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お姐ちゃんに任しとキ!

パンチ(団令子)、ピンチ(中島そのみ)、センチ(重山規子)のお姐ちゃんトリオによる人気シリーズ第5作。

東宝の3人娘ものと云えば、美空ひばり、雪村いづみ、江利チエミら歌手アイドルによるトリオものが嚆矢らしいが、このお姐ちゃんトリオものは、時代的にはそれに次ぐシリーズのようだ。

元祖3人娘ものの興行力を実感した東宝が、新たに企画した新トリオらしい。

団令子は丸顔に太眉に大きな眼が特長の個性的な東宝女優、中島そのみは本来ウエスタン歌手志望だったらしいが、一度聞いたら忘れられないような素っ頓狂な声、今で言うアニメ声の持ち主でコミカルで愛らしいタイプ、重山規子は元々日劇ダンシングチームのトップダンサーだった人で、その伸びやかな肢体と豊かな胸が魅力のクールビューティタイプの人。

歌手は中島そのみだけなので、唄のシーンは彼女が受け持つことが多いが、重山のセクシーなダンスのシーンも多い。

シリーズが結構続いたと云う事は、動員がそんなに悪くなかったと云う事だろうから、当時の男女共にそれなりの人気があったと云う事と思う。

メインの映画と云う感じではないが、添え物としては気軽に楽しめる明るいタッチの作品になっている。

今回の作品は、ガソリン消費の節約を競い合う女性だけのカーラリーと云う設定がまず面白い。

登場しているスポンサーは東西自動車と云う設定になっているが、劇中のポスターなどには「マルマンミックス」などと車名が出てるので、どこかの自動車関連会社とのタイアップなのだろう。

他にも、大阪に着いたトリオが、松野からごちそうされるとき、テーブルに置かれているビールは、当時の映画としては珍しく「キリン」だったりする。(当時の劇中ビールとしてはアサヒの方が多かった)

他にも、その中華料理店の窓の外のネオンが「スキムミルク」などと書いてあるのも懐かしい。

ちょっと気になるのは、レース途中でトリオがピストル強盗に出会い、盗まれた車が後半丹波篠山に乗り捨ててあったと云う件。

先日観た「口から出まかせ」(1958)と云う森繁主演の宝塚映画でも、そっくりの展開が出て来たからだ。

同じ宝塚映画と云う事もあり、ひょっとしたらアイデアの流用なのかもしれない。

宝塚映画だけに、茶川一郎や佐々十郎と言った関西系の役者が出て来るのもご愛嬌だが、藤田まことが演じている胸毛も勇ましい「からっ風のユキ坊」と云うのは、増村保造監督の大映作品「からっ風野郎」(1960)に主演した三島由紀夫のパロディだろう。

「からっ風野郎」が3月23日公開、この作品が同年7月31日公開である。

当時のプログラムピクチャーの、時代の流行を素早く取り入れる発想は愉快だが、世代が違う今の人が観ると、全く通用しないネタかも知れない。

当時人気歌手だった神部一郎が登場するのも見物である。

今のアイドルとはかなりイメージが違うので、こちらも当時を知らない世代にとっては、誰?この人?と言った感じだろう。

高島忠夫、佐原健二、佐藤允と言った東宝常連たちも当然ながら全員若々しいが、この当時の高島忠夫などは、確かにイケメンだったと云ってもおかしくないだろう。

劇中、その高島忠夫の妹と云う設定で、ビート族のアパッチのはるみを演じている野辺小百合と云う女優さんは、他ではあまり見かけた事がないような気がする。

ちょっと可愛い感じの人だけど、特に際立っていると云うほどでもなく、当時の東宝には美人系の女優は多かっただけに、今ひとつ役に恵まれなかった人なのかもしれない。

もう一つ気になったのは、叔父叔母の屋敷の二階から、ロープ伝いに逃げ出そうとしていたピンチが叔父叔母に見つかるシーン。

ノースリーブの衣装のピンチはロープを握りしめてぶら下がっていると言う設定なので、当然ながら、アップになると、上に伸ばした両腕の特に脇の部分は顔の横にはっきり写っている。

