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暗黒街大通り

この作品同様、井上梅次監督の手になる、東映「暗黒街最後の日」(1962)と「 暗黒街最大の決斗」(1963)の2本は鶴田浩二が主役だったが、この作品では、高倉健、梅宮辰夫、待田京介と言った、当時の新人クラスが主役を張っている。

とは言え、まだ単独では客は呼べないと言う判断からか、3人を兄弟と言う形で共演させている。

冒頭彼らの父親と言う設定で大木実が登場しているのも、新人メインの主役を補強する意味合いもあったのではないかと思う。

この時代、見た目的に陽気な印象がある梅宮辰夫にシリアスな演技をさせたり、逆に、ちょっと陰気な感じがある待田京介が陽気なキャラクターを演じたりしているので、青春ものとしてもやや違和感を感じないでもないが、白いスーツを粋に着こなした梅宮辰夫は、この作品で一番生き生きしているように見える。

その分、長男役の健さんは終始地味な印象で、若干影が薄くなってしまっているような気がする。

それでも敵側を演じているのは、安部徹、金子信雄、菅貫太郎、神田隆、浜田寅彦…と言った悪役が板に付いたような人たちばかりで、悪役オールスター映画とでも呼びたくなるような作品になっている。

それに対し、健さんらは、いかにもヒヨッ子と言った印象で、ヤクザの家に生まれて来た責務を果たそうとする長男役の健さんと、自由に生きたがっている辰兄ぃや待田京介と徐々に亀裂が生じて行く様を描いている。

まずは、3人の子供時代を描いた冒頭部が見物で、健さんと辰兄ぃの子供時代を演じている子役が、雰囲気そっくりなので笑わせてくれる。

一方、ヤクザの家に生まれたことを恨み、一生人並みの結婚等はしないと覚悟する娘を演じている三田佳子は、前作で佐久間良子が演じていたヒロイン役とほぼ同じキャラクターのような印象である。

男たちが活躍するヤクザを否定する言い訳要素として用意されているキャラクターなのだろう。

ラストに銃撃戦はあるものの、全体としてはアクション映画らしい雰囲気は薄い。

映画好きとしては、若い時代の緑魔子や八名信夫、潮健児と言った役者たちが見られるのが嬉しかったりする。

何より、健さんがこんな最期を迎える作品があることを知っただけでも驚きである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、東映、井上梅次脚本+監督作品。

町は繁栄しているが、その裏では黒い権謀術策がうごめいている(…と銀座の風景を背景にテロップ)

タイトル

夜の大通り、背後から迫って来た黒い車に撃たれて倒れる男の姿を背景にキャストロール

そして、このルールは今も昔も変わらない。

着流し姿で路地にやって来た一匹狼のヤクザ忍朝二郎(大木実)は、とある戸口の前で見張っていたチンピラに、黒岩はいるか?と尋ね、成金の朝だと名乗ると、子分が制止するのも止めず中に入り込む。

中では、黒岩元(安部徹)と子分の後藤(潮健児)を前に、いくつかのテーブル上で外国人たちが博打をしていた。

そこにやって来た朝二郎は、上半身を脱いで背中に描かれた歩の駒と、右肩の部分の描かれた逆さまの金の駒を見せ、歩だって敵陣に入れば金さと言いながら、一つのテーブルの上に数枚の将棋の負の駒をばらまくと、銃を黒岩に突きつけ、てめえたち愚連隊の好き勝手にはさせない。こちらの賭場に移ってくれと客たちに呼びかけ、客が外に逃げ出すと自分もゆっくり帰って行く。

それを観ていた黒岩は慌てず、てめえの家に帰れば奴もただの歩さ…と薄笑いを浮かべる。

自宅に帰って来た朝二郎は、子分の岡島千松(南道郎)と一緒に上機嫌に酒を飲んでいた。

その側では、妻の静子(千原しのぶ)が仕立物をやっていたので、金が入ったんだからそんなことは止めろと朝二郎は止めさせようとするが、金が入ってもすぐになくなるんだからと静子は手を休めようとしない。

