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新幹線大爆破

当時の東映にしては珍しい(ギャングやヤクザ系ではない)オールスター系現代劇

オールスターっぽいとは言っても、すでに撮影所システムが崩壊していた時期なので、他社からの移籍組などが目立ち、純粋な東映オールスターというわけではない。

高倉健さん、千葉真一さんあたりがキャストロールの最初に出るとはいえ、留は新東宝出身の宇津井健さんなのがいかにも映画斜陽期の作品らしく、実際本編中で活躍するのは宇津井さんの方が主役風で目立っている。

Netflix版「新幹線大爆破」を見ると、この東映版の続編のような設定になっているので、改めて本作を見直すと、いろいろ新しい発見があって楽しめた。

Netflix版では「シン・ウルトラマン」の斎藤工さんが新幹線司令室の司令長を演じているが、本作では「スーパージャイアンツ」の宇津井健さんが演じているし、初代ウルトラマンのハヤタ隊員こと黒部進さんも刑事として登場している。

志穂美悦子さんや北大路欣也さんも出ているが、ほんのワンシーンだけで、ゲスト出演程度。

ストーリー的には、犯人の描写から始まっており、彼らの計画が進むにつれ、捜査陣の失態や偶然が次々と重なり、雪だるま式に事態が悪くなるという展開なので、全体的に長尺過ぎることで、そのご都合主義が後半になるにつれ面白さを増すためというよりも白けさせる方向に働いてしまっており、今一つ成功していない感じが残るのが惜しい。

公開当時なぜ本作は日本で当たらなかったのかという点も、その辺の弱点が原因のような気がする。

パニックものには事態をより悪くするトラブルメーカー的な存在がおり、見ていてイライラするパターンになりがちなのだが、本作ではそのトラブルメーカーが警察というのが問題である。

妊婦をビンタし、産気づかせて張本人も、護送犯を護衛していた刑事だし…

最初のうちはこういう展開もあり得るか…と、それなりに納得しながら見ていけなくもないが、徐々に捜査陣の無能ぶりが尋常じゃないなと違和感に感じるようになり、あまりにご都合主義が重なり過ぎる後半になると馬鹿馬鹿し過ぎて、客を笑わせようとしているのか?と言いたくなるレベルになる。

犯人たちの動機も不明確で、学生運動の内ゲバで人間不信になった男、石油ショックの影響からか経営していた工場が倒産し、妻にも逃げられた男、返還されたばかりの沖縄から本土に就職しに来たが、何をやっても上手くいかず転落していく青年と、社会の落ちこぼれであることはわかるのだが、それが新幹線爆破をネタに大金を得ようとする関係性が全くわからないのだ。

特に、町工場の社長だった沖田が、新幹線をターゲットにするきっかけがさっぱりわからない。

なぜ唐突に新幹線なのか?「動脈列島」などのように、新幹線公害で苦しむ身内でもいたのか?

彼のそれまでの生活と新幹線との接点が全く見えないのが残念。

電池式の速度計の下請けをやったからというだけで、いきなり新幹線を爆破するという発想にはならないはずだからだ。

なぜクライマックスで、運転士自らが酸素溶接機のバーナーで壁に穴を開けているのか?なぜ運転士が爆弾のコードを切断しているのかなど、他にもツッコミどころは多いのだが、当時としてはアイデアが詰まった十分見応えのあるサスペンスに仕上がっており、クライマックスの千葉真一、千葉治郎兄弟の共演シーンは楽しい。

【以下、ストーリー】

1975年、東映、加藤阿礼原案、小野竜之助脚本、佐藤純彌脚本+監督作品

夜の屋外、タバコを取り出し一服吸う男の姿。

その男はタバコを投げ捨てると、足元に置いていたバッグを持ち、北海道・夕張の駅構内に入って行くと貨車の車両に近づく。

目的の列車に辿り着いたその男古賀勝(山本圭)は、巾着袋タイプのバッグから取り出した爆弾を列車の下部に設置し始める。

東京

とある休業中の工場にある電話が鳴り出し、沖田哲男(高倉健)が受話器をとって名乗る。

古賀か、どうだった?と沖田が聞くと、公衆電話からかけていた古賀は、うまくいった、10時40分お飛行機に乗ると言いながら、10円玉を公衆電話機のコイン投入口に次々に入れる。

そうか…、終わったか…と言いながらタバコを口にする沖田。

沖田の言葉が途絶えたので、もしもし?どうかしたのか?と問いかける古賀に、藤尾が捕まったよと沖田が伝えると、奴が!いつ?と古賀が聞くので、昨日の朝だと沖田は伝える。

酔っ払って喧嘩しやがって、交番へ連行されて博多でやった傷害で指名手配になっていたのがバレたらしいんだよと沖田はいうと、公衆電話機を叩いて古賀も激怒しながらも、あいつは肝心なことは知っちゃいないと答える。

分け前が欲しけりゃ、俺たちのことは…と古賀が言うと、喋らんと思うよ、それに今日1日黙ってくれてりゃ良いんだ…、計画通り結構しよう!と沖田も答える。

今日しかないなと沖田が言うと、古賀も、ああ…、今更後戻りは真平だ…、やろう!と答える。

うん…、じゃあなと答え沖田は受話器を置くとタバコを咥える。

その沖田の目線の先には新幹線の模型が置いてあった。

東京駅の新幹線乗り場では、清掃員が車内の掃除を行なっていた。

清掃員大城(織田あきら)が女性清掃員とゴミの入った箱を手に車外に出た時、下から乗客達が階段を登ってくるが、その中に東郷あきら(岩城滉一)なるロックスターらしき男が混じってキャーキャー言われていたので、良い気なものねと女性清掃員がぼやく。

その後、手錠をされて護送中の藤尾信次(郷えい治)が側を通った時、清掃員の大城の顔を見て驚いたので、大城は顔を咄嗟に背ける。

乗り込んだ客で、次々に席が埋まって行く。

妊娠中の平尾和子(田坂都)は、降りよう、そんな体で旅行は無理だよと夫の平尾修一(植田峻)から言われるが、いやだって!そんなに心配らあんたも一緒にくれば良いじゃないとわがままを通す。

何を言う!今やっている仕事はね〜と平尾が言うと、仕事、仕事と言いながら、他の女と遊んでいたのは誰よ!里に帰りますと和子が言い返している横を、藤尾を連れた刑事と鉄道公安官が通り過ぎる。

藤尾を席に着かせた刑事に、じゃあ、何かありましたら私は乗務員室にいますと鉄道公安官の菊池(竜雷太)が言葉をかけると、こりゃどうも、お手数かけましたと地方訛りの刑事松原(近藤宏)が頭を下げる。

車掌室にやってきた菊池は、田代さん、乗せてもらいますよと挨拶したので、車掌の田代(福田豊土)は、どうもご苦労さんと返すとが、博多まで乗せる護送犯が12人乗っていますがね、その後倉のデカさんが盲腸になってしまって、念のために警視庁に…と菊池は説明する。

運転室に座った運転士の青木(千葉真一)は、操縦レバーを装置に差し込んで準備を始める。

列車種別設定のつまみを「超特急」に合わせ、列車番号を109に設定、副操縦士森本(小林稔侍)も席に着く。

総合司令所が受信ブザーで通信を聞くと、ひかり109号です、列車設定、列車番号設定終了との連絡を受けたので、了解と応答し、ひかり109号定時発車願いますと伝達する。

青木は、ひかり109号、定時発車いたしますと電話で伝える。

「総合司令所では、東京博多間1100kmを走る新幹線全列車は、この総合司令所によって監視統御されている。

列車の進行位置は、位置表示灯によって示され、列車の速度、進路、待避、通過等は、列車集中制御装置、いわゆるCTCによって指示管理される。

そして各列車には、コンピューター頭脳が搭載され、列車が指示された以上の速度で走っている場合は、自動制御装置、いわゆるATCによって自動的にブレーキがかかり、また列車前方3km以内に障害物がある場合は、ATCによって自動的に停車する安全装置がついている。」(とナレーション)

東京駅では発車ベルが鳴り、0系新幹線ひかり109号も汽笛を鳴らし、定時発車する。

駅構内の公衆電話から、親父さん、俺です、藤尾は109号に乗ったんです、刑事に連れられて…と大城が伝えたので、電話相手の沖田は、そうか…と答える。

で、仕事の方どうした?と沖田が聞くと、ええ、ちゃんとやりました、計画通りにと大城は答え、でも藤尾乗せて良いんですか?と聞く。

ああ構わんよ、全て計画通りにやるんだ、すぐ次の行動に移ってくれ、良いな?と沖田は指示し、電話を切ると、またタバコを口にする。

沖田は藤尾とのことを思い出していた。

(回想)藤尾!俺の後をつけてきたな?と古賀が指摘すると、古賀さんよ、なんだか面白そうな話だなや?俺も仲間さ入れてくれ…と労務社風の藤尾が、大城と沖田もいた部屋に入ってくる。

古賀は沖田に、ダイナマイトの売主だと説明すると、金はちゃんと払ったじゃないかと藤尾にいう。

ばか語んな!おめえらあれで銭うんと儲けんだべ?と藤尾が言ってきたので、大城がスパナで殴りかかろうとするが、それを沖田が止める。

そんな大城を睨んだ藤尾は、兄ちゃん、やんのかい?おりゃな、墓所の飯、何遍も食ってきた男だぞと挑発する。

そこに古賀が割って入り、あんた手配中だ、妙な騒ぎ起こしたら、自分の身がやばくなるのと違うか?と指摘する。

構わね、おめえらの折角の儲け話もな、みんなダメにしてやっからな!と言い捨てて、3人を睨んでくる。

(回想明け)沖田の持っていたタバコは燃えた部分が長くなっていた。

沖田は作業着を脱ぎ始める。

「ゆたか」タクシーで千歳空港にやって来る古賀。

新幹線が通過駅を疾走していく。

窓際に座っていた女性客(十勝花子)が、ロックグループらしき男達を16mmで撮影していたクルーたちを迷惑そうに見ていた。

その時、恐れ入ります、お客さんと車掌の田代がやってきて、車内での撮影許可できません、他の皆さんのご迷惑になりますからお辞めくださいと注意する。

知らなかったんで、失礼しましたとクルーの1人中やん(林ゆたか)が名刺を差し出し、24時間という番組でこういうカット欲しかったんですよと田代に言い訳する。

新幹線おスピードメーターが210kmになった時、副操縦士の森本が、先輩!とコーヒーカップを渡したので、青木はサンキューと礼を言って受け取理、一口飲む。

その頃沖田は、公衆電話から東京駅に電話を入れる。

ちょっとお待ちください、係に繋ぎますと東京駅交換嬢(志穂美悦子)が答える。

鉄道公安本部長宮下義典(渡辺文雄)の机の電話が鳴り出す。

受話器をとり、はい私だと応じた宮下は、ちょっと待ってというと、録音テープを回し始める。

腕時計で時間を確認した宮下は、はい、繋げてくれという。

電話変わりましたと応じた宮下は、ひかり109号に爆弾を仕掛けた?と相手の言う言葉を繰り返す。

タイトル

キャスト、スタッフロール

総合司令室の倉持(宇津井健)は会議室のドアをノックして入室する。

室内にいた宮下に、また爆弾電話ですかと倉持はいい、ひかり109号は小田原に停めて車内検査を…というと、それはダメだ、停める訳にはいかんと上司が言うので、どうしてですか?と宮下が聞くと、これを聞いてくれと高沢(山本清)はテープレコーダーを回す。

光109号に爆弾を仕掛けた、その爆弾は時速80kmになった時、自動的にスイッチが入り、それ以上のスピードで走っていれば爆発しないが、再び80kmに減速すると爆発する仕掛けになっているという犯人の要求が聞こえると、流石に宮下の表情が曇る。

まさかそんな!と電話に答える宮下の声が聞こえると、信じられないと言うだろうから、貨物579列車にも同じ爆弾を仕掛けといたと犯人が言うので、貨物579号列車!と宮下が繰り返すと、夕張発追分行き紅葉山までノンストップだと犯人はいう。

どこでも良い、15kmまで減速してみるんだ、爆弾は必ず爆発すると録音されたテープに収められた犯人は続け、受話器を置く音が聞こえる。

もしもし!と呼びかける宮下の声を最後にテープは止められ、逆探知は間に合わなかった…とその場にいた宮下はいう。

メモをとりながら聞いていた倉持が、貨物579号はどうなりました?爆発したんですか?と聞くと、上司は、いやまだだ、今は鹿野台と清水山の間を走っていると教える。

犯人の狙いはなんです?金ですか?と倉持が聞くと、宮下はわからん、何も要求しなかった…というので、どうしろというんだ…と倉持も戸惑う。

犯人のいう通りなら、109号は絶対に停まることができないと倉持は絶望する。

失踪する新幹線の運転席の電話が鳴ったので、はい、こちらひかり109号と青木が受話器を取ると、良いか青木君、落ち着いて聞いてくれと倉持が話し始める。

何ですか?と問いかける青木に、ひかり109号に爆弾を仕掛けたという電話があったと倉持は教える。

またですかと森本の方を見ながら答えた青木は、で、どこで停車するんですと聞くと、停車しないで車内検査してみてくれと倉持は指示する。

どうしてですか?走りながらの検査では不十分ではないですか、いつもののように停車して調べたほうが…と青木が提案すると、停められないんだ、停めたら爆発する爆弾だ、正確にいうと80kmまで走行速度がダウンすると爆発する仕掛けだというんだと倉持は知らせる。

