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眠狂四郎勝負

人気シリーズ第2弾

将軍家斉の大勢いる娘の1人で、権力を傘にわがまま勝手な振る舞いをする高姫が登場すると言うのは、後の菊姫の原型になるキャラクターである。

狂四郎を殺そうと企み、父親に知れて遠くに移されることになったり、その本心では狂四郎に惹かれている所なども同じ。

そう言う恐ろしい女と対称的な無垢な少女として、高田美和演じるつやと言うキャラクターが登場しているが、これは7作目「多情剣」のはると言う、侍を憎む娘の原型だろう。

異国人の宣教師の夫をかばおうと身を捨てて狂四郎を襲う采女は、4作目「女妖剣」で、隠れキリシタンの兄を助けたいため、異国人宣教師に身体を投げ出す小鈴に設定が似ているし、演じているのも同じ藤村志保である。

狂四郎の出征の秘密とキリシタンが繋がっているかのように暗示させているのも、本作が初めてである。

まだこの頃には、狂四郎はその辺のことに触れたがらないと言うことになっている。

つまりこの作品では、後の作品の原型になっていくような要素が、ほぼ出そろった感がある。

さらに、それだけではなく、狂四郎と心を通いあわせる老いた勘定奉行朝比奈伊織として、加藤嘉が老け役で好演している。

この当時、加藤嘉は、まだ50そこそこのはずである。

入れ歯を外すお馴染みの手法で、老いた感じを巧く表現している。

冒頭で登場する子供と狂四郎のふれあいなどのシーンも印象的で、そう考えて来ると、本作は様々なアイデアが盛り込まれていると言うことが分かる。

1月9日公開と言う正月映画だったようで、そう言う贅沢な雰囲気が今観ても伝わって来る、見応えのある作品に仕上がっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、大映、柴田錬三郎原作、星川清司脚色、三隅研次監督作品。

獅子舞が舞っている正月

神社の階段前で、健太郎と言う尻当て小僧が客を探していた。

階段を上るのが辛い高齢者などの尻に、T字型の支え木を当てて、後ろから押してやる商売だった。

少年がやっているので、1人の老侍(加藤嘉)がやってもらおうと頼む。

神社内では、覗きからくりの前の人だかりに近づいて来た女が、スリを働いたので、それを近くで目撃した眠狂四郎(市川雷蔵)は、その女の着物を切り裂き、財布を取り戻してやる。

スリ女は裸になって、人ごみの中を逃げて行く。

茶店に座った狂四郎は、近づいて来た老人とその尻を押して階段を上って来た尻当て小僧の健太郎を観る。

老人が、金を余分に渡そうとすると、慈悲は受けませんと言って、規定の5文だけ受け取る健太郎。

茶店の女が、腰掛けた老侍に、あの子は侍の子です。父親は、夕日丘で据え物斬りにする兜を飾った道場を開いていたが、ある日道場破りに負けてしまい、道場を取られてしまったのだと教える。

その話を、近くに座っていた狂四郎も自然と耳にしていたが、健気に生こうとする。いじらしいものでござると老侍が話しかけて来ても返事はしなかった。

健太郎は、他の子供たちが上げている凧を無邪気に見上げていたが、狂四郎はその足下に財布を放る。

それを観た老侍は、何故直に渡してやらん?と問いかけ、おちていた財布に気づいた少年は、誰か財布を落とした人はいませんかと周囲を探し始めたので、狂四郎は仕方なく自分のものだと名乗り出ると、父の姿をもう1度観たくないかと少年に話しかける。