どうもピンチは脇毛の処理をしていないように見えるのだ。

もちろん当時、例えば新東宝系の作品などで、お色気サービスとして、あえてむだ毛の処理をしていない踊子が登場するなどと云うのは観たことがあるのだが、東宝系のアイドル映画でこのような絵を観た事は今までないような気がする。

シーン設定やピンチのキャラから考えて、ここがお色気サービスだったとは思えない。

ひょっとしたら、当時はまだ、そう言う事をあまり気にしていなかったのか?とも想像する。

どう考えても、ピンチ本人も、廻りのスタッフたちも誰もその事に気づかないと云う事はないと思うからだ。

一応処理はしているのだが、たまたま撮影時は少し伸びかけていただけなので観客には気づかれないだろう…と云う事だったのかも知れないが、今の感覚からするとちょっと考えられないと思う。

作品全体の出来としては平均作と言うか、まずまずと云った所だと思うが、この手の大衆娯楽は、今、あれこれレトロ要素を見つけると云う別の魅力があり、それがひどく楽しい。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、宝塚映画、笠原良三脚本、筧正典監督作品。

「ポポンS」の看板や森永の広告塔が見える銀座の町中に、やって来た赤いオープンカーを運転しているのはピンチこと金持ちの令嬢でいつも恋をしている中原美津子(中島そのみ)だった。

彼女が乗り込んだのは「週刊ニッポン」の編集室だったが、パンチはいるか?と聞くと、不在だと聞き、がっかりしてパンチのイスに腰掛けたピンチだったが、その背後から、「このアマ!」と言いながら、雑誌を丸めたもので頭を小突いて来たのは編集長の池林(南道郎)だった。

殴った池林は、怒って振り向いたピンチの顔を見て、人違いをしてしまったと慌てるが、いきなり殴られたピンチの方は激高し、私は生まれつき頭が弱いので、親も殴らないようにしているのに…と睨みつけて来る。

殴ったわけを聞くと、パンチがトップネタであった「紙パンティ」のことをライバル誌である「週刊男女」に売りつけたので、あっちは3万部も売れたからだと云う。

それを聞いたピンチは、実はそのネタをパンチに売ったのは自分であると言い、そのカラフルな「紙パンティ」の詰め合わせセットを取り出して見せながら、このネタを買ってくれなかったあなたの事をへっぽこ編集長だってパンチは怒ってたわよと教える。

その頃、そのパンチこと園江敏子(団令子)は、東西自動車の宣伝部長山下(多々良純)相手に、今度行われると云う女性だけのカーラリーレース「エコノミーラン」の事を取材していた。

賞金を聞かれた山下が、優勝カップとニューカーを一台贈呈すると教えると、金に目がないパンチは、自分も応募したい。その売値99万800円のニューカーを売れば80万にはなるでしょう?などと言い出したので、応募はもうとっくに終わっており、30人の枠に200人もの応募があり、当選発表は来月1日だと呆れながら山下は教える。

その時電話がかかって来たので、それに出た山下は、お嬢様が?と驚きながらも相手にへつらうような口調で、お名前は?と聞き、中原美津子さん?応募番号は99番ですかと確認する。

その通話を間近で聞いていたパンチは、何か裏工作のご依頼ですか?と探りを入れて観るが、そうではなく、これまで10回も免許違反を繰り返して来たうちの大株主のお嬢さんが、今回のレースに応募なさったようで、恥ずかしいので絶対落選して欲しいと云うご家族からの依頼だったのだと山下は教える。

それを聞いたパンチは、無理ないわね、ピンチの腕じゃ…と苦笑しながら独り言を言う。

その頃、ピンチは、踊子のセンチこと秋山重子(重山規子)の楽屋に来て、自分は東西自動車主催の「エコノミーラン」に出たいのだと打ち明けていた。

しかし、センチは、自分がその抽選くじを引くビーナスの役なので役には立てないわよと教えると、ピンチは自分の番号は99番なので、あんたが何番取っても、99番って発表しちゃえば良いんじゃないと知恵を授ける。

