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忍びの者 霧隠才蔵

人気シリーズ第4弾

この作品から、人気小説の原作から離れ、真田十勇士の講談等で猿飛佐助同様に有名な霧隠才蔵を主人公としたオリジナル作品になっている。

主人公の優秀な忍者が、有名な歴史上の出来事の影で暗躍する…と言う発想自体は同じだが、リアルな忍者像と、追いつめられ家族を失った者の復讐劇を描いていた初期の作品に比べると、この作品以降の主人公は、滅び行く運命に逆らおうとする人間のあがきのようなものに変質している。

ここでの才蔵には、徳川家康への個人的な復讐心等ない。

最初はあくまでも、雇い主たる真田幸村の命じるがまま動く仕事人でしかない。

やがて、仕事の最中、仲間の忍者たちが殺されて行くが、その復讐劇…と言う展開ではないので、後半の才蔵の行動は、初期の作品ほど観客を惹き付けない。

ラスト、雇い主である幸村から、城を出ろと命じられたのに逆らい、家康を討つことを幸村に強要する等と言う辺り、若干違和感がないでもないのは、一人間として、一方的に強い相手に対し、負けたままで終われるかと言う意地みたいなものは感じるのだが、家康を倒さねばならない明確な動機がある訳ではないので、さほど強く共感できないからだろう。

家康を演じている中村鴈治郎以外には取り立てて有名な人も出ておらず、合戦シーンの多くは長々しいテロップで解説してあったりで、前作同様、この作品も大作感はあまり感じられない。

とは言え、何となく、初期の作品の雰囲気とか見せ場は継承しており、普通の娯楽時代劇として観る分には、十分楽しめる内容ではあると思う。

初期作品では、悪役非道な織田信長を演じていた若山富三郎が、本作では、知的で温厚そうな真田幸村になっているのも興味深い。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、大映、高岩肇脚本、田中徳三監督作品。

関ヶ原の合戦によって天下統一を成し遂げた徳川家康は豊臣家根絶の気を狙って虎視眈々実に15年ー

遂に京都方広寺の鐘銘を口実として戦を挑んだ。

秀吉の遺児秀頼とその母淀君は古今の名城と謳われる大阪城に立てこもって家康軍を迎え撃った。

時に慶長19年11月 大阪 冬の陣である。

秀頼は、豊臣家に恩顧のある大名たちに救援を求めたが、既に落日の色濃い豊臣家の急に馳せ参ずる者とてなく、僅かに家康に一矢報いる執念に燃えていた真田幸村、後藤基次等少数の武将と食わんがための失業浪人の群合わせて七八万を数えるのみであった。

これに反して茶臼山に陣を進めた家康は 20余万の大軍を動員して鉄壁の包囲体勢を布いた。(…と、ここまで戦の映像を背景にテロップ)

大阪城を前にした徳川家康(二代目中村鴈治郎)は、この城は難攻不落、兵糧攻めか、堀を埋めて平地にするかだ…と思案しながら、伊賀者の武部与藤次(須賀不二男)を呼び寄せると、手だれの者3名を潜り込ませろ。淀殿の恐怖心をじわじわと高めるのだと命じると、守っていたのは、幸村の倅だったな?と確認する。

その頃、大阪城にいた淀君(月宮於登女)は、千姫(田村和)の祖父は人間の皮をかぶった鬼じゃと、ヒステリックに叫んでいた。

霧隠才蔵(市川雷蔵)は真田幸村(若山富三郎)に、自分が敵を引き受けるので、即刻身を引くように勧めていた。

家康軍が攻め込んで来た蔵の中に現れた才蔵は、霧の粉を撒き、豊臣の腰元、茜(磯村みどり)を助ける。

真っ白になった部屋の中から、茜が呼びかける、霧隠様〜!と言う声が響く。

タイトル

日ならずして和議は成立し 大阪は平和を取り戻した。

越えて元和元年 新春

紀州 高野山

突如飛んで来た槍を避けた才蔵は、敵の影に気づくと、その忍者の片腕を斬り落とす。

真田屋敷に戻って来た才蔵は、隠し階段で地下に降りると、城の堀の埋め立てが始まり、外堀ばかりではなく内堀まで埋められたと幸村に報告する。

幸村は、和睦のための戦さだったのだが、淀君の意見により籠城策を取ったのだと明かす。

しかし、才蔵は、家康の軍門に下るのはもってのほかと徹底抗戦を進言する。

その後、幸村は、真田紐の行商人に化け、全国から戻って来た仲間の忍者たちから諸国の様子を聞くが、家康に歯向かうような気運はどこにも見当たらず、駿府に潜入した猫八は、平穏そのものと報告する。

