった。

そんな中、数人の子分だけは外で見張りをさせられていたが、井戸水を飲んだ後、暑い中、ヤブ蚊に刺されるだけで、とんだ貧乏くじだぜ、座頭市なんか来るのかよ?などとぼやいていた男が、隣の男にしなだれかかって来る。

異変を感じて立ち上がった見張りたちは、その男がすでに背後から斬り殺されていることに気づく。

驚いて暗闇の中に斬り込むが、あっという間に全員倒されてしまう。

さらに、残りの見張りは人の気配を感じ、馬小屋に入って来るが、その闇の中から姿を現した市に斬られてしまう。

さらに、市は、たがを3本手に取ると、やって来た3人の見張りに、輪投げの要領でたがを頭の上から投げ落として相手の動きを封ずると、一瞬のうちに斬り殺してしまう。

その時、今まで止んでいた花火が再びあがる音が聞こえて来たので、気づいた安五郎は、野郎!なめやがって!といきり立ち、又、出かけようと玄関口に来るが、そんな安五郎たちに、何を慌てているんです?座頭市ならさっきからちゃんとここで待ってますよと、座っていた市が声をかける。

ドメ○ラめ!と怒り狂った安五郎に、ども安!と言い返した市は、こっちから仕掛けたことはねえ俺だが、今度ばかりは腹に据えかねたぞと言いながら迫って行く。

暗くなったら、こっちのもんだ。みんなメ○ラにしてやるぞといいながら、廊下の両側に灯っていた蝋燭を次々に斬り落として行った市は、及び腰になった子分たちを次々に斬って行く。

さらに、安五郎に迫って来た市は、火の灯った蝋燭の先端を仕込み刀の先端に乗せながら、どもりは人を斬るって噂だが、どうした抜かねえのか?てめえたちの親分が身動き一つできねえのに、誰1人かかって来ないのか?ども安!良い子分を持ってるなと皮肉を言うと、ヤケになってかかって来た松次らを斬り殺す。

市は、花火が次々上がる中、残りの子分たちを倒しながら、安五郎を追いつめて行く。

瓦が大量に干してある場所に追い込まれた安五郎は、その瓦を手に取ると、向かって来る市に投げ始める。

その1枚が市の頭部に命中し、市の額に血が垂れて来る。

不気味な形相になった市は、動けなくなった安五郎を滅多切りにして倒すと、上空で鳴った花火の方をじっと見上げるのだった。