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眠狂四郎魔性剣

柴田錬三郎原作の人気シリーズ第6弾

冒頭こそ、いきなり訳ありの女を買ってしまった狂四郎の後味の悪いエピソードから始まるが、その後は、その女が残したこちらも訳ありの子供を守ると言う、いつもの狂四郎らしくないヒーローぶりが描かれている。

途中の黒ミサの儀式等と言った怪し気な伝奇要素から以降は道中ものに変化して行き、風魔の末裔を名乗る怪し気な尼僧とか、蛇使いの女、火薬使いの男など、次々にけれん味の強い敵が登場して来る。

どうして提灯の爆薬に気づいたのか?とか、その大爆発からどうして助かったのかと言ったような説明は一切ないので、ご都合主義の連続と言えばその通りなのだが、何とこの作品、上映時間がたった75分しかない。

言わば、中編に近い長さであり、その中であれこれ要素を盛り込んでいるために、細かい所のつじつま合わせははしょられたと言うことかも知れない。

子供を守るヒーローと言う、いかにも通俗娯楽の典型のような展開になっているが、子供向けかと言うとそうでもなく、執拗に狂四郎を付けねらうおりんと言うキャラクターの登場もあって、それなりに大人も楽しめる作品にはなっている。

おりんを演じている瑳峨三智子と言う人は、山田五十鈴さんの実の娘さんだが、妙に怪し気で色っぽい容貌の持ち主である。

その色っぽい美人が絶えずあれこれ知恵を使って襲って来るのだから、狂四郎は息つく暇もない。

クライマックスでは、刀を奪われ、後ろ手に縛られている狂四郎が、どうやってピンチを切り抜けるのかが1つの見せ場となっている。

「007シリーズ」のボンドガールではないが、このシリーズに登場する女性たちも、次々とあっさり死んで行く印象がある。

そう言うものにあまり拘泥しないタイプの狂四郎だけに、今回の冒頭での女に対する自責の念を持ち続けると言う設定は、珍しいかも知れない。

それでも、全体の出来としては通俗に走り過ぎている印象があり、シリーズの中では、中の下と言った所かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、大映、柴田錬三郎原作、星川清司脚色、安田公義監督作品。

酒屋を出た眠狂四郎(市川雷蔵)は、雨が降っていることに気づき、店から傘を借りると広げる。

その広がった傘をバックにタイトル

狂四郎が橋に差し掛かった時、もし…と呼び止める女の声に振り向いて見ると、傘を目深にさし、顔を隠した女が1人立っていた。

私を買って下さいませんか?と女が言うので、いつもここに立っているのか?と聞くと、今宵が初めてと言う。

買おうと答えた狂四郎が近くのあばら屋へ付いて行くと、寝床で横になった女が振り返るが、何とその顔には能の小面の面をつけていた。

身を売る恥ずかしさを隠すためか?やつれを隠すためか?と聞いた狂四郎だったが、結局、面を付けた女を抱く気になれん、帰ると背を向けようとすると、女は面を外す。

何故身を売る気になった?武家育ちの女なら、恥を知っていように?と聞くと、その女、佐絵(穂高のり子)は、故郷も身寄りもない身でございますと恥じ入るように答える。

そなた、病の身か?切羽詰まっても、男と違って女は身を売るすべがある…と皮肉を言いながら、狂四郎が立ち去ろうとすると、このままお帰りなさるか?私をお抱きなさいませと佐絵が聞いて来る。

誇りを捨てた武家育ちの女を抱けばうらぶれるばかり…と狂四郎は嫌味を言い、せめてお名前を…とすがる佐絵に、眠狂四郎、無頼の徒さ…と答え、1両小判を追いて帰る。

翌日、狂四郎は、僧を先頭に進んで行く棺桶を観ていた。

棺桶の中に入れられた死骸は佐絵だった。

そんな狂四郎に、見知らぬ女が、自分で咽を突き刺して死んだんだってね。武家奉公した女の成れの果て。知っているかい?あの仏…と声をかけて来る。

業病に取り憑かれて世を果無んだって話だがね?と言うので、狂四郎は、否、俺に会いさえしなければ死ななかったと悔し気に答えると、いきなり花札型の手裏剣を投げつけて来たその女、おりん(瑳峨三智子)は、狂四郎に殺されたむささび伴蔵の妹だと名乗る。

