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暴れ犬

田宮二郎主演のこのシリーズは今回初めて知った。

やはり日本映画はまだまだ知らない映画がたくさんあると言う事だ。

歌手の金井克子がヒロイン役と言うのも珍しい。

当時20歳くらいらしく、「他人の関係」(1973)が大ヒットして一躍有名になるずっと前の作品である。

この映画で歌って踊っている姿を観ると、「他人の関係」と言うのは、わざと「無機質な作り声」で歌っているのが分かる。

実際は、良く通る張りのある歌声である。

踊りが巧い事は前前から知っていたが、この当時から歌唱力も優れていた事が分かる。

失礼ながら、後輩の由美かおるらのように、もう少しルックスが良かったら、もっと早く売れていたのではないかと感じる。

玉子役で出演している坂本スミ子も若い。

一瞬、誰なのか見違えてしまうほどだ。

拳銃アクションが見せ場のシリーズらしいが、今の感覚で驚くほどの見せ場が用意されているわけではない。

むしろ、田宮演じる鴨井大介の、口八丁手八丁の底抜けに明るいキャラクターを楽しむ映画だと思う。

「悪名」でのモートルの貞を独立させたような、大阪弁のとっぽいキャラである。

そこに、ミヤコ蝶々演ずる虎江や芦屋小雁演ずる保っさんなどと言う、コテコテの大阪人キャラが絡んで来る面白さ。

そこに今回は、東宝の草笛光子が謎めいた美女として登場して来る。

ここでの草笛の役所はちょっと微妙な感じで、ものすごく成功していると言う感じではないのが惜しい。

プログラムピクチャーとしての出来はまあまあと言った感じで、特に傑出した面白さと言った感じではないが、十分に楽しめる水準にはなっていると思う。

アクションものにしては敵が分散していると言うか、全体的に小粒な感じを受けるのが、ちょっと弱く感じる一因かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1965年、大映、藤本義一脚本、森一生監督作品。

金がないのに暇があるちゅうのもつらいな。

大阪の西成界隈のストリップ小屋の前に来た一匹狼のヤクザ鴨井大介(田宮二郎)は、受付の差し入れ口の中から金とタバコを一本差し出され受け取りながら、中の女を紹介したいけど、あまりべっぴんやないさかい…と照れ笑いしながら、まあ、じきに忙しゅうなるよって…と言いながら、背後に集まったチンピラたちと殴り合いを始める。

タイトル

射的で遊んでいた大介に、高級クラブの歌手になりたいので、身元保証人になってくれへんか?と頼んだのは店番の玉子(坂本スミ子)だった。

構へんで、現住所はそこの角の「楽々荘」やと教えた大介だったが、スリの保っさん(芦屋小雁)が慌てて駆けつけて来ると、あんた「楽々荘」を追い出されたと言うではないか。

慌てて木賃宿「楽々荘」に駆けつけて、管理人のおばちゃん虎江(ミヤコ蝶々)に何でや?と追い出される理由を聞くが、虎江は、追い出されとうなかったら5日分750円出せと迫る。

1泊100円やから500円やないか?と大介が抗議すると、そこに寝てみろと虎江はベッドを指差す。

訳も分からず、言われた通りにベッドに横になると、足が半分隣のベッドにはみ出してると言うではないか。そのはみ出し賃が1日50円の加算と言う事らしい。

足が長いのはわいのせいちゃうと抗議するが、虎江はのこぎりを持ち出し、いきなり大介の足を切ろうとする。

その時、上段のベッドに寝ていた林吉夫(桂三千秋)と言う男が、俺が払ってやると言いながら1000円札を虎江に渡す。

礼を言いながらも、あんた、病気で働きに行ってないのに、良う金があるな?と大介が聞くと、スケがいるのだと言う。

スケの姿見ないが?と大介が不思議がると、相手は巡業に出ており、滅多に帰って来ないのだと言う。

その林が大介に、これを高く売ってもらえないか?と大介に見せたのはワルサーPPKだった。

3万くらいに売れたら良いのだが…と林は頼む。

早速、故買屋に向かった大介だったが、そこにいた見知らぬ中年男が、鴨井大介はんか?と聞いて来たので、何で俺の名を知ってるんや?と驚くと、同僚の木村刑事から聞いた。自分は土井(大坂志郎)と言うものやと言う。

