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眠狂四郎炎情剣

柴田錬三郎原作の映画化シリーズ第5弾

今回は、狂四郎が、心ならずも見知らぬ妻女の仇討ちを手伝わされ、討った相手から、助太刀すれば、今度はおぬしの恥だという謎の言葉を言われてしまうと言う謎めいた導入部から物語が始まる。

やがて、物語は、海賊の末裔の話と言う伝奇要素に展開して行く。

何と言っても今回の見所は、中村玉緒がお色気で仕掛けて来る魔性の女を演じている所であろう。

この時期の玉緒さんは、まだ、お姫様イメージがあった時期ではないかと思うが、その玉緒さんがこうした役に挑んでいることは珍しいように思う。

その悪女と対比的な無垢な少女として、中原早苗演ずるおりょうと、姿美千子演ずる加代が登場している。

この両者も全く正反対のキャラクターであり、妖し気な刺青を入れている小笹を演じる小桜純子等も交え、今回の女性陣はバラエティに富んでいる。

対する男性陣は、安部徹と西村晃が組んでいるのだから安定感抜群。

クライマックスの剣劇シーンはロケーションの面白さもあって、ちょっと異色の見せ場になっている。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、大映、柴田錬三郎原作、星川清司脚色、三隅研次監督作品。

農村の道を歩いていた眠狂四郎(市川雷蔵)の前に駈けて来たのは、あばた面の浪人相手に仇討ちと思しき檜垣ぬい(中村玉緒)だった。

助勢を頼まれた狂四郎だったが、かかわり合いを避けようとすると、お望みのものを差し上げますとまで言うので、仕方なく、あばた面の浪人の刀を落とし、ぬいに本懐を遂げさせてやるが、刺されたあばた面の侍貝塚紋之助 (伊達三郎)は、死に際に狂四郎の方を観ながら、助太刀すれば、今度はおぬしの恥だ…と謎の言葉を言い残す。

ぬいは改めて、これで夫、檜垣精十郎の恨みが晴らせましたと狂四郎に礼を言うと、仇討ちが本当のことなのか疑念を持っていた狂四郎を得心させるため、藤堂家家老、跡部将監(安部徹)の屋敷に連れて来る。

まだ、そなたから褒賞をもらってないが?と座敷に着いた狂四郎が聞くと、この身を、一夜だけお抱きなさいませとぬいは答える。

そこに姿を現した跡部は、ぬいの証言を裏付けるように、檜垣清十郎は貝塚に闇討ちに会ったと証言し、ぬいには、檜垣の家の再興を取りはからおうと約束する。

狂四郎が、夫が闇討ちに会った理由を尋ねると、ぬいに横恋慕していた貝塚が、檜垣に奪われた恨みだと跡部は説明する。

狂四郎は、自分に対しては礼の言葉すらなかった跡部の態度を不愉快がるが、ぬいには、今宵戌の刻、吉原裏の浄閑寺に来てもらおう。俺のねぐらだとぬいに耳打ちして帰る。

狂四郎は、あばた面の浪人が言った助太刀すれば、今度はおぬしの恥だ…と言う最期の言葉がひっかかっていた。

札差の「鳴海屋」では、跡部が珍しい銅鐸を持参し、鳴海屋太兵衛(西村晃)に、口止め料として渡していた。

実は、跡部は、鳥羽水軍なる海賊の末裔を滅ぼし、その莫大な財宝を、鳴海屋と組んで手に入れていたのだった。

しかし、跡部は、その鳥羽水軍の一家眷属など、関わりのある者は一人残らず討ち果たしたと思っていたが、そうではないかも知れぬと危機感を募らせていた。

鳴海屋も、広義隠密も動き出しているようだと教える。

跡部は、万一、藩主藤堂高敦の耳にでもこのことが入れば、これだと、自らの腹を斬る真似をして見せる。

その夜、寺に戻って来た狂四郎は、部屋に入ろうとする所を、先に来て待っていたぬいから、懐剣を突いて来られる。

しかし、あっさりそれをはねのけられたぬいは、自ら、用意してある寝所に入ろうとするので、狂四郎は、俺は女を犯すことに慣れている男だぞ。お前のような女を見ると欲情をそそられる。明日に鳴ればお前に興味がない。助太刀すれば、俺の恥か…と言いながら、ぬいに迫る。

