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妻あり子あり友ありて

警視庁の協力のもと、戦前、戦後の警察を描く大作。

薄給と過酷な勤務状況のため、家庭を顧みることも出来ないで、殉死して行ったり、時には、辞めて悪の道に堕ちてしまう仲間もいる中、黙々と仕事をこなして行く警官、刑事たちの姿が、有名な事件をモデルにしたらしきエピソードも交え、赤裸々に描かれている。

警視庁協力映画だけに、PR色があることは否定できないし、156分と言う長尺にしてはエピソードの羅列と言った印象以上のものではなく、映画としての起伏や盛り上がりに欠ける恨みはあるが、お涙要素もあり、それなりに見応えがある作品にはなっている。

佐田啓二が出ている所から、警察版「喜びも悲しみも幾歳月」と言った感じを狙っていたのかも知れないなと言う気もしないではないが、さすがにそこまでの作品ではないような気がする。

興味深いのは、戦後の国際賭博場「赤坂マンダリンクラブ」摘発のエピソード。

これは、同じ井上梅次監督「暗黒街最大の決斗」(1963)のアイデアのベースになったものだと思う。

アメリカのギャング団と繋がっており、地下に3重の扉に守られた賭博場があるなどと言った設定が全く一緒である。

戦前編では、鹿児島出身で朴訥直情型のドンさんこと辺見を演ずる大木実が物語の中心になっている。

後半の戦後編は、その遺児竜四郎を演じる津川雅彦と、それを見守る佐田啓二演ずる友人二瓶一家のかかわり合いの話になっている。

高千穂ひづる演ずる、余りにも家庭を顧みない辺見の妻信子の薄幸な最期は、やや展開が唐突過ぎて安っぽく感じないでもないし、あまりにも登場シーンが少な過ぎる印象を受ける。

一方、二瓶の妻かねを演じている乙羽信子の方は、戦前編では、苦しさをあまり表に出さない陽性なキャラクターとして描き、戦後編では、成長した子供たちに心を痛める老いた母親を演じ分けている。

全体的に、事件を通じて昭和史を追う方に力点が置かれているようで、人物個々の掘り下げは弱いように感じる。

それが、エピソードの羅列以上のドラマではないと言う印象を受ける要因かも知れない。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、松竹、樫原一郎「ニッポン警視庁」原作、八住利雄脚色、井上梅次監督作品。

大正15年3月

東京に向かう列車の中でぐっすり寝込んでいた書生姿の辺見三郎太(大木実)の横に座っていた男(立原博)は、辺見の胸の前を新聞で隠し、何やら怪しい動きをしていた。

それに気づいたのは、少し離れた所に座っていた寿司職人の弥吉(三井弘二)は、さりげなく席を立つと、トイレの入口付近で待っていると、件の男が、辺見の懐からすった直後、トイレの方に向かい、そこに立っていた弥吉と交差する形でトイレに入る。

席に戻って来た弥吉は、今のスリからスリ返した財布を確認しようとしていたが、そこに声をかけて来たのは、弥吉とは顔なじみの松山信三部長刑事(佐々木孝丸)だった。

観音一家に生まれた弥吉は、スリだった親の後を継いでスリになるか寿司屋になるか迷ったが、今では寿司職人ですよ。今、その書生さんがすられたので可哀想だと思って…と言い訳しながら、獲物を松山部長刑事に渡す。

その中味を確認してみた松山部長刑事は、巡査の採用通知が入っていたことから、書生が鹿児島から巡査になるため上京する途中だと言うことを知る。

その時、別の刑事が先ほどのスリを捕まえて近づいて来るが、スリは、松山部長刑事が持っていた懐中物を観て驚く。

トイレの中で必死になって探していたものが、今目の前にあったからだ。

弥吉は、その懐中物を持って辺見を起こすと、落ちてましたよと声をかける。

目覚めた辺見は、礼を言いながらも、もう大船です。東京まで後1時間ですから、気を付けていないとすられますよと弥吉が注意すると、自分はそんなことはないから大丈夫と答えたので、弥吉は松山部長刑事の方に目をやって苦笑いする。

ところが、東京の警察に着いた辺見は、入所式の午前8時に2時間も遅刻していたため、本多技官(須賀不二男)から、採用中止と言い渡されてしまう。

辺見は、下関で列車を間違えたので…と言い訳するが、採用が取り消されると聞いて、場所をお借りしますと言い出すと、床に座り込み、持って来た小刀で腹を切ろうとする。

鹿児島からわざわざやって来て不採用では、国に帰るに帰れないと言うので、本多技官は、警察を脅す奴があるか!と言いながら、慌てて辺見を押さえる。

その時、松山部長刑事から本多技官に電話があり、列車で会ったのだが、なかなか見込みがありそうな奴なのでよろしく頼むよと依頼があったので、やむなく本多技官は採用を認めることにするが、辺見が、言葉尻に「ごわす」を繰り返すので、ここでは日本語で言え!と命じる。

