町に乗り込んで来た愚連隊に対抗する若き女性たちの集まり「独立美人隊」のドラマなのだが、作られた時代から考えて、1959年に公開され、その後シリーズ化された東宝の人気作「独立愚連隊」を意識した企画のような気がする。
とは言え、岡本喜八監督の痛快活劇のような土壌がない松竹としては、当時のテレビで人気が出始めた若手落語家や人気歌手、はたまた他社のベテラン役者などを出演させ、客寄せ効果を狙うしかなかったようだ。
確かに、出演陣の顔ぶれだけを観るとバラエティに富んでいる。
志村喬や河津清三郎は東宝の常連、吉田輝雄は新東宝出身、仲宗根美樹や弘田三枝子、江利チエミなどは当時の人気歌手、古今亭志ん朝は若手落語家の有望格だっただけではなく、テレビタレントとしても人気を博した人であった。
これに、加賀まりこや香山美子と言った松竹の若手女優が加わっている。
この作品での加賀まりこはあまり活躍していないが、その反り返ったように突き出した唇は、今観てもエロティックである。
江利チエミは、50年代から数多くのテレビドラマや映画にも出演しているベテランだが、整形前の弘田三枝子や仲宗根美樹の姿をスクリーン上で観るのは珍しい。
若い頃の仲宗根美樹は久々に観た気がするが、今観てもきれいだし、歌もうまい事に感心させられた。
演技も特に素人臭いと言うほどではなく、このまま映画の世界でも活躍していれば、女優としても一時代を築いたのではないかとさえ思える。
この作品で気になったのは、吉田輝雄と同じ新東宝出身の菅原文太のポジションの低さ。
最後の方で刑事役としてちらりと登場し、セリフも少しながらあるものの、ほぼ主役のポジションを演じている吉田輝雄とはえらい違いである。
確かに、イケメン風の吉田輝雄に比べると、当時の菅原文太は、身長が高いと言うだけで、顔はお世辞にもイケメン風とは言えず、痩せた強面風なので華もなく、日常ドラマや恋愛ドラマ中心だった当時の松竹の作風の中では使いにくい存在だったのかもしれない。
この作品でも、愚連隊の一員としてではなく、一応刑事役に当てられていると言うのは、それまでの実績を踏まえての配慮だったのかもしれない。
若手の女の子たちがメインの作品だからか、藤間紫や沢村貞子辺りも、そのキャリアからすると、この作品ではかなり地味なポジションに甘んじている感じがする。
話自体は特に目新しい感じはせず、当時の地方都市の中には、暴力団が支配していたような地域もあったようで、マスコミがキャンペーンを行って暴力団を追い出す話は実際にもあったようだ。
女性だけのグループが活躍していると言うのがミソだが、その点に関してだけは、あまり現実性はないような気がする。
もう絶好よ!が口癖の、五十嵐ひろ子と言うキャラクターは、演じている榊ひろみと言う女優さん自体はさほどのインパクトもないのだが、なかなか面白く感じた。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
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1963年、松竹、菅野昭彦+桜井義久脚本、市村泰一監督作品。 アールデコ風ロゴのタイトル文字 南伊豆のとある漁村 海沿いの路肩に停まったボンネットバスのエンジンを調べるため降り立った運転手の竹村保夫(山本豊三)に、又?と呆れたように聞く車掌の南由美子(仲宗根美樹) 保夫は、ポンコツだからな、もうとっくに寿命なんだ…と諦め顔。 そんな2人の脇をどんどん他の自動車が通過して行く。 看護婦の西本道子(弘田三枝子)は、往診用スクーターに乗って遊んでいる近所の子供たちに、注射しちゃうぞ!と言って追っ払っていた。 そこに、往診を終えた医師の飯沼謙作(志村喬)が家から出て来て、漁師の妻に、後で薬を取りに来るよう伝える。 