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忍びの者

村山知義の原作小説の映画化だが、巷間大泥棒として知られる石川五右衛門が、実は忍者だったと言う奇抜な設定は、この作品で一般に流布したような気がする。

西村晃が演じているライバル的存在下柘植の木猿は、講談などで有名な猿飛佐助のモデルではないかと言う説もあり、そうした通俗ネタを、この作品では、荒唐無稽なキャラクターではなく、ちゃんと血の通った人間として、リアルに描いてみせている。

これまでの忍術使いと言うのは、巻物を口にくわえ、印を結ぶと煙が出て、姿が消えたり、蝦蟇を出したりと言う、どちらかと言えばお子様向けの漫画的存在だったが、この原作小説とこの映画の出現により、空前の忍者ブームが起きると共に、今に通じるリアルな忍者像が確立したように思える。

この作品ではさらに、百地三太夫と藤林長門守と言う高名な忍者が実は同一人物だったなどと言うオチも付いており、2人の忍者を伊藤雄之助が巧みに演じ分けたりしているが、さすがに映画ではすぐに同一人物とバレてしまうトリックであり、かえって最後に、なぜ五右衛門が三太夫の死骸を見て長門守との1人2役に気づいたのか良く分からなかったりする。

百地砦の下忍仲間であり五右衛門の力量を妬んでいる与八が織田信長にあっさり捕まってしまう辺りも、ちょっと説明不足のような気がする。

飛ぶ雀を射止めるほどの手裏剣の名手にしては、織田信長を射止め損なうと言う仕事ぶりも疑問だし、群衆の中であっさり捕まってしまうと言う辺りの展開も良く理解できない。

忍者の拷問の様子や、死ぬ時、自らの顔を潰すなどと言う説明用に用意されたキャラクターとしか思えない。

さすがに今改めて見直すと、ちょっと気になる点がないではないが、白黒ながら重厚なタッチで、見応えのある作品に仕上がっているのは、やはり、山本薩夫監督の力量のなせる技か。

ヒロイン役の藤村志保は、まだ丸顔風の幼顔である。

荒々しく残忍な信長を演じている城健三朗こと若山富三郎の存在感も大きい。

後年、「砂の器」などの老人役で一躍有名になる加藤嘉が、まだ若々しい中堅忍者を演じていたりするのを発見できるのも楽しい。

大映京都の底力を見せつけられるような娯楽時代劇である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、村山知義原作、高岩肇脚色、山本薩夫監督作品。

天正元年夏

全国制覇の野望に燃える織田信長は、朝倉義景、浅井長政の連合軍を、北近江の地に撃破した…と、死屍累々と横たわる戦場の跡を背景にテロップ

その死体に見えた1人の男が、側の死体に這い寄って行き、懐の刀を探ろうとするが、その死体は飛び起きると「木猿!これが死人のもの」と這ってきた男と対峙する。

2人とも死人ではなく、戦に紛れ込んで情報を得ていた、組が違う伊賀忍者同士だった。

2人は取っ組み合うが、敵わぬと察し逃げ出した忍者は、伊賀、長門砦の下忍、下柘植の木猿(西村晃)であり、それを笑って見送った方は、伊賀、百地砦の下忍、石川五右衛門(市川雷蔵)だった。

タイトル(古い日本地図の中の近江の国琵琶湖から、その下に位置する伊賀百地砦の文字にカメラが移動する)

伊賀百地砦に呼子の木を叩く音が響き、農作業をしていた下忍たちが御大将の館に集まる。

御大将百地三太夫(伊藤雄之助)は、集まった下忍たちに、朝倉義景が越前で腹かっ捌いたそうじゃ。の見通しは当たったと、その五右衛門の目の前で褒めると、織田信長は、このままでは天下統一を狙うはずで、それだけは我慢できん。すぐる年、もったいなくも比叡山に火を放ち、千体の尊像を焼き、1600人もの僧を皆殺しにした。

