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悪名市場

人気シリーズ第6弾

今回は、この手の人気シリーズではお馴染みのネタ「偽者騒動」が描かれている。

その偽者に扮しているのが、TV版「裸の大将」でお馴染みの芦屋雁之助とその弟芦屋小雁コンビと言うのだから楽しい。

本作は、さらに、曽我廼家五郎八、「てなもんやコンビ」の藤田まことと白木みのる、そして茶川一郎まで再登場しており、正に当時の大阪喜劇の人気者総登場と言った趣になっている。

そこに、色っぽい瑳峨三智子に、詐欺師役でベテラン田中春男まで登場しており、勧善懲悪の痛快娯楽映画としては分かりやすい展開になっている。

この頃の瑳峨三智子は誰かに似ているな…と思って観ていたのだが、男を小馬鹿にしたような生意気そうなキャラクターのイメージのせいかも知れないが、どことなく仲里依紗をぽっちゃりさせたような雰囲気だと気づいた。

この「悪名」シリーズは、ヤクザが登場するので、一見ヤクザ映画か?と思わせるが、どちらかと言うと、「けんかえれじい」や「悪太郎」と言った「昔のやんちゃ坊主の喧嘩もの」に近いような気がする。

勝新扮する八尾の朝吉は、酒も飲めないし女にも優しく、理不尽な暴力は振るわない男である。

彼は古い任侠の心を持っている短気な暴れん坊ではあるが、いわゆる「組」に属したヤクザではない。

このシリーズが、いわゆるヤクザ映画っぽく見えないのは、そう言う所にあると思う。

特に本作では、自分の悪名が、偽者と言う歪な虚像を生んでいる現実を知り、自らの不明を反省する展開になっている。

ちなみに、咲枝がママにさせられる「バー ヴィナス」の用心棒バーテンを演じているのは、「大魔神」の中に入っていた橋本力である。

「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972)で、袴を後ろ前逆に履き、日本刀でブルース・リーと戦ったあの敵を演じた人でもある。

しかし、藤田まことが田宮二郎と共演していると言うのは初めて知ったし、見物である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、大映、今東光原作、依田義賢脚色、森一生監督作品。

落ち着いたら知らせると約束して別れた清次(田宮二郎)から、久々にハガキが届いたので、お照(藤原礼子)と共に出かけた八尾の朝吉こと村上朝吉(勝新太郎)は、大きな塀の前で出会った巡査(曽我廼家五郎八)にハガキに書かれていた住所を尋ねる。

しばらく考えていた老巡査は、住所はここだが、上村と言う名前は、ここの刑務所の所長だと言うではないか。

清次は何と、目の前の大きな塀に囲まれた刑務所に入っていたのだった。

面会して事情を聞いてみると、四国の菱屋運輸の柿本(田中春男)と言う男を手伝って、消費組合を作れば何でもものが安く手に入ると言う呼び掛け係をやった所、詐欺罪で捕まってしまったのだと言う。

呆れた朝吉が、その金はどうした?と聞くと、自分は3万しかもらってないし、ここから出たら男にしてやると柿本に約束してもらったと言う。

完璧に清次のアホさを知った朝吉は、保釈金を払ったら出してもらえるんじゃないですか?と聞いて来たお照を制しながらも、放っとけんやろ?四国に行って来るわい!と言い残して出かける。

四国に渡る連絡船の映像にかぶってタイトル

四国の菱屋運輸では、子分のとらふぐの八(横山アウト)が、八尾の朝吉が来ました!と社長の菱屋(花澤徳衛)に知らせに来る。

子分たちが入口前の港に隠れて待っていると、朝吉が来て、菱屋運輸はどこやと聞くと、八は、今日は忙しいよってな、用があるなら明日にしてくれと答える。

どうも様子が変なので、そこで様子を見ていると、着流し姿の男と派手なジャンパー姿の小男がやって来て、八尾の朝吉を名乗るではないか。

事務所に入った朝吉なる男(芦屋雁之助)と、どうやら清次のつもりらしい小男(芦屋小雁)は、菱屋から金を受け取っていた。

その様子を窓から覗いていた朝吉は、偽朝吉と偽清次が帰って行った後、金ですむのならあれで良いのや…と子分たちに説明している菱屋の姿を観る。

そんな事務所に入って、柿本と言う男はいないかと朝吉が聞くと、詐欺の話やないか?3件もうちの名前を使われているのだが、どこの奴だかさっぱり見当もつかんと菱屋が言うではないか。