そんなバカなと驚いた青木に、とりあえず100km以内に落とさないでくれと倉持は指示するが、そんなこと言ったってATCがかかったらどうするんですか?ATCは爆弾なんかに関係なくブレーキをかけるんですよと青木は指摘する。

総合司令室の倉持は、落ち着くんだ青木君、こっちもあらゆる努力をする、とにかく社内検査を急いでくれと伝えると、別のところに電話を入れる。

わかりましたと答えた青木だったが、しかし司令長、そんな複雑な爆弾が本当にあるんでしょうか?悪質な悪戯じゃないですか?と聞いてくる。

いやわからん、犯人は同じ爆弾を北海道夕張線貨物579号列車にも仕掛けたと言っている、今そっちの方を確かめているところだと倉持は答える。

その頃、夕張線を走っていた貨物579号に、通過駅の駅長から渡されたタブレットキャリアに入っていた通信文を読んだ助手が、先輩、これは!と運転士に渡し、それを読んだ運転士の顔色も変わる。

その頃、新幹線ひかり109号車では社内検査が行われていた。

不審がる客から何かあったんですか?と聞かれた車掌は、念のための検査ですと誤魔化して、検査を続行する。

貨物579号では、運転士が助手にそこで飛び降りろ、この先の登り坂でスピードが落ちたら危ない!早く飛び降りろ!早くしろ!と指示していた。

躊躇いながらも助手が飛び降りると、運転士も逆方向に飛び降りる。

その直後、機関車のスピードが落ち、貨物579号は大爆発で紅蓮の炎が上がる。

総合司令室から、青木君、貨物579列車は爆発した、爆弾電話は本物だと倉持が青木に連絡する。

やっぱり本物ですかと驚いた青木に、落ち着け、社内検査の結果は?と倉持が聞くので、助手の森本が首を横に振り、それらしきものは見つからないそうですと青木が答えると、もう一度念の為調べてくれ、最高速度を120kmに抑えるんだ、博多到着まで3時間は時間を稼げるだろう…と倉持は指示する。

しかし、あの〜、博多に着いたらどうなるんですか?と青木が戸惑いながら聞くと、それまでには必ず犯人の方から何か言ってくるだろう、警察も合同対策本部を作ったと倉持は答える。

とにかく…、いいか青木君、1500人の乗客の命が我々にかかっているんだ、頑張ってくれ!と倉持は励ます。

その頃、警視庁捜査一課長花村(鈴木瑞穂)、警視庁公安一課長広田(久富惟晴)、警視庁特捜係長などが列席した警視庁の合同捜査本部では、警察庁刑事部長須永(丹波哲郎)が、ひかり109号は目下時速120kmに抑えている、約10時間後には博多駅に到着する、その間に犯人を逮捕するか、あるいは爆弾を除去しなければならないと発言していた。

第一に貨物579号列車に爆弾を仕掛けたと思われる夕張駅付近の捜査、第二に北海道の全空港、並びに青函連絡口に張り込みを立て、挙動不審者を尋問する、以上の2点北海道警に依頼したが、警視庁の方から特に爆弾に詳しい人を至急貨物爆破事件の現場に派遣していただきたい、次に過激派の動向調査、東京駅構内での聞き込み、ひかり109号は9時33分に入線、9時48分発車だが、その15分間に爆弾が仕掛けられた可能性が大きい、得意その時間帯の目撃者を探すこと、これは国鉄の公安本部にもお願しますと、宮下に話しかける。

総合司令室では、ひかり109号の後続列車は先行のこだま223号静岡駅回避!こだま219号豊橋駅回避!ひかり23号名古屋駅回避!と倉持が指示していた。

ひかり109号車内で、検査をしてた森本に、何か故障なの?と乗客が聞いてきたので、違いますよと森本は答えるが、でも三島通過が15分も遅れていたよと客はいうので、前がつかえてるんです、大丈夫ですと森本は答える。

どないしたんじゃ、2回も調べに来よってという乗客には、危険物がないかどうか一応念のためにと車掌の田代も笑顔で応える。

念が入りすぎようわ、爆弾積んでるちゅう電話あったんちゃうか?と客が言い出したので、車掌さんどうなんだい?電話あったんかいと他の客も騒ぎ始める。

はあ、悪戯電話かもしれませんし…と渋々田代が認めると、本当かもしれないじゃないかと客たちは指摘し、そうだよ、どうして駅に停めないんだ、いつだってそうするじゃないかと同調の声も上がり始める。

そうじゃ、何しとんじゃ?停めんかい、国鉄は俺たちの命より列車の運行の方が大事なのかい?などと客たちの疑問や不満が吹き出してくる。

ね、どうなの車掌さん?と妊婦の平尾和子も田代に聞いてくる。

総合司令室では、司令長!109号が呼んでますと倉持に伝達がある。

司令長倉持ですと応答すると、公安官の菊池ですと声が聞こえ、乗客が不審を感じ騒ぎ始めましたと言う。

列車を止めろと言う声も出てまして…、やっぱり事実を発表する方が良いと思いますが…と菊池はいう。

それでも倉持は、いや…、解決の見通しと一緒に発表しないと混乱が増すだけです、もう少し頑張ってくださいと答える。

その時、大変だ!ひかり157号が故障だ!との連絡が総合司令室内に響いたので、菊池君、故障者だと伝えれ連絡を切ると、別担当者に故障箇所の確認を頼むと、別のマイクに向かって、青木君、100kmに減速してくれ、前方に故障車が出たと伝える。

故障は直るんですか?と青木が聞くと、わからん!今連絡を取ってると倉持は答える。

故障箇所はBR系統!長引きそうですとの連絡を聞いた倉持は、良し、109号、上り線に通そうと指示する。

しかし、ひかり20号が上り線を進行中ですと係官が言うので、ひかり109号は浜松まで9kmの区間、浜松駅まで約5分30秒と倉持は懐中時計で確認する。

ひかり20号は18km区間、6分弱で浜松を通過しますと係官。

やってみよう、ひかり20号の後続は全部停めてくださいと別の係官たちに倉持は指示すると、浜松駅に連絡して分岐点に作業員配置!と命じる。

その後、青木に連絡すると、青木君、故障は長引きそうだ、上り線を使おう、浜松駅で入れ替えをするというと、わかりましたとの応答がある、ただし…といった後返事が遅れたので、正、どうしたんですと青木が聞いてくる。

ひかり20号が浜松駅前方12kmに来ていると倉持が伝えると、何ですって!と青木は驚愕する。

時速を90kmに落とせ、10秒でも20秒でも稼ぐと倉持は指示すると、あんた!あんた俺たちを殺す気か!列車がやってくる上り線に突っ込ませるとはどう言うことだ!と青木は動揺する。

それでも倉持は、落ち着くんだ!と話しかけるが、爆弾だって90kmで爆発するかもしれないんだぞと青木は伝えてくる。

90kmに落とせと命じられた青木だったが、それに分岐点の制限速度は70kmじゃないか!90で突入したら脱線の恐れ…と反論しかけるが、黙れ!余計なことを言っている暇はないんだ、列車種別を回送に変更しろ、早くしないか!と倉持は命じる。

青木は言われた通りに「列車種別」を「回送」に変更する。

列車種別変更完了と青木が電話すると、よし、速度は?と聞いてきたので90!と答える。

後1分経ったら120に上げるんだと倉持が入ってきたので、気が狂ったんですか?120で分岐点に突っ込んだら…とまた青木が反論してきたので、黙って聞け!残り戦の入るにはATCを切らなくてはならない、ただし走行中にATCを切ったら非常ブレーキがかかる、だから分岐点ギリギリで切って、分岐点は惰性で通過する、上り線に入ったら非常ブレーキは解ける、それしか方法がないんだ、わかったかと倉持が言うと、了解という返事がある。

120kmに上げろ!と倉持が支持し、青木が120に増速というと、手動テコに切り替え!と倉持が指示する。

浜松駅で待機していた作業員が、ひかり20号ただいま浜松駅通過中!ひかり109号500m前方に接近!と報告。

ATC解放、10秒前、9、8、7、6…と倉持がカウントダウンをする。

切れ!と倉持が命じると、青木が指示に従い減速、上り線を走ってきたひかり20号とすれ違う。

ひかり20号、分岐点通過!の連絡が入る。

連結器操作!と倉持が指示、ひかり20号が下り線から上り線に乗り換える。

しかし、青木がダメだ、非常ブレーキが外れない!と連絡すると、落ち着け!もう一度やれと倉持が言ってくる。

速度メーターの針がどんどん落ちていく中、なんとか非常ブレーキが外れ、速度メーターの針は上がり始めたので青木はホッとする。

作戦が成功して総合司令室の中でも歓声が上がる。

よかった、一段落だと倉持の背を叩く同僚。

倉持も汗ばんでいたが、再びマイクに向かうと、青木君、異常ないか?と聞き、青木もはい!84kmまで落ちた時にはもうダメかと思いましたが、なんとか間に合いましたと答える。

良かったなと答えた倉持だったが、しかし驚いたよ、安全のためのATC装置が逆に我々の首を絞めようとしたんだからなと呟く。

はっ、司令長、さっきは興奮してすみませんでしたと青木は謝罪する。

いや、豊橋で下り線に戻ってくれと倉持は指示を出す。

その頃、新幹線総務局長(永井智雄)は、警視庁捜査一課長花村や警察庁刑事部長須永同席の中、そういう事情により、新幹線全線を休止と決定いたしましたと、JNTなどのテレビカメラも入った記者を前に会見していた。

そんなバカな!などヤジが飛ぶ中、ひかり109号は何時に博多に着くんですかとの質問が出る。

正規のダイヤですと17時36分ですが、少しでも時間的余裕を作るため、現在最高速度を120kmに抑えておりますので、多分博多到着は21時前後かと思われますと新幹線総務局長は答える。

ということはつまり、タイムリミットは9時間ということですね?捜査本部長、その間に事件は解決できる見込みなんですね?と記者が指摘する。

解決するために鋭意努力中ですと須永が答えると、見通しを聞いてるんだ!とヤジがとび、解決できなかったらどうするんですと質問者が再質問する。

そうだ!どうする気ですか!1500人の乗客を乗せたまま爆発するわけですか!とヤジが飛び交う。

そならないように全力で捜査しております、国鉄もひかり109号のためにできるだけ努力しておりますと須永が答えると、そんなことはわかってるんだよ!解決の見込みを聞いてるんだよ!返事しろよ!犯人の要求はなんですか?と記者たちの執拗な質問責めが続く。

須永は、まだ何も言ってきていませんと答えるのみだった。

その頃、人でごった返す街中の公衆電話に入った沖田は、再び電話をかける。

捜査本部の受信専用の受話器をとった宮下が、ちょっと待ってといい、待機していた刑事たちに着信4ですと知らせる。

後藤(黒部進)ら刑事たちは、着信4!逆探お願いしますと電話局に依頼し、ヘッドホンやイヤホンを装着する。

そこに花村が来ると、刑事がホシから電話をかけてきましたと耳打ちする。

花村はヘッドホンを刑事から受け取り、耳に当てる。

新幹線総局だ、要求を聞こうと宮下が答えると、500万ドル!と驚く。

そうだ、USドルで500万ドル、それも全部100ドル紙幣を揃えてくれと沖田は要求する。

500万ドルというと、君、15億円じゃないか!という宮下の声は、別室で国鉄総裁(志村喬)と新幹線総局長も聞いていた。

そんな大金、国鉄には出せないと宮下が言うと、国鉄に払えとは言ってない、日本政府が出すだろう、「ひかり」の車両代16億円、それに千数百人の乗客の命代に比べたら、はるかに安い要求じゃないか?と沖田が言うので、とにかく相談してみようと宮下は答え、で、金はいつどこで渡せば良いのかね?と聞く。

とりあえずジュラルミンの7号のトランクに詰んでもらって、改めて70分後に連絡すると沖田は伝える。

待ってくれ!70分後ではひかり109号は名古屋に停まれなくなる…、いや、京都や新大阪もだ…、金のことは責任を持っていう通りにするから、爆発物の場所と処理の仕方を教えてくれと宮下は頼む。

