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悪名太鼓

人気シリーズ第9弾

先頃他界された藤本義一氏が脚色を担当している。

今回は、八尾の祭りに使われる由緒ある太鼓を、清次が九州に貸し出してしまう所から始まり、その清次が殺されたと言う電報が届くと言う予想外の出だしが快調。

そして、北九州と思われる地方を舞台に物語が展開する。

芦屋雁之助、小雁が演じているシリーズでもお馴染みの一郎、二郎が又又登場して来たり、バタヤンこと歌手の田端義夫などが登場している。

田宮二郎演じる清次のおっちょこちょい振りがますますひどくなっている印象で、もはや、話をどんどん面倒にしてしまうトラブルメイカーとなっているのが楽しい。

一方、朝吉の方は、着流し姿で女のマンションで誘惑されたりと、全く時代遅れと言うか、場違いな雰囲気さえ漂うおっさんと化しているが、不思議と清次とペアになると、その場違い感が消え、ぴたっと決まるのがシリーズ物の強み。

朝丘雪路が演じている宏子と一見、その息子のように見えるヒロシとは血は繋がっていない。

死んだ偽清次は、3年前日本に密入国して来た後宏子と知り合っているが、ヒロシはどう観ても3歳児以下には見えない。

先妻の子と劇中で説明しているが、密入国時に偽清次がそんな子供を連れて来たとも思えないので、ごく最近本国から引き取ったと言うことなのだろう。

それにしては、ヒロシは日本語が上手だし、宏子にも良く懐いているので、観ている方は実の親子のように勘違いしてしまいかねない。

余談だが、その子供ヒロシが持っている玩具は鉄人28号だが、今だとさぞ高価なのだろうなどと想像してしまう。

作品としては平均的な出来と言った所だろうが、その明るい基調は観ていて心地よいことは確かである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、大映、今東光原作、藤本義一脚色、森一生監督作品。

トラックに乗って、八尾の祭りに使う太鼓を運んでいる清次(田宮二郎)は、後ろからオート三輪に乗って、待てと言いながら迫って来る朝吉(勝新太郎)に気づくと、並走した所でトラックに引っ張り上げてやる。

清次は、どこね持ち逃げするんや!と言うので、九州の狼王会に貸すだけですと清次は説明するが、八尾の太鼓は門外不出やどと朝吉の怒りが収まらないので、村の名主も承知の上やし、太鼓を化す前金があるから、櫓も買えたし、この法被も買えたんやと清次は説得する。

しかし、朝吉は、この太鼓は村の守り神や!一歩でも持ち出しても、罰が当たるで!と興奮して怒鳴りつけるので、ここまで来たわいの顔が立たんわいと清次も切れる。

その時、荷台に同乗していた男の1人が、邪魔するなと言いながら出刃包丁突いて来たので、朝吉は2、3人の同乗者と喧嘩を始めるが、結局、トラックから突き落とされてしまう。

朝吉は遠ざかって行くトラックに向かい、待たんか、こら!覚えてけつかれ!と怒鳴りつける。

タイトル(トラックが通天閣、広島の原爆ドーム、金帯橋、関門トンネル、若戸大橋を通過する様を背景に)

朝吉は、お徳(若松和子)の店でかき氷を食べていたが、まだ怒ってるの?祭りの日には太鼓戻って来るんやから、筋通ってるやないのとお徳が言うので、お前、えらく肩持つなと朝がからかうと、奥で集まっていた近所の男が、お徳と清次は出来てるんやと話に割り込んで来る。

そこに、電報が届いたので、きっと清次からやと言いながら、受け取ったお徳が読んでみると、「清次が死んだ!」と頓狂な声を上げる。

何を言うてんねんと言いながら、朝吉もその電報を読んでみると、「清次が九州で殺された」と書いてあったので仰天してしまう。

お徳が、どないしてくれんの朝吉さん!と詰め寄って来たので、誰が殺したんじゃ!良し、仇はわいが取ってやる!と朝吉は言う。

北九州にやって来た朝吉は「北村清次告別式」と書かれた葬儀場にやって来るが、そこには「村上朝吉」と書かれた花輪が飾ってあった。

その時、親分!と言いながら、馴染みの一郎(芦屋雁之助)二郎(芦屋小雁)が近づいて来たので、お前ら、又こんな所で悪さやってんのと違うか?と朝吉がにらみをきかすと、何もやってしまへん。この花輪はわいが立て替えといたんねんと二郎が自慢げに答える。

