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次郎長社長よさこい道中

「進藤英太郎の社長シリーズ」の第3弾。

東宝の「森繁の社長シリーズ」ほどメジャーではないが、ニュー東映(火山が噴煙を上げている会社クレジット)の人気シリーズだったようだ。

今回は、ライバル的存在の「森繁の社長シリーズ」の方の常連三木のり平が登場していることもあり、ユーモア色が強い作品になっている。

「ヘーデル」と言う良くある下ネタなので、下品と言えば下品だが、のり平のとぼけた芝居はそれなりに楽しめる。

三木のり平ファンにとっては、登場シーンも多いので、要チェックの作品ではないだろうか。

花千代を演じている筑波久子は、後にアメリカに渡り、「ピラニア」(1978)でジェームズ・キャメロンを見いだしたと言われるプロデューサーになった人だが、この当時は可愛らしいタイプの女優さんであり、この作品では歌まで披露している。

石松役の中村嘉葎雄も、その恋人役の佐久間良子も、まだほんの駆け出しと言った感じで初々しい。

メガネの女スパイに扮しているのは、高倉健主演版「悪魔の手毬唄」(1961)でメガネっ子助手の白木静子役を演じていた北原しげみと言う人だが、なかなかきれいな人だけに、あまり知られていないのが不思議な気がする。

量産期の東映作品に良く出ていた方らしいので、あまり良い役や作品に恵まれなかったのかも知れない。

後半は、石松の故郷と言う設定で、高知県の観光案内映画のような雰囲気になっている。

この時期の東映は、昼夜の区別がないような量産体制に入っていた時期で、この作品なども、おそらく限られた時間と予算で作られたものと想像するが、手を抜いている感じは見えない。

ちゃんと地方ロケも敢行しているし、キャストが(当時としては)やや地味な所を除けば、娯楽映画としてはそれなりにまとめられていると思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、ニュー東映、大川久男脚本、 瀬川昌治脚本+監督作品。

日本上空を飛ぶ飛行機の窓から見えた富士山に感激していたのは、フランスから着たらしき4人の修道僧たち。

デュヴィヴィエ(大泉滉)、アンドレ(柳沢真一)、ミシェル(潮健児)、モルガン(大東良)らは口々に、噂に聞く日本の素晴らしさを声高に話し合っていた。

そんな機内を歩いていたスチュワーデス(矢島由紀子)は、隣の男に覆いかぶさってキスしている大女を発見する。

大女が身体を離すと、その下から現れたのは、顔中にキスマークが付いた鼻の大きな小男だった。

その男の顔を観たアンドレは、どこかで観たことがある?と首を傾げながら新聞を広げるが、その新聞に、クリスチャン・ディオールの高弟で、下着デザイナーとして世界的に人気が高いピエール・三木(三木のり平)の紹介記事が大きく載っていた。

三木の帰国は、日本の紡績会社間で争奪戦を巻き起こそうとしていた。

飛行機が降り立った羽田空港では、マスコミ陣が殺到し、大混雑していた。

タイトル

マスコミ陣にもみくちゃにされていた三木だが、気がつくと、彼がかぶっていた羽根つきの赤いチロル帽のような帽子をかぶっていたのはデュヴィヴィエに代わっていた。

別の帽子をかぶってマスコミ陣の目をごまかした三木は、帽子を借りた森川石松(中村嘉葎雄)に礼を言う。

石松は、彼の勤める女性下着メーカー「シミロン紡績」と三木を契約させるため、他社に先駆け出迎えに来ていたのだった。

その頃、三木の到着を料亭「よし本」で待ち受けていた「シミロン紡績」社長清水長次郎(進藤英太郎)は営業の花田課長(南道郎)に、三木は相当なスケベ親爺らしいぞと情報を教えていた。

それでも、下着デザイナーとしては一流で、世界中の女優が、ピエール・三木デザインのパンティをはいているらしいので、是が非でもうちと契約を結ばせるんだと檄を飛ばしていた。