妻は何事か伝えたいようだったが、すぐに事情を察した道子が、お金の心配ならしなくて良いから、新鮮な魚でもあったら持って来てと妻に言葉をかけ、すでに後部座席に飯沼医師が股がっていたスクーターに乗り込むと、得意の歌を歌いながら出発する。 そんな町に3台の車で乗り付けて来たのは、いかにも怪し気な愚連隊連中。 その中の一人、南克也(宗方勝巳)の故郷らしかった。 笠原交通に戻って来たバスから降り、その日の仕事を終えた保夫と由美子。 由美子は先に帰るが、そんな営業所にやって来たのは、地元新聞日東の記者宇野新吾(吉田輝雄)は、吉岡所長(永井達郎)に会うと、東洋バスと合併話があるが本当かと聞く。 吉岡所長は、30年来のライバル会社である東洋バスと合併するなんてあり得んでしょうと否定する。 それでも宇野は、近々電鉄が通れば、バス会社は不利になるのでは?と探りを入れるが、それ以上の答えは得られなかった。 笠原交通の社長である笠原重吉(河津清三郎)が自宅に戻って来ると、出迎えた妻洋子(藤間紫)に、英彦(島津雅彦)をあんな奴と遊ばせるなと叱りつける。 1人息子である英彦と近くの海岸で遊んでいたのは、貧しい南家の次男次郎(山崎二郎)だったからだ。 そこに、同僚の小林あき子(加賀まりこ)と一緒に帰って来た姉の由美子が次郎に声をかける。 次郎は、お兄ちゃん、帰って来たよと姉に教えたので、由美子は驚き喜ぶが、元恋人だったあき子の方は複雑な表情になり、克也に会うのをためらう。 帰宅した由美子は、これからずっとここにいてくれるんだろうね?と克也に問いかける病弱の母せつ(沢村貞子)、その母の往診に来ていた飯沼医師、ふてくされたように座っている兄克也を見つける。 飯沼医師は、亡くなった父の小学校時代からの知りあいだったので、もう悪い奴とは縁が切れたんだろうな?とか、お前の親爺は立派な男だったぞと、漁師にもサラリーマンにもなれず、ふらりと都会に出て、今頃戻って来た克也に説教をし始めたので、面白くない克也は家を飛び出してしまう。 そんな克也に近寄った由美子は、あき子さんも2年間も待ってたのよと伝えるが、克也は何も答えなかった。 町内の喫茶店「おしどり」に出前を届けて帰る食堂「南風軒」の娘五十嵐ひろ子(榊ひろみ)を見送っていた、経営者妻の妹佐伯夏子(香山美子)は、近くを通り過ぎて行く愚連隊らしき連中の姿を見つけ、電車が通るとガラが悪くなるわねなどと噂し合う。 店に帰る途中、ひろ子は、新聞社の支局長である父親の部下宇野が、芸者たちと昼日中、立ち話をしている姿を観かけ、不機嫌になる。 ひろ子は口には出さないものの、宇野の事が好きだったからだ。 ひろ子が「南風軒」に戻って来ると、奥の部屋で父の五十嵐泰造(武内文平)が本社に、豚が焼け死んだと言う地方ネタの記事を電話で送っている所だった。 そこに遅れて帰って来た宇野に、ひろ子は、愚連隊が町をうろついているわと情報を教える。 一応、この町でも「暴力出すな許すな町ぐるみ」と言うキャンペーンをしている最中だったからだ。 しかし、宇野は空腹だったからか、カツライスを母親に注文したので、給料前にカツライスなど贅沢しないでキツネうどんくらいにしときなさいと、ひろ子が女房気取りで注意したので、宇野は情けなさそうに、どうせならタヌキにしてよと頼む。 その後、町の料亭では、芸者の千代菊(江利チエミ)が、笠原とその客たちの座敷で歌っていた。 歌い終わった千代菊は、若手芸者のさくら(牧紀子)が笠原に絡まれていたので、奥様に言いつけますよと注意する。 笠原は、その場に呼んでいた愚連隊の岩田文治(諸角啓二郎)に金を渡しながら、俺は一応町会議員やPTAの会長もやっているんだから、巧くやれよと命じる。 