土井刑事は、これと同じハジキ観たことないか?君はハジキの匂いで現れるそうやな?とワルサーPPKを取り出してみせたので、大介は内心焦るが、自分は相手の手相や人相を観るのが得意なんやと言いながら、大介の身体を触ってきそうになった土井刑事を何とかかわして店の外に出る。

その時、店の前を通り過ぎた目つきの鋭い怪し気な男を目撃する。

「楽々荘」に戻ると、虎江が倒れており、それを介抱していた保っさんが、林が連れて行かれたと言うではないか。

その時、外で銃声が響いたので飛び出すと、林が撃たれて倒れていた。

瀕死の林は、抱き起こそうとした大介に、十条ミュージックの島ミユキと言う名を告げて息絶える。

林のスケと言うのがストリッパーだった事を知った大介は、早速十条ミュージックの楽屋に向かい、当の島ミユキ(金井克子)を見つけ出すと、林が撃たれた事を知らせてやる。

警察の遺体安置所にミユキを連れて行った大介は、監察医(加賀美健一)から、体内から摘出した弾丸から観て、相手は15m以上離れた所から撃ったようだと聞く。

撃った相手は相当な腕前のようだった。

解剖に回される林の痛いに付いて行こうとしたミユキは、解剖なんて観るもんやないと押しとどめた大介にすがりついて泣き始める。

大介は、林には恩がある。1000円どころやない、もっと値打ちもんを遺して行きよった。ミユキちゃん、あんたのことや。林の仇討ったる!と告げる。

そこに現れた土井刑事は、拳銃の密売リストに林の名が載っとると言うので、ミユキはそんなバカな!と驚くが、大介はそのミユキのオーバーを取ると、事情を聞こうとした土井刑事にかぶせて、2人はその場を逃げ出す。

翌日、鉄橋下の河原に保っさんを連れて来た大介は、保っさんの両手の指の間にコインをはめ、ホールドアップのような形で顔の横に上げさせると、自分は10mほど後ろに下がり、電車が通過するときの轟音に紛れて、自分の手製銃リボルバーと林から預かったワルサーPPKの2丁を同時に発射する。

保っさんは固まっていたが、その両手から弾き飛ばされたコインを拾い上げた大介は、PPKの方の弾が貫通した穴の方が、自分が作ったリボルバーの弾の穴より数段大きい事に気づく。

その後、十条ミュージックにやって来た大介は、巡業に出発しかけていた踊子の中にミユキがいなくなっている事に気づき慌てるが、支配人は、北のナイトクラブ「タワー」のユリと言う女がミユキを連れて行って、あんたが面倒見てると言ってたと言うではないか。

さっそく、ナイトクラブ「タワー」に出向いた大介は、注文を取りに来たボーイに、氷の水割りを注文し、それやったらただやろ?と笑う。

しかしボーイは、その席に座っただけでテーブルチャージ料と言うのがいると説明したので、大介は面食らう。

そう勘定、勘定言うな。人間は感情の動物やどなどと冗談でごまかそうとした大介だったが、その時テーブルに座って来たホステスを良く観ると、それは射的場の玉子だった。

歌手として入ろうと思ったが、歌手はいらないと言われたのだと言う。

そこに副支配人大貫五郎 (島田竜三)がやって来て、チャージ料の事を説明し始めたので、玉子は自分が払うと言い出す。

ミユキと言う女が来ていないかと玉子に聞くと、この店では自分がミユキを名乗っており他にはいないと言うので、今朝この店に来た子はいなかったか?と聞くと、そう言えばいたけど、すぐに口説くあんたには教えられないと言う。