こちらから仕掛けた相手ではないと狂四郎は言い返すが、そんなことは関係ない!兄貴は確かに悪い奴だったけど、兄妹で冷たい世間の風にさらされて育って来たんだとおりんが恨みがましく言うので、では勝手に付けねらうことだと言い返す。

おりんは、去りかけた狂四郎にさらに手裏剣を投げつけ、弾かれると、つきまとってやるから!隙を見せたら最期だよと憎まれ口を聞く。

狂四郎は自責の念に捕われ、昨夜、佐絵と会ったあばら屋にやって来る。

そこには小面だけが壁にかけてあった。

その小面の面を持ち帰って来た狂四郎の住まいに、子供連れで訪ねて来たお糸(明星雅子)が、町飛脚が今朝方持って来た佐絵の遺言状に狂四郎の名が記してあったと知らせる。

聞けば、佐絵は5年前、この子供を連れやって来たのだと言い、お糸は、その場にいた鶴松を紹介する。

佐絵の子供か?と狂四郎が聞くと、そうではないが、母同然に慕っていたらしい。

遺言状には、狂四郎にこれを返すようにと書かれてあったと言い、1両を戻される。

それを見た狂四郎は、あの女を死なせたのはこの俺かも知れない…。理由は言えないが、この1両が武家育ちのあの女の最後の誇りを踏みにじったのだろう。俺の口から出た言葉のとげが、あの女を生きる力を奪ったのかも知れんと呟くが、その時、鶴松が、ばか!佐絵!死ななくとも良いのに!と呼び捨てにしたので、それを聞いた狂四郎は、そなたは侍の子か?と尋ねる。

しかし、鶴松は、侍なんか大嫌いだと言うし、お糸は、訳あって、この子は世をはばかる身の上。どうかご内聞にと言う。

狂四郎が鶴松に、俺に出来ることがあれば何でもしようと申し出るが、佐絵を死なせた奴の世話などなりたくない!と睨みつけて来る。

その頃、水野忠成(稲葉義男)は、屋敷にやって来た岩代藩江戸家老菊村外記(須賀不二男)に、岩代藩に公儀検察使が派遣されることになったと告げていた。

早々に鶴松を国元に送り込まんと、岩代藩は断絶となるぞと言うので、菊村は、お庭番に命じて大工政五郎の家にいた鶴松を見つけて頂いたので助かったと礼を言う。

岩代藩を潰しはわしも少々困ると水野は言い、あれは御家老と私との間の密ごとでございますと菊村も笑いかける。

藩主鳥居憲正死亡の後、世継ぎ亀千代も急死していることを検察使に知られたら、岩代藩12万石は断絶となると水野が言うと、5年前は殺そうとしたのに…、佐絵が連れて逃げてくれたのが、今となっては救いとなりましたと菊村も苦笑する。

その後、大工政五郎(水原浩一)の家に、紋部三郎太(五味龍太郎)が数人の家臣を引き連れやって来ると、鶴松を連れて行くと言う。

しかし政五郎は、知ってますぜ、亀千代様が急死したって事は…。5年前には虫けら同然に殺そうとしたくせに、今度はお家の大事だから、返せとは…。あの子にとってはあんたら全員、母親の仇だ!と反抗するが、紋部にその場で斬られてしまう。