そして、老侍には、立会人として同行してやろうと思いませんかと話しかける。

健太郎と老侍を従えて、かつて少年のうちだった道場に来た狂四郎は、少年の父を破って道場を乗っ取った後藤久右ヱ門に立ち会いを求める。

老侍は立会人となり、少年は道場の外から様子を観ていた。

その時、道場の前を、1人の占い師采女(藤村志保)が通りかかる。

勝負はあっけなく終わり、倒れた後藤の身体を調べた老侍は、事切れておる…と驚いたように告げる。

健太郎は、やった!やった!と喜ぶが、健太郎、お前に寝る場所が出来ただけだと狂四郎は言い、剣術を教えてくれと頼む少年を無視して立ち去って行く。

老侍は、そんな狂四郎と一緒に付いて来て、そなたの剣は凄まじ過ぎると告げる。

老侍はさらに、最近、凶作で年貢が入らない。江戸にも盗賊も増えて来たなどと世情を嘆きながら帰って行くが、その直後、勘定奉行朝比奈伊織!と叫んだ賊が襲撃して来たので、狂四郎は思わず加勢してやる。

その時、先ほどの女占い師が又通りかかる。

賊は、赤座軍兵衛(浜田雄史)と名乗り、その爺は必ず斬ると言い残して去って行くが、老侍は、前にも一度襲われたことが人違いだと狂四郎に言う。

わしの力が足りんのだ。禄を失うと、刀を振り回すしかない。はたして、殺しに来たのか、脅しに来たのか…?誰かがやらねばならんと、立ち寄った飲み屋で老侍は狂四郎に話す。

そこへ、先ほどの女占い師を酔った奴が連れ込んで来て、酌をしろと命じるが、采女はその奴の面を叩くと逃げて行く。

その後、朝比奈の屋敷にやって来た高姫付の用人、白鳥主膳(須賀不二男)は、家斉公の姫君、高姫様は、お化粧台年間2万両を廃止されたとご立腹です。朝比奈様の方針らしいが、高姫様の得意先である掘家に取っては迷惑千万。朝比奈様は学究の人と聞いております。何事も禁止らしいが、かえって自らの墓穴を掘ることになりはしませぬかな?と主膳は、朝比奈の左手の怪我に目をやりながら問いかけると帰って行く。

主膳が駕篭に乗って帰るのとすれ違うように、朝比奈邸にやって来たのは狂四郎だった。

その訪問を喜んだ朝比奈は、高姫のことを打ち明ける。

将軍の娘の中では一番の美人と聞いているがと狂四郎が言うと、越後の堀家にお輿入れしたが、ご主人に先立たれ、今では一人身じゃと朝比奈は教える。

朝比奈が登城、下城の折り、赤座と言う浪人が狙っていたのを知っているかと狂四郎が聞くと、朝比奈は、今年の凶作は困った御時世じゃと話を変える。

狂四郎はそんな朝比奈を死なせたくないと伝えるが、わしを守るなら無用だぞ。貴公に関わりはないと朝比奈は答えたので、俺の勝手だと狂四郎は呟く。

その頃、高姫(久保菜穂子)は屋形船の中で、士官を願う若侍増子紋之助(成田純一郎)を抱いていた。

高姫は、その若侍に、手裏剣の名手なそうな?と聞いていた。

ある日、朝比奈は、登城した江戸城で、他の重臣たちから、行き過ぎたやり方を批判されていた。

しかし朝比奈は、このままでは武家の政治は崩壊する!と松の内が開けたら、上様に御進言すると言い張る。

一方、札差し大内屋と米問屋和泉屋は、白鳥主膳に呼ばれ密談していた。

松の内に帳簿を見せろと言って来た。上様に朝比奈は、罷免を上申して欲しいんだろうと教えた主膳は、大口屋、和泉屋に2万両を出さないか?と申し入れていた。

その庭先で、その密談を聞いていたのは狂四郎だった。

その日から、狂四郎は、出歩く朝比奈の後を勝手に付いて来るようになる。

すると、榊原左平太の弟を名乗る喜平太なる浪人(五味龍太郎)が、突然、槍を狂四郎に突きつけて来る。

狂四郎は、その相手をし始めるが、そこに高姫の乗った駕篭が近づいて来た事を知ると、斬りあいながら、橋の下に身を隠すと、喜平太の身体を押さえつけ、少しでも動いたら、この世の最期と思ってもらうと脅す。