その清水社長が別室に向かうと、そこに待っていたのは、芸者の花千代(筑波久子)だった。

花千代は清水にパパと甘え、自分を正式な2号さんにしてくれると言っていたのに、どうなっているの?と問いかける。

それに対して清水社長は、自衛隊を作り上げた方法で行くつもりだと言い出し、警察予備隊と称してやがて保安隊から自衛隊になったように、徐々に世間の目をごまかしてやるのだと言うと、それじゃ私は今の所、保安隊と言うのね!と花千代はへそを曲げる。

そんな「よし本」の座敷に、石松が三木を連れてやって来る。

2人を出迎えた大野(十朱久雄)は石松に、三木が泊まるホテルの手配をするように命じる。

ぷんぷんしながら清水社長の部屋から出て来て、浮気してやるから!と呟いていた花千代に目を留めたのは三木だった。

その三木と会い、握手を求めた清水社長だったが、三木は握手には応じず、あなたはムッシュ・ネグリジェですと言うので、英語は出来るものの、フランス語は出来ない清水は、花田に通訳を頼む。

花田は、長島をミスターと呼ぶように、下着王とでも言う意味でしょうと教える。

その後、三木を歓迎した乾杯を終えると、三木は上機嫌で、呼ばれた芸者たちと一緒に踊り始める。

そんな三木に、契約はなにぶん宜しくと声をかけた清水社長だったが、三木は、何の話です?ととぼけ、先ほどあなたのことを言ったネグリジェと言うのは下着のことだと思い込んだらしいが、だらしないと言う意味の形容詞でもありますから、日本語で言うとスケベジジイと言う意味ですよと言い出す。

その頃、喫茶店で石松と会っていたエレベーターガールの白木美里(佐久間良子)は、今度の連休に高知に行かない?と話しかけていたが、石松が眠そうにあくびばかりしているのを見ると、私といるのがそんなに退屈?と怒り出してしまう。

石松は慌てて、この数日、三木の接待で、深夜の2時、3時の生活が続いているからだよと言い訳をする。

美里は、そんな石松にネクタイを観に行かない?営業マンが、いつも同じネクタイじゃみっともないでしょう?と誘う。

ところが、ブティックでネクタイを美里が選んでいると、根金をかけた見知らぬ女が、その背広にはこちらのネクタイの方が似合いますよと言いながら、全く違う色のネクタイを勧めて店を出て行ったので、美里は知っている人?と石松に詰め寄る。

しかし、石松は全く見覚えのない女性だと首を振る。

清水社長は、三木に10日間も接待をしながらいまだに契約を取れないことにいら立ち始めていた。

三木が、ライバル会社の「ニシロン紡績」にまで色目を使い出した情報をつかんだからだ。

清水社長は大野から、花田が適当な芸者を見つけたらしいと聞くと、我々が骨を折って、その芸者を奴さんの2号にしたらどうだろうと提案する。

どうせ花田が見つけた芸者など大した女ではなかろうと甘く観ていた上での発言だったが、そこに花田が連れて来たのは、清水の愛人花千代だったから、清水は愕然とする。

座敷で、花千代が三木の隣に座ると、思わず自分もその隣に座ろうとした清水社長だったが、向かい側の席だと知らされると、イライラした様子で、三木にしなだれかかる花千代の様子を睨み出す。

事情を知らない大野は三木に向かい、その花千代との仲を社長が取り持っても良いと言っていると伝え、社員たちは2人に気を利かせて部屋を後にするが、清水社長だけは、花千代のことが気になってなかなか席を立てない。

そんな料亭にやって来た石松は、花田に、先輩、契約大丈夫ですか?と尋ね、巧く行きそうだとと知らされると、遅れて玄関口にやって来た清水社長に、おめでとうございます!と頭を下げるが、なぜか清水から、バカもん!と怒鳴りつけられてしまう。