二階に上がった紋部たちだったが、先に気づいたお糸が鶴松を連れて逃げ出した後だった。

鶴松を預かった狂四郎は、逃げようとする鶴松を柱に縛り付けていた。

そこに突然、紋部三郎太らがおりんと一緒にやって来て、鶴松を返せと迫る。

紋部三郎太は狂四郎に、噂に聞く円月殺法とやらをしかと見届けてやると言うので、表に出た狂四郎は円月殺法で紋部を倒す。

一行が逃げ出すと、狂四郎は鶴松を連れ、船宿「彫竹」の女将(橘公子)を訪ね、この子を匿ってもらいたいと頼む。

俺は逃げてやる!と鶴松は憎まれ口を叩くが、この子を不幸にしたのは俺なんだと狂四郎が説明すると、よほど身にしみたことがおありなんですねと事情を察した女将は、鶴松を預かってくれる。

外に人の気配を感じた狂四郎が、この船宿から一歩も外に出ては行かんぞと念を押すと、鶴松は急に素直になり、おじちゃん、ありがとう!と礼を言う。

船宿から逃げ出したのはおりんだった。

何だろう?あの子…と呟いたおりんの前に立ちふさがる狂四郎。

大名の子だってね?と笑いかけたおりんは、お前さんがずたずたになるのを観たいのさ。止しときゃ良いのに、粋がりやがって…と、相変わらず憎まれ口を叩いてくる。

狂四郎が、これは俺の罪業の深さだと言うと、大工の政五郎も殺されたよとおりんが教えたので、娘のことを案じた狂四郎は、お糸をどうした?と責める。

すると、おりんは、今頃は生き地獄さ。深川の無縁寺で黒ミサの犠牲になっている頃だよと言うではないか。

無縁寺の一隅では、酒に酔った坊主3人が、藤枝と言う御中老は、子供が出来たのに気づかなかったのか?その片棒を担いでいる菊村様も相当なものだなどと噂しあっていたが、そこに踏み込んだ狂四郎は、3人とも眠らせてしまう。

寺の中では、外国人神父が、祭壇に横たえられた素っ裸にされたお糸を前に、怪し気な呪文を唱えていた。

それを見守っていたのは、頭巾で顔を隠した菊村外記と大奥の女たちだった。

神父の祈りが高まった時、いい加減にばか騒ぎは止めろ!と言いながら、寺の中に狂四郎が入って来る。

岩代藩江戸家老菊村か?この寺のからくりが分かったよ。大奥女が男遊びで孕んだ子の堕しか…、公儀公認らしいな…と言いながら祭壇に近づいた狂四郎は、お糸の様子を見るが、お糸は一旦目を見開いて狂四郎を観たものの、すぐに息絶えてしまう。

この転びバテレンめ、地獄に堕ちろ!と言いながら、逃げかけた神父の背中に剣を突き刺す狂四郎。

そんな狂四郎に向かい、菊村は、あの女の知らせで、鶴松の家に追っ手が向かっていると告げる。

狂四郎は、鶴松は俺が命に賭けて取り戻す!と叫ぶと、その場にいた侍たちを斬り倒して行く。

しかし、その頃、すでに捕まっていた鶴松は、駕篭に乗せられ、岩代藩に向かっていた。

船宿に駆けつけた狂四郎だったが、すでに女将も虫の息だった。

表からその様子を観ていたおりんは、ざまあみやがれ!お前さんに関わったら、みんなこの様だよ!と悪態をつく。

その後、菊村の元にやって来たおりんは、狂四郎は江戸を発ちましたよ。あいつに無縁寺の秘密を知られちゃ、生きて行かさないでしょう?と付け加える。

菊村は、側にいた安西小十郎(伊達三郎)に赤石群兵衛を呼ぶように命じる。

おりんも、私も行きますよと告げる。

狂四郎は、小面を帯につけて岩代藩に向かっていた。 

一方、それを追うおりんは、旅芸人一座「あやめ座」の座長(藤川準)に狂四郎暗殺を依頼していた。

その頃、狂四郎は川縁で、菊村が差し向けた刺客たちを斬り捨てていたが、その時、女の悲鳴が聞こえたので見上げると、崖の上から川に向かって投げ込まれた簀巻きを見つける。

