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くノ一化粧

「くノ一忍法」(1964)の2ヶ月後に公開された続編と言うか、シリーズ2作目とも言うべき作品。

一応、山田風太郎の「外道忍法帖」が原作らしいが、内容はほとんど別物だし、前作とのつながりもない。

前作「くノ一忍法」同様、この作品も幻想ものというか、ファンタジー色が強く、何だか踊り中心のレビュー映画を観ているような感じで、派手なアクションはないし、かと言って、60年代半ばの頃に作られた一般映画なので、エロティックさも大した事はなく、これを言った盛り上がりもないぬるい作品になってしまっている。

ポルノ映画を作っていた70年代初頭頃の東映ならもっと堂々と素っ裸の女性が出ただろうが、それで面白くなっていたとも思えない。

見た目は、「大忍術映画 ワタリ」(1966)や、そのテレビ版とも言うべき「仮面の忍者 赤影」などに雰囲気や設定は近いのだが、内容からして、子供向けとして作られているのではない事は明らかだろう。

そのくせ、「赤影」ほど奇想天外で面白いわけでもない。

話に今ひとつのめり込めない要因は、対決ものとして観ていると、敵も味方も弱すぎる忍者ばかりだし、話を引っ張る主人公らしき人物も見当たらない事もあるように感じる。

一応、露口茂演ずる天草扇千代が主人公なのかな?とも思うが、その主人公がいきなり敵の術で盲目となり、深情けの遊女の世話になっておとなしく暮らざるを得なくなり、いつしか忍者道にも愛想を尽かし、ひたすら女との平凡な暮らしに憧れるようになる…という腰砕け展開では、ハラハラするはずもない。

宿敵天姫が伽羅に化けるというのも、あくまでも見た目と声だけを映しているので、眼が見える人間相手だと有効な術のように思えるが、眼が見えなくなった扇千代にも見分けがつかなくなっているというのも何だか主人公として情けない。

あげくの果てに、目が見えるようになると、もう本物の伽羅の声すら判別できなくなっているというのだから恐れ入る。

確かに、山田風太郎の忍法帖もの自体、ヒーロー小説と言った感じではないし、風刺なども効いているので、こういう展開になる事自体が筋違いという訳ではないのだが、映画としては、あまり盛り上がらない事は確かだと思う。

金田一シリーズの「良し!分かった!」の警部役でお馴染みの加藤武や、裸の大将で知られる芦屋雁之助、西村晃や小沢昭一などの個性派がそろっているのに、今ひとつ、どの忍者もステレオタイプな造形で魅力がないのも残念。

ひょっとしたら、春川ますみ演ずる遊女、伽羅の方が主人公のお色気ユーモアものだと考えた方が良い作品なのかもしれない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、東映、山田風太郎原作、倉本聰+中島貞夫+金子武郎脚本、中島貞夫監督作品。

由井正雪(原健策)と丸橋忠弥(加賀邦男)の前に集まった血気盛んな3人の浪人たちは、幕府転覆の時期を明年正月まで待てという正雪の言葉の真意が掴めずいら立っていた。

自分たちも幕府転覆に賛成している以上、正雪を頭にすることに不服があるわけではなく、なぜ長々と計画を延ばすのか意味が分からなかったのだ。

しかし正雪は、明年正月まで待てば、何千何万の味方が得られるのだという。

3人の浪人たちは、それはどう言う軍勢か?と驚くが、正雪は、ただ布にくるんだ鈴を1つ差し出してみせるだけだった。

その後、松平伊豆守(原田甲子郎)の屋敷では、正雪の謀反の情報を仕込んで来た伊賀忍者服部半蔵の子孫服部半助(多々良純)が報告をしていた。

ところが、伊豆守は、そのことはとっくに気づいている。そちも老いたな。少し休むかなどと半助のことを哀れむようにあしらったので、半助は忍者としてのプライドを傷つけられ落ち込む。