それを聞いたセンチは、自分も来月から大阪のキャバレーに行くのだと教えると、じゃあ、私の車におごりで乗せてあげるとピンチが交換条件を出したので、交渉はあっさり成立してしまう。

いよいよステージで、見事な脚線美を披露して踊り終えたセンチは、いよいよ「東西自動車主催のエコノミーラン」の参加者抽選会の当選ボールを回して出す係を始める。

一緒に並んだキャンペーンガールらが、次々に出て来る当選番号を読み上げて行く。

その取材に会場を訪れていたパンチは、舞台上の写真を撮っているうちに客席に座っていたピンチを発見、あんたは絶対当選しっこないわよと忠告するが、ピンチは、大丈夫よ、センチと打ち合わせ済みだから…と、つい口を滑らせてしまう。

いよいよ最後の玉を出したセンチは、キャンペーンガールがそれを取ろうとする前に横取りし、99番ですと噓の番号を読み上げてしまう。

それを舞台袖で聞いていた山下宣伝部長は首を傾げる。

99番の玉は最初から抜いていたはずだからである。

抽選会後、センチ、パンチ、ピンチがそろった楽屋にやって来た山下は、何であんなインチキをやったんですか?今確認したら99番などと云う玉はないじゃないですか。抽選は公正に行わなければいけませんと苦情を言うが、一緒の部屋にいたパンチは、本当に公正な抽選ですか?と山下に突っ込むと、目の前にいるのが先日の取材で99番を抜く事を明かした相手であり、当の中原美津子もこの場にいると気づいた山下は黙り込んでしまう。

結局、ピンチの出場は認められ、3人はピンチの赤いオープンカーに乗って、東京から大阪までの「エコノミーラン」に参加、運転するピンチは調子に乗って、68台追い越したのに上機嫌。

しかし、真ん中に座ったパンチは1人暗い顔をしており、「エコノミー欄」と云うのは、ガソリンを経済的に使ったものが優勝する勝負なのと、うかれているセンチとピンチに教える。

やがて給油所にさしかかり、給油してくれる女性係員から、あなたたちの車が一番早く到着したけど、ガソリンの消費量も一位よと教えられたので、どうすれば勝てるの?とピンチが聞くと、そこがおたくの腕の見せ所よと係員は言う。

再出発したものの、パンチは、このままだと大阪に着いたとたんにガソリンは行って来も残ってない事になるわと心配し、東京、大阪間の給油所には、不正が行われないように全部通達されているはずと言う。

じゃあ、どうすりゃ良いの!とピンチが切れかけると、優勝してニューカーもらったら、半分に相当する金額は私のものよと云う交換条件をピンチに飲ませたパンチは、センチに後ろに積んであるバッグを開けさせる。

バッグの中には洋酒瓶が何本も詰まっていたので不思議がるセンチに、私が飲むんじゃなくてこの車が飲むととパンチが教える。

酒瓶の中に入っているのはガソリンだったのだ。

人気のない所で停めて、このガソリンを入れちゃおうと云う事になり、とある脇道にバックして入り込んだパンチとピンチは、さっそく、封印がしてある吸入口のシールをそっと剥がし、洋酒瓶に入れたガソリンを注ごうとするが、その時、側の小屋からサングラス姿の男が2人、拳銃を持って2人の方に近づいて来る。

最初は冗談だと思って相手にしなかったパンチとピンチだったが、2人の男が実際に発砲してみせると、急に怖じけてしまう。

1人の拳銃強盗(佐々十郎)が、パンチの手を握って来ると、パンチはビンタする。

もう1人(茶川一郎)がピンチに迫ると、股間を蹴り上げられたので、「おろか…」と言いながらへこんでしまう。

それでも2人の強盗はピンチの車に乗り込むと、走り去ってしまったので、脇道の入口で見張り番をしていたセンチは、自分が置いてきぼりを食ったと勘違いして呼びかけるが、そこに駆けつけて来たパンチとピンチが、車を盗まれたのよと教える。