ところが、朝吉が式場の中に入ると、何故か、一郎と二郎は、その場を逃げ出してしまう。

焼香の列に並んだ朝吉は、仏壇の横に喪主らしき喪服の美人がいたので、前の客に、あれは誰かと尋ねると、北村先生の女房ですと言うではないか。

不思議に思って、読経が行われている最前列にやって来た朝吉は、そこに飾られていた遺影を観て、自分が知っている清次とは別人だったので唖然とし、喪主である婦人に、人違いでした、すみませんと頭を下げて会場を出る。

とは言え、人違いにしては、自分の名前の花輪が来ていると言うのが解せなかった。

その時、清次と言うのは兄がモートルの貞と言うヤクザで、出入りで殺されたのよなどと言う女の話し声が聞こえたので、近くで停まっていた乗用車の後部座席に座っていたサングラスの女(浜田ゆう子)に声をかけてみると、あんたは誰?と聞いて来たので、八尾の朝吉やと答えると、その女は、失礼しましたと言い、車を発車させてしまう。

その後、朝吉は繁華街に向かい、狼王会の場所を聞こうとするが、みんな答えようとしない。

通りかかったアル中らしき老人に聞いても、あんな所聞く奴はろくな奴はいないと言われてしまうだけだった。

何とか、狼王会の菊沢(見明凡太朗)と言う男の屋敷を突き止めた朝吉は、そこで本間の清次はどこにいるんやと聞くが、酒の上のつまらんことであんなことになって…、九州の者は気が短いので、大阪弁で色々言われたんじゃ、かっとなってやられたのかも知れんなどと、子分の高城(伊達三郎)らが煙に巻いて来る。

八尾から持って来た太鼓の方はどうなってます?と聞くと、せっかく来たんだから、今日はゆっくりしてもらって、明日の飛行機でも取っときましょうかなどと、子分の竜野(島田竜三)が菊沢に相談するように聞くので、わいがいつ帰ろうと自分の好きにすると朝吉は憤慨する。

何かと間違いでも起きんようにと思って…と竜野が弁解すると、どっちに間違いが起きるか…と言い捨てて朝吉は屋敷を出る。

何で、あんな奴が来たんだと怒る菊沢に、高城は、若い奴に葬式を任せたら、縁戚にまで知らせたらしいと詫びる。

北村組では、親分の清次が死んでしまったので、組員たちは全員出て行くと言うことになり、1人残された妻の宏子(朝丘雪路)は、その薄情さを悔しがっていた。

そんな中、砂沢(杉田康)だけは残ると言ってくれたので、宏子は喜び、他の組員たちにはさっさと出て行っておくれと追い出してしまう。

そんな北沢一家の家の前に朝吉は来ていた。

2人きりになり、仏壇に手を合わせてた宏子の背中に、砂沢が手をかけて来たので、何をなさるんです?と宏子は身を堅くし、砂沢は、1人になっても姐さんの面倒を見ると言ったんだし、あんたは菊沢の都合の悪いことを知り過ぎているなどと言いながら抱きついて来る。

宏子は抵抗するが、その時、朝吉が上がり込んで来て砂沢を叩きのめすと、家から追い出す。

戸惑いながらも礼を言って来た宏子に、朝吉は、あんたの亭主ちゅうのは、はなから北村清次って言うのか?と尋ねてみると、あなたは?と聞かれたので、八尾の朝吉だと名乗る。

すると宏子は、10万で買った戸籍なんだと打ち明ける。

夫は3年前、日本に密入国して来て、さんざん苦労して、その頃に宏子と出会った。

狼王会の菊沢と縁が出来た時、日本国籍があった方が便利になると言われ、ところが、そのことで菊沢と縁が切れなくなってしまい、香港ルートの密売の片棒を担がされるようになってしまったのだと言う。

