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清水港代参夢道中(続清水港)

1940年、日活京都、マキノ正博監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

冒頭、いきなり、森の石松が黒駒一家に惨殺されるシーンから始まる。

しかし、倒れた石松に「カット!」の声。

舞台監督、石田勝彦(灰田勝彦のもじりか?…片岡千恵蔵)がダメ出しをしたのである。

石田は、舞台劇「森の石松」の演出に悩んで、周囲に当り散らしていた。

劇場の専務(志村喬)や秘書の黒田文子(轟夕起子)からも、「主役の石松を殺さないような、新解釈ものにしてはどうか」などとアドバイスを受けるが、事実は変えられない…と、石田は聞く耳を持たない。

そのあまりの頑固振りに怒った文子が帰ってしまった部屋の中で、一人癇癪を起こした石田はソファーに転がり込み、そのまま寝入ってしまう。

やがて、見知らぬ部屋でちょんまげを結った男に起こされて、眼がさめた石田、自分が「石松兄ぃ」と呼ばれているのに気づく…。
部屋の窓をあけると、そこは江戸時代の清水港、巨大な富士山が目の前に…。
最初は夢だと思い、自分の頭を殴りつけたりしていた石田だったが、自分がまさしく、片目の石松に同化しているのに驚愕する。彼は、次郎長一家の住まいに紛れ込んだらしいのだ。

周囲の仲間達は、狼狽する石松の様子を気が触れたと思いこむ。
大政(上田吉二郎…若い!)、小政なども、かつて石田と馴染みの役者と同じ顔だし、許嫁のお文(轟夕起子=二役)という娘は、何と秘書の黒田女史と瓜二つ。
石田=石松は混乱する一方。

やがて、月日が過ぎ、一応落ち着きを取り戻した石松は、次郎長親分から、気分転換の意味合いも兼ね、四国金比羅への代参を頼まれる。

石田=石松はパニック状態になる。
金比羅代参の帰路、石松が惨殺される事実を知っているからだった。

心配して事情を尋ねるお文に、石田はありのままの歴史を教える。
一応、それを信じたふりのお文は、自分も同行すれば、事実も変わるだろう…と提案。
石田=石松も、それならば…と、ようやく旅に出かける事に…。

途中、ひょんな事から、子供嫌いの石田=石松は、自分に妙になついてくる子供も同行させるはめに…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

今でいう「タイムスリップもの」であろう。

石田=石松が話した通りの事実が、その通りに次々に起こるので、お文もだんだん戸惑いはじめる。

小松村の七五郎(志村喬=二役)が、二人の前に現れた時は、さすがに蒼ざめる。
彼の家で、黒駒一家に見つかる…とされていたからだ。

この作品では、事実と違う要素が加わっても、結局、既成事実の通りになっていく…という展開になっている。

ラストも、今の眼で観れば、かなり甘く感じるが、戦前の作品である事を考えると、致し方ない事だろう。
それよりも、こんな大胆な着想で作品が作れていた時代があった事自体に驚きを禁じ得ない。

浪曲で一世を風靡した広沢虎造本人が、現代と江戸時代両方にゲスト出演、得意の咽を披露する。
七五郎役の志村喬、戦前はコメディアン的役者として活躍していた事実を、改めて見せつけられる。
片岡千恵蔵も元気一杯の頃で、虎造との軽妙な掛け合いなども堂に入っていて楽しい。

マキノ監督、面目躍如の娯楽作!