踊りの衣装ケースが置いてあるのに!と哀しむセンチに、自分も金を入れたバッグを置いていたとパンチが言い、私なんか自分の車を盗まれたのよ!とピンチも悔しがる。

ヒッチハイクを狙い、とぼとぼと歩き始めた3人だったが、とりあえず、女の一番大切なものをとられなかっただけ不幸中の幸いか…と負け惜しみを言うと、パンチが、自分は一番大切なものをとられたわ!と答えたので、センチはびっくりするが、それはお金の事よとピンチが指摘する。

10台目の車に、スラックスの上に履いていた赤いスカートを取り、振ってみたピンチだったが、又もや無視されて走り去ってしまったので、関西の男って最低よね…とピンチは憤慨する。

ところが次に通りかかった車は素直に停まってくれ、運転していた青年(高島忠夫)は事情を聞くと運転手は快く3人を乗せてくれる。

青年は、3人を大阪まで送り届けてくれただけではなく、高級中華料理屋に連れて行き、腹一杯ごちそうしてくれたので3人は大感激。

図々しいピンチなどは、どこか踊りに連れて行って下さらないなどと無遠慮に頼み込む始末。

その時、側を通りかかった中村なる人物に声をかけた青年は、この辻向かいに警察があるからと3人に教えると、飛行機で今から東京に帰る所だと云う中村と話をしながら一緒に店を出て行ってしまう。

3人はすっかりその青年にいかれてしまい、大阪にもあんな素敵で奥ゆかしい男がいたのねなどとうっとりしてしまう。

警察署に出向いた3人はそこにいた若い警官らしき青年(佐藤允)に、レース途中でピストル強盗にあって車を盗まれたと訴える。

青年は、あのレースならとっくに優勝が決まったと愉快そうに話を聞く。

盗難の場所は京都と大阪の間…などと3人が説明していると、別の中年刑事らしき男が、3人のズベ公トリオを説教しながら連れて来たので、八田とその刑事から呼ばれた青年は、その三村部長刑事(内田朝雄)にパンチ、ピンチ、センチの3人を紹介して、その場で3人の写真を撮って帰って行く。

三村に今の人は?と3人が聞くと、朝売新聞の記者だと云うではないか!

とりあえず、センチが働く予定だったキャバレー「ワールド」の楽屋について来たピンチとパンチは、表に貼ってあった「淑女募集」と書かれた女給をやってみようと話し合う。

そこに入って来たのが、演出部の明智(江原達怡)と云う青年で、センチを観ると、一目で気に入ったようだった。

さらに、連れの2人が女給で働きたいので前借りできないかと頼むと、1本で良いなら…と快く承知してくれる。

前借りできて気持ちが大きくなった3人は、路地の屋台「大政」できつねうどんを注文する事にする。

そこにやって来たのが、先ほど警察署で出会った大阪のズベ公トリオ。

彼女らは、アパッチのはるみ(野辺小百合)、リンチのお政(長谷きよみ)、釜ヶ崎生まれのエッチのお伝(黛ひかる)と名乗りながら絡んで来てたので、パンチ、ピンチ、センチらは負けじと、私たちは銀座のトップレディ、ザギンのチャンネーよと仁義を切り返す。

それでも大阪のトリオが、出来上がったきつねうどんを勝手に奪い取って食べようとしたので、切れたパンチたちが飛びかかり、その場でうどんまみれの取っ組み合いの喧嘩となる。

しかし、警邏中の警官が2人近づいて来たので、大阪のトリオは逃げ出し、パンチたちは、屋台のおじさんに金を払うと、何事もなかったかのようにすまして去って行く。

その後、「ワールド」のステージではバンドの演奏に合わせセンチが踊り、パンチとピンチは臨時のホステスとして店で働き始める。

常連客たちは馴染みのホステスを指名するので、新入りの2人は最後まで入口付近で立ちっぱなしだったが、初めて来た客らしき青年は、ボーイの勧めでピンチが相手をする事になる。

