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踊りたい夜

井上梅次監督お得意のミュージカル映画

3人娘を演じているのは、水谷良江、倍賞千恵子、鰐淵晴子と言った顔ぶれ。

一応、3人とも歌って踊れると言うことは知っていたが、レオタード姿やステージ衣装で本格的に歌ったり踊ったりする姿を見られるのは貴重。

鰐淵晴子に至っては、歌って踊る姿を観るのは、少女時代に主演した「ノンちゃん雲に乗る」以来のような気がする。

鰐淵晴子に関しては、少女時代からバレエをやっていたと言う知識くらいしかなく、この作品でも、本格的なバレリーナを目指すエピソードが中心になっている。

父親役の有島一郎のせいで一家が離散状態になり、4人は別々な人生を送ることになるが、娘たちはそれぞれステキな男性と出会うことによって又新たな希望を得、最後は目出たく一家が元の状態に戻ると言う展開になっている。

ストーリー面でも、大人の女遊びとか離婚と言ったおじさん臭いネタが使われていることもあるが、全体的にインドア風のセットシーンばかりで、スケール感のある爽快なシーンがほとんど登場して来ないのが残念と言えば残念。

次女ユリの夫、沖の運命も唐突過ぎると言えば唐突で、一家全員が揃って、これからショーを再開しようとする矢先、何故か1人だけ大阪に旅立って行くと言うのも奇妙な感じがする。

寓話風に、次女だけ幸せでは不平等なので、3人娘に平等に、男との運がない試練を与えた…と言うことなのだろうが、最後のエピソードだけは、いくら何でもわざとらし過ぎはしないか?

とは言え、吉田輝雄や佐田啓二、根上淳と言った二枚目俳優たちが、この手の音楽映画に出ていると言うのは珍しい。

吉田輝雄は吹き替えだと思うが、倍賞千恵子とのデュエットシーンまである。

主要な男性キャラが全員、姉妹たちからすると年上のおじ様風である所が、今の感覚と違う所かも知れない。

彼らの平均年齢が高いことが、この映画を「青春もの」と言うよりも「パトロンとショーガール」と言った、ちょっと大人向けに見せているように思えるが、それにしては話がやや単調である。

音楽映画だから特に複雑な話にする必要もないが、この映画に関しては、若者向けとも大人向けとも言いがたい中途半端な印象を受ける。

おそらく、当時40才くらいだったと思われる監督の年齢を考えると、こうした感覚になるのは致し方ない所か?

佐田啓二の考え方に妙に説得力があるのも、監督の本音が投影されているから…とも想像できる。

逆に、3姉妹の描写の方は、おじさん監督が考えた若い娘と言う幻想であるため、今ひとつ感情移入しにくいキャラになっているような気がしないでもない。

普通、3姉妹ものだったら、1人くらい、脳天気で何があってもめげない明るいキャラがいるはずなのだが、この3姉妹は、全員考え込むタイプのようで、からっとしたキャラがいないことに気づく。

そうしたキャラ設定も、この作品をやや湿っぽく感じさせてしまう一因のように思える。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、松竹、井上梅次原案+脚本+監督作品。

ネオンディスプレイの前で踊る3人姉妹、マリこと南真理子(水谷良江=二代目水谷八重子)、ユリこと南由利子(倍賞千恵子)、ミッチーこと南美智子(鰐淵晴子) を背景にタイトル

銀座の夜景

東京の夜は化粧する…

今や、ショーも外国から借りて来たものではなくなった。

キャバレー「ニューラテン」の前には「ピンクタイツ3人姉妹」と書かれたショーの看板

今では立派に食えるようになった。

これは、夜の花園に咲いたあるショー一家の話である…(とナレーション)

クラブのステージで歌って踊っている3姉妹の父親であるマネージャーは、南亀三(有島一郎)は元手品師だったが、最近、娘たちがショーで人気が出始めたので、裏方に廻りマネージングをやっていたが、若い女を囲うなど、娘たちを利用して好き勝手にやっていた。

