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やくざ刑事

若い千葉真一が活躍する通俗潜入捜査もの。

警視庁の看板を持ち出したくらいで警察を首になるなどという出だしからしてリアルとは言いがたく、そんないかにも怪し気な相手をヤクザたちがすぐに雇うなどというのもバカバカしいというしかない。

そう言う荒唐無稽さを最初から笑って受け入れられる人向けの娯楽作品だということだ。

娯楽映画の出来としては中の下くらい…と言った所だろうか?

それなりに時間つぶしにはなるが、何か期待して観てしまうと、がっかりするかも…と言ったレベルである。

日活で活躍していた葉山良二や内田良平が美味しい役柄を演じているし、長身の天津敏の悪役振りも嬉しい。

途中で登場する、色々な技を持った刺客たちと千葉ちゃんとの戦いを期待するが、吹き矢男以外は後半出て来ないのでちょっと物足りなさはある。

針を投げる刺客役の小林稔侍は、「キャプテンウルトラ」(1967)での宇宙人キケロのジョー辺りの時代の顔を知らないと判別は難しいかも知れない。

全体的に軽いタッチの娯楽作ということもあってか、特に派手な格闘シーンの見せ場はなく、ビルからの飛び降りや、ヘリから降ろされたロープをつかんで走るといった類いのアクションは、実際はかなり危険なシーンだということは分かるが、見た目的にサスペンスをほとんど感じないのがちょっと残念。

警視庁で隼田が受け取る、007の小道具のようなアタッシュケースの中の秘密兵器も今ひとつ説明不足で、ただご都合主義的に爆弾を使うと言った以外には、あまり効果的に使われていないような気がする。

全体的にアイデアが凡庸というか大味な印象なのだ。

元脱線トリオの南利明と由利徹が、いつもながら、ちょっと下品な笑いを付け加えている。

クラブの歌手としてちらり登場している野際陽子は、当時、千葉真一とは夫婦関係だったことからのサービスシーンなのだろうが、今観ると、そのメイクの濃さに驚かされる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1970年、東映、神波史男脚本、野田幸男監督作品。

パチンコをしていた隼田志郎(千葉真一)は、店に刑事がやって来て拳銃不法所持の現行犯で逮捕すると言って来たので、隣にいた朝井鉄次(内田良平)に股間から銃を渡すと、2人して逃げ出す。

タイトル

西新宿で警官と喧嘩していた隼田は、公園の小便小僧の水で顔を洗う。

そんな隼田を気に入った朝井は、どかんと一発儲けさせてやるぜと話しかけると、高くつくぜと隼田は答える。

八城会三好組に連れて来られた隼田は、いきなり禿頭の子分が天井に向けてはっぽいうして来ると、親分の三好(沢彰謙)が、今日は13日の金曜日だと脅して来る。

しかし、隼田は動じず、10時半に警察の手入れがあると教え、三好を逃がしてやる。

そして、自分たちも飛び降りて逃げ出そうとした所を、駆けつけた警官たちに捕まり、あっさり手錠をかけられる。

朝井と共に留置場に入れられた隼田だったが、すぐに、1人だけ牢から出される。

隼田は、自分がデカだと言うことを朝井に教える。

あんな情報知ってる奴、デカ以外の誰がいる?貧乏人の小倅は、ヤクザか、俺のようなデカになるしかないだろう?と隼田はうそぶくが、騙されたと知った朝井は殴り掛かって来る。

朝井はその場で公務執行妨害で捕まってしまう。

その後、隼田は、警視庁の看板を持って青いバギーに乗る。

デカ廃業した隼田は、八城会三好組に拾われていた。

そんな三好会の経営するキャバレーにやって来た峰尾豪(南利明)はヤクザに化けたつもりか仁義を切って来るが、踊子に抱きつこうとして警察手帳を落としたので、イヌだと分かった隼田が任せときなと答え、峰尾を殴りつける。

そんな中、横浜から朝井さんがお見えですと子分が伝えに来ると、八城会直属の?と驚いてみせた隼田は、俺はサツを辞めたんだぜと、自分のことが載っていた新聞を出してみせるが、隼田は撃って来る。

その後、隼田はバギー、朝井はジープで砂浜に来ると、隼田は胸に赤いバラ、朝井は白のバラを飾り、互いに接近して撃ち合う。

両方のバラが落ちたので、やるじゃないか…と感心した朝井は、その腕売らねえか?八城会本部じゃ高く買うぜと勧め、隼田の方も、ここらで手を打つかと答え、互いに笑い合う。

