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悪名一番

シリーズ第7弾

テーマ曲が、又初期のものに戻っている。

これまで、大阪や四国を中心に暴れて来た朝吉と清次が、とうとう東京に乗り込んで来ると言うのが本作の一番の見所。

「悪名市場」で偽の朝吉と清次役で登場した芦屋雁之助、小雁兄弟が再度登場している。

この2人、前作では堅気に戻ったと言うことになっていたはずだが、又、ヤクザに戻ったようだ。

おかまのおぎんを演ずる茶川一郎も再登場している。

東京篇で新たに加わったのは、丸井太郎と江波杏子と言う、当時の大映で売り出し中の新人たち。

悪役は、安部徹に名和宏、遠藤辰雄と言った、はまり過ぎと言うくらいぴったりの強面たちが演じている。

後半、工藤組に殴り込みに行く朝吉が、道具を手にした一郎らを観て、わいは喧嘩の時、一遍もそんな道具使うたことないでと言うように、このシリーズでは、斬ったはったと言った刃傷沙汰は登場しない。

あくまでも殴り合い止まりだし、相手を殺すようなことはない。

主人公の朝吉は、自らヤクザではないと言っている通り、あくまでも筋の通らぬことが嫌いな、人情肌の熱い奴なのである。

さすがに、シリーズもこの辺りになると、時代も高度成長期となり、朝吉のそうした浪花節的なキャラクターも古めかしくなっているが、その時代とのずれを面白がらせるような描き方になっている。

今回は特に、東京が舞台と言うこともあり、江波杏子扮する圭子にその辺をからかわせているし、戦争帰りの朝吉が靖国神社で涙を流す姿を、相棒の清次も理解しかねると言ったギャップが描かれている。

12月28日に公開された正月映画と言うこともあり、勧善懲悪の痛快アクション風な狙いで作られたものだと思われる。

それにつけても、このシリーズの清次を演じる田宮二郎の、軽薄なおっちょこちょい演技も感心させられる。

他の主演作品では、まじめな二枚目役が多い田宮だが、この作品での、全く違ったちゃら男演技はどう言う気持ちで演じていたのだろう?

楽しんでやっていたのか、それとも苦労していたのか?

早口の大阪弁と言い、個人的にはかなり難しかったのではないかと想像する。

その清次と朝吉と言う、全く違ったキャラクターがコンビを組んでいると言うのもこのシリーズの見所の一つだろう。

一度は袂を分かった2人が、又、互いに呼び寄せあうように再会するシーン、一緒に靖国神社へ行きましょうと、おそらく意味も良く分からず言う清次に感動する朝吉…

この辺の友情表現は、右だの左と言った思想性抜きに、単純に庶民が心打たれる部分ではないだろうか?

朝吉がくわえた煙草に、清次がライターで火をつけてやるなどと言う描写も、アラン・ドロンとチャールス・ブロンソン共演の「さらば友よ」(1968)のラストを思わせる印象的なシーンである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、大映、今東光原作、依田義賢脚色、田中徳三監督作品。

正月

花札をしている朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)だったが、又勝ってしまった清次は、正月くらいどっかに行ってパーと騒ぎたいでんな。キャバレーとか言って飲んだり歌ったりしまへんか?と誘うと、朝吉が、わいは酒は飲めへんと言うので、そうでしたな。ほなら、食べて歌ってで行きましょうなどと調子の良い事を言っていると、同じ料亭で働いている女友達(今喜多代)を連れたお照(藤原礼子)が帰って来て、この人のこと助けてやっておくれやすと朝吉に頼む。

女友達は、客が忘年会のお金を払ってくれないので、自分がその分を弁償することになったのだと言う。

相手は、近くの鉄工所の行員だと言うので、さっそく清次を連れ、その行員の元に出かけた朝吉だったが、行員たちは口々に、払いたいけど、ボーナスも出ないし、給料も半分しから出てないと言い訳する。

それではと言うので、鉄工所へ出向いて社長夫婦に会うと、大黒金融と言う所が利回りが良いと聞いて金を預けたが、年末払い戻しに行ったら、待ってくれと言われ、家も抵当に入っているし、給料を払いたくても払えないのだと言う。

