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異人たちとの夏

1988年度、松竹、大林宣彦監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

離婚した中年放送作家の原田英雄(風間杜夫)は、夜になると、住む人もいなくなるマンションで一人暮らしていた。
仕事仲間であったディレクター(永島敏行)から、別れたかつての自分の妻と交際したいので、仕事上の付き合いは今後遠慮したい…と告白された夜、一人の女性の訪問を受ける。

聞くと、同じマンションにこちらも一人で住む、英雄の作品のファン(名取裕子)だという。そうとう酔っている様子。一緒に飲まないかと誘われるが、英雄はドア口できっぱり断わり、追い返す。

その日から、英雄は不思議な経験をするようになる。

取材で訪れたゴーストステーション(使用されていない駅空間)。
仲間とはぐれ、何とか一人で外に出た英雄は、その足で子供時代を過ごした浅草に足を向ける。

落語を聞こうと立ち寄った寄席で、一人の客の後ろ姿が気にかかる英雄。
それとなく席を移動して、その客の横顔を確認してみると、自分が12才の時に死んだはずの父親。死んだ時と同じ、若い姿のままであった。

その父親(片岡鶴太郎)は、チラリ、英雄を目で確認すると、最初から分かっていた風に目で合図を送り、一緒に外へ出る。

誘われるままに彼の住むアパートに付いていった英雄は、そこに、こちらも父親と共に死んだはずの若き母親(秋吉久美子)が待っていたのを知る。

懐かしさに時間を忘れ、ほろ酔い気分でマンションに帰った英雄は、またしてもあの夜の女と出合い、いつしか、二人は深い仲に…。

バレリーナをしている桂(けい)と名乗るその女は、いつしか、英雄の様子が変化しているのに気付く。顔がやつれ、死人のような容貌になっていっているのであった…。
「誰かに会っているんじゃない?」と訪ねる桂。
しかし、英雄は父や母との逢瀬を断ち切れないまま、ずるずると時を過ごしていく。
英雄の衰弱振りは、危険な状態にまでになっていった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

途中で「牡丹灯篭」だな…と気付く。
山田太一の原作、市川森一の脚本が素晴らしい。
ホラー要素も入っているが、幻想譚…というか、基本的には大林監督得意の、心あたたまるファンタジーというべきだろう。

中年の目で観ると、涙が溢れてくるような情感に満ちあふれている。

決して派手さはないが、心にしみ込んでくるような名作だと思う。