その簀巻きにされていたお艶(長谷川待子)と言う女を助け、一緒に宿に泊まった狂四郎だったが、ヤクザに簀巻きにされたと事情を説明したお艶は、今夜はこの部屋で一緒にさせてくれと、怯えたように頼み込んで来る。

ところが、深夜、寝床で目覚めた狂四郎は、欄間から室内に入り込んで来た蛇に気づく。

飛びかかって来た蛇を斬ると、天井からも別の蛇が落ちて来たので、それも斬り捨て、気がつくと、横に一緒に寝ていたはずのお艶の姿が消えていた。

お艶と言ったな?誰がこの仕事を命じたか分かっている。愛用の蛇を斬ってすまなかったな…と、近くに身を潜めているはずのお艶に対して声をかける。

翌日、橋を渡っていた狂四郎の前に立ちふさがったのは、菊村が送り込んだ赤石群兵衛(北城寿太郎)、安西ら、手だれの面々だった。

狂四郎は、名乗りを上げた赤石に対し、江戸家老菊村外記の命令だろうが、あいつは食わせ者だぜと言うと、黙ってすれ違う。

斬り掛かろうとする仲間を押しとどめた赤石は、あいつと拙者は五分と五分、五分同志なら、勝負は一瞬で決まる。我々の使命は、岩代藩の存続だと言い聞かす。

安西は、松枝の宿でおりんと会うことになっていると告げ、その後、「笹屋」と言う旅籠で落ち合うと、おりんは忌々しそうに、蛇使いはいなくなったと報告する。

安西は、一対一の勝負にこだわる赤石に対し、罠を仕掛けるんだと言い出し、他の侍たちも、相手は相当の使い手らしいから、我々も犬死にはしたくないと賛同する。

すると、おりんが、連れがいるんで会ってくれと言い、げんさん!と呼ぶ。

顔を見せたのは、顔半分が焼けただれた「あやめ座」の座長だった。

座長は、侍たちを外に誘うと、蝋燭に火のついた提灯を遠くから見せる。

やがて、その提灯は大爆発を起こす。

蝋燭の中に火薬が仕込まれていたのだ。

これでどんな奴でも木っ端みじんだと座長はあざ笑い、一緒に付いて来たおりんも、この人の火薬は南蛮仕込みですものと自慢する。

その後、度を続けていた狂四郎の腰の印籠を盗もうと子供が飛びついて来たので、狂四郎は優しく訳を聞くが、そこへ駆けつけて来た姉が、父が長患いで私たちの力ではどうしようもありません。弟は、印籠の中の薬が欲しかったのですと弁解して謝罪する。

狂四郎は黙って、自分の印籠を、その姉の胸元に押し込んでやる。

その後、道しるべの所で立ち止まった狂四郎に、率爾ながら…と語りかけて来た老尼があった。

その能面にいささかゆかりのある者と言うので、その尼の後を付いて行くと、一軒の庵があった。

庵の中には、老尼から青華院様(若松和子)と呼ばれた1人の尼僧がおり、の生めんとは何のゆかりもない者であり、そう言えばあなたがここに来て下さると思ったから嘘をついたと詫びて来る。

訳を聞こうと狂四郎が問うと、あなたは江戸一番の剣の名人とか?私は強く雄々しい侍を求めているので、抱いて頂きたいのですと青華院は言い出す。

彼女は、天下を必ず取る風魔一族の末裔、我々一族の女は先祖代々強い子供を生むために行きて参りましたと言い、迫って来るので、狂四郎は、それでは据え膳を頂戴しようと答える。