逆探知の時間稼ぎしても無駄だよ、じゃあ70分ごというと、沖田は電話を切る。

逆探していた電話局側では電話が切れた!と落胆し、捜査本部でも新宿電話局内というところまで探った所で切れたそうですと刑事が花村に告げる。

首相官邸

国鉄総裁から事情を聞いた内閣官房長官(山内明)は首相と電話をしながら、もちろん、犯人逮捕を第一と致しますが、とりあえずその要求に従うという姿勢を見せた方が…、はあはあ、分かっておりますと答え会話を終えると、総理も了承されましたと国鉄総裁に伝える。

が、100ドル紙幣で計500万ドル…、集まりますかな〜と言いながら、官房長官は別の電話を取り上げると、大蔵省の事務次官に繋がせる。

国鉄総裁は、よろしくお願いします、1500人の命がかかっておりますと官房長官に頼む。

500万ドルは政府が用意すると、捜査本部で花村が発表する。

ホシがドルを要求してきたということは国外逃亡の計画だと思われる、旅行代理店、各航空会社の切符予約客を洗って欲しい、特に今日から一週間以内の出発予定者を重点的に調べると花村が言うと、後藤君の範囲で頼むと広田(久富惟晴)が指示する。

はっ、しかし今日から一週間というと、5万人くらいはいると思われますがね〜と後藤が答えたので、女と老人を除けば三分の二になるだろうと広田は指摘する。

次に…と花村が発言しかかった時、北海道の爆破容疑者がわかりましたと長田刑事(浜田晃)が飛び込んでくる。

夕張駅に落としていたタバコの銀紙の指紋とこいつが一致したんですと長田はいう。

古賀勝!昭和23年生まれ!城南大学理工科学生、全学共闘会議書記局次長、ノンセクト、昭和46年三里塚にて公務執行妨害で逮捕、47年同大学中退…、以後活動を中止、以後脱落もしくは転向したと思われる…と花村が逮捕歴を読み上げる。

48年現在の住所、東京都豊島区東池袋5の10の6、あかね荘2号室!と花村が読み終えると、長田君すぐ手配頼むと広田は指示するが、もしこの住所にいたら逮捕しますか?と長田が聞くと、広田は花村の顔を見て、花村は、そうしてくれたまえと答える。

長田は上田刑事と一緒に出かけようとするが、その時、待ってくださいと止めたのは宮下で、その男を逮捕しても、もし黙秘されたらどうなりますか?と聞く。

それは逮捕してみなければ…と広田はいうが、学生運動家で、しかも逮捕歴のある男ですよ、間違いなく黙秘します!そしたらひかり109号はどうなるんですか?後8時間で博多に着いてしまいます…と宮下は花村に近づいて主張する。

否応無しに停まらなくてはならん、停まったら爆発!せっかく犯人が金を要求してきたんです、逮捕は金の受け渡しが終わって、爆弾の外し方がわかるまで待ってもらえませんか?と宮下は頼む。

しかし金を渡したからといって、爆弾の外し方を教える保証はありませんよと広田は反論するが、それを制した花村は、宮下さん、わかりました、逮捕魔待ちましょうと答えたので、宮下はそうしてくださいという。

花村は長田に、古賀の動静だけ洗ってくれたまえと指示する。

その頃、ひかり109号の車内では、車掌の田代が、しかしですね、この列車に爆弾が仕掛けられているから停まれないなんて発表したら、それこそお客さんが大混乱になりますよと鉄道公安館菊池に話していた。

犯人は金を要求してきたんです、金さえ払えば後1時間くらいで解決するでしょう、その点を納得させれば大丈夫と思いますがな〜と菊池はいうが、1時間経っても解決できなかった場合、混乱は増すだけです、絶対安全という答えが出るまで伏せといた方が良いと田代は反論する。

荒川線が走る豊島区。

駐在が自転車でパトカーに乗った長田と上田刑事を案内し、あかね荘を教える。

2階に上がった長田は、古賀の部屋のドアをノックし、もしもし?ごめんください、古賀さん?お留守ですか?と声をかけるが、返事はない、隣の主婦がなんでしょうか?と出てきたので、警察手等を見せながら、古賀さん、お留守でしょうか?と長田が聞くと、古賀さん?おとなりは桜井さんですよと主婦がいうので、桜井?と長田は戸惑う。

管理人(横山あきお)に聞くと、古賀さんは一昨年引っ越しましたよという。

ひっっこし先はわかりませんか?と長田が聞くと、さあ、そこまでは聞いてなかったねと管理人はいうので、この男ですよね、古賀っていうのは?と長田は古賀の顔写真を管理人に見える。

古賀の写真を持って羽田空港で張っていた刑事(北大路欣也)は、降りてきた古賀にいち早く気づかれてしまい、すぐさまサングラスをかけた古賀を、たまたま転んだ幼女に気を取られたこともあり見逃してしまう。

ひかり109号室では、車掌の田代か車内放送で、お客様にお知らせします、間もなく名古屋でございますが、当列車は事故により名古屋には停車しません、事故が直り次第、最寄りの駅に停車し、名古屋でお降りのお客様は名古屋までお送りしますので、もうしばらくお待ちくださるようお願いいたしますと流したので、降りる準備をしていた平尾和子など乗客たちは、どういうこと?などと唖然とする。

おいおい、この汽車、停まれないんだってよ、そんなアホな、停まらんかったら衝突やないけ!車掌室どこだい!と客は騒ぎ出す。

車掌室にやってきた客たちは、車掌に、故障ってなんだ!と責め始める。

詳しいことは今調査中でして…と田代は務めて冷静に対応するが、名古屋で停まらないのは、停められないのか、停まらないのかどっちだ!などと客は追求してくる。

停められないんですと田代が答えると、ブレーキの故障か?などと聞いてくる。

ねえ、京都も停まんないの?と聞いてきた客時は、今のところわかりませんが、多分無理じゃないかと…と田代が言うと、ちょっと!冗談じゃないよ、今日2時から講演があるんだよ!なんとか停めてよ!と客は無茶を言ってくる。

新幹線は衝突しないように作られていますからと田代は必死に言い訳するが、停められるんじゃないか!衝突しないってことは停められ流ってことじゃないか!名古屋で停めてくれ!俺は名古屋で大事な用事があるんだからよ!と客たちの興奮度も高まっていく。

車掌さん!非常ブレーキあるんじゃでしょう?スイッチあるじゃないですか?と客が言うので、あれは違います、落ち着いてください!と田代は懸命に客たちを車掌室から追い出す。

そうこうしているうちに、ひかり109号は名古屋駅を通過してしまう。

降りる予定だった平尾和子はパニックになりだし、他の乗客から抑えられていた。

護送中だった藤尾の警備をしていた刑事松原も、その和子のパニックを宥めに行こうと席を立つ。

松原は和子の頬をビンタすると、落ち着きなさいと叱りつける。

しかし、そのショックで和子は急に産気付いてしまう。

社内電話も長蛇の列で、女客が電話を利用しようとすると、横から割り込んできたサラリーマンが札束を取り出し、急ぐんです、代わってください!と騒ぎ出したので、女客の背後に並んでいた商人風の男(伊達三郎)が、みんな同じじゃ、背後に並べ!と男を引き剥がすが、男は四つビシ物産の者で重大な要件があるんです!…などと言うので、あほんだら、銭金で電話まで買い占めるのが商事会社か!とサラリーマンを諌め、列から放り出そうとする。

この騒ぎを見た菊池は、自分が車内放送をする決意をし、乗客の皆様にお知らせします、この列車には心無いものによって、爆弾が仕掛けられました、この爆弾は列車の速度を80kmに落とすと爆発する仕掛けだと知らせてきました、そのために列車を止めることができませんと伝える。

これを聞いた客たちは、車掌の田代に本当?と聞くので、田代も頷くしかなかった。

護送中の藤尾も、護衛の松原が吸いかけたタバコを横から奪い取って吸い始め、ニヤリと笑う。

しかし当局は乗客の安全第一を考え、犯人の要求通りに金を用意しました、金を渡せば爆弾の外し方がわかります、金の受け渡しは後30分から1時間で終わる予定です、当局を信頼し冷静に行動するようお願いいたしますと社内アナウンスが流れる中、和子は苦しみ、和服の女性客が、あなたはお母さんになるのよと励ましていた。

マネージャーがロック部ループの席に戻ってきて、困ったよ、京都も停まりそうもないちゅうんだよと伝えると、急にカメラマンの中やんが別の車両に行くとするので、おいおい、どこ行くんだよ?とマネージャーが聞くと、車内撮影だよ、恐怖の爆弾列車同乗ドキュメント!中やんはと笑う。

やがて、お客様にお伺いします、お医者様が乗ってらっしゃいましたら、14号室の乗務員室までお越しください、急病のお客様がおられますとの車内放送が流れる。

それに応じて乗務員室に来たのは女医の秋山(藤田弓子)だった。

車掌は、お願いします、子供が産まれそうなんですと、ベッドで苦しんでいる和子を診せる。

秋山は救急箱ありますか?と聞く。

車掌が救急箱を出すと、聴診器は?と秋山は聞き、受け取ると、お湯沸かしてきてくださいと車掌に頼み、診察始める。

捜査本部では、北海道の爆弾の調達方法がわかりましたと千田刑事(青木義朗)がいいながら、花村のそばに来ると、使用したのはダイナマイト2本分だそうですという。

それを聞いた他の刑事が、おかしいな、過激派は滅多にダイナマイトは使いませんが?と疑問を口にする。

それから?と花村が促すと、添加装置は電池式速度計と電気信管の組み合わせだそうですと千田刑事は報告する。

電池式速度計?と花村が不思議がると、車の速度計ですよと千田刑事はいいながら、メモに図を描き始める。

車の回転速度が上がると、連結された発電機の電圧も上がりメーターが動く、そのメーターで信管用のスイッチが入り、メーターが一定の位置まで下がると、第二スイッチが入って爆発する仕掛けだそうですと千田は言う。

その電池式速度計のメーカーは?と花村が聞くと、太陽工業だそうですと千田が教えると、角くんが言っていますとせんだは国鉄側に説明する。

するとその仕掛けは貨物の車輪と連動していたわけですか?と国鉄側が聞くと、はあ、機関車の後部台車に取り付けてあったそうですと千田が答えると、じゃあどうやって列車の中から外すんですか?と国鉄の高沢は聞く。

それはどう言うことですか?と花村が聞くと、もし爆弾がひかり号の台車に取り付けられていたら、車内からは絶対外せませんと高沢はいう。

これを聞いた宮下も驚いて立ち上がり、花村は、じゃあホシは金だけ奪って列車を爆発させると言うんですか?と問いかけると、その場にいた全員が黙り込んでしまう。

光109号の台車を高速度カメラを使って撮影してみたらどうでしょうと三宅(原田清人)が提案すると、そうだ、爆弾の位置がわかるかもしれないと高沢はいう。

それを聞いた宮下は、早速にやってみてくださいと頼む。

花村は腕時計を見ると、そろそろ約束の時間だなと呟く。

足立ナンバーの車が公衆電話の側に停まり、運転していた沖田が降りてくる。

受信用電話が鳴り、花村が受話器を取って、はい、本部!と答えると、ちょっと待ってくれといい、着信6だとせんだたちに伝える。

千田と長田たちは録音テープの準備と逆探の手配を頼む。

宮下がヘッドホンを耳に当てたところで、じゃあ繋いでくれと花村が指示する。

もしもし、新幹線総局だと花村が答えると、500万ドルできたか?と沖田が聞くので、ああ、ここにあると花村は答える。

よし、それを乗ってヘリコプターに乗れ、パイロットの他に金を持ってくる男が一人だけだ、飛び立ったら北上しろ、着陸地点は改めて電話すると沖田は伝える。

わかったヘリの準備はある、10分後には飛び立てるだろうと花村は答え、しかし本当に爆弾は外せるんだろうな?と問いかける。

俺の目的は殺人じゃない、金が入り次第、外し方を教えるよと沖田は答える。

君、ひかり109号にはお産を仕掛けている人がいる、南山だ、至急病院に入れないと危ない、金は間違いなく渡すから、爆弾の外し方を今教えてくれないかと花村は頼むが、だったら、早く金渡すんだな、爆弾は1分もあれば外せると沖田は言うと受話器を置く。