そこに、外で遊んでいた鉄也 、銀二郎、健三の仲良し3兄弟が、腹が減ったと言いながら帰って来る。

その子供たちに静子に夕食を食べさせている中、朝二郎は、拳銃を脇に置いてのんびり風呂に入っていた。

そんな朝二郎の裏庭に忍び込み、風呂場の窓から、中を様子を覗き込む3人の男たちがいた。

松本、多岐川、弁天次郎の3人だった。

彼らは、朝二郎が銃を側に置いている所を見ると、いきなり風呂場に飛び込み、銃を取ろうとした朝二郎を滅多突きにして逃げ出す。

それに気づいた静子と千松が風呂場に飛び込んで来て、朝二郎を抱きかかえるが、朝二郎は、鉄也 、銀二郎、健三と3人の息子を呼ぶと、いつかみんなで組を起こせ。1人じゃダメだろうから、3人力を合わせて部屋を興すんだ。どんなことがあっても3人離れるんじゃないぞ…と言い残して息絶える。

その翌年、朝二郎が属していたヤクザの中万組と黒岩の地下警察は、関東総代である卍党の篠田春雄(沢彰謙)を仲介人として手打ちが行われる。

その場に乗り込んで来た3兄弟は、卑怯者!と叫びながら、その場に歩の駒をばらまく。

中万組のものが3人の子供を押さえ、黒岩は、サツに突き出すんだ。サツはこういうときのためにあるんだと薄笑いを浮かべる。

12才の長男鉄也だけは警察で調書を取られるが、下の2人はまだ幼いと言うので許してもらえる。

3人の母親は既に亡くなっており、3人は千松が育てていたのだが、そこにやって来た中万組の親分中田万造(金子信雄)は、頭を下げる千松に対し、自分にも息子と娘がいるので、3人兄弟を引き取りたい。朝の供養のために、そのくらいしたいと千松に申し出る。

その後、中万組に引き取られた3兄弟だったが、同じ小学校に通うことになった中万の息子勝雄の言いなりになるよう、いつも付き添いの近藤(杉義一)から強いられ、その度に抵抗していたので、中万の家の中庭で殴られる羽目になる。

そんな哀れな3兄弟の様子をいつも涙ぐみながら観ていたのは、まだ幼い勝男の妹美紀だった。

そんな中、中万の片腕沖山(神田隆)が、ああ仲が良くてこのまま大きくなると…と心配そうに中万に話しかけて来たので、組を乗っ取られてしまうんじゃないかと心配しているんだろう?心配するな、今のうちに兄弟別れ別れにするんだと打ち明けると、3兄弟を呼び寄せて、今後、鉄也は下関に、銀次郎は秋田に養子に出すが、健三だけはまだ小さいので家に置いておくと伝える。

しかし、翌朝、列車の時刻が迫って来たので、近藤が鉄也と銀次郎を起こしに行くと、3兄弟の寝床はもぬけの殻になっていた。

3人揃って逃走したのだった。

それから10数年…

中田万造は関東のヤクザの総代に納まり、会社も中万興業と名乗るようになっていたが、息子の勝雄(菅貫太郎)は、竹中(有木山太)から連絡があり、紅会が三条早苗のショーを台東ホールでやらせないと言っていると、沖山に電話で報告していた。

どうやら、紅会の背後には愚連隊をまとめて東京クラブと言う組織を作っていた黒岩がいるらしく、どうやらその東京クラブが影から糸を引いて竹中を動かしているらしかった。

沖山からそれを聞いた中万は、さっそく黒岩に電話を入れると、竹中に手を引かせて欲しいと頼むが、黒岩は、竹中も仲間が増えて大変らしいので、そっちで話をつけてくれないか。と逆に頼んで来る始末だった。

竹中は、台東ホールの上がりの3割を寄越せと言っているらしかったので、沖山は、敵が竹中を使うんなら、こっちも誰か使いましょうと提案するが、今や仲間に率いれた横浜の大滝や山全を使うのはまずい、誰かいねえか?と中万は考え込む。

その頃、近藤が経営していたボクシングジムで練習していたウエルター級の児玉に、大したことねえなと因縁をつけて来た若者がいた。

その若者が、大きい兄ちゃんと呼ばれた2人の青年がその後ろに控えており、その内の1人長男鉄也(高倉健)が、近藤さん、忍ですよと名乗ったので、近藤は初めてその3人が、昔逃げ出した忍3兄弟だと思い出す。

児玉に試合を申し込んだ一番末っ子の健三(待田京介)はすぐにリングに立つが、一発殴られて感心した後、そろそろさばけよと観ていた次男の銀二郎(梅宮辰夫)から声をかけられると、あっという間に相手をノックアウトしてしまう。

