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忍びの者 伊賀屋敷

市川雷蔵主演の人気シリーズ第6弾。

オリジナル脚本で、由井正雪の慶安の変に霧隠才蔵が関わっていたと言う奇想を描いている。

シリーズもさすがにこの頃になるとマンネリ気味で、歴史の重大事に忍者が関わっていたと言う初期のアイデアのバリエーションを繰り返しているだけと言った印象が強く、特に斬新な発想はないのだが、今回は、霧隠才蔵とその子供の二代を同じ市川雷蔵が演じ、無理矢理、慶安の変に有名忍者をからませた感がないではない。

それでも、敵忍者には意外なキャスティングが配されており、謎のくノ一と甲賀幻心斎を演じている殿山泰司は珍しい。

三文役者こと殿山泰司がアクションをやっているとは想像もしていなかった。(もちろん、アクションシーンは吹替えだが)

くノ一の方も意外性があり、こちらはこちらで、まさかこの女優さんがアクションをやるとは!と驚かされるキャスティングである。

悪役のイメージが強い今井健二が、好人物風の丸橋忠弥を演じているのも意外な感じがする。

慶安の変自体の結末は分かっているので、それにどう意外性を盛り込むかが見せ所なのだろうが、このオチはまずまずと言った所か?

とは言え、さすがにこの辺の時代背景は今の時代に馴染みが薄く、冒頭からテロップで長々と説明されても良く理解できないような部分が多いため、時代劇の基礎知識に疎い人には、何が何だか分からない展開ではないかと案じたくなる。

ちなみに由井正雪は良く忍者ものに登場しており、山田風太郎の忍法帖シリーズや少年マンガ「伊賀の影丸」などでもお馴染みである。

雨の中、城の屋根の上での決闘や、見世物小屋の中での戦い等はなかなか見応えがある。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、大映、直居欽哉+服部佳脚本、森一生監督作品。

寛永14年。

関ヶ原以来の豊臣の残党は、島原の乱に多数参加し、死力を尽くして戦ったが、衆寡敵せず、ついに壊滅した。勝ち誇った徳川軍は、そう大正松平伊豆守信綱を先頭に、意気揚々、江戸に向かって凱旋したー

だがここに、あくまでも徳川を仇敵と狙う最期の1人がいた(…と、映像にオーバーラップするテロップ)

幼い才助と小百合を前に、霧隠才蔵(市川雷蔵)は、これから伊豆守を倒しに向かうと告げていた。

さらに才蔵は、この小百合は、お前の妹として育てて来たが、実は、真田幸村公が大阪城に出発のおり、わしに授けられた百合姫様じゃ。今後大切にお守りするのじゃと才助に教えると、我家に伝わる諸刃の剣を取り出して見せると、良いか、才助、忍者の心の上に起きたる刃は諸刃であらねばならん。優れた忍者とは、形に現れたるもの、言葉で語られたるものだけを信じてはならん。真がいずれにあるのか、全智を賭けて探るのじゃ。これを父と思って大切にいたせと言い残して手渡す。

その後、才蔵は、伊豆守目がけて鉄砲を発射、伊豆守(山形勲)が肩に傷を受け落馬すると、才蔵は行軍目がけて、単身攻め込んで行き、銃で撃たれると、自ら腹かっ捌き、銃弾に倒れるのだった。

慶長3年ー

島原の乱より10余年、天下は平定し、徳川封建の礎は万代不易となったかのごとく見えた。だが、柳営3代、静謐の天下は一門親族の確執、上下相克と根絶栓が為、切腹、家名断絶、領地没収等峻烈非情な政策の上に築かれたものであった。

一門の岡崎三郎信康を始め、大名小名の取り潰しは、総高732万8530余石に上った。その結果、陋巻にさ迷う浪人の数は凡そ20万に達し、彼らは生計の道を絶たれ、焦燥絶望の果て、錆び槍を枕に泰平の夜を恨み、鬱積した不満は不気味な暗雲となって天下にたれ込めていたー(…と、映像にオーバーラップするテロップ)