本物の清次のいる所を知らないかと聞いても、宏子は知らないようだった。

清次の奴、戸籍と一緒に根性まで抜かれちまっているのか?とぼやく。

そんな朝吉に、宏子は、今夜1人でいたくないんです…と訴えて来る。

その頃、本物の清次は、狼王会の屋敷内にいた。

いつになったら太鼓を返してくれるんや?と、大阪にいる許嫁のお徳の写真など披露しながら高城に聞いていたが、高城は、色々事情があってな…と言葉を濁すだけだった。

清次も相手の煮え切らない態度に苛つき、じゃあ警察に行こうやないかなどと言い出す。

高城はそんな清次を連れて菊村の所に来ると、清次さんが太鼓のことで警察に行くそうですと報告する。

その応接室には、サングラスの女も座っていた。

すると、一緒に座っていた竜野が、あんたはとっくに死んでるんだから、警察に行っても相手にされないよと言いながら、戸籍謄本を出してみせる。

それを読んだ清次は、わいは死んどるんか?じゃあ、わいは誰に文句をつければ良いんや?と頭が混乱した様子。

それにつけ込み、竜野は、そいつの女房だよ。実は太鼓も、そいつが横取りしたんだなどと吹き込む。

おっちょこちょいの清次は、じゃあ、そいつと話つけたるわ。打はどこだんねん?と聞く。

その頃、宏子の家に泊めてもらっていた朝吉は、庭で行水を使わせてもらっていた。

宏子に前のかみさんの子供はどこにいるのかと朝吉が聞くと、養護施設に入れていると言うので、早よ、こんな所から出て行った方が良いと話しかけていた。

その時、玄関口の方が騒がしくなり、庭の方に宏子を追いかけて来たのは清次だったので、行水中の朝吉は思わず立ち上がって、清次やないか!と声をかける。

すると、清次も、あ、親分、何や、生まれたまんまの姿でなどと笑いかけて来たので、思わず股間を押さえた朝吉は、宏子を連れ出して行った清次を追いかけようと、垣根にかけておいたパンツを取ろうとするが、引っかかってなかなか取れない。

仕方がないので、タオルを腰に巻いて玄関先に出て来ると、宏子を車に乗せて行こうとしていた狼王会の手下たちと大喧嘩を始める。

清次は敵わぬと知ると、宏子と数人の子分をその場に置き去りにし、車に乗って立ち去ってしまう。

その夜、そうめんをすすりながら朝吉は、ひとまずこの家出て、どこか宿でも泊まった方が良いと宏子に勧めていたが、その時、電話がかかって来たので、気いつけえや、うかうか話の乗ったらあかんでと朝吉は注意する。

電話に出た宏子は、相手は女で、先妻の子ヒロシを預かっているので、1人で来いと言う内容だったので、それを朝吉に打ち明けると、一度家の人の戸籍のことで行ったことがある所なので私、行ってきますと言う。

しかし、朝吉は、みすみす罠にかかりに行くようなものだから、わいが行って取り戻して来たると言うと出かけて行く。

港に来て、側にあった小舟の櫂などいじっていると、何してるんやと声をかけられたので、朝吉は素直に詫びるが、その小舟は、その男(田端義夫)が退職金代わりにもらったものだと言う。

朝吉は小舟を降りようとするが、乗れよとその男に勧められたので、一緒に乗り込むと、小舟を操って対岸に向かう。

その間、男がギターを抱えているので朝吉が一曲聞かせてくれと頼むと、男は「かえり船」を聞かせてくれる。

女のマンションに来た朝吉だが、相手は、やっぱりあんたが来ると思ったわ。あなた、北村組に居候しているのね。でも約束と違う。私は、宏子さんに直接渡すと言ったのよと妙に馴れ馴れしく話しかけて来る。