その後、清水社長は、トイレに行く振りをして、又座敷の外に戻って来ると、側にあった脇息(きょうそく)を踏み台代わりにして、欄間から部屋の中の様子を覗き込もうとする。

すると、花千代が三木にホルモン剤を飲ませている所だった。

そこに、花田が迎えにやって来たので、慌てて脇息を降りた清水は、落とし物をしたんだと言ってごまかすが、花田は、あんな高い所にですか?と首をひねる。

花田は、部屋の電気が消えたので、巧く行きましたとでも言いたげに、清水を他の部屋に招き入れると、あの花千代には旦那が付いているらしいのですが、相当抜けた男だったらしいです。くたびれた爺さんで、肝っ玉も小さく、一番女に持てないタイプでしょうななどと花田が報告するので、聞いていた清水は、たまらなくなり、言葉を慎みたまえ!と注意する。

その態度の急変を観た花田課長は、花千代の旦那と言うのが、目の前にいる清水だと言うことにやっと気づいて縮み上がる。

その清水の代わりに座敷の外で猫の鳴きまねをして花千代を外に呼び出した花田課長は、やっぱり、パパは、私のことを心配しているのねと喜ぶ花千代から、中に入れと部屋の中に招き入れられる。

恐る恐る中に入った花田課長は、三木が部屋の中にいないことに気づく。

花千代に教えられ押し入れを開けると、三木はその中ですやすやと眠っていた。

さっき花千代がホルモン剤と言って三木に飲ませたのは睡眠薬であり、今回の仕打ちは、全部、パパへの面当てよと花千代は笑うのだった。

そうした接待漬けの効果があったのか、ピエール・三木とシミロン紡績との契約は無事交わしたと、雑誌に大きく載る。

その祝賀パーティーにやって来た石松は、受付の所にいた美里に、今日、休暇届を出したので、後でゆっくり高知に行く相談をしようと声をかけると、今日はどんどん飲むぞ!と張り切るが、会場内にいた大野から、いきなり、運転手の弁当の用意はできたねと確認され、花田課長からは、清水社長の奥様、春子(清川玉枝)をお車までお送りしろと命じられる。

会場にいた三木は、上機嫌で鳥のもも肉にかじりついていたが、そこに、又、花千代がやって来て、慌てる清水社長に、今日はお客様よと言う。

どうやら、三木が電話で呼び出したらしかった。

花千代は、もう契約が済んだので、これまでのように愛想を使わなくても良くなったけど、私、よろめいちゃった!と三木に微笑みかける。

そんな花千代に、僕のために何か一挙食うたってくれない?と三木は頼む。

花千代は、ステージのバンドの前に立つと、得意の歌を披露するのだった。

彼女は堅い女ですよと話しかけて来た清水社長を前にした三木は、今まで彼女に接待で相手をされていたのは承知していたが、彼女を口説くには今夜が山でしょう。相手が堅ければ堅いほど、やりがいがあると言うものです。私は昔ボクサーをやっていましたから、どちらも相手を寝かせると言う点では同じですなどと言う。

それを一緒に聞いていた花田課長は、社長、これはエラいことになりましたねと心配そうに耳打ちする。

三木はさらに、相手に隙がなければ、こちらで隙を作るより手がないのですと言いながら、フランス土産だと言う香水のセットのようなものを取り出して見せる。

シャネルでしょう?と花田課長が聞くと、良く読んでみて下さい。これは「ヘーデル」と言う、おならのでる薬です。女がおならを他人に聞かれると、恥ずかしさのあまり隙だらけになります。これをて飲ませれば、30秒で腹がピヨピヨ鳴り始めますと三木は説明しながらカクテルに混ぜる。