我らが身につけた忍術も、元はと言えば天智天皇の御代、役行者を始祖とし、仏教を広めるために山伏が始めたものであり、いわば、天台、真言からの頂き物と教えていた。

脇に控えた葉蔵(加藤嘉)が、今後、信長はどう出ましょう?と問うと、挙手した投げの与八(中村豊)が、信長にとっては徳川家康が目の上のたんこぶでは?と意見を述べるが、それを聞いた五右衛門は、上杉はすでに信長の敵ではないし、家康は策士なので、今勢いのある信長と矛を交える事はないと反論する。

三太夫は五右衛門の意見に賛成したので、与八は面目をなくす。

三太夫はさらに、ライバル関係にある藤林長門守も、夕べ仲間を呼び集めて、信長討つべしと命じたそうじゃ。我らこそ先んじるんじゃと伝えると、全員そろって印を結ぶ。

その後、五右衛門は、三太夫の妻イノネ(岸田今日子)から、御大将がお呼びじゃと声をかけられ、三太夫の元へ向かうと、今後自分の相談役になって欲しい。お前は、計算が得意らしいから、今までイノネに任していた帳簿付けもやって欲しいと言われる。

さらに、その内、下人頭にするとまで言われた五右衛門は有頂天になり、父親(水原浩一)にその事を知らせるが、父親は素直に喜ぼうとはせず、忍者とは何のために生きているのだ?人間としての埃も喜びも許されんのだぞと問いかけて来る。

しかし、若い五右衛門は反論し、今に、御大将のような砦の主になってみせると意気込むので、父は、火薬の秘方を記した巻物をお前に授けて、どこか静かな所で暮らしたいと弱音を吐く。

その夜、イノネが寝所に引き込むと、三太夫は部屋の鍵を内側からしっかりかけ、天井裏の秘密の部屋に上がると、手鏡の前で変装し始める。

三太夫の屋敷で薪割りをしていた下男のムロタ(沖時男)は、下女のハタ(藤原礼子)に、奥方はいつ御大将に抱かれるのだ?と聞くが、ハタは、奥方はいつも1人で寝るんだと答えたので、ムロタは信じられない様子だった。

その三太夫は、老人姿に変装すると、床下の抜け穴から外に出て、山に向かって走り出す。

途中、藤林砦の下忍木猿に襲撃されるが、三太夫はあっさり身をかわすと姿を消してしまう。

老人が遠ざかったのを悟った木猿は、すぐに、頭である藤林長門守の屋敷に駆けつけると、妻のヒノナ(浦路洋子)に殿にご注進をと願う。

ヒノナは、まだお帰りではないと一旦は断りかけるが、お頭の部屋の呼び鈴を押すと返事があったので、すでに帰宅している事を知り、木猿を部屋に通してやる。

長門守は木猿から、怪しい土遁の術を使う老人と出会った話を聞いても別に驚く風でもなく、お前は五右衛門の腕をどう思う?長門の下忍にしたいものだ。お前も五右衛門に引けを取らぬ忍者になる事だと言い聞かすが、木猿は面白くなさそうに、五右衛門は女に手が早いとか…、だとすれば忍者の風上にも置けませんと反論する。

すると、それを自分への当てつけのように笑い飛ばした長門守は、木猿に酒を勧めるが、木猿は一献飲み干してすぐに部屋を後にしたので、その配慮に気づいた長門守は、ヒノナに、今夜は存分可愛がってやるぞと笑いかけるのだった。

その長門守の部屋にやってきたくノ一タモ(真城千都世)に、くノ一は女の端を捨てる事じゃと教え、長島へ赴くには相談人の大炊の孫太夫(伊達三郎)に従えと長門守は命じる。

長島を信長は襲うぞと警告する長門守の言葉を聞いた孫太夫は、そう言えば、一昨日より岐阜稲葉山城に各地の武将が参集してただならぬ気配。信長急襲の恐れありと書いた矢文を長島の誓願寺に数本打込んで参りましたと報告する。