巡査になった辺見は、練習所で、同期の二瓶米作(佐田啓二)に出会う。

ある日、辺見と二瓶は、寮に帰って来た同期生の斉藤が、先輩たちに暴行を受けて倒れている所を発見する。

聞けば、お袋が病気と言うので帰郷したら、かなり容態が悪かったので、帰りが遅れると電報を打ったのに、帰って来たら、そんな電報は受け取っていないと言われたと言う。

ある夜、辺見、二瓶、畑中らが見張り当番をしていると、塀を乗り越えて寮に戻って来たのが、斉藤を暴行した田所と西島だった。

彼らは、毎晩外に出ては酒を飲んでいたのだった。

もうすぐで卒業だから見逃してくれと2人は頼んで来るが、斉藤が打った電報を握りつぶし、暴行を加えたことを分かっていたので、辺見は2人をビンタし始める。

そんな辺見を止めた二瓶は、警官の役目は、犯罪の発生を未然に防ぐことであり、そう言う意味では、今回の騒動を未然に防げなかったのには俺たちにも責任があると理路整然と言い出したので、辺見は2人を許し、二瓶に対してはお前は立派な警官になるよと告げる。

しかし、二瓶は、もう少し止めるのが遅れたら、お前はあいつらをカ○ワにしたよと笑う。

そして、多少から昭和にかわった…

辺見は、新米巡査として浅草交番に勤務するようになる。

見せ物やレビューが立ち並び、見物客でごった返す浅草は、火事騒ぎや迷子などが絶えなかった。

ある日、包丁を振り回し女房らしき女を追い回していた男をその場で投げ飛ばした辺見巡査だが、周囲にいた見物客の女たちから、その包丁の歯は丸くしてあるし、あの2人は夫婦喧嘩が飯より好きな2人なんだと教えられ、当の女房からも、うちの人に何をするのか!と逆に文句を言われる始末。

昭和2年 銀行の取り付け騒ぎが新聞をにぎわす。

その新聞記事を読みながら、二瓶が、無茶な貸し付けをやったそうだと同部屋の辺見に言いながら、今、2人で一軒持とうとするといくら位するだろう?と言い出したので、辺見は俺とお前が一緒に暮らすのか?と聞くと、二瓶は女性が写った写真を見せる。

かね(乙羽信子)と言うその女性の写真と手帳はいつも肌身離さず持っているなどとのろけるので、聞いていた辺見は興奮し、その場で天突き体操などし始め、とうとう振り回した腕の先でふすまに穴を開けてしまう始末だった。

世間では、押し入った家の人間に、ここの戸締まりではダメだなどと説教する「説教強盗」や、米穀商に押し入った「ピストル強盗」がとうとう殺人を犯すなど騒然とし始め、なかなか両者とも検挙できないので警察への風当たりは強くなって行く。

その年も押し迫った大晦日の夜、警邏中だった二瓶は怪しい人影を発見し誰何してみるが、それは、黒マスクをした松山部長刑事だった。

松山部長刑事は、聞こえて来た除夜の鐘で、もう年が変わるのだと知る。

その頃、とある一軒家の戸を開けて、その除夜の鐘を聞いていた須川滝代(水戸光子)は、庭先に誰かが潜んでいるのに気づき、近づいて来た妹の信子(千穂ひづる)と共に怯える。

しかし、庭先の木陰から出て来たのは張込み中の辺見で、警察手帳を見せながら詫びて来たので、姉妹は安心し、非番中にも関わらず、張込みを自主的にしていると言う辺見の話に感激すると、うちは松山部長刑事と懇意にしていると言い出した滝代が信子に茶の用意などさせるが、松山の名前を聞いた辺見は慌てて退散してしまう。

その後、辺見と二瓶は、松山も口添えもあり揃って刑事に昇進し、松山から寿司屋に呼ばれる。

辺見は、寿司屋の主人に見覚えがないかと聞かれ良く観ると、それは、上京する時、列車で会った弥吉だったので、あの時、財布を拾ってくれた!などと感激するが、まだ、あの時、自分がスリの被害にあっていたことに気づいてないようだったので、弥吉も松山部長刑事も笑い出す。

弥吉は、最近の説教強盗やピストル強盗が一向に捕まらないじゃないですかと苦言を呈するが、松山部長刑事は、これだけ我々が頑張っていて、悪がなくならないわけがないと言う。

辺見と二瓶の最初の仕事に当たって、松山部長刑事は、みんな、足を棒にして頑張るんだ。博打打ちなどとの仲良くしていた方が良い。情報源として重要だなどとアドバイスを与えるが、辺見は、気に食わん。博打打ちは嫌いです!と反発する。