寝床に横になった青華院を前にした狂四郎は、にわかにその身体を抱き上げると、庵の外に向かい、おりん!その手裏剣を投げてみろ!この女の背中に刺さるぞと呼びかける。

畜生!と捨て台詞を残して逃げ出そうとしたおりんだったが、追って来た狂四郎に捕まってしまう。

俺はお前を斬りたくないと言うが、おりんが態度を変えようとしないのを見ると、よし、俺の業の深さをお前に聞こうと言うなり、その場でおりんの着物を切り刻んでみせる。

その後、闇の中を歩いていた狂四郎は、先ほど印籠を渡した姉に行き会う。

父がこれをお返ししろと言うので、先の宿まで行って来たと言いながら印籠を返す。

さらに、別れかけた狂四郎に行灯を持たせてくれる。

闇のすすき野を進む狂四郎の様子を、離れた場所から監視していたのは安西と座長、おりんらだった。

やがて、狂四郎が、行灯を置いた途端、大爆発が起きる。

鶴松は、岩代藩の城の中の牢の中に閉じ込められていた。

その世話係を仰せつかっていた綾路 小村雪子)は、父親の中森瀬左衛門(浅野進治郎)に、食事を召し上がりませんと困ったように報告する。

中森は、そんな鶴松の姿を観ながら、主君を生ける屍にして岩代藩の存続を守るのが、まこと忠義と言えるのだろうか?と疑問を口にする。

一方、城に戻った家臣たちは城代に、爆発と共に眠は姿を消し、赤石は1人でその行方を探していると報告する。

城代は家臣たちに、そろそろおりんを始末しないと…と伝える。

その後、安西たちに呼ばれて取り囲まれたおりんだったが、そこに現れたのが姿を消していた狂四郎だった。

安西は、鶴松を連れて帰ると言い狂四郎に、城にいる鶴松をどうやって連れて行くのか?とあざ笑うが、その直後、他の侍たちと共に狂四郎に斬られてしまう。

狂四郎は、助けたおりんに城下を去れと命じるが、お前さんがやられるのを観たいんだよと相変わらずだった。

その頃、城内では、空井戸から外に抜ける抜け道を知っていた中森瀬左衛門が、鶴吉と綾路を逃がしていた。

鶴松と、腰元の綾路の姿が消えたことを知った城代は、すぐに中森瀬左衛門の仕業と気づき、城下の出入口を固めるように命じる。

女と子供を捜し始めた家臣たちだったが、そこへ公儀検察使の村瀬頼元が駕篭に乗って近づいて来る。

先導していた者が、城下物々しいが、何かあったのか?と聞いて来るが、赤石らは、盗賊の詮議に過ぎないと噓を言い、検察使一行を城下に招き入れる。

赤石は困ったことになったと考え込むが、そこに使いの侍が駆けつけ、八幡辺りで安西が斬られたと知らせる。

一方、城下を歩いていた狂四郎は、目の前で倒れた腰元綾路と出会う。

綾路は傷を受けていたが、狂四郎の帯に結んでいた能面を観るなり、それは佐絵様が大事にしていた小面…と口走る。

鶴松様を逃がしたと言う綾路の言葉を聞いて驚いた狂四郎が、鶴松はどこにいると聞くと、そこに警備中の侍たちが駆けつけて来る。

一方、八幡神社に来ていた赤石たちにも、綾路と狂四郎を見つけたと言う知らせが届き、急いで現場に駆けつけるが、すでに狂四郎の姿はなく、全員斬られた死骸だけが残されていた。

その中には、小面の面を顔につけて横たわる綾路の死体もあった。

綾路から教えられた五重塔にやって来た狂四郎は、そこにいるはずの鶴松を探すが、一足先に駆けつけていたおりんに捉えられていた。

綾路はずっとおりんに尾行されていたのだった。

小刀を鶴松に突きつけて脅して来たおりんだったが、狂四郎から、お前にはそんなことは出来んと言われると、人を甘く観やがって!出来る化出来ないか観てろ!と言いながら、小刀で突こうとする。