近藤に連れられ、中万の家にやって来た3兄弟は、中万から歓待される。

あれから何年になる?と中万が聞くと、12年になりますと鉄也が答える。

勝男もその席にいたが、やがて妹の美紀(三田佳子)が姿を現すと、中万は3人に酌をさせ、一番おしゃべりになっていた健三は、俺たち3人とも、ちょっぴり惚れてたんだな、ちっこい頃のあんたに…と打ち明ける。

しかし鉄也は表情も硬く、当分の間、3人の間に女は入れないことにしていると答える。

そんな鉄也たちに、真顔に戻った中万は、仕事の話だが…と言い出し、黒岩を知っているか?今じゃ、東京クラブと言う愚連隊の組織を作っているが、表面上は俺と盃を交わしていることになっていると教え、お前たちが前に出て戦ってくれと頼む。

分の悪い仕事だな…と銀次郎は不満そうだったが、鉄也は承知し、その代わり一つだけ条件がある。成功したら、成金の家を作らせて欲しいと願い出る。

それを聞いた中万は、良し、縄張りを分けてやると承知する。

台東ホールにやって来た3兄弟は、紅会が客を追っ払っていると聞き、表に出ると、確かに、中に入ろうとする客を紅会と思しき愚連隊連中が立ちふさがっている。

しかし、まだ肝心の三条早苗が来ていないと分かった鉄也は、銀次郎に三条を呼んで来るよう頼む。

銀次郎が三条の家に来ると、門の所に紅会のチンピラらしき3人が立っていたので、全員叩きのめすと、玄関ドアから怖々、外の様子を観ていたお手伝いらしき女性が怖がってドアを閉めてしまう。

仕方がないので、庭先の木を上り、禁じられた遊びのレコードを聴いていた三条早苗の二階の部屋の外に立つ。

驚いた早苗に、自分たちが絶対守ってみせるからと説得し、何とか会場の台東ホールに連れて来た銀次郎は、客たちの前に立ちふさがっている紅会の連中に。おねえたちは10人いる、こっちは3人だ。素手で戦って、俺たちが勝ったら客を通すんだと声をかけ、面白いと乗って来た相手と取っ組み合いの喧嘩になる。

あっという間に勝負は決し、3兄弟が全員をのしてしまったので、客を入れてくれ!と銀次郎は呼びかけ、三条早苗のショーは無事始まる。

しかし、勝男は鉄也に、奴らきっと殴り込んで来るぜ…と仕返しの恐れを強調する。

事実、その後、竹中は黒岩に電話を入れ、人を貸して欲しいと懇願するが、たった3人に10人もの子分がやられるなんて信じられぇ。てめえ1人でぶっ潰せ!と怒鳴られてしまう。

竹中は仕方なく、満身創痍の子分に、もう一度行って来い!と発破をかけるが、その時、乗り込んで来たのが3兄弟だった。

子分たちが拳銃を向けると、ハジキの使い方を知っているか?と笑った銀次郎が、目にも留まらぬ早さで自分の銃を連射すると、その場にいた全員の腕時計が破壊されていた。

健三は愉快そうに、大きい兄ちゃんは投げ、小ちゃい兄ちゃんはハジキ、俺はパンチでなら誰にも負けないぜと自慢する。

鉄也は竹中に、今後、中万に手を出さないでくれと申し出る。

この顛末を聞いた中万は、横浜の大滝からも電話があり、向うでもお前たちのことが大評判だそうだぜと上機嫌で、自宅に帰って来た3兄弟に酒を勧める。

仲間内の坂崎(小林重四郎)、曽根(菊地双三郎)、山全(浜田寅彦)もやって来て、これで勝男にも良い後見が出来たと喜ぶ。

中万は、誰かうちの美紀を女房にしねえか?などと言い出し、それを廊下で耳にした美紀は、沖山が呼びに来ても、恥ずかしがって逃げ出してしまう。

そんな中、この際、一気に東京クラブを潰そうと思うと中万は3兄弟に話を向ける。

山全たちも、東京クラブには、最近白タクや野球くじで随分縄張りを荒らされていると説明する。

それを聞いていた鉄也は、成金組を認めて欲しいと迫る。

1人、仲間はずれにされた勝男は、ふてくされていた。

堅気になった岡島千松がやっている「千松」と言う店名の蕎麦屋の2階に訪ねて来た美紀は、そこに鉄也しかいないので他の2人は?と聞くと、銀次郎は近くのアパートに越したし、健三はジムに練習に行ったと鉄也が教える。

