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太陽を盗んだ男

1979年、長谷川和彦監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

東京近郊の高校で、理科を教えている「フーセンガム(いつも噛んでいる)」こと城戸誠(沢田研二)。
教員の生活指導には甘い学校らしく、城戸はボサボサのロンゲで、授業中、何時も居眠りばかりしているだらしなさ。
授業でも、受験に関係なく「原爆の作り方」なんて堂々と教えているし…。
しかし、そんな彼は一人になると、東海村に出かけては原発の様子をうかがっていたのでだった。

修学旅行(?)で都心にやって来た、城戸とクラスの生徒達を乗せたバスが、突然、精神を病んだ老人(伊藤雄之助)にバスジャックされる。
皇居の前で警官隊に囲まれ、その時に対応したのが、丸の内署の山下警部(菅原文太)。
英雄的な活躍で老人を狙撃逮捕、城戸達を救う。

一方、城戸は自宅で睡眠薬入りのスプレーを自作、それを使って交番の警官(バンパイア水谷豊=青春の殺人者)を襲い、拳銃を強奪。
さらに、その拳銃を使い、東海村からプルトニウム239を盗み出す事に成功します。
そして、サラ金から50万円を借り出しては、一人暮らしのアパートでコツコツ「原爆」を作っていくのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

物語途中でジュリ−に接近する謎の男、ジュリ−は刑事だと思い込み逃げようとしますが、実はサラ金の取り立て屋だったりするのが、妙にリアルでもあり笑える。(演ずるは西田敏行)

完成した原爆を使って政府を脅迫しようとしますが、基本的に城戸には具体的な目的がありません。交渉相手に指名した山下警部に、何時も9時で終了してしまうテレビの野球中継を最後まで放送しろと言い出す始末。
※電話で最初に応対していた警察庁長官を「イモだから」と断るジュリ−。ここで場内は笑いに包まれる。やはり、このセリフ、有名な「イモジュリ−事件」を念頭に書かれた洒落なのか?

西新宿(まだ都庁は出来ていない)のオープンスペースでディスクジョッキーをしていた沢井零子(池上季実子)に電話をかけ、自分は原爆を持っているが、面白い使い方はないかと告白する城戸。

冗談だと思い悪乗りした零子、プロデューサー浅井(風間杜夫)の制止も無視し、聴取者から原爆の使い道をリクエスト、結局「ローリング・ストーンズ」の日本公演を実現させる事に…。

ハリウッドのアクション大作などと比較してしまうと、さすがにちゃちな所もあるのですが、とにかく冒頭からラストのラストまで、アイデアに満ちた展開が用意されている。

70年代特有のしらけた感覚と、ふざけた漫画のような話法、さらに白昼夢のような映像が入り交じって独特の雰囲気に…。

城戸が可愛がっている猫の名はニャロメ、テレビを付ければ、おおとりゲンが「ウルトラマンレオ」に変身しているし、歌舞伎町の映画館には「スーパーマン」の看板、ジュリ−は警察に一旦奪われた原爆を、ターザンよろしく(「ダイ・ハード」のマクレーンもどき?)、ロープにぶら下がり、ビルの窓ガラスを蹴破って奪い還しに来たりする。

ジュリ−が前半部分でやたら変装趣味を見せるのは、乱歩の「怪人二十面相」や「黒蜥蜴」辺りからの影響か?
山下警部と城戸の関係は「同性愛」的意味合いがあるのか…?

その山下警部の方は、数十メートルの高さのヘリから地上にダイブしたり、拳銃の弾を何発撃ち込まれても、トコトン死なないし…。(汗)

カーチェイスや、渋谷のビルの屋上から、刑事達に5億円の札束を地上の群集に向けてばらまかせるシーンなど、テレビの「西部警察」を彷彿とさせますし、今では不可能ではないか?…と思わせるような大掛かりなロケシーンがあったりして驚かされる。

少なくとも、この時代にはまだ、日本映画にパワーとアイデアが残されていたのは確かだ…と感じた。


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