そこにやって来たのは、さっき喧嘩をしたアパッチのはるみで、今日は客として来たから、あんたを指名したるとパンチに話しかけて来る。

ボックス席に着いたはるみはパンチに頼みがあると言い、今演奏しているバンドのトランペットを吹いている水谷さんを呼んで来て欲しいと云う。

ピンチが相手をした青年は、船長の次に偉い一等航海士をしている川島武夫(神戸一郎)と名乗る。

一方、楽屋に戻って来たセンチに会いに来た明智は、さすが一流やとセンチを褒めたたえ、出来合いの衣装が合わないと苦情を言うセンチの意見を取り入れて、すぐに新しい衣装を作ると約束すると答え、2人はすっかり意気投合する。

席に戻って来たパンチは、待っていたはるみに、一応、水谷に声をかけて来た事は来たけど…と反応が微妙だった事を伝えるが、当の水谷(佐原健二)がやって来て、僕は君のような財閥の娘と話事などないとつっけんどんに言うとバンドに戻って行ってしまう。

その反応に涙ぐんだはるみの表情を観ていたパンチは、彼女が水谷を愛してるのだと察する。

そのバンドの演奏に合わせ、ピンチとダンスを踊り始めた川島は「青い海から来たんだよ〜♬」と歌い始める。

それを聞いていたピンチは、「素敵!海の荒くれって感じ…」と、すっかり魅了されてしまう。

翌日、とりあえず3人で借りたアパートで目覚めたピンチは、朝からおめかししてデートに出かける。

センチも、明智と打ち合わせと称して出かけてしまったので、1人部屋で原稿を書いていたパンチは、東京の「週刊ニッポン」の池林編集長に電話してみる事にする。

電話に出た池林は、今まで何をしてるんだ!と怒鳴りつけて来るが、レース中に出会ったピストル強盗の記事を書いている所だとパンチが弁解すると、そのネタなら、とっくに昨日出た「週刊男女」に載っている。君、貞操も取られたんだって?などとからかうように聞いて来たので、怒ったパンチは、こうなったらトップ記事を書くまで帰りませんからと言い切って電話を切ると、大阪ビート族の恋と云うネタはどうかしらなどと、早速、昨日のはるみをネタに新しい記事の構想を練り始める。

ピンチは、神戸港で出会った川島と一緒にモーターボートに乗り、「海は素敵ね♬白バイもいないし〜♬」とデュエットで歌っていたが、ピンチがハンドルを代わると、危うく停泊中の大型船舶の側面に衝突しそうになり、慌てて川島がハンドルを切ると云うハプニングも起きる。

一方、センチと落ち合った明智は、君が好きになったのでプライベートな相談もしないか?と切り出し、仕事は仕事で頑張ると云う相手に、センチも、私は芸に生きる女だからそのくらいファイトがある人が好きよと答え、受ける事にする。

ボートを降りた川島は、神戸で牛肉を食べないわけにはいかないから、山の手の鉄板焼き屋へ行こうとピンチを誘う。

川島に連れられ「レストラン オクノ」にやって来たピンチは、いきなり美津子!と声をかけられたのでびくりしてしまう。

たまたま店から出て来た芦屋に住む叔母(萬代峰子)と叔父(十朱久雄)だったからだ。

ピストル強盗に襲われたと雑誌に書いてあったが、その後、何の連絡もして来ないので心配していたと云うと叔父と叔母は、ピンチを強引に自分たちの車に乗せ屋敷に連れ帰ってしまう。

そんな様子をあっけに取られて観ていた川島は、その場に1人取り残されてしまう。

夕方、ビルの屋上でトランペットの練習をしていた水谷の元へやって来たパンチは、どうしてはるみの事を財閥の与太娘などと言って嫌うのか?と聞いてみる。

水谷は、僕はズベ公とかビート族と云ったフーテン娘には興味ないんだなどと言っていたが、パンチが突っ込むと、本当を言ったら、昔ははるみを好きだったが、一流の繊維会社だった自分の兄の会社をはるみの兄貴が乗っ取ったんで、うちは没落してしまった。はるみは仇の妹や!と本音を漏らす。

