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眠狂四郎多情剣

人気シリーズ第7弾

4作目の「眠狂四郎女妖剣」で登場した菊姫が再度登場している。

話の流れから行っても、その続編のようなのだが、回想シーンなどでの細部は微妙に違っている。

菊姫の風貌も、前作では顔の下半分、口の周囲からあごにかけての辺りがただれていたのに対し、本作では顔の左半面がただれていたりと、明らかにメイクが変わっている。

前作でのメイクは、醜さと言う点では勝っていたが、かなり作り物めいており噓っぽく見えたので、改良と言う意味もあったのかも知れない。

又、前作で、菊姫の用心棒的な役割を演じていた中谷一郎が、本作でも似たような設定の役柄を演じているので、前作の武部光源は死んでいなかったのか?などと、ちょっと混乱したりもする。

しかし、役名が違うので、別人と言うことなのだろう。

この作品での中谷一郎扮する下曽我典馬は、眠狂四郎と対決する時、同じ円月殺法で挑んで来ると言うのが一つの見所になっている。

物語中盤で、狂四郎が、円月殺法は相手が撃ち込んで来るまでいつまでも待つと典馬に教えているので、この勝負、どうなるのかと見守っていると、意外な展開になっているので、先の説明は相手を引っ掛けるための罠だったのか、それとも、相手に応じていかようにも変化する剣法だったと言うことなのか判然としなかったりする。

さて、本作で明らかになることに、狂女に化けた女が、狂四郎に対し、「きれい」と言う形容詞を使って抱きついて来ることから、狂四郎は、女も惚れる美貌の持ち主と言うことがはっきりする。

異国人と日本人との間に生まれた言わばハーフなので、それなりに良い男であるのだろうと言うことは分かっていたが、このシリーズで演じている市川雷蔵は、どう観ても純和風の顔立ちであり、今で言う「超イケメン」と言う感じでもないので、絶世の美貌と言う雰囲気は意外と掴みにくい。

しかし、その辺がこの作品ではセリフとして説明されているので、菊姫が恋慕していると言う後半の説明も無理がない。

普通程度の良い男では、ほんのわずかな間しか顔を見ていないはずの菊姫が心惹かれるはずはないからだ。

このシリーズではお馴染みの、色気で男をたぶらかそうとする悪女役は、水谷良江が扮している。

それとは対称的に、無垢で純粋な存在として、はると言う少女も登場させており、狂四郎は、その無垢な存在を守るため戦うと言う展開になっている。

一見、人のために戦ったりすることは嫌う厭世的なキャラクターながら、権力や欲望を憎み、無垢でまじめなものたちに味方する狂四郎が、大衆に受けたのは当然かも知れない。

余談めくが、この狂四郎に関しては前々から気になっていたことがある。

この作品でも、身売りされたはるを買い戻したり、おひさを抱くために、金を5両も投げ与えたりしているが、一体、浪人の狂四郎は、何でそんなに金を持っているのだろう?

狂四郎は、実は高貴な身分の生まれで、素浪人と言うのは世をはばかる仮の姿…などと言う設定ではない。

剣を修行しながら、ある年齢になるまで僧に育てられた後、江戸に出て来たと言う設定だったはずだ。

シリーズ内でも、剣を教えていたり、何か働いているような描写は一切ない。

大衆娯楽だから、細かいことは省略してあると言っても、これは説明不足過ぎるのではないか?

単発で観ている分にはさほど気にならないのだが、まとめてシリーズを観ていると、ひどくその辺りが気にかかる。

時々、財宝を巡るエピソードなどがあるが、まさかその一部をくすねているなどと言うこともないだろうし…

どこかでその明確な説明があるのではないかと、常に気にしながらシリーズを観ている所である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、大映、柴田錬三郎原作、星川清司脚色、井上昭監督作品。