その橋の上を通りかかった高姫の駕篭だったが、いきなり駕篭の底から槍が突き出て来たので、行列は騒然となる。

護衛たちが、橋の下に駆けつけた時には、橋に突き刺さった槍が残されているだけで誰もいなかった。

そんな騒動を、遠くから観ていた編み笠の侍が遠ざかって行く。

高姫は、同行していた白鳥主膳に、くせ者の目星はついているのか?と尋ね、朝比奈に味方する無頼の徒でございましょうと主膳が答えると、斬れ!と命じる。

翌日も、朝比奈の後を狂四郎は付いていた。

そこに近づいて来た編み笠の侍は海老名良範(戸田皓久)と名乗ると、狂四郎の流派を聞き、円月殺法を聞くと、俺が狙うのは、貴様だけだと告げる。

采女は、浪人たちに朝比奈伊織と狂四郎の暗殺を依頼すると、飲み屋「源八」にやって来た狂四郎に近づき、あなたのは凶相が出ている。あなたの剣が5つの剣を呼びました。ご案内しますと伝える。

土手にやって来た狂四郎に、浄閑寺の和尚さんが心配していたよと呼びかけながら近づいて来たのは、屋台で蕎麦売りを手伝っているつや(高田美和)と言う娘だった。

しかし、狂四郎の顔を見るなり、つやは、又、人を…と怖がる。

斬られに行くのさと狂四郎が答えると、嫌!縁起でもないと言い、屋台に戻って来たつやだったが、どこに行くんだろう?と心配すると、蕎麦屋の主人がお女郎屋さと答えたので、まあ、嫌らしい!とつやは顔をしかめる。

狂四郎は、采女が頼んだ5人の浪人が待つ場所へ到着する。

後を付いてきた采女は、いつの間にか、狂四郎を見失っていた。

増子紋之助、榊原喜平太、赤座軍兵衛、海老名良範、神崎三郎次と対峙した狂四郎は、俺は話しに来たと言うと、老人の命を奪って何になる、手を引けと伝えるが、相手らは聞き耳を持たぬようだったので、朝比奈は俺が斬らさん!朝比奈は貴様たちより生きている値打ちのある人間だときっぱり言い切る。

増子が、近くの木に手裏剣を投ずると、眠りは飛び降りて姿を消す。

その後、狂四郎は、采女の仮住まいに付いて行くと、お前を操っているのは白鳥主膳か?どうして犬になった?と問いかけるが、白鳥主膳は、あなたは、女の愛と言うものをご存知でしょうか?と逆に采女から聞き返される。

私には夫がいます。今、老にいますと言うので、合点した狂四郎は、朝比奈を殺せば出してやると言われたか…と言い当てると、采女は、あなたは恐ろしいほど強い。それでも、女の一念を貫いてみせますと言い切り、あなたが味方であったら…と悔しがる。

お前の夫はどう言う人だ?と狂四郎が聞くと、異国人でございますと言うので、切支丹か?と重ねて聞くと、ヨハネス・セルジオと采女が答えたので、驚いた狂四郎は、小日向の切支丹坂で会った…と過去を思い出す。

(回想)役人たちに引き立てられて行く宣教師ヨハネスは、見物人の中に狂四郎を認めると、あなたの顔、不幸です。あなたこそ神の手で救わねばなりません。私、日本に来たのはそのためですとつたない日本語で話しかけて来たのだった。