屋上に待機していた朝日ヘリコプターに、千田がトランクを持って乗り込み、ヘリは飛び立つ。

ヘリを北上させろと言うことは、埼玉、栃木、群馬方面だな、この三県の県警にすぐ出動できるよう要請しろと花村は命じる。

沖田は車を運転して北上すると、ちょうど上空を飛んでいる朝日ヘリコプターを見つける。

途中公衆電話に寄った沖田は、ヘリは寄居桜川高校のグラウンドに着陸させろと命じる。

花村は、ヘリに寄居桜川高校グラウンドに着陸するよう命令しろと指示を出すと、埼玉県警に連絡、寄居一帯に警戒線を張れ、埼玉県警大至急頼むと指示する。

ヘリがグラウンドに着陸すると、警視庁の方ですか?と女性が近づいて来て、野上駅の荷物預かり所ですの45番の荷物を受け取るようにt電話がありましたが…と女性はいう。

野上駅で、千田がす45の荷物を受け取ると、これ預けた人わかりますか?と聞きながら開封する。

担当者は一昨日、私、休んだんですよといい、箱の中にはトランシーバーと、「このトランシーバーを持って、舟で荒川を下れ」と手書きで書かれた紙片が入っていた。

パトカーで川に向かうと、船頭が2人乗った「長瀞ライン下り」の船が待っていたので、千田はジュラルミンケースを持ったまま乗り込んですぐさま、出してと船頭に頼む。

ひかり109号室の車掌室では、車掌が押さえつけ、ジョイの秋山が励ます中、和子が出産に苦しんでいた。

川沿いの山道で待機していた普通車の刑事たちが、船の移動を見守る。

かわがおd綾香になったところで、川に水音が響いたので千田は緊張するが、それはハイカーが崖上の花を取ろうした際落下した落とした石のかけらだった。

それに気づいた千田はホッとするが、そのときトランシーバーのブザーが鳴る。

そこで停めろとの沖田の声が聞こえたので、船頭さん、停めてと頼む。

普通車に乗って監視していた刑事たちも緊張する。

船が停まったとき、トランシーバーから、上からの綱にトランクを結びつけろとの指示がある。

千田がみあげると、崖の上からロープが投げ落とされる。

遠藤の車の中から監視の刑事が、こちら岩瀬村の先の崖からロープをおろそています、金を釣り上げるつもりのようですと無線で連絡する。

ロープを崖の上から垂らしていたのは大城だった。

それを普通車の後部座席に乗った刑事(田島義文)が双眼鏡で確認していた。

降りてきたロープに千田がジュラルミンケースを結びつけるが、その様子をそばに浮かんだ小舟に乗った釣り客に扮した沖田が監視していた。

千田がトランシーバーに良いぞと答えると、大城がケースを持ち上げ始めるが、そこに柔道部の部員たちが走って近づいてくるのを知る。

大城は必死にロープを引き上げるが、そのとき、監視役の刑事が車の外に出て、そこに新幹線の爆弾犯人がいる!と柔道部の連中に呼びかけ、その呼び声を沖田は聞いてしまう。

柔道部員もその声に気付き立ち止まったんで、新幹線に爆弾を仕掛けた犯人だ、捕まえてくれ〜!と刑事は必死に呼びかける。

柔道部員たちは、あいつだ!と大島に気づいたので、大島はロープを手放し、ケースは川に落下してしまう。

千田はそのケースを回収する。

柔道部員たちから崖っぷちに追い込まれた大城は川に飛び降りる。

千田はその大城を捕まえようと、船頭さん、向こうへやってくれと頼む。

監視の刑事たちも車を降り大城に近づく。

それをそばの小舟の上から見ていた沖田は焦る。

大城は自力で岸まで泳ぎ着くと、用意していたバイクに乗って逃走してしまう。

その直後に船をつけ、河岸に降りた千田を、向こう岸から県警の刑事たちが呼びかける。

沖田は釣り人の格好のまま、乗って来た車に乗り込む。

覆面パトは赤色灯を出し、サイレンを鳴らすと、全移動へ告ぐ!全移動へ告ぐ!ホンダ120号、色はブルー、夜明け村より逃走!発見次第逮捕せよと無線連絡する。

埼玉県警のパトカーが一斉に移動し始める。

バイクで逃走中の大城はすぐさまパトカーに見つかり、尾行される。

麓のレストランに車で先に到着した沖田は、大城を待つ。

やがて近づいてきたサイレン音の方向を見ると、大城が数台のパトカーと白バイに追われているのが見える。

大城は待ち合わせ場所に立っていた沖田を見つけるが、そのまま直進する。

それを見送った沖田はすぐに車に乗り込み、後をつける。

大城はパトカーに挟み撃ちになり、逃げ場を失い、反対方向から来たパトカーに衝突して投げ出され、電柱に激突してしまう。

すぐさま野次馬が集まって来た中、車で到着した沖田も野次馬に紛れて様子を見るが、大城は死んだようで、すでに刑事たちが死体を調べているところだった。

沖田は再び車に乗り込むと、その場を離れる。

車の中で沖田は大城と会った時のことを改装する。

沖田は救急血液センターから出てきた大城とぶつかったのが出会いだった。

沖田は血液センターの看板を見て、大城が血を売って暮らしていることを知ると、助け起こしに戻る。

馬鹿野郎、こんなになるまで血売りやがって…と呟きながら抱き起こしてやる。

大城はそんな沖田の手を振り払って一人で帰ろうとするが、フラフラで満足に歩くこともできなかった。

それが浩との出会いだった。(と、沖田の独白)

おい、こいよと再び大城を抱き起こすと、近くの大衆食堂で飯を食わせてやる。

浩は沖縄から集団就職でやってきたが会社は潰れた…、それからパチンコ屋、ボーイ、ガソリンスタンド、清掃会社、どれも長続きはしなかった…、俺はひろしを引き取った、俺の工場もひろしを引き取って半年で潰れた…、女房にも逃げられた…。

退職金だと封筒を投げ渡す沖田。

だが浩は逃げなかった…、出てけと言っても、俺の後をついて来た…

(回想明け)血まみれで死んだ大城浩の死に顔…

捜査本部の花村は、電話で連絡を受け、何!ホシが死んだ!と驚愕する。

その声に気づいた宮下、高沢、三宅たちも顔を上げる。

どんな男だ?20くらい?免許証があるだろう…と花村が聞くと、持ってない?至急指紋を鑑識に回せと指示する。

爆弾に関する手がかりは?と聞くと、ないのか?わかった…と言って、花村は無念そうに受話器を下す。

犯人が死んだら、ひかり109号はどうなるんですか?と宮下が花村に問いかける。

死んだのは20歳くらいの男だったそうです、電話をして来たのは中年の男だと花村は分析する。

必ずそいつから連絡がありますと花村はいうが、なかったらどうするんですか!と宮下は怒り、必ずあります!と花村は言い返す。

奴らの狙いは金だ、金を受け取るまでは連絡するはずですと花村は力説する。

鉄橋を通過するひかり109号の台車部分を、河川敷に待機したカメラマンたちが何台もの高速度カメラで撮影する。

浩が死んだ!と電話口で古賀が驚くと、俺の目の前でな…と沖田は答える。

でも、何にもしてやれなかった…、いや、免許証は置いてったから、身元は当分割れないと思うと沖田はいい、お前の方はどうだ?と聞く。

空港に刑事が張り込んでいた…、俺を張ってたののかどうかわからんけど…と古賀は教える。

そうか…、こっち来てくれ、作戦立て直そうと沖田が言うと、そうだな、30分で着くだろう…、じゃあ…と古賀も答える。

北海道の静内で古賀の写真を見せられた古賀の兄(田中邦衛)は、確かに勝の写真だが、勝が何か?と答える。

写真を見せた道警の佐藤(川地民夫)は、いや、参考人としてちょっと聞きたいことがありましてね…とごまかす。

まさか学生運動の…と兄が聞くと、いや、東京の住所わかりますか?と佐藤が聞くと、ここんとこ、3年くらい音信不通でねと兄はいう。

昔の友達の手紙とか、住所録でも良いんですがねと佐藤は粘るが、ええっと、ああ、勝から手紙来っとたやろ!と兄が近くにいたよめ(渡辺耐子)に声をかけると、ああ、あの請求書?と言うので、あれもってこいやと兄は言う。

請求書って?勝君にですか?と佐藤が聞くと、ええ、半年前くらいに来たんですがね、えーっと、バーかなんかの10万いくらだったかな…と兄は言う。

そこに嫁が、これでしょうと手紙を持って来たので、それの宛名を見ると、スナック「ファミリー」東京都豊島区西池袋4-12 田口洋子と記されていた。

ひかり109号は京都を通過していた。

1人の客が乗務員室を訪れ、田代を呼ぶと、新大阪はどうですか?停まりますか?と聞いて来たので、まだ何の連絡もありませんから、多分…と田代が答えると、重大な要件でどうしても新大阪で降りなきゃいけないんです、今日の3時までと言いながら札束を取り出すと停めてくださいと迫るので、そんな無理なことを言われても困りますと田代が金を突き返すと、停まらなくても飛び降りても良いんだなどというので、馬鹿なことを言うんじゃない!と田代は叱る。

君!総額3兆円、国際入札なんだ!失敗したら国家的な大損害なんだ!どうしてくれるんだ!と客はしつこいので、落ち着いてくださいと田代は宥めるしかなかった。

和子はまだ難産で苦しみ、体を抑えていた車掌を跳ね飛ばす。

女医の秋山が代わりに和子を押さえつけ、何やってるの、あんた男でしょう!しっかり抑えて!と車掌を叱る。

先ほどの客は、非常ブレーキを作動させようとするので、田代は必死に体を押さえつける。

そこに他の客も乱入し、菊池もやって来て、さらに撮影隊まで16mmカメラを持ち込んでそれを撮ろうとするので大混乱になる。

結局、新大阪駅もひかり109号は通過してしまう。

スナック「ファミリー」の店前で、プランタの花に水をやっていた女に、車から降りて来た長田刑事が、田口洋子さんですか?と警察手帳を見せながら聞く。

洋子ちゃん?お店5時だからウチじゃない?と女は答える。

うちって?と聞くと、志村よと言うので、志村のどの辺?住所わかる?と長田が聞くと、ちょっと待って…と女は答えて店の中に入る。

ひかり109号車内、トランジスタラジオを聴いていた男女グループは、新幹線爆弾事件の犯人と見られる男が死亡した模様ですとのラジオニュースを聞き驚く。

警察では今までの電話連絡から他にも共犯者がいると捜査を強化しています、ひかり109号の1500人の救出に全力を傾けていますというラジオニュースを聞いていた他の乗客たちは犯人が死んだ!と騒ぎ出す。

全力をあげているとか言っても何にもわからないじゃないかよ!現在の捜査状況はどうなってるか?犯人が本当に死んだのか?その後、我々が救出されたらどうなるか、責任者の口から聞きたいんだ、国鉄総裁を電話口に引き出せ〜!など菊池に詰め寄る乗客たちのパニックはピークとなる。

君たち、こうして恐怖にさらされている乗客の当然の要求じゃないか!こうやっている間にも爆発するかもしれないんだぞ!と客の僧侶まで詰め寄ってくる。

総合司令室の宮下は、菊池君よく聞いてくれ、犯人の若い男が死んだことは事実だが、身元が割れるのももうすぐだ、北海道の貨物爆破の方は正体が割れて、目下捜査に全力をあげている、後6時間半ある、必ず解決はつく、そうお客さんに伝えて、冷静になってもらいなさいと指示する。

刑事の長田たちは、志村三丁目あたりまで車で来ていた。

その時、同乗していたけど上田刑事が、長田さんと外を見ながら声をかける。

路上を歩いていた古賀の姿を発見したからだ。

長田は無線で本部に、古賀を発見しましたと知らせる。

それを広田から聞いた花村は、逮捕したまえと命じ、それが無線で伝えられ、広田から逃すんじゃないぞと念を押される。

古賀は近くに停まった車の赤色灯を見て警察と気づき、駆けつけたパトカーからも警官が降りて来たので走って逃げる。

駅構内に逃げ込んだ古賀を追っていた刑事たちは、電車が接近して来たので、追跡を止めるしかなく、その間、古賀が反対側のホームに続く階段を登ろうとしたので、銃を取り出し撃つ。

電車が通り抜けた直後、刑事たちの追跡は続き、階段を登ると、ちょうどホームから電車が走り出したところで、古賀の姿はなかった。

刑事と警官たちは手分けして古賀の姿を探す。

捜査本部では、何?古賀を見失った?何やってるんだ!と広田が無線に向かって怒鳴る。

その知らせを高沢から聞いた倉持は、また失敗した?何やってるんだあいつら!と警察の無能ぶりに腹を立てると、花村の近くに行き、花村さん、失敗したんですか?と聞く。

いや、まだわかりませんよ、他に共犯者がいることは確かですから…と花村は答える。

声紋分析の結果、電話の男は37、8〜43、4…、こいつが主犯でしょうななどと花村が言うので、そんなことお伺いしてるんじゃないんですよ、109号は博多まで後6時間しかないんですよとホワイトボードの路線図を指し、どうしてもっと慎重におやりにならないんですか?と苦言を呈する。