幸村は息子の大助(小林勝彦)に、島津殿に急使を立てる。明後日、薩摩に経てと命じる。

その真田屋敷の間近に忍び込んでいた与藤次だったが、手裏剣が飛んで来たので逃げ去る。

味方に混じっていた彦八が短筒を所有していたことが分かり、実は家康側に通じた逆間者だったと大助は幸村に報告する。

幸村は、堀の埋め立てには半月、20日もかかるまいと発言した才蔵に、駿府に出向いてくれと命じる。

しかし、その話は、床下に再び忍び込んでいた与藤次が聞き、家康に報告する。

家康は、霧隠を見つけ出すのだと与藤次に命じる。

木こりに化け、駿府に潜入した才蔵だったが、足下に転がって来た子供のマリを巧妙に避けた足さばきに気づいた浪人に化けた忍者下柘植の七郎(守田学)がいた。

七郎は、才蔵の後を尾行するが、遊郭の辺りで見失ってしまう。

遊郭の二階の一室に上がり身を隠した才蔵だったが、そこで出会った遊女が、あの時、城で助けた茜だと知ると驚く。

茜は、自分の布団の中に才蔵を招き入れ、客のように抱くと、ふすまを開けて中をのぞいた七郎の目をくらます。

どうして遊女に?

七郎が去ると、才蔵は茜に聞くが、それを聞いてどうします?今を昔に変えられますか?伊賀流の忍法で戻せますか?一月前、茜は死にましたと、茜は自分の不幸を淡々と打ち明けと、笑って部屋を出て行くのだった。

与藤次は、才蔵を見失って戻って来た七郎に、良うおめおめと帰ったなと叱りつける。

その時、来客の物音がしたので、与藤次は隠し扉を開け、七郎をそこから出させると、鎖がまを投げ与え、許したのではない。もう1度機会を与えたのだと告げる。

その直後、与藤次の部屋に来たのは、別の間者で、大阪が騒がしくなって来た。内堀を復元させているし、浪人ものを集めていると報告する。

それを入浴中の家康に、豊臣方は米の買い上げを強行していているし、鉄砲弾薬の類いも買い集めていると本多忠勝(水原浩一)が伝えると、家康は、しておけと答え、幸村の同行から目を離すなと命じ、オランダに注文した新式の鉄砲はどうした?と聞く。

忠勝は、明日着きますと報告する。

才蔵は、翌日、駿府城に向かっていた荷車の列を木の上で待ち受け、荷車の上に飛び移ると、その荷物の中味が鉄砲であることを確認し、再び木に飛び移る。

茜に又会いに来た才蔵だったが、茜は、あの時、霧の中で押し倒され、覚えているのはそこまで…、気がつくと、裸同然で転がされ、7、8人の侍がにやにや笑いながら立っていた…と、大阪城でのことを打ち明ける。

それを聞いた才蔵は、俺のせいだ…と悔み、この金を受け取ってくれ。この世界から浮かび上がってくれ。御主は自分を責めさいなむことで忘れようとしているのだと言い聞かすと、茜は、時々で良いから来て!と才蔵にすがりついて来る。

