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黒幕

天知茂が眉間にしわを寄せて、非情なプロパーを演じている経済もの。

ライバル関係にある製薬会社同士の謀略が描かれているが、堅苦しい話かと思っていると、そこに頭の弱い色情狂のような女が登場したり…と、エロ要素やユーモア要素も混じっており、気楽に観れる通俗作品に仕上がっている。

この作品での見所は、原作者である佐賀潜自身が一方の製薬会社の社長役で出演している事だろう。

佐賀潜は、確か弁護士出身のミステリ作家で、晩年のデビューだったせいか、売れっ子の最中に亡くなった人である。

原作者が登場する映画自体は珍しくないが、セリフも結構あり、それなりに重要な役所を演じているのは珍しいと思う。

監督の小林悟氏は、ピンク映画を数多く手がけた人らしく、この作品でも濡れ場のようなシーンが何カ所か出て来る。

ただし、60年代半ばの松竹配給の一般映画なので、今観るとどうと言う事はない表現である。

いかにも助平そうな殿山泰司と、その気の弱い息子役の左とん平が、全体の雰囲気を和ませている。

利根に惚れるライバル側の助っ人を演じている高宮敬二もなかなか印象的。

映画としては、可もなく不可もなくと言った印象だが、モノクロ作品と言う事もあるのだろうが、色白の野川由美子の首筋にあるほくろが、何故か目に焼き付く作品である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、創映、佐賀潜原作、堀江和夫脚本、小林悟監督作品。

タバコにライターで灯を点した男、利根五郎(天知茂)が腕時計で深夜3時10分を確認する。

「岩倉 祇園町営業所」の倉庫の扉が爆発し、守衛が慌てて走り回る。

サングラスの男がライターで合図を送ると、近くで待機していたトラックが数台、倉庫に接近、トラックから降り立った数名の男たちが、壊れた倉庫の扉から中に侵入し、精力剤「王精」の箱を次々に運び出しトラックに積み込み始めたので、守衛たちは狼狽する。

トラックはそのまま走り去り、利根が待ち受ける場所まで来ると、サングラスの男が2人大和久三次(高宮敬二)とその手下(火の宮剛)と降りて来て利根の前に立つ。

道路脇の草むらから何人もの男たちがトラックを取り囲む。

利根は札束をサングラスの男に手渡すが、男は「あかん」と首を振るので、さらに、札束を渡し、さらに首を振るので、さらに金を増やす。

やがて、金額が折り合わないとみたのか、サングラスの男たちは、トラックから荷物を別のトラックに移していた作業を止めさせ、荷物を運んで来た男たちと、荷物を移し替えようとしていた男たちとが喧嘩を始める。

利根も殴り合いに加わるが、喧嘩慣れしていて強い事を悟ったサングラスの男たちは、退却や!と仲間たちに声をかける。

荷物を運んで来た連中が姿を消すと、荷物を移しかけたトラックの運転席に乗り込んだ利根は、名神をすっ飛ばすんだと運転手に命じる。

タイトル(天知茂が歌う「影」が流れる)

大阪

岩倉製薬の社長室に、「えらいこっちゃ!」と息せき切らせながら駆け込んで来たのは、由良京太(左とん平)だった。

社長岩倉十吾(佐賀潜)はすでに事件を知っているようで、「王精」150梱包、「コンビオ」60梱包と被害を聞くと、掴まらんやろな…と呟く。

盗まれた品が東京辺りで安く売られたら信用がおちる。そこが敵の狙い。赤玉製薬の手のもんやろか?と心配する。

とにかく岩倉と赤玉は競合商品が多く、「ワンビタ」に「ホンビタ」、風邪薬の「カロロン」に「トプロン」、ビタミン剤の「マルシー」に「パプシー」、精力剤の「王精」に「ロンジェル」…と部下が嘆くと、仕返しでも考えたらどうや?戦争は最後に笑うもんが勝利なんや…と社長は言う。

東京

「赤玉製薬」の本社前にやって来たプロパー(社長直属の販売特殊任務員)の利根は頭上から落下して来た看板に気づき、同業の千石静香(野川由美子)の身をかばって道路に身を伏せる。