人命救助を第一に考えれば、こんな場合、犯人の言いなりにするのが一押しじゃないですか?と倉持が言うので、見かねた宮下が、止めようとするが、いや、言わしてくださいと断り、109号の中には1500人いるんですよ!度重なる恐怖や不正確な情報のおかげで、みんな忍耐ギリギリまで、暴動寸前なんですよ!と花村に迫ると、倉持君、もういいだろうと宮下が止める。

これだけ短いタイムリミットの捜査じゃ、思わぬ思い違いや失敗もある、乗客を気遣う君の立場もわかるが、どうか、無用な対立は持ち込まんでくれと宮下は頼む。

確かに二度にわたる失敗は許されんことだ、しかし操作の捜査に沿ってやっていれば必ず解決する、これが私の信念ですと花村は倉持に言い聞かす。

倉持さんでしたね、国鉄さんの方では乗客救出の方法はないんですか?と広田が問いかける。

と、言われますと?と倉持が聞くと、素人考えですがね、たとえば…と言いながら、広田は黒板に図を描き始める。

乗客を全て列車の前へ移した上で、列車の後部を切り離して停めてみる、これが爆発するかどうかで、残り半分の安全性が確かめられると、図の前方をチョークで指しながら言う。

もし全部が危ないとなれば、後ろから別の列車を追いかけさせて、乗客を移しとると、黒板の図の後ろ半分を消して広田は説明する。

なるほど結構な案ですがね、と顔の汗を拭った倉持は、そんなことができるんならとっくにやってますと答える。

いけませんか?と広田が聞くと、不可能です!と倉持は一蹴する。

まず新幹線の列車連結器は、内部からでは絶対と言って良いほど外せません。

もし無理に切断したとしても、複雑怪奇な回路が一つでも切れると、即時にATCの働きで緊急ブレーキがかかるんですと倉持が言うので、成功であればあるほど、一朝有事の際には不便ですねと黒板おずを消しながら広田が言う。

どんな変時でも停める、これが新幹線保安原理の基本でしてね!犯人はそこを突いた恐るべき奴なんですと倉持は力説する。

奴のおかげで今やひかりは、手に負えぬ危険物になっているんですよ、そう言う危険物を相手にしていることを、お宅さんたちにも少し理解してもらいたいものでなと倉持は嘆く。

その後、新幹線総局長も交えてひかり109号の台車部分の高速度撮影の写真を見た倉持は、これはひどいという。

シャッタースピード500分の1の奴は流れてしまっています、1000分の1にすると光量不足で暗すぎると三宅から聞かされた倉持は、やはり120kmの走行じゃ無理ですか…と嘆息する。

しかし三宅さん、他の手はないんですか?捜査の方が当てにならない以上、我々の方で見つけ出さない限り…と倉持は聞く。

すると三宅は、わかってる、広島のテレビ局全部からあるだけの電源車を借りることにしたんだと答える。

その頃沖田は、ヘルメットなど変装用具の準備をしていたが、そこへ怪我をした古賀がたどり着く。

抱き抱えて畳部屋に運び込んだ沖田に、つけられてないか見てくれと古賀は頼む。

外を確認した沖田は、大丈夫だ、誰もつけてないと教え、救急箱を取り出す。

俺の目の前だし、いきなり追っかけてきてぶっ放しやがった、どこでドジ踏んだんだ?と古賀は説明するので、静かにしてろ、疲れるぞと沖田は黙らせる。

しかし古賀は、俺の手当てなんか良いから、金奪った段取りつけてくれと起きあがろうとするので、いいから寝ていろと沖田は古賀の体を倒す。

長田刑事らは通報を受け、とあるアパートの2階の田口洋子(片山由美子)の部屋に来る。

家宅捜査されながら、洋子は、本当だって、古賀なんか来ないわよ、半年前に別れちゃったもんという。

でも、その辺をうろついていたんだよと長田が指摘すると、ヤダ〜、あいつまた逃げ込むつもりかしらと洋子は言う。

また?どう言う意味だと長田が聞くと、3年前さ〜、学生運動の事業場でさ、あいつ怪我して転がり込んできたのよ、だから私面倒見てやっちゃったと洋子はあっけらかんという。

ちょっと〜、あんまりかき回さないでよと洋子は文句を言い、あいつさあ、まだそんなことやってるの?と長田に聞いてきたので、いや、別の事件だ…と長田は答える。

そうでしょうね、あいつ内ゲバでやられてガックリしてたんだから…、誰が敵か味方かわかんなくなっちゃっててさと言いながら洋子は茶を淹れる。

私、可哀想になっちゃってさ、2年半も面倒見てやったのよ〜と言うので、2年半もと長田が感心すると、そう2年半も…、お小遣いやってさ、飯食わせてやってさ…、それなのに何よ、あいつったら、おめえんところにいたらダメになっちゃうなんて抜かしてさ、半年前に出ていちゃったのよ〜、そんな言い草ってある〜?と洋子は愚痴る。

古賀にやかんの水を飲ませた沖田は、なあ古賀…、浩が死に、お前がやられた…、俺たちの負けかな〜と呟く。

何をいうんだ、怖くなったのかよと古賀は言い返す。

怖くはない、俺はもう何にも怖くない、ただ…と答えた沖田に、ただ…何だ?と古賀が聞くと、俺たちは誰も殺さない、誰も殺されない完全犯罪をやるつもりだった…と沖田は言う。

そうだろう?それが浩が死に、お前がこのざまだ…、そろそろ旗を巻く頃かもしれんなと沖田はいう。

しかし古賀は、沖田さん、今旗を巻けば浩が生き返るのか?俺が元通りの体になるのか?と問いかける。

それはわかってるよと沖田は言う。

だがこれ以上ジタバタしても、ただ見苦しいだけだって気がしないか?と沖田が聞くと、ジタバタしなけりゃ、見苦しくないと言うのか!と古賀は反論する。

俺たちゃもともと見苦しい、みっともない、どうしようもない人間だからこう言うこと始めたんじゃなかったのかい?と古賀は問う。

じゃあ、お前、後悔はしないな?と沖田が聞くと、ああ、今、良いじゃないか、浩が死んだって、俺が死んだって、極端に言えばあんたが死んだって、この仕事をやり遂げたら俺たちは見苦しくなくなるんだ…と古賀はいう。

わかった…、もういうな子が…と言いながら、沖田は起きあがろうとした古賀をまた寝かせる。

次の作戦、実行しようと沖田が言うと、古賀も頷く。

立ち上がった沖田は、計画通りに行けば2時間で戻ってくる、行ってくるな…と言い、建物から出てゆく。

太陽工業から、本部願います、刑事担当の堤(田中浩)ですと警察車両から無線連絡する。

太陽工業の責任者の話によるとですね、貨物につけた電池式速度計はやはりここの製品に間違いないそうです、実際は下請けに特注で作らせたものだそうですが…という。

はい、沖田精機製作所、板橋区志村2丁目、だがここは1年くらい前に倒産してしまって土地建物も全て人手に渡り、いまでは廃工場になっていると言うんですが…と堤は報告する。

沖田はトラックを高速道路の片隅に停めると、赤旗を出した後、メットを被り後部から板を下ろし、バイクを板に沿って下すと、それに乗って公衆電話のところまで走る。

捜査本部の花村が鳴り出した電話の受話器をとり、着信6!と言うと、千田も着信6、逆探を依頼する。

もしもし?新幹線総局だと花村が答えると、貴様たちは逮捕のためには見境なく追い回し、打ちまくると言うことがよくわかった、そのためには1500人の命を捨てても構わんと言うことだな?と沖田が言ってきたので、君たちは人殺しじゃないと言うのか?と花村は言い返す。

黙れ!約束を守らん貴様たちとはもう取引はせん、もう一銭もいらんぞ、光の爆発は貴様ら警察のせいだ、オド獲とけと言うので、待て!今度は君たちの指示通りにする、約束する、爆発物はどこにある?君の一言で何の罪もない何千…と花村が食い下がるが、電話は切れてしまう。

もしもし!と焦った花村だったが、沖田はバイクに乗って、次の公衆電話の前まで来ると、もう一度電話をする。

繋いでくれ、すぐ!と命じ受話器を撮る花村。

本部か?と確認した沖田は、これが最後の取引だといい、繰り返さんからよく聞け、一切の逮捕行為、尾行、張り込みもしないこと…、現金のトランクに探知機をつけるな、以上約束できるか?と沖田が言うので、約束すると花村は答える。

よし、では刑事1人が現金のトランクを持って警視庁の旗を立てたクロスランに乗れ、首都高速神田橋インターチェンジから入ったら、環状線を内回りに走れ、途中の退避エリアに赤い旗を立てた軽トラが停まっている、トラックの運転台にトランクを置いたら直ちに走りされと沖田は指示する。

神田橋から入って、内回りだな?と花村が確認すると、黙って聞け、10分以内に神田橋インターに来なければ取引は中止する、爆弾についてはこちらが金を受けとり、約束が実行されているか確認した上で改めて電話すると沖田はいうが、いつだ?その時間は?と花村が聞いた瞬間電話は切れたので、もしもし!と話しかけた花村は舌打ちするが、課長、私が行きますと千田が立ち上がったので、神田橋インターまでは10分ギリギリだ、急いでくれと声をかける。

特捜本部より全移動に告ぐ!全移動、現位置を申告せよ!と、広田が無線で呼びかける。

警視庁の旗を立てた乗用車が神田橋インターに入ったのを、バイクに乗った沖田は確認すると、自分も近くのインターから高速に乗る入れる。

梁町エリアで指定通りの車を発見、ナンバーは1171と車内電話で報告した千田は、良し、金を積み込みすぐ行けとの司令に従い、軽トラのそばに車を停めると、千田は一旦車を降り、軽トラの窓に挟まっていた赤い旗を撮って、内部を確認し、現金の入ったトランクを軽トラの運転席に積み込むと、また赤い旗を突っ込んで、荷台の様子など確認した上で車に乗り込み直ちに走り出すしかなかった。

パトカーで付近にやってきた刑事は、軽トラ発見!対面のビルの屋上から監視しますと本部に報告する。

沖田はバイクで軽トラの横につけると、運転席に置いてあったトランクをバイクの荷台に結びつけ、走り出す。

それを屋上から見た刑事は、犯人らしき男がバイクで立ち去りましたと報告する。

オートバイ?ナンバーわからんか?と広田が無線で聞くが、わかりませんと言うので、色は?と聞くと、オレンジですと答えがある。

形は?と聞いてもわかりませんと言うので、よしと答えた広田は、こちら本部、犯人はオートバイで逃走の模様、検問はオートバイ中心でやるんだと無線で呼びかける。

検問でバイク探しが始まる。

一方、沖田は、バイクを停め、トランクを下ろすと、返送用の服を隠していた地点で、黄色いヘルメットなどに着替え、高速から縄梯子を下ろすと、それを使って、車を置いていた下に降りると、すぐさまトランクを車に積み込み走り去る。

その現場はすぐさま警察車両から発見され、本部、梁町エリアで該当車らしきオートバイ発見、そこから縄梯子が外苑外堀通へ垂れていますとの報告が入る。

よし、現状保持、全員に周囲の聞き込みに回らせろと広田は指示する。

これでやつの約束を待つしかなくなったわけだなと花村はつぶやく。

しかしこのまま逃げられたらどうしますと広田が聞いてきたので、縁起でもないこと言うな!と花村はキレる。

ひかり109号なでは、まだ和子は難産で苦しんでいた。

車掌が懸命に体を押さえつけ、いきんで!と女医の秋山がはげます。

総合司令室では倉持が、また失敗したんですか?と捜査の不備に呆れていた。

いや、逮捕に失敗したんだ、金は無事犯人の手に渡ったよと宮下は訂正する。

それじゃあ、爆弾の外し方はわかったんですか?と倉持が聞くと、宮下は首を横に振り、まだだ…、しかし時間の問題だよと答える。

和子の呻きが突然止まったので、車掌は手を離して大丈夫ですか?と秋山に聞くが、秋山が首を横に振り、胎児は死んだわと告げる。

和子は虫の息状態になっており、輸血しないと母体も危ないわ、車内放送してAB型の人呼んでくださいと秋山はいうので、呆然としていた車掌は乗務員室を出てゆく。

和子と二人になった秋山も悔しがる。

廃品が捨てられた場所に停まった車の中では、沖田がトランクからバッグに金を詰め替え、そのトランクと返送用の気性やヘルメットをその場に捨ててさってゆく。

したいの身元が判明した?大城浩、19歳…、すぐ伝送してくださいと、広田が電話連絡を受け、指示を出す。

そばで聞いていた花村が、死んだオートバイの男か?と声をかける。

ええ、昨年6月にオートバイで人身事故を起こしたようで、調書があったそうですと廣田は答える。

すぐさまファクシミリで調書が送られてくる。

そこには、母大城まさ(65)、妹栄子(14)