うちは、安政の頃から荷役を任されており今では5代目だが、人に恨まれるような覚えはないと言う。

今出て行った朝吉と言う男はいつ頃からこの土地に来たのか?と聞くと、去年の暮頃だったか…と答えた菱屋は、評判になっておごりが付いたと言うか、今では、強いものには楯突かず、弱いものを泣かしとる。ヤクザの鑑も、ああなったらお終いやでと言うではないか。

映画館横の家に戻って来た偽朝吉は、偽清次に、今脅し取って来た金のほんの1枚だけを手渡す。

そこにやって来た朝吉が、こちらで厄介になりたいと申し出ると、応対に出て来た偽清次は、仁義をちゃんとせんかい!と叱りつけ、その場で仁義の切り方を伝授し始める。

それを見かねた偽朝吉が上がるように声をかけて来る。

偽朝吉は、三食付きで150円等と言い出したので、朝吉は呆れるし、さらには洋酒を偽清次と一緒に飲み始めたので、八尾の朝吉さんと言ったら、奈良漬けでもあかんかったんのと違いますか?と聞くと、最近飲めるようになったんやと言う。

朝吉が貞と偽名を名乗ると、貞と言うたら、こいつの兄貴と同じ名前やないか、モートルの貞言うてな…などと朝吉は偽清次を紹介する。

そんな2人に、柿本と言うの知らないかと聞くが、やはり2人とも知らないようだった。

その頃、町内会の連中を集めた旅館で堀井と名乗り挨拶していた柿本は、自分は大阪からこちらの出張所に赴任して来た村井と言うが、今回、うちの日本海浜協会がこの町に「みなと銀座」と言うアーケード付きの商店街を作るので、そうなったら観光客が集まって、皆さんも儲かりますなどと、又詐欺話を披露していた。

10軒から5万ずつ出してもらうだけで、後は積み立てで賄うと巧い話をするが、後ろの方で聞いていたパチンコ屋「ヴィナス」の主人咲枝(瑳峨三智子)は、そんな金出せないと抗議する。

それでも、取りあえず工事を始めるので、1ヶ月で今の店を閉めて出て行って欲しいと言う柿本の話に、他のみんなは乗り気になったようだった。

その後、朝吉は、偽清次に連れられ、パチンコ屋「ヴィナス」でパチンコ指南を受けていた。

ところが、さっぱり玉が出ない偽清次の側にやって来た子供の出前持ち(白木みのる)は、朝吉の横に来ると、自分でパチンコのやり方を教えてくれるが、そちらの方がはるかに上手だった。

何事も年期を積まんとあかんと言い残し、偽清次を哀れむような目つきで出前持ちは帰って行くが、その後、朝吉がやってみると、不思議なくらい玉が出始める。

何もしてない時にまで玉が出続けているので、朝吉と偽清次が首をひねっていると、パチンコ台の後ろから顔を出した咲枝が、うちが出してんのやと教える。

その女が、この店の主人咲枝と偽清次から教えられた朝吉は、たまった玉は賞品に替えるんやと教えられ、店の隅の賞品交換所で、咲枝からビスケットをもらうと、宿屋を教えてくれと頼み、環翠楼と言う店を教えてもらうと、後で朝吉親分のことで話あるんや、待ってるぜと伝えて帰って行く。

