TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

ひとごろし

1976年、大映&永田プロ、山本周五郎原作、大洲斎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

越前、福井藩。
甘いものには目がないが、犬にさえおびえる、とんでもなく臆病な侍、双子六兵衛(松田優作)の妹、かね(五十嵐淳子)は、ふがいない兄を持ったお陰で、付け文さえももらった事がないと家でこぼす。

一方、藩お抱え武芸者の仁藤昂軒 (丹波哲郎)は、そのあまりの腕っぷしの強さ故に、周囲から嫌われていた。

ある日、その昂軒 (こうけん)が、暴走する馬に乗っていた家老の一人息子を救った事が城内で噂になり、ますます、周囲のやっかみは強くなる一方。(六兵衛も、暴走馬の現場に居合わせたが、持っていた饅頭をほうり出して、腰を抜かしただけ)

とうとう、昂軒 暗殺を企てた一部侍連中は、一旦はそれを制止しながらも、積もり積もった怨念から逆上して斬り掛かった加納平兵衛(岸田森)もろとも、全員、昂軒 の返り討ちにあってしまう。

昂軒 は、北国街道を江戸に旅立つ事になる。

藩では、その昂軒 に対し、上意討ちが命ぜられるが、かないそうな侍が見当たらない。
そんな中、あろう事か、臆病者の六兵衛が、一世一代の勇気を振り絞り、ふるえながら、自分が討手になると申し出る。

かくして、六兵衛は昂軒 を追う事に。

途中、追い付いた相手が剣を振りかざしたのに驚いた六兵衛、思わず「ひとごろし〜!」と叫んで逃げ出してしまう。

しかし、世の中には、自分同様、臆病者が多い事に気付いた六兵衛、一計を案じ、その後、昂軒が行く先々に近付いては、「ひとごろし〜!」と叫び、周囲の人間をパニック状態に陥れる。

旅先の宿や飯屋にも落ち着ける場所がなくなった昂軒 は、次第に、六兵衛の卑怯な作戦にいらついていく。

しかし、そんな昂軒 に同情したのか、自分の宿に泊めさせた女将、およう(高橋洋子)、六兵衛から訳を聞いた翌日、自分も六兵衛を助けると同行してきては、一緒になって「ひとごろし〜!」と叫ぶようになる。

船で川を渡っていた昂軒 に、いつものように「ひとごろし〜!」と、別の船から叫んだ六兵衛、慌てて、他の客と一緒に川へ落ちた昂軒 が泳げない事実を知ると、竿を差出し助けてしまう。

そんな3人がやってきたのが富山藩、不審な行為を疑った役人に捕まった六兵衛は、藩主の命により、城内で昂軒 との果たし合いを申し付けられる。

パニック状態になる六兵衛。
とてもまともな状態で試合に臨む事もできず、試合直前、立て札に頭をぶつけた事を幸いに、昂軒 の前で、とうとう気が触れたまねをする始末。

そんな六兵衛、およう両名と、心理的に追い詰められていく昂軒 …。
皮肉というか、意外な結末が用意されている。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

武芸の腕一本に賭け、立身出世を計る昂軒 と、その対極的な存在である六兵衛を配する事により、武士社会の矛盾点を鋭く問い掛ける内容になっている。

ユーモラスな役柄を演ずる松田優作が見所。