ある日、辺見が警察署にやって来ると、中から出て来た博打打ちの常吉(南道郎)と小鉄(山路義人)から頭を下げられて礼を言われる。

意味が分からず刑事部屋に来た辺見は、千鳥島の旅館にあの時踏み込まなかったので常吉が喜んでいた。踏み込んでいたら、刃傷沙汰になって、片手でも失っていたはずだと言いながら、後で寮に行くと言うので、辺見は何のようですか?と不思議がる。

その日、寮に戻って来た辺見の部屋を訪れた松山部長刑事は、今後は君のことをドンさんと呼ぶことにすると言うと、同室の二瓶には許嫁がいるんだって?と聞き、連れて来た滝代と信子を部屋に招き入れると、自分が懇意にしていた人の奥さんで、今度、用品店を始めると言う滝代を紹介すると、しばらくこの信子さんと一緒に付き合って見る気はないか?と聞いて来る。

それを聞いてかちかちになった二瓶は、土産に買って来たと松山部長刑事が差し出した弥吉寿司を大好物です!と答えた直後、信子さんのことはどうなんだ?と聞かれると、又もや、大好物です!と答えて、みんなに笑われるのだった。

その後、辺見は信子と結婚することになり、その結婚式当日、新居に花を持って挨拶に来た練習所仲間の武田と斉藤は、手伝いに来ていた二瓶の許嫁かねにも会う。

斉藤は新婚であり、武田の方は、今度赤ん坊が生まれると近況報告した後警邏に戻る。

その後、松山部長刑事を始め、仲間たちが集まり、ささやかな辺見と信子の結婚式が執り行われる。

その日の新婚初夜は、辺見にとっても緊張の極みで、寝床にやって来た信子が着替えをしたいと言い出すと、部屋の外に出て松が、その間も絶えず、興奮する自分を落ち着かせようとしていた。

かくして、初めて信子と一緒に蒲団に入った辺見だったが、その頃、警邏中だった武田と新藤は、闇夜に光る怪し気なカンテラの光に気づき、誰何すると、驚いて立ち上がった相手は、持っていた拳銃で2人の警官を撃って逃げ出す。

その直後、辺見の玄関に知らせの警官が駆けつけ、武田と斉藤が胸と腹を撃たれ死亡したので、非常召集がかかったと知らせて来る。

辺見は、新婚初夜であるにも関わらず、2、3日帰らないかも知れないと信子に言い残して出かけて行こうとする辺見に、松山のおじ様から作り方を聞いて作っておいたと言う、真新しい捕縄を信子は手渡す。

その後、辺見は1週間も自宅に戻って来なかった。

久々に妹の家を訪れた滝代は、気丈に振る舞う信子に、あんた、寂しいんでしょう?泣けば良いじゃないのと声をかけ、その言葉を聞いた信子は、それまで我慢して来た感情を発散させるように、親代わりの姉に泣いて抱きつくのだった。

中野署で泊まり込みをしていた辺見の元にやって来た二瓶は、部長に会って来たが、ピストル強盗のケンはしっかりやれと言われたと伝える。

疲労感も露な辺見だったが、武田と斉藤を殺したピストル強盗は、被害現場の隣の家で50円取っている。しかしまだ手掛かりがつかめんと憎しみを込めて呟く。

その辺見の様子を見かねた二瓶は、俺たちがやっている捜査は個人的な復讐ではない。もっと落ち着いたらどうだ?と注意する。

その時、刑事部屋に電話があり、新宿建造店の半纏を着た怪し気な男がいると言う情報が入る。

捜査会議では、ピストル強盗が使用したSWとは別に、実弾10発と別の銃も盗まれており、新たな犯行が繰り返される恐れがあるとの報告がある。

久々に自宅に帰った二瓶だったが、明るく出迎えたかねを他所に、すぐに、松山部長刑事からの呼び出しが届き、茶を飲む暇もなく、又二瓶は出かけようとしたので、かねは呆れたようだった。

二瓶は、俺が憎いんだろ?俺の横っ面叩いて溜飲を下げろと言うと、かねは思いっきり二瓶の頬を叩き、ああ、すっきりした。さあ、思いっきり働いて来てくんろと、お国訛丸出しで夫を送り出すのだった。

一方、辺見の方も久々に自宅に帰ると、ちゃぶ台に突っ伏して寝ていた信子が慌てて起きる。

もうくたくただよ…とぼやいた辺見は、気丈に立ち居振る舞おうとする信子に対し、お前がどうしてそんなに立派な刑事の妻なんだ?と叱りつけるように問いかける。

信子はたまらなくなり、辺見に抱きつくが、その時玄関に二瓶が呼びに来る。

なかなか返事をしない辺見に気づいた二瓶は、これはまずい所に来ちまったかな?と呟く。

中野署のピストル強盗捜査本部では、松山部長刑事が、本庁にある40万枚もの膨大な指紋原紙から、説教犯人の指紋を割り出していた。

呼ばれて揃ってやって来た辺見と二瓶に、松山部長刑事は、説教強盗が3年前に残していた中指の指紋から、山梨の左官、岡松蔵なる男を特定したことを教えると、2人が持って来たピストル強盗が現場に残していたカンテラを調べ出す。