間に座っていた黒めがねの富永 (穂積隆信)は、この連中は全員、うちの不動産屋の社員と言う事になっていますので大丈夫ですと笠原にへつらう。 夜の浜辺で会っていた竹村保夫と由美子は恋仲だったが、今勤めている笠原交通の将来に不安を抱いていた。 その後、愚連隊は町中で好き勝手にやり始める。 パチンコ屋の主人(中村是好)は困りながらも報復を恐れ、強い態度に出れなかった。 やがて愚連隊は、「おしどり」にも乗り込んで来る。 当惑する主人佐伯定男(古今亭志ん朝)や妻冬子(町田祥子)を前に、勝手にプレイヤーで派手なレコードを鳴らしたり、客たちに絡み始めたので、他の客たちは一斉に出て行ってしまう。 しかし、気丈な冬子の妹夏子は、プレイヤーを止め、ここは昼間は純喫茶よ!静かにして頂戴!と愚連隊連中を叱りつける。 その時、他の仲間からからかわれていた克也に目を留めた定男は、かっちゃん?南克也くんじゃありませんか?と懐かし気に声をかける。 克也は、同級生なんだよと仲間たちに教える。 やがて愚連隊は映画館にもただで入り込もうとしたので、チケットガールは止めようとするが、呼ばれて出て来た支配人(福岡正剛)は、富永不動産の社員を名乗っているその連中ともめ事になるのは嫌だったので、只見を黙認してしまう。 キャバレー「カサハラ」に招待された宇野ら地元新聞記者たちは、同じく招待された県会議員らにぺこぺこ挨拶をしている笠原の姿を観ながら、しらけながらも、酒だけはありがたく飲ませてもらっていた。 そんな宇野を呼び出し、頼み事をしたのは芸者のさくらだった。 宇野は、県会議員たちにしつこく絡まれていた千代菊に踊ってもらえませんかと誘って救い出してやる。 千代菊は、踊れない宇野が自分を助けてくれたのだと知り感謝するが、お宅の新聞低調ね。うちでも日東止めて、中央にしようかなどと言っているのよと正直な意見をしてやる。 そんなキャバレーの舞台裏では、富永が岩田ら愚連隊連中に、今日は静かにしてろよと釘を刺していた。 その後、宇野は、さくらや千代菊たち芸者に誘われ、「おしどり」で飲んでいた。 そこで、愚連隊の事を聞いていた宇野だったが、千代菊が宇野に気がある事を知っていたさくらたちは気を利かせ、千代菊だけをその場に残して先に帰ってしまう。 翌朝、間借りしている「南風軒」の二階でひろ子から起こされた宇野は、夕べはどこで飲んでいたの?とひろ子から詰問され、キャバレーから「おしどり」で飲んで…と記憶を辿っていたが、それを聞いたひろ子は起こって、もう絶好よと言い残して部屋を出て行く。 その後、体調が悪くて飯沼医院にやって来た宇野だったが、ただの二日酔いと分かって、飯村医師から叱られていた。 その時、ベテランの中野文子看護婦(藤岡ひろ子)が、南せつの容態が悪化したとの電話を飯村に伝える。 「おしどり」にたむろしていた克也を呼び出したあき子は、お母さんが悪いと言う事を知らせる。 あき子は、帰らなきゃいけないわと説得するが、俺の廻りをうろちょろしていると、お前の幸せまで台無しになるぞと克也から言われただけだった。 せつは、飯村医師の後輩がいると言う伊東の中央病院へ入院させる事になり、再びあき子は、「おしどり」で飲んでいた克也の元へ知らせに来る。 せつは、竹村保夫が運転するバスで伊東まで輸送する事になり、付き添っていた飯村医師は、これは感動的な記事になるなどと言って同乗して来た宇野に、もう二日酔いは直ったのか?と嫌みを言い、それを思い出した宇野は急に吐き気を覚える。 自宅で、幼い妹の恵子(坂倉春江)と弟次郎が、2人だけで貧しい夕食を食べていた所に戻って来た克也は、寂しさからすがりついて来る妹たちに小遣いを渡してやる。 克也は、帰って来た由美子に、母親の入院費がいるんだろう?10万ばかり借りてやると話すが、どうしてそんな大金が手に入るのかと警戒する妹に、不動産屋の社長に、ちゃんと証文を入れて借りるんだから大丈夫だと説明する。 