(回想)隼田は先輩に当たる峰尾のいえう警視庁本部に来る。

隼田は峰尾から、矢城隅太郎(内田朝雄)を壊滅させるため、暴力組織八城会への潜入を命じられる。

幹部の西邦雄(富田仲次郎)、殺し屋の栗原(日尾孝司)、朝井鉄次、組の屋台骨を背負っている阿久津宏(天津敏)などの盗撮写真を見せられ、アタッシュケースを手渡されると、連絡のときは、新聞に犬の広告を出すと峰尾から指示を受ける。

隼田は峰尾に、先輩も長生きして下さいと言い残して本部を出る。

(回想明け)阿久津は朝井に、三浦欣吾(葉山良二)と言う、女に溺れ使い込みをしたと言う男を紹介し、大倉組を潰せと命じる。

阿久津は、西とも相談したんだが、例のデカを使いたいと言い出す。

呼びだされてボートに乗っている所を襲撃された隼田は、とっさにガソリンが入った瓶を投げて、それを撃ち爆発させて難を逃れる。

天城商事

西に会った隼田は、俺の腕を観るつもりだったのか?と睨みつけるが、西と朝井は、やったのは大倉組の連中に違いない。大倉をやってくれるか?と頼む。

明日の午後、保守党の大物が来るので奴も来るはずだと言いながら、大倉(山本麟一)の写真を見せる。

翌日、民政党の大物が来て、子分2人に守られた大倉が車に乗り込もうとした時、隼田は狙撃をするが、防弾ガラスに弾かれたので、防弾ガラスくらい調べとけ!と監視役で付いて来ていた八城会の子分に怒鳴りつける。

狙撃に気づいた大倉組が撃ち返して来たので、子分の1人が撃たれる。

バレるとまずいと言うことで、手榴弾で撃たれた死体を爆破すると、隼田はビルの外にぶら下がる。

もう1人の子分は、その隼田のズボンに捕まって何とか脱出する。

その後、大倉が八城に談判に来る。

今までうちで使って来た品物に、あんたの所が色目を使っているようだが…?と大倉が迫ると、八城は、何か見当違いしているようだの…ととぼけるので、出方次第ではこっちもただではおかん!と大倉は凄む。

年寄を脅かしちゃいかんよ…と八城はあくまでもシラを切る。

大倉が帰った後、八城は西に、奴は勘づいとる。デカに今日のヘマの穴埋めをさせろと命じる。

その後、朝井は隼田に、リングで行われていた格闘技を見せる。

そして、突然、朝井がナイフを投げると、吹き矢を吹いて、そのナイフを撃ち落とした男がいた。

西組の特殊な殺し技を持った仲間を連れ「大倉組娯楽センター」にやって来た隼田は、見張りがいるのに気づき、大倉が来ているらしいと察する。

石を投げ見張りを倒すと、建物内に侵入し、針を使う佐々木(小林稔侍)が中を見張っていた連中を倒して行く。

エレベーターで上の階に登り、そこでも佐々木が針で見張りを倒す。

吹き矢を吹く仲間が2人の見張りを倒したので、隼田は部屋の中に入り込むと、女2人が笑って、ベッドで横になっていた大倉の身体をマッサージしていた。

隼田はマシンガンを突きつけ、女たちに部屋から出て行かせると、大倉には、あんたの葬式出しに来たぜと脅す。

出せるかな?と答えた大倉は手榴弾を取り出していた。

隼田が配管を狙い撃つと、高温の蒸気が大倉に吹きかかる、湯船には帽子と吹くだけが残っていた。

隼田はすぐに窓からロープを使い、隣のビルへ移ろうとするが、そのロープが何者かに切られ、隼田は地上に落下する。

そこに、ジープに乗った朝井が駆けつけ、逃げろ!と言いながら、隼田をジープに乗せて逃亡する。

隼田は朝井に、奴は生まれたままの姿であの世に行ったぜと報告する。

マンションに戻って来た隼田は、そこに雑誌「プレイボーイ」を読んでいた殺し屋が待ち構えており、邪魔してるぜ、確かにやったのか?と聞いて来たので、朝井に聞けよと答える。

