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ヒポクラテスたち

1980年、シネマハウト&ATG、大森一樹監督作品。

和製「アメリカン・グラフィティ」みたいな作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

洛北医科大学に通い、鴨川寮で生活している荻野愛作(古尾谷雅人)を中心とした、医者の卵達の青春模様を描いている。

大学病院での実習にも、寮内での学生運動にも、今一つ馴染めず、将来の展望もないまま、漫然とした日々を過ごしている6回生、荻野は、付き合っていた学校内図書館に勤める中原順子が妊娠した事を知り、体面を気にする余り、知らずに偽医者に連れて行って処理してしまう。

その後、順子の体調が悪化、入院騒ぎとなるが、自分が取った行動の愚かさに気付き、荻野は精神のバランスを崩してしまう。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ATG作品特有の暗く重いイメージはなく、70年代の若者像を、等身大の視点から捕らえた淡々とした印象の作品になっている。

何より、全編に渡り、医学実習の実体をユーモラスに描いていたり、大森監督自身の8mm映像の挿入、マニアックなゲスト陣の参加などもあり、低予算なりにエンターテイメントになっており、画面的に飽きる事はない。

ちなみに、「怪盗ルパン」を演じる鈴木清順、小児科医を演ずるベレー帽をかぶっていない手塚治虫、CTスキャンとビートルズの関係を語る、元フォーク・クルセダ−スの北山修、レポーターを演じる二瓶正也などは、今となっては、お宝映像というべきだろう。

ちなみに、寮生には斉藤洋介、金子吉延(青影)、小倉一郎、阿藤海、内籐剛志ら、錚々たるメンバーが扮している。

紅一点、木村みどりを演じる伊藤蘭は、健闘しているものの、愛作に比べ、やや客観描写になっているため、結末に唐突さを感じないでもないが、青春期特有の、すべからず自分中心、他人の事は無関心…という感覚から生じる「唐突さ」を意図したものだと考えれば、それは成功しているように思える。
「青春期のほろ苦さ」の象徴として、順子とみどりは配されているのではないだろうか。
そういう意味では、本作における蘭ちゃんの存在理由は大きい。

寮内に流れているキャンディーズ「微笑み返し」、「ブラックジャック」、「赤頭巾ちゃん気をつけて」など、70年代を知る者にとっては、本作は間違いなくタイムスリップ的効果をもたらしてくれるアイテムが次々と登場。

ATG作品としても、青春ものとしても、一見の価値あり。