(回想明け)私にもそう見えます…と采女も言う。

あなたは異人との間に生まれた方では?と采女が聞くので、狂四郎は、止めろ!と話を遮る。

あなたの目の冷たい輝き…と、殴り掛かって来た采女の腕を掴んだ狂四郎だったが、身体の力が抜けて行くのを感じる。

采女に毒を盛られたのだった。

身体がしびれた狂四郎は、その場から駕篭で白鳥主膳の屋敷に連れて行かれる。

主膳は采女に、近いうちに沙汰をすると伝え帰す。

気がついた狂四郎は縛られており、目の前には高姫がいたので、嬲りものにされる手法にしては月並みだなと嘲る。

それでも、不遜な表情の高姫は、今宵は、私の意のままじゃ…と薄笑いを浮かべる。

家斉が妾に生ませた娘は50人もいるそうだ。お前は何人目だ?その姫が俺の雪よりきれいな肌を触れようとは…と狂四郎は、さらにからかってみせる。

そこに現れたのが増子紋之助だったので、妬けるか?色子と罵倒する狂四郎。

その挑発に逆上した増子が投じた手裏剣を、身体をねじり、捕縛の綱に刺させ、切断した狂四郎は立ち上がると、高姫を捕まえ盾にし、その場を逃げ出す。

その後、いつものようについて来る狂四郎に、朝比奈は、わしのために敵を作ってしまったと恐縮するので、あまり出歩かんようにしてくれと狂四郎は頼む。

しかし、朝比奈は、御主の暮らしが知りたいのだと言う。

三ノ輪の浄閑寺は遠いぞと呆れながらも帰る狂四郎に、朝比奈は黙って付いて来る。

途中、つやのいる屋台で蕎麦をすすることにするが、朝比奈は雪が降って来たことに気づく。

蕎麦をすする朝比奈は店の主人に景気はどうだ?と聞き、主人は良くないですと答える。

そんな2人の様子をにこやかに観ていたつやに、俺の顔はどうだと狂四郎が聞くと、今日は良い、きれいよと答えるつや。

人を斬った日は、この娘の前に出られんと狂四郎は朝比奈に言う。

つやは、土手に上がると客呼びを初めるが、そこに槍を持った榊原喜平太がいるのに気づく。

狂四郎はやむなく、喜平太を円月殺法で倒す。

それを近くから観ていた海老名良範は、円月殺法が満月を作るにつれ、相手の剣が吸い寄せられる恐ろしい剣法だと感じていた。

浄閑寺に泊まった朝比奈に、弁当を持って来たつやは、ここは投げ込み寺で、死んだ貧しい遊女が投げ込まれる寺だと説明すると、私の姉さんもそうだったんですと朝比奈に打ち明ける。

そなたの姉は遊女だったのか?と朝比奈が聞くと、病気の母さん、助けるために身を売って…、その後母さんも死ぬし、姉さんも、好きな人できたけど添えなくて…と哀しそうに答える。

それを聞いた朝比奈は、わしは妻も子もおらぬ。死んだら誰が詣でてくれるかな?と呟くと、つやは、みんな可愛そう…、夕べのお侍も可愛そう…。どうして殺しあうの?お侍だから?と問いかけて来る。

この世は殺し合いだ。みんながおつや坊のようではないと狂四郎は答え、狂四郎を明るくできるのはそなただけらしいと朝比奈はやるせなさそうに呟く。

おつやが去って行くと、あの娘は、御主のことが好きらしいな…と朝比奈は狂四郎に告げる。

その日、松乃湯の湯船に狂四郎が入っていると、そこに刺客が突然入って来て襲いかかる。

裸の狂四郎に武器はなかったが、次の瞬間、刺客は狂四郎に斬られる。

女湯から、采女が刀を湯船の隙間越しに渡したのだった。

湯屋を出た狂四郎は采女に、何故、刀を寄越したと問いかけると、私にも分かりませぬ…と采女は答える。

狂四郎は、夫を助け出す望みを忘れたのか?と聞くと、采女は、私は、自分の心が恐ろしゅうなりましたと呟くので、主膳が放っておかんだろうと心配する。

采女は、江戸を出ますと言うので、、そなたの夫を助ける別の方法を考えるのだと狂四郎は言い聞かす。

狂四郎様、あなたにはもうお目にかかりません、二度と…と言って、采女は立ち去って行く。

ところが、狂四郎は、その采女が何者かに拉致され駕篭に乗せられるのを目撃したので、急いで駆けつけるが、そこに采女が身につけていたと思しき鈴が落ちているだけだった。

その頃、白鳥主膳は高姫に、朝比奈と狂四郎を一挙に討つ手がありますと進言していた。

柳生但馬守と御前試合で真剣で勝負させ、狂四郎の刀の目釘を緩めておくのです。その剣の向こうに座らせるのが朝比奈ですと主膳は笑う。

その御前試合の知らせを狂四郎に伝えた朝比奈は、わしに連れて来いとの上意だが、狂四郎共々、臭いな?と策略の匂いを嗅ぎ付けているようだった。

しかし、断るとあんたが罰せられる。これが罠なら、相手の胸に飛び込んでこそ道が拓ける。断れば、あんたが失脚するだけだと狂四郎が言い、それを聞いた朝比奈は、眠!御主と言う奴は…と言いながら泣き始める。