保証人欄には沖田哲男 沖田精器製作所 社長と書かれてあった。

それを読んだ花村は、沖田精器?これは確か貨物爆破に使用した速度計の製造元だったなと指摘する。

今、廃工場とか言ってましたなと広田も気づき、地図を確認すると、古賀が歩いていたのは志村3丁目、奴が行こうとしたのは女の所ではなくて、こっちの工場の方じゃ?と推理する。

アジトかもしれん、すぐ当たらせてくれ、それから工場の関係者、特に社長の沖田哲男を洗うんだ!と花村が命じる。

警視8号、軽視8号応答せよ!と無線で広田が呼びかける。

はい、長田ですと警察車両から応答する。

ホシのアジトらしいのが割れた、志村2丁目の沖田精器製作所だと広田が伝えると、了解、直行しますと長田は答えると、」赤色灯を出してパトカーともども現場に急ぐ。

その頃沖田は、公衆電話からサンプラザさん?と電話をしていた。

つながると、すみませんが、忘れもんしたんですがと沖田はいい、奥の右手の窓のところに茶色の封筒が置いてありませんか?と聞く。

喫茶店「サンプラザ」の女店員(藤浩子)は、「金田シゲオ」と表に書かれた封筒を見つけると、はい、確かにございますがと、受話器を縦に置いて保留していたピンク電話に応答する。

そうですか、大事な書類なんです、後で金田シゲオという人が取りにきますから渡してくれませんかと沖田は伝える。

金田様ですね、はい、承知いたしましたと女店員は答える。

沖田は同じ公衆電話から別の場所に電話をし、古賀が出ると、俺だ、うまくいったぞと伝える。

沖田さん!と古賀が答えると、傷はどうだ?痛むか?と沖田が聞くので、大丈夫だ、あんたこのまま脱出してくれと古賀は答える。

どうしたんだ?何かあったのか?と沖田が聞くと、俺の面は割れている、それにこの体だ、2人一緒に逃げるのは無理だと古賀は言う。

せっかくここまで成功したんだ、あんた一人で逃げてくれ、やり遂げることが一番重要なんだ!と古賀は主張する。

寝言言うな、後30分、4時35分には必ず戻ると沖田はいうが、いや戻るな!ここに戻る必要はない、俺はギリギリで脱出するから、あんたはあんたで逃げてくれ!

それだけ怒鳴りゃ、大丈夫だな、それじゃあ4時35分時戻ると繰り返し、沖田は電話を切る。

沖田はもう一箇所電話を入れると、着信6!と伝えた花村が、新幹線総局だと出る。

俺だ、金は確かに受け取った、今度は貴様達も約束を守っているらしいんで、こちらも約束を果たしてやると沖田はいう。

爆弾の所在はどこだと花村が聞くと、電話じゃわからん、一つでも手違いがあると大惨事になるぞ、図面に詳しく書いといたから、新橋4丁目の喫茶店「サンプラザ」へ行けと指示して沖田は電話を切る。

私が行きましょうと千田が名乗り出ると、私も行きましょう、一刻も早く図面を検討したいと国鉄の三宅も名乗りでる。

その図面さえ手に入れば…と、総合司令所の倉持がいうと、まあ約束通り連絡してきたんだ、今度は期待が持てると見て良いんじゃないかねと高沢も安堵したように答える。

そこにブザーがなったので、こりら司令所と倉持が答えると、こちら109号との通信がある。

どうしたんだと聞くと、妊産婦の胎児は助かりませんでしたというので、それで母親の方はどうしたんだと倉持が聞くと、出血多量なので、乗客の協力を得て輸血していますという。

マイクを横から取った高沢は運転車両部長だと答え、お客に朗報だと言え、犯人は約束通り連絡してきたんだ、今図面を受け取りに向かっている、遅くとも1時間以内に解決するだろう、もう少しだ、がんばってくれ!と伝えている横で、倉持は苦悩していた。

喫茶店「サンプラザ」に近づいた千田や広田たちは、人だかりがしていたので、火事のようですと気づくが、そのまま「サンプラザ」の近くまで車を進めると、現場で消化していた消防士(久地明)が危ない!と制止しようとするのに対し、警察のものだと伝え、燃え盛る喫茶店内に踏み込む。

図面は消失した!と千田からの連絡を受けた花村は驚愕する。

もう一度探すんだ、燃えかすでも灰でも良い、持ち帰れと命じ、電話を切る。

周囲を見渡すと、他の刑事や国鉄関係者の表情も固まっていた。

工場に車で向かっていた沖田は、「ここに戻る必要はない、俺はギリギリで脱出するから、あんたはあんたで逃げてくれ!」という古賀の最後の言葉を振り返っていた。

車の後部座席には大金が入ったバッグが置かれていた。

赤信号で停車した時、沖田は古賀との出会いを回想する。

グラウンドで学生ラグビーを見学していた時、話しかけてきたのが古賀だった。

(回想)その後、廃工場に訪ねてきた古賀に、おい、こっち来なと2回から降りてきた沖田が声をかける。

工場は潰れたし、女房にも逃げられたけど、酒だけは置いてあるよと言って沖田は古賀を歓迎する。

でもこれだけの土地がありゃと古賀は羨ましそうにいうが、とっくに銀行のもんだよ、もうすぐ追い出される…と言いながら、沖田はウィスキーを注いでやる。

沖田さん、博打は嫌いでしょう?と古賀はウィスキーを飲みながら聞いてくる。

うん、あんまり好きじゃないね、どうして?と沖田がきくと、だから寺院になる、人生真面目にやれば…なんて思ってたんじゃないですか?と古賀は言う。

そう言う君はどうなんだい?

ま、違いないなと古賀は自嘲する。

その時、ただいまと帰ってきたのが、大城で、古賀君だ、大城浩、今、俺こいつに食わせてもらっているんだと沖田が互いに紹介する。

親父さん、良せ、そう言う言い方と大城は沖田に注意する。

ある日、建築現場で一緒に働くようになった古賀が、浩、危ない!と叫ぶ。

うわー!と大城が叫んだ時、鉄骨がその上から落下してくる。

怪我をした大城をおぶって事務所に来た古賀を見た沖田が、どうしたんだ?と聞くと、建材が落ちてきたんだと古賀が説明する。

頭を怪我して動けなくなった大城を心配げに見守る沖田に、古賀が金を差し出して治療費だというと、俺に出せると沖田は断る。

俺の金じゃない、工事現場の責任者が出したんだと古賀が言うと、お前も怪我したんか?と右手に包帯をした古賀に聞くと、俺のは喧嘩だ、治療費ケチりやがったもので…、取っとけよと古賀はいうと札束をそこに置く。

沖田はこれまでの大城との思い出もあって、思わずコップを側のストーブにぶつけて癇癪を起こす。

そんな沖田の鬱憤に気付いた古賀が、爆弾でやっつけるかと切り出す。

浩が怪我した大東建設をさ…と言う古賀を、じっと見つける沖田。

後日、沖田は頭の怪我が治りかかった大森と古賀を前に不思議な装置を見せる。

何だこれ?と聞く古賀に、そのローラーが車輪に連動してスピードメーター回すんだ、スピードが80kmになると、第一のスイッチが入る、そしてスピードが80km以下になると、第二のスイッチが入って爆発するんだよと言い、爆発の代わりに赤いランプをつけて見せる。

そんなもんどうするんだよと古賀が聞くと、新幹線の台車にこれを仕掛けると、沖田は赤いランプを差し出していう。

後日、親父さん!親父さん、オーケーだよ、新幹線の清掃会社、履歴書もろくに見ねえで明日から来いって!とすっかり怪我が癒えた大城が満面の笑みで外から戻ってくる。

そうか…と沖田が言うと、第一段階成功だなと古賀も笑う。

兄貴、ハルの1200って知ってるかいと聞くので、知らんなと古賀が答えると、世界最高のオートバイさ、俺よ、この仕事に成功したら、そいつ買って、世界中オートバイ旅行するんだと大城は嬉しそうに夢を語る。

古賀、お前は何やるつもりなんだ?と沖田が聞くと、革命がうまくいった国へ行ってみたいと古賀は答えたので、仲間に入るのか?と聞くと、嫌…、キザに聞こえるかもしれないが、もう一度人間への信頼が取り戻せるかもしれないと思ってな…と古賀はいい、沖田さんは何やりたいと聞き返す。

俺はブラジルでも行ってみてえなと沖田は呟く。

(回想明け)サイレンでふと我に帰った沖田は、バックミラーに接近してくるパトカーが映ったので緊張するが、2台のパトカーは沖田の車を通り過ぎて先行していく。

車が止まる音で起き上がった古賀は、表に警察車両が来たことを知り、後30分後、4時35分頃には帰るという沖田の電話を思い出す。

畜生と呟いた古賀は、部屋に隠しておいたダイナマイトを掴んで部屋の隅に逃げる。

そしてダイナマイトを持ったまま階段を登り、2回の窓から外の様子を伺う。

2階の扉を開いて、外の様子を見ると、長田刑事が合図をするまで踏み込むなと先着の刑事に連絡し、相手の刑事が了解と答えていた。

その時反対方向からクラクションが聞こえ、見ると、沖田の乗った車が近づいており、警官が下がれと命じていた。

運転席の沖田も2階の外に出ていた古賀の姿を認める。

長田刑事らがこっそり工場内に入り込もうとしている。

古賀がダイナマイトの導火線にライターで着火する。

それに気付いた長田が伏せろ!と呼びかけた時、古賀がダイナマイトを放り投げ爆発が起きる。

もう1本のダイナマイトに着火した古賀は、車の沖田の方を見て、沖田もそれに気づく。

古賀は沖田の車の前にいた警官たちに向けてダイナマイトを放り、3人の警官は吹き飛ばされる。

沖田の車に気づいた警官や刑事が、危ない!下がってなさい!と警告したので、沖田は事件現場に迷い込んだ一般人のふりをしてバックして逃げる。

警官が古賀に向けて発砲するが、撃つな!捕まえるんだという刑事たちの声が沖田にも聞こえる。

3本目の着火したダイナマイトを持って外に出てきた古賀に、無駄な抵抗はやめろ!と長田が叫ぶ。

古賀は覚悟を決め、ダイナマイトが爆発する寸前、ダイナマイトを持ったまま下に飛び降り爆死する。

その瞬間を沖田も目撃し、刑事たちは、ホシが自爆したぞ〜!と騒ぎ出す。

沖田も決意すると車をバックさせ、逃亡し始める。

先ほどトランクや変装用の服を捨てた場所に来た沖田は、一旦車を止め、ハンドルに頭をつけて考え込む。

車から降りた沖田は、古賀と大森用に用意していたパスポートを近くに落ちていた髪を丸めて着火するとその中に捨てる。

会議室から総合司令室に戻る倉持の顔は青ざめていた。

どうなりました?職員から聞かれた倉持は、タバコを吸い始める。

その時ブザーがなったので、職員が、はいこちら総合司令所と応じると、こちら109号、図面はまだ着きませんか、どうしました?まさか出鱈目ではないでしょうね?という青木の声が響く。

青木くん、倉持だとマイクの前に座った倉持は、落ち着いて聞いてくれ、犯人が図面を預けた喫茶店が突然の火事で、図面は消失したよと教える。

何ですって、そんなバカな!と愕然とする青木。

本当の話だ、もう警察は当てにしてられないと倉持は答え、もう一度撮影をやる、岩国錦川橋梁で漫然の準備を…、青木君、1km手前に来たら85kmまで落としてくれと指示する。

すると青木から、倉持さん、気楽で良いですねという答えが返ってくる。

気楽?と倉持が聞き返すと、だってそこに座ってああしろ、こうしろって指示しているだけ、こっちは何もできなくてジタバタするだけなんだ、畜生!昔のSLならあんたのいうことなんか聞かないで、自分の力でなんとかできるんだと青木が言うので、その通りだ青木くん、君が乗っているのは昔のSLなんかじゃない、新幹線だ!今新幹線の科学技術と管理方法が本物かどうか試されているんだ、つまらぬ感情に動かされるんじゃない!と倉持は言い聞かせる。

沖田が主犯だ間違いない!手がかりは掴めんのか?と本部から聞く花村に、はい、まだ何も…と長田が答えてくる。

沖田の妻子は?と聞くと、はあ、妻靖子(宇津宮雅代)とは昨年7月に離婚、宇津宮雅代は息子の賢一を捨てて、実家へ戻ったそうですと長田刑事は報告する。

実家の姓は富田、住所は目黒区鷹番5の35!分かった、君は工場をもう一度工場を探せ、爆弾の設計図を徹底的に探すんだ!と花村は命じるが、横で聞いていた広田が、花mらさん、妻の靖子のところには私が参りましょうと名乗り出る。