その頃、「南風軒」に集まっていた地元の若い女性たち、夏子、ひろ子らは、のさばっている愚連隊をどうにかしないといけないと話し合っていた。 そこに戻って来た宇野にも応援を頼むが、金を払って「おしどり」で飲んでいるんだったら、別に問題にはならないよと及び腰。 それを聞いたひろ子は、又もや、今度こそ絶好よ!と宇野に告げるのだった。 富永の事務所に来た由美子は、富永からあっさり10万円を借りる事が出来たが、あなたは歌がうまいそうだが、うちの系列でやっているキャバレーの専属歌手にならないか?月に4〜5万は軽いよと誘い、その場で事務員に、明日から出演できるように手配させる。 その夜、事情を由美子から打ち明けられた竹村保夫は、僕にはどうしようもないな。貧乏って辛いな…と嘆くだけで、由美子はただ泣くだけだった。 笠原交通の組合では田代委員長(渡辺紀行)が、組合員たちに向かい、由美子がキャバレーに転職したのをきっかけに、どんどん社員が減っていると現状を訴えていた。 それを聞いていた副委員長の保夫は、俺たちの弱みに付け込む会社が悪いんだ!と主張していた。 そうした組合運動を聞いた吉岡所長は、すぐに笠原社長に電話する。 ある日、「おしどり」にやって来た愚連隊たちは、そこに数十人の女性たちが集まって立ちふさがっているのを見つける。 今後一切、この店には来ないでちょうだい!あんたたちみたいなガラの悪い愚連隊は出て行け!と息巻く夏子たちに、俺たちが愚連隊なら、お前さんたちは何なんだ?と絡んで来た愚連隊に、女性陣たちは、私たちは美人隊、独立美人隊よ!と一斉に答える。 その時、店に電話がかかり、それに出た定男は、相手が克也と言う事を知ると、愚連隊に受話器を渡す。 受話器を取った男は、兄貴が?!と言うなり、他の仲間を行き連れてさっさと店を出て行ってしまう。 取りあえず、愚連隊排除に成功した美人たちは喜び、これからここを本部にするわと夏子が言い出したので、気の弱い定男は気絶してしまう。 富永の経営するキャバレーでは、振り袖姿の歌手のみどり(五月みどり)が歌っていたが、出番を待っていた由美子に、富永は東京で本格的な歌手になるつもりなら、色々力になるよなどと甘い言葉をかけながら、由美子の気を惹こうとしていた。 一方、夕方、仕事を終え、営業所から帰りかけていた竹村保夫は、入口で待ち受けていた克也から声をかけられ、浜辺に付いて行くと、そこには愚連隊連中が待ち構えていた。 保夫は、その連中から殴られるが、あまりに惨いやり方を側で観ていた克也は耐えきれなくなったのか、思わず「ポリだ!」と噓を言い、仲間と一緒に逃げ去って行く。 その頃、キャバレーでは、歌手になった由美子が歌を披露していた。 楽屋裏では、電話を受けていた岩田が、良しご苦労と相手をねぎらうと、富永の方に、指でOKサインを出してみせる。 飯沼医院では、愚連隊らに殴られ怪我をした竹村保夫が、警官から事情を聞かれていた。 誰か見知った奴でもいなかったか?と聞かれた保夫だったが、暗くて分からなかったと答え、克也の名は出さなかった。 そこに、由美子が駆けつけて来て、誰がこんな事をしたの?と哀しむ。 組合の副委員長が襲撃されたと言う記事が日東新聞に載る。 それを読んだ田代委員長は、組合員たちと相談していたが、ひょっとしたら会社側が裏で糸を引いているのかもしれないと言うものが現れ、全員、その可能性がある事に気づく。 笠原不動産から、その日も町に繰り出す愚連隊に付いて行こうとした克也だったが、岩田に、今日は動くなと命じられる。 笠原社長は、呼びつけた日東の支局長五十嵐泰造に対し、あたかも俺が襲撃事件に関係しているかのような書き方は止めろと脅していた。 五十嵐が帰ると、その場にいた富永に、バス会社を整理せん事にはどうにもならんと笠はわ社長は本音を打ち明けていた。 