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新・座頭市物語

人気シリーズ3作目で初のカラー作品。

ロケーションが多かった1、2作と違い、この3作目からはセットシーンが増えているような印象を受ける。

2作目で寺に埋めた仕込み杖を市が持っていないように見えるのも異色である。

この回で、市が人を殺した恨みを背負って旅を続ける凶状持ちになったことと、市の居合いの先生が登場し、眼が見えない彼がどうやって居合いの名人になったかが解き明かされている。

さらに、この回でも、市は、若くきれいな娘から結婚してくれと申し込まれている。

市が、女から好かれる、根っからの悪党ではないことを暗示しているのだろう。

そして意外なことに、本作での市は、その申し出を受け、堅気になって結婚しようとする。

かつての恋人だったお千代が生きていると知っているはずの市の行動としては、いささか不可解である。

もう過去のことは振り切ったと言うことか?

それとも、居合いの練習で通っていた時から、市も弥生に惚れていたと言うことだろう。

だとすると、初作で市がおたねからの結婚の申し出を頑に断ったのは、お千代だけではなく弥生への想いもあったと言うことになる。

その弥生を演じる坪内ミキ子も印象的だが、もう1人、関の勘兵衛の弟、安彦の島吉を演じている須賀不二男も得な役を演じている。

「続 座頭市物語」に登場した関の勘兵衛は、はっきり市に斬り殺されるシーンはなかったと思うが、おそらく「続 座頭市物語」のラストで、飯岡助五郎と一緒に斬られたと言うことだろう。

悪役が多い印象の須賀不二男が、この作品では市を助ける人情を見せる。

市の剣の師匠である伴野は、貧困から身を持ち崩し、心まで荒んでしまった浪人で、失礼ながら、あまり器用そうには見えない河津清三郎に適役だろうか?と言う疑問もあったが、その無骨さを巧く生かしているように見える。

市が笠間の生まれであることは、すでに「続 座頭市物語」でも明かされているのだが、今作でも、前半で出会う高知屋の為吉と乳母役とも言えるお茂婆さんの口から、市の故郷として笠間の名が出ている。

出来としては、可も不可もなく、平均作と言った所だろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、子母沢寛原作、犬塚稔 +梅林貴久生脚色、田中徳三監督作品。

※文中に、今では差別用語と言われる言葉がいくつか出ていますが、それを省略しては話が通じない部分もあり、一部伏せ字にしてそのまま使用しております。なにとぞ、ご了承ください。

とある宿場

駈けて来た篭かき2人が、冷えた身体を温めるためにたき火に近づく。

そのたき火を背景にタイトル

土浦宿

飯屋に仲間2人と入ったヤクザ安蔵(伊達三郎)は、店の隅で1人飯を食っていた客の後ろ姿に目を留め緊張する。

安蔵は、目で合図をすると、外に出ると、座頭市、関の勘兵衛を叩き斬った奴だと仲間2人に教える。

しかし、店を出てきた市は仕込み杖を持っていない様子だったので、3人は人気のない場所で市を取り囲むと声をかける。

どなたさんで?と市が聞くと、勘兵衛に関わりのあるものだ。覚悟しろ!と安蔵は言うなり斬りつけて来る。

市は、背中に背負っていた傘のように見えた柄の部分を引き抜くと、あっという間に2人を斬り殺してしまう。

俺は風を斬っただけだ…と呟く市の前から、生き残った1人が逃げ去って行く。

翌日、旅を続けていた市は、歌を歌いながら近づいてきた子供の一段と遭遇し、按摩をからかう歌を歌われるが、瓶つけ買わず、くし買わずか…と、無邪気なその歌詞に思わず笑顔になる。

その後、市は、子供連れの夫婦とすれ違うが、その夫の方から、笠間生まれの市さんでは?と声をかけられる。

そうですが?と市が答えると、夫は、為だよ。高知屋の為吉(舟木洋一)だよと言うではないか。

歌の巧い為吉さんかい?と市が驚くと、ガキの頃の喧嘩相手に会うとは…と為吉も意外な再会に驚いている様子だった。

側に女房子供もいるんだと為吉が教えるので、親子水入らずで湯治にでも?と市が聞くと、実は高知屋は潰れ、三味線で食いつないでいる旅暮らしの門付(かどつけ)なんだと為吉は言う。