美紀は寂しそうに、こんなにおなりになるとは思ってもみませんでした。同じ道に…と、遠回しに、3兄弟がヤクザになったことを嘆く。

どうしても家を興すつもりなの?そんなに大切なの?ヤクザの家を興すことが…。亡くなったあなた方のお父さんも、家のことより、3人の幸せを祈っていると思うの。私、恨んでいるの、あの家に生まれて来たことを。だから、一生結婚しないつもり。ヤクザが嫌いなの。憎いの…と伝えると、そのまま帰って行ってしまう。

そこにお茶を持ってやって来た千松は、窓辺で寂し気に外を見つめる鉄也に気づき、てっちゃん、どうしたんだい?と戸惑う。

その頃、銀次郎は、又、三条早苗の家に来ていたが、お手伝いが中に入れようとしないので、又前と同じように庭の木を上って二階の屋根に登っていたが、そこに車で帰って来た早苗が気づき、笑いながら部屋に通してくれる。

早苗は、銀次郎のことを、ちょっと素敵だと思った、男らしくて…と言い、満更でもなさそうだったので、これから時々会ってくれないか?と銀次郎は頼む。

早苗はあっさり承知してくれるが、そこに入って来た母親が、何故こんな人をうちに入れたんです?と早苗を叱り、銀次郎には、お帰りください!2度とここへは来て欲しくありませんと言って追い出すと、私はヤクザは大嫌い!と吐き捨てたので、それを背中越しで聞いた銀次郎は凍り付いてしまう。

一方、その頃、健三は、銀座の若者たちがバンド演奏に合わせてツイストを踊っているジャズ喫茶で楽しんでいたが、気がつくと、尻ポケットに入れていた財布がない。

背後にいた男につかみ掛かり、財布を返せと迫るが、男は知らないととぼけ、警察を呼んでくれと言い出す。

そこに警官がやって来るが、その男は財布を持っておらず証拠はあるのか!と開き直ったので、健三が焦っていると、私が証人になるわ!と側にいた女の子が手を上げる。

そして、その人が掏って、その人に渡し、今はその人の右ポケットに入っていると指摘したので、警官がその男を取り押さえ財布を見つけてくれる。

健三は、その女の子と同席し、名前を尋ねると、ルリ子(緑魔子)でズベ公よと言うので、金持ちの不良娘か…と言い当て、俺はこれまで色んな所を点々として来たのでともだちがいないんだ。時々付き合ってくれないか?と頼み、ルリ子が承知すると感激し、これから毎日通うぜ!と張り切るのだった。

翌日、「千松」に黒岩の子分丹羽(八名信夫)らが呼びに来たので付いて行くと、とあるバーで待っていた黒岩がいた。

昨日、竹中の奴がひどく世話になったそうだなと苦笑しながら話し始めた黒岩は、あんまり中万の狸親爺に利用されるんじゃねえぜ。奴はお前たちをどら息子の後見にしたいんだろうが、裏で何を考えているか…と忠告する。

しかし、鉄也は、そんなことは分かっていると平然としていた。

そこで、奥から店のマダム(三原葉子)を呼ぶと、鉄也に酒をふるまい、この女をくれてやっても良いぜと言い出し、俺と組まないか?俺の後を継がせても良いんだと用件を切り出す。

俺はあんたとは前にも一度会ったことがあるんだと答えた鉄也は、懐から袋を取り出すと、カウンターに数枚の将棋の歩の駒を落として帰って行く。

それを観た黒岩は、朝の倅か…と呟く。

その後、白タクに乗り込んだ銀次郎は、今は暁組に払っていると言う運転手に、その7割で良いから、これからはアジア興行に払ってくれと迫る。

こうやって、次々と、東京クラブ傘下の組に牛耳られていた白タクを、中万組の傘下の組織に乗り換えさせて行くことに成功する。

東京クラブの黒岩の元に集まった仲間たちは、中万、坂崎、曾根、山全らから野球くじも白タクも取られたと訴える。

それを聞いた黒岩は、やるんなら闇討ちだな、それも1人ずつ…。いくら3人が仲が良いからって、まさか毎晩一緒に寝る訳じゃないだろうと薄笑いを浮かべる。

そんなある日、京橋ホールでショーを開催しようとしていた三条早苗の楽屋に、東京クラブ傘下のチンピラ2人が居座っていたので、耐えかねた付き人が、銀次郎を電話で呼び出す。

