TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

暗黒街最大の決斗

ポスターなどから想像すると、鶴田浩二や健さんや辰兄ぃらが活躍する派手なアクション映画に思えるが、内容はかなり違っている。

一見ヤクザ映画風にも見えるが、まだこの時代はヤクザを時代遅れの過去の遺物風に描いており、どちらかと言うと、愚連隊と言う新しい組織が台頭して来る様子を中心に描いている。

今の感覚で言うと、愚連隊とヤクザの区別ははっきりしないし、賭場を収入源にしている所など、本質は同じなのではないかとさえ思えるが、どうやらこの作品で描かれている愚連隊と言うのは、世界を牛耳っているアメリカの秘密組織と繋がっている、多分に空想的な悪の組織である。

言わば「日本を含む世界征服を狙う悪の組織」対ヤクザとでも言う、かなり荒唐無稽に近い図式が描かれているのだ。

ヤクザの方も、13の組の親分が組織する「睦会」なる幹部組織の元に全国の組組織が集まっていると言う、こちらもかなり空想的な形になっている。

では、子供向けなのか?と言うとそうでもなく、非現実的ながらも、一応まじめに描いた作品にはなっている。

主人公である鶴田浩二は、そのどちらにも参加したがらない堅気と言う立場で描かれているし、高倉健や梅宮辰夫はヤクザの家に生まれたばかりに、自分の意志とは裏腹に跡を継がされる哀れな立場として描かれているため、こちらも心情的にはかなり堅気に近い存在であり、そうしたことから、この作品に健さんや鶴田浩二の大活躍を期待しても無理と言うことが分かる。

特にこの時代の健さんや辰兄ぃは新人の立場なので、あまり活躍する場がない。

さらに、この作品を奇妙に感じさせるのは、愚連隊を束ねようとしている大木実演ずる三鬼譲二なる存在の特異性である。

彼も又、いわゆる悪役風には描かれていない。

ビジネスに熱心で、新しい感性で古い体質をぶっつぶそうとする若者のような性格として描かれている。

この作品で、はっきり悪役風に描かれているのは安部徹演ずる郷田だけだ。

この敵対する二大勢力のキャラクターのアンバランスさが、対決ものとしての図式を曖昧にしているため、後半のアクションが何となく奇妙に思えるのではないかと思う。

ラストなどを見ると、この作品の主人公は、実は大木実だったのではないかとさえ思ってしまう。

巨大で古い体制に、知恵とチャレンジ精神だけでぶつかり破滅するヒーロー…

それに対し、鶴田浩二は、単なる傍観者ではないのか?

単純な対決ものとしての形になっていないため、観客は誰に感情移入すれば良いのかと惑いながら観て行くしかない。

その観客の立場の代表として、この鶴田浩二演ずるキャラクターは存在しているような気がする。

彼は、激突しあい、共に滅んで行った悪の二大組織の傍観者なのだ。

そういう風に考えると、この映画は、怪獣対決ものに近いのかも知れない。

怪獣は、どっちが悪とか善とかの区別はあまりない存在である。

ただ戦うべくして戦っただけ。

それを見守るしかすべがない科学者の立場が鶴田浩二なのである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、東映、井上梅次脚本+監督作品。

トランペットやトロンボーン、ドラムなどのバンド楽器のアップ

キャストロールの背後には、クラブに乗り込んで来た老松組7代目松岡辰男(薄田研二)ら睦会のヤクザの姿

ダンサーが踊っているフロアにずけずけと踏み込んだ彼らが、社長に会わせろと凄んだので、店の従業員は、慌てて彼らを地下でカジノを開いていた三鬼譲二(大木実)の元に案内する。

お前たちのお陰でヤクザも上がったりだ。今日は賭場をぶっ壊しに来た!と、睦会の一員である巽鶴吉(植村謙二郎)が脅すが、三鬼は動じようともせず、ヤクザなんて俺たちの世界じゃ通用しないぜと冷笑する。

俺たち睦会を相手にすると言うことは、日本中のヤクザを敵に回すことになるぜと鶴吉が凄んでも、三鬼は、俺たち愚連隊が相手になろうじゃないか!と言い出し、松岡がドスをルーレット台に突き立てると、負けじとナイフをその横に突き立ててみせる。

タイトル

ニューヨークの一室に集まった各地の国際賭博組織のメンバーたちは、日本のジョージ・三鬼から連絡があり、日本の賭場を自分たちに独占させるので、金を送って欲しいと連絡を寄越してきた。監視員役として誰を送ろうか?と話し合いをしていた。