苦労していることを知った市は、今夜は一緒に飲もうじゃないかと誘う。

汚い宿で酒を酌み交わすことになった為吉は、稼業をおろそかにした罰さと自嘲すると、市も、俺もメ○ラのくせに眼明きの鼻を明かしたいばかりにヤクザの世界に入っちまったが、それが仇さ。斬っちゃ行けねえ人を斬ったり…。今じゃ、あっちこっちの恨みがかさみ、危ない身体なんだ。俺もつくづく悔みに思うことあるよと打ち明ける。

それを聞いた為吉は、あんた、危ない身だなんて言いながら、刀、身につけていないじゃないか?そんなことで良いのかい?と案ずる。

すると市は、三味線を貸してくれないか?歌が歌いたいんだと言い出し、他の客に、しばらくツ○ボになっていておくんなさいよと詫びると、小歌を歌い始める。

歌い終わると、聞き入っていた他の客の間から自然に拍手が起きる。

その時、4人組の賊が押し入ってきて、刀を客たちに突きつけると金を奪い始める。

市の前にも1人来て脅したので、水戸の天狗党と言うのが強盗しているらしいですが、あんたらですかい?などと言いながら、市はおとなしく金を渡す。

その金を拾い集めていた賊の手のひらには、サイコロの刺青が入っているのを為吉は目撃する。

賊たちはその後出て行くが、翌朝、地元のヤクザ真壁組を訪ね、玄関先で藁でわらじを編んでいた3人の子分に親分に会わせてくれと市が頼むと、今は留守だと言う。

では、太七さんに会わせてくれと頼むと、すぐに呼んでくれた。

太七(水原浩一)は、呼び出した市に困惑しているようだったが、夕べの今朝だ。お前さん、私の顔忘れちゃいないでしょう?昨日は、周りの客たちに怪我をさせていはいけないと我慢してたんだと言うなり、相手につかみ掛かり、腕を押さえて地面に押さえつけると、あんた、面白い所に刺青があるそうだねと言いながら手のひらを開かせる。

それを他の泊まり客らと近くから怖々観ていた為吉が、ある、ある!サイコロだ!と教える。

それを確認した市は、組の中から出ていた子分たちの前で、片割れも3人ばかりいるはずだ!と多七を締め上げると、久六、権六、山吉の名を聞き出す。

気色ばむ子分たちの前で、そこには路銀奪われて、途方に暮れている人がいるんだ!文句あるなら、償いするか?と市が啖呵を切ると、3人の片割れを突き出した真壁の親分浅右衛門(東良之助)から、確かに、盗人の片割れだ。もしやお前さんは、座頭市を言う方じゃござんせんか?と温和に話しかけられたので、ようやく話を分かる方が出てきた。真壁のお貸元だ。2倍にも、3倍にもして返してくれるだろうと市が言ったので、側で様子を観ていた泊まり客たちは歓声を上げる。

その後、市は、為吉夫婦と、互いに堅気になる約束をして橋の所で別れる。

その頃、真壁組を訪ねた安彦の島吉(須賀不二男)や馬造(中村豊)は、玄関先に立てかけてあった障子が破れているのに気づき、何事かと聞くと、たった今まで座頭市と言う奴がいたと言うではないか。

それを聞いた島吉と馬造らは、後を追って飛び出して行く。

鬼怒川温泉で足湯を浸かっていた市に声をかけた島吉は、自分は関の勘兵衛の弟だと名乗ると、訳を聞けば、そちらにも理屈はあるんだろうが、こちらはあくまでもヤクザの意地だと言い切り、刀を抜いて来る。