偽朝吉と偽清次は、町内の店から所場代を集めていたが、偽清次を先に返した偽朝吉は「ヴィナス」に来ると、お目当ての咲枝が出かけていることを知り不機嫌になりかけるが、留守番をしていた女店員から、姉さん、早よ公休日来んかな…言うてたでと偽朝吉を慕っているような話を聞かされると脂下がるのだった。

その頃、波止場で朝吉に会っていた咲枝は、随分、朝吉親分に迷惑かけてるそうやな?とからかい、うちは、今にごっついバーのママになってるでと将来の夢を語る。

親分とは出来とんのか?と朝吉が聞くと、いずれはうちは親分の嫁はんになるんやろな。あの人、パチンコ屋を大きくしたる言うて、金貯めてるんやでと言うと帰って行く。

「金融 鷺原商会」と書かれた店にやって来た偽朝吉は、集めて来た所場代を鷺原(松居茂美)に手渡しながら、「みなと銀座」て知ってますか?この辺一帯を立て直す言うてましたでと報告する。

すると、鷺原は、あこはあんたに任せとるんやと発破をかけて帰らせる。

その鷺原が奥の部屋に来ると、そこには柿本がおり、共栄会の5万円は一喝でうちから借りるようにしてくれやと鷺原は命じる。

それに頷いた柿本も、パチンコ屋の娘もここがチャンスやなと笑う。

その頃、偽朝吉の家に、たまたま近くに巡業に来たおぎん(茶川一郎)がやって来る。

親分は今留守やと言う子分の後ろにいた朝吉を発見したおぎんは、何言うてんのやと言いながら朝吉に呼びかけようとするが、それにかぶせるように、朝吉はわいは貞やと名乗り、部屋の奥に連れて行くと、ここに偽物がいるのやと事情を打ち明ける。

そこに偽朝吉と偽清次が帰って来たので、仕方なく、おぎんは2人に調子を合わせて挨拶をする。

その後、港に朝吉とやって来たおぎんが、何あれ?、偽者の化けの顔ひんむいてやれば良いのよと憤慨して見せると、わいはここでせなならんことがあるんや。それで名を貸してるんや。ここらがわいの見切り時や。悪名売った罰言うたらそれまでやけどな…と、偽者が出現する原因は自分にあるとしおらしく説明する。

それを聞いたおぎんは、親分はのびのびと生きて欲しいわ…と、真面目な顔で伝える。

その頃、「ヴィナス」にやって来た柿本は、一流のバーのママを探しているんやと咲枝に話しかけていた。

咲枝は、うちにはちゃんとした相談役がいるんやと答えると、それにも、びっくりするような話がある。どうせ後半年で店閉めるんや。うちのバーに住んだらどうや?と柿本は親切ごかしに言い、その後、2人きりで会った時、あいつは朝吉やない。本物の朝吉は大阪にいるし、清次は良い所にいると教える。

その後、「ヴィナス」の公休日にやって来た偽朝吉は、「しばらく休業します」と言う貼紙があり、店が閉まっていることを知る。

女店員を映画館横の家に呼び出し、あれこれ事情を聞き出そうとした偽朝吉だったが、一緒に話を聞いていた偽清次は、誰かと駆け落ちしたのと違うか?親分ははっきりふられたと言うことでっせなどと言う。

そこにやって来た子分が、咲枝と柿本が一緒の所を観たと言う奴がいる。

柿本が所属している追風組の鷺原の元締めは高松に帰ったはずやと聞いた偽朝吉は、そう言えば、柿本と言う名を誰か聞いていたな?と言い出す。

わいやと名乗り出た朝吉は、追風組と聞いてビビっている偽朝吉に、客分のわいが勝手にしたことにしたらどうです?と言い、咲枝を自分が連れ戻して来ると約束すると、偽朝吉から金をもらって出かける。