日本に向かう旅客機の中

その旅客機に乗っていたリチャードソン神父(エド・キーン)は、隣に座っていた日本人大平健一(鶴田浩二)に、何しに日本に行くのかと話しかけていた。

自分はアメリカを渡り歩いていたが、その時知り合った友人が、今日本で成功したらしいので、その手伝いに行く所だと健一は答える。

さらに健一は、持っていたトランプを取り出すと広げてみせ、俺は胴元の使用人さと言いながら、数字を変えてみせるマジックを披露すると、これを使って生活しているのですと言う。

羽田空港では、記者らしき2人組が、到着した健一を写真に収めていた。

税関では、重要人物と書類が届いていたので、敬一の荷物をとりわけ念入りに調べるが、トランクの中に入っていたのは大量のトランプだけだった。

商売道具さと説明し、何とか税関をパスした健一の前に現れたのは、サングラスに白いスーツ姿の男だったので、親友の三鬼かと思い込み笑顔で近づくが、サングラスを取ると別人で、自分は三鬼の代理の石神(室田日出男)と言うもので、あんたが分かりやすいように、社長と同じ格好をして来たのだと説明する。

その時、先ほどのリチャーソン神父が、ペテンはいけませんよと健一に笑って忠告しながら通り過ぎて行く。

先ほど、健一の写真を撮っていた2人組は、実は刑事で、その場から警視庁外事課課長の島警部(久保比佐志)に電話を入れる。

島刑事は、三鬼に接触しようとしているのは怪しいので、健一の身元を洗ってみろと指示を出す。

車で移動中、三鬼はショーや映画など興行全般をやっていると説明する石神に、何かヤバいことでもやっているのか?さっきからあの車に付けられていると健一は教える。

その直後、信号待ちしていた健一の車に横付けして来た車の中から、石神は狙撃される。

その頃、三鬼は、全国の愚連隊のボスたちを集め、俺には50万ドル入って来るので、それを使ってあんたたちは好きなようにやって欲しいと持ちかけていた。

50万ドルと言えば、日本円にして約2億だと言う。(当時のレートで)

賭場を開いたり、場外馬券や相撲の賭けなどを組織化して、古いヤクザたちと勢力争いするんだ!と意気込む三鬼の計画に、愚連隊連中は乗り気になる。

そこに、石神が撃たれた!と言う知らせが届いたので、三鬼は老松の野郎!と叫ぶ。

石神はその服装から自分と間違われたに違いなく、やらせたのは、昨日死んだばかりの睦会の代表、老松組7代目松岡辰男の子分だと直感したからだった。

7代目の供養って訳だな…と三鬼は呟く。

その頃、老松組では7代目松岡辰男の葬儀が盛大に執り行われていた。

集まった客たちは、ヤクザ組織を束ねる12人の睦会の前に集結した全国のヤクザの親分衆だった。

その席で、巽鶴吉は睦会を代表して、7代目の息子松岡真平(高倉健)を、関東老松組の8代目にしたいと挨拶をする。

老松組は徳川の時代から続く名門だし、睦会全員の推挙もあるし、俺の兄弟分でもあると説明していたが、その発言中、異議を唱えるものがいた。

郷田造(安部徹)であった。

13人の大親分が集まる睦会だが、上の話し合いだけで若い8代目がなるのは納得いかない。東京では俺の方が羽振りが良いぜと言い出す。

それを聞いた真平が、私に力がないと言うんですか?と聞くと、あんたは大学を出たインテリらしいが、世の中、力だよ。8代目はどんな力があるんだ?力を見せろ!今問題になっているのは三鬼のことだ。8代目がそのけりをつけてくれるんなら、俺は何も言わねえぜ…と郷田は冷笑する。

この話は任せてもらおうと真平は受けるが、今、三鬼の子分が撃たれたってよ。撃ったのは老松組だと言ってるぜと郷田は教える。

その頃、石神狙撃事件の参考人として、健一も刑事たちに取り調べられていた。

刑事たちは、誰かの命令で来たんだろう?と健一に詰め寄っていたが、何の確証も得られない中、三鬼の別当(安藤三男)が迎えが来ていると知らせられる。

健一が出て行くと、FBIから連絡があった男ですな。外事課と保安課が協力して捜査に当たりましょう。あのシャッターが3分いないで開けられるかどうかだ…と、保安課の市川警部(南廣)は発言する。