僧兵たちは農民たちを前に祈祷を繰り広げ、伊賀の里では、忍者たちが技を磨いていた。

与八が得意の手裏剣の練習をしている所へ来あわせた五右衛門は御大将を捜していたが、そんな五右衛門の足下に手裏剣を射抜いた雀を落とし、与八は愉快そうに笑う。

その時、五右衛門の父が火薬を作っていた小屋が突如大爆発を起こす。

驚いて駆けつけた五右衛門は、途中で三太夫と会い、一緒に小屋を観に行くと、もはや父の小屋は跡形もなく、側の川に、吹き飛ばされたらしき父の腕らしきものを発見する。

一方、長島に信長暗殺に出向いたくノ一タモは、死体に化けて、近づいてきた馬上に信長に斬り掛かるが未遂に終わり捉えられてしまう。

残忍な信長(城健三朗=若山富三郎)は、死ぬ苦しみを長引かせるよう、地面に首まで埋めるよう部下に命令。

タモは、生められた後、舌を噛み切って自害する。

伊賀の藤林長門守は、百地三太夫に信長暗殺の先を越されたらどうする!と下忍たちを叱咤激励していた。

一方、同じ伊賀の百地三太夫は、与八と九度兵衛(千葉敏郎)に、信長暗殺のため、即刻岐阜に発つよう命じていた。

九度兵衛の毒術と与八の手裏剣と言う静と動の技でしとめろと言うのであった。

その頃、1人個室で帳簿を付けていた五右衛門の元にやってきたイノネは、私の事をどう思う?輿入れ以来、夫から手を触れられる事がない私をどう思う?三太夫に思い知らせてやる機会を待っていた。五右衛門、お願いじゃ!と言いながら、戸惑う五右衛門に抱きついて来る。

五右衛門は成り行きでイノネを抱く事になるが、その様子を三太夫は、天井の隅から覗き見ていた。

ある日、織田信長は、愛猫を抱き、長島の市場の視察に来ていたが、その農民たちの中に与八と九度兵衛が混じり、暗殺の機会を狙っていた。

与八は、信長に接近、得意の手裏剣を投げつけるが、それは信長が抱いていた愛猫の黒猫に当たってしまい、信長の配下たちに捉えられてしまう。

一方、百地三太夫の屋敷では、夜寝ていたハタが、足下にネズミが這ってきて足に触れたので目が覚め、小用に立とうとして、密会しているイノネと五右衛門を発見し、悔しがる。

ハタは前から五右衛門に想いを寄せていたからである。

信長たちに捕まった与八は拷問を受けていた。

残忍な信長は、忍者相手にものを聞いても答えるはずがないと言い、いきなり部下の一人に、耳を削ぎ落とせと命じるが、その部下が怖じ気づいたので、その小刀を自ら抜いた信長が、与八の左耳を削ぎ落としてしまう。

さらに、その様子を笑って見ていた信雄(小林勝彦)に右耳を斬り取らせる。

与八の脳裏には、忍者たるもの、どんな拷問を受けようと、おのが素性をしゃべってはならぬと言う百地三太夫の言葉が響いていた。

信長たちが拷問部屋を後にし、1人残った見張りも居眠りを始めた夜、与八は手や肩の関節を外し、吊り下げられていた縄を脱出すると、見張りの持っていた刀を奪い外に逃げ出すが、すぐに発見され、城の屋根の上に追いつめられる。