獅子舞を追いかける子供たちがいる外にやって来た半助の元に突如現れたのは丸橋忠弥だった。

伊豆と半助の話は全部聞かせてもらったという松橋を怪しんだ半助が、得意の鎖がまを投げて攻撃を仕掛け、正体を現せ!と迫ると、丸橋忠弥は天姫(弓恵子)に変身し笑い出す。

それを観た半助は「くノ一!」と驚く。

6人のくノ一が一斉に笑い出す。

タイトル

豊臣に恩ある大友の女忍者が九州長崎におり、大阪城落城の時、莫大な財宝の在処を記した地図を6個の鈴に刻んで、それを6人の乙女の胎内に収めたらしい。

その首領の天姫が、今回、由井正雪と手を組んだようだと半助は伊豆守に報告する。

半助は、明年正月までにこの乙女らを事前に襲い、鈴をこちらに奪えば、幕府転覆の野望も阻止することが出来るので、当方にいる鍔隠れ6人衆を向かわせましょうと進言するが、伊豆は鍔隠れ6人衆の存在など頭から馬鹿にしているようだった。

その2人の話を、庭先に身を隠し、ホラ貝を耳に当て盗聴していたのは、伊賀の鍔隠れ6人衆の頭領天草扇千代 (露口茂)だった。

その時、絹を引き裂くような女の悲鳴が聞こえたので、慌てて声の方向へ向かった扇千代は、女1人を奪い合って抱こうとしている6人衆の浅ましい姿を見つけがっかりする。

その夜、寝所に向かった伊豆守は、奥方の喘ぎ越えが聞こえて来たので、誰かいるのか?と怪しむが、ふすまを開けてみると、布団の上で喘いでいたのは奥方1人だった。

どう言う様だ!と叱りつけた伊豆だったが、その時、部屋の外に居並んだ伊賀鍔隠れ6人衆が姿を現す。

奥方は彼らの忍術に操られていたらしい。

こうまでアピールされた伊豆守は、仕方なさそうに、為損じたら、そなたらの命はないものと思えと念を押すしかなかった。

春の章

長崎

集結した鍔隠れ6人衆は、この町の女たちの中に6人のくノ一がいると、扇千代のホラ貝を通じて察知していた。

天姫が5人のくノ一たちに、すでにお志乃の鈴は由井正雪に手付けとして渡した。これから1年、御主らのミニ危険が及ぶかも知れん。無事に鈴を守り通すのじゃと命じる会話を盗聴したのだった。

丸山遊廓の「引田庵」で遊女を抱こうとしていたのは、6人衆の1人、鴬道忍(西村晃)だった。

道忍は、おぬしが俺にとって999人目だと自慢すると、遊女の伽羅(春川ますみ)の方があたしゃ千人と答えたので、先輩!母ちゃん!と相手を立てた道忍は、父ちゃん!と応じる伽羅と1戦を交える。

その後、「引田庵」の前で、侍の怒号が聞こえたので2人が観てみると、尻を触られた遊女が、侍の顔につばを吐きかけたらしく、無礼なので手打ちにすると息巻いている。

事情を知った伽羅は、3人まとめて面倒観るよ、喜ばせてやるからさ。ずいっとお上がりよとからかうと、3人はますますいきり立ったので、伽羅と一緒にいた道忍が、さりげなく手裏剣を用意しして応戦しかけるが、その時、3人の侍の動きが止まってしまったことに気づく。