その後にアミューズメント施設を作るのなら、うちも稼がせて頂かなければ…と、富永は嬉しそうにお愛想を言う。 愚連隊は、南家に来ると、家の物色を始めたので、その場にいた由美子は、あなた方は何をしようとしているんです?と聞くと、ここに6階建てのホテルが建つのだと言うではないか。 飯沼医師はその事を病院に来た由美子から聞き、いつから君の土地は人手に渡ったんだ?と不思議がる。 「おしどり」で飲んでいた克也は、夏子から、あき子さん、泣いているわよと嫌みを言われていたが、そこにやって来た由美子から、土地を富永に取られてしまった事を聞き驚く。 すぐに富永に会いに行った克也は、何であんなひどい事をするんだ。あの土地は死んだ親爺が残してくれたものなんだと抗議する。 すると、富永は証文を取り出し、ここに南家の土地を売ると言う文面と、お前の捺印がある。すでに笠原さんの名義で登記もすんでいるんだ。お前10万借りただろう?と言い出す。 あれは形式だけで良いと言うから書いたのに…、おまえらグルになって俺を陥れやがったな!と克也は気づく。 富永は、俺はブローカーだよ。土地を売って儲けて何が悪い?と開き直るので、警察に訴えてやる!と息巻いて部屋を出ようとした克也だったが、そこには、愚連隊仲間が待ち受けていた。 その後、再び南家にやって来た愚連隊たちは、由美子や幼い妹弟たちに早く立ち退くように脅し始める。 さらに、町の菓子屋など、笠原が土地を手に入れた場所にも現れた愚連隊は、早く立ち退くように迫る。 由美子は、キャバレーの富永の所に、姿が見えなくなった兄の克也を探しに来るが、土地の事なら書類が出来てしまっているんでねととぼける富永は、僕で良かったら色々面倒観るよと言いながら、由美子に抱きついて来る。 しかし、そこに近づいて来たみどりが声をかけ、由美子の窮地を救ってくれる。 由美子は、キャバレーを辞めさせて頂きますと富永に告げ、立ち去って行く。 飯村医院では、宇野や由美子を前に、今回の自体を知った飯村医師が憤慨し、笠原と直談判だ!と息巻いていた。 しかし、今日は、僕が呼ばれているので、僕が行きましょうと飯村に伝えた宇野は、笠原社長が待つ料亭に出かける。 千代菊やさくらもいる席で待っていた笠原は、やって来た宇野に、金の入った封筒を差し出して来る。 これは何ですか?と気色ばむと、まあ、何でも良いじゃないかと笠原は笑う。 宇野は立ち上がると、あなた、うちの局長を怒鳴りつけておきながら、僕にはこんなものを渡そうとしている。世の中には脅しや金で自由にならない人間もいるのです!と言い放つと部屋で出る。 それを送りに来た千代菊は、止めないわとだけ宇野に伝える。 その後、日東新聞の支局には独立美人隊が集結しており、愚連隊に対し弱腰の五十嵐泰造支局長に対し、新聞で暴力追放のキャンペーンをやるべきだと迫っていた。 ひろ子は、卑怯よ、お父さん!と責め、やる以上は徹底的に叩きましょう。局長!お父さんより娘さんの方がよっぽど立派ですよと宇野も女性隊に味方していた。 支局長は、良し、やるか!と乗り気になり、日東新聞には、愚連隊の横暴を非難する記事が載り始める。 笠原交通の組合でも、全員で頑張ろう!と組合員たちが張り切り、ストライキに突入する。 それを伝え聞いた笠原は、全営業所を閉鎖しろと命じる。 日東新聞の支局に乗り込んで来た愚連隊は、五十嵐支局長に脅しをかけるが、支局長は、書くと言ったら書く!と抵抗し、ぼこぼこに殴られて負傷してしまう。 その治療をしにやって来た飯沼医師の前で、正しいと思ってやった事がこんなことになるなんて…と宇野が嘆く。 これ以上やると、あんたはやられると案ずる宇野に対し、五十嵐支局長は、やるんだ!正しい情報を書いて本社に送るんだ!と檄を飛ばす。 