立ち上がった利根は、これからかんだ方面を廻ってみると言い、静香を車に乗せ出発する。

途中、プロパーになってどのくらい?と利根が聞くと、半年くらいかしら?と答えた静香は、この仕事は謀略部隊とか忍者部隊とか呼ばれているわねと答え、そう言えば、利根さん、この1週間くらい姿を観なかったわね?ご出張?と逆に尋ねるが、利根は何も答えなかった。

「白川産業」と言うビルに「王精」の箱が積み上げられていた。

その社長室にやって来た利根は、女社長のお浜さんこと白川浜子(利根はる恵)から、10日も15日もどこに行ってたのよ?待ってたのよ!とヒステリーを起こされる。

岩倉の製品、現金問屋で随分減っているわ。50万ほど儲けさせてもらった。14〜24万くらいの品が東京に入ったそうよとお浜さんは笑う。

敵さんの名物、どんどんダンピングして下さいよと利根は頼むが、お浜さんは、今夜待ってるわと色目を使って来たので、社長に感づかれた気配があると利根は牽制する。

お浜さんは、私が2号だから?年だから?とすね始め、バカ!死ね!女たらし!と利根をののしる。

その後、車の側で待っていた静香と茶店に入ると、俺たちには来いなんて御法度だと思うと利根は言う。

すると、静香は、私、大阪で失恋したの。裏切られたの。その傷を癒すため、この仕事を始めたのと打ち明ける。

あなた、会社に履歴書を出さなかった唯一の男なんですって?それでも今では一番信用されている…と静香が聞いて来たので、利根は、俺の男気を利用されているだけさと自嘲する。

不義密通は裏切りにならないのかしら?と静香は、利根と白川社長との事を当てこすって来る。

その後、利根は、静香を自宅マンションまで送って来るが、身分不相応な豪華な建物だったので利根が不思議がると、父が買ってくれたのと言いながら中に入りかけた静香だったが、じっと自分を見つめて立っている利根を観ているうちに、中に誘ってしまう。

静香の部屋の中に入った利根は、テーブルの上に葉巻の箱が置いてあることに気づくが、いつも父のために置いてあるの。自殺し損なった一人娘のために諦めてるんじゃないかしらと言いながら、静香はウィスキーを出して来る。

俺じゃダメか?と利根が迫ると、愛情なしは嫌よと静香は拒否するが、俺は面倒くさい事は嫌なんだと言いながら、利根は静香に抱きつこうとする。

静香は、お浜さんと同じようになるのはと抵抗するが、あの女とは何でもないんだと言いながら、利根は静香をソファに押し倒す。

淡路島

由良京太は故郷である島に帰って来るが、そこで出会った老婆が、京太の父親が若い娘を嫁にもらったとからかい気味に近況を話仕掛けて来たので、嫌な顔をする。

自宅に向かう途中、あぜ道横の草むらからいきなり声をかけて来たのがその若い母親加代(扇町京子)で、小便をしていたらしく、もんぺを降ろし、しゃがんだ姿のまま普通に話しかけて来たので、京太は狼狽してよろけてしまう。

加代は、へらへらいつも笑っており、少し頭が弱いらしい。

「漢方 王精研究所」と書かれた自宅に帰って来た京太に、出迎えた父親の由良堪六(殿山泰司)は、また盗まれたか?と息子を睨みつける。

京太は、岩倉の社長はん、赤玉と戦争をやるらしく、わしに東京へ行かんか?銭、半分出さんか?と言って来た。いつも使い走りや、おもろないと報告する。

それを聞いた堪六は、良し、半分出したると言うと、家に帰って来た加代が、うちも行ってみたい。ボンボン、うちを東京へ連れて行ってなと甘えて来る。

堪六は、京太に、早よ、去ねと言い出すと、加代を奥の部屋に誘い込むので、オヤジの奴、良い年して…と玄関口で呆れるが、その直後、奥から加代の甘えた笑い声が聞こえて来ると、京太は興奮した胸を押さえつけるのだった。