一方、鉄也の方は、話があると、先日のバーのマダムから料亭に誘い出されていた。

その頃、ジャズ喫茶にいた健三の元にやって来たルリ子は、あんたの兄さん、銀次郎って言うんじゃなかった?と聞いて来る。

警戒しながらもマダムの話を聞こうとした鉄也に、案の定、私を抱いて…とお色気で迫って来たマダムだったが、どうせ黒岩から頼まれて来たんだろうと冷めた口調の鉄也に惚れたようで、良いことを教えてあげる。私をここに来させたのは、真ん中の弟さんをやっつけるためなのと教える。

健三の方も、同じ話を耳にしたと言うルリ子から聞かされ、驚愕していた。

健三は、直ちに京橋ホール目がけて走り出すが、東京に不慣れなため方向が分からない。

通行人に場所を聞くが、京橋の方向しか分からなかったので、取りあえずそちら方面に向かって走り出すが、途中、警官から呼び止められたので、あんたも来てくれと呼びかけて、そのままひた走る。

鉄也の方も、タクシーに乗り込むと京橋ホールに向かわせるが、これ以上スピードを出せないと渋る運転手に、パトカーが付いて来た方が良いんだと言って、無理矢理スピードを出させる。

その頃、京橋ホールの楽屋にやって来た銀次郎は、どうせ銃を持たないと勝負できないんだろう?とチンピラから煽られたので、銃を週刊誌の間にはさみ。早苗に預けると、チンピラ2人を連れ外に出て行く。

ところが外には、チンピラの仲間が大勢集まっていた。

銀次郎は罠にはまったことを悟るが、仕方なく戦い始めるが、多勢に無勢、袋叩きの末、完全なグロッキー状態になって行く。

そこに駆けつけて来たのが健三で、続いてタクシーも到着し、鉄也も参戦する。

一緒に付いて来た警官は、野次馬に110番して応援を頼むよう要請する。

後日、入院していた銀次郎を早苗が見舞いに来る。

今の世の中、いくらだって仕事はあるでしょう?堅気になったら?と早苗が言うので、そしたら一緒になってくれるかい?と銀次郎は答える。

それ、プロポーズのつもり?ピンと来ないわと早苗が戸惑うと、ベッドの上の銀次郎は、真剣なんだと答える。

その時、警察で事情を聞かれていた鉄也と健三が開放されやって来たので、早苗は帰るが、その背中に向かい銀二郎は、よく考えといてくれよ!と声をかける。

そんな銀二郎の様子を観ていた鉄也は、これ以上、2人とも、スケに深入りするな。俺たちの目的は家を興すことだ。それを忘れると、3人は女のために滅びると言い聞かせる。

しかし銀二郎は、俺は足を洗ってあの子と一緒になるぜと言い出したので、そんな甘っちょろいことを言っているからやられるんだと鉄也が叱ると、兄貴は、俺たちの幸せと家名とどっちが大切なんだと反抗する。

鉄也は、俺にとっては、成金の家名の方が大切だと言い切る。

その頃、中万の家では、しばらく成金に家起こさせるのを延ばしてくれと、山全や坂崎らが進言していた。

ノミ屋と白タクの権利だけでも分けてやろうと思っているんだがと中万が打ち明けると、それを渡したら、えらく実入りが減るぜ。その内、ひさし貸して母屋を取られるぜ。行かさず殺さず利用した方が徳じゃねえか?と仲間たちは忠告する。

中万も、奴らは関東総代も狙っているんだろう。成金独立させるつもりはない。嫌になったら、礼の方法で叩き潰すと言い切る。

そんな父親の話を、美紀は廊下で聞いてしまう。

一方、三条早苗に1人会いに来た鉄也は、先日は迷惑をかけてすまなかったと詫びるが、早苗は、もうこれ以上、お会いしない方が良いんじゃないでしょうか?縁談にも差し支えることですし…と言い、今自分には若い実業家との結婚話が進んでいることを打ち明ける。

それを聞いた鉄也は、銀二郎から聞いた話と食い違うとは感じたが、取りあえず安心し、俺もあんたに銀二郎を諦めてもらおうと思って来たんだ。女が入ると、兄弟の縁が薄くなるからさと答える。

早苗は、それじゃあ、銀二郎さんやもう1人の弟さんが可哀想じゃないですかと早苗が反論すると、鉄也は、余計なお世話だと言い残して帰って行く。

「千松」に帰って来た鉄也は、美紀が来ていることを千松から教えられる。

美紀は泣いており、鉄也さん、こんな汚い世界はたまらない。みんな騙しあい、憎しみあい…。堅気になって逃げ出して!と迫る。

それでも俺は、こんな世界で戦って行かなければいけないんだと鉄也が言い返すと、それはヤクザ特有の英雄気取りよと美紀は諌める。

確かに、勝男は俺たち3人を憎んでいる。何か裏で工作しているんでしょう。昔、中庭で近藤に殴られたことは忘れませんよ。あなたが泣きながら止めに入ってくれたことも…と話す鉄也は、美紀をじっと見つめ、美紀さん!どこへ行っても忘れたことはねえぜ!と告白すると、いきなり美紀に抱きつき、一緒に暮らしてえ!と叫ぶ。