そして、近づいて来た大野にそれを飲ませた所、言葉通り、30秒で大野の表情が激変し、ピヨピヨ言い出した腹を抱え、慌てた様子の大野は会場から逃げ出そうとするが、会場の入口付近で大きな爆発音のようなおならを漏らしてしまう。

清水社長と三木の側に戻って来た花千代は、今、大きな音がしたけど何か?と聞いて来るが、三木はそれには答えず、今日、ちょっとした実験をするので付き合いません?と聞く。

このままでは花千代が三木に奪われると焦った清水社長は、隣にいた花田課長に、お前があのビールを飲めと命じ、花田がさすがに躊躇していると、それが嫌なら、三木を酔い潰させるんだと命じる。

そこに石松が戻って来たので、花田課長は、お前、今晩暇か?と聞くと、清水社長は、一番強い酒を持って来るんだと命じる。

そんな中、三木はビールに「ヘーデル」を混入させると花千代に飲ませようとする。

その瞬間、清水社長は花田!と呼びかけ、その花田から促された石松がそのグラスを横取りして、私が頂きます!と言うとその場で飲み干すと、腹を押さえながら、石松は会場を後にする。

失敗した三木は、もう一度、「ヘーデル」入りのビールをコップに注いで花千代に渡そうとするが、今度はそのグラスを花田課長が横取りし、その場で飲み干すと会場から飛び出して行く。

三木は仕方なく、もう1杯注いで花千代に渡そうとするが、今度は清水社長直々に受け取って飲み干してしまう。

その清水も腹と尻を押さえながら退散すると、訳が分からない花千代は、一体みんなどうしたのかしら?気分でないと不機嫌になる。

邪魔者がみんないなくなったので、4杯目を注いだ三木は花千代にグラスを渡そうとするが、それを横から奪い取って飲み干したのは、見知らぬダンサー小奈良ヤエ子(若水ヤエ子)だった。

ヤエ子は、踊りながら腹がピヨピヨ鳴り出したので、思わず、演奏中だったバンドメンバーたちに向かって尻を持ち上げる。

その度に、バンドのメンバーは倒れて行き、大混乱になる。

その後、花田課長と石松は、次々と河岸を変え、三木を酔い潰そうとするが、うわばみのような三木は一向に酔いつぶれる気配すら見せなかった。

逆に、花田課長の方が腰が抜けてしまい、困り抜いた石松は、あるオカマバーで、自分なりにめちゃめちゃに強い酒のカクテルを作り、それをこの店の名物の酒「荒神山」と称して三木に勧めてみるが、それを飲んだ三木は、なかなかイカすじゃない?と言うだけで、変わった様子は見えなかったのでがっかりする。

ところが、花千代を連れて帰りかけた三木は、口から煙を吹いて店の中で倒れてしまう。

それを追おうとした花田課長も腰が抜けてしまい、石松も動けなくなっていると、いつかブティックで会ったメガネの女性が現れて、三木をソファに寝かすと、私がお送りするからハイヤーを呼んでと店員に頼む。

石松が気がつくと、そこは自分のアパートの部屋で、側にあのメガネの女がいたので驚く。

女は、三木さんも花千代さんも、花田さんも、みんな送って来たと言うではないか。

そこに突然、美里が訪ねて来て、メガネの女性を観るなり、私に待ちぼうけを食わせて、こんなことしていたのね!と怒って来たので、慌てた石松は、メガネの女性に、出て行けよ!帰れよ!と怒鳴りつける。