川に浮かぶ屋形舟の中で、江戸城の絵図面を広げ、その防備について説明していたのは丸橋忠弥(今井健二)、相手は金井半兵衛(伊達三郎)であった。

そんな室内に、矢が撃ち込まれる。

外に出た丸橋は、忍びの者らしき一団と竹林で戦うが、その時、突如出現し、周囲に霧を撒いて丸橋を救った1人の忍者があった。

無事危機を脱した丸橋は感謝するが、その忍者は名乗らず、甲が忍者にくれぐれも御用心をと言い残して去って行く。

見世物小屋の楽屋に、芸人として身を隠していた甲賀幻心斎(殿山泰司)は、最近、仲間を襲って来ている謎の忍者は伊賀者であることは確かだと仲間たちに話していた。

これだけの伊賀者と言えば、14年前、島原の乱で死んだ霧隠才蔵くらいしか考えられないと言う。

そんな中、頭巾で顔を隠したお蘭は、丸橋に近づいたとすると相手の目的は由井正雪。正雪の屋敷を見張れと幻心斎に命じる。

正雪の道場では、丸橋がたんぽ槍を使い、次々に弟子たちを打ち負かしており、もう相手はいないのか?と呼びかけていた。

そこに立った男は、私で15人目ですが、少しお休みなられた方が…と忠告するが、丸橋は聞かず、その男に槍を突きつけて来る。

ところがその男はあっさり槍を交わしたので、丸橋は見事!と感心するが、すでに丸橋様の宝蔵院流槍術は観ておりますとその男は答える。

それを聞いた丸橋は、過日、自分を救ってくれた忍者と気づき、これはご無礼!飛んだ恥をかく所だったと笑う。

正雪(鈴木瑞穂)に対面した才助改め二代目霧隠才蔵(市川雷蔵)は、父は七たび生まれても徳川を討てと言っていたと伝える。

しかし、正雪は、自分は文学者であり、どちらにもつかんと答える。

才蔵は、伊豆守一人討ったとて、父の恨みは晴らせません。理想を貫くには成算を持って事を起こさねばなりません。

例え、金井半兵衛殿、加藤六郎右衛門殿、丸橋忠弥殿らが京で騒いでも何事が起きましょうや?南海にて…と才蔵が話している途中、正雪は、しばらく!と言葉を遮る。

半蔵は、懐から出した毒薬を湯のみの茶に混ぜ、座敷内の柱から床下に流すと、その下に潜んで聞いていた甲賀忍者の耳に流れ込む。

甲賀忍者は苦しみ、床下から外へ逃げようとするが、その背中に才蔵の手裏剣が突き刺さる。

倒れた忍者を観た正雪は、松平の犬め…と吐き捨てる。

松平伊豆守の屋敷に小者として入り込んだ才蔵が、ある日、庭内の井戸等調べていた時、誰じゃ?と誰何されたので、新参の小者ですと断ると、その顔を見た相手は、才助!そなたは伊賀の才助ではありませんかと言うではないか。

才助こと才蔵が、相手の顔を良く観ると、それは幼少の頃別れた百合姫(八千草薫)だった。

姫の行方を探しておりましたと才蔵も答えるが、長話は危険と感じ、今宵参りますと伝えてその場を立ち去ろうとする。

ところが、そんな才蔵を呼び止めたのは松平伊豆守本人だった。

新参者と知り、肩を揉めるか?揉んでくれと言い出したので、仕方なく才蔵は、縁側で伊豆守の肩を揉み始める。

才蔵が、水戸藩にお仕えしておりましたと答えると、囲碁が強い御仁がいたな…などと伊豆守が探りを入れて来たので、坂口玄武様でしょうかと才蔵はあっさり答える。

それでも伊豆守は、自分には左肩に古傷があり、それは14年前に受けたのもだが、何事によらず根絶するのは難しいことじゃと伊豆守は意味ありげには話しかけて来る。

その時、百合姫が奏でていると思しき琴の音が聞こえると、才蔵の手に乱れが出たのを伊豆守は見逃さなかった。

その夜、自室にいた百合姫に天井裏から才蔵が声をかける。

あなたは忍者になってんですね…と問いかける姫に対し、猟から帰ったら、姫は役人に連れて行かれた後でした。姫の安否を知るには忍者になるしかないと思い、山にこもって修行しました才蔵は答える。