朝吉は、北村の葬儀の時、車に乗っていたサングラスの女と気づき、あんた狼王会か?と聞くと、違うと言う。

宏子を狼王会に渡して、金儲けしようとしただけと答えた女は、朝吉が1人で狼王会に楯突くようだと知ると、私と手を握らない?私はある組とある団体の橋渡し役、言わば連絡係をやっているんだけど、甘い汁は全部組織と菊沢が吸ってしまう。自分は別の香港ルートも知っているし、狼王会の情報を全部教えてあげても良いと誘って来る。

しかし朝吉は、そんな女の誘いに乗る振りをして、寝室のベッドに女を横たえると、その横で寝ていたヒロシを抱いて素早く帰ってしまう。

筑前屋旅館と言う所にひとまず落ち着いた宏子、ヒロシ、朝吉らは、つかの間の夫婦生活のような雰囲気を楽しんでいたが、宏子は、戸籍を買ったのは、この子に日本の戸籍をあげたかったこともあるのだと説明する。

朝吉は、本物の清次と太鼓のことを案じ、祭りまでに何とか取り戻さんと…とぼやくが、その内、八尾に帰ってしまわれるんでしょう?と宏子が寂し気に聞くと、何言うてんのや、あんたも一緒に行くのや。こんな子供もいることやし、静かに暮らさなあかんと朝吉は言い聞かす。

その時、部屋の中で退屈したヒロシが表に飛び出して行こうとしたので、それを止めに朝吉が廊下に出ると、階段を上がって来たお徳と出会う。

朝吉から電報で清次が無事だと知ったので、会いに来たのだと言う。

仕方なく、朝吉はお徳と宏子を会わせ、こちらは死んだ清次の奥さん、こっちは清次の子供やと教えると、お徳は混乱する。

本物の清次は、狼王会行ってヤクザになってしもうたんやと朝吉が教えると、お徳は、狼王会に行って、私が連れ戻しますなどと言い出したので、必ずワイが連れ戻すから待ってろと朝吉は言い聞かす。

宏子は、自分のために皆さんに迷惑をかけて…と恐縮し、警察行けば良いのでしょうが…と言い出すが、朝吉は警察沙汰にするのはまずい。今にわいが狼王会をぶっ潰してやると止める。

その頃、アル中の古畑(寺島雄作)は、狼王会の菊沢の屋敷に来ると、奴は港をうろうろしていたので、フータローに込みで1万で頼んだと報告する。

清次は、高城や竜野と共に港に来ると、遠くから双眼鏡で、埠頭を歩いていた朝吉の様子を観ていた。

俺たちに逆らうものは、誰でも消えてもらうんだと言われて笑っていた清次だったが、内心穏やかではなくなる。

ジュースを飲んでいた朝吉は、近くで労務者同士が喧嘩を始めたので、それを止めに入る。

ところが、殴られていた男がいきなり朝吉に殴り掛かって来ると、他の連中も一斉に朝吉に襲いかかって来る。

気がつくと、上からクレーンに吊られた積み荷が落ちて来るし、それを間一髪避けると、横からフォークリフトが突っ込んで来て危うく轢かれそうになる。

朝吉は興奮し辺りを見回すが、不思議なことに、先ほど襲って来た労務者たちの姿もなく、港は通常通り作業を進めていた。

その様子を双眼鏡で覗いていた竜野は、あいつは不死身やなと悔しがる。

高城は、こうなりゃ奥の手だ。朝吉をばらさないと…と言い出し、竜野は俺に良い手があると言いいだし、清次を隠れ家の地下室に連れて来る。

高城は清次に銃を渡すと、お前がやるんだよ、これで…、あいつは宏子を隠して逃げたと言い、竜野も、こっちの秘密を知っているに違いないと焚き付ける。

さすがに清次は躊躇するが、今日からお前は狼王会の一員だと高城から言われ、実は八尾の太鼓はこっちの手で保管してあるんだ。時価5奥の密輸品を太鼓の中に入れて関西まで送るんだ。お前にも分け前をやると言われると、笑ってみせるしかなかった。