老松の7代目を秀吉に例えると、8代目は秀頼、郷田が家康だなどと、刑事たちは今のヤクザの状況を分析していた。

そんな噂をされていた8代目真平は、老松組の自宅の中で、どうして俺はこんな家に生まれたのかな〜…と独り言を言っていた。

そんな真平を慰めていたのは、巽鶴吉の娘美弥子(佐久間良子)だった。

鶴吉の息子好吉(梅宮辰夫)も、ヤクザだって立派に事業をやっている人だっているじゃないかと声をかけて来る。

しかし、真平は、鶴吉に対し、叔父貴すまねえ。俺は一生結婚しないよ。子供にこんなこと継がせたくないんだ。9代目になるのは赤の他人だと言い残してその場を立ち去る。

そんな真平を見送った美弥子は、真平さんは、まだ死んだ姉さんの事が忘れられないのね…と同情する。

その頃、三鬼のクラブにやって来た健一は、そこにいた雪村ルミ(久保菜穂子)を見るなり、良く似ているなぁと呟く。

それを聞いたルミは、昔の恋人にでしょう?社長から聞いているわと答える。

その頃、地下にいた三鬼は、アメリカからやって来た3人の監視人たちに、このクラブの権利書と白紙委任状を渡していた。

その監視員の1人は、健一と一緒に来日したリチャードソンだったが、10万ドルで権利書を預かったと答える。

地下に連れて来られた真平は、その場にいた3人の外国人、ピエール(ハンス・ホルネス)、チャン(春日俊二)に紹介されるが、リチャードンの顔を見るなり驚いたようだったので、リチャードソンは、ペテンはいけないと言ったでしょう?と笑いながらその場を立ち去る。

その後、健一は旧友の三鬼と再会を喜びあうが、三鬼は、50億ドルあるので、これで日本中に賭場組織を作るつもりだと計画を明かす。

その後、健一はルミと一緒にダンスを踊っていたが、そんな中、クラブの三鬼社長に会いに来たのは真平だった。

真平と会った三鬼は、お前は鉛を撃って来たな?と石神襲撃のことを責めて来るが、真平は俺たちじゃないぜと否定する。

そこに、健一もやって来るが、三鬼は真平に、石神をやった奴を差し出してくれ。ピストル向けた奴を連れて来い。当分の間、待ってやるよと伝え、真平はその場は黙って帰って行く。

そんな真平の後ろ姿を見送った三鬼は、力もないのに8代目任されて…。今に、ヤクザを根こそぎぶっつぶしてやる!と吐き出す。

そんな三鬼に、俺は正直、お前の仕事を聞いて帰ろうと思った。ヤバい仕事はやりたくないんだ。だが俺もヤクザは嫌いだ。手伝うぜと伝え、それを聞いた三鬼も、暴れようぜと笑う。

翌日、7代目の墓に手を合わせに来ていた健一は、美弥子がやって来たのに気づき、美弥ちゃんか、大きくなったねと声をかける。

美弥子の方も、健一を見つけると驚いて、いつ帰って来たの?と聞くと、真平さん喜ぶわと言うが、健一とは昨日会ったよ。俺は三鬼の友達でね。その友達が撃たれたと教える。

すると、美弥子は、撃ったのは郷田よ。証拠がないから手は出せないけど…と言う。

健一は、老松と言う家が富士子さんを殺したんだ!と憎しみを込めて言うので、それじゃあ、あんまり真平さんが可愛そうよと美弥子は諭そうとするが、健一は黙って立ち去って行く。

その後、盛り場に向かった健一は、ギャンブル荒らしをしていた郷田組のチンピラ河合(曽根晴美)ら2人の前に立ち塞がると、10万円を出して話が聞きたいと持ちかける。

しかし、それを無視して別の店で飲み始めた河合たちだったが、店を出ると又健一が待ち構えていたので、やるってのか?と凄むと健一は素直に頷いて、人気のない場所に連れ込むと、2人を殴りつける。