赤玉製薬の社内、静香がまだ怒っているらしかったので、利根は、面白い事があると言い、部屋に連れ込むと、淡路製薬会社の重役に岩倉十吾の名も入っていると教える。

その後、改装中の淡路薬品の店舗前に車でやって来た2人は、店の中で爆発が起こり、真っ黒になった京太が出て来たのを目撃すると、笑って立ち去る。

その後、極東製薬の会社にやって来た利根は、秘書から誘いを受けるが軽く受け流し、社長室に入って行く。

社長の鳥羽健作(清水一郎)は、お宅の西城社長に資金を融通してもらえないかと伝えてくれないかと言う。

資本金28億のお宅と8000万のうちでは資金力が違い過ぎるので、今苦しいと言うのだ。

金額を尋ねると、3億欲しいと言う。

その後、会社の地下駐車場から車を出そうとしていた利根に、営業社員の山田(坂上栄一)が、デートに遅れそうなので、乗せてってもらえないかとやって来たので、利根は承知するが、出発しようとすると車が異常な動きをし出す。

急ブレーキをかけて調べてみると、車輪の一つがパンクしている事が分かる。

困惑する利根と山田の周囲に、見知らぬ5人の男たちが近づいて来て取り囲むと、ナイフを取り出して来る。

襲撃された利根は戦いながら、置いてあった消化器を見つけると、それを浴びせかけて敵を撃退する。

それでも、利根も山田もぼこぼこにやられてしまい、山田は、デートはもうダメですか…とがっかりする。

社長室で西城正起(清水将夫)に会った利根は、ワンビタとロンジェルを大量に持ち去られたと言われる。

その西城社長は、利根の目の前で堂々とライバル会社の「王精」を飲んでおり、岩倉の方が利くのだなどとぬけぬけと言い、利根には、淡路島に行って王精の秘密を盗んで来るんだと命じる。

淡路島の「漢方 王精研究所」にやって来た利根は、王精の愛用者と名乗り、牛舎で牛の世話をしていた加代に出会う。

加代は、旦那さんは大阪に行っており、夕方に帰って来ると言うが、何も疑わず、利根を近くの花畑に連れて来ると、王精はこの鳴門百合の根を使っており、この花は九州とここにしかないと教えてくれる。

その時、加代は、うち、何か変になってしもうたと身悶えし出し、利根に抱きついて来たので、利根は仕方なく相手をするが、加代は、いつも旦那からされているような愛撫の仕方を要求して来る。

その後、自宅にやって来た利根は、茶を出した加代から、これも精力剤だと教えられ、お客さん、王精飲んでいる割に弱おすな…とからかわれてしまう。

利根は加代に、東京に行った事あるかい?と聞き、加代は行きたいわ…と夢見るように答える。

東京の淡路薬品の事務所にいた京太に父の堪六から電話がかかり、加代が書き置きを残して家出してしまったと言う。

東京に探しに行くのでこれからそっちに行くと一方的に言うので、気の弱い京太は、お待ちしてますと答えるしかなく、電話を切った京太は、やっぱり無理やったんかな?あのカップルのバランスは…と呟く。

東京に連れて来られた加代は、とある実験室の実験台にさせられていた。

彼女の身体から出て来る分泌液を分析していたのだった。

その場に様子を見に来ていた西城社長に、利根は、ここに泊まり込むと伝える。

淡路薬品に由良堪六と京太が帰って来たので、大阪の岩倉から電話を受けていた留守番の女性は、淡路に帰れと言っていると伝えるが、癇癪を起こした堪六は、中止や!開発はやらんぞ!と言い出す。