「ニューラテン」の支配人は、勝手に手品を披露してみせる南に、惜しいね、あれだけ人気が出ているのに地方に持って行くなんて…と話しかける。

しかし、南は、しようがないよ、ギャラを2倍出すと言っているんだから…と答えるが、3月以降はこっちと契約してくれよ。ちょっと前は、ただでも使ってくれと言ってたじゃないかと支配人が頼むと、それは3年前の話だよと南は平然としていた。

そこに近づいて来た作曲家の沖一郎(吉田輝雄)に支配人は、今じゃ結構なご身分だ。金を女に入れあげていると南のことを当てこすって来たので、沖も、もっと3人のことを考えりゃ良いのに…と哀し気に顔をしかめる。

それでも、南は、人生は50からなどと言い、良い気なままだった。

そんな中、3姉妹のステージをテーブルから食い入るように観ていた常連客の山田(穂積隆信)は、ボーイを呼び寄せると、後でマリさんに来てもらってくれと頼む。

ショーの後、3姉妹が化粧を落としている楽屋に来た沖に、バンドマンたちが挨拶して行く。マリも、何かハッスルできる曲ない?等と沖に声をかけるが、その沖は、しばらく会えなくなるから、今夜食事でもしないか?と誘うが、マリは先約があるのでと断る。

ボーイがそんなマリを呼びに来たので、沖が、山田と言う人かな?と妹たちに聞くと、十字屋ホテルの息子さんなんですってと答え、2人を先に連れて行って下さらない?行けたら後から行くからと言い残して部屋を出て行く。

マリちゃん、東北行きのこと知らないの?と沖が聞くと、次女のユキが、父さん、直接話そうとしないで、私たちに言わせようとしているのよと困った表情で言う。

明日発つんだろう?と沖も心配しながらも、バー「ホワイトホース」でユキとミッチーと3人で夕食を取ることにする。

ミッチーは、自分がやりたいのは、亡くなった母が夢を叶えられなかったバレエを踊ることだと夢を語る。

ユリは、私は好きな人なんて出来ないわ。ダメなのよ、私…と消極的なことを言う。

その時、店のマスターに電話がかかって来て、マリが来れないと連絡して来る。

そこに、バンドマンや島津公仁夫(藤木孝)がやって来て、昔は音楽じゃ食えなかったけど夢があった。今は食えるようになったけど、夢がなくなった。自分たちでミュージカル集団を作って、やりたいことをやらないか?などと沖に提案して来る。

その頃、南は、若い愛人ユカ(国景子)のアパートに来ており、彼女からかねてよりせびられていた金を、家を抵当に入れて作って来たと言いながら、手品の要領で袖口から出そうとしていたが、そこから出て来たのは雑誌で、100万円お束がなくなったので慌てて探しまわる。

そうやくテーブルの下に落ちていた札束を見つけ安心するが、それを受け取ったユカは喜んだので、若い男なんかに色目を使うんじゃないよと南は注意するが、その部屋に無断で入って来た若い男ジョージ(松原浩二)に気づく。

何だ?お前は…と問いただした南に、肉屋ですなどとご用聞きを装ったジョージは、酒でも洗濯でも何でも良いんですが…としどろもどろになり、それをごまかそうと、床は自分の下着をジョージに持たせて帰させる。

ジョージは小声で、巧くやれよとユカに伝える。

その頃、目黒区の自宅に妹たちを送って来た沖は、家に入ろうとしたユリに話があると呼び止めたので、ミッチーは1人で自宅に入って行く。

自分の部屋に入り、母親の遺影にただいまを言ったミッチーは、トゥーシューズを持って、白鳥の湖のメロディーに乗せた歌を歌いながら、嫁の中で踊り出していた。

一方、近くの公園にやって来たユリは、僕、結婚したいんだと言い出した沖に、誰と?お姉さんとね、そうだと思ったわと少し寂し気に答える。

沖の方も不安そうで、マリさんは山田とか言う人と仲が良いんだろう?僕、今日プロポーズするつもりだったんだけど、ユリちゃんには何でも話せるから…と弁解がましく言うので、ユリも、私もよ…と答える。