3人の侍と道忍には、周囲にいる女たちが全員裸に見せていたのだ。

その術をかけているのは、近くで月琴を奏でている女であることが分かった。

一面の菜の花畑の中で夢幻の琴の音を奏でるくノ一に近づいて来たのは、6人衆の1人、篝火兵部(脇中昭夫)だった。

兵部の眼には、艶かしい姿になって踊る2人の女人の姿が見えたが、持っていた傘をくノ一目がけて投げると、傘は広がって、くノ一の姿を隠す。

「伊賀忍法 春雨傘!」傘の雨の中に降る男の精に女が狂う…そう兵部は呟くが、その傘を破って出て来たくノ一は、そのまま兵部に近づいて来る。

俺の傘を破ったのは見事だと褒めた兵部は、そのくノ一を抱く。

おぬし、はじめてではないな?正雪に渡したのは、お前の鈴か?と兵部が問いかけるが、その時、どこからともなく、虫の羽音が聞こえて来る。

「大友忍法 蜜霞!」抱かれていたくノ一、お志乃(緑魔子)がそう呟く。

次の瞬間、兵部の顔に飛来した羽虫がへばりつき、兵部は息絶えるのだった。

小川の側にいた天草扇千代は、突然、首に髪の毛が巻き付き苦しみ出すが、次の瞬間、術をかけていた天姫自身が首を押さえて苦しみ出す。

「伊賀忍法 山彦!」俺の眼に光がある限り、俺の苦しみの専売の苦しみが相手に降り掛かる…と扇千代は呟くが、次の瞬間、彼の眼は突然見えなくなってしまう。

「大友忍法 髪縫い!」私の髪の毛が眼を縫い付けた者は、この世で地獄をの苦しみを味わうだろうと言いながら出現した天姫は笑い出す。

突然、視力を失った扇千代はパニックに陥り、花見客でにぎわう桜の木の下に紛れ込んで、刀を振り回すという醜態を見せる。

そんな扇千代に一目惚れしたのが、たまたま近くを通りかかった伽羅だった。

江戸の松平伊豆守の元には、長崎に出向いていた服部半助が戻って来て、篝火がやられ、扇千代 も目をやられたと報告する。

伊豆守は、由井正雪の門弟、金井半平衛が長崎へ出発した。おそらく、2つ目の鈴を取りに行ったのだろうと教える。

夏になり、長崎の町では花火が上がっていたが、「引田庵」で一緒に暮らすようになった扇千代に、その花火がきれいよとうっかり話しかけた伽羅は、その言葉が相手を傷つけるということに気づき、思わず自分の口を押さえてしまう。

伽羅は扇千代にぞっこん惚れてしまっていたが、反応がないので、この石仏!などと憎まれ口を聞き、悔しがっていた。

そんな2人の座敷に太鼓持ちに化けて入って来たのが服部半助であった。

伽羅を他の客の部屋に案内しに来たのだが、同行する途中ですれ違った他の遊女の尻を触った半助は、その遊女と伽羅の両方から足蹴にされる。

一方、部屋に残っていた扇千代の元にやって来た遊女は、わざとらしく扇千代に絡み付くが、相手にされないと分かると十六夜鞭馬(芦屋雁之助)の正体を現す。

鞭馬は、鈴を得るため、有明の海に出向いて来た話を扇千代にし始める。

(回想)お加代(三島ゆり子)という美しい娘を巡ってつばぜり合いをしていた漁師2人、与之吉と吉治は、夜の海岸で決闘することにする。

吉治を崖から突き落とした与之八が浜辺に戻って来ると、突如背後から襲いかかり、その顔面を砂地に押し付けたのが十六夜鞭馬だった。

窒息死した与之八をどけ、砂に出来た顔の凹面に自らの顔を押し付けた鞭馬は、すぐに与之八の顔に変身する。

「伊賀忍法 砂仮面!」そう呟いた鞭馬は、お加代を浜に誘い先を歩いていたが、その時、首筋に吹き矢を射込まれてしまう。

抜かったと気づき振り向いた鞭馬は、そこに6人に分身したお加代の姿を観る。

意外と臆病な鞭馬は、思わず側にあった大きな魚籠の中に身を隠すが、その網の隙間から、外で舞踊る怪し気な女の動きを観てぼーっとなってしまう。

幕府のイヌ!好きもの忍者!などと、踊る6人のお加代から罵倒された鞭馬だったが、6人が魚籠の中を覗き込むといつの間にか鞭馬の姿は消えていた。

気がつくと、お加代の姿が1人多いので、誰が偽者に化けた!とお加代は慌てる。

女の乳を飲むと、その女になる「忍法 女化粧!」そう呟いた鞭馬は、術が破れ、元の1人に戻ったお加代を抱くと、その知りを叩き、胎内から転げ落ちた鈴を手にする…

(回想あけ)