朝吉は仕方なく、その大黒金融に出かけるが、そこでは担当者らしき雲井と言う男(遠藤辰雄)が、大勢詰めかけた客から払い戻しを求められていたが、平然としていた。

朝吉が訳を聞くと、社員が1億近い金に穴を開けて逃げてしまったのだと言う。

今、皆さんが取り付け騒ぎのようなことを起こすと、うちは倒産することになるかも知れんので、かえって金は戻って来ませんよと言う。

その逃げた社員の名前と住所を聞くと、大野平助と言い、東京の出身で、両親は亡くなったが、品川の相州運輸と言う会社に姉が1人いると言う。

我が社としても、裁判を考えておりますなどといかにも被害者面して説明する雲井は、用事があるからと言ってさっさと出かけてしまう。

その場に残された清次は、こうなったら、その大野と言う社員を見つけるために東京へ乗り込みましょう。つきましては、皆さん、我々の旅費くらいは出して下さい。そして、金が戻った時にはそれなりの謝礼を頂きますなどと勝手に交渉を始める。

その場にいた客たちは、不承不承2人の東京行きを希望するが、朝吉は、金のない客たちにこれ以上余計な負担をかけさせたくないので、自分たちは列車には乗らず、東海道を走るトラックを利用するなどと言い出す。

結局、清次と朝吉は東京までの輸送トラックの荷台に乗せてもらって出発するが、その中で朝吉は、何かおまえが気に入らんと言い出し、毎度、計算高い清次のことを煙たがるようになる。

ようやく東京タワーがそびえる東京に着いた2人は、品川の相州運輸へ出向き、そこで掃除をしていた女性に、ここに大野平助の姉がいるやろ?と清次が尋ねる。

自分がその姉だが、弟がどうしたのか?と聞く妙子(雪代敬子)に、弟が拐帯犯人やと言うんや。おまえもグルやな?と清次が詰め寄ると、弟は3年前にぐれて家を出て行ったと言い、奥に向かって、おじさん、関西から変な奴が来ていると呼びかける。

その声に答え、隣の家から威張りながら出て来たのは、以前、偽の朝吉と清次をやって本物に懲らしめられた一郎(芦屋雁之助)と二郎(芦屋小雁)だった。

2人は、目の前にいるのが以前迷惑をかけた朝吉と清次だと知るとすっかり恐縮し、後ろから付いて来た台場組の親分川田玄次郎(伊井友三郎)に2人のことを紹介する。

川田は朝吉に、平助は言わば俺の子供のようなもの。誰に頼まれて来なすった?平助が本当にやったんなら、俺の子の手で始末するから、今日はうちに泊まって、ゆっくり東京見物でもして帰んなと言う。

しかし、朝吉は、わいは、わいの思う通りにとことんやりますと返答すると、八尾の朝吉なんて、東京で通るかい!と川田は怒鳴りつける。

朝吉は、さっきグルやと言ったことを妙子に詫びると、相州運輸を後にし、次に、大黒金融の東京本社へと向かうことにする。

大黒屋は大きなビルの中に入っており、かなりの会社に思えたが、彼らを応対した社長秘書の圭子(江波杏子)は、大阪の件では提訴の準備をしており、社長は今会議中なので、5時過ぎまでお会いできないと言う。

仕方がないので、時間を潰すため外に出た朝吉は靖国神社に向かい、祭殿に向かい土下座をすると泣き始める。

意味が分からない清次が理由を聞くと、自分のようなものが生き残ったことが護国の英霊に対して申し訳ないと朝吉は説明するが、それを聞いても理解できない清次は、ここはどなたはんがまつってありますのん?と聞く。

すると、怒って立ち上がった朝吉が急に殴りつけ、おのれの血が気に食わん!どこなと行き去らせ!と怒鳴りつけると、1人で立ち去って行ってしまう。

清次は、時代遅れ!…と小さく言い返したものの、慣れぬ東京で1人取り残されてしまったことに不安を覚えていた。

その頃、圭子から、大阪支社の雲井から知らせて来た朝吉たちが来たことを聞いた社長の郡純太郎(安部徹)は、適当にあしらっとけと命じる。

5時過ぎに再びやって来た朝吉に、圭子は、社長は多忙で会えないし、明日からは九州の方へ旅行へ出かけると噓を言うと、ご用件は私がうかがいましょうと言い、料亭に連れて行く。