百合姫は、役人に連れて行かれて以来、ずっと伊豆守に育てられたのだと言う。

その時、その伊豆守が近づいて来て、良い月だ。庭に出てみぬか?と声をかけて来たので、才蔵も庭に降り、2人の様子を物陰から監視する。

伊豆守は百合姫に、そろそろ徳川臣下に嫁いでみたらどうか?もう誰もそなたを、真田幸村の忘れ形見等と思う者はおるまいと勧める。

その後、才蔵は、森の中の夜道を葛篭を担いで歩いていた金井半兵衛一行を付けねらっていた甲賀忍者を倒し、甲賀忍者は自分が引き受けるので別の道を行くように勧める。

そんな才蔵に、幻心斎ら甲賀忍者が攻撃を仕掛けて来る。

甲賀忍者は、火手裏剣を投げて来るので、才蔵も手裏剣で対抗する。

甲賀忍者の中に混じっていたくノ一お蘭は、毒のついた含み針を吹き付けて来るが、才蔵に刺さったと思われたものの、変わり身の術で死んでいたのは仲間だった。

結局、才蔵は、甲賀忍者たちをまいて逃げ切る。

正雪の道場に葛篭を運び入れた金井らは、その中の鉄砲を正雪に披露していた。

一方、松平伊豆守は、書庫で「紀州藩 総改帳」なる書類を読んでいたが、その書類を頂こうと言いながらそこに現れたのは才蔵だった。

才蔵は、あっさりその書類を奪いとるが、それを売る相手は紀州か正雪か?と伊豆守が聞き、答えず去ろうとする才蔵に、待て!才蔵!誰に頼まれた?と呼びかけて来たのでと、もう、お肩もみなら辞退します。俺は誰からも指図は受けん。伊豆守様、お命は暫時、お預けいたそうと言い残して姿を消す。

その直後、書庫の壁にかかっていた仮面の裏から、何故、書類をむざむざとお渡しになったのです?と女の声が聞こえて来る。

伊豆守は、お蘭、さっそく伊豆へ迎えと命じる。

紀州

馬に乗って狩りに出かけていた大納言こと徳川頼宣(北龍二)は、突如、進路を塞ぐ爆発や、材木の滑落等に道を阻まれ、とうとう、牧野兵庫(香川良介)と2人だけで人気のない場所に誘導されてしまう。

そこに現れた才蔵は、全国にいる20万の浪人に成り代わり大納言様にお聞き届けいただきたいことがあり、かような真似をしたと詫びると、由井正雪が大納言様に会いたがっていると言いながら、伊豆守から奪って来た書類を差し出してみせる。

そこには、紀州藩の内情が正確に記してあったので、頼宣は驚くと共に、得難い土産をもたらした才蔵に感謝し、正雪に会うと約束する。

由井正雪に会った頼宣は、江戸城攻めのことを聞いて来るが、お味方は?と正雪が聞くと、紀州65万石の加勢を付けようと答える。

しかし正雪は、今の徳川政権は、一国では動かしがたい。全国の浪人を集め、京都、大阪、駿府に集結させるのですなどと計画を打ち明けるが、そんな会話を城の屋根裏に忍び込んでいた甲賀幻心斎が聞いていた。

それを発見した才蔵は、手裏剣を投げつけ、雨の降る屋根裏にまで追いつめると、壮絶な戦いを始める。

そんな騒ぎも他所に、正雪は3000人の浪人が動かしうるので、お墨付きと1万両が入用と条件を提示する。

しかし、それを聞き終えた頼宣は、疲れた…、そちの話が面白過ぎて、身が入り過ぎたかの?と答えるのみであった。

控え室に戻って来た正雪は、随行して来た金井半兵衛から、先生、首尾は?と聞かれるが、何も答えなかった。

慶長4年2月 将軍家光病重し(…とテロップ)