河合が銃を取り出すと、その銃を奪い取り、このハジキで石神撃ったんだな?依頼人は郷田か?と詰め寄る。

その後、「老松」の自宅玄関に、痛めつけられた河合とハジキが投げ込まれる。

それを観た真平は、郷田組の河合だ。締めて吐かせろと命じる。

翌日、河合とハジキを持った真平は、三鬼に会いに行く。

郷田だと真平は教え、河合を殺そうと意気込む相手に、連れて来るとは言ったが、処分すると入ってなかったと伝える。

そこに、あらかじめ、真平が呼んでいたらしい捜査4課の田辺警部(伊沢一郎)がやって来たので、連れてって下さい、銃をありますと差し出す。

河合が連れて行かれると、真平は三鬼に、これで私とは仲良くやってくれるな?と頼むと、三鬼も、段々、お前が気に入って来たぜと答え、それを聞いた真平は帰って行く。

しかし、それを見送った三鬼は、俺は黙っちゃいないぞと郷田への復讐を誓う。

健一が泊まっていたホテルの部屋に来ていたルミは、健一が肌身離さず持っていた、かつての恋人の写真を見ていた。

そこに真平がやって来たので、健一はルミに座を外させる。

よくここが分かったなと健一が言うと、あちこちでここを聞いて来たと答えた真平は、夕べのことだが、余計なことだぜ。礼だけは言っとく。あんたが三鬼の友達だったとは…と言う。

真平がさらに、勝手だな。富士子さん、殺されると家を出て行って…と責めると、お前は富士子に惚れてたと健一も真平を睨む。

俺はあんたが憎いと真平も睨みながら、俺もあの家を飛び出したかった。日本も飛び出し、ダムや橋など作りたいと思い、大学の工科目指していたんだと過去を振り返る。

健一は、大事なのは、1人1人の幸せだ。ヤクザは仁義と言う嘘っぱちな看板をしょっているだけだと言うと、真平は、俺たちはお互い敵同士だなと答える。

健一も、富士子を張り合った時からな…と健一も答える。

あんたが帰っていることは美弥子には口止めしておく。巽の隠居に聞こえると辛いからな…と言い残し帰って行く。

その後、健一は、三鬼のクラブの地下の賭場で、カードのディーラー役をやっていた。

その時、クラブの方に郷田が来ていると従業員が伝えに来たので、三鬼は会いに行く。

カンター席で飲んでいた郷田は、やって来た三鬼に、あいつは大分前に破門してた奴なんだ。売り出そうと思って勝手にやったに違いないと、河合のことを言い訳すると、その詫びとして良い話を持って来てやった。お前の商売に、俺の縄張りを貸そうと言い出す。

分け前は?と三鬼が聞くと、50:50だと答えた郷田だったが、三鬼は、それでは受けられない、こちらが5%くらい多くもらうと答える。

それでも郷田は、やってるんだろう?遊ばせてくれよと賭場のことを聞いて来る。

そんな2人の会話を、近くのボックス席に客を装って占有していた刑事が聞いていた。

地下の賭場にやって来た郷田は、ディーラーをやっていた健一を見るなり、怪訝そうな表情になり、三鬼に名前を尋ねる。

その健一は、カードの相手をしていた外国人がインチキをやったのを見抜き追い払う。

そんな健一に郷田は、お前さんとどっかで会った気がするぜと話しかけ、その顔つきじゃ、敵らしいな…と苦笑する。

潜入していた刑事から、郷田が地下の賭場に向かったと連絡を受けた市川警部は、1分後に飛び込むと指示を出すと、何分でシャッターが破れるか?それが勝負だ!と意気込む。

その直後、クラブになだれ込んだ捜査陣は、手入れを知って降ろされたシャッターをバーナーで焼き切って、入口を確保しようとし始める。

1枚目のシャッターは何とか焼き切り、次のシャッターへ。

しかし、3枚目のシャッターを焼き切り、地下に潜り込んだ市川警部が目にしたのは、大きなバースディケーキを前に、ハッピバースディを歌っている客たちの姿だった。

市川警部を観た三鬼は、今、私の誕生会をやっていた所ですなどとうそぶくが、君の誕生会は年に2回もやるのか?と皮肉で返した市川警部は、ここにあるルーレットなどのギャンブル用具は何だと聞く。