しかし、狂四郎の言葉通り、どうしても小刀を突くことは出来なかった。

開き直ったおりんは、殺せ!とやけになり、鶴松は、おじちゃんと叫んで狂四郎に抱きついて来るが、綾路は死んだぞと教えると、窓から下を覗き観て、おりん、ここは取り囲まれたようだなと呟くと、鶴松を連れて逃げろと命じる。

鶴松は、嫌だ!おじちゃん!と訴えかけて来るが、それには答えず、1人外に出た狂四郎は、待ち構えていた侍たちと対峙する。

次々と矢を射られ、足を引っかける綱が足下を狙って来るが、それらをことごとく交わしながら、狂四郎は敵を倒し始める。

しかし、頭上より落ちて来た網を避けることは出来ず、とうとう捕まって縛られてしまう。

それを目にした鶴松は、侍たちに、おじちゃんを殺さないと約束するか!と呼びかけ、侍たちは、お城にお帰りいただければ誓って…と答える。

すると覚悟を決めたかのように、鶴松は城に行くと言い出す。

後ろ手に縛られていた狂四郎には、おじちゃんのこと、忘れないよと言い残し、侍たちに連れて行かれるが、残された狂四郎は、契約は空手形のようだなと苦笑する。

狂四郎に斬り掛かろうとした侍たちに、おりんが次々に手裏剣を放って倒す。

狂四郎は、おりん、逃げろ!と叫ぶ。

一方、鶴松の方も、狂四郎の危機を誘ったのか、途中で側も侍が持っていた狂四郎の刀を奪い取ると、五重塔の方に戻って行く。

狂四郎は後ろ手に縛られたまま、侍たちに取り囲まれており、なかなか刀を渡す機会がない。

鶴松は、追って来る侍を避けるため、側にあった大きな木の上に昇るが、それに気づいた狂四郎は、刀を抜いて落とせ!と声をかける。

鶴松は、背中を木に向け下に立った狂四郎目がけ、抜き身の刀を垂直に落とす。

狂四郎は、落ちて来た刀で縛られていた綱を切ると、その刀を握り敵に立ち向かう。

鶴松!良く観ておけ!これが武士と言う者の姿だ。この殺し合いが!と叫んで次々に敵を倒し始める。

その時、引け!引けい!と叫びながら馬に乗って駆けつけて来たのが、中森瀬左衛門と公儀検察使村瀬頼元の使いの者だった。

当藩内の内情、その乱脈ぶり、目に余るものがある。城代家老、江戸家老共々切腹を申し付ける!と告げると、立っていた狂四郎に、そなたが眠狂四郎か?と尋ねて来る。

当藩は廃絶と決定するであろうと言い残すと、使いのものは立ち去って行く。

残された侍たちは呆然としていたが、そんな中、赤石群兵衛だけは、武士の維持、これが俺の最後の忠義だ!と言い出す。

その場に残った中森瀬左衛門はそれを止めようとするが、狂四郎は、やむを得ん…、どうやら御主はこうなる運命のようだ。円月殺法をご覧にいれようと答える。

赤石は、五重塔の入口階段付近に立つが、狂四郎が剣をゆっくり回し始めると、太陽光がその刃に反射し、赤石の目を妨げる。

赤石は思わず狂四郎に飛んで斬り掛かるが、下から斬り上げた狂四郎の刃に倒れ去る。

中森瀬左衛門は、わしは不忠ものだ。公儀検察使に、鶴松様は5年前に亡くなられたと偽りを申したと狂四郎に言う。

狂四郎は、それは鶴松を殺させまいとする意図があったと察し、鶴松は、俺は大工の子だ!と答える。

その一部始終を観ていたおりんは、悔しいけど、私の負けだ…と呟く。

狂四郎は、鶴松を連れて江戸へ帰ることにするが、後ろを振り返ろうとする鶴松に、振り返るな!まっすぐ前を向いて歩くんだと言い聞かし、鶴松も素直に、うん!と答えるのだった。