翌日、「シミロン紡績」の社長室では、二日酔いの花田課長から報告を受けていた清水社長が、花千代は無事だったんだねと安堵していた。

その時、社長の机の上の通話機に、石松と美里らしき痴話喧嘩が聞こえて来る。

どうやら、エレベーターの中のマイクを切り忘れているらしかったので、花田が止めようとすると、それを清水は制止して、そのまま2人の会話に耳を傾ける。

2人きりのエレベーターの中で高知に帰る話と、石松は昨日のメガネの女の事を必死に関係ないと弁解していたのだった。

次の瞬間、ビンタの音が響いて来たので、聞いていた清水社長は、さすが男だ、そのくらいやらないと感心するが、実際に頬を叩かれたのは石松の方だった。

思わず手を挙げてしまった美里は、石松のばか!と言いながら抱きついて来る。

石松は美里とキスをしようと身体を寄せて来るが、エレベーターの操作板に身体を押し付けられた美里の身体が、マイクのボリュームを最大にしてしまう。

社長室で耳をすませていた清水と花田の耳に、大きなキスの音が聞こえて来る。

微笑ましくその音を聞いていた清水社長の耳に聞こえて来たのは、石松の、社長なんか、女にかけてはまるっきりだらしないんだからなどと言う悪口だった。

清水社長は、森川の故郷は高知だったな?と聞き、花田課長は、「司牡丹」と言う酒造メーカーの息子です。実家で森川は、白木君を紹介するんでしょうと答える。

その頃、ホテルのベッドで目覚めたピエール・三木は、隣の部屋に見知らぬメガネの女性がいることに気づく。

君は誰だと聞くと、弟子の顔をお忘れになっては行けませんわ。並木京子(北原しげみ)と申しますと名乗ったメガネの女性は、夕べ、弟子にするっておっしゃってましたわ。何だったら、住み込みでも良いってと答える。

そんな彼女の様子を用心深く見つめていた三木は、今日は花千代さんとゴルフに行かれるんでしょう?と言いながらテキパキ準備をする京子の有能さを見抜くと、一目で気に入ったようだった。

すると、京子は、シミロンとのお仕事はいつ頃から始めますの?と聞いて来たので、三木は、東京では仕事しないかも知れないと言うと、四国…と耳打ちしながら、商売敵がスパイつかているかも知れないのよと教える。

その後、「シミロン紡績」とはライバル関係にある下着メーカー「ニシロン紡績」の田村(須藤健)は、京子からの電話で、三木が四国で「シミロン」の仕事をするらしいとの連絡を受けたので、何としてでも妨害するんだと命じる。

一方、石松を呼び出した清水社長は、四国に帰るそうだが、その休暇をわしに売らんか?実は、三木先生と花千代が四国に行くらしい。花千代の貞操を守るため、君にそのボディガード役を引き受けてくれないかい?と頼んで来る。

自分とはナチよとの関係を人に知られたくないんだと言うので、1人で行けと言うのですか?と聞いた石松は、即座に、嫌ですと断る。

清水の次郎長が、先先代の次郎長の名を出して説得しようとすると、次郎長に花千代などいませんでしたと石松は反論する。

では、吉良仁吉ならどうだい?と別の人名を出して清水社長は説得しようとする。

すると石松は、私は月給19800円の社員です。花千代さんのボディガードする金などないんですと言う。

「タカラビール」のビアガーデンで美里に会った石松は、部長から急に青森の営業所廻りを命じられたので高知には帰れなくなった。これも新米社員の辛い所で、義理と人情の板挟みなんだ…と嘘をついてしまう。

その後、石松は、三木と花千代と同じプロペラ機で大阪に向かう。

三木が隣の席の花千代に近づこうとするたびに、石松は側に行って、あれこれ秘書の真似をして邪魔をしようとするが、三木は、そんなことは僕の秘書から聞いていますと言いながら、後ろの方に座っていた京子を指す。

秘書と紹介されたのが、あの時のメガネの女性と知った石松は、何だい君は?と問いかける。

しかし、三木は、僕の世話はこの人にしてもらうと、京子を指名するのだった。

大阪空港で、高知行きの便に乗り換えようと待っていた石松は、受付嬢が別の受付嬢に、並木京子さんに電報が届いているので呼んで来てと渡しているのを偶然発見し、自らその電報を受け取る。