能舞台で舞う小面の人物が、無頼の徒、眠狂四郎を斬れ!私に恥をかかせたあの男に、男の恥となるような醜い死に方をさせ、狂四郎の命を絶つのじゃと命じる。

その声は女であり、かつて狂四郎に正体を暴かれた将軍の娘、菊姫(毛利郁子)であった。

タイトル

忍びの一団らしき者たちが走っていた。

菊姫が使う武州疾風組であった。

菊姫は、眠狂四郎め…と呟くと、急に笑い出す。

とある岡場所にやって来た眠狂四郎(市川雷蔵)は、地回りの男たちから、15の生娘を2両でどうでしょう?と橋の上でしつこく絡まれたので、その誘いに乗った様子で女郎屋の場所まで来ると、「井筒屋」と言う店はどこかと聞く。

地回りは、今案内しようとしていた店がそうだと、目の前の店を教えると、買おうと狂四郎は言い出す。

しかし、女将から部屋に連れて来られた娘はる(田村寿子)を観た狂四郎は、まだ子供じゃないかと呆れる。

さらにその娘は、お侍なんか嫌だ!と狂四郎の目の前で言う者だから、女将は慌てて叱りつける始末。

そんな女将に、実はこの家に招かれて来たのだと言いながら、一通の手紙を見せる。差出人は「菊」としか書かれていなかったが、女将は知らないと言う。

次の瞬間、畳の下から、次々と槍が突き出て来たので、狂四郎は部屋を飛び出し外に出ようとするが、外でも槍が飛んで来る。

覆面をかぶった謎の侍たちが斬り掛かって来たので、やむなく狂四郎は倒して行き、捕まえた相手に素性を聞くと、武州疾風組と名乗ったので、「菊」とは誰だ?と重ねて聞くと、将軍家息女菊姫様だと言う。

その名を聞いた狂四郎は、あの化物め…、又出てきやがったか…と呟くが、武州疾風組の一味は、故お襲撃は手始めだ。貴様を殺すまでいつまでも続くのだと言って去って行く。

その戦いを、仇を狙う旅をしている途中で、たまたま近くにいて目撃したと言う下曽我典馬(中谷一郎)と言う男が、狂四郎に襲われた事情を聞いて来る。

狂四郎は、将軍の娘が淫蕩な喜びに明け暮れていた。権力を傘にする女に我慢できなかったのだ…などと、菊姫と対決したかつての事件を教える。

(回想)旅の役者の首吊り死体が発見される。

殺されたのが行きずりの役者と知った狂四郎は、菊姫の家臣から菊姫の夜伽をするように頼まれたので、寝ようと承知する。

寝屋で出会った菊姫は能の小面を顔に付けていたので、狂四郎がその面を斬り落とすと、その下には、顔の左側が焼けただれた醜い顔があった。

(回想明け)やけどで人三化七の面相になったのは分かるが、そのおのれの醜さから美しい者を妬み、惨い手段で殺そうとするなど、権力が作った化物さ…と、狂四郎は典馬に告げる。

その時、狂四郎が買ったはるが、人殺し!と騒ぎ出す。

女将は、この娘の父親が、どこかの侍に斬られたんだと説明する。

それを聞いた狂四郎は、この娘の証文を持って来い。筋の通った金なら払ってやると女将に言う。

身請けしたはるを典馬と共に連れ、夕焼け空の中、帰路につく狂四郎だったが、娘がしゃがみ込んでしまう。

それを観た典馬は、腹が減ったのだろうと察し、はるを飯屋に連れて行くことにする。

典馬は狂四郎に、先ほどの戦いで感服した、一つご伝授してくれないか?と剣術の指南を頼み、狂四郎が断ると、あなたの両親の1人は異国の人ではないか?などと聞いて来る。

狂四郎はためらわず、父は転びバテレンのイルマン、悪魔払いの黒ミサで生まれた…とあっさり教える。

今夜はどこに寝るかな…などと呟きながら、典馬が店を出て行こうとしたので、狂四郎は、武運を祈ると声をかけ別れる。

はるに、これからどうする?と狂四郎が問いかけると、働きます。払ってもらった金の分、下女になって…などと言い出したので、狂四郎は下女などいらん!迷惑だ!と拒否するが、私は買われません。侍には…と睨んで来る。