美紀も、私も!と答えて、しっかり鉄也にしがみつくので、今日くらい成金の家に生まれたことが恨めしいことはねえ!と吐き出した鉄也は、1人立ち去って行く。

その頃、黒岩の自宅を訪れていたのは沖山だった。

鉄の扉に防弾ガラス、番犬と、警備に万全を供えている黒岩の部屋に感心しながら入って来た沖山は、さしで話したいと持ちかけ2人きりになると、成金兄弟のことだが…と話し始める。

大滝、山全たちが、奴らを分家させるのに反対なんだ。この辺で手打ちしねえか?玉造たちが中万の仲間になるそうだと持ちかけて来る。

あんたには娘がいたな?うちの勝男と一緒にさせちゃどうだろう?このつながりが出来りゃ、もう仲間から潰されることはねえぜと言う話を聞いた黒岩は乗り気になり、帰りかけた沖山に娘を呼んで紹介する。

娘はルリ子で、今年20になると言うので、いつの間にそんな年になりやがった?それじゃあ、嫁に出してもおかしくねえぜと黒岩は苦笑いする。

黒岩と手打ちをするので、分家の話は延ばしてくれ中万から聞いた鉄也は驚き、手打ちには反対ですと抵抗する。

一方、健三は、ルリ子が黒岩の娘で、近々中万の息子、勝男と結婚するらしいとの噂を、ジムで聞き驚く。

ジャズ喫茶に出向いた健三は、寂し気にしているルリ子に話しかける。

私、海に行きたいわ…、永久に沈んでいたいわ…等と言うので、連れてってやろうか?と健三は答え、その後、2人はホテルで抱き合う。

その頃、新聞に載った庄司俊男なる青年実業家との結婚発表を呼んだ銀二郎も驚愕し、三条早苗の車の運転席に潜り込み、知らずに乗って来た早苗に騙したのか?と問いつめる。

早苗は、どんなに好きになっても結婚できる訳ではない。お兄さんもそう言ってたわと打ち明け、鉄也が会いに来て結婚に大反対だったことを打ち明ける。

ルリ子は健三に、あんた、私のこと知っているんでしょう?と聞いていた。

健三は、黒岩の娘だから仕返ししたんだとうそぶくと、勝男の所に行くつもりなのか?姐さんと呼んでやるぜと嫌みを言う。

「千松」の2階にいた鉄也に会いに来た銀二郎は、もうあの娘と会わないでくれと頼む。

鉄也は、黒岩は俺たちを潰そうとしているんだぜと説得しようとするが、銀二郎は、俺派成金のこと等どうでも良いんだと言い出したので、2人はつかみ合いになる。

そこにやって来たのが健三で、慌てて2人を止め訳を聞くと、中万は黒岩と手を打つそうで、成金は認めないと言っているんだと鉄也が説明する。

このままじゃ親爺と同じことになるぜ。お前たちにも親爺の血が流れているんなら俺について来いよと鉄也は弟たちに詰め寄る。

東京クラブと中万組は、以前と同じように、篠田春雄を仲介役として盛大な手打ち式を行うことになる。

その外では、丹羽たち子分らが居並び、成金3兄弟が来るのではないかと警戒していた。

中万組と黒岩率いる東京クラブの幹部たちが、みんな一斉に手を打ちかけた時、成金が来やがった!と子分が駆け込んで来る。

鉄也、銀二郎、健三の3人は、大通りを埋め尽くした中万と東京クラブの子分たちを睨みつけながら会場の料亭に迫って来ていた。

3人を止めようとかかって来た子分たちを、鉄也は投げ飛ばし、銀二郎は上着の中に手を入れ銃を握る振りをし、健三はパンチで応酬し、蹴散らして行く。

やがて、料亭の座敷に入り込んで来た3人をみた沖山は、ハジキを持って乗り込むとはどう言うことだ!と怒鳴りつけるが、3人はその場で上着を脱ぐと、銃は持っていないことを見せつけ、似るなり焼くなり好きなようにやってくれと鉄也が言うと、その場に将棋の歩の駒を投げ出す。