やがて、日東新聞のキャンペーンは効果を現し、愚連隊の3人が逮捕されたりするようになる。 形勢不利になって来たことを知った笠原は、岩田を叱りつけるが、一緒にいた富永は、万事私にお任せを…と余裕を見せる。 その時、妻の洋子に呼ばれて部屋に行った笠原は、息子の英彦が、学校に行きたくないと言っている。学校に行けば、鬼の子と言われていじめられると言うので、デマだ、でたらめだ!と激高した笠原は、何としても行かせるのだ!と洋子に命じる。 その頃、「おしどり」に呼ばれたパチンコ屋の主人や映画館の支配人たちは、美人隊から、愚連隊に毅然とした態度を取るように迫られていたが、ブンヤさんである五十嵐と我々は違うよと弱音を見せたので、夏子から喝を入れられていた。 か弱いシマウマだって、集まればライオンを退ける事が出来るのよと言うひろ子の言葉を聞いたパチンコ家の主人らは感心し、考え直す事にするが、愚連隊が掴まれば、克也も掴まると言う事に気づく。 それを察した由美子は、良いの、兄さん掴まっても…と悲しそうに伝えるのだった。 その後、ひろ子は千代菊に相談に向かうが、千代菊は、宇野さんを立派な記者にしてあげて。あなた、よっぽど宇野さん、好きなのねと感心する。 その晩、千代菊は、座敷を間違った振りをして、岩田を仲介役として、東京の第一不動産社長(曽我廼家明蝶)と富永が密会し、大金の受け渡しをしていた現場に乗り込む。 さくらとすみれ(若山美枝子)も、その場に侵入し、わざと大金を見つけた振りをして大げさに驚いてみせたりする。 その情報をさくらから聞かされた宇野は、何故、富永が第一不動産と会っていたか不思議がる。 その後、千代菊とさくらは、克也がキャバレーの地下室でリンチを受け監禁されているらしいことを嗅ぎ付け、飯村医院の中の看護婦に連絡する。 中野看護婦は、帰って来た由美子とあき子にその事を教える。 田代委員長ら組合員は、笠原の自宅を訪れると、これまでの不正をただそうとするが、笠原は、富永に土地は売ったのだと言うだけ。 飯村医師は、日東の支局に来ると、由美子とあき子が2人だけでキャバレーに乗り込んで行った事を五十嵐らに伝える。 その頃、キャバレーの地下室に侵入した由美子とあき子は、負傷して縛られていた克也を発見していたが、その背後には岩田率いる愚連隊が近づいていた。 笠原邸にやって来た宇野は、電鉄が近々通る事を知ったあなたは、バス会社の社員たちに退職金を払うのが嫌で、富永にバス会社を売ったのだとこれまでの調査で判明した事実を突きつける。 一方、愚連隊に襲われかけた由美子とあき子だったが、そこに警官隊が乗り込んで来る。 あき子は克也に抱きつき、それを見守る由美子は、兄さん、二度とその手を離さないでと頼む。 笠原邸には、飯沼と独立美人隊の面々も集結していた。 宇野はさらに笠原を追求していた。 あなたが知らない間に、土地を手に入れた富永は値段が上がるのを待ち、それを東京の不動産屋に売り、それで手に入れた大金があなたの元に入ったはずで、すでに登記所で調べましたと言うと、さすがに笠原も驚いたようだった。 その場にいた富永は、特に悪びれた風もなく、売り払っちゃったよ。土地のブローカーが土地で儲けても当たり前と言って笑う。 すると、笠原の方も笑い出し、あの程度の金など何ともない、それよりも君が岩田らにやらした事を警察に知らせたらどうする?と富永に迫る。 その時、刑事(菅原文太)を先頭に、克也を連れて警官隊が笠原の元に乗り込んで来る。 富永たかし、公正証書原本不実記載で逮捕しますと刑事は逮捕状を差し出す。 その時、その場にいた竹村保夫は、刑事に向かい、私はこの人に助けられましたと克也を指差す。 宇野は笠原に対し、あなたも道義的責任を感じて考えを改めませんか?と勧めるが、笠原は聞く耳を持たない様子。 