そのカンテラは、相当強い火力を作る特注品だと言うことが分かり、東京中のブリキ職人を当たってみるんだと松山部長刑事は、辺見と二瓶に指示を出す。

その後、聞き込みに廻っていた辺見は、説教強盗が捕まったと言う号外を見る。

東京中のブリキ屋をしらみつぶしに調べた結果、特注のカンテラを売った「藤田ブリキ店」を特定した辺見らは、全員、新しいカンテラを受け取りに来ると言う犯人を待ち構えて周囲に張り込む。

職人に化けて近くに待機していた二瓶は、品物を受け取りに来た男を追跡、先回りして前から接近すると、男は懐からピストルを取り出して撃とうとしたので、背後から迫って来た辺見らと共に飛びかかって逮捕する。

昭和6年 満州事変始まる

5.15事件

昭和8年 日本は国連を脱退

すでに子供が出来ていたかねと滝代が信子の家に遊びに来ており、給料47円、刑事手当7円と言う薄給を嘆いていた。

滝代は信子に、ああ言う人は、女に騙されやすいから気をつけなくてはダメよと、二瓶の人柄を教えていた。

その二瓶は、とある詐欺容疑者の母親が病気だと知り、個人的に見舞いに訪れていた。

母親は、自分のポケットマネーを渡そうとする二瓶に最初は反発していたが、やがて、二瓶の気持ちに計算はないことを知ると、雄吉が捕まって以来、親戚も近所も誰も来てくれなくなった。それなのに、今まで憎いと思っていた警察が金を持って来た。これはどう言うことだと言って泣き出す。

その後、警察署で雄吉の尋問をしようとした辺見だったが、雄吉は、母親から手紙が来て、あんたから金を受け取ったことを知らせて来た。変な真似は止めてくれ!と文句を言うが、あれほど言うなと頼んでいたのに…と困惑した辺見は、俺は自分の気がすむようにやっているだけなんだ。おふくろのことは俺に任せて行けと伝える。

すると、感激した雄吉は、許して下さい、何でも話しますと泣き始める。

やがて、コルト銃を使用した強盗の鬼熊こと、岩下熊吉が、埼玉県名栗川の飯場にいるとの情報が本多警部 の元に電報で飛び込んで来る。

その逮捕に、辺見も向かうことになるが、まだ幼い息子の竜四郎がいるにもかかわらず、信子が風邪をこじらせて寝込んでいたため、さすがに見かねた姉の滝代が、こんなに家のことをないがしろにして良いってことはないわよと文句を言う。

しかし、寝込んでいた信子は、行かせてあげてと姉を説得する。

現地に着いた二瓶や辺見たちは、現地の大崎部長らと協力し、犯人を追い込むため山狩りを始めようとしていたが、そこに、東京からの伝言が辺見に届き、信子が危篤だと言う。

それを聞いた仲間たちは、すぐに帰ってやれと辺見を説得するが、辺見は、それを拒否し、せっかくあそこまで追い込んだんだと言うと、第3班を率いて自ら山の中に入って行く。

そんな辺見に対し、二瓶はお前は大バカだと告げる。

一方、病床の信子は、あの人は帰って来ないわ。私には分かるの。竜四郎、あんた、大きくなったら何になるんだろうね…、あの人には言いたいことがあったの、一言だけ…。たった一言だけ…と呟いていた。

鬼熊こと岩下熊吉は、山狩りして来た警官隊に包囲され、ヤケになって、持っていた拳銃を発砲して来る。

やがて、弾が1発しか残ってないことに気づいた二瓶たちは、岩下に肉薄するが、岩下は、最期の1発を迷ったあげくに空に向かって撃つと、反対側から飛び出した辺見ら警官隊によって逮捕される。

下山した辺見を待っていたのは、信子が死亡したと言う東京からの知らせだった。

それを聞いた辺見は、1人道を後戻りながら、ばか、ばか、なぜ死んでしまった?信子!許してくれ、信子!俺が悪かった!信子~!すまなかった!と叫び続ける。

その辺見の後ろ姿を、二瓶ら警官仲間たちは悲痛な表情で見るしかなかった。

それから月日が経ち、ある日、二瓶は病床の辺見を見舞いに来る。

辺見の病名は胃がんだった。

病床の辺見は、夕べ、教習生時代の夢を観たと二瓶に話し、俺、やっぱり、入院した方が良いな。警察病院に手配してくれと頼むと、竜四郎頼むよ。俺は俺の病気のことは分かっている、頼むよと言うので、二瓶は、俺が引き受けると答える。