仕方なく、わらじを履いた市が相手をしようとしていた時、どこからともなく飛んできた布切れが市の顔に当たる。

突然現れた見知らぬ浪人に島吉たちが狼狽していると、俺はそいつに人の切り方を教えたものだと名乗った伴野弥十郎(河津清三郎)は、市に向かい、一杯やろうと誘って来る。

それでも、島吉たちは市を見逃す気はなく、用が済んだらここに戻って来るんだと市に言い聞かす。

伴野は市を、かつて剣を教えていた家に連れて来る。

その庭先では、何人ものの弟子たちが剣術の練習をしており、家の中には伴野の妹の弥生(坪内ミキ子)がいた。

市は、匂いで昔を思い出したようだった。

4年前と何も変わっちゃいないと言う伴野は、弥生に近づくと、諸岡との話を決めてきたと耳打ちするが、弥生は、強情でしょうが、このお話だけは…と断る。

そんな妹の抵抗にいら立った伴野だったが、そこに、宗源寺の提灯を下げた小坊主がやって来て、奥村様から使いで来たと言うので、伴野はその後に付いて出かける。

外で待っていた奥村紀之介(丹羽又三郎)に久々に会った伴野は、水戸の天狗党で捉えられたものは皆首を斬られたそうじゃないか?と語りかける。

一方、伴野の家で、酒を振る舞われていた市は、これからお茂婆さんに会いに行こうと思う。あの婆さんの乳をしゃぶって育ちましたから…と弥生に打ち明けていた。

伴野は奥村を、「油屋」と言う馴染みの飲み屋の二階の部屋に連れて来ると、300両ばかり金がいると頼まれる。

貧乏浪人でしかない伴野は金をどうやって工面するか考え、神田陣八郎(南部彰三)と言う商人の倅がうちに出入りしていると教え、天狗党の生き残りが押し込みに身を落としているそうだな?と奥村の近況を当てこするように聞く。

その時廊下に、女将のお新(近藤美恵子)が酒を持ってきたので、手を叩くまで来るなと伴野は部屋の中から伝え、俺が手引きしたなどと言ってくれては困る。妹がいると奥村に念を押す。

弥生様はいくつになられます?と奥村が聞くと、18だと伴野は答える。

その弥生は、家の外に市を見送りながら、月がきれいなどとつい言ってしまい、市のことに気づくと詫びる。

市は、子供の頃、まだ眼が見えた頃を思い出しますなどと笑い、急に按摩用の笛を吹くと、お茂ばあさんの家に向かう。

そんな市に、弥生は、明日、待ってますよと声をかける。

旅籠に泊まりにきた安彦の島吉と馬造は、同じ家の中に油屋と言う飲み屋があることを知ると、馬造が先に飲もうと言い出す。

主人の三五三吉(遠藤辰雄)に酒を注文した2人は、2階から片桐と降りて来た伴野を発見する。

伴野の方も、島吉らに気づくが、片桐を送り出すと、又2階に上がる。

島吉は、あいつの行方を突き止めれば、市の居所が分かるぜと馬吉に教える。

お新が、伴野の為の酒を注文しに降りて来ると、三吉は、あんな男に酒を飲ませるほど俺はバカじゃないと女房を怒鳴りつける。

その頃、宗源寺の前を通りかかった市は、小坊主から呼び止められ、お侍さんから恩間を呼べってうるさいのさと声をかけられる。

寺の中にたむろしていたのは天狗党の残党たちだった。

その1人の身体をもみ始めた市は、旦那様、大分、剣がお出来になりますねとお世辞を言っている。

すると、侍は調子に乗って、7人を斬り殺し、11人を半死の目に合わせたが、俺は傷一つ受けたことがないなどと自慢する。

やがて別の侍も、次は俺をやってくれと部屋に入って来るが、そこに戻って来たのは奥村紀之介だった。

奥村は、按摩なんか呼び入れるなと注意したので、市は金もわらないまま追い出されたので、帰り際、水を侍の枕元にまき散らして行く。

その後、市は、お茂婆さん(武智豊子)の家に世話になる。

笠間には帰らんのか?下館に来て帰らんと言うことはないだろう。たまには墓参りにでも帰ったらどうだとお茂から諭され、じゃあ、そうするよと市は返事をする。

そのとき、入口に弥生が来て、鬼怒川で斬りあいした人が、油屋にいたそうよ。島吉さんと言う人ですと教え、市の手を引いて竹林の中を自宅に案内する。

市は思わず、静かですね…。別世界にいるようだ…と、弥生と2人きりの林の中で呟く。

市と弥生が庭先から家に入ろうとした時、入口には奥村紀之介が訪ねて来て、応対に出た伴野弥十郎は一緒に出かけて行く所だった。

戻って来た市に気づいた伴野は、ここに来ている若い者たちにお前の居合いを見せてくれと頼む。

出かけようとした伴野に会いに来たのは、油屋のお新だった。

外に出た伴野にお新は、夫から殺されそうになって…、私、もう、家に帰れませんと訴えて抱きつこうとするので、伴野は、帰れ!下らん、痴話話など持ち込むな!と叱りつける。