酒が飲めない朝吉は、酒を飲んだら教えてあげるなどと小馬鹿にする圭子に対し、わいは東京の女にバカにされたくないだけやと言い、お猪口で一杯だけ酒を受けると、あんたも人の情が分からんわけないやろ?と迫るが、圭子は冷静に、ダメダメ、そんな浪花節みたいなことを言ってもと相手にせず、そのままゴーゴークラブに連れて行く。

コケにされていることを悟った朝吉は、勝手に店を出て行こうとするが、女連れの若い男客から因縁をつけられたので、一発殴りつけて倒す。

別のキャバレーで、仲間内と飲んでいた郡社長の元にやって来た圭子は、朝吉はかえったと報告するが、その朝吉は彼女を付けて、店の中に入って来る。

郡社長と一緒に飲んでいた連中は、あんたんとこの不始末で困っている人が大勢いるので大阪から来たと説明する朝吉に、着流しでこんな所に来たのは初めてだ。場違いな所に飛び込んで来るのも面白いな。まあ酒でも飲めと勧めても、朝吉が飲めないと断ると、ここにいるのは田舎ヤクザと違うんだ!俺の酒が飲めんと言うのか!などと朝吉を嘲る。

郡社長は、金を返すと一札書いてくれと頼む朝吉に、あんたは預金者の正式な代表ですか?委任状はありますか?などと聞いて来たので、朝吉は面食らい、自分は難しいことは分からないが、金を返してやってくれと頼む。

しかし郡社長は、法定代理人でもない君が、1億もの金を出せと言うのは…?冗談はもう良いだろうとあざけり、客の1人が土下座でもするのならともかく…と冷笑する。

すると朝吉はその場に土下座をしたので、立ち上がって側に来た客の1人が、お前さん、川田にでも頼まれて嫌がらせに来たのかい?それなら話は別だがね。猿芝居は縁日ででもやってくれ。やっぱり銭かい?と嘲りながら1万円札を渡そうとする。

立ち上がった朝吉は、お前らの紳士面、ひんむいてやるから、覚えてけつかれ!と、郡社長や取り巻き連中に捨て台詞を残して帰って行くが、取り巻きたちは、それを笑い飛ばすのだった。

キャバレーから歩いて帰っていた朝吉に付いて来た圭子は、何で帰んなかったのよ?あんな悔しい思いまでしてと聞く。

そんな圭子に、さっきからかって来た奴はなんて言うんだと聞くと、工藤さん?と言う。

ホテルどこ?と圭子は聞いて来るが、あの男は…、もう良えと言って朝吉は足を速める。

その頃、台場組の家の中では、川田が妙子に、平助に間違いないのか?と確認していた。

その時、玄関が開く音が聞こえたので、妙子が出てみると、そこに立っていたのは朝吉で、1つだけ聞きたいことがある。工藤ちゅう男を知ってますか?大黒屋の社長と一緒にいる所を会って来た。川田にでも頼まれて嫌がらせに来たのかい?って言ってたので…と言うと、妙子は新興ヤクザよと教える。

川田は泊まっていけと勧める。

奴らのことを思い出すと反吐が出そうになると朝吉は顔をしかめるが、妙子が、連れの若いのはどうしたの?あのおっちょこちょいな人と聞いてきたので、どこへとなと行きよりましたやろと朝吉は吐き捨てる。

その清次は、当てもなく飲屋街をぶらついていた時、1人の街娼から声をかけられる。

それは、何とおぎん(茶川一郎)だった。

屋台で旧交を温める2人は、朝吉から愛想を尽かされたと言う清次を哀れに思ったのか、翌日、仕事先を一緒に探して歩いてくれることになる。

あちこち断られたあげく、彼らがたどり着いたのは工藤(名和宏)が経営するボクシングジムだった。

運転が出来るかと聞かれた清次は出来ると答え、腕っ節を見せるため、リングで練習をしていたボクサージョージをあっという間に叩きのめしてみせたりする。

おぎんから、会長、どう?と聞かれた工藤は、しばらく無駄飯を食ってみるか?と清次を受け入れることにする。

その時、1人の若者がジムから逃げ出そうとするのを他の子分衆が追いかけ始めたので、清次はここぞとばかり張り切り、その若者を捕まえてやる。

その後、その男を閉じ込めている部屋晩飯を持って来てやった清次は、さっきはすまなかったなと詫び、ウィスキーのポケット瓶も差し入れしてやる。

ところが、その若者が大野平助と名乗ったので、清次は仰天してしまう。

あんたが1億の横領犯と言うのも知っていると清次が言うと、知らねえよと平助は言うではないか。

しゃべったら消されるちゅう訳か…、ムショ入りは覚悟してるんやろな?と清次が聞くと、話が違って来た、好きな女と結婚せるし、その女に商売をやらせると言われたが、まだ金ももらってないので、これから社長に直談判に行こうと思っていたと平助は言うので、それは大黒屋の社長のことだと清次は気づく。