御世継ぎ竹千代はまだ11才であり、伊豆守ら重臣たちは城内で善後策を話し合っていた。

浪人問題、紀州様のこと等、重臣たちは頭を抱えていたが、その時茶坊主が、上様ご臨終の知らせを知らせに来る。

重臣たちは動揺するが、それを押しとどめた伊豆守は、上様ご臨終の発表はしばらく控えた方が得策と提案する。

しかし、才蔵は、上様ご臨終、奇襲様ご謀反と書かれた貼紙を市中に貼りまくっていた。

由井正雪は、道場に集結した弟子たちから、決断を迫られていた。

しかし、正雪は、紀州こそ、戦略上きわめて重要と答えるだけだった。

一方、市中に貼られた貼紙を見せられた伊豆守は、見覚えのある字だと気づき、やらせるだけやらせておけと放置する。

才蔵は、頼宣の寝所にまで忍び込み、御上は御他界でございます。

家綱公は11才、正雪と浪人は準備が整っている。なにとぞご決断を!と迫る。

翌日、書状に判だけ押した頼宣は、それを牧野兵庫に託すと、与は筆は取らん。何を書いても構わん。その代わり、そなたの命をもらうぞ。軍資金もそちの采配に任す。戦いは3分の2までやってみないと分からん。これは謀反ではない。身を守るための戦いじゃと伝える。

全てを一任された牧野兵庫は、その何も書かれていない書状と、1万両の軍資金を金井半兵衛に渡し、いかように書き込まれても構わん。全て、大納言様の一存であると伝える。

その頃、甲賀幻心斎は、家来たちの失策を叱りつけていたが、その場に現れたお蘭は、今回の失敗は皆そちの無策のせいだと攻める。

そんなお蘭に、なぜ霧隠と対決なさらん?と皮肉を言うが、お蘭は出過ぎ者め!と叱りつけて去って行く。

正雪は弟子たちを集め、金井半兵衛は大阪、加藤六郎右衛門は京、丸橋忠弥は江戸、自分は駿府の久能山に向かうと計画を説明していた。

そんな中、才蔵は、呼び出した百合姫を、亡き父親才蔵の遺髪を埋めた墓に案内していた。

そして、百合姫様は、伊豆守の養女を装って、一体どのような務めを命じられているのです?と聞くが、百合姫は、今、私が思い出すのは、そなたと暮らした伊賀の里のことですと言い出す。

(回想)幼い子供時代の才助と小百合が、川で遊んでいる様子

(回想あけ)伊賀の頃は楽しかった…。平和な時代でした。あのままでいたかった…と百合姫は当時を振り返りながらも、しかし、今、自分が父と仰がなければいけないのは伊豆守様だけです。私は、とにかく生きなければいけないと思っています。もう私たちは、それぞれの道を歩むしかありません。さようなら、才助…と言い残して去って行く。