試合当日

御前試合のはずなのに、その試合会場に家斉の姿はなかった。

勝負は一太刀と言われ、剣を渡された狂四郎だったが、すぐに、目釘に目をやる。

観ると、対戦相手である柳生但馬守の真後ろに朝比奈が座っているではないか。

狂四郎は、柳生に対し、いつも通り円月殺法を構えるが、次の瞬間、剣を振り下ろした先にいた、主膳の手先の米問屋の和泉屋の胸に飛んだ刃が突き刺さる。

試合を観ていた高姫は、狼藉者!斬れ!と命じるが、狂四郎は落ち着いて、これは猿芝居です。これは人殺しを大勢に見せるため最初から仕組まれたものだったのですと説明する。

柳生も狂四郎に対し、わしの一太刀、良く交わした。感服したと褒める。

同席していた白鳥主膳は、朝比奈殿と貴殿には、別室にて詫びをしたいと声をかけて来る。

そこに、当主水野忠成様がやって来て、高姫に対し、上意により、越後の庄に移って謹慎せよと伝える。

すでに、今回の謀、老中に聞こえており、知られていると言う。

主膳は、落ち込んだ高姫に対し、江戸を発つまでには、まだ時がございますと言って慰める。

しかし高姫は、私は負けました。眠狂四郎に…。あの男に私の誇りを根こそぎ奪われてしまった…、それが嬉しゅう思いますと言うと泣き始める。

初めて私の心を奪った男…、江戸の町ももう私には遠い…。

一方、白鳥主膳を前にした狂四郎は、札差の大口屋、生き証人が死んで嬉しかろうと迫ると、何かご所望かな?と主膳は答える。

狂四郎が持って来た鈴を見せ、采女と言うと、ここにはおらん。こちらの指定した場所でと主膳は言うので、夫ヨハネスも連れてか?と聞くと、あいにく処刑したと主膳は答える。

一方、朝比奈は老中水野に礼を言い、高姫の館はどうだ?と家臣に状況を聞くと、ただならぬ気配と言う。

采女は、とある場所に磔にされていたが、狂四郎が近づいて来ると、来ないで〜!と叫ぶ。

狂四郎は、飛んで来る矢を避けながら、采女が縛られていた木を斬ると、采女を助け出す。

采女は、矢で傷ついた狂四郎の右手の傷を吸ってやる。

主膳が配置していた鉄砲隊も撃って来るが、林の中なので効果がないことに気づく。

そこに、海老名良範と労咳の神崎三郎次も駆けつけて来る。

眠りは主膳の家臣たちと切り結ぶ。

神崎三郎次は、咳き込み血反吐を吐くと、俺を斬れ!と言いながら狂四郎に迫る。

しかし、狂四郎は、死にたくば勝手に死ね!と言い放つ。

そこに、海老名が近づいて来たので、狂四郎は、円月殺法の構えの入るが、海老名は、俺は満月が廻り切るまで打込まん。貴様の負けだとほくそ笑む。

しかし、狂四郎の剣が満月を描き切る前に耐えきれなくなり斬り掛かって行くと、狂四郎に斬られてしまう。

そこに朝比奈が、狂四郎の名を呼びながら近づいて来る。

近くの河で剣を洗う狂四郎を見つけた朝比奈は、無事であったかと安堵すると、御主はあれほどの凄腕を世のために役立てるつもりはないかと聞くと、わしの方は巧く行きそうだと言う。

しかし、狂四郎は、そんなことを言われると、あんたを嫌いになるなどと憎まれ口を聞く。

佇んでいた采女に近づいた狂四郎は、その顔を見つめると、黙って去って行くのであった。