すると、それはゲストたちへのサービスだと三鬼が答え、確かに賞品も飾られていたので、市川警部は郷田に何をしていた?と迫る。

郷田は、市川警部と三鬼の顔を見比べながら、にやにやと何か考えている様子だったが、答えてやろうか?三鬼の言う通り、誕生会をやっていたのさと答える。

今日も、賭場の証拠や証言を得られなかったと察した市川警部は、上のクラブの営業時間は11時までのはずだが、今は1時半、風俗取締法違反だとだけ言い残して帰って行く。

郷田は三鬼に、これで借りは返したぜ。商売の取り分も元の50:50だと伝える。

三鬼は、もっと大きな商売がしたい。もう10万ドル出してくれと、監視員役のリチャードソンに頼む。

熱海

地元で賭場を開いた地元やくざたちは、さっぱり客が集まらないので、その原因を子分らに当たらせていた。

東京から三鬼が乗り込んで来たと言う噂があったからだった。

その三鬼は、海に浮かんだクルーザーの中で賭場を開いていた。

三鬼は、招待してその船にやって来た柴木(秋山敏)、堂島(植田貞光)、白石(久地明)ら、清水、静岡、浜松、名古屋の愚連隊仲間にリチャードソンを紹介する。

そして三鬼は、みんな俺と組まねえか?あんたらが用意するのは土地と客だけだ。日に100万は入るぜと持ちかける。

愚連隊連中は、その2割が懐に入るとしても1日20万か…と、悪くない申し出であることに気づく。

その後、この清水、静岡、浜松、名古屋地区での荒稼ぎで、半月で稼ぎは1000万にもなった。

商売が成功し、上機嫌な三鬼は、ルミと健一と同じ車で移動しながら、世の中マネーよ、マネーで、奴らを潰すのさと笑う。

一方、真平も出席した睦会の集会では、日に100万は上がるらしいとの三鬼の商売のことが話し合われていた。

出席していた親分の1人坂巻五郎(神田隆)は、東京もだらしがないぜ、東海中京地区代表としては我慢できんと息巻き、8代目の話では、三鬼とは丸く収めたんじゃなかったのかい?と文句を言って来る。

健一は、きっと話をつけますと約束するしかなかった。

しかし、自宅に戻ると、三鬼に電話連絡をつけようとしていた好吉が、いつも居留守ばかり使いやがって!といら立っていた。

子分らによると、三鬼の住まいは、誰も知らないとのことだった。

その時、三鬼はプールにいるとの情報が子分によってもたらされる。

鶴吉は息子の好吉に、お前が直接聞いて来いと指示を出す。

覚悟を決めた好吉は、タンスの引き出しから拳銃を取り出すと、出かけようとしていたので、妹の美弥子は、どうしたの?兄さんと問いかける。

鶴吉は、そんな好吉に、老松のためだ、死んで来いと言い渡し送り出す。

子供時代から兄弟同然に一緒に暮らして来た真平は、こーちゃん…と呼びかけるが、叔父の鶴吉は、もう子供じゃあるめえ、このくらいの使いが出来ないようじゃ…と真平に言い聞かせる。

プールサイドのチェアに寝そべっていた健一は、側に立って護衛役をしていた石神に、もう大丈夫か?と聞いていた。

右手を撃たれていた石神は、最近は左手で撃つ練習をしているなどと答えていたが、そこにプールから上がって来た三鬼が合流し、健一の横のチェアに寝そべる。

その三鬼に健一は、お前とアメリカを歩いていた頃が懐かしいな…と話しかけ、一緒にいたルミも、ジョージ、私も何だか心配だわ…と、最近の商売の危うさを指摘する。

そこに、好吉がやって来て、スーツの下の拳銃を取り出そうとするが、それに気づいた健一が、待て!好吉!と呼びかけ、健一の存在に驚いて、一瞬、好吉が躊躇した瞬間、周囲に控えていた子分らが一斉に銃弾を浴びせかける。

撃たれた好吉は、そのままプールに落ちる。

老松の家に運び込まれた好吉の遺体を前に、鶴吉は、好吉も悔しかったろう。健坊が8代目の兄貴だったんだから…と嘆き、美弥子も、私が悪かったんです!と泣き伏せる。

その時、玄関に変な奴が来ていると子分が知らせに来る。

鶴吉が出てみると、そこに立っていたのは健一だった。

健坊!と鶴吉が驚くと、叔父貴すまねえ、好吉が飛んだことになってしまってと頭を下げる。

言うな!諦めているんだ…と答えた鶴吉に、拝ませてくれるかい?この敷居はまたぎたくなかったんだが…と健一は頼む。

好吉の遺体の前に来た健一に向かい、真平は、良かったな。あんたのお陰で三鬼は助かったそうじゃないか?と皮肉を言う。

あんたと俺と好吉は、この家で育った。その柱に3人の背比べの傷跡も残っているぜと責める真平。

鶴吉は、頼む!健坊、老松に戻って来てくれ。このままでは真平が可哀想だと頭を下げる。

しかし、健一は、俺は親爺が嫌いだった。富士子と一緒になりたかった。あんたを親爺と思っている。俺は真平を可哀想と思ってるんだ。真平!みんな!こんな腐った家の犠牲になるなよ。その考えが富士子を殺したんだ。このままでは御時世に取り残されるだけなのがヤクザじゃねえか?と言い残し帰りがけについてきた美弥子には、あんたのおふくろも苦労したはずだ、ヤクザの嫁に来たばっかりに…と向かって言う。