この頃、良く信子のことを思い出すんだ。あいつは、竜四郎だけは警察にさせたくなかったろう。欲を言えば、警察の厄介にならないような人間に育って欲しい…と辺見は語る。

警察病院に入院した辺見を見舞いに来た息子の竜四郎(津川雅彦)は、今日は母さんの命日だよと言うので、母さん、最期に何と言いたかったんだろう?と辺見がかねてより気にかかっていたことを聞くと、家に帰って来て欲しかったんだ。父さん、母さんと人間らしい夫婦になったことなかったんだ。二瓶さんの所の正ちゃんと話していたのは、母さんが死んだ日から、父さんは罪を背負って生きて来たんじゃないかって…と竜四郎は答える。

どうすれば父さん良いんだ?とベッドから辺見が聞くと、母さんはお父さんの妻であることを誇りに思って死んで行ったと思うよ。父さん、1人でくよくよしない方が良いと思うよと竜四郎が言うので、涙を流した辺見は、何だか急にお前が大人に見えて来た。急に母さんの墓参りに行きたくなったと言い出す。

竜四郎に手伝ってもらって着替えた辺見は、久々に信子の墓にやって来ると、信子、竜四郎はな、大したことを言うようになった。親に意見するようになったんだ。俺はお前に謝らなくてはいけないと思って今日まで生きて来たんだ。ひどい亭主だったな。何も買ってやれなかったし、どこへも連れて行けなかった。家にも居着かない…、本当にすまなかった。なぜ刑事になったんだろう?止めていたら、もっと幸せに暮らせていただろう。竜四郎は金輪際、警察にはさせんよ…と誓う。

その時、一緒に付いて来た竜四郎は、1つだけ違うんだ、お父さんの考えとと口を挟む。

母さん、死ぬ時、僕を警察官にしてくれ

浅草国際マーケットで、アメリカ人が殺される事件が発生、二瓶たちは現場周辺で目撃者から情報を聞こうとするが、三国人たちは反抗的で、何の証言も得られなかった。

それ以上強く言えば、人権がどうしたと言われるので、諦めるしかなかった。

二瓶は、昼間警視庁に電話をして来た弥助寿司にやって来る。

弥助がその場で紹介した男は、昔、二瓶が鉄火場で見逃してやった但馬組の常吉だった。

常吉は二瓶に昔の礼を言うと、浅草でのアメリカ人殺しをやったのは原田辰夫ですと情報を教えてくれる。

パン助を探しまわっていた米兵がトミーと言う女をからかったのが動機のようですと言う。

この貴重な証言のお陰で犯人を逮捕することが出来た二瓶は、ヤクザは義理堅いな。松山さんが言っていた通りだと刑事部屋で呟くが、それを聞いていた若い刑事から古いですよと突っ込まれてしまう。

それを聞いた二瓶は、俺は古いか?と思わずぼやいてしまう。

新人警官として射撃訓練をやっていた辺見の息子、竜四郎の様子を見に来た二瓶に、竜四郎は、今度、同期の進東祐介(真木康次郎)と田宮五郎(安住譲)と、刑事特別研修を受けることになったと嬉しそうに報告するので、警察学校を出て半年で刑事とは早くないか?と二瓶は驚きながらも、頑張りたまえと若者たちを励ます。

そんな中、長男正一を戦争で亡くしたかねは、末っ子の昭夫(三上真一郎)に、将来の進路について案じていたが、親爺は高等学校出だし、俺は中学を出たら働くと言う。

長女の道代(桑野みゆき)も立派に成長していたが、そこに、二瓶が辺見の墓参りをして来たと言いながら、竜四郎を連れて帰って来る。

道代は竜四郎に密かに想いを寄せている風だったが、表面上は無関心を装っていた。

そんなある日、不良外国人によって180万が強奪されると言う事件が発生する。

築地東劇前から乗ったと見られる車は、途中で黒のクライスラーに乗り換えられていた。

乗り捨てられていた車の中から、紙幣の帯封と銀座チョコレートショップのマッチが発見されている。

さっそく、チョコレートショップで不良外国人の聞き込みを始めようと出向いた辺見竜四郎は、近くのテーブルで、メリーの彼氏のエドモンは赤羽の木賃ホテルにいるのかしら?などと会話している若い2人組の女性を発見、そのホテルは何て言うホテルでしょうか?とさりげなく近くづいて尋ねる。

すると、竜四郎の美貌に驚いた、セントラルパッションクラブのモデル、ピンキー中川(筑波久子)がホテルホワイトとすぐに教えてくれ、その彼氏が強盗だったら、私とデートしてくれる?と迫ってくる。