引田庵で話し終えた鞭馬は、手に入れた鈴を見せながら、話をきているのか?と扇千代の無反応さにいら立つが、扇千代は心ここにあらずと言った感じで、俺は眼が見えない。術も使えない。いっそのこと死んだ方がマシだ…などと愚痴を言い出す。

その時、金井半平衛がお加代に会うために、引田庵にやって来るが、出迎えたお加代は鞭馬が変身した姿で、脇に控えていた扇千代が金井半平衛を一刃の元に斬り殺した…ように見えた。

そこに戻って来た伽羅は扇千代の身を案じ、抱きつこうとするが、扇千代は、行ってくれ!失せろ!と怒鳴りつけるのだった。

一緒に去ろうとした太鼓持ちを呼び止めた扇千代は、お前の小柄で倒しておきながら…なを名乗れ!と詰め寄る。

部屋に倒れて死んでいた金井半平衛の首筋には、確かに小柄が突き刺さっていた。

その後、お加代の胸に手を入れようとしていたのは、6人衆の1人、百済水阿弥(加藤武)だったが、お加代はもちろん本物ではなく、鞭馬が化けた姿だった。

2人は一緒に長崎名物カステラを頬張りながら話をしていたが、水阿弥は、忍法あってこそ、日本もオランダと戦える!などと忠君愛国論をぶっていたが、気がつくと、鞭馬の姿は消えていた。

鞭馬はとある女の寝所に忍び込んでいた。

布団の上では、1人の女お珠 (松井康子)が切な気にもだえていた。

術をかけた女を抱き、その胸乳を吸えば、相手が死ぬという「女化粧」に挑んだ鞭馬だったが、苦しみ出したのはその鞭馬の方だった。

その直後、お珠の乳を吸っていた鞭馬は赤ん坊に変身してしまう。

「大友忍法 やや子返り!」そう赤ん坊を抱いたお珠が呟く。

その部屋の奥から姿を現したのは天姫だった。

赤ん坊にされた鞭馬は、藁舟に包まれ、お珠の手で川に流されてしまう。

その場に出現したのが百済水阿弥で、持っていた斧でお珠の帯を切ってしまう。

お珠は、手を振り、催眠術のようなものを水阿弥にかけながら後ずさっていたが、その時、自ら川の中に入り込み倒れ込んでしまう。

そんなお珠に吐息を吹きかけながら抱きかかえようとした水阿弥だったが、あまりにお珠が重いので、ダメだと漏らすと、すぐに地面に腰を落としてしまう。

これも忠君愛国のため…と言い訳した水阿弥だったが、お珠の身体から落ちた鈴は川の中に落ちていた。

その後、その鈴を水阿弥から受け取った扇千代だったが、お珠の術がかかっていた水阿弥には扇千代が裸の女に見えたので、思わず、斧で斬り掛かろうとして、逆に扇千代から斬り殺される。