そこへ、メガネに口ひげと言う怪し気な風体の男佐々木市之進(宮浩一)が、大阪の岩倉から来たと堪六と京太に挨拶する。

由良堪六は、その後も東京中を加代を探してさまよい歩く。

一方、ベッドの上にいた静香は、どうしてもその仕事、やらなくてはいけませんの?と尋ね、相手の男は「ああ」と答えていた。

京太は、佐々木を連れて淡路薬品の店に来ると、「全日本労働共済」を名乗り、千石静香相手に5000万分の商品を買うと言う芝居の練習をさせる。

佐々木は、岩倉が送り込んで来た詐欺師だったのだ。

ある日、会社の階段で珍しく利根に出会った静香と山田は、研究所に寝泊まりしているのだと聞かされる。

その夜、「ホルモン実験室」にいた守衛(築地博)が何者かに教われる。

加代が実験台に縛り付けられている部屋に白衣の男がやって来たので、室内にいた利根は誰何するが、白衣を着た女に殴られ気絶する。

白衣の男女は、加代を連れ去って行く。

その後、守衛と西城社長が駆けつけると、利根が床に倒れていた。

加代がさらわれた事を知った西城社長は、しかし、なぜここに女がいることがバレたんだろう?と不思議がる。

正気に戻った利根は、すぐさま静香のマンションに電話を入れるが相手は出ない。

西城社長は、静香は取引のため東海道を西に向かっていると言うではないか。

静香が会っていたのは、詐欺師の佐々木だった。

佐々木は、残金4500万円分の小切手を静かに手渡すが、赤玉の商品を相手側のトラックに移し替えていた時、東京から車で駆けつけて来た利根は、その契約は待ってくれ!調べたい事がある。この小切手の銀行紹介はしたのか?と静香に確認する。

「全日本労働共済」など実在しないんだ!と利根が指摘すると、詐欺がバレたと気づいた相手方の男たちは、赤玉側の男たちを殴り合いを始める。

車の中に退避していた静香は、自分の失態を恥じたのか顔を歪めていた。

佐々木は、仲間の男たちに、みんな!構うな!出発しろ!と怒鳴り、赤玉から奪い取った商品を積んだトラックを出発させる。

利根は静香を降ろすと、その車で後を追おうとする。

トラックは3台で、利根の車は間に挟まれる形になる。

やがて、山間に来た時、利根の走路妨害でトラックの1台がハンドルを切り損ね、崖から転落する。

もう1台のトラックも、利根の車にぶつけようとして、崖から転落するが、利根の方も負傷してしまう。

赤玉の社長室に出頭した静香は、「全日本労働共済」の会社に電話をして、確かに存在する事は事前に確認したと報告するが、取り込み詐欺をやるような相手だったら、電話の用意くらいしている!君は謹慎しろ!と西城社長から怒鳴られてしまう。

利根は重傷を負った。君はどこの回し者だ?500万で5000万の品物を持って行かれてしまったと西城社長は静香を追求する。

私は決算を求めましたと反論する静香だったが、君はどう言う方法で責任を取るつもりなんだと言いながら抱きついて来た西城社長をはねつける事は出来なかった。

淡路製薬の事務所内では、京太と佐々木がビールを乾杯し、作戦成功を喜んでいた。

その時、堪六が、警察が来よるでと脅したので、京太は怒り、お父ちゃん、わいももう一本立ちやで!結婚したいんや!と抗議する。

しかし、堪六の方は、加代ほどの女は日本中おらんぞ。ほんまにわいを捨てたんか…と言いながら泣き出す。

そんな堪六を嘲笑しながら、もう一度佐々木と乾杯をした京太だったが、そこにきなり警官(宮口二郎)がやって来たのでビビる。

警官は加代を連れて来たのだった。

それを知った堪六は驚喜し、人目もはばからず加代と抱き合う。

加代は、堪忍だっせ…、うちは旦那さんの方がええよって…と謝り、堪六と濃厚なキスをする。

そんな2人を警官は呆れて観ていたが、おじいさん、この人はお孫さんですか?と聞いて来たので、怒った堪六は、女房や!と怒鳴りつける。

警官は、こちらに届けるようにと手紙をもらったので…と説明し、自分らの取り込み詐欺の事ではなかったと知った京太も店の前に出て来て、立ち去って行く警官を見送る。

静香は、利根が入院していた鳥海外科に見舞いに来るが、病室の前まで来ると気持ちが変わったのか、そのまま自宅マンションに帰り、シャワーを浴びながら、もういや!こんな仕事!と嘆くのだった。

利根は無事退院し、赤玉の西城社長の部屋に久々にやって来るが、そこには極東製薬の鳥羽社長と静香がいた。

鳥羽社長が、銀行に廻りますと西城社長に伝えて部屋を出て行ったので、融資なさったんですか?と利根が聞くと、3億だと言う。

岩倉製薬と極東は内通している疑いが…、千石静香と密着し過ぎると…と、利根は西城に注意を促すが、西城社長は利根に、九州に行って鳴門百合をかき集めてくれ。何としてでも岩倉に勝ちたいと指示を出す。