翌日、馴染みの酒屋で飲んでいた狂四郎だが、その調理場に突然1人の男が飛び込んで来ると、追われている、匿ってくれ!と言う。

外には、毛皮をかぶった猟師風の男、博多にわかの面をかぶった男ら野次馬が店の様子をうかがっていた。

しかし、主人が断ると、その男は包丁を握ったので、店の者や客たちは全員逃げ出してしまうと、男は入口を塞ぎ、ろう城する。

そんな中、狂四郎だけは我関さずと飲んでいたので、男は包丁で突いて来るが、あっけなく払われる。

すると、その場に男は土下座をし、お願いがあると言い出したので、眠は聞きたくないと拒絶するが、娘が殺される。昔、俺が捨てた…、昔、俺は…などと勝手に身の上話を始めようとするので、狂四郎は怒って、それ以上言うな!と叱りつける。

それでも、その男は、後生だ。聞いてくれ。どうせ聞かなくたって、店を出れば俺の仲間と思われて命を狙われるに決まっているなどと言うので、役人の前で言えと狂四郎が言うと、それが言えねえんだ…と言う。

そこに、役人たちが勝手口から入り込んで来て、その男を捉えると、こやつは無宿人伝吉(守田学)と教え、御主は?と役人が聞いて来るが、狂四郎は、ただの居酒屋の客、疑わしくばいかようにも…とだけ答えたので、役人は無関係と判断、そのまま帰ってしまう。

金を飯台に置き、帰りかけた狂四郎だったが、入口を出ようとした途端、熊の毛皮をかぶった男が斬り掛かって来たので、狂四郎は、同時に襲って来たにわかの面の男、商人風の男も斬り捨ててしまう。

伝吉を追っていた3名が斬られ、斬ったのは眠狂四郎と知らされた跡部は驚く。

しかし、うっかり突つくと蛇が出て来んとも限らん…と跡部は呟く。

捕まった伝吉は、市中引き回しされるが、鳴海屋の前に来た時、じっと見つめていたのを、野次馬に混じって観ていた狂四郎は気づく。

やがて、伝吉は磔の処刑を受けて死体がさらされる。

それも見届けた狂四郎だったが、野次馬の中に、お高祖頭巾をかぶったぬいの姿を見つける。

その後、狂四郎は鳴海屋に呼ばれ、さる高貴なる家の娘で、大奥に召されて1年、まだ色香の味を知らんと言う小笹(小桜純子)を紹介され、お引き上げ願いましょうかと求められる。

訳を聞くと、跡部将監との腐れ縁をきっぱり斬りたいのだと言い、鳴海屋は金まで差し出して来る。

話が巧過ぎると最初から見抜いていた狂四郎は、鳴海屋が部屋を出ると、お前が高家の子女だと?鳴海屋のイロか妾だろう。立ってみろと命じ、着物を脱がせると、小笹には、身体に子供が抱きついている不思議な刺青があった。

その片手は胸乳の方に伸びている。

感心した狂四郎は、すぐに出かけよう。衣服を付けろと言い出したので、小笹は意外そうな顔をする。

狂四郎が小笹を連れて行ったのは、家老跡部将監の屋敷だった。

狂四郎から、いきなりこの女を献上すると言われた跡部は戸惑うが、居酒屋の前にて拙者を襲わせた物売りに化けた剣客たちは、当家の者でしょう?自分は伝吉なる男には何も聞いておらん。以後、拙者への襲撃はご無用に願おう。今後一切、後藤家とは関わりない。この女をどうされようと構わぬが、世にも珍しい絶品、置いて参ると言い残して帰る。