しかし、こうした2人の会話をドアの外で盗み聞きしていた子分が、すぐに工藤に報告に行く。

消音銃で、ガラス瓶を撃つ遊びをしていた工藤は、清次を呼び寄せると、おまえどこから潜り込んで来た?平助のことさ…と、銃を付き付けて来る。

結局、身元を疑われた清次も、平助と一緒に閉じ込められてしまう。

翌朝、朝吉は、泊めてもらった礼に、トラックに荷物を積み込む仕事の手伝いをしていたが、妙子はそんな朝吉に、工藤らとやるつもり?朝吉さんて良い人ね。今時、そんな熱い人、東京にはいないわよと話しかける。

その時、トラック便が到着し、運転席から降りて妙子と挨拶した運転手は、朝吉の姿を見ると、八尾の朝吉親分じゃありませんかと言いながら仁義を切って来る。

朝吉が、わいはヤクザやないから、普通の言葉で言ってくれと頼むと、その良太(丸井太郎)と言う男は、広島の中国トラックの運転手だと名乗る。

その良太、さっきから相州運輸を覗き込んでいた3人のチンピラに気づくと、つかみ掛かって行く。

妙子もその3人の顔を見ると、あんたたち、工藤組の!と驚くが、朝吉が良太を止めると、3人は帰って行く。

良太は朝吉に、自分を子分にしてくれと頼む。

その頃、大黒金融の郡社長の元に来ていた工藤は、平助の奴、直談判に来るつもりだったよと報告していた。

郡社長が消してくれないかと頼むと、工藤は100万要求して来たので、殺しは20万が相場だろうと郡社長は笑うが、工藤は、あんたはもっと儲けるんだろう?と言って聞かなかった。

この間の田舎っぺ…と朝吉のことを郡社長が聞くと、工藤はもう帰ってるよと答えるが、その時、電話が入り、それに出た工藤は、奴さん、まだ東京にいる。川田の老いぼれの所にいると郡社長に伝えたので、側にいた圭子が、私が行って誘い出します。その代わり、この話が巧くいったら、約束通り200万下さり、平助さんを私の所に返して下さいと申し出て出かける。

郡社長は工藤に、あの女の後を子分に付けさせろと頼み、あの女を信用し過ぎた。大阪への報告書を頼んだら、あの女、コピーを取った形跡があるんだ。後で何かに使うつもりなんだろうと言う。

その後、川田を料亭に呼び出した工藤は、あなたに取って大変なことになった。平助が会社の金1億を持ち出した。そして、上方ヤクザが郡社長に一札書けって来たそうじゃないですか。郡社長は告訴することにしたそうですが、警察沙汰になれば、あなたの名前が出て、江戸時代から続いて来たあなたの組は一巻の終わりだ。一応私が郡社長に告訴を取り下げてくれと頼んで来たが、その代わり、相州運輸と土浦倉庫の権利をこちらに渡してくれ。返事は急いでいるんだと一方的に申し出る。

妙子と川田の女房が、珍しく帰りが遅い川田のことを心配していると、玄関が開く音がしたので、妙子が出てみると、そこにいたのは圭子だった。

朝吉はいるか?と言うので、2階にいると教えると、圭子は2階に上がって行く。

そこには、他も行員たちも一緒にいたが、女性の相手が朝吉と知ると、遠慮してみんな出かけて行く。

その様子を下の茶の間で観ていた妙子は、面白くなさそうだった。

圭子は、バッグから拳銃型のライターを取り出すと、くわえていたタバコに火をつけ、あんたって底抜けのバカね。誰にそそのかされたのか知らないけど、大阪くんだりからやって来て…と朝吉を挑発する。

わいは、とことんやらんと気がすまんたちでなと朝吉が答えると、こんな男が今時生きてるなんて噓みたいと呆れたように呟いた圭子は、部屋に置いてあったトランジススタラジオをつけ音楽を鳴らす。