もはや退路は断たれたと悟ると、手裏剣で自分の顔を切り刻み、地上に落下して死亡する。

死ぬときも、顔を潰して素性を悟られぬようにするのは忍者の掟だったからだ。

藤林長門守は、新堂の小太郎(高見国一)と木猿を前に、与八の最後を褒め、百道方は朝倉の残党だと言う噂を岐阜の城下に流しているとの報告を聞き感心する。

木猿はライバル百道の配下の働きを嫉妬し、自ら信長暗殺を長門守に誓う。

その後、長門守はヒノナも下がらせ、1人になると、別室で変装し始める。

その頃、五右衛門との密会を重ねていたイノネは、どこからか三太夫が見ているような気がする。三太夫はよくネズミを使う。殿はおいでじゃ。私は殺される!と怯えていた。

五右衛門は、わしさえ姿を消せば…と慰めるが、それを聞いたイノネは、私を棄てて、他の御大将に?と聞いて来る。

その時、近くで物音が聞こえ、下男のムロタとハタが、何もかもぶちまけてやるからな!と叫びながら逃げようとしたので、聞かれたと察した五右衛門は、思わず刀を投げてムロタを殺害してしまう。

ハタも殺さねばと追いかけようとした五右衛門をイノネは止めようとしがみついていたが、次の瞬間、イノネは井戸の中に背中から落ちてしまう。

その様子を、百地三太夫は側の物陰から覗いていた。

砦を逃げ出した五右衛門だったが、その前に立ちふさがった三太夫は、どこへ行く?藤林の所へ行くのか?と聞いて来る。

なぜ、わしが藤林の所へ?ととぼける五右衛門に、身に覚えがないなら、ハタと対決させるまでじゃ。許せん!殺してやると三太夫は息巻く。

もはや言い逃れ出来ないと悟った五右衛門はその場に跪くが、その様子を見た三太夫は、死にたくはないと見える。生かしておいてやる。その代わり、信長を殺すのだ。信長は京に移る。お前も行け!そして、万全の機会をうかがうのじゃ。その務めを果たしただけでは滞在は償えぬぞ。盗賊を働け。信長打倒のためには軍資金が必要になる。盗んだ金は使いのものに渡せと命じてきたので、忍者に盗みは御法度では?と五右衛門が反論すると、お前はわしの妻を盗んだではないかと三太夫は責める。

一方、藤林長門守は、百地の中で信長をやれるのは五右衛門だけじゃ。成り上がりものの百地に先んじられるな!と下忍たちに檄を飛ばしていた。

京に赴いた五右衛門は、公卿(舟木洋一)の屋敷に忍び込み、天井から眠り薬を流し、公卿や側女たちを眠らせると、部屋に降り、金品を盗んで逃げる。

その噂はたちまち京中に広まるが、貧しい農民たちは、裕福な公卿が金を奪われた事件を愉快がっていた。

五右衛門は、僧に化け、接触してきた葉蔵に盗んだ金を渡していたが、葉蔵は、2、3日経ったら、町中で石川五右衛門の名で持ち切りじゃと笑う。

五右衛門は、自分に懸賞金が出ているのを高札を見て知る。

高札には、凶賊石川五右衛門の居所を知らせれば金50枚、召し捕ったものには金200枚と書かれ、髭もじゃで、自分とは似ても似つかない人相書きが描かれていた。

それを観る野次馬の中には、僧に化けた九度兵衛の姿もあった。

ある日、飯屋で飲んでいた五右衛門に会いにきた葉蔵は、なぜ泥棒を辞めた?明日、信長は国に帰るぞと伝える。

翌日、国元へ帰る信長一行に、森の中から矢を引こうとしていた忍者がいた。

そこに、どこからともなく石つぶてが飛んできて邪魔をする。

矢をしくじったのは木猿であり、石を投げて邪魔したのは五右衛門だったが、2人は下を通る信長一行に発見されてしまい、鉄砲で撃たれ追われる。

五右衛門は遊郭に引き込まれるが、その店の前を、猿回しに扮した木猿が通りかかって目撃する。

五右衛門は、店の隅で1人寂し気に踞っていた遊女に目を付け、二階に連れて行く。

酒を飲み始めた五右衛門は、連れ込んだ遊女マキ(藤村志保)に料理を食えと勧める。

マキは、嬉しそうに料理を貪り食うと、客がなかったのでご飯を食べてなかったと言い訳する。

国は?と五右衛門が聞くと、マキは、河内と答え、両親はと尋ねると、おじいちゃんがいたけど死んでしまったと言う。

マキと女が名乗ったので、五右衛門も自分の名を明かすが、マキは冗談のつもりで、分かった!石川五右衛門でしょうと喜ぶ。

本物だったらどうする?と五右衛門が聞くと、五右衛門が髭もじゃの鍾馗様みたいな顔だって誰でも知っているわとマキははなから信じていない様子で、あんたなら本物の五右衛門でも良いわと言うので、五右衛門は思わず抱きしめてやる。