今度は、あんたに死んでもらおうか?と言いながら、殺し屋は「プレイボーイ」で隠していた銃を取り出す。

隼田は、とっさに、足下にあった室内当のスイッチを踏んで消すと、飛びかかって三浦を叩きのめすと、相手が落とした銃を拾い上げる。

そして、小型のナイフを取り出した隼田は、突然、その刃の部分を発射させ、殺し屋の左目に突き刺す。

その後、殺し屋を西の所へ連れて行くと、こいつが大倉のイヌだったんだと西は言い、俺は組長の命令で…と言いかけた殺し屋をいきなり西は撃ち殺す。

隼田は、今のところは組長さんの言葉を信じときますわと答えると、大きな仕事も終わったんだから、八城の親分さんに会わせてもらいたいと西に頼む。

西は、その内会わせてやるよと答える。

その後、西にゴルフ場に連れて行ってもらった隼田は、ようやく八城本人と阿久津、三浦に会うことができ、何か言うことあるなら言ってみろと言われたので、親分さんの盃を頂きたいと申し出る。

さらに、自分を阿久津商事さんに回してもらえませんか?西さんの所ではマークされちまって…と側にいたドーベルマンにまで頭を下げて頼むので、変な野郎だな…と八城は呆れる。

そんな隼田の様子を観ていた阿久津は、用心棒には使えますと八城に伝える。

しかし、三浦だけは、じっと隼田の方を凝視していた。

その後、女性歌手(野際陽子)が歌うクラブで、隼田は酒を飲んでいた。

良いクラブだな…と隼田が感心すると、側に座っていたホステスが、阿久津社長の店よと教える。

歌手が後ろで歌い終わると、ホステスは、私は飼い猫、お金が欲しいだけなどと自嘲したので、俺は野良犬なんで誰にでも尻尾を振るって訳さと隼田もおどけてみせる。

三浦と踊っていた歌手に隼田が目を向けると、気になるの?元一流会社の一流社員だったんですってとホステスが三浦のことを教える。

すると、その声が聞こえたのか、俺のことをかぎ出してどうする?と三浦が隼田に近づいて来ると、俺は元デカほど臭くはねえんだよ…と隼田を嘲る。

ホステスは酒のせいもあってか隼田のことが気に入ったようで、その後、隼田とベッドを共にするが、隼田が寝入った隙に、隼田のバッグの中から銃を取り出したので、何か見つかったかい?と声をかけた隼田は、阿久津の命令か?あいつはそう簡単に人を信用する奴じゃないだろうと聞く。

しかし、ホステスは、私は単なる枕探し、お金のためなら何でもする女なのさと言い残し、さっさと部屋を出て行こうとしたので、麻薬なんか止しなよとベッドの上から隼田は声をかける。

失敗したホステスは阿久津から、まさか隼田に惚れたんじゃないだろうな?!と責められ、殴られる。

これがある以上、お前は俺からは離れられないんだ!と阿久津は脅す。

ある日、新聞を読んでいた隼田は、「北海飯店 ハヤブサを探しています」と言う広告記事を見つける。

横浜港にやって来た隼田は、三浦を尾行する。

中国人に化けた三浦は中華街にある「北海飯店」と言う店に近づくと、ボスらしき男から、インターポールからの連絡によると、1時45分にシンジケートの男が来るらしいと連絡を受けるが、その時、相手のボスは、お前の顔、どこかで観たことがあると三浦に言う。

そんな三浦を尾行した隼田は、とある別荘にやって来たので、屋根伝いに中に侵入する。

部屋の中を天井裏から覗くと、阿久津と外国人が、テーブル上に拡げた海図に何か印を付けて話し合っているのが見えた。

三浦が隼田に気づいたので、隼田は急いで別荘から逃げ出す。

一方、阿久津のクラブに女装して潜入していた峰尾は、隼田もいる前で、バナナを股間からぶら下げ、よかチンチン…などと下品な芸を披露していたが、阿久津から外せ!と追いやられる。

その後、金庫室に忍び込んだ隼田だったが、その肩に手を置いて来たのは三浦だった。

芝居はもう良い…と話しかけた三浦は、自分は香港から来たと打ち明ける。

その後、阿久津に捕まったのは三浦だった。

麻薬Gメンとは驚いたぜと笑う阿久津は、地下室で三浦を拷問しながら、どこまで報告しているか言うんだ!と責められる。

そこに、酔った芝居をしながら隼田が入って来たので、ここはお前の来る所じゃないんだ!と叱りつけた阿久津は、お前はイヌじゃないんだろうな?と確認し、隼田、これで奴をぶっ殺せと銃を手渡して来る。

