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忍びの者 新・霧隠才蔵

シリーズ7作目で、霧隠才蔵ものとしては4作目。

劇中で才蔵が、自分は真田幸村のために死のうと思う。今ようやく本当の敵が分かったと言って、家康一族を根絶やしにする決意を述べているが、その気持ちは分かるようで実は良く分からない。

もはや、仕えるべき主人がいなくなったので、自分が勝手に目標を決め、それに向かって何も考えず突き進み、最後は誰かに捉えられ殺されるのを待っている、自暴自棄の気持ち…とも受け取られなくはない。

そして、狙うべき最大の敵徳川家康は、病死してしまうのである。

これでは、才蔵の生きる目標全てが失われたようなもので、甲賀衆との戦い等、もはや才蔵の自己満足のためとしか思えないものになっている。

大阪城から幸村親子を脱出させた時には、初めて人間としての気持ちを持ったと言っていたはずの才蔵が、ここでは又その人間らしい気持ちを失ってしまっているのだ。

自分を愛してくれた女に答え、普通の人間の暮らしをすることも出来ず、忍者としての目標も失い、忍者を必要とする時代でもなくなり、才蔵は一体どこへ向かっているのだろう?

ラストはそんな空しさが残るものになっている。

つまりこの作品、人間ドラマとしては、さほど心に響くものがなくなっているのだが、その分、甲賀衆との戦い等、山田風太郎の忍法帖みたいな忍者対決で見せようとしている。

もはや、ごく普通の通俗娯楽忍者ものになっている訳である。

だから、初期の作風等との比較をせず、これ単独で楽しむ分には普通に楽しめる内容ではあると思う。

家康が、自分の死をひた隠しにさせ、あれこれ秀忠や家臣たちに、こと細かく自分の死後の戦略を言い残す辺りはちょっと興味深かったりはする。

ヒロイン役の藤村志保は、初期から出演しているシリーズのお馴染みとは言え、別人設定として出ているので、いくら何でも、このシリーズに出過ぎだと感じてしまう。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、高岩肇脚本、森一生監督作品。

元和元年、5月8日、大阪夏の陣、最後の日も愈々終末に近づいていた。(…とテロップ)

74才の徳川家康(小沢栄太郎)は、大阪城を攻めながら、秀頼に天下のこと一切合切をゆだねると話しかけていた。

そこに、大阪城から千姫(小村雪子)がやって来て弥生(楠侑子)のお陰で死中を逃れて来たと言う。

淀君の差し金か?と家康は聞き、秀頼殿のお命をお助けくださいと願い出た千姫の言葉を拒否し、天守閣が沈むまで、撃って、撃って、撃ちまくれ!と家臣たちに命じる。

家康の執念は実を結び 徳川の天下統一は成った。秀忠は将軍として 江戸にあったがー

政治の実権は依然として駿府城中奥深く家康の手に握られていた。(…とテロップ)