お前は俺のことを、案外、善人だなどと思っているのかも知れないが、岡場所の地回りと同じくらい悪人かも知れんぞと言い聞かせようとする狂四郎。

はるは、飯台の下で、何かを握りしめていた。

狂四郎は、飯屋の主人に金を渡し、はるの着物を買って来させる。

住まいにはるを連れて来た狂四郎は、恐ろしくないか?俺といて?と聞くと、はるは、もっと恐ろしい目に遭いましたと言うので、親爺を侍に斬られたのが、お前の不幸の始まりか?と問いかけると、刀を持っていない人を斬ったことありますか?とはるは逆に聞いて来る。

身を守るためだと狂四郎が答えると、刀を持ってない人を斬っても良いのですか?それが偉いってことですか?と問いかけ、はるは自分の部屋に下がって行く。

1人になった狂四郎は、静かに刀を抜くと、その刃をじっと見つめるのだった。

ある日、腹に十字の印が書かれた女の水死体が上がる。

岡っ引平八(水原浩一)が狂四郎に教えた所では、女の身元は水茶屋のしのと言う、元武家の奥方だった女らしく、夫は赤松勘兵衛と言う道場主らしい。

そして、死体の側には「狂四郎 これを犯す」と書かれた立て札が落ちていた。

それを観た狂四郎は、赤松の道場はどこだ?と平八に聞き、俺の身の証しは俺が立てると呟くと、本所相生町と知ると出かけてみることにする。

付いて来ていたはるに、途中、簪を買って髪に挿してやる狂四郎。その2人の背後には平八が尾行していた。

その時、近くを通り過ぎて行く、おしゃれ狂女(香山恵子)がいた。

馴染みの飲み屋に立ち寄った狂四郎は、主人の甚助(寺島雄作)に、はるをここで雇っちゃくれまいかと頼み、はるが、お給金で借金を返しますなどと気丈なことを言うので、甚助は承知する。

飲み屋にはるを預け、1人になった狂四郎だったが、又もや、ちょうど浄閑寺に行く所だったと言う下曽我典馬と出会い、どうしても一手、お手合わせ願いたいと申し込まれる。

相手にせず、赤松の道場に来た狂四郎だが、典馬は懲りもせず付いて来ていた。

赤松勘兵衛は昼間から酔っており、狂四郎と知ると、貴様がやったんじゃないのか?死体の腹には十文字が書かれていたそうだが、お前の紋所も染め十字と因縁をつけて来る。

抜け!円月殺法を見せてもらう!と赤松がからんで来るが、狂四郎は、酒乱の相手では気に入らんと言いながらも、構えはして見せる。

それを表から凝視する典馬。

しかし、途中で狂四郎は剣を収めてしまい、これでは勝負にならんと言う。

赤松は、舌でも噛んだのか、口から血を流していた。

赤松は、円月殺法はまやかしと思っているようで、自ら傷つけることで正気を保とうとする作戦だと見抜いたからだ。

道場からの帰り際、相手が斬りつけて来なければいつまでも待っていると狂四郎は典馬に教えたので、円月殺法を教えてくれ!と典馬は頭を下げて来る。

しかし狂四郎は、付いて来るな!と典馬を遠ざける。

その後、雨が降る中、狂四郎は、水茶屋で雨宿りをしていたが、店の女おひさ(水谷良江=二代目水谷八重子)が中に入るよう勧める。

狂四郎は金を払って素直に中に入ると、しのについて聞きたいと言い出す。

同じ茶屋にいたんだ。日頃の行状など知っているだろう?ときくと、おひさはおしの殺しの犯人だと思ったのか、急に逃げ出そうとしたので、しのを殺した奴が俺の名前を騙っただけで、俺は知らんと狂四郎は言って聞かせる。