お願いすると花村が頼むと、広田は相良刑事を呼んで同行させる。 花村は腕組みをして考え込んでいた宮下に、沖田の名前を公表し、公開捜査に切り替えましょう、どんな小さな情報でも欲しいところだ…と提案する。

テレビで、新幹線爆弾事件総合対策本部は、主犯を沖田哲夫、沖田哲男40歳と断定し、全国に指名手配しましたとアナウンサーが放送したのを見ていた靖子の母(風見章子)は、驚いて、雑貨屋の店先にいた靖子を呼び寄せる。

何?母さんというやすこに、早く、早く、大変だよと母は呼びかける。

テレビ、テレビ!という母の言葉に釣られテレビ画面を見ると、また新幹線総局の倉持運転司令長は、この犯人沖田哲男に対して、特に次のような要望を述べておりますというアナウンサーの姿が映っていた。 沖田哲夫!と靖子は驚愕する。

テレビ画面では、哲男さん、頼む!君は金を受け取り、目的を達したはずだ、教えてくれ、爆弾の外し方を!君が用意した図面は不慮の火災で焼けてしまった…と倉持が訴えていた。

頼む!光109号に乗っている1500人の命を助けてくれ!危険のショックで産気づいた婦人の胎児は助からなかった、母体も出血多量のため危ない、沖田さん、一刻も早く連絡をしてくれ!頼む!と訴える倉持の姿を靖子は凝視していた。

どうする?と母が聞くので、どうもしないわ、私たちとは関係ない人よと靖子は吐き捨てて店に戻る。

テレビでは、沖田哲夫の関する数多くの情報を求めておりますと呼びかけていた。

レジのところへ戻った靖子は、過去のことを思い出す。

(回想)家で造花作りの内職をしていた靖子は、酔って帰ってきた夫の沖田を支えて部屋の中に入れると、お金どうでした?と聞くが、沖田はコートを脱ぎながら、どこも貸してくれないよというなり不貞寝し、水くれ、靖子という。

靖子が動こうとしないので、おい、水!と催促する沖田。

台所でコップに水を汲んでいた靖子は、何を思ったか、横のコンロの火を点けると、そのコップの水で火を消し、ガスだけを放出させる。

寝転がったまま、水どうした靖子!と呼んでいた沖田は、なんの返事もないので、目を開け台所を見ると、ガスコンロのスイッチを入れたままで、靖子が茫然自失といった表情でしゃがみ込んでいたので、何してるんだ!と言いながらはね起き、台所のガスコンロを止めようとするが、あなた、死にましょう!一緒に死んで!と靖子がしがみついてきたので、ばか!と言いながら靖子を突き飛ばすと、ガスコンロを止め、窓ガラスを開け、泣き出した靖子を居間に連れて行く。

先に布団で寝ていた息子の賢一(菅原安人)も、騒ぎで目を覚まして、こっそり様子を見ていた。

こたつに腰掛けた沖田は、泣きじゃくっている靖子に、死ぬなら俺一人が死ねば済むことだ、お前や賢一を道連れにする事はないよと沖田は言い聞かせる。

親類から借りた500万、私が頭を下げて借りてきたんですと靖子はいうので、そのための親類じゃないのか?と沖田はいう。

顔を上げた靖子は、あなた、そのつもりだったの?と問いかける。

何が?と沖田が聞くと、私が借りたお金なんか、返すつもりなかったのね!と靖子が訴え他ので、馬鹿なこと言うな!と沖田は叱る。

実家からは、あなたと別れさえしたら、ある借金肩代わりしてやるからって…、でも私嫌だって!とまた靖子が泣き出し、それなのにあなたったら…、賢一の将来のこともあります…、別れてください!と切り出す。

(回想明け)涙していた靖子のもとに、ごめんください、富田靖子さん?と広田が警察手帳を出しながらやってくる。

沖田哲夫をご存知ですね?と広田が聞くと、はい、昨年の7月に離婚しましたと靖子は答える。

沖田を探しているんですが、心当たりはないでしょうか?と広田が聞くと、ございません、離婚してからは一度も会っておりませんから…と靖子は答える。

失礼ですが、沖田の女性関係は?と相良刑事が聞くと、存じません、関係ないことです!と靖子は吐き捨てる。

古賀勝とか大城浩という名前にご記憶ございませんか?と広田が聞くと、知りませんとにべもないので、そうですか…、沖田の写真ありましたら拝借したいんですが、どんなものでもと広田が聞くと、ございません、全部処分いたしましたと靖子は答える。 しかし奥さん、世間ではよくお子さんのためにご亭主の写真を一枚くらい取ってあるもんでがね?と広田が迫ると、本当にないんですと靖子の態度が頑ななので、奥さん、1500人の命が助かるかどうかの瀬戸際なんですよ、もう少し協力してくれませんかと相良は頼む。

テレビでは「思い出させる面影が〜♩」と男性歌手が演歌を歌っていたが、それを見るでもなく、沖田は金の半分を梱包し、「沖縄県西原村東浜 大城まさ様」と宛名を書いていた。

その時、テレビから、ではここで、新幹線総局からの情報をお送りしますと声が聞こえ、沖田!沖田哲男さん、頼む!君は金を受け取り目的を達したはずだ、教えてくれ、爆弾の外し方を!君が用意した図面は不慮の火災で焼けてしまったんだ、頼む!ひかり109号に乗っている1500人の命を助けてくれ!と訴える倉持の姿を見る内に、新幹線が爆発するイメージを思い浮かべる沖田。

事件のショックで産気づいた婦人の胎児は助からなかった、母体も出血多量のため危ない!頼む、爆弾の外し方を教えてくださいとテレビの倉持は訴えていたが、沖田は黙々と金の梱包作業を進める。

頼む!一刻も早く連絡してください!と訴える倉持。

新幹線爆弾事件の犯人沖田哲男が爆弾の所在を記入した図面を預けた東京新橋の喫茶店「サンプラザ」が全焼し、この図面も消した模様で…とトランジスタラジオから聞こえるニュースを聞いていたひかり109号の乗客たちは絶望し、騒ぎ出す。

そんな中、新大阪で降りたがっていた男は精神に異常をきたしたのか、新幹線万歳!などと通路でおかしなことを言い出したので、他の乗客たちは鎮まってしまう。

大変だ!爆弾の図面が燃えた!とまた他の客に伝えるものが出たので、他の車両でも大騒ぎになる。

学生服の青年がパニック状態になったのを見かねた松原刑事は席を立って、宥めに行こうとしたので、護送犯藤尾は手錠を繋いでいた紐を外し、席を立って逃げ出す。

逃げたぞ〜!との乗客の叫びで松原は自分の失態に気づくが、藤尾が逃げたデッキには公安官の菊池がいたので、元来た車両の方へ藤尾は逃げる。

松原や他の通路にいた客たちを避けながら、藤尾は隣の車両に逃げ込み、食堂車のウェイトレス(相川圭子)を人質に取ると、包丁で脅してくる。

追ってきた松原がカウンター越しに、藤尾、よせ!と声をかけるが、興奮状態の藤尾は、この女ぶっ殺すぞ!と息巻く。

藤尾はカウンター内にいたコックに、ここを開けろ!早くしろ!この女ぶっ殺すぞ!と要求するが、菊池もカウンターのところに来て、藤尾、バカな真似はやめろ!そんなことすると爆発するぞ!と呼びかける。

しかし藤尾は、わかんねえ、俺はこの爆弾にやられていられるか!と喚くので、コックの1人はポケットからドアの鍵を出そうとするが、もう一人のコックがやめろ!とそれを阻止しようとしたので、藤尾はその邪魔したコックに飛びかかろうとし、そのコックが必死に藤尾の体をカウンターの外に押し返したので、松原と菊池が藤尾を取り押さえる。

藤尾は、ダイナマイトだと?ちくしょう、あのあのガキめら騙しやがって!と漏らしたので、藤尾!お前、爆弾犯人の仲間じゃなかとか!と博多署の松原が気づく。

それを聞いた藤尾は、ちくしょう、あのガキめら、俺を仲間だなんて言いやがって!と興奮するが元の席に連れて行こうとすると、乗客が、刑事さん、そいつ爆弾犯の仲間やないけ?と聞いてきたので、まだわからんとですばいと松原は答える。

仕掛けた場所、吐かせろ!と乗客たちが騒ぎ出し、藤尾を捕まえてリンチし始めたので、やめろ!と松原と菊池はかばう。

その頃、運転士の青木は、台車撮影の指定場所になったので、速度を徐々に落としていた。

87、86…、85に固定しますと青木が言うと、よし、それ以上に落とすなと倉持は指示し、青木が了解と答えた時、あれだ、先輩!と助手の森本が前方を見ながらいう。

そこには大量のライトが光っていた。

左109号接近、撮影開始!と待機していた国鉄職員が支持すると、カメラマンたちが一斉に撮影を始める。

109号の中では、松原が、爆弾はどこに仕掛けよった!と藤尾を攻めていた。

それに対し藤尾は、本当に知らないんだって!知ってたら言うって!俺だってドカンとするのは嫌だかんな!と先ほどの勢いはなくなり怯えながら答えていた。

しかし貴様も仲間なんだろ?と菊池は藤尾の髪を掴んで聞いてくる。

違うって、あいつらの計画馬知ってゆすっただけだ、クズと料で200万もらう約束だったんだよと藤尾はいうと、一瞬立ち上がって逃げようとしながら、あのガキめら、俺ば殺す気だなと怒り出すと、オメエら何ボケっとしてるんだ、早く爆弾外せ!と要求し出す。

藤尾!沖田ってやつが隠れそうな所を知らんとか?と松原が聞くが、知ってるわけなかんべ、だけど奴ら外国さ飛ぶつもりだぞと藤尾が言うので、外国?と松原は確認し、飛行機でか…と菊池も勘づ木、いつだ?と聞く。

パスポートば作るって言うんで、俺が富山の戸籍と健康保険証を貸してやったんだよと藤尾が答えたので、なんちゅうやつのじゃ!と松原が攻めると、武田…なんちゅってたかな?武田俊介ってやつのだと藤尾は思い出す。

後藤刑事は、武田俊介ですねと本部の花村からの連絡を受けて調べ出す。

そうだ、団体旅行らしいぞ、各航空会社、旅行代理店を調べろ!と花村は電話で伝える。

了解と答えた後藤は、本部情報、本部情報、沖田哲男は他人名義、武田俊介、今夜出発の団体旅行に申し込んでいる、名簿を厳重にチェックせよとレシーバーで通報する。

何です?ひかり109号を停める?と国鉄総裁は官房長官から聞いて驚く。

万一市街地や工場地域で爆発した場合の被害を考えると、安全地帯で109号を停めるというのはやむを得ぬ処置だと思いますと官房長官はいう。

この上二次災害を起こしたら、世論は納得しないでしょうと官房長官はいうので、で、その停車の0地点はどの辺に?と総裁が聞くと、それはお任せします、しかし新関門トンネルおよび北九州工業地帯の重要性を考えると、山口県の田園地帯が最適ではないのかというのが政府首脳の意見ですと官房長官はいう。

広島鉄道管理局では、現像した高速度撮影の分析を行っていた。

新幹線総局長からひかり109号を強制的に停める話を聞いた倉持は、そんなバカな!それじゃ今まで何のために苦労してきたんですか!と言い返す。

政府決定かなんか知りませんが、109号に停まれなんて指令、私は絶対出せませんと倉持は拒否する。

しかし倉持君、109号が万一の場合、場所によっては数千人の人が危険になるかもしれないんだ、君の気持ちはわかる、私だって同じだ、だがしょうの虫を殺しても大の虫を生かさなければならない場合もあるんだと新幹線総局長は説得する。

しかし、しかしまだ…と倉持が反論しかけた時、見つかったぞ!との声が聞こえる。

爆弾が見つかったぞ、これだ、2両目だ!と三宅が写真を持ってきたので、倉持君、話は後だ、すぐ爆弾を外す段取りを話し合ってくれと新幹線総局長は指示する。

倉持は関係者は集まってくださいと呼びかける。

光109号の運転士青木は、わかりましたかと電話で聞く。

よく聞け、2両目左、第一台車の外側の支持版に速度計らしきものがある、台車中新品にダイナマイトが数本、針金らしきもので括り付けられている、両方を繋ぐコードが左先頭ドアのタラップの下まで来ているらしい、ガムテープで止めてあると思う、爆発は1分で食い止められると犯人が言ったのは、タラップ下のコードを引き出して切断しろということだろうと技術部長の推測だと倉持は伝える。