病床の家康は、日本地図を前に、天海僧正(佐々木孝丸)の現状解説を聞いていた。

家康は、執念一筋で襲いかかる忍者を極端に恐れていた。

天海僧正は、そんな家康に、忍者の生き残り等、たかだか2、30人…、物の数ではございません。連日3人、4人と断罪にしていますと安心させようとする。

しかし家康は、忍者がりにかかるのは雑魚ばかり。大物は虎視眈々と狙っていると言うと、風魔大十郎はどうした?と聞く。

一両日中に到着すると言うので、毒には毒をもって制するのが何より近道じゃ…と家康は指摘する。

その頃、刑場にあった霧隠才蔵(市川雷蔵)の死体がこつ然と消えると言う事件が発生する。

霧隠才蔵(市川雷蔵)が仲間たちの墓に手を合わせていると、同じ忍者仲間の鴉佐源太(千波丈太郎)が声をかけて来る。

俺も、家康をやろうとしたが音羽弥藤次に止められたと佐源太が言うので、才蔵は、音羽弥藤次がまだ生きているのか!と驚く。

すると、佐源太は、音丸、赤目の小六、鈴鹿の陳内もおるぞと教える。

才蔵は、佐源太に案内され、地面の下に掘られた秘密の集会所に連れて行かれる。

そこでは、音羽弥藤次(内田朝雄)が忍者の残党を集め、殺された仲間たちの仇を取るため家康の首を取るぞと檄を飛ばしていた。

又1人、万助が殺されたと言うので、弥藤次は徳川家康に見立てた藁人形に手裏剣を刺す。

その隠れ家に下総の与八の娘あかね(藤村志保)が戻って来て、風魔の30人が江尻を発ったと報告する

家康が、甲賀隊を召し抱えたのだと才蔵に教えた弥藤次は、その場にいた仲間たちと共に、印を結び始める。

駿府城に到着した甲賀大十郎(田村高廣)とその一党は、家康の前で、甲賀流の技を披露していた。

彼らは全員、仕込み槍を持っており、火縄の術の飛竜の陣、紅蓮の陣なども次々に披露する。

それを見て満足した家康は、本多正純(水原浩一)に、長楽寺に泊まれるように手配を命じるが、大十郎は、それを無用と断ると、我らは武田信玄に仕えた乱波の末裔、元をとドルと源氏の血を引いている。伊賀は平家の血を継いでいる。この槍に奴らの血をたっぷり吸わせてやろうと誓うのだった。

一方、遊女に化けたあかねは、遊びに来た侍に、駿府城の中の様子等、それとなく聞いていたが、大御所様がどこにいるのかと言う肝心の情報はなかなか手に入らなかった。

夜、人も近づかぬ墓場に来たあかねは、連絡相手である佐源太を探していた。

そこへ、僧に化けた才蔵がやってきたので、あかねは、知りえた情報を教える。

才蔵はそんなあかねに、何故くノ一になった?と聞くと、父は関ヶ原で死に、その後一緒に暮らしていた爺も間もなく死んだので、生まれながらの定めとして…と言うので、定めは、その人1人1人の手で切り開くことだと諭す。

しかし、あかねは、私は誇りを捨てましたと答える。

その時、気配を感じた才蔵が、近くの木に剣を投げると、はたして、その中に潜んでいた忍者が落ちて来る。

後日、屋敷に中に忍び込んだ音丸は、仕掛けてあった鳴子に引っかかってしまい、待ち構えていた甲賀忍者たちの槍の餌食になってしまう。

倒れた音丸は最後の力を振り絞り、鉄甲鉤で自らの顔を斬り裂いて、息絶える。

その夜、処刑場にさらされている音丸の首を取り戻しに来た才蔵だったが、待ち伏せされている気配に気づき、霧の粉を撒いて首を持ち帰る。

病床の家康は、まだ死なんぞ。まだ秀忠を呼んではならぬ。外様の隠密が目を光らせていると、部屋に集まった家臣たちに申し渡すと、斉藤に、あかねと言う遊女のことを問いただす。

さらに、風魔大十郎には、伊賀者の隠れ家はまだ分からんのか?与は75年待ち続けた。この上、まだ待てと言うのか!といら立ちを露にする。

そんな中、才蔵は仲間と共に、堀の上に張った綱を渡り、駿府城に潜入していた。

城内には、うぐいす張りの廊下があったので、才蔵は鉄甲鈎で天井を這い、見張り役の侍たちを眠らすと、家康の寝所に忍び込み、寝ていた家康を突き刺すが、それは影武者だった。

たちまち鈴が鳴らされ、吊り天井や襖から槍が突き出して来る。

才蔵と共に忍び込んでいた伊賀者は、待ち伏せしていた甲賀衆に3人やられてしまう。

大十郎は、残りの2人を追って城内を探していたが、才蔵は弥生の部屋に入り込んでいた。

すぐに、大十郎が部屋を改めに来るが、その場にいた弥生は毅然として、ここは千姫のお局のお部屋ですと答えたので、大十郎はそれ以上追求することを諦め立ち去ってしまう。

匿ってもらった才蔵が礼を言うと、弥生は、自分は長宗我部盛親の姪だと自己紹介すると、才蔵様にお会いできたのは天の助け、これからは私が手引きをすると言うと、自分はこの8日、長楽寺へご供養に行くと情報を教える。

才蔵は、何とか無事に城を脱出する。

地下の隠れ家に戻って来たあかねは、大御所は、1ヶ月前から、揚げた鯛を食べたのが原因で病気だとか…と情報を伝えると、それを聞いた弥藤次は、否、わしの呪いのせいじゃと言う。

長楽寺で弥生に会った才蔵や佐源太は、正午の刻に天守閣を観るように弥生から教えられる。

佐源太は、弥生の身元を確認していた。

地下の隠れ家では、弥藤次と鈴鹿の陳内(伊達三郎)が今日も家康を呪っていた。

駿府城の中では、病床の家康が見舞いに来た千姫に、そなたの夫を殺したのは爺だ。あの時、人間の心を持って、2人を殺さなかったら、わしは天下を取れなかったろう…、乱世の定めじゃと言い聞かす。