俺と関わる者は必ず凶運が訪れる。それでも良いか?と警告すると、抱いて!そしたら教えて上げると言い、しのさんを殺したのは赤松勘兵衛と教える。

その夜、狂四郎は、自分の方に逃げて来るおひさを観かける。

後から追って来たのは赤松勘兵衛だった。

抜け!と赤松が迫るので、やむなく狂四郎は円月殺法で相手をするが、その隙におひさは逃げて行ってしまう。

狂四郎は、赤松と、助っ人のように斬り掛かって来た2人も倒すと、菊姫に言え!痩せ浪人を斬るつもりなら、こっちも牙をむくぞ!と塀の後ろに隠れていた影に呼びかける。

すると、相手は「疾風組十七番!」と自分の素性を明かして去る。

ある日、はるが浄閑寺の墓の一角に、かねてより持っていた遺髪を埋めていたのを見かけた狂四郎は、その墓は、貧しい遊女たちが手に200文持たされて埋められた無縁仏だと教えてやる。

それを聞いたはるは、みんな可哀想…、この人たちも貧乏だったんだ…と呟きながら手を合わせるのだった。

狂四郎はその時、墓の奥に隠れていた狂女を見かけたので後を追う。

狂女が持っていた笹に、「狂四郎 これを犯す」と書かれた短冊が付いているのが見えた。

追っている途中、出会った平八に、あの狂女のことを聞くと、2、3日前からうろついているが、元々大店の娘らしく、本所の旗本屋敷に出入りしているので、町方役人では入れないと言う。

狂四郎は、狂女が入り込んだ旗本屋敷に付いて行くが、そこは無人の廃墟であった。

誰もおらんのか?この女を1人にしておくと危険だぞ!などと大声を上げてみるが、返事をする者とていなかった。

奥まった部屋にいた狂女は、狂四郎の姿を観るなり、あなたがきれい…などと言いながら抱きついて来る。

しかし、その足の指先で畳みに落としていた笹の枝をたぐり寄せると、枝の中に仕込んでいた刃を抜いて斬り掛かって来たので、その着物を切り裂いた狂四郎は、この部屋に誘い込めと命令したのは誰だ!と偽狂女に問いつめる。

すると、襖の外に柵が降りて来て、狂四郎は偽狂女と共に、牢の中に閉じ込められてしまう。

奥の闇の中に、能面をかぶった聞く姫の姿が現れたので、狂四郎は偽狂女から奪った仕込み刀を投げつけてみるが、反応はなかった。

その時、偽狂女が部屋の中の下部にある紐のようなものを引きかけたので、その背中に刀を突き刺し、息の根を止めると、自分がその紐を引くと、柵が上がったので外に逃げ出す。

その後、疾風組の掟を知っておろうと言う聞く姫の声が響き、不覚をとった疾風組の1人がその場で斬られる。

そんな菊姫の再びの乱行を知った家斉は、このままでは幕府の威信に傷が付くので、菊姫を江戸へ入れさせぬばかりか、さらに遠国へ追放しなければならなくなるとの上意を目付役檜喜平太(戸田皓久)を通じて菊姫に伝える。

しかし、それを聞いた菊姫は納得せず、この胸深く受けた傷は誰にも分かりはせぬ。女が恥さらされた傷は、誰が癒すのじゃ?狂四郎を生かしてはおかぬ!と憤怒の気持ちを吐露したので、檜喜平太はしかと上様に伝えますと答える。