真平さんもそう言っていたわと美弥子が教えると、なんてことだ…と驚いた様子の健一は、美弥ちゃん、真平と一緒にこんな家を飛び出すんだと言い残して帰って行く。

クラブに戻って来た健一は、カウンターで1人座っていたルミと一緒に飲み始める。

ルミは、つい好奇心から、富士子さんってどうして亡くなったの?と聞いてみる。

7、8年前になるが、郷田があくどいやり方でのし上がって来たので、親爺は郷田を懐柔しようと、富士子と結婚させようと計画し、巽の叔父貴に頼み込んだんだ。

その結果、富士子は河に身投げして死んでしまった。それをきっかけに、俺はアメリカに行って帰って来なかった…と健一は教える。

そこに、三鬼が帰って来て、サツではお前が老松の長男だと知って驚いていたぜと健一に笑いかける。

健一は、俺はアメリカに帰るぜ、一緒に行かねえか?と誘うが、三鬼は別れの乾杯をしようと言う。

健一はそんな三鬼に、これが最後の忠告だ、今の仕事から手を引けと言うと、友情だけは頂いとくぜと答えた三鬼はグラスを差し上げ、連れて行っても良いぜとルミの事を見る。

しかし、帰りかけた健一は、お前に惚れてるよ、大事にしてやれと言い残す。

木場で河に浮かんだ材木をじっと見つめて考え事をしていた鶴吉は、郷田が沢源と一緒に焼香に来ていると呼びにやって来た美弥子に、この前の健坊の言葉身にしみたぜ。ヤクザは流されて行く。しかし、俺は捨てられないんだ、老松を…と言いながら自宅に向かう。

そこでは、ちょうど、郷田が好吉の霊前に焼香をしている所だった。

郷田は帰って来た鶴吉に、飛んだことだったな、1人息子を亡くして…とわざとらしく悔やみを言い、一戦争するなら手伝うぜと声をかける。

しかし、鶴吉は、俺はやらない。8代目の気持ちが分かって来たんだと答える。

沢源は、そんな鶴吉に、三鬼のことは郷田に任せるんだと忠告するが、鶴吉は、もう1日待ってもらいたい。俺が三鬼と話し合いたいと頼む。

敵討ちか?と郷田があざ笑うと、俺はお前のような今時の駆け出しとは違うんだ!と鶴吉は怒鳴り返すと、けりだけはつけて来ると言うと、霊前に焼香して合掌しながら拝む。

河を見つめていた美弥子は、1人出かけて行く父親の姿を観たので、お父さん、どこに行くの?と問いかけるが、鶴吉は、美弥子、若を頼んだぞと言い残して立ち去って行く。

父親の態度に異変を感じ取った美弥子は、近くの公衆電話からホテルにいた健一に電話を入れ、父親がドスを持って三鬼をやりに行った。死ぬ気かも知れないと知らせる。

すぐさま健一は三鬼に電話し、巽の隠居がそちらに行く。頼む!俺の親爺みたいな奴なんだ。殺さないでくれと頼む。

それを聞いた三鬼が、ハジキは持ってないだろうな?と聞くと、古いヤクザだ、そんなものは持ってるはずないだろうと健一は答え、叔父貴が殺されたら、今度は俺がやるぜ!と釘を刺す。

電話を切った三鬼は、健一の言葉に従い、部下たちに、殺すなと命令していたが、今度は郷田から電話が入り、巽の奴がそっちに向かったが、息子の敵討ちをしに行くんだ、ハジキを持ってるに決まってるだろうと忠告する。

電話を切った郷田は、にやりと笑う。

三鬼の方は、今、下に老いぼれが到着したと聞くと判断に迷い、みんな、ハジキを持っているかも知れねえと部下たちに伝える。

その直後、社長室にやって来た鶴吉は、俺は倅のことで来たんじゃない。ヤクザの根性を見せてやりてえんだ!と言うなり、懐に手を入れ、ドスを抜こうとするが、銃を持っていると警戒していた子分たちは一斉に鶴吉に発砲する。