隼田は左手で撃ち、わざと外して酒瓶を割ったので、側にいた朝井が銃を取り上げ、自分が三浦を撃つ。

その時、三浦は既に舌を噛みきって死んでいた。

(白い朝がやって来る〜♪と唄が流れる中)港で隼田は落ち込んでいた。

その後、倉庫街にやって来た隼田は、何者かが付けて来る足音に気づく。

急いで何事かをメモにしたためる隼田。

路地に入った所で、オシャマンベ!と言いながら、汚い顔のオカマ(由利徹)が隼田に声をかけて来る。

隼田が通り過ぎた後、今頃ラブレターなんて流行らないわよ…とオカマは、今受け取ったメモを開くと、そこには「南京街の北海飯店に届けてくれ。明日朝、三浦死…」と書かれてあったが、そのメモを何者かに奪い取られる。

そのメモを阿久津から見せられた朝井は、隼田がイヌだった事を知り、俺がやる!と言い出す。

絶対仕留めるんだぞ!と阿久津は念を押す。

マンションに戻っていた隼田は、阿久津のクラブのホステスから電話を受け、あなたのことは全部分かってしまったわ!逃げて、早く逃げて!と知らされる。

窓から下を覗くと車がやって来たので、隼田は銃を手に、急いで寝室から廊下に出る。

そこにやって来たのは朝井だった。

最後はコケにしやがって!と怒り、ヤクは汚くないとでも言うのか?と隼田が言い返すと、抜きな!抜け!と勝負を挑んで来る。

次の瞬間、朝井に付いて来た子分2人が撃たれる。

朝井の首には、吹き矢が刺さっていた。

おめえと別れるのは辛いぜ…、あんたが助けてくれなかったら、今頃、俺は…、すまねえ!と言うと、隼田は子分と撃ち合う。

屋上で敵と戦った隼田は、下に飛び降り、近くの歩道橋の上から走って来たトラックの荷台に飛び降りて逃走する。

その後、隼田は、あの別荘の屋根に再び上っていた。

下の部屋を覗くと、子分がトランプをしていた。

飛び降りて、子分たちを倒した隼田は、捕まっていたホステスに、何故俺を助けてくれた?どう言う風の吹き回しなんだ?と聞く。

あなたを死なせたくなかった…、ただそれだけよ…とホステスは言うので、取引の場所はどこなんだ?と隼田は聞く。

あなたが言いたいのはそれだけ?と哀しそうにホステスが聞いて来たので、それだけだよと冷たく答えると、いつの間にか部屋に忍び込んでいた西が、隼田の背後から銃を突きつけて来る。

ホステスは西を撃ち、西もホステスを撃ち返したので、両者は相打ちで倒れる。

大丈夫か!しっかりしろ!とホステスを抱き上げた隼田に、ホステスは、伊豆の八城の別荘…、急がないと…と打ち明け、息絶える。

ありがとう…と、死んだホステスに感謝した隼田は、ジープで富士山の麓にやって来る。

麻薬と大金の取引が行われていた別荘のパーティ会場で爆発が起こる。

大倉組が襲撃して来たのだった。

大倉は阿久津との撃ち合いの中、相打ちで死亡する。

そんな中、ジープの隼田は八城が乗って逃亡した車を追う。

その時、ヘリコプターが上空に迫って来て、上から隼田を撃って来る。

さらに、火の点いたダイナマイトまで落として来たので、隼田はジープから、トランクを乗せた八城の車へと飛び移る。

すると、ヘリから2本のロープが降ろされ、それを掴んだ八城は自分の身体とトランクに結び付ける。

次の瞬間、八城が乗った車は崖から落ちる。

隼田は、八城が外れ、ヘリから伸びたトランクを結んだロープを掴むと、ヘリと一緒に走り出す。

ヘリに乗っていた敵が撃って来たので、トランクの世情が壊れたのか、蓋が開いてしまい、大量の札束が周囲に飛び散る。

隼田は発煙筒をヘリに向かって投げつける。

ヘリは大爆発を起こす。

走った勢いで崖から転がり落ちる隼田。

そこに、パトカーが近づいて来る。

一緒に走って来たのは、メキシコ風の衣装を着た峰尾が乗った馬だった。

セニョール、犯人はどこだ?と峰尾が隼田に問いかけると、八城会も壊滅ですと答えた隼田は、峰尾が乗って来た馬に飛び乗ると、どこへともなく走り去るのだった。