大介はその時、近くのテーブルで飲んでいた男の顔に見覚えがある事に気づき、あれは誰や?と聞くと、宍戸組の親分やと言う。

大介が見覚えがあったのは、その横にいる男の方だった。

組長宍戸剛(須賀不二男)に酒を注いでいたホステスが、ミユキを十条ミュージックから連れ出した吹上ユリ(毛利郁子)だと言う。

その後、再び古物商へ行き、大介がPPKを買ってくれないかと持ちかけると、主人はこの銃どこで手に入れた?と聞き、買うかどうかは少し考えたいので、電話番号教えろと言う。

大介はレジスターのボタンを押しながら「楽々荘」の電話番号を教えて帰るが、その直後、古着のコートのポケットの中から銃や弾丸を取り出した主人は、あほんだら!と帰って行った大介に向かって罵倒する。

楽々荘で、保っさんから、ちり紙一枚でも持っていたら現行犯逮捕されると言う話を聞いていた大介に、虎江が電話やでと知らせてくれる。

それは古物商からの電話で、時間と場所を聞いた大介は良っしゃ!と承知する。

ところがその指定された坂道へ行ってみると、待っていたのは、ナイトクラブ「タワー」で宍戸の隣に座っていた男と、宍戸組の子分たちだった。

多勢に無勢、抵抗してもむだだと悟った大介は素直にPPKを放って渡すが、いずれすぐ俺の手に戻ると思うやけど…と言うと、子分たちは大介の足下に銃を撃って来て脅す。

次の瞬間、大介は手製のリボルバーを撃ち、PPKを持っていた子分の腕を撃ち抜くと、PPKはその子分の手から離れ、坂道脇の溝を滑って大介の手元に戻る。

もう戻って来よったと笑う大介に、見覚えのある男は亀田達吉(水原浩一)と名乗り、宍戸組へ入らないかと誘って来る。

しかし、大介は、わいは一匹狼が性に合うてるんやと意い残して去ろうとするが、その背中に銃を向けていた子分は、次の瞬間、振り向いた大介に撃たれ、俺の背中には目付いとるんやからと言われる。

古物商にやって来た大介は、宍戸組に自分を売った礼をするため痛めつけると、銃の弾を貰い受けた後、すまんかったなと謝りながらもう一発腹を殴りつけ気絶させると、その上に、コートに付いていた「新品同様」の札を置いて帰る。

その後、ユリのマンションを訪れた土井刑事に、そこに匿われていたミユキは、林は私と逃げる資金のために銃を手に入れただけで、東京で発病してから、浜松、静岡とずっと気を張って付いて来てくれたんですと大介に説明する。

林はあんたに銃を渡さなかったか?と帰り際の土井刑事が聞くと、私が持っていたら自殺しますとミユキは答える。

土井が帰るのと入れ違いに来たのは、ユリのマネージャー立花浩介(伊達三郎)だった。

立花は、ミユキのアパートを探して来た。ここにいたんじゃ、亀田の旦那も来にくいだろうからなと言うので、それを聞いたユリは、私は人形じゃないわよ!と怒ると、人形じゃない、生身の人間だから、宍戸さんが亀田さんに渡したんだろ?と立花は冷めた表情で答える。

「楽々荘」の大介は、ミユキからの手紙を呼んでいた。

金も同封してあり、今、自分は青草荘にいますと書かれてあったので、自分を誘っていると感じた大介は、それを横から一緒に読んでいた虎江に、手紙に同封されていた金の中から1000円渡すと、自分は毛布を担いで「楽々荘」を出て行く。

そんな大介を途中で呼び止め、公衆トイレの中に連れ込んだのは保っさんだった。

保っさんは、今掏り取って来たバッグの中にこれが入っていたと言い、デリンジャーと言う珍しい銃を取り出して見せる。

相手は、32、3のべっぴんやったと言う。

バッグの中を覗いた大介は、名刺が1枚入っていることに気づき、そこには「瀬戸原観光会社社長 香住弘子」と書かれていたので、どうやらそれがこのバッグの持ち主らしいと目星を付けた大介は、保っさんと示し合わせてトイレを出ると、公衆電話から香住弘子を呼び出し、バッグと掏った男を自分が押さえているので会いたいのだが…と伝える。