そんなユリに、マリさんへのプロポーズ代わりにこれを渡してくれと楽譜を託すと、沖は帰って行く。

ユリは、1人になると、寂し気に歌い出す。

同じ頃、自宅の山田の運転する真っ赤なオープンカーで送ってもらったマリは、ダイヤの指輪と毛皮のショールをプレゼントしてもらったことに礼を言い、別れを告げると、女、女、女♬と、女に生まれて素晴らしいことを歌い上げる。

マリは、贅沢な暮らしをし、男にちやほやされる夢を観ていた。

そこに公園から戻って来たユリと、姐の歌声に驚いて自宅から出て来たミッチーが合流する。

翌朝、ガタゴト騒音で目覚めたマリは、ユリとミッチーが荷造りをしているのを観て驚く。

今日から、東北へ行くのだと初めて妹たちから聞かされたマリは、嫌よ私!と、リビングで人参ジュースを作っていた南に文句を言う。

そもそも、私たちが働いて稼いだお金を、みんなあの子につぎ込んだでしょう!良い年して、あんないかがわしい女なんかと付き合うなんて!私たちを食い物にして…、母さんも父さんのやり方で殺されたようなものよ!と日頃思っていたことを全部ぶちまけてしまう。

すると、南も親に向かって何てことを言うんだ!と怒り出し、今日限り、父でもない子でもないから出て行け!と怒鳴りつける。

マリは、ちょうど良かったわ。私、熱海で結婚するのといきなり発表すると、東京タクシーに電話をして、1台寄越してくれと頼む。

その父子喧嘩を聞いていたユリは、沖さんはどうするの?昨日プロポーズするつもりだったのよ。これ預かって来たわと言って楽譜を渡すが、あの人は地道に勉強して段々偉くなる人よ。私とはタイプが違うし、好きでも一緒になれない。そんなもんよ、世の中なんて…、と分かったように言うと、私は乗ってみる♬結婚と言う船に〜♩と歌いながら、簡単に出かける準備をすると、表にやって来たタクシーに乗り込んで出発してしまう。

行ってしまったわ…、どうするのよ?お姉さんがいないとダメよとユリとミッチーは、リビングにいた父親に訴えるが、南は、お父さんがいるから大丈夫だよと空威張りする。

その後、ピンクタイツシスターは、ユリとミッチーの2人でやることになるが、支配人は、色気ないね〜、あれじゃ、客も盛り上がらないよと南に愚痴る。

やがて、ピンクタイツは人気が下降し、場末のストリップ小屋で演じるほどになる。

そこの支配人は、あれじゃあダメだね。今はシックスがないと…と言うので、それを聞いた南はセックスでしょうと訂正する。

南は、ギャラが2倍になるんだよ。今の家が借金のカタに取られそうだから…と、支配人から耳打ちされたことを姉妹に伝えるが、それを聞いたミッキーは、嫌よ裸になるなんて!と拒否し、ユリも、私は裸でも何でもなるけど、ミッチーにそんなことやらせられないわと抗議する。

ミッキーが楽屋から逃げ出し、そこへ沖がやって来る。

沖は、話は聞いたよとユリに語りかけると、娘を裸にさせるなんて親の資格ありません、2人は私が預かりますと南に言う。

君は何の権利があってそんなことが言えるんだ?と南がいきり立つと、僕はユリさんにプロポーズします。それなら権利があるでしょう?といきなり言い出す。

泣きながら帰路についていたミッチーは、とある学校の前で足を止める。

そこには「新日本バレー団 主催 団孝 研究生募集」と大きな看板がかかっており、その横には「住み込みのお手伝いさん募集」の貼紙も見つめたので、その場で中に入ってみると、管理人の夫婦だけが応対に出て来る。

本当に団先生が指導して下さるんですか?と聞くと、玉置さんと下村さんが直接教えてもらっているよと言うので、ミッチーは、研究生になりたいと申し込み、同時に、住み込みのお手伝の両方をやりたいんですと頼む。