俺たちを差し置いて手を打つとはどう言うことです?それがヤクザの仁義と言うものですか?と迫る鉄也の言葉を聞いていた黒岩は、確かに分家させないってことはないよなと同意して来る。

すると、山全が、分けてやらないとは思わないが、勝男が口を聞いて来たから…と、勝男が裏で仕組んでいたことを明かす。

そうした成り行きをみていた篠田は、この席までやって来るまでが勝負だ。こいつらの勝ちだ。認めてやれと中万に頼むもで、中万は仕方なく、みんな、忍の一家は認めよう。これであの世の親爺も喜んでいることでしょうなどと宣言し、同時に、勝男と黒岩の娘が一緒になるそうだと打ち明ける。

それを聞いた篠田は、少々席が乱れたが、良い幕切れだと満足し、改めて、全員で手を打って締めるのだった。

その後、ジャズ喫茶に来ていた健三は、店の隅に佇むルリ子を見つけ側に寄ると、会いたかったと言うので、健三の方も、お前を勝男に渡したくないんだと答える。

ルリ子は、私をどっかに連れて行って!とすがりついて来る。

中万の家に来ていた鉄也は、健三とルリ子が一緒に車に乗り込み姿を消したと聞かされ、驚いていた。

そんな鉄也に、このケリをどうしてくれる!たった今、ここへ連れて来い!などと、恥をかかされた勝男は詰め寄って来る。

中万も、今夜中に連れて来いと鉄也に命じて帰すと、健三だけじゃなく成金も潰すんだと、沖山や勝男に話しかける。

「千松」の2階で銀二郎と合流した鉄也だったが、窓から外の様子を観ていた千松は、見張ってるぜと2人に教え、慌ててカーテンを閉める。

あいつには俺の気持ちなんか分からないんだ!と健三の行動を批判する鉄也に、兄貴が自分の考えを押し付けるからだ!と銀二郎も反論するが、その時、健三から電話がかかって来て、このままずらかりたい。とことん逃げてやると鉄也に伝える。

今どこにいるんだ?と鉄也が聞くと、第七水門の所の中村屋と言う船宿にいると言うので、話を聞かせてくれ、これから行くからなと答えて鉄也は電話を切るが、出かけようとする鉄也を止めた千松は、外には見張りがいるんだ。みすみす相手に健三の居場所を教えるようなもんじゃねえかと言う。

その時、又電話がかかって来て、鉄也が取ると、相手は黒岩で、ようやく縁談が決まった娘に手を出すとは…、昔の貸しのことで話があるので銀二郎を来させてくれと言う。

それを聞いた銀二郎は、話し合って万一ダメだったら、黒岩を撃つ。どんなことがあっても健三を売るなよ。健三を売ったら、俺は兄貴を撃つぜと釘を刺して出かけて行く。

銀二郎が出かけたとの連絡を近藤から受けた中万は、健三から連絡があったに違いない。俺が会いたいからすぐに出て来いと鉄也の所に電話しろと命じる。

黒岩の家に来た銀二郎は、持って来たハジキをテーブルの上に置くと、その場に土下座をして、俺の命をやるから、弟を許してやってくれと詫びる。

それを笑って聞いていた黒岩は、そんなに兄弟って情があるのか?俺なんて実の娘にも何の情もないぜ。娘使って中万利用しただけだ…とうそぶくと、今、命やるって言ったな?その命俺にくれないか?そしたら2人一緒にさせてやる。その代わり、中万の狸親爺をやって欲しいと、テーブルに置いた銀二郎のハジキを戻す。

さすがにためらう銀二郎だったが、黒岩は、お前はあいつをやらなくちゃならない訳があるんだと言い出す。

お前の親爺をやったのは俺だと思っているだろう?確かに俺もあの時、やろうと思って準備してたんだが、誰かが先手を打ちやがった。結果的に俺の株も上がったんだが…、やったのは中万さと黒岩は教える。