保っさんがパトカーのサイレン音を真似し、今近くをパトカーが通っているが、このバッグを渡すとまずいんじゃないかな?とかますと、相手はすんなり会う場所と時間を指定して来る。

香住弘子(草笛光子)は、ナイトクラブ「タワー」の経営者だった。

弘子は、バッグの中には23万くらい入っていたかしら?あなたに10万、こちらに5万ではいかが?と、大介と保っさんに金を渡そうとするので、割に合わんやないか?とぼやいた保っさんは、一足先に帰る時、大介に近づく振りをして、15万全部掏って行く。

残った大介に弘子は、あなたには力になって頂きたい。このタワーを守って欲しいの、咲山さんと力を合わせてと言う。

側に立っていた左腕がない男が支配人の咲山一作(高木二朗)らしかった。

部屋にあった写真立ての中の写真を旦那さんか?と聞いた大介に、殺された弟の正樹なんですと答えた弘子は、大学を出て、これから私と2人でこのタワーをやっていこうとした矢先、吹上ユリを宍戸組と争って、北海道に逃げようとした列車の中で殺されたんですと言う。

犯人はすぐに自首して来たが、それは身替わりですよと弘子は断言する。

その話を聞いていた大介は、俺に復讐をさせようとしてはるようやけど、俺は人助けはしても人殺しは性に合わしませんのや。もう1人、大事にせなあかん女がいましてな。嫁ですがなと断り、帰りかける。

その時、大介は、ポケットの中に入れていた札束を保っさんに全部持って行かれた事に気づく。

そんな大介に、弘子は自分のデリンジャーを渡すと、これ頂くとやらん言うわけにはいきまへんな…と大介は言うしかなかった。

大介は毛布を肩にかけ、「青草荘」にやってくる。

二階に上がった所で帰る途中らしき土井刑事とすれ違う。

土井刑事は、デカちゅうのはどこへも出かけるから「デカ」ちゅうんやと言い残して帰って行く。

ミユキの部屋ににこやかに入って行った大介だったが、中にいたミユキは歓迎するどころか、帰って下さいと迷惑顔。

もらった手紙の様子と随分違うなと戸惑いながら、部屋の奥に勝手に上がり込んだ大介は、いきなりリボルバーを取り出すと、天井に向かって発砲し、そこから敵の拳銃が落ちて来る。

忍者のように、天井裏で見張っていたらしかった敵の男は這々の体で逃げて行く。

ミユキは、あの手紙は、連中にそそのかされてかかされたものだったのだと明かす。

大介は、宍戸組やろ?と確認し、ミユキに迫ろうとするが、ミユキはそれを拒否し、ユリ姉さんから言われたの。女はヤクザに見込まれたら終わりやて…と言うではないか。

そう言われてしまった大介は、残念やな…と意気消沈して帰ろうとするが、それを止めたミユキは、私、どないしたらええの?もうどうなってもええ!私、1人では生きていけないのと、複雑な乙女心を吐露する。

大介は、このハジキと縁切れ言うのか?持って手も使うて良いのは脳みそだけと、母ちゃんがお年玉と一緒に毎年言うとったが…と戸惑うが、ミユキは、私が働きますわ!と言う。

その時大介は、(ミユキが頼ろうとしている)ユリは宍戸組の息がかかっとる…。そうや!俺がマネージャーになろう。そしてあんたを「タワー」に送り込むんや!と思いつく。

その策略は成功し、その後、ミユキは「タワー」のステージで歌って踊っていた。

ショーが終わった瞬間、どこからともなく銃声が響き、客席は騒然となる。

その客席にいた亀田は宍戸に、若い連中は元気がええなと小声で囁きかけるが、バッジは外しとるんやろな?と宍戸は確認し、その後、香住弘子のいる社長室に来ると、今日も騒ぎも、ひょっとすると女社長をなめた身内の者が起こした事かもしれんなどと言い、宍戸組が応援したたこんな問題は起きんと説得する。