窓を開けた才蔵は、外で琵琶を弾いていた法師姿の筧十蔵(伊達三郎)に、おひねりに見せかけた密書を投げ与える。

才蔵からの連絡を受け取った真田幸村は、豊臣方が大砲を集めているのに動きがない。2、30万の兵を動かす家康殿は待っているのだ。口実が整うのをと判断する。

そこに来た穴山小助(木村玄)に、秀頼公よりのご返書では、無防備こそ最大の防御とすると言うわしの考えはもってのほか、卑怯者の言い訳なそうじゃ。家康公は齢74才、言うままに従うのが情宜なのだが、淀殿は豊臣家の面目ばかり考え、秀頼公の前途を閉ざすことに気づかれんのじゃと幸村は嘆いてみせる。

茜は、遊郭の部屋から、又、才蔵がやって来たのを見つけていた。

その才蔵は、その場にいたコ○キに金を与えているように見えたが、そのコジキも間者で、伝言を渡していたのだった。

遊郭の前に来た才蔵は、二階から茜が落としたユリの花に気づくが、追っ手がいることにも気づき近くの林の中に逃げ込む。

火焔手裏剣が飛んで来て、才蔵は与藤次の一派相手に戦い始める。

才蔵の足に縄が絡み付くが、才蔵は毒の粉を撒かれ、与藤次に斬り掛かられるが、いつの間にか姿を消していた。

その後、才蔵の知りあいと知られた茜は、与藤次たちに捕まり、吊り下げられると、女には命より大切なものがあるはず…と言う与藤次は、七郎に、この女の顔をやれと強い酸を渡す。

七郎が茜の顔に酸を近づけた時、才蔵が出現し、酸は持っていた七郎自身に降り掛かってしまう。

茜を助け出した才蔵は、山小屋に匿うのだった。

ある日、与藤次は家康に、真田幸村が、世話になった者に書き置きを残し姿をくらましたと報告する。

それを聞いた家康は、幸村を大阪に入れてはならぬと命じる。

山小屋に、穴山小助、筧十蔵らが集まった中、才蔵は、もはや家康を殺すしかないと言うのだな?と話し合っていた。

我々には豊臣も徳川もない。家康を殺しても、又、豊臣の世に戻すだけの恐れもあると反論も出るが、才蔵は、秀頼にその力はないと答えるが、尋常の手段では、とても家康に近づくことは出来なかった。

乾左平次(中村豊)は、寂滅と言う50人は殺せると言う強力な毒薬を出してみせる。

そこに、茜が酒を持って来る。

左平次は、俺が失敗しても、穴山、筧、霧隠がいると後を託す。

十蔵は、こんな山中に、女1人では…と、茜の身を案じるので、この駿府から脱出することだと才蔵は決意する。

そんな山小屋に、顔反面にやけどの痕も生々しい七郎が近づいて来る。

その気配に気づいた才蔵は灯明を消す。

次の瞬間、山小屋は大爆発を起こす。

左平次は駿府城の屋根裏に忍び込んでいた。

それに気づいた与藤次が、下から槍を突いて来る。

足を貫かれた左平次だったが、槍が引き抜かれるまでに、槍の切っ先に付いた自分の血を拭き取る。

家康は、蒸気風呂に入っていたが、くせ者が忍んだ気配があると報告に来たた左平次に、もう良いと言って下がらせていた。

その浴室の上までたどり着いた左平次は、天井に穴を開け、下の様子を覗こうとするが、湯気が充満しており、家康の姿がよく見えない。

その内、足の怪我から滴った血が、家康の身体に落ちてしまったので、家康は騒ぎ出し、逃げようとした左平次は、屋根裏に仕掛けられていた鉄柵が降りて来て閉じ込められてしまう。

