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続座頭市物語

「座頭市物語」の続編。

この続編で、前編で気持ちを打ち明けられた市が、おたねの愛情を受け止められなかった理由が明かされている。

市には、お千代と言う恋人がかつており、その交際期間中に眼が不自由になって行き、そのことを理由に、実兄に取られてしまった苦い過去を持っていたのだ。

その時、兄と諍い、相手を叩き斬ったと言っており、その兄である与四郎は左手がないので、その時、市が斬ったと言うことなのだろう。

兄の与四郎の方も、片腕を失ったことでお千代に逃げられ、その後、強盗にまで身を落とした荒れた人生を送らざるを得なくなる。

そんな兄弟が、運命的な再会をする…と言うのが本編の骨子だが、よく考えると、市の人物像を説明しようとするあまり、かなり強引な展開になっているように感じる。

その辺も含め、この続編は、正編に比べると72分と言う短い上映時間と言うこともあり、かなり映画としては、アイデアもパワーも不足しているような気がする。

何だか、取って付けたような続編のようにも見えなくもない。

勝新と若山富三郎との実兄弟対決と言う「売り」だけに頼っているような気がするのだ。

その兄弟対決も、意外とあっけなく勝負がついており、やや物足りなさを感じなくはない。

相手の剣を奪って…と言う市のやり方の伏線が、冒頭での船の中で、市を川の中に突き落とした勘造が、自分の刀で目をやられると言う部分だと思う。

見所と言えばその程度で、後は、市が強過ぎるだけで、ややアクションとしては単調に感じる。

市の心に残っている恋人お千代は、どうやら、本作でお節として登場している水谷良重に似ていると言う設定らしい。

そして、そのお千代は、いまだに生きている可能性があることをラストで与四郎が明かしている。

そのお千代は、この後の作品で登場するのか否か…

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、大映、子母沢寛原作、犬塚稔脚色、森一生監督作品。

※文中に、今では差別用語と言われる言葉がいくつか出ていますが、それを省略しては話が通じない部分もあり、一部伏せ字にしてそのまま使用しております。なにとぞ、ご了承ください。

船着き場から渡し船が出ようとしている所へ、近づいてきたヤクザ勘造(水原浩一)が、自分たちは急ぐから、みんな降りろと無体な事を言い出す。

船頭は、すぐに戻って来るからと言うし、先に乗っていた乗客たちも降りるのを渋っていたが、勘造の背後から近づいて来るヤクザの一党を観ると、面倒を恐れて渋々降りて行くしかなかった。

降りた農民たちは、自分たちだって急いでいるんだ…と愚痴をこぼす。

ヤクザの一党が乗り込み、渡し船は岸を離れるが、そんな船の先頭部分に寝ていた按摩がいた。

それに気づいた勘造は、お前も降りるんだと、その按摩の襟口を掴むと、川に放り込むが、その時、左目をやられたと勘造はかがみ込んでしまう。

何が起きたか分からない仲間のヤクザたちだったが、目を押さえて苦しむ勘造の刀は、いつの間にか中味がなく鞘しか残っていない事に気づく。

川に落とされた市は、水中を泳いでいた。

船を降り、苦しむ勘造を地面に寝かせた一党たちだったが、森助(伊達三郎)が、さっきの按摩は、噂に聞く座頭市だと言い出し、やろうじゃないか!と勘造の仇討ちを誓い合う。

その頃、川を上がった市は、濡れた着物を干しながら、岸で寝そべっていたが、そこに近づいて来る2人組があった。

浪人姿で左手がない渚の与四郎(城健三朗=若山富三郎)と相棒の鏡の三蔵(中村豊)だったが、与四郎は、何を思ったか、近づいてきた森助ら一党に斬り掛かって行く。

起き上がった市は、斬り合いの騒ぎ声が遠ざかって行くのを聞き、自分には関係ないと思い込み又横になる。

与四郎がヤクザたちを皆殺しにすると、三蔵が死んだ森助の懐から巾着を盗み取る。

彼らは、コンビの強盗だったのだ。

市が寝ていた場所へ2人が戻って来た時には、もう干した着物も市の姿も消えていた。

その夜、宿場町で笛を吹きながら客を捜していた市は、黒田越前守宿と書かれた旅籠の前を通り過ぎた所で、立ち小便をするが、そんな市に、旅籠の勝手口から声がかかり、宿の中に案内される。