鷺原運輸にやって来た朝吉だったが、子分たちからあっさり追い出されてしまう。

その頃、四国へ渡る連絡船の中に乗っていたのは、お照と、そのお照から保釈金を出してもらってシャバに出て来た清次だった。

2人は四国に着くと、菱屋事務所にやって来るが、菱屋は、それならあの人が朝吉はんや…と感づいたようで、この地には朝吉と清次の偽者がいることに話す。

勘の良いお照は、朝吉さんがここで名乗らなかった所を見ると何か訳があるんやから、しばらく自分たちも名乗らないでおこうと清次に注意し、旅館に泊まる事にする。

二階の縁側から外を観ていた清次は、偽朝吉と偽清次が歩いている所を発見、自分との落差にがっかりする。

一方、朝吉の方は咲枝を探しまわっていたが見つけられず、がっかりして旅館に戻って来ていたが、女将は赤線は調べてみたか?とヒントをくれたりする。その時、何気なく観たチラシに「バー ヴィナス」と書かれていたので、ピンと来た朝吉は出かけてみることにする。

「バー ヴィナス」の奥の部屋では、バーテン姿の用心棒(橋本力)のような男が部屋を固めた中、鷺原が酒を飲んでいた。

その部屋には、着物姿になった咲枝がいたが、これでは話が違う。あんな用心棒つけて。これでは女郎と一緒や。この店はうちのもんやと言う証文を書いてくれと鷺原に頼んでいたが、鷺原は、その内、お前が稼いで旦那が4、5人も付いたらやと言い、自分のその内の1人やなどと言い寄ろうとする。

そこへ、柿本もやって来たので、部屋の外に柿本を出した鷺原は、共栄会のやつが予定通り店を閉めましたでと報告して来たので、次に段階に行くか。あいつら金を払うて、建築はかかからへんのし…と耳打ちする。

しかし、それを部屋の中から聞きとがめた咲枝は、うちの店はどうなるねん?と顔を出すが、鷺原は用心棒役のバーテンに、あの女を店に出してしっかり稼がせよと命じる。

そんな「バー ヴィナス」にやって来た朝吉はジュースを注文して、ホステスに、ここに咲枝はいないか?と聞くが、いないと言うので帰りかけると、そこに店に出て来た咲枝が朝吉を観て驚く。

朝吉は、咲枝を迎えに来たので一緒に帰ろう。親分が待ってはると勧めるが、あの人は偽者やでと言い出す。

その時、鷺原の子分たちが朝吉を囲み、店を追い出そうとしたので、朝吉は暴れ始める。

最後にかかって来たバーテンも得意の頭突きで倒すと、客席から観ていた客の1人が、八尾の朝吉親分やないか?と声をかけて来る。

班長!と朝吉が驚くと、自分は今隣町でサルベージで発破かけてると言い、愉快そうに班長は帰って行くが、その会話を聞いていた咲枝は驚く。

その後、嫌がる咲枝を無理矢理自分の宿に連れて帰り、お前を連れて来た海浜協会の堀井と言うとは柿本と言うんやと教えるが、咲枝は、朝吉親分てアホやな…、こんなことしたら追風組に殺されるよと嘲るので、思わずビンタした朝吉は、救うてもろうて喜んだらどうやと怒鳴りつける。

その後、寝るでと朝吉が言うと、咲枝も着物を脱ごうとしたので、お前向うで寝るんやと、まだ朝吉は怒鳴るので、咲枝はそんな朝吉の生真面目さに興味を持ったようだった。

翌日、バスで帰る2人だったが、咲枝が甘えかかって朝吉に身体を寄せて寝ようとすると、朝吉は迷惑そうにそれをはねつける。

やがて、そのバスの前に大勢の男たちが立ちふさがり、ドアを開けて中にいた2人を見つけると出ろと命じる。

他の人の迷惑になると、素直に従った朝吉と咲枝に、追風組らしき男たちは、随分遅い道行きでんな?電車ちゅう早い乗りもんがあるの知らんかったんか?とからかって来る。

朝吉は、そんなチンピラたち相手に喧嘩を始めるが、そこに駆けつけて来たのが清次だった。

2人で相手を蹴散らしてしまうと、朝飯前にちょっと散歩に出て来たのだと清次は説明する。

旅館のお照の元に連れて来た咲枝は、この人誰?と清次のことを聞く。

深刻な顔をしている朝吉に清次は、分かってま、偽もん退治ですか?と聞くと、おまえが言うてた柿本と言う奴、追風組の小頭じゃ。堅気の人の家や土地を取り上げている。お前もあいつの所へ行って小頭にしてもらえ!と嫌みを言う。