その後、伴野の座敷に集まった弟子たちの前で、立てた4本の燭台の蝋燭を居合いで瞬時に切断してみせた市。

その技を、窓越しに外からこっそり盗み観ていたのは、安彦の島吉と馬造だった。

島吉は、市の居合いの技に心底驚いたように帰って行く。

市は、伴野が、見せ物の礼でもするように、金の包みを放って寄越したのでむっとする。

その居合いを観た神田欽吾(高倉一郎)が、伴野の家から帰る途中、待ち構えていた奥村たちが襲撃し、欽吾を拉致してしまう。

一緒に帰宅していた弟子が、伴野の家に戻って来て変事を伝える。

伴野は驚きでかけて行くが、その姿を屋台の蕎麦をすすりながら観ていた島吉は、もう市を倒すことは諦めようと怖じ気づいた馬造に、おれ1人でもやる!今夜が勝負だ!と言っていた。

伴野の家に残っていた市は弥生に、欽吾さんがここに来るのを賊は知っていたのでしょうか?と不思議がっていた。

弥生も、今の暮らしから何とか逃れようと、兄も苦労しているようですと言うので、お嬢さんがお嫁に行けば、伴野さんも安心なのでしょうが…と答えると、弥生は、私考えたんですけど、私を市さんのお上さんにしてもらえないでしょうか?私は貧乏浪人の娘、嫁に行くにも、小袖一つ持って行けない身分です。今朝、一さんと竹林を歩いていて、今日はそればかり思っていましたと言い出す。

それを聞いた市は、もったいない。身分が違いますと強く拒否するが、弥生は、身分などどうでも良いと思っています。夫に可愛がってもらえばそれが一番。本気です!私をもらって下さい!と訴えかけて来たので、市も考え直し、そのつもりになって良いんですね?ありがとうございますと答える。

弥生は本気です。兄には私が頼みますと言うので、市は、私はメ○ラです。カ○ワです。それでも良いのですか?と聞くと、昔から知っていますと言う。

人を斬って殺した凶状持ちです。女も知っています。銭で買った女も5人や10人じゃありません。汚れて腐っているんです。どうすれば良いんでしょう?と問いかける市に、今日からは、別の市さんになってもらいますと弥生が頼むので、ドスも捨てます。堅気になりますと市は約束する。

そこへ入って来たのが島吉だった。

支度して、表で待っているぜと言うので、市は困惑し、困ったことになりました…。市は今、お嬢さんに、近いを立てたばかりですと弥生に言いながら、外に出る。

島吉の待つ道に出て来た市はその場に跪くと、命を助けて欲しいんだ。気の済むまで殴るなり蹴るなりしてくれと頼み、一緒に出て来た弥生も、堅気になるって言ってくれたんですと頼む。

これには島吉も拍子抜けし、ヤクザの借りはどうしてくれる?立ちねえ!と市を促すが、弥生まで、私も一緒に斬られますと訴えて来てはどうしようもない。

お前たちは堅気になって夫婦になるつもりなんだろう?座頭市がなんて様だ…と呆れた島吉は、ここはヤクザらしく、丁半博打をやろう。お前が勝ったら、あっさり水に流してやる。負けたら、お前さんの腕を斬りやしょうと言い出した島吉が、懐から手ぬぐいとサイコロを取り出すと、自分の膝の上に手ぬぐいを広げ、素振りだと言いながらサイコロを転がしてみせ、俺は半だと言う。

出た目は、6と3の半だった。

しかし、それを観た島吉は、指先で3のサイコロを転がし4にすると、46の丁か、運の良い奴だぜ。俺はもう会わねえよと言い残して去って行く。

それを観ていた弥生は思わず泣き出し、市さん、あのお方…と呟く。

市自身も、賽の目は、確かに半だったと見抜いていた。

その直後、帰宅して来た伴野に、弥生は、折り入って話があると良いんだし、私、お許しを頂ければ嫁入りを…と告げる。

それを聞いた伴野は喜び、相手は誰だ?と聞くと、後ろに控えていた市が、私でございます。お嬢さんを私に頂かせて下さいと願い出る。

弥生も、市さんと一生添い遂げたいと思いますと言うので、伴野は逆上し、こいつは博打打ちだぞ!メクラだぞ!といきり立ち、外道の面など観たくない。今限り、師弟の縁も切る!と言い渡す。