その頃、前に来た公園にやって来たユリは、一緒に付いて来た沖から、さっきはとっさにああ言ってしまったけど仕方なかったんだと詫びられ、姉さんはどうしているかしら?と心配する。

あの人の派手さに憧れていたんだが、会いはもっと静かで地味なものだと思うんだと沖は言い出す。

すると、ユリは歌い出し、そんなユリに、ユリさん!いつの間にか僕の心に忍び込んでいたのは君だったんだ!と告白し、ユリも、私も本当に好きだったのと答え、2人は一緒に「愛のメロディー」を歌い出す。

そして互いにキスをするのだった。

その頃、熱海の十字やホテルの一室で、沖からもらった楽譜の「愛のメロディー」を歌っていたのはマリだった。

そこにやって来た山田は、優しくマリに接して来るが、その時部屋に血相を変えて飛び込んで来たのは、山田の妻で、このホテルの娘だと言うつる子(松井康子)だった。

つる子は、呆然とするマリに、この人の夢はあなたを2号にすることよ。こんな男が良いんだったらくれてやるけど、このホテルの娘は私で、この人は養子なので財産なんて一銭もないわよと迫って来る。

愕然としたマリは、つる子が出て行った後、何とかその場をごまかそうと山田が近づいて来ても、もうプライドが寄せ付けなかった。

その頃、ユカのアパートに来ていた南は、ジョージと2人で帰宅して来たユカを観て驚くが、バレたユカの方は、この人は自分のボーイフレンドで、今やっている小さな店のバーテンをやってもらっていると言うので、逆上した南が、それは俺の金じゃないか!と抗議すると、店はもう自分の名義になっているし、この身体でもう半分くらいは返したつもり。あんたのようなしなびた爺さんが渡しのような若い女をものにするには金がかかるのよとユカは開き直るのだった。

一方、「新日本バレー団」に住み込みで入り込んだミッチーは、その日も、廊下のモップ掛けなどやっていたが、管理人のおばさんが、今日は団先生がみえる日だから、そんなことは止めて早く着替えなさいと声をかけてくれる。

足が悪いらしく杖をついてやって来た団孝(根上淳)は、踊りの練習をしていた生徒たちの様子をじっくり見て回っていたが、ミッチーの前に来ると、なってない!バレエは心で踊らなくては行けないのだが、君はテクニックだけで踊ろうとしている。初等科からやり直しなさい!ときつい言葉で叱りつける。

練習後、がっかりしたミッチーだったが、管理人のおばさんは、元気をお出し、先生は見込みのある子にしか叱らない人なんだからと慰めてくれる。

そこにやって来たのがマリで、お父さんはどうしたの?と聞くので、又、手品師に戻ったのと教えたミッチーは、山田さんはどうしたの?と逆に問いかける。

マリは、あの人とは別れて、今は関西を廻って来たのだけれど、ふとこっちが懐かしくなって…と、どさ回りをしているらしい事情を説明する。

ミッチーは、ユリちゃんが沖さんと結婚するらしいのと教え、驚くマリに、お姉様、沖さんに会いたいでしょうけど、会わないであげてねと忠告するのだった。

ユリはその頃、沖のアパートで彼の両親と会っていた。

父親の沖誠造(宇佐美淳也)は、自分の貿易会社、沖商会を息子に継いでもらいたいと言い、母親の時子(岡村文子)も、結婚したいなら1つ条件がある。ヤクザな今の商売を辞めて家を継いで欲しい。あなたも踊り子さんだったそうだけど、2度とお客さんの前で裸の足など見せないで欲しいと要求して来る。

それを聞いたユリは、あの人から音楽を取り上げることは出来ません。あの人には才能がありますと、不在の沖を弁護するが、時子は、あなたのために、私たちが不幸になっても良いの?とユリを責めるかのように迫る。