帰りかけた狂四郎に、何か返礼の馳走でもと跡部は呼び止めるが、狂四郎が無用と答えて帰ると、庭の隅に現れた加倉井耀蔵(上野山功一)が、跡部の顔色を観て頷く。

表に出た狂四郎を追って来た加倉井耀蔵は、自分が興味があるのは、貴殿の円月殺法と言葉をかけ、周囲の者たちには手出しをするなと命じたので、狂四郎は、円月殺法を披露することにする。

それに対し、配下の者たちが加勢しようとしたので、加倉井は邪魔をするなと怒るが、その時駆けつけて来たぬいが、この討ち合いはなりませぬ。御家老が引けと申されるのですと止めに入る。

それを聞いた加倉井は、やむなく刀を収め帰って行くが、狂四郎はぬいに、噓だろう?家老が引けと言うのは…と話しかける。

ぬいは、隠さず、あなたを殺したくありません。あなたに味方になって頂きたいのですと、色目を使って来る。

その後、小笹と寝ていた跡部の寝所に忍び込んだ狂四郎は、そやつは鳴海屋の妾だぞと教え、驚きながらも立ち上がり、呼び鈴を引こうとする跡部には、藤堂家に傷が付くぞ。それでも宜しいか?と言い残して帰って行く。

鳴海屋を訪ねた狂四郎は、お前の計算が知りたい。俺と藤堂を噛み合わせたいらしいが?と問いつめると、商人は利得で生きております。これ以上の損はまっぴらです。あなた様を計って天秤にかけました…と素直に打ち明けると、檜垣ぬいと言う女は、実は鳥羽水軍の生き残り探索隊であり、実は水軍総帥の娘が品川の外れに潜んでおります。お助けください。水軍の末裔たちを絶滅させようとしているのが跡部将監なのですと説明する。

生き残りの口から公儀に漏れればこちらも身の破滅。あなた様はぬいを助けなさいましたな?罪多き者を助け、罪安浅き者を殺しましたな?と鳴海屋は狂四郎に詰め寄る。

その後、品川の外れの沼から上がって来た娘おりょう(中原早苗)に、そなたは海賊の末裔だな?と話しかけた狂四郎は、小柄を投げようとする相手に、為損じたらその身体をもらうぞと言い、おりょうが投げた小柄を弾き飛ばしてみせる。

悔しがったおりょうだったが、負けたことを悟ったらしく、近くに身を横たえるが、狂四郎が、もう良い、起きろと言うと、あんたは約束をさせた。私は約束を守ると言いながら着ていたものを自ら脱ぎ去る。

狂四郎は、裸になったおりょうの胸に十字架の首飾りが下がっていることに気づく。

おりょうは、老人佐治兵衛(水原浩一)と暮らしていた小屋に狂四郎を連れて来る。

孫娘から聞いたが、すごい腕だそうですな?と佐治兵衛が言うと、狂四郎は、鳴海屋からここを聞いて来たと打ち明け、復讐なんて空しいものだと思うがねと忠告する。

佐治兵衛は、もはやこれまで…と諦めたようだが、その娘の母親は異国人だろう?俺も転びバテレンが姦淫した子だと打ち明けると、老人と女の力で復讐等出来るはずもないと説得し、後、生き残っている水軍の末裔の名を尋ねる。