ホテルホワイト前で張り込んでいた辺見竜四郎の元に、二瓶がやって来て、エドモンはフランス人だと教えてくれる。

そこへ、MPがジープで到着、メリーと同衾中だったエドモンを逮捕、そのまま連行して言ってしまう。

それを見送る二瓶たち日本の警察は、骨折り損のくたびれ儲けとはこのことだとがっかりする。

昭和26年 サンフランシスコ講和条約締結

道代が勤めに出かける昭夫に弁当を出して送り出していた朝、二瓶は朝刊を読みながらのんびりしていた。

かねがそんな夫に、道代と竜四郎さんを結婚させる気ですか?などと話していると、それを聞きとがめた道代が、血痕相手は自分で自由に選びますから!と抗議して来る。

それを聞いたかねは、嫌いなのかしら?竜さんのこと…と不思議がる。

二瓶の方は、最近、組合活動で帰りが毎晩遅い昭夫の事を心配していた。

昭夫は、最近日本は再軍備したり、労働運動を取り締まるようになって来ていると言っているとかねが教える。

第23回メーデー

日本がまっぷたつに別れたような事件で、10数名の警官の負傷者まで出た。

警視庁捜査一家では、星野部長(安部徹)が、宝石商強盗と目されるマクドナルドなる外国人が、リッカーと言う外国人の所へ逃げ込んだらしいと言う情報を刑事たちに伝えていた。

進東刑事は、国際賭博場になっている「赤坂マンダリンクラブ」の裏手で、そいつらの目撃情報があったと報告、星野部長は、クラブに潜入しようにも、一課の刑事の面は割れているので難しいと指摘すると、竜四郎が僕行きましょうと名乗り出る。

「赤坂マンダリンクラブ」の常連だと言うピンキー中川を誘い、店の中で踊りながら様子を見る竜四郎に、ボーイが立っている奥のドアが、地下の賭博場へ通じるドアで、中は三重のドアになっている。

店は、アメリカのギャング組織と繋がっているらしく、地下の賭博場に入り込むためには、最低10日くらい通い詰めて店の常連になるしか方法はないと言う。

竜四郎はその言葉に従い、2週間通い詰め、ようやく地下の賭博場に入り込むことに成功する。

そこには想像通り、そこにはマクドナルド(マイク・ダニー)がいたし、ジャックと言う名の支配人がリッカー(ハロルド・コンウェイ)らしいと警視庁で報告する。

星野部長は、ガサ入れをやろうと決意する。

後日、客を装いった田宮と進東たちと再び「赤坂マンダリンクラブ」を訪れた竜四郎は、自分が地下に入って10分戻らなかったら、中にマクドナルドとリッカーがいると思ってくれと言い残して、賭博場のドアに入る。

クラブの外では、星野部長や二瓶らが待機しており、潜入した竜四郎からの無線連絡を聞いていた。

突入時刻は12時20分と決める。

しかし、竜四郎が上着の下に仕込んでいた無線のコードを発見したマクドナルドは、リッカーに知らせ、2人で竜四郎を支配人室に連れ込むと、こいつは日本の警察だ!と言いながら殴りつけて来る。

地下の賭博場までの3つのドアを開けるには30分かかる。その間に証拠品を隠すことが出来るとマクドナルドはほくそ笑んでいた。

ピンキーは、地下室へのドアの前で番をしていたボーイのハリスンに金を渡し、友人と称して田宮と進東も中に入れさせる。

2人の刑事は、3つのドアの前で番をしていた外国人を気絶させ、ドアを開け放つと、そこに星野部長ら警察部隊が突入して来る。

これでは、証拠を隠す暇もなく、地下の賭博場にいた客たちは一斉に検挙されてしまう。

支配人室に来た星野や二瓶に、殴られていた竜四郎は、やはり、こいつらが宝石泥棒をやっていたと指摘すると、金庫の中から宝石類を取り出してみせる。

それは確かに、先日宝石商から盗まれた宝石だった。

星野は、日本警視庁もまんざらじゃないなと自画自賛する。

そんな星野部長らに、みんな来て下さい。面白いものがありますと呼んだ竜四郎は、ハーフミラーになった壁を見せ、この仕掛けで中から警察を見分けていたのですと、その内側の部屋に案内する。

そこには、机に座った顔を隠した男が1人おり、その壁には、警視庁の刑事たちの写真がずらりと貼ってあった。

見張り役の男の顔を観た二瓶は、それが、かつて練習所で同じ当番をやっていた畑中だと気づき愕然とする。

君なら刑事の写真を集められたはずだ。負けてしまったんだね、変わって行く世の中に…と二瓶は悲し気に呟くと、今、君に手錠をかけたのは、ドンさんの息子さんなんだよと教える。

すると、それを聞いた畑中も呆然としたようだった。

二瓶は星野部長に、どっかで一杯やらなきゃ、やり切れませんよと言い残して現場を去って行く。

ある日、田宮刑事が、妹の節子(牧紀子)が手伝いをやっていた滝代の用品店にやって来て、中から出て来た竜四郎と一緒に横浜に捜査に出かけようとする。

節子は、出かける前ハンカチを買った竜四郎の胸ポケットに優しくハンカチを入れてやる。

その頃、昭夫は二瓶に、父さんは、百姓が食えなくなって刑事になったんだろう?世の中には、大したことをやらなくても、父さんの何10倍も稼いでいるものもいる。そう言うのを観ても何とも思わないの?警察ではストライキもやれないの?と問いかけ、銭湯に出かけて行くので、二瓶はかねに、工場にアカでもいるんじゃないか?と心配そうに聞く。