その頃、朝吉は、女のマンションで、観たのとの出来事は狼王会が仕組んだからくりだと聞かされていた。

事故死に見せかけるなんて卑怯だわとと憤慨する女だったが、電話がかかって来ると、中国語で応対し出したので、朝吉は驚く。

女は、もうすぐ私たちの天下になるわ。あなた、私の味方になると言ったじゃない?天下の朝吉さんが二枚舌を使うの?私、好きになって来たらしいわなどと迫って来て、寝室のカーテン扉を閉める。

夜、繁華街を流して歩いていたあのギターの男圭介は、一軒の飲み屋に入ろうとして、中から出て来た一郎と二郎に脅されて追い出される。

そこに通りかかったのが朝吉で、一郎、二郎を捕まえると、お前ら、何か俺に隠しているのと違うか?と迫ると、2人は、自分たちが清次の戸籍を売ったのだと白状する。

ただし、売った相手は杏子と言うえらいべっぴんで、その杏子が、戸籍を狼王会に売ったのだ言うので、朝吉は、今まで会っていたあのサングラスの女がそうだと気づく。

朝吉は、そんな2人に屋台のラーメンを食わせてやっていたが、そこにやって来たのが清次だったので、一郎と二郎はラーメンを持ったまま逃げ出してしまう。

清次は、見張りが近くにいることを知っているので、わざとらしく朝吉を挑発すると、決闘をしたいので、明日の朝、突堤の先と指定する。

それを聞いた朝吉は、丸で「巌流島の決闘」やなと呆れてしまう。

翌朝、約束の場所で朝吉が待っていると、モーターボートに高城や竜野と一緒に乗った清次がやって来る。

突堤に飛び移った清次は拳銃を取り出すと朝吉と対峙する。

おんどりゃ、誰に頼まれてこんなことさらすんやと朝吉は怒鳴りつけるが、ボートから観られていることを知っている清次は、わいは、戸籍も何もない身軽な男でんねん!と開き直り、狼王会が何で八尾の太鼓を借りたんか知ってますか?興行は表向きのこと、実は時価5億もの密輸品を中に詰めて関西に運ぶんですと説明する。

ほんまに撃つつもりか?撃てるもんなら撃ってみい!ピストルの弾より早く懐に飛び込んだる!と言いなり、朝吉は清次に組み付いて行くが、その時清次は、わざと空に向けて発砲すると、朝吉の身体を押して海に突き落とす。

そして、沈んで浮かび上がって来ない朝吉に当たらないように、海に向かってもう一発撃ち込んでみせる。

離れた場所から陸に上がった朝吉は、公衆電話から110番に電話を入れる。

一方、清次の所にボートで戻って来た高城と竜野らは、何発撃った?と聞き、きっちり2発や。1発は奴の心臓、もう1発は浮かび上がって来た奴の頭に撃ち込んだったと清次が自慢すると、どうして朝吉の心臓に入っているはずの弾が突堤に埋まっていたんだ?と竜野が弾丸を取り出して見せる。

その時、パトーカーのサイレンが近づいて来たので、竜野たちはボートで海に逃げ、清次は突堤の先端に逃げる。

濡れ鼠のまま杏子のマンションにやって来た朝吉は、いよいよ時節到来よ、明日、香港から5億の品物が届き、近辺の親分衆も狼王会の所に集まるのと教えられる。

その品物って何や?と聞くと麻薬だと説明していた京子だったが、玄関をノックする音が聞こえたので、朝吉には奥に隠れていろと命じると玄関に向かう。

そこに来ていたのは、中国人の李徳忠(嵐三右衛門)で、総裁は明日来るが、総裁は何でも知っている。お前が別のルートを使って仲間を裏切っていることも…と言うと、消音銃で杏子を撃って立ち去る。

異変に気づいて外に出て来た朝吉は、どないしたんやと言いながら、よろめく杏子を抱きとめるが、あんたみたいな人、はじめて会ったわと言った杏子は、朝吉の頬にキスをすると息絶える。