その音を聞きとがめた妙子は、部屋に入って来るとラジオを止め、ここは深夜喫茶や温泉マークじゃないんだよと啖呵を切る。

圭子と朝吉は外に出ることにするが、どっか良い所へ案内するわと圭子が誘うと、社長の所か?工藤の所か?と朝吉は聞く。

お金のことだったら私が何とか…と言う圭子に、工藤に言っとけ、日を改めて、首根っこを押さえに来るさかいと朝吉は言って立ち去るが、取り残された圭子の横に停まった車の運転手が、乗るように声をかける。

その頃、帰宅して来た川田は、組員全員を集めると、工藤からの申し出を報告していたが、それを聞いた妙子は、この組の権利全部を渡してくれ。弟が前科者になるし、おじさんの名前にも傷が付くと頭を下げる。

しかし川田は、この組は死んだおまえの親爺から受け継いだものだ。このシマだけはどんなことがあっても渡さねえ。死んだ兄貴に申し訳ないと拒否する。

そんな所へ帰って来た朝吉が、どないしました?と聞くと、おまえが余計なことをしたからだよ。平助はおまえに渡したくねえと川田は答える。

しかし朝吉は、わいはわいで、思う通りやらせてもらうと啖呵を切る。

工藤は事務所の応接室に来ていた郡社長に、やっぱり圭子は食わせ物だったと報告し、やるかね?と聞き、平助と2人で200万だと吹きかける。

清次を呼び寄せた工藤は、おまえの性根を見せてもらうと告げる。

ボクシンググラブをつけた清次は、工藤が捕まえた圭子の目の前で、平助を殴り始める。

工藤は圭子に、泥を吐け朝吉に何をしゃべったか、それを言うんだよ!と攻め、清次にこの女もやれるか?と命じる。

清次は、グラブに付いた平助の血で、圭子の額に×印を書いてみせたので、おまえの了見は分かった、あの2人を片付ける気持ちないか?10万出すと工藤は清次に語りかける。

清次は、天国に結ぶ恋ちゅうやつやな、山奥で、毒入りジュース飲ませて…、どないや?と嬉しそうに答えるが、平助と圭子を部屋に閉じ込めると、2人に詫びる。

その時、子分が覗き込んで来たので、ごまかすために、とっさに清次は圭子にキスをする。

その後、ジムを抜け出した清次は、公衆電話から、相州運送の朝吉に電話を入れるが、留守と言うことだった。

その直後、会長から、あの2人をトラックに積んだと教えられた清次は、運転席に縛られて乗せられていた平助の手の縄をナイフで切ってやる。

その時、仲間が近づいて来て、八尾の朝吉が1人で来たと言うではないか。

喜んだ清次は、わてにやらしとくんなはれと工藤に願い出ると、真っ先にジムを出て朝吉に内情を教えようとするが、朝吉は相手にしないし、ジムの連中も近づいて来るわで、結局、何も告げることが出来ないまま、朝吉は、工藤が不在と思い込み帰って行ってしまう。

その直後、平助がトラックを運転して逃げ出してしまう。

工藤は清次に消音ピストルを突きつける。

しばらくして、台場組の一郎と二郎は、荷物の影に隠れていた平助と佳子を発見し肝をつぶす。

平助は、姉さんを呼んでくれと2人に頼む。

やって来た妙子に平助は、自分が使い込んだのは飲み食いに使った10万足らずなんだと打ち明ける。

圭子も、先日の非礼を詫びると、200万をくれるって会社が騙したのだと言うと、結婚を約束した2人を利用し、大黒金融は預金者から預かった1億近い金を幽霊会社などに送ったりして、みんな郡社長の懐に入る仕掛けになっていることを説明する。

その時、朝吉が側に来ていたことに気づいた妙子は、渡すもんかと弟をかばおうとする。

しかし朝吉は、平助はん、今言ったことを、どこへ行っても言えますか?と聞く。

それに対し、圭子が、言うわ。警察へでもどこでも言うわと約束する。

一方、女房から平助が帰って来たことを聞いた川田は、裏から呼んで来いと言いつけていたが、そこに、妙子と朝吉と共に平助と圭子が入って来る。

こいつは平助を警察に突き出す気だと川田が朝吉を睨みつけると、それは私が頼んだのよと妙子が説明する。

平助は、俺は自首して、奴らがしたことをばらしてやるんだと言うので、それを聞いた朝吉は、こんな気持ちになってくれればそれで良いと立ち去ろうとするが、噓だ!この人は1人で工藤の所へ行くつもりなんだ。あそこには清次さんがいるんだ。私たち、清次さんに助けてもらったのと、平助と圭子は訴える。