それを見送った才蔵は、足下に含み針が落ちていることに気づく。

それを拾い上げ、近くの花に刺して見ると、たちまち花弁は毒で枯れてしまう。

正雪道場では、いよいよ決起間近と言うことで、加藤六郎右衛門(玉置一恵)が舞を舞うと言い出す。

金井半兵衛が歌い出し、槍を持って舞い出した加藤だったが、その最中、突如天井を刺し連ねる。

天井裏に潜んでいたお蘭は、槍を受けるが、とっさに刃先についた自分の血を拭き取る。

しかし、加藤は、逃げるお蘭を次々と刺して行き、廊下に降りたお蘭は、その場で取り押さえられてしまう。

覆面を剥ぐと、顔の反面には醜いやけどの痕があったが女と知れたので、化物めと罵倒される。

その頃、牧野兵庫は伊豆守を訪ねており、すでに全てを知られていたお墨付きや軍資金を正雪側に渡したことを、苦肉の策だと説明していた。

そんな牧野兵庫に伊豆守は、まだまだ油断ならんぞと言い聞かせていた。

いよいよ、由井正雪は、駿府の久能山に出立する。

才蔵は、家内らに誘われ、酒の席に参加するが、紀州の動きが鈍いと気にしていた。

丸橋が、先生はすでに駿府の久能山に立たれたと教えると、才蔵は、由井殿が江戸を離れるとは思わなかった…と意外そうな顔になる。

その時、奥の廊下で、松平の犬を攻めていると言うので様子を観に行くと、お蘭を痛めつけていた浪人たちが、舌を噛んで死んでしまったと狼狽していた。

それを観た才蔵は、死体は葬るな。俺が伊豆守に送り返すと言って遺体を譲り受ける。

駕篭に乗せ伊豆守の屋敷途中まで付いて来た才蔵は、そこで遺体を降ろさせると、駕篭を返し、自分でお蘭の遺体を人気のない場所へ引きずって行く。

そして、背中に活を入れると、口に紅を含み息を止めたのは見事だが、俺の目はごまかせんぞと言い、もう1つ種明かしをしなければならんと言いながら、お蘭の顔のやけどを引きはがすと、その下から現れた顔はきれいな百合姫だった。

才蔵は、やっぱり姫か…と呟くが、正体がばれたお蘭は、才助、そちも忍者。このお蘭を百合姫と思う情は無用。甲賀と伊賀の勝負はついた。この場で斬り捨ててくれと言い放つ。

姫は幾たびか私の命を狙った。真実才助が憎くてなされたことか?と才蔵が聞くと、例え百合はそなたを慕うておっても、お蘭は甲賀忍者じゃ。忍者に人を恋うることは許されぬ。そなたを刺した刃で我が身を果てようとも…と悲し気に答える。

それを聞いていた才蔵は、姫をそのような女に仕立てた伊豆守が憎い!姫の運命がおいたわしい。姫、覚えておられるか?今お手にある諸刃の剣は亡き父才蔵が形見として残されたものです。あの時、父上は言われた。忍者の心の上に置きたる刃は諸刃であらねばならぬ。諸刃が教える真の意味は、おのれを二分して人を欺くことにあらず、偽りを見抜き、正邪を見極め、生きることではないでしょうか?姫、生まれ変わって生き残るのです。江戸を去って女としての幸せを掴むのです。真の百合姫様はいつまでも大助の心の中で生きています。姫、ご壮健で…と言い残して去って行く。