鶴吉は銃を持っていなかった。

そこに駆けつけて来た健一は、倒れた鶴吉に抱きつくと、ジョージ、貴様…!と睨みつける。

鶴吉は、もう虫の息だったが、健坊、これで良いんだ。俺はここで死ぬつもりだった…。俺が死ねば、若の好きなようにやれると思い、咽を突くつもりだったんだ。若を頼んだぜ…と言うなり息絶える。

三鬼は、すまん!郷田の奴からまんまと騙されたんだと詫びるが、俺より郷田の言葉を信じるのか?と睨みつけた健一は、そこにやって来て三鬼に飛びかかろうとした真平を押さえつける。

外ではパトカーのサイレンが近づいている中、健一は三鬼に、これで俺たちは仇同士になったんだと言いながら新平と共に帰って行く。

その後、パシフィック興行の三鬼社長が姿を消したと言う報道が出る。

郷田は、三鬼の残したクラブで、3人の監視役たちに会うと、20万ドルを三鬼に持ち逃げされたんだって?とおかしそうに聞く。

その後、睦会に出席した郷田は、もうあの場所は俺たちのものだと報告したので、親分衆は、郷田を睦会に推薦したいと言い出す。

そこへやって来たのが、健一と真平で、真平は、会長さん、私、足を洗わせて頂きます。ヤクザを廃業します。老松の縄張りはくれてやると申し出る。

しかし、それを聞いた郷田は、名門を廃業にされたんじゃ、俺たちの沽券に関わる。ヤクザを止めたければ、三鬼をやれ!と迫る。

それを聞いていた健一は、お前らしいな…と郷田を見つめる。

その頃、「正和館」と言う映画館に入って来た1人の客を装った別当が、売店の裏側から隠し扉を開けて、背後にあった秘密の部屋に入ると、そこに隠れていた三鬼と会っていた。

三鬼は別当に、名古屋で堂島たちを連れて来いと命じる。

一方、健一はルミのアパートにやって来ていた。

ルミは、考えたの、あなたと一緒にアメリカに行くか、ここに残るか…と言う。

俺は奴が憎いと健一が呟くと、みんな噂しているわ。あんたが隠居の敵討ちをするために、ジョージを付けねらっているって…とルミは教える。

その時、電話が鳴り、受話器を取ったルミは、相手が三鬼だと知ると、健一なら今、ここに来ているわと教え、受話器を健一に渡す。

健一は、俺は恨みを忘れたいんだ。自首しろと三鬼に話しかける。

しかし、三鬼は、俺に近づくな!お前と弟が郷田と組んだら撃つぜ。俺は郷田をやっつけると言って電話を切ってしまう。

ルミは、あの人を助けられるのはあなたしかいないわ!と健一にすがりついて来る。

警視庁では、市川警部がクラブの名義が郷田になったと報告していた。

近隣の愚連隊に、500万出すから手伝えと言う指令が飛び回っているとの情報もあったので、徹底的にやるか?と刑事たちは意気込む。

江東(水城昌人)、門前(八名信夫)、花山(日尾孝司)ら愚連隊の助っ人たちを前にした三鬼は、クラブはお前たちにやる。俺は郷田をやりたいんだ。成功したら俺は香港へ飛ぶ。300万の前金だと言って札束を握らせて、クラブ襲撃の手はずを決める。

郷田が手にしたクラブは、新装開店パーティを開いていた。

オーナーになった郷田は、ゲストとして招かれていた睦会の親分衆と握手する。

健一もやって来たので、郷田はちょっと驚くが、俺がやる前に、三鬼がお前をやりに来るそうだぜと健一は伝える。

そんな健一と再会したリチャードソンは、あなた、仲間に入りませんか?と勧める。

その時、花山と門前が来たとの知らせがある。

2人は、花飾りを中に飾らせて欲しいと持って来ており、中へ入る許可をもらうと、その花飾りをステージの横に置かせてもらう。

さらに、真平もやって来て、ルミを連れた健一に会うと、兄さん迎えに来た。何が起こるか分からんと警告する。

その時、クラブの表で、打ち合わせ通り、愚連隊の若い衆が騒ぎ出す。

その騒ぎに郷田組が注意を引きつけられている間に、三鬼たちは、クラブの裏側から店の中に侵入していた。

クラブの周辺で監視を続けていた市川警部は表の愚連隊たちはすぐに姿を消してしまったと報告を受ける。

店の中にいた健一は、これは罠だ。郷田の奴、ジョージを待っているんだと気づく。

その時、その郷田自身が挨拶を始め、妙な噂があって、命知らずの連中が乗り込んで来るなどと言うが、みんなで追い返そうじゃないですか!などと、冗談めかしてストたちに呼びかけていた。