その時、島津宗久が参勤交代の途中、挨拶に訪れたと言う知らせが来る。

天海僧正は止めようとするが、家康は自ら、会うと言い出す。

会わねば、島津の思うつぼだと宇野だった。

何とか平静を装い、島津宗久との対面をおえた家康だったが、さすがに、立ち上がって歩く姿がおぼつかなく、よろめく姿を観られてしまったので、島津から近臣の人質を取れと家康は命じる。

遊女姿のあかねは才蔵に文を渡すため会っていたが、その時、甲賀だい十郎たちの襲撃を受ける。

才蔵は戦い、何とか甲賀衆から逃れるが、手傷を負ってしまったので、その傷口をあかねが吸って毒を出す。

そんなあかねは才蔵に、以前、才蔵様から女としての幸せを考えたことがある?と聞かれましたが、あかねは女としての幸せを知りとうございますと迫って来る。

才蔵は、忍者は人間の感情を全て捨て去っている。女を抱いても愛情は抱かぬと答えるが、そんな才蔵にあかねは抱きついて来る。

地下の隠れ家では、音丸がやられたのも、情報が敵方に漏れていたと考えていた仲間たちが、身内の中に裏切り者がいるのではないかと話し合っていた。

みんなが怪しんでいたのはあかねだった。

懐疑的な弥藤次に対し、佐源太は、くノ一は忍者ではありませんと言う。

その時、振動音が響き、入口が爆破されたことを知った弥藤次は、自ら入口付近の落盤に埋まりながら、仲間たちを奥の抜け穴から逃がすと、くノ一はやはり忍者ではなかったと悔む。

やはり、あかねが裏切ったと思い込んだのだった。

隠れ家の地上には、大十郎たち甲賀衆が集まっていた。

抜け穴から脱出した才蔵が姿を現すと、貴様の血だけはこの槍に吸わせると誓ったと大二郎は呼びかけると、火焔攻撃を仕掛けて来る。

しかし才蔵は、大十郎、命は預けたぞ!と言い残して姿をくらます。

弥藤次の墓に才蔵たちは集結するが、そこにあかねがやって来たので、裏切り者と思い込んでいた佐源太は、自ら死ね!とあかねを罵倒する。

あかねは、自分が疑われている事を知ると、身の証しは自ら立てますと言い残し、去って行く。

その後、才蔵たちは、再び長楽寺で会った弥生から、秀忠が駿府に来ると言うこと、風魔を使っているのは天海僧正と上様だと聞く。

話を聞き終えた才蔵たちは、城へ帰る弥生を陣内を護衛に送らせることにする。

陣内は、弥生の乗る駕篭を付けて行くが、その途中、甲賀衆の襲撃を受ける。

陣内は背中を槍で突かれ絶命する。

長楽寺を去りかけた才蔵と佐源太 は、そこに駕篭を担ぐ奴が死んでいるのを発見し、弥生の乗った駕篭が敵の手に落ちたことを知る。

すぐに、矢追の駕篭の後を追った才蔵たちは、林の中で、木から吊り下げられていた陣内の死体を発見する。

その後も、死中での忍者狩りは続いており、伊賀忍者を見つけたものは知らせること…と書かれた高札を観ていた男が、突然、役人たちに囲まれ、その場で自爆したりしていた。

佐源太は、とうとう3人になってしまった…、弥生殿はどうなったかな…などと話し合っている所へ才蔵が戻って来る。

城では、4、50人分の食料が買われたので、秀忠は明日来るのは間違いない。薩埵峠で待ち伏せする。何者にも使われず、何者も使わず、野に放たれた一匹狼、俺は幸村公のために死のうと思う。いつしか仇の正体がはっきり分かって来た。土台を壊し、徳川家を根絶やしにしてやると決意を述べる。

翌日、去った峠で待ち受けていた才蔵と佐源太だったが、そこにやって来た輿を運ぶ一行を観た途端、その輿が軽そうなことと、付き人が風魔であることに才蔵は気づく。

秀忠は海路で向かったに違いないと悟った才蔵だったが、その時、行列に乱入した1人の忍びの姿を目撃する。

護衛をしていた風魔らによってすぐに捕まり、覆面を剥がされた忍びはあかねだった。

佐源太は思わず助けに行こうと飛び出しかけるが、それを制した才蔵は、敵はあかねから俺たちの住処を聞こうとするはずだと言う。

駿府城に到着した秀忠(南条新太郎)を前にした家康は、75年をかけて得た64州だ。諸藩の大名たちは武家諸法度で身動きさせるな。人質を取れ。姻戚関係を作れ。子や孫も利用するのだ。本多、板倉、以上を成し遂げるとも、与の喪は発してはならぬ。危ないのは西国の大名どもじゃ。与の墓は西に向かって建てるのじゃ。しかと頼んだぞ…と言い渡す。