その後、「日本海浜協会」なる名前の事務所前で、柿本が町内会の連中に、今回の建築出は詐欺宮さんから金を借りるので、この書類にハンコを押してくれと説明している所にやって来た朝吉と清次は、柿本を呼び出すと、こいつは札付きの詐欺師や、紙切れにハンコをついたらあかんでとみんなに言い聞かす。

その柿本を連れ、菱屋の所に連れて来た朝吉は、こいつは追風組の小頭やと教え突き出す。

そこに駆けつけて来た八が、あの八尾の朝吉の奴が町内の店を占拠して工事できないよう居座ってますと報告に来る。

朝吉は、悪名の芽は、わいが摘み取りますと菱屋に頭を下げると、清次を連れ、偽朝吉と偽清次がいる場所に向かう。

店の中から持ち主を追い出していた偽清次は目の前に立った清次に誰や?と聞くので、わいが清次やと言うと、こちらがもんまもんの朝吉はんやで教える。

仰天して、堪忍しておくんなはれと土下座した偽清次は、偽朝吉は今、四国、中国の親分衆の集まりに行っていると言う。

しかし、その前に、お照の所にいた咲枝を見つけた鷺原は、偽朝吉を連れて旅館に来ると、今から集まりがあるのでお酌しにおいでと高圧的に誘う。

親分衆が集まった宴会の席に連れて来られた偽朝吉が挨拶をすると、中央に座った鷺原は、これから皆さんの前で、ええ咽、聞かしてくれるそうですと言いだしたので、偽朝吉は慌てる。

どうしてもと無理強いされたので、浪花節を歌ってごまかそうとした偽朝吉だったが、八尾の朝吉判が八木節を歌わんと言うのはどう言うことやと鷺原は責めて来る。

さらに、歌えないのなら、裸踊りをしてみせい等と言い出し、偽朝吉は、それでお許し願えるなら…と言い、裸踊りを始める。

そんな偽朝吉の踊りを見かねてうつむいていたのは、シルクハットの親分(永田靖)だった。

踊り終えた偽朝吉に、鷺原は、さらに、狸になって、親分さん1人1人に酌をしてまわれと命じる。

それを同じ座敷の末席で聞かされていた咲枝は、あんた、嬲りもんになってくやしないの?八尾の朝吉親分の名を騙っていること、みんな知ってるのや!と偽朝吉に声をかけ、鷺原が、おのれ、わしまで騙したのか!1人1人に謝って歩け!と言うと、さすがに見かねたお照も、やめておくんなはれ!と止めようとする。

その時、河内音頭を歌いに来ました。裸で歌えばええんですか?と言いながら座敷に入って来たのは本物の朝吉で、清次に太鼓を叩かせると、上半身脱いだ姿でその場で八木節を歌い始める。

座敷の隅に正座した偽朝吉と偽清次は、自分らのために朝吉が恥をかいてくれているを知ると涙を流し始める。

途中、朝吉は、お前ら、手くらい叩いたらどうや!と声をかけ、シルクハットの親分を音頭に、間の手を入れ始める。

歌い終わった朝吉は、みんな、この男を偽の朝吉と知って嬲りもんにしたんか?少なくとも、そこの記者の煙突みたいなもんをかぶったおっさんは、わいを覚えておらんとは言わさんぞ!とすごみ、こいつを嬲るちゅうことはわいを嬲りもんにしたのと同じや!誰が裸踊りや狸の真似をせい言うたんや!柿本は今警察に連れて行ったと鷺原に迫る。