そして、内容を読んだ石松は、京子に近づくと、君はニシロンのスパイじゃないか!この電報には、状況を伝えるべし。シミロンに気づかれないようにと書いてある!と突きつける。

正体がばれたと悟った京子は、同業者として教えてあげるけど、三木先生は、花千代さんと京都へ行ったのよと言うではないか。

その後、自宅にいた清水社長は、石松が京都から電話して来たと聞いて驚くが、どうやらまかれずにすんだことと、ニシロン側が女スパイを送り込んでいたことを石松は京都の旅館から報告する。

その時、清水の目の前に、芸者と言う言葉を聞きとがめたネグリジェ姿の春子がやって来たので、清水社長は、何とかごまかそうとする。

しかし、それに気づかない石松は、とんちんかんな答えをするばかり。

やがて、春子を部屋の外に追い出した清水は、三木先生は今何をしているんだ?と聞くが、隣の座敷で、大勢の芸者相手に、浴衣を脱いで上半身裸になった三木の様子を観ていた石松は、今、着物を脱ぎましたと報告、さらに、今、抱きあっています。とうとう寝てしまいましたと、三木が座敷で酔いつぶれた様子を実況中継し始めたので、聞いていた清水は、三木が花千代と寝ているとばかり思い込み、怒り出してしまう。

一方、正体がバレたことを電話報告した京子は、「ニシロン」の田村から、三木先生を監禁するんだ。四国に着くまでに何とかするんだと無茶な命令を受けて悩んでいた。

宿に戻り、三木は花千代と2人きりになると、又もや「ヘーデル」を混ぜたビールを飲まそうとしていたが、その度に、石松が、何か御用はありませんかと、あちこちの障子や窓を開けて顔をのぞかせ邪魔をする。

三木がいら立って来た中、こっそり三木のグラスと自分のグラスを入れ替えた花千代は、その場で乾杯をしてビールを飲み干す。

すると、「ヘーデル」入りのビールを知らずに飲み干してしまった三木は、急に腹がピヨピヨ言い出し、慌てて部屋を飛び出すと、トイレを探しまわるが、その途中でばったり、同じ宿に泊まっていた4人のフランス人修道僧と再会してしまう。

感激した修道僧たちは1人1人三木に抱きついて来るが、我慢が出来なくなった三木は、彼らを振り払って近くのトイレに入ろうとするが、そこは女子トイレだったので、慌てて男子の方に入ろうとするが先客がいる。

入口で地団駄を踏んでいた三木だったが、すぐに先客が出て来たので、トイレに飛び込んで行く。

それを見送っていた修道僧たちは、何やら周囲に悪臭が漂っているので、4人の中に修道僧らしからぬ無礼を働いたものがいると思い込み、その場で今、風上にいたのは誰ぞ?などと犯人探しを始める。

しかし、あれこれ話し合っているうちに、匂いの原因は自分たちではないことに気づいた彼らがトイレの方に目をやると、安堵した顔で出て来た三木が治った腹を叩いてみせると、又ピヨピヨ言い出し、慌ててトイレに駆け込む所を目撃してしまう。

そんな旅館に、翌朝、花田課長を伴いやって来た清水社長の姿を観た花千代は、思わず、パパ!と泣き出したので、それを観た清水は思わず、純血を失ったのか!と狼狽するが、今朝方、先生は、私を置いてきぼりにして、1人で四国へ向かったのだと花千代が泣いて訴えるので、取りあえず一安心する。

四国へ向かう船の船室では、三木が1人で、下着デザインの構想を練っていた。

失敗したスケッチ画を紙飛行機に追って窓から飛ばすが、甲板に落ちたその紙飛行機を拾って、海に向かって飛ばしたのは石松だった。

その甲板で京子を見つけた石松は、先生がせっかく仕事しかけているのに妨害されては困るなと釘を刺しに行く。

すると、京子も、私、フェアにやるわ!と言い返して来たので、お互いサラリーマンは辛い所さと石松も同情する。

京子は、広い海を観ていたら、三木先生を追いかけ回すのがむなしくなったの。もっと若い人を育てれば良いと思うのよと言い出したので、共感した石松は、やっと意見の一致を観たねと笑顔を見せる。

