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初笑いびっくり武士道

1972年、松竹、野村芳太郎監督作品。
原作は、松田優作主演でリメイクされた「ひとごろし」(1976)と同じ、山本周五郎「ひとごろし」である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

越前福井藩で閑職を勤める双子六兵衛(萩本欽一)は、やもりや子犬までもを怖がる、藩一番の臆病者。
彼の妹、18才になる、かね(岡田友紀)は、中野大八郎(森田健作)というボーイフレンドがいながらも、いまだ求婚もされぬと、いつも不満を兄にぶつけていた。

城で小姓を勤める美少年、加納平兵衛(ピーター)に言い寄られた、藩のお抱え武芸者、仁藤五郎太夫昂軒 (坂上二郎)は、加納の行動は修道の道に外れると、相手を斬り殺すと、自らは、北国街道を江戸に向かう事にする。

怒った城主、松平宗矩(嵐寛寿郎)は上意討ちを命ずるが、討手のなり手が見当たらない。
そんな所に、臆病者の六兵衛が名乗り出る。

昂軒 を追って、早駕篭(フォーリ−ブス)に乗った六兵衛だったが、途中で、スリの穴泥の半次(田中邦衛)と知り合う。

彼の入れ知恵で、虚無僧に化けた六兵衛、同じ格好をした仇討ち相手と間違われ、危うく待ち伏せしていた娘(榊原るみ)に斬りかかられる始末。
偶然その場に居合わせた本当の仇討ち相手(吉田義男)と、助太刀で戦いに加わった昂軒 との大立ち回りに、六兵衛アタフタ。

そんな情けない六兵衛だったが、世の中には、自分のような臆病者の方が多いのだと気付き、昂軒 の行く先々に近付いては、「ひとごろし〜!」と叫んで、周りをパニック状態に陥れる作戦を思い付く。

途中、泊まった宿の女主人、およう(光本幸子)は、六兵衛の話を聞くと、自分も一緒に加勢すると付いてくる。

富山藩では、二人の行動に不審を抱いた役人、猪戸団右衛門(宍戸錠)に捕らえられるが、事情を聞いた猪戸もまた、二人に加勢して、一晩中、昂軒 が泊まった宿の前で「ひとごろし〜!」と、叫びつづける始末。

その言葉に驚いた茶店や旅篭で、段々まともな相手をしてもらえなくなった昂軒 は、次第に食べる事もままならなくなり精神的に衰弱していく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

コメディとして観ると、さほど笑える所がない作品なのだが、意外と真面目な芝居をしているコント55号の二人に驚かされる。

内容そのものは、力に頼る武士社会への、痛烈な皮肉が込められている話であるだけに、真面目な作品として観てしまう。

登場人物や話を、よりシンプルにした松田優作版の方が、テーマ性はストレートに伝わって来るようにも思えるが、本作もそれなりに出来の良い娯楽作品になっている。

タイトルから、お正月映画だったと察せられるが、せっかく出演している南利明や森田健作らゲスト陣の活躍が、ほとんど見られないのが、残念といえばいえるかも知れない。

リメイク版と両方見比べてみるのも、面白いと思う。