佐治兵衛は、いざと言うときのために、船を用意していると教えると、伝吉、紋之助、菊治…と名を挙げ始める。

紋之助の苗を聞いた狂四郎は、それはあばたの男か!?と驚き、藤堂の娘に殺されたし、伝吉も磔になって死んだのをこの目で観たと伝える。

その時、狂四郎は、その小屋が囲まれていることに築き、死ぬなよ佐治兵衛!と声をかけると、自らは外に出て行く。

外には、白装束の行者風の一団が待ち構えていた。

狂四郎は円月殺法で立ち向かい、おりょうも小柄で応戦するが、1人だけ取り逃がしてしまう。

吾平は逃走用の船を用意し、共に逃げることになったおりょうは、狂四郎に自分が身につけていた十字架を手渡すのだった。

一方、逃げて来た刺客からことの顛末を聞いた跡部は、何故、眠がそのうちを知っていたのだ?と不思議がり、おりょうと佐治兵衛はいずれ追っ手を差し向けると決断する。

それを側で聞いていたぬいは、鳴海屋と眠の結びつきは考えられませんか?と言い出す。

馴染みの飲み屋で飲んでいた狂四郎は、主人の弥助が考え込んでいるので訳を聞くと、借金に締め上げられているんですと聞かされ、世の中、金、金…、誰もがその欲心で渦巻いている…と今の世情を嘆く。

その後、店を出て帰宅していた狂四郎は、駕篭を運ぶ侍の一行とすれ違う。

その時、駕篭から、縛られた檜垣ぬいが転がり落ちて来る。

警護していたらしき侍たちは、慌てて狂四郎に、観たな?貴様!と刀を抜いて来たので、見せておいていかんとはどう言うことか?藤堂家の家中の者だろう?と言いながら、数名を切り捨てたので、他は逃げ去る。

残されたむいに、又.俺に手助けさせる気か?今度はどこに送り届けようと皮肉を言う。

ぬいは、平然と、檜垣の屋敷に…と指定する。

無理矢理、婿を押し付けられそうになり、断ったら拉致された等と自宅に帰ったぬいは説明するが、全く信用していない狂四郎は、ここまで引き込んで殺す気か?お前は海賊生き残りの探索が役目だろうと冷たく問いかけると、あなた様は私の胸の内はお分かりになるまい。今に跡部将監も手玉に取ってみせましょうと謎めいたことをぬいは言う。

私の味方になってくれますか?さすれば宝の山が思うがまま…、財宝を握った後に鳴海屋は殺します等と言うぬいの言葉を聞いていた狂四郎は、お前の望みは、最後は金か?お前は途方もない化物だ。嫌になるぜ…とため息をつく。

私を一夜だけでお捨てなさいますか?飽きさせませんなどと寝床に誘おうとするので、お前のような女には、夫、檜垣精十郎は邪魔だったのではないか?その白い肌を抱くのは一夜限りと言ったはずだ…と言い残して立ち去ろうとした狂四郎は、廊下に出た所で襲撃して来た侍を円月殺法で倒して帰る。

札差 鳴海屋と書かれた店の前に駕篭が着く。

中から降り立ったのは、上方芸人の森田菊弥だと、篭屋が聞いた狂四郎に教える。

菊弥は、鳴海屋の勝手口の方に向かうと、中から出て来た下女を見るが、その下女が、近づいて来た狂四郎に会釈してのに気づくと、その場を立ち去ろうとするが、その直後、頭巾をかぶった侍数名に襲撃される。

加倉井!と狂四郎が気づいて応戦し蹴散らすと、斬られた菊弥を助け起こし、おりょうから受け取った十字の首飾りを見せると、佐治兵衛が言っていた最後の1人、菊治と言うのはお前だろう?何故鳴海屋に行った?と聞く。

もはや虫の息となった菊弥は、加代(姿美千子)と言う娘が鳴海屋の下女として働いているが、赤ん坊の時、自分が背負ってちりじりになって別れた後行方不明になっていた伝吉の娘である。本人は昔のこと等何も知らないのだと言って息絶える。