その時、大きな汽笛が鳴り、2人の活発な意見交換は掻き消えてしまう。

高知

船を降り立った三木は、大勢の出迎えが港に待ち構えていたので満足するが、彼らが押し寄せて来たのは自分ではなく、石松の方だったことを知ると憮然とする。

石松の出迎えの中心にいた老人は、酒造メーカー「司牡丹」に20年も仕えている善助(左卜全)だったが、彼は、石松と一緒にいた京子を、近々血痕予定のお嫁さんだと勘違いしてしまう。

石松は違うと否定するが、耳の遠い善助には通じなかった。

石松と京子は、善助が用意していた車に乗せられ出発するが、そんな中、三木だけは1人、波止場に取り残されてしまう。

佐川町商工祭と書かれたアーケードの中、石松の実家である「司牡丹」に到着すると、石松の父、森川吉松(東野英治郎)、母、きみ江(沢村貞子)、妹、光子(愛川かおる)らが揃って出迎えてくれるが、みんな、京子のことを石松のお嫁さん候補だと思い込んでいる様子だった。

特に、母のきみ江はお節介な性分らしく、2人を石松の自室に案内すると、いつまでも話し込んで部屋を出ようとはしないので、父と妹から、少しは遠慮しろと注意されるほどであった。

ようやく歓迎の大騒ぎから開放された石松と京子だったが、その瞬間、2人同時に三木を港に置いて来たことを思い出す。

その頃、置き去りにされていた三木を迎えに来たのは、芸者を連れた「ニシロン紡績」の一団だった。

一方、お忍びで高知空港に降り立った清水社長は、「シミロン紡績」から大勢の歓迎隊が待ち構えていたので驚く。

工場長を呼んで訳を聞いた所、三木先生がこちらに来ると言う電報を受け取ったと言うので、それは「ニシロン」が打ったものに違いないと清水は直感する。

その頃、三木は、「ニシロン」の田村が用意した芸者たちと、とある座敷に連れ込まれていたが。

田村は店の隅で、地元ヤクザの都鳥吉彦(中村是好)と会っていた。

都鳥は、奴をバラすんでしょう?あの男を…と三木の方に目を向けるが、田村は金を渡しながら、少々痛い目に合わせても良いから、デザインを描かせろと命じる。

そこに、都鳥の子分がやって来て、祭りですから、若いものに小遣いでもやって下さいと頼みに来るが、ケチな都鳥は、一文も渡そうとはせず追い返すのだった。

そんな田村と都鳥の前にやって来た京子は、もう私の仕事はなくなったようですねと皮肉を言いながら、田村に持って来た辞表を渡す。

その後、石松の実家前に戻って来た京子に、三木を拉致されてしまった石松は、俺を笑いに来たのか?暴力を使うなんて…。どんな手を使っても良いんだ?女には、男には仕えない協力な手があるからな…と嫌みを言う。

しかし、京子は、自分は三木先生の居場所を教えに来たのだと言う。

その頃、都鳥は、パチンコ台が数台並んだ都鳥一家の部屋で、三木に銃を突きつけながら、無理矢理デザイン画を描かしていた。

三木は空腹を訴えるが、都鳥から、さっき食べたばかりじゃないか!口を聞くな!と怒鳴られたので、仕方なく、ジェスチャーで食べたいものの要求を始める。

寿司や蒲焼きや、尾長鶏まで食べたいなどとジェスチャーするので、解読していた都鳥は癇癪を起こす。

そこに子分が殴り込みだ!と駆け込んで来る。

玄関先に来ていたのは石松だったので、都鳥は、俺は都鳥吉兵衛の4代目都鳥吉彦だ!殴り込みなら仁義を切れ!と立ちふさがる。

そこにやって来たのは、京子に案内されて来た清水社長だった。

清水社長は、その場で見事な仁義を切り出すが、途中で文句を忘れたので、石松に代わりに言わせると、今は話し合いの時代です。あなた方も今の生活を続けていると世間から取り残されてしまいますよ。またもに働く気があるんだったら私が相談に乗りましょうと都鳥と子分たちに話しかける。