しかし弘子は、それでは正樹さんの霊が浮かばれませんと反論する。

その頃、舞台袖では、ショーを終えた吹上ユリがミユキに、私、正樹さん殺したの知っている。宍戸よと教えた直後、消音銃で狙撃されてしまう。

銃を撃ったのは副支配人の大貫五郎だったが、撃たせたのは支配人の咲山だった。

大貫は、咲山に言われるがまま、銃を持って店の中を横切り逃げて行く。

それを目撃したボーイが、弘子に教えに来ると、やっぱり身内の仕業やったやないかと苦笑しながら宍戸と亀田が、大介がユリを抱き起こそうとしている横を帰って行く。

ユリは、何かを言いかけて息絶える。

後日、ミユキは「ベビージョーカー♬」と歌って踊る練習をしていた。

そんな中、香住弘子はマネージャーとして社長室にいた大介に、大貫が殺されたわと知らせる。

ドライブインの崖下で見つかったそうよ。次は私だわと怯える弘子は、次に狙われるのは、ユリが殺された現場にいた島ミユキでしょうと答えた大介に、あの子は守れても、私は守れないと言うの?ここの共同経営者にしてあげるわと誘いながら抱きついて来る。

今では、タキシードを着たダンディな姿になっていた大介は、仕方がないと言う風に弘子とキスをすると、社長、どこに住んではりますの?と聞く。

弘子が、あちこちにアパートを借りているのと言うので、そのアパートにミユキを匿ってくれまへんか?と頼む。

その頃、「楽々荘」にいた保っさんの元に来ていた土井刑事は、飯ごうにチキンラーメンを入れてお湯をかけ、旨そうに食べ始める。

金がなく空腹だった保っさんは、その誘いにあっけなく乗り、大介は今、青草荘に住んでいると教えてしまう。

飯ごうとチキンラーメンを渡された保っさんだったが、土井刑事が出かけると、さすがに罪悪感を感じ、青草荘に電話を使用とするが、虎江からただで電話をするなと怒鳴られたので、虎江の胸から下がったがま口を掏って逃げようとするが、そのがま口にはゴムひもが付いており、虎江は笑ってがま口を回収するのだった。

青草荘で、ユリと林の位牌を前に、大介はミユキに、林を殺したのは宍戸で、ユリを殺したのは大貫なんだな?と確認していた。

ミユキは、自分が弘子のアパートに行ったら、大介が浮気をするのではないかと心配している様子。

そんなミユキに大介がキスしてやろうとしていた時、ドアがノックされ、土井刑事がやって来る。

勝手に上がり込んで来た土井刑事は、吹上ユリと林を撃った犯人の事を聞きたいのでと、2人に同行を求めるが、アパートの外に出た所で、大介が土井刑事に、あんたは別の車に乗って来てくれと言いざま、そこに置いてあった乳母車に押し倒すと、自分たちは土井刑事が待たせていたタクシーに乗り込んで逃亡する。

「タワー」で支配人の咲山一作と会った大介は、咲山がデカ上がりで、拳銃は上級の腕前だと知らされる。

目の前で洋酒の瓶を次々に撃ち抜く咲山の腕前を見せられた大介は、ゲームやったらミユキも許してくれるやろと呟くと、手製の22口径リボルバーを出し、ビール瓶を横に何本も並べ、咲ヤマハ左から、自分は右から順に撃って行こうと勝負を申し込む。

結果は、咲山が最後の1本を撃つ前に、大介の方が撃ち終わったので、大介の価値になる。

咲山は苦笑し、そのビールをコップに注ぐが、大介は、ダイスをカップの中で縦に並べてみせると、そのダイスを、上から1個づつ撃ち落として行き、最後のダイスは、咲山が注いだビールのコップの中に飛び込む。