さすがは大阪は商売の街ねと感心したパンチは、さらにあれこれ聞こうとするが、君は新聞記者か?と機嫌を悪くした水谷はそれ以上相手をしてくれなかった。

楽屋にいたセンチに電話をかけてきたのは、芦屋の叔父叔母の屋敷に監禁されていたピンチからだった。

トイレに立つ振りをして今電話をかけているのだと云う事だったが、すぐに電話をかけていたピンチは叔母に見つかってしまう。

とっさに、天気予報を聞いていた振りをするが、ずっと屋敷にいるのに天気予報の心配などする必要はありませんと切り返されたので、アホか!と思わず悪態をついたピンチだったが、その言葉遣いを叱りつけた叔母の方も、アホか?と思わず言ってしまう。

そんなある日、仕事が入って気前が良かった八田が、友人2人を連れて「ワールド」へやって来る。

その相手に来たのがパンチで、友人2人はホステスと踊りに言ってしまったので、ボックス席に2人きりになってしまう。

パンチは、朝売新聞のトップ屋さん?と八田をからかい、「週刊男女」に私たちがお嫁に行けなくなるような事を書いて!と抗議する。

しかし、八田は断定はしてない。ではなかろうか?と書いただけだと弁解する。

東京本社の社会部で調べてもらって、すでにパンチの素性も知ってい八田は、とは言え、女性トップ屋が、今ではこんな女給に落ちぶれているとしたら僕のせいかも知れないと反省の色も見せ、女1人で他所の土地のネタ探しは無理だから、ここは僕と組まないか?と儲けはフィフティフィフティと提案して来たので、パンチは乗る事にする。

八田は、君にぴったりのネタがあると言い出し、明日一緒に京都に行こうと誘う。

翌日、八田と京都へ出かけたパンチは、やっぱり京都は1人で来る所じゃないななどと浮かれている八田の意図を疑うが、実は平安神宮に経済使節団が来るのだが、問題はそれに同行している松野松左衛門と云う謎の独身御曹司が、どえらい事業を目論んでいるそうなので、それを探りたいと云うのだった。

話を聞いたパンチは、任しとキ!と張り切る。

さっそく2人で平安神宮に行ってみると、外国人グループと1人の日本人青年が歩いて来る。

あの男がそうだと八田から聞いたパンチは、その青年と云うのは、先日、ラリーの途中で車に乗せてくれ、大阪ではごちそうまでしてくれたあの青年だと気づく。

ここでは取り巻きが多いから…と八田に耳打ちしたパンチは、その場は一旦引き下がる事にする。

その後、料亭で外国人2人を接待していた松野は、突然、芸者が来ましたと声をかけられ唖然とする。

何と、入口で挨拶していた芸者が顔を上げると、先日車に乗せたトリオの1人パンチだったからだ。

外国人2人は芸者の登場を喜び名前を聞くと、パンチはすまして「蝶々さん」と答える。

ますます気に入ったらしい外国人たちが、パンチに迫ろうとすると、公見えても私は銀座のファーストレディです。奥様に話しましょうか?と逆襲したので、外国人二人は怯えてしまう。

外国人たちが帰ったあと、2人きりになった松野にパンチがにじり寄ると、松野はパンチの手を握る振りをして、ペンだこがあり事を見抜く。

正体がばれたと悟ったパンチは、負けず嫌いの性分から、実は祇園に幼なじみがいるので衣装を借りたと打ち明け、自分は「週刊ニッポン」のミスパンチこと園江敏子だと自ら名乗る。

すると、松野は、あんたは才色兼備の見本のような人だから、気に入ったので、来週月曜日の午後に、うちに来てくれないかと言い出す。

もちろんパンチは、すぐに了解するのだった。

その頃、ビアホールでパンチの帰って来るのを待っていた八田は、ようやく戻って来たパンチが、取材内容を教えようとせず、私、記者なんか辞めて、この美貌と知性を使おうと思うの等と言い出して帰ろうとするので、約束が違うと文句を言いながら追いかける。