その時、沖が帰って来て、自分は会社を継がない。立派な弟がいるじゃないですかと両親を説得しようとするが、時子は、この人が入れ知恵をしているのねとユリを当てこすり、夫と共に帰って行く。

ユリは、自分のために沖と両親が巧く行かなくなるのはたまらないと言って泣き出してしまう。

そんなユリに、沖は、今日結婚式を挙げよう。今晩「ホワイトホース」に仲間たちも来るそうだから、そこで発表しようと優しく告げる。

ところが、「ホワイトホース」に来て見ると、マスターも客も誰もいないではないか。

拍子抜けした沖だったが、気を取り直して、2人きりの結婚式をやろうと言い出し、なぜか、その場に冷やしてあったシャンパンを抜いて、君は今日から僕の妻だと言いながら乾杯する。

ユリは感激して涙するが、その時、近くから「ウエディングマーチ」の演奏が聞こえて来る。

それは、隠れて待っていた島津たちバンドマンやマスターたちだった。

密かに自分たちで、君らの結婚を祝福しようとしていたら先を越されたと言うのだ。

仲間たちが集まっていて感激した沖は、日本のショービジネスのために、良い曲を作りたいと今後の抱負を語る。

そして、ユリも加えた全員で、ショーは楽しい♩と歌い始めるのだった。

にぎやかになった店内を覗き込む野次馬たちの中に、やって来たマリも混じっていたが、もはや沖やユリに会う雰囲気でもないことを悟ったのか、そのまま黙って帰ってしまう。

ミッチーはその後も、初等科で黙々と練習に励んでいたが、「新人公演会」の「ジゼル」の配役が発表されても、主役は友子と言う女性が選ばれ、ミッチーはコール・ド・バレエ(その他大勢)に名前が載っただけだった。

関門

マリはその後、九州のキャバレーにまで流れていたが、仕事中も泥酔してしまい、カウンターで寝ているのを支配人から起こされて、渋々歌い出すような有様だった。

以前、山田からチヤホヤされているとき晴れやかに歌っていた、女、女、女♩を歌い始めるが、すでにマリがイメージする男たちは、女の身体を利用するだけで去って行く浅ましい動物のイメージに変化していた。

男なんて、みんな、嘘つきじゃないか!とつい客に暴言を吐いたマリを、バンドでサックスを吹いていたバンマスが、支配人に詫びて楽屋まで連れて行く。

支配人は、昨日来たばかりのくせに、もう飲んだくれて…と、マリのだらしのなさに顔をしかめる。

楽屋に連れて来たバンマスは、君には、日本人離れした才能があるんだから、もっと自分を大事にしたまえと忠告してバンドに戻って行く。

マリは、楽屋の前を通りかかったボーイを呼び止め、今のバンマスは誰?と聞くと、女優の白銀圭子と結婚していた有名な津村忠雄(佐田啓二)と教えられる。

その頃、東洋テレビの局長と佃ディレクターと会っていた沖と島津は、今度、歌と踊りを紹介する番組に君たちを起用したいと言われ、目玉となる女性ダンサーがいないかと相談されていた。

島津はすぐに、沖の奥さんのユリちゃんはどうだろうと提案する。

ところが、そのユリは、自分のステージ衣装を古着屋で売っている所だった。

赤いドレスだけは思い出のためにとっておき、後は全部処分して帰宅すると、沖が帰って来て東洋テレビの新番組のことを伝える。

歌って踊る夜の女王になってみないか?と勧められたユリだったが、ステージ衣装を今処分して来た所だと打ち明け、今大事なのは、自分のことよりあなたの仕事だと答えたので、沖は感激する。

「ジゼル」の公演が終わった後、ミッチーは、誰もいなくなった舞台に1人戻ると、そこで練習を始める。

それを客席から近づいて観ていた団先生は、舞台に上がって来ると、杖でミッチーを殴りながら、バランスが安定してない!リラックスして心で踊るんだ!こんなことも出来ないのならバレエを辞めたまえと強く叱責する。