その頃、工藤のジムでは、その清次がこてんぱんに殴り付けられていた。

川田は、一家を上げて乗り込もうとするが、それを制した朝吉は、清次をこんな目に遭わせたのも、元はと言えばわいのせいや。わいにやらせてくれと頼み、その代わり、一郎と二郎を貸してくれと頼む。

指名された2人は、ビビりながらも、火消し用のかぎ爪を持って出かけようとするが、それに気づいた朝吉は、わいは喧嘩の時、そんな道具使うたことあらへんでと叱る。

川田は、出かけて行く朝吉に火打を切らせる。

おおきに…と礼を言って出かけた3人だったが、途中、一郎と二郎は雑貨屋であれこれ食料を大量に買う。

その頃、ジムの事務所では、郡社長が工藤に、逃げられたじゃすまねえぜと平助たちのことを叱りつけていた。

工藤は、どうせ逃げ込むとすれば居所は一つしかない。今夜、川田の所に殴り込みをかけると子分らに告げていたが、そこに朝吉が来たとの知らせが届いたので、先を越されたかと悔しがる。

朝吉は石を拾い上げると、工藤商事と書かれたドアガラスに投げつけて割る。

その音を聞いた清次は、親分や!親分が来てくれた!と、腫れ上がった顔をほころばせて喜ぶ。

ジム内に入って来た二郎は、持って来た業務用胡椒をジム内に撒き始め、一郎も買って来た卵を投げつけたりし始める。

そんな中、混乱する子分たちを殴り始める朝吉。

事務所の応接室から出て来た工藤と郡社長も胡椒を浴びせかけられる。

そんな中、杖をつく川田を先頭にやって来た台場組が、外の道を固めていた。

二階の鍵がかかった部屋の扉をこじ開けた朝吉は、中に閉じ込められていた清次を救い出す。

清次は、迎えの来るのが遅うおますやないか!と言いながらも顔は喜んでいた。

そして、今わいが死んだら、わいも靖国神社にまつってもらえますやろか?あいつら死んだら日本のためになりますやろ?2人で死んだら靖国神社に一緒に行きましょうなと言う清次の顔を見つめた朝吉は、感動して手を差し出し、2人は又、しっかり手をつなぎあうのだった。

清次は郡社長の相手をし、朝吉は工藤相手に喧嘩を始める。

一郎はヤケになり、うどんの玉を投げつけていた。

事務所の外に逃げ出そうとした子分たちは、そこに台場組が居並んでいることに気づき立ちすくむ。

朝吉と清次は、郡社長と工藤を、事務所の外に放り出すと、平助と圭子からからくりを聞いたぞと迫る。

郡社長は、金ですむことなら、大阪の方は何とかする。助けてくれ!と命乞いをして来るが、その考え方が気に食わんのじゃ!と朝吉は一喝する。

その場で朝吉が煙草を口にくわえると、清次がにこやかな表情でライターで火をつけてやる。

後日、大阪の大黒金融では、雲井が預金者たちに全額預金を返却していた。

金を受け取った鉄工所の社長は行員たちに給料を払い、行員たちは料亭の仲居に忘年会のツケを返す。

そして、仲居は、友人のお照に謝礼を支払うのだった。

その頃、台場組では、川田が、清次と共に正座していた朝吉を前に、ぜひ受け取ってもらいたいものがあると言い、妙子が、昔から伝わる「川場織り」の半纏を持って来る。

東京に留まって、台場組を束ねてくれないかと川田から乞われた朝吉だったが、それだけは堪忍しておくんなさいと辞退する。

ダメかい…とがっかりした川田だったが、着るだけ着てみてくれ。江戸時代からのヤクザの意地が染み込んでいるんだ。お前さんの切符も染み込ませおきたいんだと言うので、清次からも勧められ、朝吉は羽織ってみることにする。

すると、組員たちが全員、朝吉を前に、祝い歌を披露し始める。

それを神妙に聞く朝吉の側には圭子の姿もあった。