「ワールド」の楽屋では、やって来た明智が、センチが来ている衣装が、自分が頼んだものと違うじゃないかと文句を言うので、この前私が頼んだものを勝手に変えたのはそっちでしょう!アンナもっさりした衣装では自分の魅力が出ない。これが私の魅力を引き出す衣装なの!と露出度の高い衣装をアピールする。

それを聞いた明智は、そんな扇情的なものじゃなく、もっとクラシカルなものにも良さがあるんだ。そんなに肌が露出したいんだったら、舞台で裸踊りやれば良いじゃないか!と反論するが、だから関西のセンスは泥臭いのよ!などと売り言葉に買い言葉、センチは興奮して行く。

そこにやって来た支配人(立原博)は、今日は社長が来るので、落ち度がないように頼むよ。全部私の責任になるんだから…と、明智とセンチに言い聞かす。

ステージでリハーサルが始まったので、踊り始めたセンチは、明智への当てつけのように衣装の肩ひもを外そうとするが、その時「ストップ!」と声をかけたのはこの店の新オーナーになったと云う松のだった。

センチに話があるので支配人室に来てくれと呼んだ松野は、支配人室で2人きりになると、あなたのような人を前々から探していたので、来週の月曜日の午後、うちに来てくれないかと頼む。

もちろんセンチもすぐ承知する。

その頃、ピンチは、監禁状態の叔父叔母の屋敷の一室から何とか脱出しようと、布切れを繋ぎ合わせて長いロープ状にし、それを窓から垂らして、下に降りようとしていた。

ところが、下の部屋にはその叔父と叔母がそろっており、もう美津子と閉じ込めて4日も経つので、そろそろ許してやって、今度、新造船が別府まで処女航海するので、それに乗せてやろうなどと話し合っていた。

その時、窓の外に足れたロープに掴まりながら降りて来た美津子の足が見えたので、驚いた叔母は窓を開け、何をしているんです!せっかく船に乗せてやろうと思っていたのに!と叱りつける。

がっかりしたピンチは、ロープを滑り落ち、庭先に尻餅をついてしまう。

それでも、結局、船に乗せてもらう事になったセンチは、寝室のベッドで大張り切り。

これでチャンバーとチャンジー(ばあちゃんとじいちゃん)がいなければサイコーなんだけど…と本音を漏らしたので、その場で聞いていた叔母は又してもむっとしてしまう。

間もなく、パーティーが始まると云う叔母たちを無視して、デッキに出てみたピンチだったが、そこで歌いながら、装備の掃除をしていたのが川島武夫だと言うことに気づく。

一等航海士だったんじゃないの?と声をかけたピンチは睨みつけるが、川島の方は謝りながらも、ピンチに又会えたので、嬉しそうに近寄って来る。

それでもピンチは、私はあなたが一等でも三等でも五等でも、そんなものはどうでも良くて好きなものは好きなのよ!と見栄を張って嘘をついた事を責める。

川島は、僕がいっとう、後悔してるんやなどとシャレでごまかそうとするが、機嫌が直らないピンチはたまたまその場に近づいて来た松野に気づくと声をかける。

松野は、この会社に出資していると話し、ピンチも叔父がこの会社の役員をしているんですと打ち明け、川島を無視して、パーティ会場へ向かうと、仲良くダンスを始める。

松野は、君は不思議な魅力を持って人だ。例えて言えば、ライスカレーを食べながらシャンペンを飲んでいるとでも言うか…と囁くと、ピンチは意味も分からないながら無邪気に喜ぶ。