そのとき、かようなものがうちに投げ込まれていたと、欽吾の父である神田陣八郎(南部彰三)が伴野に書状を持って来る。

そこには300両を要求する内容が書いてあった。

陣八郎は、息子の命には替えられませんと、要求を飲むことを伴野に打ち明ける。

先生、これは天狗党の仕業では?と陣八郎は口にするが、伴野は、まだ座敷に残っていた市に、まだいたのか?帰れ!、わしが斬れるものなら斬って来い!と怒鳴りつける。

思わず、市は仕込み杖を握りしめるが、その場は黙って帰って行く。

その後ろ姿に、伴野は、かかって来んのか?ドメ○ラ!と罵倒して来るが、市は、お世話になりましたと頭を下げるだけだった。

その後、伴野は、脅迫状を表で焼き捨てる。

家に入って来た伴野は、お前はそれほど、わしを辱めたいのか?お前が諸岡に行ってくれれば、わしは江戸に行くことが出来るのだ。わしは欽吾の身を引き受けに逝く。詰まらんことを考える出ないぞと言い聞かせて出かけて行く。

お茂婆さんの家に戻って来た市は酒はないかと聞くが、飲みたければ酒屋で飲んでくれば良いじゃないかと言われたので、その場で旅立つ準備を始めると、もう二度とこの土地に戻って来ねえつもりだと言い出した市は、飲み屋はどこだ?とお茂婆さんに聞く。

片河町に、油屋と言う店があると聞いた市は、何かに怯えるような顔で家を出て行くが、その直後にやって来たのが弥生で、市さん、帰って来ましたか?とお茂に聞く。

油屋で飲んでいた島吉は、入って来た伴野から、どうした市を殺さんのか?と挑発されると、泥棒猫にも劣る卑しい奴だと酔った勢いもあり言い返す。

今何と言った?と伴野が気色ばむと、人の女房、つまみ食いするのを泥棒猫と言うんですと島吉はしらっと答える。

激した伴野は、島吉を店の外に追い出すと、路地の奥で斬ってしまう。

その直後にやって来たのが座頭市で、その姿を観た伴野は、貴様を狙っている奴を斬ってやったぞ。命冥加な奴だと言い残して去って行く。

それを店の中から聞いていたお新は、戸を閉めてしまう。

伴野の言葉に驚いた市は、路地の奥で倒れていた島吉の死体を発見し、気の毒に…、一体、どうしてしまったんだい。お前さんの暖かい志には礼を言うつもりだったと語りかけ、それにしても、斬り殺すとは…、ひでえことしやがる…と伴野の行為を憎む。

天狗党の残党は駕篭を担いで宗源寺を出ると、神田陣八郎が金を持って来るはずの森の中に向かっていた。

彼らを待ち受けていたのは、座頭市だった。

市は、天狗党から声をかけられると、揉み料をふんだくったお侍だね?と答える。

浪人は、揉み料を遣わすぞ…と言いながら、刀を抜いて斬り掛かって来るが、市の居合いに倒される。

奥村紀之介が、ただの按摩ではあるまい?と聞くと、目は見えなくても、お前さんのやっていることは大体察しが付く。この駕篭の中には300両の人質が入っているんだろう?天狗党かなにか知らないが、悪い人たちだな…と市は答える。

一方、約束の場所に300両を持った神田陣八郎とお付きの者が近づいていた。

市が天狗党を倒している間に、駕篭の中で縛られていた神田欽吾は逃げ出していた。

やがて、神田陣八郎の前に現れた伴野が、その300両はわしが預かりましょうと申し出るが、陣八郎が、これは欽吾と…と躊躇すると、わしを疑っているのか?と問いかけながら近づくと、その場で神田陣八郎を斬り殺してしまう。

それを目撃した欽吾は、恐怖に駆られ逃げ出してしまったので、伴野は悔しがる。

もう1人、その様子を近くの木陰から目撃して嘆いていたのは弥生だった。

兄を怪しみ、つけて来ていたのだった。

そんなことは知らない伴野は、300両の金を奪って約束の場所に駆けつけると、すでに市が天狗党全員を斬り殺していた。

伴野は、市!おのれ…、良くも…と呟くが、市は、あっしは何も…。自分を防いだだけでございますと答えると、仕方ありません。あっしも、先生から習った居合いでお相手しましょうと、刀を抜いた伴野と対峙する。

先生、許しておくんなさいよと声をかけるが、その様子も、草影から、弥生が息を殺して見守っていた。

市、抜け!と叫びながら、伴野は斬り掛かるが、市の居合いで倒される。

それを見てしまった弥生は泣き出す。

その声で弥生が側にいることを知った市は、その横を通り過ぎるとき、お嬢さん、市はやっぱりこんな男でして…と言い残して立ち去って行くのだった。