もはや逃げられぬと悟った左平次は、自らの首をくないで突いて自害する。

その後も、堀の上に張った綱を渡って城に潜入しようとした忍者も銃撃され死ぬ。

その死体は才蔵らによって回収され、埋葬されるが、花を添え手を合わせる茜や才蔵と同席した十蔵は、花まで供えてもらうとは幸せな奴だと呟く。

その後、駿府城に挑んだのは才蔵だった。

石垣を登り、天井裏に忍び込んだ才蔵は、家康の部屋の上からしびれ薬の煙を出し、家康を倒すと下に降り、家康を斬ろうとする。

すると、その家康は、自分は影武者なので命だけは助けてくれと土下座して来たではないか。

家康はどこだ?と聞くと、寝所に隠れていると言うので案内させると、果たしてそこにもう1人の家康がいたので、槍で突き殺すが、その瞬間、襖から槍が飛び出して来る。

才蔵は、畳返しでそれを防ぐが、床下からも槍が突き出て来る。

その床下から与藤次 が姿を現し、影武者と名乗り案内させた家康が、殺すな、生け捕りにしろと命じる。

才蔵は、今突き殺した方が影武者で、最初の家康こそ本物だったことを悟る。

才蔵はあえなく捉えられ、城内の地下牢に入れられる。

そんな才蔵を地上から覗き込んだ与藤次は、幸村のために死ぬつもりか?と嘲って来るが、忍者は人のためには死なぬ。いつも1人だ。今吐いたつばは、御主自身に返って来る。信長は真っ向から忍者を滅ぼそうとした。秀吉は忍者を皆殺しにした、家康は、天下を握る道具として忍者を使った。それがお前だと才蔵は答える。

そんな与藤次が、捕まえて来た茜を上から見せると、へらへらと笑っているその茜の異変に気づいた才蔵は、しびれ薬を飲ませたな?と気色ばむ。

与藤次は、何でも喋る。隠れ家はどこだ!と茜に聞く。

やがて、穴山小助も捕まり、才蔵の隣の地下牢に入れられが、石の壁を叩く音で才蔵に通信して来て、筧が助けに来ると言う。

茜が吐いた生駒山の山伏後やはもぬけの殻だったと、与藤次が家康に報告する。

どうやら、筧十蔵は逃げ延びたらしかった。

家康は、忍者の誓いを知らんのか?忍者は捕まったら即刻死を選ぶと言う。才蔵と穴山が死を選ばんのは、助かる算段があるのじゃと与藤次に言う。

後日、才蔵は、穴の上から与藤次が綱を投げ下ろし、この綱を登って来い。目の保養をさせてやる。御主は筧が来るのを待っているのではないか?と呼びかけられたので、言われた通り、綱を登って、入口から外を覗いてみると、そこには、磔にされた筧の死骸が見えた。

次の瞬間、才蔵は与藤次に蹴落とされたので、いつものように、石を使って、隣の穴山に連絡を取ろうとするが、いつまで待っても返事はなかった。

穴山小助は、すでに自らの舌を噛み切って自害していたのだった。

4月12日、ご婚儀の件で名古屋から急使が来たと知らされた家康は、義直がこんなに役立つとは思わなかったと喜ぶと、祝いの品々を名古屋より東の大名に伝え、4月10日までにオランダ、イギリスから買い付けたやつを準備万端整えさせろと命じる一方、霧隠のことを聞く。

すると、今日で10日、食物を絶っていると言うので、与藤次を呼ぶ。

才蔵が入っている地下牢の上に来た与藤次は、浅野様のお姫様のお輿入れを祝って饅頭をくれてやると言いながら中を覗き込むが、穴の下から答えはなく、倒れたままの才蔵が見えたので、死んだ!と驚く。

緒方様の指示を仰いで来いと部下に命じた与藤次だったが、才蔵の身体は、穴山小助、筧十蔵らの死体と共に墓に埋葬されることになる。

その墓に連れて来られた茜に対し、与藤次は、この3人を殺したのはお前だ。線香の1本でも立ててやるのだなと言い残して去って行く。

自責の念に捉えられた茜が、自らの簪で自害しようとした時、急に才蔵を埋めていた土が盛り上がると、中から才蔵が出て来たので、茜は驚く。

才蔵は何事もなかったかのように、秘伝心気の術じゃ。半日の間、呼吸を止めて耐えることが出来ると教えると、茜殿、国に帰って幸せを掴むのじゃ。私に待っているのは血なまぐさい戦場だけだと言い聞かす。