そこにやって来た妻の洋子が、英彦が家出をしてしまったと言いに来る。 英彦は1人、パパのバカ!と言いながら、海辺の岩場にいた。 学校に行けばいじめられるし、家に帰れば叱られるし…と英彦の不遇を嘆く洋子は、その場にいた全員に、どうぞ探して下さいと頭を下げる。 それを聞いた田代委員長は、僕たち全員で探しに行こうと言い出し、美人隊も加わって、外に飛び出して行く。 克也も行くと言うので、飯沼医師は、うちに寄って手当てしてから行けと言う。 そして笠原に向かった飯沼医師は、笠原君をまだ許したわけじゃないぞ。一時休戦だ。人の命には変えられないからな。今頃、英彦君は崖っぷちで泣いてるかもしれんと伝える。 その頃、病院で留守番をしていた中野看護婦は、治療室で遊び回っていた次郎と英彦を発見して、早く帰りなさいと叱りつけていた。 しかし英彦は、帰らないよ。パパなんて大嫌いだからと言うことを聞かない。 そこに、克也と由美子たちがやって来て、英彦が無事だった事を知る。 その直後、笠原家の電話が鳴り、それに出た洋子は、英彦は病院で見つかったが、帰るのが嫌だと言っていると聞かされ、恐縮しながらも、ぜひ連れ戻して下さいと頼む。 その電話でほっとした様子の笠原に対し、その場に残っていた飯沼医師は、40年以上前を思い出さないか?俺とお前と克也の父親は、小学校で机を並べていた…と話し始める。 級長をしていたのは克也の父で、俺は腕力が強かった。お前は勉強もできず力もなかったが、その後、この町一番の金持ちになった… しかし、俺たち2人はお前をうらやんだ事はなかった…と飯沼医師は続ける。 人生の幸せに触れる事こそが生き甲斐なのだと飯沼医師は言う。 飯村医院にいた克也は英彦に、お兄ちゃんも昔家出して、いけない人間になってしまったと話しかけていた。 そこに美人隊もやって来る。 笠原家では、出世したって金持ちになったって、心貧しければ…と飯沼医師は話し続けていたが、じっと聞いていた笠原は、俺は俺の生き方だ!と抵抗したので、もういっぺん殴られたいか!小学校時代みたいに!と飯村医師は怒鳴りつける。 その時、英彦をおんぶした克也と美人隊が歌を歌いながら戻って来る。 しかし、部屋に入ってきた英彦は父親に近寄ろうとはしなかったので、抱きしめようと手を広げて待っていた笠原は呆然と立ち尽くす。 それを観ていた宇野は、坊やは本当に喜んで帰って来たのでしょうか?と笠原に訴える。 これで分からんなら、昔のようにお前は弱虫で、落第坊主だ!と言い切る。 やがて、笠原交通は東洋バスと合併し、発展解消と言う形で「東洋バスKK 笠原営業所」と言う名前に変更になる。 田代委員長が、組合員たちの前で新しい会社で頑張ろう!と演説をしていた。 その会社のバスの運転手になっていた克也は、あき子と共にバスに乗り込もうとしていたが、竹村運転のバスに乗っていた由美子は、伊東廻りでしょう?お母さんを見舞ってねと兄の克也に話しかけ、あき子に対しては、行く末永く、お兄さんの事を頼むわと頼んでいた。 やがて、南伊豆電鉄が開通し、その祝賀パレードが始まる。 「おしどり」の定男と冬子夫婦も見物に来ていた。 宇野は、鼓笛隊の女性たちを熱心にカメラに収めていたが、それを観ていたひろ子は焼きもちを焼き、仕事をしているんだと言う宇野に、さっきから撮ってるの、女の子ばかりじゃない!もう絶好よ!と叱りつけていた。 見物客の中にいた美人隊に近づいて来た千代菊やさくらは、宇野を連れて帰ろうとしているひろ子の姿を目撃する。 さくらは、これで美人隊も解散ねと笑い、人にはそれぞれの生き方があるのよねと言いながらその場から歩き始めた千代菊は、少し寂しそうな表情で歌い始めるのだった。 |
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