その頃、捕まったあかねは、甲賀衆らによって拷問されていた。

奴らは貴様を裏切り者としている。そんな奴らに義理立てすることもあるまい。これほどまでに霧隠に惚れたか?嬲り殺しにしてやる!と責めていた大十郎は、この女は死にたいそうだ。可愛がって殺してやれと家来たちに命じ、住処の洞穴に入って行く。

女に飢えた忍者たちがあかねに迫って来た時、才蔵たち伊賀者が3人助けに来る。

救援が来たことを知った大十郎は、ねぐらの洞穴から姿を出す。

甲賀と伊賀の戦いが繰り広げられ、才蔵が霧を撒いて、何とかあかねを救出することに成功する。

佐源太はあかねに、すまなかったと誤解していたことを謝る。

佐源太は、戦いの最中は入り込んだあの洞窟の中に、弥生がいたと言うが、その直後、崖から落下して死んでしまう。

確認のため、才蔵は、あの洞窟に戻って中を捜査するが、中には誰もいなかった。

その後、才蔵は、風魔が姿を消し、城では魚を仕入れなくなったことから、家康は死んだと気づく。

確認するため、駿府城に忍び込んだ才蔵は、布団に横たわっている家康の側で、千姫が天海僧正に、いつ喪になるのか?と聞いているのを盗み聞く。

天海僧正は、外様の人質のことが片付いてからでしょうなと答えていた。

すると千姫が、弥生はいつから天海殿の手先になったのですか?と聞くではないか。

才蔵は、天井裏から、寝ているように見える家康の額に吹き矢を吹いてみるが、家康はぴくりとも動かず、確実に死んでることが分かった。

天海僧正は、駿府に来たときからで、とっさに霧隠を救って恩を売った配慮等なかなか…と答えていた。

その時、忍びの者が忍び込んだそうですとの知らせが届き、家康の遺体に目をやった天海僧正は、家康の額に刺さっていた吹き矢を見つけ驚く。

城から戻って来た才蔵は、裏切り者は弥生だった事を知らせると、これからが正念場だと告げる。

まずその前に大十郎だ。箱根に追って皆殺しにすると決意を述べた才蔵に、あかねは、女としての幸せは才蔵様の側にいることですと訴える。

しかし才蔵は、俺には帰る日も場所もない。生ある限り、徳川を根絶やしにするのだと言い残し去って行く。

あかねは、才蔵様〜!と呼びかけるだけだった。

雪が積もった箱根の山中には、甲賀衆の隠れ家があった。

見張り櫓に乗っていた見張り役が、目ざとく接近して来る才蔵を見つけ、仲間たちに知らせる。

才蔵は、雪の中に身を隠しながら、敵の隠れ家に接近すると、大十郎!出て来い!と呼びかける。

合掌造りの館の中から姿を現した大十郎は、待っていたぞと答える。

才蔵は、貴様の執念も、風魔一族も、この世から消えるのだ!と挑戦すると、大十郎は、飛竜の陣を見せる。

甲賀衆と才蔵の戦いが始まり、櫓の上に登った才蔵は手裏剣で敵を次々に倒して行く。

甲賀衆は、櫓に鎖を巻き付けると、全員で引き倒す。

地上に降りた才蔵に対し、大十郎は「紅蓮!」と叫び、火焔攻撃を見せる。

才蔵は手裏剣で対抗し、最後の1人となった大十郎は、才蔵の着物を槍で地面に釘付けにする。

身動きが取れなくなった才蔵目がけ、屋敷の上から張った綱を、滑車を使って大十郎が滑り落ちて来る。

何とか起き上がった才蔵が、その綱を断ち切ると、空中から落下した大十郎は、下に立っていた槍の上に串刺しになる。

才蔵は近づいて来るが、槍を抜いて身を起こした大十郎は、貴様の手では死なんと言うと、フラフラと館の中に入って行く。

次の瞬間、館は大爆発を起こし、中から女の悲鳴が聞こえて来る。

燃える館の中から姿を現したのは、弥生だった。

焼けこげた姿で外に倒れた弥生は、近づいた才蔵に、お許しください…、弥生は天海に操られたバカな女でした。家康が死ぬと同時に天海は、風魔大十郎に私を渡したのです。死にたくない…と言いながら息絶える。

才蔵は、持っていた槍を、崩れ落ちた館目がけて投げつけると、江戸へと向かうのだった。


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