宿の中は参勤交代の一行が宿泊していたが、市の姿を観たお付きの者らしき侍は、このままではあまりにむさ苦しいので風呂に入れさせるように命じる。

その後市は、宿の者に風呂で身体を洗ってもらい、手袋をさせられた上で、殿様らしき人物の部屋で按摩をさせられる。

何も知らず、いつも通り按摩を始めた市だったが、途中から黒田の様子がおかしい事に気づく。

へらへら笑い出し、市が手にはめていた手袋を剥がしたりし始めたのだ。

按摩を終わり、宿の者に外まで送ってもらった市だったが、気がつくと、3人の侍が待ち受けていた。

気配で立ち止まった市は、殿さんがキ○ガイだからって、あんたらまでキ○ガイの真似をすることぁねえと注意するが、有無を言わさず斬り掛かってきたので、あっという間に斬り殺してしまう。

3人がやられたとの知らせを聞いた家老は驚き、何者だ?ただの按摩に3人も斬られるとは…と驚くと同時に、生かしておくと、何を言いふらされるか分からないので、今夜中に見つけ出して始末するよう家臣たちに命じる。

かくして、その夜の宿場町は、あちこちで旅籠改めが行われる。

そのせいで、旅籠にいられなくなった女が3人、飯屋に立ち寄って、探しているのは、26、7の旅の按摩だってよなどと噂しあう。

その時、店の隅で一人酒を飲んでいた市が酒をくれと声をかけたので、女たちは息を飲む。

その市こそ、侍たちが探しまわっている按摩だと気づいたからだ。

女の1人お節(水谷良重)が、あんた、ここに来るよと注意するが、その内、お芳(井上明子)お清(若杉曜子)を交えて、市は一緒に酒を飲み始める。

そこに入ってきたのが、渚の与四郎と鏡の三蔵だった。

思わず、お節は市を店の物陰に隠す。

3人女だけが店にいると思い込んだだったが、お節の顔を観ると、驚いたように、お千代にそっくりだと与四郎に耳打ちする。

それを聞いた与四郎は、お節に近づくと話しかけて来る。

お節が嫌がっている気配を察した市は、物陰からわざと姿を出し、お節に顔を触らせてくれと頼む。

市は、俺にも惚れた女がいたんです。でもその女は、俺の眼がダメだと知ったら他の女と逃げた。俺はその男を叩き斬ってやったんだと打ち明ける。

三蔵の元に戻って来た与四郎は、そんな市の話をじっと黙って聞いていた。

市は、今夜付き合ってくれるかい?とお節に頼み、店の主人に酒代を置いて行くと、店を後にする。

その直後、市を探しまわっていた侍が店の中に入ってきて、按摩を見つけた者には礼をすると言うので、三蔵は思わず笑顔を見せる。

その頃、黒田家の家老は、町のヤクザ、関の勘兵衛(沢村宗之助)の家を訪れていた。

翌朝、海の側のあばら屋で一夜を過ごし、海の水で顔を洗っていた市に、侍が関の勘兵衛を探していたと言う噂を聞き込んだお節が伝える。

市は、バカな話だ。しゃべるなって言えば良いものを…と呆れたように答える。

お節が自ら作った朝飯を市が喜んで食べている頃、勘兵衛は家老に市の情報を教え、金をもらっていた。

お節は市がかつて惚れていた女の名を聞いたので、自分はお千代の身替わりなのでつまらない。そう言えば、夕べのお侍が恋いこがれていたのもお千代さんだったねとぼやくが、それを聞いた市は、あんな侍のことは言うな!と急に機嫌が悪くなる。

食後、旅支度を始めた市は、これから笹川の浄勝寺へ出かけようとしていたが、そこに、勘兵衛の子分衆がやって来たので、本陣の侍に頼まれたんですか?と聞くと、お節に金を渡し、ここの家に世話になったので渡してくれと頼んで外に出る。

海辺に来た市は、あっという間に3人のヤクザを斬ってしまう。

それを近くで震えながら観ていたお節は、どうしてそんなに強いんだい?と驚きながらも、船でお逃げよと耳打ちすると、近くにいた漁師の子に頼んで小舟を出してもらい、市をその船の所まで案内すると、ありがとうと礼を言う市を、自分も海の中に入りながらいつまでも見送っていた。