嫌になったと五右衛門はつぶやき、私が?と聞くマキに、違うと否定すると、別れとうない。あんた良い人ねとマキはすがりつく。

しばらく宿に逗留していた五右衛門に、マキが、五右衛門が捕まったそうよ。張り付けにされ、槍が刺さっても笑ったそうよと報告に来たので、それを聞いた五右衛門は、そいつは気が違ったんだと答える。

そんな2人の様子を、向かいの遊郭に二階に泊まった木猿が監視していた。

それに気づいた五右衛門は、嫌な奴だよと吐き捨てる。

夜中、墓の側に埋めていた瓶の中から、盗んだ金を巾着袋に詰め替えていた五右衛門は、犬の鳴き声がひどくなって来たのに気づき、近くの木の上に手裏剣を投げる。

すると、その中に潜んでいた忍者が落ちてきて、傍らに身を潜めていた木猿が分銅を投げてきて、五右衛門の刀を絡めとる。

五右衛門は木の枝の上をジャンプして、逆に木猿を吊り上げる。

そこに、木から落ちた忍者が五右衛門を刺そうと飛びかかって行ったので、木猿は邪魔はさせまいと、自ら刀をその忍者の背中に投げつけ殺すと、五右衛門に飛びかかって行く。

2人は抱き合って転がり回るが、やがて、五右衛門の刀が木猿の腹を突き刺し、五右衛門はその返り血を顔に浴びる。

遊郭に戻って来た五右衛門は、マキが、刀が突き刺さった死体が見つかったそうだと報告に来ると、にわかに不機嫌になり、黙らんか!と叱りつける。

五右衛門の脳裏には、かつて父が言っていた、忍者とは何のために生きているのだ。忍者のむなしさが身にしみるようになってきた…と言う言葉が蘇っていた。

五右衛門に冷たくされた事を哀しんだのか、マキがめそめそ泣き出すと、五右衛門は俺の女房になるか?と聞き、どっか静かな所で誰にも邪魔されず暮らすんだと言い出し、持っていた金をマキに渡すと、明日ここを出るんだと言う。

マキが喜んで、金を下に持って行くと、隣の部屋から葉蔵がやってきて、忍者同士、血で血を洗うとは…、女にうつつを抜かして堕落しおって…。御大将の言葉を忘れたか?信長はあすここ堺に来る。木屋弥左衛門からポルトガルの銃を買うつもりだと伝える。

店に借金を払い自由の身になったマキが、笑顔で部屋に戻って来ると、そこには五右衛門の姿はなかった。

五右衛門は木屋の屋敷に忍び込んでいた。

座敷には、信長と木下藤吉郎(丹羽又三郎)が来ており、木屋弥左衛門(沢村宗之助)と対面していた。

木屋は、鉄砲を気に入った様子の信長にお愛想を言うが、信長は、いまだに俺に逆らう始末の悪いキ○ガイどもがいると答えたので、藤吉郎が一向一揆の事でしょうと相づちを打つが、信長は、伊賀の忍者だと言う。