その時、天姫の声が聞こえ、お前が仲間を殺したと告げると笑い出すのだった。

扇千代は、許してくれ!俺もいつの間にか天、この刀が…と、死んだ水阿弥に詫びるが、天姫の笑い声はまだ響いていた。

すっかり気落ちした扇千代は、自ら伽羅に抱きつくと、抱いてくれ!俺をと頼む。

伽羅は静かに行灯の灯を吹き消すのだった。

再び、江戸の松平伊豆守邸に戻って来た半助に伊豆守は、昨日密かに由井正雪に会ったが、取引に応ずると言いおった。

正雪が持っていた鈴は金で買い取ったというではないか。

そして、正雪にわざと謀反を起こさせ、それに参加した浪人たちを皆斬ると伊豆守は言う。

言わば、なれ合いの「慶安の変」とでも言うべきかな…と伊豆守は苦笑していた。

3人死んだ。そして手に入った鈴は3つ…、わしは鈴1つ手に入れるのに、誰も死なんなと半助を嘲笑する伊豆守だった。

秋の章

尼寺で、生き残った2人のくノ一に対し、志乃、珠、お加代たちには隙があった。しかし私には解せない。死んで行った彼女らには例えようのない悦楽の表情が浮かんでいたことじゃ…と伝えていたのは天姫だった。

聞いていたくノ一の1人、夕心尼(岬瑛子)は、私も知りとうございますと思わず本音を漏らす。

もう1人のくノ一もみじ(西岡慶子)に天草扇千代の動静を天姫が尋ねると、伽羅に温泉療養を勧められ、2人して雲仙に向かいましたと、もみじは手鏡に映し出された2人の姿を示しながら答える。

その手鏡に次に映し出された2人は、6人衆の生き残り、鴬道忍と真昼狂念(小沢昭一)だった。

山道を歩く2人は、赤く色づいた柿がなっているのを見つけたので、採ってかじるが、渋柿だったので、顔をしかめて吐き捨てる。

その直後、この山里には稀な尼が近づいて来たことに気づく。

その尼こそ、くノ一の1人夕心尼だったが、草陰から女の喘ぎ越えが聞こえて来たので、好奇心から覗いて見ると、男と女が絡み合っているではないか。

その女の方は、狂念が化身した姿であったが、2人が見せる痴態に、ウブな夕心尼は興奮して来る。

しかし、狂念の芝居が度を過ぎ、本当に接吻された道忍は怒り出すが、2人が言い争っている間に、いつの間にか夕心尼の姿も消え失せていた。

慌てた2人の側に飛び込んで来たのは、屋で射抜かれた山鳩だった。

それを射止めたらしき猟師風の女もみじがやって来て、返せ、俺の獲物だという。

道忍は、女、代わりに俺と寝るか?とからかうが、次の瞬間、その道忍が俺を1人にしておいてなどと呟きながら、苦し気に女の後を追い始めたので、その様子を見送った狂念は、ダメな男よと呆れる。

俺を誰かが呼んでいる〜♬俺を何かが呼んでいる〜♬などと歌いながら、とある屋敷内に入り込んだ道忍の姿を監視していたのは、先ほど姿を消していた夕心尼だった。

屋敷内の石蔵のような部屋に入り込んだ道忍は、そこで鞭を持って待ち構えていたもみじを発見する。

道忍は、俺は女を喜ばすために生まれて来た男で、お前がちょうど千人目だ。俺がおぬしを天国へ連れて行ってやろうと言いながらもみじに抱きつくと、もみじは「大友忍法 蜘蛛髪の鞭!」と呟き対抗する。

しかし、それが利かなかった様子の道忍は、俺の体毛が針にもなることを知らなかったか?と言いながら、もみじに接吻し、倒れた相手の胎内から鈴を取り出す。

これで、4つ目の鈴よ…と道忍は満足そうに立ち上がるが、屋敷を出て行く道忍の顔には、数枚の紅葉の葉が付着していた。

それを観ていた夕心尼は、紅葉の露がにかわより強く落ち葉を吸い付ける。そして、紅葉の露が犬を呼び寄せる「大友忍法 犬狂い」と呟く。

その言葉通り、紅葉の葉が付いていた道忍の左目は開かず、何匹もの犬の鳴き声が近づいて来たので、慌てた道忍は逃げ出すが、どんどんその身体に赤い紅葉の葉が付着して行き、最後はみの虫のような状態になって、犬に襲撃される。