朝吉は、そんな杏子の身体をベッドに横たえてやる。

一方、警察に捕まっていた清次に面会しに来たお徳は、誰にここにいると聞いて来た?と清次に聞かれ朝吉さんよと教える。

すると清次は、わいをここに入れたんは親分や。わいは、わざと殺さんように弾を外したのに、警察なんかに連絡をして…と朝吉を恨んでいる様子。

それは誤解だと言ったお徳は、あの人は、あんたが殺されたと聞いてここまで来たのよと言いながら、電報を見せる。

そこには、清次、九州で殺された 母と書かれてあったので、それを読んだ清次は、親分に言うてくれ、命のあるうちに河内に帰ってくれとと託すが、お徳は、私、あんたがここを出るまでこの町で待ってるわと言う。

しかし、清次は、男には男の道と言うのがあるんや!と一人息巻く。

筑前屋に戻って来たお徳から話を聞いた朝吉は、清次の奴、底抜けのアホやと呆れ、お徳も、あの人、すっかり人が変わってしまって…と嘆く。

その話を聞いていた宏子は、又しても、自分のせいで…と詫びると、私が狼王会に行こうかしらなどと言い出す。

その場に連れて来られていた一郎、二郎も、狼王会は命知らずの連中ばかりやから…と忠告する。

朝吉は、そんな宏子に、あんたのためだけやない。狼王会を潰すんは、八尾の太鼓のため、世の中のためになるんやと言うと、一郎、二郎は、今回の我々にもちょっと責任が…などと言うので、ちょっとどころやないわい。良し、お前ら2人、狼王会に行け!杏子の手先みたいなもんやったんや、入れるやろ?と命じる。

その頃、狼王会の菊沢は、清次をサツの手に渡したのはまずかった。清次の奴を消すんだと命じていた。

しかし、警察の中じゃ…とためらう竜野たちに、もらい下げる運動をしろ。出してしまえばこっちのもんよ。朝吉は甘く見過ぎていた。探せ!と菊沢は指示を出す。

その後、清次は釈放されるが、入口まで突いて来た刑事に、どうせ今日中に逃げ出そう思うてましたんやなどと言い、周囲の様子をうかがうと、ちょっと忘れもんだんねんと言うと、再び警察署内に戻り、裏口から外に出る。

線路を歩いて狼王会に向かっていた一郎と二郎は、釈放された清次に見つかり捕まったので、籍売ったの、わたいらだんねんと白状する。

しかし、清次はちょっと怒っただけで、朝吉親分に会うたら、一言、済まなんだと言うてくれと告げて立ち去る。

その頃、菊沢は屋敷内で子分たちに、今度の取引は場所を船に変えると伝えていた。

アル中の古畑も話に加わろうとするが相手にされないのでふてくされる。

取引場所の準備をしていた子分たちの元にやって来た一郎と二郎は、杏子の使い走りをやっていた連中と思われあっさり作業に参加できたが、そこにやって来た仲間から、取引場所が変わり船になったと言うので、すぐに朝吉に知らせに行こうとするが、その話を聞かれていたのか、高城が銃を突きつけて近づいて来る。

繁華街を歩いていた清次は、古畑に見つかり、金儲けに乗らないかと誘われたので、わいもおっちゃんに聞きたいことがあると言うと、近くの飲み屋に入る。

古畑は、狼王会と言うのは元々自分が作ったもので、今はのけ者にされているので、奴らにあっと目を剥くような仕打ちをするんだ。奴らは、俺が昔、船に乗っていたことを知らないので先に忍び込んで5億と言う大金を頂こうと打ち明ける。

清次は、それいてもうたろ!と話に乗る。

朝吉が狼王会の住処の地下に来ると、一郎と二郎が縛られているのを発見する。

縄を解いてやると、取引の場所が変わり、第三突堤の船の中と教える。

お前らは、宏子さんの所へ行けと朝吉は命じるが、そう言えば、清次さんに会って、一言、済まなんだ言うてくれ頼まれましたと一郎が伝えると、ほな、あのガキ、1人で船に行きよったんやなと朝吉は気づく。

港に向かうと、親分衆が乗っているらしき乗用車が次々と集まって来る。

同じ船に近づいていた清次と古畑は、暗闇に紛れて船の中に忍び込んでいた。

清次が見張り役の子分を数名殴って眠らせると、古畑は、昔、2、3度、取引をしたことがあるから、鮒の中のことは良く知っている。案外つまらん所に隠しているもんだなどとうそぶく。