その時、庭先で燃えている導火線に気づいた護衛の者たちがくせ者じゃ!と騒ぎ出す。

五右衛門はマキビシを撒いて、逃走する。

その頃、マキは、いなくなった五右衛門を探して町中をさまよっていた。

逃走していた五右衛門は、1人の夜鷹に声をかけられ小屋の中に引きずり込まれるが、その夜鷹は、百地三太夫の屋敷から行方不明になっていたハタだった。

いつ来た?と驚きながら五右衛門が聞くと、1月くらい前だと言い、あんた随分有名になったねとからかう。

どうして夜鷹なんかに?と聞くと、あんたが逃げて10日ばかりして、三太夫が井戸からイノネの遺体を引き上げるのを見たが、その時、イノネの首筋に吹き矢が刺さっていたのを見て以来、怖くなって砦を飛び出した。お前さんがやったんじゃないかと言う。

五右衛門がわしじゃないと言うと、ハタは、じゃあ御大将が…!と気づく。

どうして俺とイノネの事に気づいた?と問うと、ネズミだよ。寝ている時にネズミに起こされて見てしまったんだ。私ゃ、お前に惚れていたからねとハタが言うのを聞いていた五右衛門は、何もかも御大将の仕業だったんだ。イノネを近づけたのも、最初から俺を操っていたんだ!と悟る。

それを聞いたハタは、あんたのお父さんも、御大将に殺されたのかもしれないよ。あの時、ムロタと一緒に薪を拾いに山に登っていたら、小屋イは言って行く御大将の姿を見たんだと言い出す。

五右衛門も、そう言えば、あの時、三太夫は妙な場所から現れたな…と思い出す。

その時、小屋の周囲は、織田の追っ手に囲まれていた。

ハタは、ここは私に任せて逃げて!と五右衛門を逃がし、自分は表に飛び出し追っ手たちに捕まるが、次の瞬間、小屋は大爆発を起こす。

伊賀の里の百地三太夫の屋敷に戻って来た五右衛門は、そこにあった父の火薬の秘方を記した巻物を手にすると、なぜこれがここにある?火薬の秘方を独り占めするために…、もう騙されんぞ!イノネを殺したのもお前だ!と三太夫に詰め寄ると、俺は今からもう忍者でもないと吐き捨てる。

しかし三太夫は、お前は生ある限り、俺から逃れられないのだと不気味に笑うと、天井に飛び移り、これは「ザガシラだ。俺はお前を殺したくない。速やかに立ち去れ!」と命じる。

猛毒のザガシラを撒かれた五右衛門は、ひとまず逃げるしかなかった。

天正8年8月

信長は朝廷を動かし、勅命をかざして一向一揆の最後の拠点である石山本願寺に焼打をかけ、老若男女を問わず1人残らず虐殺した。…とテロップ

藤林長門守は、いよいよ信長が来るぞ!必ず落とせると分かった時、奴は伊賀を潰す!と下忍たちに危機感を訴えていた。

そして、孫大夫には、信長から目を離すな!と命じる。

その頃、五右衛門は、山奥の小屋で、マキと2人きりの新婚生活を送っていた。

川で捕って来た魚を焼いて食べさせていた五右衛門は、急にマキが気持ち悪くなった様子で、外に駆け出すと吐き戻しているのを見て不思議がる。

マキは、ヤヤが生まれるのと言い出す。

そうか、俺のヤヤが生まれるのか!と喜んだ五右衛門は、すぐに小屋の中の空気を入れ替え、マキを中に入れると、自分はヤマブドウを採って来ると言って、夜の山の中に出かけて行く。

その帰り道、人の気配を感じた五右衛門は、誰だ?三太夫、出て来い!と呼びかけると、御大将と言え、わしからは逃げられぬと言ったはずだと言いながら百地三太夫が姿を現す。

五右衛門は三太夫に挑みかかろうとするが、下忍の分際で、百地三太夫に指一本でも触れられると思うか!と三太夫は嘲笑するが、五右衛門は、すかさず火をおこすと、手裏剣に火をつけて、三太夫目がけて投げつける。