市に逃げられたと知った勘兵衛は、子分を引き連れ、市が向かうと聞いた笹川の浄勝寺へ向かう途中、飯岡組に立ち寄る。

その時、飯岡の家の二階から降りて来たのが飯岡組にわらじを脱いでいた与四郎だった。

与四郎は、勘兵衛らには興味がないように裏手に廻ると、そこでおたね(万里昌代)を観るが、こちらにも興味を惹かれない様子だった。

やがて、飯岡助五郎(柳永二郎)が帰って来て、与四郎を呼び寄せると、お前さん、俺に隠していることがありはしないか?と聞いて来る。

お前さんは実は八州様のお尋ね者で、飛騨の高山を手始めにあちこちで泥棒や女を手込めしてきたようで、人相写しがこちらにも廻ってきているぜ。ヤクザが侍に化けたのも、御上の眼をくらますためだろう?薄情なようだが、すぐにわらじを履いてもらいたいと言うと、今度は勘兵衛に会い、座頭市と言うのは、去年、10日ばかりうちでゴロゴロしていた奴だが、腕は強いと教える。

助五郎の子分が、浄勝寺には、去年倒した平手造酒の墓参りに帰って来ると言っていたようだと情報を教えたので、それを聞いた助五郎は、自分が殺した相手の墓参りに帰って来るとはおかしな奴だと笑う。

そうした中、与四郎は三蔵を連れ、飯岡組を後にしていた。

その直後、当の座頭市が飯岡の家を訪ねて来る。

それを子分から伝え聞いた助五郎は、お前たちの後を付けられているのでは?と勘兵衛に聞く。

とにかく玄関に出てみた助五郎だったが、そこにはもう座頭市はいなかった。

市は出て行ったのではなく裏に回ってきたのだったが、縁側に近づいてきた市を間近に観た勘兵衛は、刀に手をかけるが、市から話しかけられ、聞こ覚えのない声だが、どちらさんで?と聞かれたので、勘兵衛は名乗るしかなかった。

その名を聞いた市は、そう言えば、あそこの親分も勘兵衛だと言いながら笑い出す。

そこへ助五郎もやってきてじっと話を聞いている。

殺気立った勘兵衛や助五郎たちの気持ちに気づいたからかどうか、市は、親分さんに宜しくと挨拶して出て行く。

かつて、平手造酒と出会った堀にやって来た市は、あんな良い人はいなかった。人間のはかなさを言っていたが、その人を俺は斬っちまった…。やっと、人間として付き合えると思った人を俺は斬っちまった…と1年前を思い出し、おたねさん、どうしているか…、メ○ラの俺に女房になると言ってくれた…。お千代の奴も、嫌いなあいつと逃げやがった。あの時は、目の前が真っ暗になった…、そのはずだ。あの時はもうメクラだった…などと感傷に耽っていた。

同じ頃、近所の住民たちは飯岡一家を中心に騒ぎが広がっており、その様子に、事情を知らなかったおたねも気づく。

一方、飯岡組を追い出された与四郎と三蔵は、助五郎から一文ももらえなかった事を愚痴りながら、畑から盗んだイモを焼いて食っていたが、自分たちを追ってきたヤクザに気づくと、その場で斬り捨てる。