支配人はん、わては何級だっしゃろな?と聞いて来た大介には、さすがに咲山も笑い返すしかなかった。

そんな大介を褒めながら咲山は、香住弘子が運転する車で帰っていたが、その進路に車が停まっていたので弘子は車を停める。

相手の車から降り立ったのは宍戸組の子分のようで、弘子の車に向け撃って来る。

大介も車を降り応戦していたが、相手が車に乗り込み逃亡し始めたので、乗り遅れていた1人に向け威嚇発砲すると、その男はその場に倒れ、待ち伏せしていた車は走り去って行く。

倒れた男の様子を見に行った大介は、それがユリのマネージャーの立花だった事を知る。

立花は、正樹を殺したのは亀田やと教える。

何とか立花を助け起こそうとしていた大介だったが、咲山に促され弘子の車に乗り込むと、弘子は車を発射させ、立花をやってくれたのねと嬉しそうに話しかけて来る。

自分は撃ってない、あんたやろ?と咲山に聞いた大介だったが、咲山が取り出してみせた拳銃の弾倉には弾が全部詰まっていた。

咲山の銃が発砲していなかった事を知った大介は、ほな、俺がやったんやろか?と首を傾げ、次の瞬間、走っていた車から飛び降りると、立山の元に戻って来て身体を調べようとするが、そこにタクシーが近づいて来たので、大介は身を隠すしかなかった。

翌朝、立花の遺体が発見され、土井刑事ら警察車両が集まって来る。

鑑識の結果、立花を撃った弾は22口径で、至近距離から撃たれた事が分かる。

「タワー」の社長室を訪れた土井刑事は、咲山が刑事を辞めた理由を聞く。

咲山は、犯人護送中に、犯人諸共列車から落ちてしまったのだと答える。

その時、電話が鳴ったので弘子が受話器を取ると、相手は大介で、今どこにいるの?と聞くと、大阪駅の3番ホーム?と、わざと土井刑事に聞こえるように話す。

土井刑事はその言葉を聞くと、すぐに大阪駅へ向かうが、実は大介は「タワー」のキャバレー内の電話からかけていたのであった。

社長室に来た大介に、咲山は金を手渡しながら、ほとぼりが冷めるまでどこかへ高飛びしていると命じる。

ミユキの事を案ずる大介に、弘子は、築港の第三突堤にいると電話があったと教える。

大介がその言葉を信じ出かけると、弘子は今度はミユキのアパートに電話を入れ、鴨井が殺人犯として追われている。警察に吹上ユリと正樹の犯人を教えに行った方が良い。相手は土井さんが良いんじゃない?と指示する。

電話を終えた弘子は、これで宍戸組は潰れる。正樹の霊も浮かばれるわと微笑む。

鴨井だけが貧乏くじですかねと咲山が、ちょっと気の毒そうに呟くと、彼は不死身よと弘子は答える。

築港の突堤に来て、のんきに唄など歌っていた大介だったが、近くにやって来た釣り人(芝田総二)がかけたラジオから聞こえて来たニュースで、島ミユキが2年前の殺人犯は替え玉で、亀田達吉が真犯人ではないかと警察に知らせに来たと知る。

巧く釣られたんやなと大介が呟くと、釣り人は、まだ何も釣ってやしまへんがなと困惑するが、そんな相手をせず、こうなりゃ、こっちも堂々やと呟いた大介は走ってその場を去って行く。

青草荘のミユキの部屋に来てみると、そこには保っさんと玉子が住み着いており、仲良くすき焼きなど食べていた。

2人は結婚したらしく、保っさんは今では薬のセールスマンになっていると言うので、スリがクスリかいな一字違いやななどとからかいながらも、大介は、殺人犯で追われているんや。島ミユキ来てへんか?と聞く。

しかし、ここには戻ってないようだったので、大介は香住弘子に会いに行く。

俺の銃は人助けする事はあっても、殺す事はない。ミユキに会うて詫びたいんやと言うと、弘子はここを出られないわ。アパートに着く前にタイヤを撃たれ掴まってしまうと怯えたように言う。