形勢不利と悟った三太夫は、わしが今口笛を吹けば、マキの命はないのだ。葉蔵が小屋にいると、人質を取っている事を明かす。

負けを悟った五右衛門は畜生!と悔しがり、その場に跪く。

三太夫は、間もなく安土城が完成する。信長が入城してしばらくの間は、お祭り騒ぎが続くはずだ、その隙に乗じて信長をやれと言い、「寂滅」と言う猛毒を手渡す。

暗殺に成功したら、俺を自由にしてくれるか?と五右衛門は聞き、一旦、小屋に戻ろうとするが、この場から突っ走るのだと言う三太夫は、忍び装束一式を用意してた。

そして、信長をしとめるまで帰って来るな!マキはわしが面倒を見てやると三太夫は笑う。

その頃、マキは葉蔵から、忍者は1人の女に心を奪われてはならんと言う掟があると聞かされていた。

あの人は無事に帰って来るでしょうか?とマキが案じて聞くと、やり遂げれば生、やり損なえば死だと葉蔵は答えるだけだった。

五右衛門は、とにかく安土城に向けひた走っていた。

その頃、安土城の天守閣に登った信長は、ここからだと視界を遮るものはございませぬなと感心する藤吉郎に、いる、伊賀者だと答え、明日の落城の準備は整っとるか?と確認する。

その安土城の堀を潜り、石垣をよじ上った五右衛門は、信長が寝ている寝所の天井裏まで侵入する事に成功していた。

五右衛門は天井にきりで穴を開け、その穴から糸を信長の口元に垂らすと、その糸を伝わらせて毒を落とす。

信長は唇に落ちた毒を無意識に飲み込んだため、急に苦しみ出す。

それを観た五右衛門は笑って逃げ出す。

信長の異変に気づいた藤吉郎らが駆けつけ、医者が呼ばれる。

翌日、安土城の落城式が盛大に執り行われ、五右衛門は舞いの一座の一員として舞台で踊りながら様子をうかがっていたが、その見物席上に信長の姿はなかった。

同じく、見物客の中に紛れ込んでいた孫大夫も五右衛門に気づいていた。

伊賀の里では藤林長門守が、長島では山伏らが信長呪殺の法を執り行っていた。

一向一揆の亡者どもだ!と錯乱して飛び起きた信長の容態を診察した医者(南部彰三)も、病名がさっぱり分かりませぬとさじを投げていた。

信長の周囲に集まった重臣たちは、一向一揆の祟りだろうか?などと噂しあう。

そんな様子を床下に潜り込んで聞き込んでいた孫大夫だったが、その気配に気づいた木下藤吉郎は、黙って、その真上に位置をずらすと、にわかに剣を抜いて畳を貫く。

その剣は、見事、床下に潜んでいた孫太夫の胸を貫いていた。

その後、もう一度城内に忍び込んだ五右衛門だったが、信長以下家臣たちの姿は全員消えていた。

信長は奇跡的に生き延びており、極秘裏に輿に乗って、伊賀の里に向かっていた。

五右衛門も信長の目的地を察し伊賀の里へ走るが、その前に織田軍の伊賀攻めが始まっていた。

伊賀の各砦では、奇襲に対し、巨石や熱湯を落としたりして抵抗するが、信長軍の大砲の威力の前にはどうする事も出来なかった。

藤林長門守は、屋敷の中で自害しかけていたヒノナを止め、まだ生きる道はあるんだと説得しながら、秘密の通路に連れて行く。

九度兵衛は、1人も入れるな!と仲間たちを鼓舞していたが、もはやこれまでと覚悟を決め、燃え盛る家の中に飛び込んで行く。

葉蔵も又、爆薬を抱いて自爆する。

ようやく伊賀砦に到着した五右衛門は、ヒノナと共に死んでいた百地三太夫の死体を発見するが、それは藤林長門守と同一人物だと気づく。

同一人物が二つの砦を支配し、互いの下忍たちを競り合わせ目的を遂げる…、これぞ忍術究極の極意じゃ…。五右衛門には、そう言っている三太夫の声が聞こえたような気がした。

その後、五右衛門は、マキの待つ我家へ、ひたすら走り続けていた。

初めて自由を得た五右衛門の顔は晴れやかだった。


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