ある日、飲み屋で働いていたはるが、外の行灯の灯を点そうとしていた時、何者かに拉致されてしまう。

それに気づいた甚助は、慌てて浄閑寺の狂四郎に知らせに来る。

狂四郎ははるを探しに町に出るが、途中で、はるに買ってやった簪が落ちているのに気づき、それを拾い上げると懐に入れる。

そんな狂四郎は、疾風組十七番(藤春保)が走り去るのに気づく。

後には、あの娘は預かる。こちらが受けた傷を加えてやると書かれた小面が残っていたので、卑劣な!と言って狂四郎は地面に叩き付けるのだった。

その後、雑踏を歩いていた狂四郎は、下曽我典馬から、御主に見せたい者があると声をかけられる。

連れて行かれた場所には、「浪人 眠狂四郎之墓」と書かれた墓碑が立っていた。

それを見た狂四郎は、俺のような男にはふさわしいと自嘲する。

次の瞬間、矢が飛んで来たので、狂四郎は近くに潜んでいた疾風組十三番を斬ると、助太刀を申し込んで来た典馬に、力添えは辞退すると告げて立ち去って行く。

狂四郎は、再びおひさと密会する。

窓辺に座っていた狂四郎は、はるが落として行った簪を見つめていた。

おひさに酒を飲ますと、酔わせてどうするつもり?などと色目を使って来たので、お前が欲しいと言いながら、狂四郎は2両を投げ与える。

おひさがその場で帯を解き始めると、さらに3両を投げた狂四郎は、お前の身体を拝もうとすればそれくらいではすむまい?と皮肉を言う。

おひさは喜んだのか、恥ずかしいからと言いながら雨戸を閉め始めたので、狂四郎は、お前を他の男に渡したくないと世辞を言ってみると、あげるわ、私をみんな…と、おひさも媚を売って来る。

しかし、その時下から、姐さん、あなたに会いたいって人が…と呼ぶ下女の声がしたので、ちょっと待ってておくれ、一体誰だろう?等と言いながら着物を着直したおひさは下の玄関に降り、行商風の男から金を受け取る。

すぐに二階に戻って来たおひさだったが、もう狂四郎の姿は消えており、窓が開いていた。

狂四郎は、行商の男を追って町中に出ていたが、その狂四郎を、仕込みの武器を持って町人に化けていた3人がいきなり襲撃して来る。

狂四郎は、待っていたんだ。聞く姫の居所を吐かせてみせるぞと言うと、退散する3人を追いかけるが、それを側に腰掛けていた先ほどの行商の男が観ていた。

その直後、狂四郎を呼び止めたのは、頭巾をかぶった公儀目付役檜喜平太だった。

貴殿と話がしたいと言うので、菊姫はどこにいる?と狂四郎が聞くと、ある屋敷に住み、わがまま勝手な振る舞いをしていると喜平太が教える。

高貴な者は何をしても良いのか?貧乏な人は殺されても良いのか?男も女もいたぶり殺す…、菊姫はどこにいる?と重ねて問いかけた狂四郎に、喜平太は菊姫を殺して欲しいと依頼して来ると、橋の下に身を潜め、話を盗み聞いていた行商人に化けた武州疾風組男を刺し殺す。

菊姫を守る影の侍たちか?と聞いた狂四郎は、俺が奴らを滅ぼすのは誰のためでもない、俺自身のためだと言い残して去って行く。

その頃、下曽我典馬はおひさに小判を渡していた。

おひさは典馬を怪しみ、あなたはどう言う人?と聞くが、そんなことはどうでも言いから、引き受けてくれるか?と典馬は頼み、おひさを抱く。

その後、おひさの元に狂四郎が戻って来て、今夜は泊めてもらうよと言うと、おひさ、お前が今、何をしようとしているか知っているぞ。金のためにやっているお前は可愛いと思う。赤松をやらせたのもお前。せっかくの馳走だと言いながら、身体を抱こうとするが、おひさは逃げてしまう。