そんな2人に気づいた叔父と叔母は、あいつ、大変な大物を捕まえたぞと驚き、席に戻って来たピンチに、松の反はうちの会社の大株主やと教える。

ピンチは、知ってるわと言い、今度の月曜日の午後、おデートの約束をしたのと自慢げに打ち明ける。

翌日、センチとパンチが、互いに新しい彼氏が出来たのと自慢し合っている所に、赤いオープンカーに乗ってやって来たのはピンチだった。

部屋にやって来たピンチは、私の盗まれた車が見つかった。丹波篠山に乗り捨ててあったらしいのと報告すると、私、大阪で結婚するかも知れないわ…などと夢見るような目つきで告白する。

すると、負けじとセンチとパンチも、私もすごい人を見つけたのよと互いに自慢し合い、3人とも大阪に来た甲斐があったわねと喜び合うのだった。

互いの彼氏を紹介し合わない?と言う事になるが、3人とも、月曜日以外にしようと言い合い、結局、火曜日に集まる事にする。

その時、隣の部屋から女性の叫び声が聞こえて来たので、同性の危機を黙ってみていられないと言う事になり、隣に向かった3人は、鍵がかかったドアを3人同時にお尻から突進し、ヒップの圧力で突き破って中に入る。

そこにいたのは、アパッチのはるみで、襲いかかっていたのは、からっ風のユキ坊(藤田まこと)と云うチンピラだった。

ユキ坊はナイフを抜いて威嚇して来るが、パンチはいきなりユキ坊の腕に噛み付き、ピンチが肘鉄を食らわし、センチと共に、ユキ坊の耳を引っ張って部屋の外へ引きずり出してしまう。

はるみは礼を言うが、ピンチは車は盗まれても戻って来るけど、貞操は案外大切なものよと言い聞かせ、パンチはうちに帰るべきねと忠告する。

しかし、はるみはあんなうちには帰りたくない。

うちには兄が1人しかおらず、その名は松野松左衛門だと言うではないか!

それを聞いたパンチ、センチ、ピンチは一斉に驚き、これから3人で送って行くと言い出す。

はるえを連れてやって来た屋敷に、和服姿で出て来た松野は、うちを出て行って10日間もどこに行ってたんや!とはるみを叱りつける。

はるみは、兄さんは仕事と金儲けにしか興味がないんやとはるみが言い返すと、確かにそうやが、兄さんは自分の主義を人に押し付けるつもりはないと松野は答え、奥にいた水谷を呼ぶ。

水谷は、自分はこれまで君の兄さんを誤解していた。うちの会社は元々経営が行き詰まって危なかったのを君の兄さんが助けてくれたんだ、今度僕に会社の専務にならないかと言ってくれた。これまでこんな人を恨んでいた自分が恥ずかしいと言うではないか。

松野は、また後日出直してきますと訳ありげに云うパンチたち3人に、自分は3人一緒が良いので、あちらに用意してある水着に着替えてくれないかと急に言い出す。

訳が分からないまま、とにかく、パンチは黄色、センチは黄色、ピンチは赤と云ういつもお気に入りのカラーに合わせた水着を着た3人は、庭のプール際に立たされると、松野がポーズを注文し、待ち構えていたカメラマンから何枚か彼女らの写真を撮る。

松野は水谷に、今度君の会社で売り出す水着のポスターにこれを使ったらどうかね?この3人は原色みたいなもんやと提案するので、松野に呼ばれた真意に気づいた3人はヤケになり、失礼しました!と叫ぶと、新品の水着を着たままプールに飛び込んでしまい、イーッ!と松野を睨みつける。

その夜、3人は、以前、松野に連れて来てもらった高級中華料理店でやけ酒を飲んでいた。

火曜日の約束どうしよう…と3人は悩むが、ピンチはせっかくだから実行しようと言い出す。

その火曜日、大阪城前のお堀の前のベンチに座っていたのは、八田と明智と川島の3人だった。

彼らは、ピンチの車が近づいて来ると一斉に立ち上がったので、互いに自分たちの同じ立場を理解すると、笑顔でオープンカーに乗り込む。

パンチ、ピンチ、センチはそろって歌いながら、3人のボーイフレンドと共に、オープンカーで六甲の道を走って行くのだった。