その頃、柿本を警察に連れて行っていた菱屋は、柿本に刺されて逃げられてしまう。

それを黙って聞いていた鷺原も面目を潰されたことに腹を立て、怒鳴り返して来たので、他の親分衆を返した後、シルクハットの親分が中に入り、鷺原と朝吉は果たし合いをすることにする。

明朝6時、日本海岸の外れと決まるが、さすがにこの申し出は調子載り過ぎだっせと清次も注意する。

朝吉はそんな清次に覚悟しておけよと言い聞かすが、咲枝は、何でそんな勘定合わんことするねんとばかにして来ると、世の中、勘定合わんこともあるんや!と朝吉は怒鳴りつけ、お照も、言って求め用がないことを知る。

その時、八が駆け込んで来て、うちの親分が柿本に刺されたと言いに来る。

翌朝、一旦旅館に戻って来た朝吉だったが偽朝吉が咲枝の姿が見えないと教える。

身を捨てて、追風組に行ったのではないかと案ずるお照には、長いこと世話になったな…と礼を言った朝吉は、柿本来るまで死ねんぞと清次に告げる。

偽朝吉と偽清次も連れて行ってくれと頭を下げて来るが、怪我をするだけ損やと言い聞かした朝吉は、清次を連れ、約束の場所にやって来ると、いよいよ悪名もお終いやで、清次はんと軽口を叩く。

兄貴も畳の上では死ねへんかったけど、わいも同じでっかと笑う清次。

それにしてもええ所やな、八尾の朝吉、清次の死に場所にはふさわしいぜと言っていると、鷺原、柿本を先頭に、追風組の連中が退去して押し寄せて来る。

その柿本が取り出した拳銃を撃ったのを合図に、子分たちは攻め込んで来るが、次の瞬間、波止場はあちこちで爆発が起き始める。

身を隠して後ろを振り向いた朝吉と清次は、発破工事をしていたあの班長を指揮している咲枝の姿を観る。

思わず、朝吉は敬礼を返す。

咲枝は逃げ出したのではなく、助っ人の準備をしていたのだった。

予期せぬ爆発に狼狽した追風組に飛びかかって行く朝吉と清次は、次から次に敵を蹴散らして行く。

それを遠目で見物していたのは、さすが八尾の朝吉だけに派手なことをやりおるなと感心するシルクハットの親分と、心配して駆けつけて来たお照だった。

やがて、爆発音も止み、朝吉は鷺原を、清次は柿本をそれぞれ捕まえていた。

その後、左手を吊った菱屋の事務所にやって来た朝吉は、柿本は警察に渡したし、鷺原も両手をついて詫び、もう二度とここには手を出さんと言うてたと報告する。

菱屋は、やっぱりあんたが本物の朝吉はんやったんか、おおきに…と感謝する。

一方、すっかり堅気に戻った偽朝吉と偽清次の2人は、パチンコ屋「ヴィナス」に来ていたが、あの子供の出前が、朝吉親分と声をかけて来たので、もうその名で呼ぶのは止めてくれと追い返す。

その時、連絡船の汽笛が聞こえて来たので、咲枝共々、朝吉を思い出し、偽朝吉と偽清次は海を見つめるのだった。

船の方角を見送る咲枝は、哀し気だった。

その頃、連絡船に乗って帰っていたお照、朝吉、清次らだったが、その清次が、自分と同じような派手なジャンパーを来た男が近づいて来たので、又偽もんが現れたと朝吉に知らせる。

歌を歌いながら朝吉に近づいて来たその男(藤田まこと)は、自分は朝吉親分の所の清次や、耳から手を突っ込んで奥歯がたがた言わせたろか?などと言いながら去って行ったので、親分、もうあかんわ…と清次は肩を落とすのだった。