その様子を物陰からうかがっていたのは、ぬいだった。

鳴海屋の正面から中に入った狂四郎は、番頭と女中が抱き合っている所に出くわすが、加代と言う下女はいるか?と聞く。

そこに鳴海屋が出て来て奥に招いたので、加代の正体を海賊一味の娘と明かした狂四郎は、あの下女に手を出したら斬るぞ!と念を押す。

鳴海屋は、加代の素性を本当に知らないようだったが、あの娘が気になるなら、どうしても私の味方になって頂きましょうと迫って来る。

洗いざらいぶちまければ向うは最後にお前を殺すだろうと、跡部のことを忠告すると、これをご覧下さいと言いながら、鳴海屋は、見覚えのある小笹の木元を示しながら、これと小笹の生首を送って来ましたと打ち明ける。

跡部の奴、惨いことを…と呟く狂四郎。

その頃、1人、黙々と水汲みをしている加代をぬいが盗み見ていたが、そんな加代に近づいて来た狂四郎は、腹が減ったので握り飯を作ってくれぬか?と頼む。

先ほど、番頭といちゃついていた女中が、私が作りましょうかと声をかけて来るが、狂四郎は相手にしなかった。

台所で握り飯を作り出した加代の姿を観ていた狂四郎は、穏やかな笑顔になっていたが、急に厳しい顔つきに変化する。

檜垣清精十郎法要の儀式が行われていた寺に、跡部将監と檜垣ぬいも参加していたが、

そこに、その才女は、ここで焼香する前に懺悔しなければ行けない。夫を闇討ちしたのは才女と思う、金の欲のために…と声をかけて姿を現したのは狂四郎だった。

あばたは海賊だった。海外にでも逃げれば良かったものを、色香にはまった…と狂四郎がぬいに迫ると、跡部が、領外ものは斬れ!と命じたので、取り巻きの侍たちが狂四郎に向かって行く。

加倉井耀蔵 は、狂四郎との一騎打ちを望み、他の侍を遠ざけるが、円月殺法の前に倒れる。

狂四郎は、又一つ、鍛え抜いた技が消える…と加倉井の死を悼み、その場で跡部も斬り捨てる。

そこに、馬で駆けつけたのは藩主藤堂高敦(島田竜三)で、鳴海屋よりの通達で知ったが、今回の件、藩には無関係、財宝は全て公儀に献上すると伝える。

それを聞いた狂四郎は、何事もお家のためか…、気に食わねえ!これだから大名なんて…と吐き捨てる。

その後、鳴海屋の加代を訪ねた狂四郎は、又おなかが空いたんですか?と笑いかけて来た加代に、今日は違うよ。お前を哀しませに来たんだ。お前は親の顔を知らんのか?死んだよ、両親とも…と伝える。

それを聞いた加代は、泣きながら拭き掃除を始めるが、2両をその場に置くと、奉公先を変えるが良い。父とは度の宿で会った。貧乏故にお前を捨てたことを悔いていた。患い続けて死んだ。この金は父から預かったものだ。父は生真面目でみんなに好かれていた職人だったよと噓を教える。

加代は、そうですか…、父ちゃん死んだんですか…。でもみんなに好かれていたんですねと聞いて来たので、狂四郎は、ああ、良い人だったと答えてやる。

加代は、私、1人ぽっちでも生きて行ける。一生懸命働いて…と言うので、困った時には、吉原裏の浄閑寺に俺を訪ねて来るが良いと狂四郎が声をかけると、ありがとう、お侍さんと加代は感謝する。

外へ出た狂四郎を追って来た鳴海屋は、どうでした?家老を差し出す策略は等と言いながら、金包みを渡そうとしたので、止せよ、俺は今、良い気分なんだ。欲の固まりのような世の中で、誰にも知られずきれいに咲いた花を観て来たんだ。この気分を概すると叩き斬るぞ!と怒鳴りつけ、その場を立ち去る。

その時、役人たちがやって来て、鳴海屋を捕まえてしまう。

田舎道を歩いていた狂四郎の前に立っていたのは檜垣ぬいだった。

狂四郎は、すれ違い様、無言でぬいを斬り捨てて去って行く。

倒れたぬいは、狂四郎様…、まこと、ぬいは…、御慕い申し…と呟いて息絶えるのだった。