かねは、道代はやっぱり竜四郎さんのことが好きらしい、日記で読んだものと言うので、いくら娘だからって、人の日記を勝手に読んじゃまずいだろうと二瓶が呆れると、だって、呼んでくれと言わんばかりに置いてあるんですもの。あの子は口で言うのが恥ずかしいんですよとかねはしれっと答える。

しかし、困ったことに、竜四郎さんは田宮の妹さんと付き合っているらしいと二瓶が話していると、そこに当の田宮刑事が迎えに来る。

とある容疑者のアパートにやって来た田宮は、自分が先に入ってみると言って、二瓶を外に待たせ、アパートに入って行くが、二瓶がタバコを吸いかけた時、突如中から銃声が響いて来る。

驚いて、アパートの中に入った二瓶も又、逃走する犯人から右足を撃ち抜かれてしまう。

廊下に倒れた二瓶は、部屋の玄関先で死亡していた田宮刑事を発見する。

右足に包帯を巻き、自宅療養していた二瓶は、犯人は捕まったと報告かたがら見舞いに来た竜四郎を前に、出来るものなら代わってやりたかった。良い年をしてまずいことをやったもんだ…と自分を責めていた。

二瓶は竜四郎に、田宮君には節子さんと言う妹さんがいただろう?頼りになってやるんだねと勧めると、節子さんと結婚しようと思いますと言う竜四郎の言葉を聞いていた道代は台所に身を隠す。

それに気づいた昭夫は、くよくよするなよと慰めるが、道代は、私には何の関係もないじゃない!余計なお節介を焼かないでよ!と怒鳴る。

昭夫は、帰りかけた竜四郎に、竜さん、おめでとう!これからも姉さんとは、理性を超えた付き合いをして欲しいんだと頼むが、道代はとうとう、ふすまの陰から姿を見せないままだった。

警察の機械化も進み、捜査車両に電話や赤外線カメラ、録音機などが装備されるようになっていた。

星野部長、竜四郎と共に捜査車両に乗り込んだ二瓶は、自分がもう時代の流れに付いて行けなくなりつつあることを自覚していた。

車は、節子が盲腸で入院している警察病院の前で停まる。

その時、新宿三光町の農業信用金庫に賊が侵入、守衛が射殺されると言う事件発生を知らせる車内電話が入ったので、星野部長と二瓶は、竜四郎をその場に残し、先に出発する。

手術室に向かう節子を見舞った竜四郎も、すぐに現場に駆けつけようとするので、節子は、死なないでよ、お兄さんのように…と言い、私も頑張るわ。あなたがここから出て行くのは、世の中が良くなることだもの、私平気よと気丈に伝える。

出かけて行った竜四郎を見送った滝代は、お父さんにそっくりと呟く。

その後、守衛を射殺した同一拳銃で、吉祥寺を警邏中の武蔵野署の山村巡査も射殺されると言う事件が起きる。

山村巡査は、停車していた車の運転手に免許証の提示を求めた所、突然、運転手から撃たれたのを、通りかかった労働者2人が目撃していたが、その時、その車の横を通り過ぎて行ったスクーターがあったことも証言で分かる。

その黄色い色のスクーターには、何とかビールと言う文字が入っていたと言う。

鑑識班は、自動車が現場に残していたタイヤ痕を採取する。

二瓶と竜四郎は、酒屋のものと推測されるスクーターを見つけようと、近隣の酒屋をしらみつぶしに歩き回る。

結果、サッポロビールと書かれた金井酒店のスクーターが該当すると言うことが判明。

主人の金井重吉(十朱久雄)に、当日の朝、青梅街道沿いの市営グラウンド横を通らなかったかと事情を聞くが、その日は家で寝ていたので、全く心当たりはないと言う。

その後、警視庁に戻った竜四郎は、鑑識の山川技官(中田耕二)に呼ばれ、タイヤ痕を分析した結果、車は59年型ダットサンで、タイヤは再生品だった可能性があると教えられる。

竜四郎は、改めて、地味な印象ながら、鑑識の仕事の重要性に気づかされる。

その報告を竜四郎から受けた星野部長は、該当の車は、白坂正一なる人物に売られたが、それは偽名だったと刑事たちに報告する。

この捜査には、二瓶老人得意の忍耐が必要だと全員直感する。

その二瓶は、金井酒店の前の店で真夏の盛りにずっと張り込んでいた。

若手の刑事がやって来た直後、金井が店から出て来たので、二瓶と若い刑事は尾行することにする。

とある場所にあるアパートの別府久美子なる表札の部屋の前にやって来た金井に二瓶が声をかけると、金井はこんな所まで…と驚いた様子だった。

久美子は何事かとドアから顔をのぞかせるが、面倒になりそうだと気づくと、すぐに顔を引っ込めてしまう。

久美子は、金井酒店の近くにあるバーの女給で、あの日、泊まっていたこのアパートから帰る途中だったんでしょう?あんたが憎いよ。どうして協力してくれないんだ!と迫る二瓶に、金井は素直に謝罪すると、山村巡査が声をかけた車の運転手の顔を覚えていると言い出す。