さらに、亀田が証拠不十分で48時間の拘留から出て来たらどうするの?後1日待てば、21日間と言う検事勾留になるのよと弘子は説得して来る。

しかし、その亀田は証拠不十分で警察を出、宍戸の車でミユキのいる場所へと向かっていた。

車中、宍戸は亀田に、鴨井大介は「タワー」にいると教えていた。

狭い部屋の中でステーキを食っていた大介の元にやって来た弘子は、島ミユキが誘拐され、宍戸組の挑戦を受けろと言う電話がかかって来たと言う。

咲山もやって来て、先方が指定して来た時間と場所を書いた紙を大介に手渡す。

部屋を出て行こうとした大介の前に現れたのは土井刑事で、同行してもらおう。好きな事をさせてやる。拳銃の相を観てもらいたいんやと告げる。

一緒に警察に行き、銃痕検査機を観た大介は、喜んでリボルバーを取り出すと、大きな筒の中に向けて撃とうとするが、自分で撃ってはいかん。係員が撃つんやと言う土井刑事が銃を受け取り、筒の中で発砲する。

その大介のリボルバーの銃痕と、立花の肢体から発見された22口径の銃痕を比較してみた所、一致しない事が判明する。

その結果を説明しながら室内の電気を点けた土井刑事は、すでに大介がいなくなっている事を知る。

大介は、宍戸組から指定して来た廃工場に来ていた。

宍戸と亀田にミユキが掴まっているのを見つけた大介は、その女を離してくれ。帰ったらビフテキ食うてビール飲んで、警察行こう?と声をかける。

そして持って来たワルサーPPKと自分のリボルバーを取り出すと、弾をその場で抜いた上で、相手の方に投げて渡す。

ミユキを受け取った大介は、ゴムひもを付けて隠していたもう一丁の銃を取り出すと、撃って来た宍戸組相手に応戦を始める。

残り弾が少なくなって来た事を知った大介は、近くに落ちていた木の棒を拾い上げ、それを拳銃のグリップにヒモで結びつけると、銃身を前方に伸ばして撃つ。

敵は、工場内にガソリンを撒き、そこに発砲して火攻めにしようとして来る。

大介は、その火を除けながら、宍戸と亀田の背後に回り込むと、立ち上がって銃を捨てるように命じる。

そこに突っ込んで来たのは警察のトラックだった。

そこから降りて来た土井刑事は、手を挙げていた宍戸と亀田らを連行する。

大介は自分の銃をミユキのハンドバッグの中に入れて、土井刑事の身体検査を受ける。

拳銃不法所持で逮捕しようとした土井刑事は、銃が見つからないのでがっかりして見逃す。

「タワー」に戻って来た大介は、弘子の前で咲山と対峙する。

あの時、立花を後ろから撃てたのはお前だけやと大介は咲山に迫る。

咲山は、弘子は俺の女だ。それをお前風情に奪われた。お前が持っている銃が22口径なのは、先日の勝負をした時に分かった。

立花を22口径の銃で撃てと命じたには弘子だ。ミユキを警察に行かせたのも弘子だと告白する咲山に、思わず、止めて!と制したのは弘子だった。

そんな弘子に銃を向けた咲山の腕を撃ったのは、大介のデリンジャー銃だった。

あんた、俺のハジキ、騙したな…と大介は睨みつける。

そこに女房待っとるぞと言いながら土井刑事がやって来たので、さりげなく咲山に近づいた大介は、相手のタキシードの胸ポケットの中にデリンジャーを滑り込ませ立ち去って行く。

咲山は、その事を土井刑事に告げなかった。

表に出た大介は、ミユキの元に帰るべきかどうか迷いながら大阪駅の近くを歩いていたが、後ろからパトカーのサイレン音が近づいて来たので、思わず走り出し、横断歩道に駆け上がろうとするが、パトカーは何事もなかったかのように通り過ぎて行く。

それを見送った大介は、やっぱり俺は堅気にはなれんわ。当分、亭主は止めときますわと呟いて、横断歩道を渡って行くのだった。