船の一室では、菊沢が集まった親分衆を前に、ブツは太鼓の中に入れて山陽道を堂々と関西に運ぶと計画を打ち明けていた。

その頃、船底の倉庫内の積み荷の中から、5億円が詰まった麻袋を見つけた清次と古畑が喜んでいた。

その麻袋を持って、甲板に登って来た清次は、そこに隠れていた朝吉と鉢合わせする。

清次は喜び、朝吉の側に降り立つと、親分、ごきげんさん!などと明るく挨拶をするが、古畑の方は見つかり、見張り役から射殺されてしまう。

その時、古畑は、持っていた麻袋を海の中に落としてしまう。

朝吉と清次は互いに顔を見あわせると、無言の意気を感じあい、甲板上に上がると、出てきた子分たちと取っ組み合いの喧嘩を始める。

親分衆が集まっていた部屋に、銃を手にした朝吉が現れると、菊沢は。ここはお前が来るような所じゃない!と威嚇して来るが、由緒ある太鼓を使われてたまるか!と怒鳴り返した朝吉は、高城の銃も奪うと、親分衆全員に銃をテーブルの上のシャンパンクーラーの中に入れろと命じる。

全員が入れると、そのアイスペールを窓から外に放り出す。

菊沢に近づいた朝吉は、銃を奪い取ろうとした竜野を殴りつけると、引き金を引くが、菊沢にかかったのは水だった。

朝吉が手にしていたのは水鉄砲だったのだ。

朝吉は、親分衆相手に殴り合いを始め、甲板上では清次が子分たちを叩きのめしていた。

その時、パトカーのサイレン音が聞こえて来たので、清次と合流した朝吉は、わい、あの音好かんねんと言うと、海に飛び込むので、清次も仕方なく後に続く。

泳いでいた2人は、浮かんでいた麻袋にぶつかり、何や知らんけど持って行きまひょうと清次が掴む。

何とか港に泳ぎ突いた朝吉は、清次、そやけど、われ生きとって良かった…と呟く。

清次は、おおきにと礼を言い、そやけど、わてもあの時、弾外しましたで…と言うと、分かっとるがなと朝吉は答える。

分かってはったんですか!それやったら、これまでのこと、一切合切許してくれ!と清次は謝る。

わいは、お前がすぐ金の話をするのが嫌いやと朝吉が言うと、そうは言うても、もしここに5億と言う鐘があったら、親分、どないします?と清次が問い返す。

そんだけあったら、ライスカレーがぎょうさん食えるななどと朝吉はトボケるが、子供にお菓子や玩具買うてやりますやろ?祭りの費用に使いますやろ?神さんがくれはったら、持って行きますやろ?と言いながら、持ち帰って来た麻袋を開けて見せる。

中には札束が詰まっていたので、さすがに朝吉は驚き、あかん!と止めるが、神さんや仏さんや。持ってこ。今親分言うたがな。玩具やお菓子買えまっせ!と麻袋を持ち帰ろうとしていた清次だったが、そこに近づいて来た数名の男たちが、ご苦労さんと言いながら、その麻袋を応酬して行く。

その中に、ギターを弾いていた圭介が混じっていたので、朝吉は、あいつ、刑事やったんか…と納得する。

清次は、落ちていた札束に気づき、嬉しそうに拾い上げるが、朝吉に諌められ、仕方なく、落ちてましたで〜と立ち去っていた刑事たちに声をかけると、戻って来た圭介が、あんたは正直なんやなと感心して、札束を受け取る。

清次はむっとしながらも朝吉に向かい、これで宜しおますやろ?と嫌みを言う。

その後、朝吉と清次は太鼓をトラックに積んで、故郷の八尾に戻って来る。

祭りが始まり、朝吉と清次は、自慢の太鼓を叩き出すが、それを、お徳、宏子とヒロシ、一郎、二郎たちも嬉しそうに見つめていた。