挨拶がすむと、回転ステージが廻り、バンドが姿を現すが、その中央に立って銃を構えていたのは三鬼だった。

バンドのメンバーたちもみんな銃を構えていた。

しかし、それを見た郷田は、待っていたんだと言うと、二階席にずらりと銃を持った子分たちが姿を現す。

待ち伏せされていたと気づいた三鬼側の1人は、俺は騙されていたんだと言って郷田の方に寝返る。

しかし、三鬼は、撃てるもんなら撃ってみろと言いながら、上着を広げてみせると、腹には大量のダイナマイトが巻かれていた。

それを横から見守っていた健一は、この勝負は引き分けだ。ジョージ、引いてくれ!と言いながら両者を仲裁しようとする。

しかし、三鬼は、俺は意地でやっているんだ!と言うことを聞こうとしない。

郷田はそんな三鬼に、サツが取り巻いているぜ、銃を捨てろ、ワン、ツー、スリーとカウントを始めると忠告する。

そんな中、ルミは、ステージ脇のスイッチをこっそり入れ、三鬼が立っているステージの中央部分のせりを降ろす。

それに気づいた三鬼は、今度はこっちがカウントするぜ、ワン、ツー、スリー!と言うなり、銃撃を始めると、自分はせりの穴の中に飛び込む。

クラブ内は、たちまち銃撃戦が始まり、外で待機していた助っ人たちも店の中になだれ込む。

それを観ていた市川警部たち警察部隊も、全員、逮捕する!突入!と叫びながらクラブに入り込む。

しかし、又してもシャッターが閉まって来る。

店の中にいた3人の監視人たちも右往左往初め、地下にいた三鬼も、近づいた郷田から腕を撃ち抜かれる。

郷田が三鬼に迫って来たので、床に落ちていた銃を拾ったルミは、それを三鬼に渡すが、郷田がそのルミの背中を撃ち抜く。

次の瞬間、三鬼は、今ルミから受け取った銃で郷田を射殺する。

クラブを相違した警官部隊は、3分以内に出て来ないと、催涙弾を撃ち込むぞ!と内部に呼びかける。

健一は三鬼と対峙していた。

健一は、ジョージ、自首してくれ!と頼むが、三鬼は、嫌だ!俺は最後まで俺のやり方でやる!と良い張る。撃たれて床に倒れていたルミも、止めて…と2人に頼んでいた。

三鬼は、銃を一丁、丸腰だった健一に投げて寄越すと、決闘の形を取ろうとする。

互いに銃を向けあった時、近くにいたリチャードソンが銃を撃とうとしているのに気づいた三鬼は、そのリチャードソンを撃ち、それに気づかなかった健一の方は、まともに三鬼を撃ってしまう。

倒れた三鬼に駆け寄って来た健一に、俺は元々撃つつもりはなかったんだ。このクラブは誰にも渡したくない。そこの通風口から外に出られるから逃げろと三鬼は言うが、健一は、ばかやろう!俺がお前を残して行けるか!と叱る。

しかし、三鬼は、お前の言うことを聞いていたら、長生きしたろうぜと笑う。

横に倒れていたルミも、良いの、私は…とその場に残ることを健一に伝え、それを聞いていた三鬼は、ばかな奴だと言いながらルミを見る。

さあ、行くんだ、健、どうせ、この傷じゃ、助かりっこねえよ。俺のやり方で死なせてくれ。頼む、健!と必死に頼む三鬼の言葉を聞いた健一は、じゃあなジョージ…と言うと、その場から立ち去る。

その時、警官隊がクラブに向け催涙弾を撃ち込む。

健一と真平は、何とか抜け道から外へ出る。

健一は警官隊に、逃げろ!ダイナマイトが爆発するぞ!と叫ぶが、次の瞬間、クラブは大爆発を起こす。

地下室まで全焼した焼跡を地上か見下ろしていた健一は、入っちゃいかんと注意して来た警官を無視して、ばかな奴だ…、墓もない、ばかな死に方する奴さ…と呟く。

それを自分のことを言われたと勘違いした警官は、ちょっと警察へ来いと迫るが、もう行って来たよと答えた健一は、焼け落ちた店の中に向かって、カードのAをばらまくと、そのまま帰って行くのだった。