やられた道忍の死体に近づいて来た真昼狂念は、その左目のまぶたを、紅葉のは後とめくると、死んだ道忍の瞳に、悶え苦しむ夕心尼の姿を観る。

夕心尼のいる茶室にやって来た狂念は、南無阿弥陀仏と唱えると、鈴を頂きますと言いながら抱きつくと相手の胸に吸い付くが、とたんに口が離れなくなったのか苦しみ出す。

「大友忍法 小判ザメ…、窒息するのだ!」そう夕心尼は呟くが、必死な狂念は、最後の力を振り絞って右手で夕心尼の下半身を愛撫し始める。

「伊賀忍法 震え観音!」そう狂念は叫び、感極まった夕心尼の胎内から転がり出た鈴を手にする。

しかし、倒れた夕心尼も又「大友忍法 こだま返し!」とつぶやく。

屋敷を出た狂念の身体は震えが止まらなくなり、どうしたのかと、手を触れて来た地元の人間までもが感電したかのように震え出すではないか!

そんな狂念が近づいて来た温泉場にいたのが天草扇千代と伽羅で、扇千代は醜態をさらす狂念をその場で斬り捨てる。

震えが止まった!と安堵した狂念は、その場に倒れて息絶える。

扇千代は狂念が持っていた鈴を手にするが、これが忍法に生きる男の末路だ。俺は忍法が憎い!眼さえ見えたら何も考えず、おぬしと暮らせるのだが…と伽羅に訴えかける。

伽羅は1人で地元の石仏に願掛けに向かう。

なにとぞ、扇様の眼をお開けください!と何度も祈る伽羅の元に姿を現した天姫は、女!扇千代の眼が開くためなら何でもするか?帯を解け!肌を見せるのじゃ!と言葉をかけて来る。

すると、伽羅は、喜んで!と言うや、その場で裸になってみせる。

これには天姫も驚くが、女!そなたの身体を借りる!と言うと、「大友忍法 くノ一化粧!」と呟くと、いつの間にか、天姫の姿は伽羅に変身していた。

私が目的を遂げ、ここに戻って来るまで、ここに寝ていろと言われた本物の伽羅の方は地面に倒れていた。

伽羅に化けた天姫が宿に戻ってみると、そこで待っていた扇千代の右目から血が滴っているではないか!

小柄を突き立てた、だが、開かぬ…。おぬしの顔を一目見てやろうと思った…と扇千代は自嘲する。

一方、江戸の松平伊豆守の元に戻って来た半助は、残る鈴は、天姫の1つだけになったと報告していた。

伊豆守は半助に、おぬしに仕事を1つ頼もう。わしも大晦に長崎に行く。忍者はもういらんでな…、天草扇千代を斬り捨ててくれと伝える。

雲仙にやって来た半助は、その言葉をそのまま扇千代に伝えたので、扇千代は、どうして寝返った?と驚くが、半助は、この俺も忍者の端くれよ…と答える。

扇千代は、夕べ天姫から使いがあり、鈴を返せば、眼を開けるとな…、鈴を返すしかあるまい。観たいものが出来た。今の俺にはな…、伽羅はそれまで客を取らぬと言ってくれた。伽羅はさぞ美しかろう…と言うので、黙って聞いていた半助は、美しとも…と答えるしかなかった。