田代ら車掌3人が体を抑えた菊池が、タラップの下のコードを手探りで探す。

あった!と叫んだ菊池は何とかコードを見つけ引っ張ろうとするが、砂利が手が当たってコードを離してしまう。

別の車掌が再チャレンジしようとするが、田代はやめろ!危ない!と止める。

その報告を聞いた新幹線総局長は、え?失敗した!と驚く。

いや、まだ手はあるといい、三宅はマイクに向かうと、いいか、昇降口床面下のゴミ箱の脇っぱらを壊せば、コードに手が届くはずだと伝える。

しかし青木は、それは無理です、ゴミ箱は鉄板で、とても壊せませんという。 酸素溶接機を手配するとマイクに呼びかけた三宅は、倉持君、救援車で向かうことはできないかと聞く。

倉持はできますと答え、一番近くにいる救援車を手配しろと命じる。

総局長と倉持が呼びかけると、わかってる、0地点を大月に変更していると総局長はその場から離れる。

本部、ありました武田俊介38歳、今夜20時20分、スカンジナビア航空コペンハーゲン行き、釣り旅行者の団体旅行ですと後藤が連絡してきたので、20時20分というと、搭乗手続きの締切はギリギリ19時50分だな、よし、張り込みを続けろ、沖田が現れたら即刻逮捕するんだ!応援を出す!と花村は指示する。

さらに電話を切った花村は、千田君、羽田周辺に非常警戒体制を敷け、機動隊の招集を要請するんだと命じる。

ひかり109号の隣の線には、後方から救援車が接近し、やがて両方の車体が並行して走り出す。

109号、100kmに固定せよと倉持が指示を出す。

109号、100kmジャストに固定しますと青木が応ずる。

救援車、位置はどうだ?と聞く倉持に、救援車15m下がりますと、工事車運転士(千葉治郎)が答える。

ただいま並行、速度固定しますと工事車運転士が連絡してくる。

急いでくれ、障害物まで後15分だと倉持が指示する中、酸素溶接機の受け渡しが始まる。

救援車の乗降口から梯子が109号車の乗降口に届く。

車掌たちがその梯子を固定させ、その上に板を置くと、酸素溶接機を入れたバッグを底に滑らせて引っ張る。

酸素ボンベを引く時引っかかった中、妨害物が接近してくる。

急げ、早くしないとぶつかるぞ!早くしろ!もっと引け!と救援機側の作業員たちが叫ぶ中、引っ掛かりが取れ、ボンベが動いたので、必死に109号の方へ引き寄せ、ロープを離せ!と109号側から呼びかける。

ボンベを何とか引き込んだ直後、妨害物が梯子に激突し、梯子はへし折れる。

床面を上げた後、青木が酸素溶接機のバーナーで、切断を開始、その間、運転席では森本が操縦桿を握っていた。

床面に穴が空き、青木は爆弾のコードを発見する。

青木は自らペンチを使い、コードを引っ張り上げ切断する。

切断完了しましたとの連絡が司令所に届き、全員歓喜に包まれる。

倉持君、ご苦労様と新幹線総局長が握手を求めてくる。

その時、司令長、0地点まであと5分ですが停車させますか?と係員が聞いてきたので、もちろんだと新幹線総局長は答え、だが今度は大威張りで停められるなと笑う。

その時、総局長、この伝送写真を見るともう一つ!と宮下が言いにくる。

写真が不鮮明でよくわからないんですがと宮下はいうが、わからん、違うかもしれんなと三宅も写真を見て迷う。

もう一度撮影してみたらと高沢が提案するが、ダメだ!0地点を動かすわけにはいかんと新幹線総局長は拒否し、停車させた前と命じる。

しかし、総局長…と倉持は呼びかけるが、君たちは万全の努力をした、責任は私が取る、停車させろと新幹線総局長はいう。

万一、爆弾だったら!と倉持は粘るが、だから停めるんだ、倉持君、君が司令できないなら私がやるといい、新幹線総局長がマイクに近づく。

その前に立ち塞がる倉持。

しばし沈黙が続いた後、私がやりますと倉持は口を開くと、マイクに向かい、ひかり109号、前方6kmで停車すると指示する。

運転士の青木は、了解、やっと停まれるんですねと喜ぶ。

0地点では消防隊が待機していた。

列車が来ましたと消防隊長。

減速開始と倉持は命じ、青木が減速を開始すると異常はないかと聞く。

異常なし!只今76!74、72!と青木が答える。

よし、大丈夫だ、だが青木君、手動を制御になったら慎重にやれ、コードを切ってもまだダイナマイトを抱いたままだからな…と指示する。

了解しました、40!35!手動制御に入ります!と青木は答える。

消防隊に見守る前でひかり109号は停車する。

停車しましたとの知らせが司令室に届く。

乗客たちも停まったぞ!と沸き立つ。

待機班が手を振りながら崖を登ってひかり109号に近づいてくる。

それを運転席から見守る青木と森本。

歓喜の声で埋まる司令室の中、おめでとう青木君、よく頑張ったな!とマイクから呼びかける高沢。

そちらこそありがとうございました!と感謝する青木。

自衛隊の爆発処理班がダイナマイトを除去してくれるそうだ、再出発は約30分後だ、まあそれまで昼寝でもしていてくれと冗談をいう高沢は、倉持の方を叩き、上原君に交代して君も休みたまえを声をかける。

席を立った倉持は新幹線総局長の顔を凝視するが、新幹線総局長は涙していたので、そのまま部屋を出る。

しかし窓際に来た倉持は、捜査部屋の異変を察知する。

教えてくれ、爆弾を外し方を!と、捜査部屋のテレビではまだ倉持が訴える顔が写っていたからだ。

君が用意した図面は不慮の火事で焼けてしまったんだと言う声を聞いた倉持は、宮下が一人残っていた捜査本部に入り、おめでとうと声をかけてきた宮下に、あれはどう言うことなんですかと聞く。

母体も出血多量のため危ない、沖田さん、一刻も早く連絡してくれ!頼む!とテレビの倉持は訴えている。

沖田に罠をかけたんだ、放送局に協力を頼んでねと宮下は説明する。

じゃあ、109号救出のニュースはまだ発表されてないんですか?と倉持は聞く。

沖田はこいつを見て、電話をかけてくるのを待ち構えているんだ、今度は40秒で逆探知できる体制を整えてあると宮下はいう。

そんなことはどうでも良い!すぐ109号救出を発表してくださいと倉持はいい、電話を宮下に向ける。

だがこういう事件の後ではすぐ真似をする奴が出てくる、そいう連中を予防するには犯人を逮捕するのが一番だと宮下はいう。

逮捕の方法はいくらでもあるでしょう、しかし109号の乗客の家族は、命の縮む思いであのテレビを見てるんですよ、いっときも早く安心させてやるべきじゃないでしょうかね?と倉持はまた電話を差し出す。

博多到着の予定発表時間の5分前には全てが公表される、後30分だ…、そのくらいの遅れは、それが犯人逮捕のためと分かれば、みんな許してくれるだろう…、ここまで追い詰めたんだ!君も我慢してくれ!と宮下は言い聞かせる。

そこににこやかな表情の新幹線総局長や高沢が談笑しながら戻ってきたので、部長、私、辞めさせていただきます、明日辞表を持って参りますとのでと、倉持は高沢に伝える。

どうしたんだ?と高沢は聞き、宮下に何かあったんですか?と聞くが、倉持君は犯人に罠をかけるため、109号救出のニュースを抑えたのが気に入らんらしいのですと宮下が言うと、そんなことじゃないんです、私は人の命を預かる仕事に疲れたんですと倉持はいうので、君は立派にやり遂げたじゃないかと新幹線総局長が慰めるが、1500人の命を救ってください、頼む、沖田さん、一刻も早く連絡してください!とテレビから呼びかける倉持の映像を前に、嘘っぱち!と呟くとテレビを切り、俺は1500人の命を見捨てたんだ、俺が停車を命じたんだ!と吐露する。

倉持君、あの場合仕方がなかったんだと新幹線総局長は言い返すが、あの時ひかり109号にもう一つ爆弾がついていなかったのは単なる幸運にすぎない、俺は人殺しだ、もうこの仕事を続けていく資格はありませえんと倉持は言い残し、部屋を後にする。

その頃、沖田は、倉持の偽の放送を流しながら、最後の荷造りを急いでいた。

ドル札を本のケースやバインダーの中に仕込んでいたのだった。

羽田空港には広田ら刑事たちが張り込んでいた。

須永も、空港の喫茶室で待機していた。

何してるんだろう、武田俊介は?と須永が聞くと、搭乗受付の締め切りまで後20分ありますと千田が答える。

勘付かれたのかな?と須永は案ずる。

逆探のために待機していた電話局員も、かかってこないな、罠だと気づいたんじゃないか、うん、せっかくこれだけの体制組んだのにな〜、ちくしょう!などと話し合っていた。

長田刑事も張っていた。

そんな中、武田ですが?切符を預けているんですが?と受付にやってきた客の声に後藤が気づく。

カウンターに置かれた旅行かばんに隠れて顔が見えないので、後藤が立ち位置を変える。

どちらの武田様ですか?とスタッフが聞くと、武田信男ですけどと言う客は禿頭の別人だった。

武田信男様、20時10分のサンフランシスコ行きですね?とスタッフが確認するとそすですという。

後藤が席を戻った直後、すみませんSASのカウンターこちらですか?と聞いてきたサングラスをかけた沖田が背後から顔を出すが、後藤は見逃してしまう。

隣の隣のカウンターに大きなスーツケースを持って沖田が移った時、本部情報、本部情報、武田俊介はまだ来ませんと後藤がトランシーバーで連絡しているところだった。

その後藤の目の前に来た沖田は、佐久間五郎さん?とSASの女性スタッフ(多岐川裕美)から呼ばれ、はいと答えていた。

ご登場が始まっています、お急ぎくださいとスタッフから言われた沖田はそのまま後藤に気づかれぬまま搭乗口へと向かう。

エレベーターで2階に到着した沖田はサングラスを外すが、その時、テレビ画面から、沖田さん、一刻も早く連絡してくれ!頼む!と呼びかける倉持の顔が目に飛び込んでくる。

光109号は博多到着まで後10分ですとアナウンサーが告げ、画面時は夜中疾走するひかり109号が映し出されていた。

時間が迫っております、沖田哲男さん、どうか対策本部までお電話ください、1500人もの人の命がかかっているのです、1500人の命を救ってください、お願いします、至急電話をください!とアナウンサーが呼びかける。

その画面を野次馬越しに見つめる沖田。

沖田は赤電話が一つ空いたので、その受話器を取ると電話をかける。

そして小声で、もしもし、私、109号の沖田ですと名乗る。

爆弾の外し方教えるから、よく聞いてくださいと続ける。

新幹線東京運転所(品川)

待ってくれ、ここは東京運転所だ、そんなことなら対策本部の方へ!と東京運転所係員(中田博久)が困惑したように答えながらも、他の係員に本部への連絡を頼む。

逆探知はごめんだ、いいですか?2号車前部の左のドアを開け、タラップの下を見てくださいと沖田は続ける。

スカンジナビア航空985便、アンカレッジ経由コペンハーゲン行きのお客様は、お急ぎ後お搭乗くださいという アナウンスを聞きながら、電話を終えた沖田は何食わぬ顔で搭乗口に来ていた。

その時、花村に連れられ物陰に立っていた靖子の姿を見かける。

さらに野球帽を被った賢一の姿も見つける。

父親の姿を確認した賢一は、ママ!と呼びながら靖子に走り寄ると、その胸に抱きつく。

花村はその様子に異変を感じ、奥さん、あの男ですねと聞くと、賢一が違うよ!よそのおじちゃんだよ、違うったら!と言い張る。

沖田はその場から立ち去ろうとする。

奥さん、そうですね、おかげで1500人の命が助かりますと花村が念を押すが、靖子は何も答えなかった。

花村は沖田の後を追い、ホシだ!と、近くにいた広田に知らせる。

パパ!と呼びかけるケンイチを抱き止め、賢一!と呼び泣き崩れる靖子。

沖田を発見、北のエリアに追い込みましたと花村は須永に報告する。

よし、絶対逃すな、万一の場合射殺しても構わんと須永は命じる。

沖田は空港の外に出るが、そこには大勢の警官隊が警備していた。

やがて発見され逃げ回る沖田は、追い詰められ川に飛び込む。

広田、千田らと駆けつけた花村は、対岸に回れ!と指示する。

対岸に泳ぎ着いた沖田は、羽田から離陸したスカンジナビア航空の旅客機の機影を見つける。

それに向かって走っていた沖田にライトが当たり、見ると、大勢の警官隊が一列に並んで包囲していた。

逃げるな!逃げると撃つ!と須永が呼びかける。

その横には花村と千田も立っていた。

しかし沖田は飛び立っていく旅客機の方へ逃げたので、須永は撃て!と命じる。

画面が白黒になり、撃たれた沖田はのけぞり、倒れたところでストップモーション。

旅客機は夜空に飛び立っていく。

特別出演

丹波哲郎

北大路欣也、川路民夫、田中邦衛

キャストロール




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