その時、暗闇から現れた甲賀幻心斎は、お蘭、忍者の掟は覚えておろうな?と近づいて来る。

その方の指図は受けん!と顔を背けたお蘭だったが、仲間の甲賀忍者たちに囲まれてしまう。

才蔵が現れたときからずっとつけておったのじゃと幻心斎はあざ笑う。

その後、幻心斎は、書斎にいた伊豆守に報告するが、それを聞いた伊豆守は、恋をした忍者は使い物にならん。今後はそちに指揮を任せようと命じる。

感謝した幻心斎は、お蘭の処置を尋ねるが、巧く使え。才蔵をおびき出し捕まえる唯一の手段だと伊豆守は答える。

慶安4年7月

鉄砲等武器を手に入れた浪人たちは、由井正雪の道場に集結していた。

いよいよ決起の時を迎え、晴れがましく歩いていた才蔵の元に紙つぶてが投げ込まれる。

そこには、百合姫の命を救いたければ 南国猿若一座へ来たれ 決斗を期して待つ 甲賀幻心斎…と書かれていた。

さっそく、見世物小屋に向かった才蔵は、待ち伏せていた甲賀忍者たちと壮絶な戦いを始め、地下室に閉じ込められていた百合姫を発見する。

しかし、その側には幻心斎が刃を構えており、ひとたび、敵の手中に落ちたのものはこうなるのが甲賀の掟じゃと笑う。

百合姫に刃を突きつけられ、刀を捨てろ!と迫られた才蔵は、その言葉に従うしかなく、その後、伊豆守の屋敷の牢に入れられてしまう。

甲賀幻心斎は、百合姫を見せ物用の円盤に縛り付けると、回転させながら手裏剣を投げて来る。

最後の1本を投げようとした幻心斎だったが、百合姫が吹いた含み針が左目に刺さり、毒が回ってその場で死んでしまう。

百合姫は、隠し持っていた小刀で捕縛を切る。

その頃、才蔵の方は、伊豆守から、島原の乱を思い出す。親子二代に渡って立派な忍者だ。そなたの優れた忍法を惜しむ。与に仕えぬか?と話しかけられていた。

しかし才蔵は、俺は自分の栄達や立身出世のためにやっているのではないと拒否する。

それを聞いた伊豆守は、いくらわめいてもしきたりは破れまい。権力がどれほど人を支配できるか見せてやろう。紀州は兵を起こさんし、間もなく浪人たちは一網打尽じゃと教える。

江戸町奉行所から、多数の捕り手たちが出発していた。

正雪の道場では丸橋らが、江戸城の絵図面を前に最後の作戦を練っていた。

その時、捉えられていた才蔵の前に、忍び装束のお蘭こと百合姫が駆けつけて来る。

見張りを倒し、剣を渡した百合姫と共に、才蔵は伊豆守屋敷を脱出し、正雪の道場に向かう。

役人や捕り手が正雪の道場に乱入し、丸橋たちはとっさのことで防戦一方だったが、そこに駆けつけた才蔵は、どうして作戦が知れたか分からんと悔しがる丸橋に、犬の仕業だ、俺はその裏切り者に天誅を加えると言い残して去って行く。

その後、伊豆守の元にやって来た石谷将監(水原浩一)は、道場に集まっていた浪人120名、江戸市中にいた浪人350人を捕まえたと報告していた。

正雪はどうした?と聞く伊豆守に、旅先で切腹したとの報告があり、検死の結果間違いないそうだと言う。

その頃、伊豆守の書庫に身を潜めていた由井正雪は、人の気配に気づき、伊豆守と思ったのか、今後は立花右京と言う相模藩12万石の城主になりましょう。お墨付きと軍資金はお渡ししますと挨拶をする。

しかし、そこに姿を現したのは、霧隠才蔵だった。

大納言の印だけ押した書状等、牧野兵庫が勝手に押したものとすれば、何の意味もなさぬもの。所詮、兵庫もそなたも伊豆守の道具に使われただけだ。浪人たちを利用し、おのれの栄達を計るとは…。武士らしく腹を切れ!と才蔵は迫るが、正雪が刀で斬りかかって来たので、やむなく交わし、正雪の腹に刃を突き立てる。

倒れた正雪の身体から出た血が、頼宣の印が押された書状の上に広がって行く。

その後、江戸城内では、頼宣への謀反の疑いありとの詮議が行われていたが、頼宣は明言を避け、全ては牧野兵庫が計ったこと、本人も切腹、正雪も死んだと言うと答えたので、では家中から不埒ものを出した責めは?と追いつめられ。

その時、その場に座していた伊豆守が、紀州家にお疑いをかける等もってのほか。ここは災い転じて福となすと言う通り、目出たい落着でござると巧くまとめてしまう。

その時、畳に矢文が突き刺さったので、結わえてあった紙を開いた伊豆守は、そこに「才蔵」とだけ書かれてあるのを観る。

その後、才蔵と百合姫は海辺に来ていた。

私は恥ずかしく思いますと言う百合姫に対し、才蔵も、否、私こそ…と答え、伊豆守の策謀は忍者の策略以上であった。もはや、武力に代わって知略が政治を支える時代が来たのです。私はもっと心の修練を積まねばなりませんと付け加える。

伊豆守は恐ろしい人ですと百合姫も同意し、才助はこれからどうするのですか?と聞いて来たので、私は何かを求めてさまよう。それが一番ふさわしいと思いますと答えると、才助、私は…と言いかけた百合姫に向かい、姫、お幸せにと別れを告げると、砂浜を遠ざかって行くのだった。