ミッチーは泣きながら、その指導に答えようとするのだった。

一方、九州のキャバレーにいたマリは、以前とは見違えるように、はつらつと歌と踊りを披露するようになっていた。

支配人も、マリさんはすっかり人が変わったと感心する。

店じまいの後、1人カウンター席に残って酒を飲んでいたマリは、帰りかけていた津村を呼び止めて、一緒に飲む。

あなたのお陰だわと感謝するマリに、君は日本では珍しいショータレントだと津村は褒める。

マリはそんな津村が、何故こんなじめじめとした所にいるのか?どうして奥様と別れたの?などと聞く。

津村は、愛していたからさ。君も人を愛するようになったら分かると答えるが、マリは、私、あなたが好きよ。一緒になって組んでやらない?それとも、私のこと、嫌い?と問いかける。

津村は、好きさと答えるが、でも、これ以上、近づかない方がお互いのために良いよと言い残して帰って行く。

東洋テレビでの収録日、島津たちはステージで元気一杯踊って歌っていた。

その生放送を自宅のテレビで観ていたユリだったが、そこに電話がかかって来て、「新日本バレエ団」の管理人小松から、ミッチーが倒れたと知らされる。

ベッドに寝かされていたミッチーは、杖を持った大勢の団先生からしごかれている悪夢を観ていた。

そこに、団が駆けつけて来るが、管理人に促されて寝室に来るとミッチーの姿がベッドにない。

驚いて探していると、練習室で踊っているではないか!

団は、大丈夫か!南君?と声をかけるが、踊り終え倒れかけたミッチーは、支えた団に、私、ダメでしょうか?とうわごとのように語りかけたので、管理人の小松は慌てて、妻のかねに水を持って来させる。

団は、素晴らしいよ。金持ち娘の道楽じゃないと褒め、ミッチーも喜ぶが、そこにユリがやって来る。

その頃、彼女らの父南は、どさ回りの末、九州のキャバレーに来ていた。

その楽屋にいたマリは、ユリからの、置屋島津たちが、「ニューラテン」を借りてショーをやろうとする計画があるので、姉さんも参加してくれないかと描かれた手紙を読んでいる所だった。

そんなマリに、支配人がやって来て、今、手品師が来てショーに使って欲しいと売り込んでいるのでテストをしてやって欲しいと頼むが、嫌よ、どうせどさ回りでしょう?と断る。

それを支配人から聞いた南は怒り出し、その歌い手とやらを連れて来いよ、どこの馬の骨か知らん奴にバカにされてたまるか!と怒声を張る。

その言葉を聞いてステージに出て来たマリだったが、それを見た南同様、互いに愕然とし、しっかと抱き合う。

クリスマス

マリは、父南の手品と一緒にショーを披露していた。

店じまいの後、そんなマリに津村が、良かったね、お父さんに会えて…と声をかけて来る。

マリは、私、東京に帰り、ショーに出るの、一緒に帰らない?と誘うが、津村はここに残る。君が好きだからさと言う。

僕等の世界では、一流になればなるほど私生活との両立ができない。白銀もそうだった。仕事と私生活の両立が出来ず、結局別れてしまった…と打ち明けた津村の言葉を聞いたマリは、寂しい商売ね、ショービジネスって…とため息をつく。

辛い仕事さ。人が働いている時、練習して、人が遊んでいる時仕事している…と津村も答えたので、お別れね…とマリは呟く。

うん、その方が、今の気持ちを守っていける。君はタレントととして今まで会ったことがないほどの人だ。成功を祈っている。僕もその内、東京へ行くさ…と言って、津村はマリと最後の乾杯をする。