しかし、茜は、茜の幸せは霧隠様のお側にいることなんですと言って抱きついて来る。

才蔵はそれを無視して立ち去ろうとするが、茜は執拗に追って来る。

そんな2人の動静を、隠れて見張っていたのは与藤次たちだった。

才蔵は、山の中を付いて来て怪我をした茜の足を縛ってやりながらも、申し訳ないと思うなら付いて来るなと叱るが、茜は、同じ道を歩いているだけですと言って聞かなかった。

その才蔵の動きを家康に報告した七郎は、首を斬らず、成功しただろうが…と、自ら、才蔵を泳がせたことを自画自賛すると、行き先は幸村だと断ずる。

名張の山中 夜

私はそなたを好きになってはいけない。闇に中に生まれ、闇の最中に死んで行く。定まった相手に心を許してはいかぬと言う掟があると才蔵は茜に告げていた。

翌朝、近くに咲いていたユリの花を摘んで来てやった才蔵は、それを茜に渡しながら、水も飲ませてやる。

その水には眠り薬が入っていたので、茜はすぐに眠ってしまい、才蔵は、その胸もとにユリの花を置くと、目が覚めたら新しい道を行くんだと言い残し、そっと立ち去るのだった。

才蔵が入っていた屋敷には、与藤次たちの一派も近づく。

障子越しに、才蔵が幸村らしき人影と話しているのが見えたので、与藤次は庭先からその人影を撃ち、倒れたのを確認すると立ち去って行く。

しかし、撃たれたのは幸村の影武者だった。

幸村は、身替わりになった男を懇ろに弔ってやれと命じる。

与藤次は家康に、幸村を殺して来たと報告する。

家康は、今豊臣方を攻める大義名分はある。堀を埋め、浪人を集めるなど、和議の制約を破ったのは、徳川への挑戦であると言い出す。

元和元年4月29日 大阪夏の陣おこる。

豊臣方の劣勢は覆うべきもなく落城のときは刻々と迫っていた。(…とテロップ)

大阪城内で戦っていた幸村は、才蔵に、お前は、家康の動静を知るために雇っただけだ。城を脱出いたせと命じていた。

しかし才蔵は、忍者たる者、いついかなるときでも人の心を持ってはいけないと言われて来たが、私は遂に獣になりきることは出来なかった。私は一人間としてお供をしますと幸村に嘆願する。

その頃、幸村が生存している事を知った家康が、死体の確認をしなかった与藤次を叱りつけ、幸村の首を持って来るんだ!と命じていた。

そのあまりの言いように、関ヶ原のときはあれほど重用されたではないかと与藤次は抗議するが、その言葉がますます家康の逆鱗に触れる。

戦の中、よろよろと進む女がいた。茜だった。

後藤基嗣も討ち死に、大阪城の天守閣では、秀頼が淀君に、お覚悟のほどを…と言い聞かせていた。

しかし淀君は、生きるすべはあるのじゃ。そなたの命乞いのために、千姫を家康の陣に送り込んだのじゃと言い、その内、砲声が途絶えたので、淀君は、承知したのじゃと喜ぶが、煤に又砲声が轟き始める。

大阪城内に忍び込んだ与藤次は、真田幸村に飛びかかるが、それを才蔵が防ぐ。

追いつめられた与藤次は、自ら爆薬で自害する。

天守閣が燃え始め、秀頼と淀君は、互いに、和子(わこ)!母上!と呼び合うが、やがて両名とも息絶える。

幸村は落城間近な城の中で、才蔵に逃げろと再度命じていた。

しかし、才蔵は、行きません!死んではなりません。戦とは、最期に勝つことです。討ち死にはいたしません。一介の忍者でさえ、7回生まれても家康を討とうと言うのに…、どうして石にかじり付いても再起を図ろうとはお考えになりません?西海には、薩摩、琉球、蕪村などがありますと幸村を必死に説得する。

その頃、戦場の中で茜は死んでいた。

その手には、ユリの花が握りしめられていた。

才蔵は、幸村、大助親子を城の抜け穴に案内する。

敵が気づいて後に続こうとした時には、入口付近が落盤し、穴を塞いでしまう。

5月8日 大阪城は落ちた。

幸村の死体は、どこからも発見されなかった。

同じくその日、安治川河口から、半蔵が曳く小舟が何処ともなく去って行くのを知る者はなかった。


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