そんな中、三木は見張りがいなくなったので、裏口から逃げ出そうとしていたが、扉の向こうにあったのは檻で、気がつくと部屋の隅には土佐犬がいた。

驚いて逃げ出そうとするが、入って来た扉は何故か開かなかった。

三木を探しに来た都鳥が、土佐犬の部屋の扉に鍵がかかっていなかったのでその場で閉めたからだった。

清水社長と石松もその場にやって来て三木を探すが、土佐犬の扉を開けようとすると、そこは土佐犬がいますと都鳥から言われたので、中を確認しないままだった。

檻の中では、持っていたパンに「ヘーデル」を染み込ませたものを土佐犬に食べさせた三木だったが、その際、手に付いていた残りカスをつい自分も食べてしまったので、室内にはピヨピヨと言う音と、困惑したような表情になった三木と土佐犬が向かい合う形になる。

高知の町では、「よさこい祭り」が始まっていた。

何とか見つかった三木を連れて、清水社長も「司牡丹」にやって来て、石松の家族と歓談をしていた。

「よさこい祭り」に関心を示す清水に、吉松は、後で石松に案内させましょうと答える。

その時、妹の光子が、石松を呼ぶと、工場長が来ていると言う。

庭先に来ていた工場長は、東京からお客様が来たので連れて来たと言い、善助は坊ちゃんのお部屋の方に案内しておいたと言うので、石松は余計なことをするなと叱りつけながら二階に上って行く。

それを見送った清水社長は、巧く行ったなと工場長に目配せするのだった。

部屋にいたのは美里だったので、石松は驚くと共に喜ぶ。

美里は、社長から連絡があって呼ばれたのだと言う。

そこに顔を見せた清水社長は、遠慮せんで良い。もっとくっつきなさい。今日から1週間、君たちには休暇を与えよう。心置きなくラブを語りたまえと笑顔で伝える。

社長が去ったので、2人は安心してキスをしようとすると、妹の光子が、展望台に行って祭りを見ようと誘いに来る。

妹も立ち去ったので、再びキスをしようと互いに顔を寄せあうと、今度は善助がジュースを持って来ており、今度は本当のお嫁さんのようですな…と笑顔で話しかけて来る。

家の中では人目が多いと感じた2人は外に出るが、そこは祭りの群衆で溢れていた。

2人は、2人きりになれる静かな場所を求めて町中をさまよい出す。

一方、展望台に来ていた清水社長は、今夜は我々も若いもんに負けないように…などと言いながら小指を立ててみせたので、父の吉松は、良い所へご案内しましょうと囁き返すが、側で祭りを観ていたきみ江は、その言葉を聞きとがめたのか、良い所って?と夫の方を振り返る。

河原に並べられた和傘の中に入ってキスをしようとした石松と美里だったが、すぐに作業していたおばさんに見つかってしまいその場を逃げ出す。

港の小舟の中に入ってキスをしようとすると、そこにはすでに別のカップルがキスをしている所だったので、又しても慌てて逃げ出す。

結局、お城の天守閣に昇った2人だったが、そこにも見物客らしき老夫婦がおり、なかなかチャンスがない。

すると、老婦人の方が事情を察して、夫を連れて帰ったので、ようやく石松と美里は二人きりになれる。

祭りに使われていた大きな傘の影で男女の人形がキスをし、それはあたかも石松と美里のようであった。

「よさこい祭り」は、今や最高潮を迎えていた。