雪の章

天姫と2人きりで会った扇千代は、天姫どの、俺の眼を天、さすれば鈴も返すし、忍法も棄てる…と言いながら持って来た鈴を差し出す。

伽羅に変身していた天姫が、おぬし、それほど眼が観たいか?と問いかけると、残りの1つも返すと扇千代が言うので、のこりの1つ?と天姫は不思議がる。

どうやら、天姫は、正雪に預けた鈴が、すでに松平伊豆守の手に渡ったことを知らないようだった。

扇千代はそんな天姫を不憫がり、大晦に、伊豆守が長崎に来ると教えてやるのだった。

そして、大晦…

長崎にやって来た松平伊豆守の駕篭の前に、空から白い布が降って来たかと思うと、駕篭の前に8人のあられもない格好をした8人の美女が出現し、艶かしい踊りを踊り始める。

駕篭を警護していた護衛の侍たちは、油断しないようにそれを見つめるが、やがて、一緒に踊り始め、駕篭の前方はさながらミュージカル状態になる。

そこに現れた扇千代は、次々と護衛たちを斬り捨てて行く。

駕篭に近づいた扇千代は切ないか?と聞き、駕篭の中の伊豆守は、術をかけられ、煩悩に悶え苦しんでいた。

扇千代は、くノ一の恨み知るが良いと言いながら、そんな伊豆守の首を絞め始める。

「大友忍法 くノ一乱戯!」と言いながら現れたのは、伽羅の姿のままの天姫だった。

天姫は、倒れた伊豆守から最後の鈴を奪い返すと、(デキシージャズに合わせ)まだ護衛たちと戦っていた扇千代の姿を見つめる。

天姫と扇千代が姿を消し、気絶していた伊豆守が気がつくと、そこに近づいて来た服部半助に、取られた!と叫ぶので、鈴をでございますか?と半助が聞くと、わしの男!と言いながら、伊豆守は自分の股間を握りしめる。

落ちておらぬか?探せ!半助!痛いの〜!とうろたえる伊豆守だった。

その後、宿で待っていた伽羅の姿の天姫に会った扇千代は、伽羅?と一瞬迷いながらも、約束を果たした、天姫どの…と告げる。

天姫は静かに障子を閉め、2人きりになると、扇千代に自ら身体をゆだね抱かれる。

天姫は、負傷していた扇千代の右手の傷口を優しく吸ってやる。

扇様!感極まった天姫の身体から、最後の鈴が転がり落ちる。

事を終え、2人一緒に布団の上で寝ていたが、天姫の姿は元に戻っていた。

その手には鈴が握られている。

一方、扇千代の方は、目が徐々に見えて来た事に気づく。

天姫の顔を観た扇千代は、それが伽羅の顔だと勘違いし、美しい!やはり、お前は美しい!と感激し、笑いながら抱きしめるのだった。

やがて、除夜の鐘が聞こえて来る。

長崎の町には、おめでとうございますの挨拶が響く。

伽羅、化粧などいたさぬでも良い。今夜のおぬしは、いつもの伽羅とは違ったような…、遊女ではなく乙女のようであった…と扇千代は、隣の部屋にいるとばかり思っていた伽羅に語りかけていたが、気がつくと、いつの間にか伽羅の姿は消えていた。

窓を開けて外を見ると、天姫が逃げて行くではないか。

それを伽羅だと思い込んでいる扇千代は、どこへ行く?伽羅!何だ?どうした?と呼びかけるが、天姫は悲しそうに、違う、違うと泣きながら呟いていた。

眼鏡橋にやって来た天姫は、そこに1人やって来た本物の伽羅と対面する。

伽羅は、私に化けて何をした!と天姫に詰め寄るが、そんな伽羅に天姫は、これをおぬしらにやる…。扇様覇知っている。これがどんなものか。2人が楽にクラスに十分なものだと言いながら持っていた全ての鈴を手渡そうとするが、何も知らない伽羅は、ごまかすな!と言って、渡された鈴を全部橋の上から棄ててしまう。

そこに、伽羅!と呼びながら近づいて来たのが扇千代だったので、扇様!と喜んで抱きついた伽羅だったが、先ほど観た天姫を伽羅だと思い込んでいた扇千代は、伽羅ですと答えたその本物を観ても気づかず、開いた!開いた!と目が開いた事を喜ぶ伽羅を、キ○ガイ扱いして、走り去ってしまう。

その後ろから、初詣客の間を必死に追いかける伽羅。

そこに居合わせたのが服部半助で、伽羅を見ると、所詮忍者も男、女選ぶのは面の善し悪し…などと言ったので、何言ってるんだい!と怒った伽羅は、半助の股間を蹴り飛ばすのだった。

かくして、慶安4年、由井正雪の慶安の変は起こる。