待っているわ…、早くねと言いながら、帰る津村を見送って1人になったマリは、いつの間にか店の奥に集まっていた沖や島津たちに気づき、一緒に歌い踊り始める。

その幻想が終わった後、マリはしっかり前を観て歩いて店を出るのだった。

「新日本バレエ団」では、新しい公演「白鳥の湖」のオデット役に南美智子が決まったので、他の生徒たちは驚きと共に、嫉妬から悪口を言い始める。

おかしいわ。お手伝いさんのオデットなんて…、先生、南さん、好きなんでしょう。ナイトクラブで踊っていたんだって。色目を使って役を取ったんでしょう…

そんな悪口を目の前でされたミッチーは、あんまりよ!あんたたちだって、役を取るために影で色々やってるじゃない!と言い返す。

その後、団は、突然「バレエ団」を辞めると言い出したミッチーに困惑する。

しかし、ミッチーは、私は、もっと客の中に入って喜んでもらいたかったんですと、ショーダンサーに戻る決心を打ち明ける。

団は、出来れば君を養女にして、このバレエ団の跡継ぎにしたかった。私と一緒に暮らすのは嫌かね?と問いかける。

ミッチーは、私は先生が憎くて、その先生に認めてもらいたくて練習して来たんですと答えたので、私は、この人と思った人にしか厳しくしない。そして嫌がられるんだ…と団は寂し気に答えながらも、分かった!成功を祈っているときっぱり言い切って、ミッチーに握手を求める。

その頃、九州から戻って来た南とマリをタクシーで迎えに来た沖は、住む家がないと言う2人に、うちに来て下さいと言う。

あれから1年、両親にようやく許してもらったのだと言う沖の家にやって来た南とマリは愕然とする。

そこは、南が借金のカタとして手放してしまった元の自宅だったからだ。

沖は、自宅で出迎えたユリとミッチーに2人を任せると、自分は振り付けの練習でこれから大阪に行くのだと言って、空港へ向かう。

久しぶりで親子水入らずになった南と3姉妹、大人っぽくなった、誰か好きな人でも出来たんじゃないかとからかわれたミッチーは、団先生をいつの間にか好きになっていたけど、彼は38、とても一緒になれないし、今の私はステージで歌って踊りたいのと夢を語る。

今後のマネージメントは父さんがやってくれるんでしょう?とマリが聞くと、南は、もう反省したよと一旦は断ろうとする。

しかし、いざと言うときは、父さんの大風呂敷と手品…じゃなかった、マジックでやってくれなくちゃと頼む。

その時、電話がかかって来て、ユリが出ると、さっき出かけて行った沖が乗り込んだはずの、4時発の305便が行方不明になったと知らせる航空会社からのものだった。

遭難の可能性があると聞かされたユリは気絶しかけ、驚いたマリたちが介抱する。

結局、沖は、飛行機事故で帰らぬ人となる。

知らせを聞いて駆けつけて来た両親、特に、以前、ユリに冷たい態度を取っていた母親の時子は、憔悴し切ったユリに抱きつくと、昔の態度を詫び、せっかく私たちも、あの子が世間に自慢できるようになったのに…、いつまでも息子の嫁として付き合って欲しい。強く生きてね。今もあの子はそう望んでいますよと力づける。

ユリは、沖と2人で来たあの公園に立っていた。

1人寂し気に歌い始めたユリは、いつの間にか、沖が後ろに立っていることに気づく。

2人は一緒に歌い始め、沖は、強く生きるんだ。君にはステージがある。哀しい時には歌い、苦しい時には踊るんだと言ってくれる。

その言葉を聞いたユリは、沖の幻影が消えても、私、生き抜くわ…と決意するのだった。

その後、懐かしい「ニューラテン」のステージ上には、「ピンクタイツ3姉妹」が立って踊っていた。

支配人は彼女らの復帰を喜び、再びマネージャーとして参加した南は、もう心を入れ替えましたと殊勝に答えながらも、稼がせてねとしっかりマネージメントにも勤める。

緑の衣装に着替えたユリは、今は亡き夫の沖の姿を思い出し、赤い衣装になったミッチーは、団先生の姿を思い出し、青い衣装のマリは、津村の面影を思い浮かべながら歌い踊るのだった。

海を渡ってショーが来たのは昔のこと〜♩

今はこの島からショーが生まれる〜♩

飯が食えないのは昔のこと〜♩

今は立派に金になる〜♩