さっき、立派な証人が現れたんで、俺もやっと分かったのさ…と黒岩がドアの方に目をやると、そこから入って来たのは山全だった。

山全は、あの朝、中万がこっそりうちにやって来て、朝をやってくれと言うのでこの3人を差し向けたんだと言う。

そこに、実行犯だと言う松本と滝川が入って来て、もう1人、弁天次郎と言う奴もいたんだが死んでしまったと言う。

愕然とする銀二郎に、4、5年勤めて来い。安いもんだ…と笑いかける黒岩。

その頃、中万の家に来ていた鉄也は、健三の居所を知っているんだろう?と、中万と勝男に迫られていた。

そこに飛び込んで来た美紀は、止めてこんなこと!いつかみんな滅びるわ!私、もう絶えられない、こんな世界と叫ぶと、泣き出す。

黒岩の娘さんを返せば、健三を助けてくれるんですね?と中万に念を押した鉄也は、2人を連れて来ると言って立ち上がるが、ルリ子を戻すのは、この勝男にやらせてくれと中万が頼むので、鉄也は同行を承知すると、すまない、美紀さんと詫びて出かけて行く。

そんな鉄也に、沖山にも付き添ってやれと中万は命じる。

中万の屋敷から、鉄也らが乗った車が出発すると、それとすれ違う形で銀二郎がやって来る。

家に上がり込んだ銀二郎は、ハジキを取り出して中万に向ける。

お前が親爺をやったんだな?と迫る銀二郎に、証人がいるのか?と問いただした中万は、山全だ!と銀二郎が答えたので、裏切りやがったな!と激怒する。

そこに飛び込んで来た美紀が銀二郎を止めようとするが、銀二郎はそれを振り払って引き金を引く。

弾丸は、思わず父をかばおうとした美紀を貫いていた。

鉄也さん…と言いながら死んだ娘を目にした中万は、こいつは鉄也が好きだったんだと嘆く。

鉄は健三を売ったぞと中万が教えると、驚いた銀二郎はその場を出て行く。

船宿にしけこんでいたルリ子と健三の元にやって来た鉄也は、沖山から促されて、下から呼びかける。

その声を聞いた健三は喜んで、兄貴か!上がって来てくれと窓から呼びかけるが、鉄也は、勝男が来ているんだ。降りて来てくれ。奴と話し合うことになるぜと伝える。

ルリ子は、噓よ!きっとあなたを殺すきよと健三を止めようとするが、心配するな、兄貴が付いているんだと伝えて健三は下に降りて行く。

鉄也の元に歩み寄った健三だったが、その時、沖山から促された子分がいきなり発砲する。

目の前で倒れた健三を観た鉄也は、畜生!健坊!と呼び掛け、兄貴…、まさか、俺を騙したんじゃ…と聞く。

沖山は、すまなかった!あいつがついかっとなって撃ってしまったんだと子分に責任を押し付ける。

ルリ子と結婚したんだ…、ままごとみてえだったけどよ…、やっぱりままごとだったんだ…と呟いた健三は息絶えてしまう。

畜生!と立ち上がった鉄也は、拳銃を向けて来た子分に向かって行き、撃てるなら撃ってみろと迫る。

その時、死んだ健三に抱きついていたルリ子は、健三が持っていたハジキを手に取り、自らの胸に発射する。

そこに銀二郎が駆けつけて来て、健三が死んだことを知ると、兄貴、売ったな?俺も美紀さんをやっちまったぜ。兄貴の名前を呼びながら死んじまったんだと教えると、俺も、健三を売ったら兄貴を撃つと言ったが、これで互いに仇同士になったなとハジキを突きつけながら告げる。

沖山や勝男の元には、近藤たちが駆けつけて来たので、鉄也と銀二郎はハジキを撃ち始める。

黒岩の家にいた後藤は、電話で打ち合いが始まったと聞くと、側でそれを聞いた黒岩は、娘は帰って来るさ。後は俺とお前の世界だぜ…と言いながら、猟銃を手にすると、その場にいた山全に向ける。

山全も驚きながらも、ハジキを取り出すと黒岩に向けていた。

第七水門の所では、中万一家を全滅させた鉄也と銀二郎が対峙していた。

これで成金はお終いさと言う銀二郎に、お前たちがぶち壊したんじゃないか!1人じゃすぐにやられるぞと怒鳴る鉄也。

互いに銃を向けあっており、銃声が響き終えると、倒れたのは銀二郎の方だった。

兄貴!やっぱり俺には兄貴を撃てなかったぜ…。これからは背中に気を付けな…、みんなが狙っているぜ…と言いながら、銀二郎は水門の上で倒れる。

1人になった鉄也は、夜の無人の大通りを南に向かって歩いていた。

それを近くから監視していたパトカーの警官が本部に状況を報告する。

鉄也の背後から近づいて来た黒い車の中から、銃口が伸び、鉄也を射殺するとすぐさまスピードを上げ走り去る。

道に倒れた鉄也の手の先には、袋からこぼれた将棋の歩の駒が散らばっていた。