さっそくモンタージュ写真作りに協力してもらい、そのモンタージュ写真30万枚と、車の写真10万枚を全国に配布した結果、千石恒雄なる犯人が弁護士に付き添われて自首して来る。

事件が解決し、滝代の用品店に帰って来た竜四郎は、まだ盲腸の退院後、奥で静養していた節子に代わり、店の手伝いをしてくれていた道代から、私も、竜四郎さんのこと好きよと告白される。でも、それを節子さんに打ち明けると、刑事の女房は任せておいてと言われたと言うので、竜四郎は、みっちゃん、ありがとうと、その気持ちに感謝する。

昭和35年 安保反対デモ激化

全学連、国会へ突入

久々に、弥吉寿司へやって来た竜四郎に、弥吉は、竜さんみたいな人がいないと、世の中闇じゃないかと話しかけると、竜さんが刑事になろうとしたとき、随分考えたんだろうね。俺も親爺の後を継ごうかと考えたけど、今では寿司屋になって良かったと思っているよと言う。

さらに弥吉は、池袋にある大成電気工業で、組合員たちが工場を占拠しているが、その先頭に立っている過激分子は、二瓶さんの息子さんなんだと教える。

警察は、大成電気は警察に援助要請をし、それに伴い、竜四郎を含む警察は工場の敷地前に集合する。

工場内を占拠していた組合員たちは、警察に対し投石して来る。

警官たちは、入口のバリケードを開くと中に突入する。

組合員の先頭に立っていた昭夫は、警官隊相手に暴れていたので、竜四郎がそれを阻止しようとする。

昭夫は、竜四郎を認めると驚くが、竜さん、帰ってくれよ!と叫びながら、抵抗を止めようとはしなかったので、止めないと、公務執行妨害で逮捕しなけりゃならないんだ!と竜四郎は頼む。

しかし、昭夫は、俺たちは戦うしかないんだ!分かってくれるね?竜さん!と言うだけだった。

その頃、二瓶の自宅では、妻のかねと姉の道代が昭夫のことを案じて待っていた。

そこに、二瓶が帰宅して来るが、工場のことは何も分からんと言う。

かねは、今日は血を見るでしょうね。私は昭夫にやんなさいって言ったんです。例え間違っていても、すぐに気づいてくれるはずです。正一が特攻隊やる時も、やりたいことをおやりなさいと言ってやりました。私、子供たちみんな立派に育てて来たつもりですと二瓶に語りかける。

そこに竜四郎がやって来たので、昭夫はどうしたかね?と二瓶が聞くと、検挙しました。先頭に立って妨害したものですから…と恐縮して答える。

二瓶は、いや、私だってそうしたよと答えるが、聞いていたかねは泣き出す。

そんなかねの側に来た二瓶は、かね、昭夫を信じてやろう。ただ、私たちは警察官だからな…と慰める。

姉の道代も、良いのよ、竜四郎さん、良いの、あなたとしては当然のことだもの。式の日取りは決まったんですって?私も、お見合いたくさんしてあなたに負けない相手を見つけるわ。お互い幸せになりましょう。竜四郎さんも私の幸せ、祈ってねと言い、竜四郎と握手して別れるのだった。

昭和36年9月 永続勤務35年表彰式が行われ、二瓶はその表彰を受ける1人になる。

式に出席した道代は、隣に立つ母かねに、あの副賞の時計は女物だそうよ。お父さんがそうしてくれって頼んだんですってと教える。

それを聞いたかねは、1人涙ぐむのだった。

警察隊のパレードが始まり、婦人警官の列、白バイの列、パトカーの列などが大通りを通過して行く。

それを沿道から見守る竜四郎と節子。

表彰式を終えた二瓶は、ドンさんこと辺見夫婦の墓に来ていた。

ドンさん、わしだけがこんなものをもらってしまって…。

もう鷲も警察では最古参の1人なんだ。良くも、35年も続けたもんだと思うよ。

しかし、我慢強いと言うか、バカと言うか…、内心誇りにも思っている。

1つの職場に35年もいるなんて、ちょっとやそっとで出来ることじゃないものな。

他に取り柄のない俺だが、一生懸命やって来た。この気持ちは変わらん。

お前だけは誰よりも、分かってくれるはずだ…。

そう二瓶は、墓の中の辺見に語りかけるのだった…