おたねとその父親弥平(山路義人)は、大盗賊と座頭市がいて大騒ぎになっていると言う噂を耳にする。

そんなおたねの家の前を、市を追って勘兵衛たちが出発する。

やがて、林の中の穴の中に落とされていたヤクザの死体を発見した勘兵衛は、与四郎の仕業だな…と気づく。

浄勝寺では、到着した座頭市が、僧侶たちに平手の供養をしてもらっていた。

その浄勝寺の方に近づいていた与四郎と三蔵は、市を追って寺に向かう勘兵衛一家と役人たちの一行を目撃し、道ばたに隠れる。

寺の中に入ってきた勘兵衛一家の子分は、障子の隙間からこっそり中で読経を聞いている市の姿を発見するが、市の方は、読経の声で、外の気配がうかがいにくい様子だった。

そんな所に駆けつけてきたおたねに気づいた市は、知らせにきてくだすったのかい、ありがとうと喜び、小坊主に案内され、おたねと共に平手の墓に向かう。

その墓の周囲は、勘兵衛一家が取り囲んでいたが、市は平手の墓をもうで、小坊主に供養料を手渡すと、自分の笠を手に取ろうとする。

しかし、おたねが、その笠は自分が持っていると言って放そうとしない。

市は、自ら勘兵衛一家の方に近づいて行くと、ここは墓だ、もっと良い所があると言って、自ら戦いの場所に案内する。

広い空き地にやって来た市は振り返り、お前さんたちは、勘兵衛さんの所の人かい?と聞いたので、勘兵衛は俺だ!と勘兵衛自ら名乗りを上げる。

それを聞いた市は、こんな所まで出ばるとは、駄賃も安くないな?と笑う。

そんな空き地にやってきた三蔵は、ありゃ、按摩だぜと与四郎に声をかける。

後ろを振り向くと、飯岡助五郎一家と役人たちがそろって駆けつけてきたので、野郎、俺を売りやがったなと吐き出した与四郎は、逃げろと三蔵に声をかける。

しかし、ずっと道連れだった三蔵は、どこへ逃げるんだよ?と戸惑う。

そんな中、座頭市は、勘兵衛一家をほぼ全滅に追い込んでいた。

ただ一人生き残っていた勘兵衛に、市は、そっちから風を起こしてくれねえと、当たりが付かないんだと市は話しかけていた。

そこへ近づいてきた与四郎は、座頭市は俺に斬らせろと、立ちすくんでいた勘兵衛に声をかけると、市、しばらくだったな…と呼びかける。

その声を聞いた市も、しばらくだね…と答える。

そんな2人の対決を前に、三蔵は背後から迫ってきた助五郎一家と役人に狼狽し、あいつら来るよ!と与四郎に呼びかけながら、とうとうたまらなくなり1人で逃げ出して行く。

市と与四郎は斬り合い、与四郎が尻餅をつくが、そこに近づいてきた市の右手を下から斬り上げ、仕込み杖を落とさせる。

その右手を押さえながら、市は、兄さん、そんなに俺が憎いのか?と問いかける。

すると与四郎は、俺の一生はメチャクチャだと答える。

お千代はどうした?と市が聞くと、死んだ、俺が殺したと言うので、そうか、死んだか…と市は呟く。

その隙を狙い、与四郎は市に飛びつくが、市は、与四郎の小刀を奪い、その腹を突き刺していた。

刺された与四郎は、どうせ捕まりゃ、獄門首だと言うので、兄さん、何かやったのか?と座頭市は問いかけるが、何も答えない与四郎は、ひと思いに殺せ!と詰め寄る。

そこに、助五郎一家と役人たちが到着し、2人を取り囲んだので、市は小刀を構え、与四郎を抱えながら橋の方へ移動すると、一緒に川の中に飛び込む。

その後、役人たちは小舟を漕ぎ出し川浚いを始めるが、2人は、浄勝寺近くの廃屋の中に逃げ込んでいた。

小坊主が血止めの布を持ってきてくれたので、おたねさんはどうした?と市が聞くと、用があるからと帰りました。あの人お嫁に行くんですと小坊主は答える。

それを聞いた市は心から喜ぶが、実はまだおたねは帰っておらず、部屋の隅で市の笠を持って様子をうかがっていた。

市がおたねの結婚を喜んでいるのを聞くと、思わず泣き出し、小屋を飛び出して行く。

日が暮れてきて、どうやら探索を諦めた役人たちも引き上げて行き、小坊主も寺に帰って行く。

兄と2人きりになった市は、俺は昨年も今年も、ここに来るたびに嫌な話を聞かされたが、京、初めて良い話を聞かされた…と与四郎に語りかけるが、返事がないので、兄さん!と呼びかけ、水を手で汲んで、与四郎の口元に持って行ってやる。

水を口に含んだ与四郎は、市、お千代は生きているぞと言い出す。

どこにいるんだい?と聞くと、知らないと言う。

カ○ワになった俺を置いて逃げちまったと言った与四郎は、その後何も語らなくなる。

異変を感じ、口元に手を持って行って息を確かめた市は、すでに兄の与四郎が事切れていることを知る。

翌日、助五郎は、空き地の近くで、与四郎と一緒に逃げた市の行動を、自分が死ぬ時、誰彼の見境なく、道連れにしたんだろうなどと勝手な推測を勘兵衛に聞かせていた。

そんな2人は、空き地の中央の木組みの所に、今噂していた市が寄りかかるように立っていることに気づく。

驚きながらも近づいた2人に、市は、与四郎は兄だ、今朝方死んだ…。お前の手にかかって死んだのは2人だ!てめえも死ね!と叫ぶと、一瞬の居合いで助五郎を叩き斬るのだった。