その直後、狂四郎は天井に潜んでいた敵に刃を突き刺すが、敵は逃げ去ってしまう。

疾風組十七番が姿を現したので、追おうとした狂四郎だったが、ひさ、俺にもこの男にも近づくな!近づけば身の破滅だぞ!とおひさに命じる。

頭巾をかぶって逃げていた相手は、追って来た岡っ引きの平八を斬り殺す。

狂四郎はその頭巾を斬り落とすと、その男は下曽我典馬だった。

下曽我典馬は、眠狂四郎!改めて決闘を申し込むぞ!貴様が出向いて来るのだ、武蔵野まで。菊姫の屋敷にはるもいると言って姿を消す。

武蔵野のどこにいるのだ!と狂四郎は呼びかけるが、笑い声が聞こえて来ただけだった。

そこに近づいて来た檜喜平太は、居場所を教えよう。四葉と本徳丸の中間で、3本欅の下の分かれ道を右に進むと1本欅がある。そこで屋敷はすぐに見つかると言う。

翌日、武蔵野に向かった狂四郎だが、その行く手には武州疾風組が待ち構えていた。

菊姫は、屋敷内で下曽我典馬を呼び寄せると、江戸での敗北続き、ここまで誘い込んで同じことを繰り返すまいぞと叱責する。

下曽我典馬は、姫様は、狂四郎に恋慕しておられるのでしょう?…、そんな気がしましたと答えると、お前は私の心の中を見抜いた気持ちなのだろうが、そなたの心の中も良う見える。私に忠節を誓ったつもりか?しかしその本心は出世だろう。幕府の地位が欲しいのだろう?と問いかけると、典馬は、世を忍ばねばならぬ我々にとっては何よりですと言って否定しなかった。

罠を仕掛けたな?と問いかけた菊姫は、狂四郎の首を取れ!と命じる。

そこに、狂四郎が来たと言う、疾風組の伝令が届く。

菊姫は、水鏡におのれの顔を映していたが、すぐに手を水に入れて乱すと、いつものように小面をかぶって笑い始める。

屋敷に入って来た狂四郎に対面した菊姫は、待ちかねたぞ、狂四郎!これからそなたの死に様を観られること、嬉しく思います。女の執念、心行くまで味わうが良いと言うと、そこに下曽我典馬がやって来る。

菊姫が典馬に、はるの姿を見せようぞと命じると、向かい側にあるお堂の扉を開き、その中の柱に縛られていたはるの姿を狂四郎に見せる。

菊姫は、姫直々に、毒液を持ってあの娘の顔をただれさせると宣言すると、自らお堂に向かう。

狂四郎は、庭先にいた疾風組を斬り捨てながらお堂に近づくが、お堂の前の階段前に立ちはだかった下曽我典馬は、どうだ?この階段を上がることが出来るか?と挑発して来る。

菊姫は、気絶していたはるの顔を叩き正気付かせると、毒薬の瓶を近づけると、狂四郎!刀を捨てい!と命じ、そなたが私に加えた汚辱をこの娘に加えるぞ!と脅した来たので、やむなく、狂四郎は持っていた刀を捨てる。

狂四郎は、その時、斬られた疾風組の1人が落とした鉄甲を目にしていた。

菊姫は、とうとう観念したか!ゆっくり観るが良いと言いながら、卑怯にも薬瓶をはるの顔に近づけたので、狂四郎は足下の鉄甲を拾い上げると、それを菊姫の手に投げつける。

菊姫が持っていた薬瓶は弾き飛ばされ、側に控えていた老女の足にかかってしまう。

すぐさま刀を拾い、お堂に駆け上った狂四郎は、はるを縛っていた綱を斬ると、四条河原で待っていると言い、先に逃がしてやる。

下曽我典馬と対峙した狂四郎は、とうとう御主たちの計画では勝てなかったなと声をかける。

典馬は、狂四郎をまねて、円月殺法で勝負して来る。

しかし、狂四郎は、自ら相手に撃ち込んで斬り捨てる。

屋敷を後にし、四条河原に向かっていた狂四郎を待っていた檜喜平太は、眠殿、お見事であった。貴殿が死んでいたら、拙者が討つつもりであった。姫はこれで、遠い国に移されるだろうと語りかけて来たので、権力者のすることは反吐が出ると狂四郎はは吐き捨てる。

その時、おじちゃ〜ん!とはるが近づいて来るが、そちらに歩き始めた狂四郎に、檜喜平太が斬り掛かって来たので、狂四郎は瞬時に斬り捨て、卑劣な奴だ…と呟く。

その頃、屋敷の中に残っていた菊姫は、狂四郎!狂四郎!と名を呼ぶと、懐剣で自らの胸を突いて自害する。

その時、翁の面がかけてあった屏風が倒れる。

狂四郎は、厳しい顔になっていたが、そこにおじちゃ〜んと言いながら近づいて来たはると共に、江戸へ帰るのだった。