廊下に出た利根を、追って来た静香が呼びかける。

キャバレーに来た利根は、1人で歌い出す。

そこに静香もやって来るが、チンピラ風の男も来る。

愛のペンダント〜♬と歌い終わった利根は、静香のテーブルに来ると、ここの用心棒をやったのが、俺の人生の出発点だ。明日の朝にでも出発すると伝える。

私を軽蔑なさる?と聞いた静香は、私だって精一杯生きているのよと言う。

それがある以上、それをやらねばならないって以前あなたは言っていたけど、今の私はそれなのと話す静香を観ていた利根は、君は不思議な女だよと呟く。

それをおっしゃるのは3回目ねと静香が答えると、食わせ物かもしれない、悪女かもしれない。だが、俺の心に残っているのは君だけなんだ…と利根は告白し、九州の山歩きは、今の僕にはうってつけかもしれないと続けた利根は、その前に片付けて置かなければいけない仕事がある、失礼するよと言い残し、店を出て行く。

そんな利根に、旦那!と路上で呼びかけたのは、大阪で殴り合いをしたサングラスの男大和久三次だった。

お前か…と思い出した利根に、大和久は、あんじょう可愛がったれ!と周囲の仲間たちに命じる。

利根は、又もや殴り合いの喧嘩を始める。

気がつくと、利根はどこかの地下室に連れ込まれていた。

そこには、大和久やチンピラたちに混じり、極東製薬の鳥羽社長もいた。

3時になると債権者が押し寄せて来ると鳥羽社長が言うので、利根は、計画倒産をやるのか?とその策略に気づく。

9500万を振り込まなければ、赤玉は倒産ですと鳥羽社長は笑う。

それでも人間か!と利根が憤ると、鳥羽社長は、れっきとした人間さと平然と答える。

縛られた利根は、チンピラたちによってドラム缶の中に入れられると、医師を隙間に詰め込まれ、蓋を溶接されてしまう。

鳥羽社長とチンピラ連中が立ち去った後、1人地下室に残った大和久は、旦那、東京湾に沈められるんです。これも運命ですかね?とドラム缶に話しかける。

でも、だんだん好きになってきましたと大和久は言う。

トラックで海辺に運ばれて来たドラム缶は、海に投じられる。

西城社長の元に、役員たちが3人、不渡りは本当ですか?と言いながら集まって来る。

がっくり気を落とした様子の西城社長は、3億みすみす極東に取られてしまった。こうなったら、鳥羽の隠し金をありったけ吐き出させるんだ!と命じた途端、急に倒れてしまう。

船に乗っていた岩倉社長は、帳簿のからくりや本当のお手柄は静香女子です。あなたには2000万払った…と同乗していた千石静香に話しかけていた。

赤玉の社長、ホルモン剤の飲み過ぎやと苦笑する岩倉は、由良の先生、へそを曲げてるって本当ですか?と聞くが、静香は、私はもうプロパーではありませんと答えるだけだった。

京はアフターサービスで付き合って下さいと頼む岩倉社長だったが、そこへ船室から姿を現したのは利根だった。

幽霊野郎さと自嘲した利根は、三次、出番だ!と呼びかける。

呼ばれて出てきた大和久は、今の手柄話が録音されたオープンリールのテープレコーダーを取り出して見せる。

警察が逮捕状請求するでしょうなと言う利根の言葉を実証するように、船が着いた港には、刑事たちが待ち受けていた。

船を降りかけた利根が、三次、お前も臭い飯を食わなけりゃダメだろうなとからかうと、大和久は慌てたように、旦那、ほなお先にと言い残して、船に戻る。

船から立ち去りかけた利根だったが、後を追って来た静香は、私が許せないのねと聞くと、お互いベストを尽くしたんだと答える。

本当にあなたが好きだったと告白する静香だったが、利根の方は、俺には人間らしい事は言えない。全ては西城社長の四十九日が済んでからだ。それほど生きる事は厳しい。お互いしっかりやろうぜ。またどこかで会えるまで…と言い残して、船に戻ろうとするが、船に乗っていた大和久が、一押し二押し、三に押しやと言葉をかけると、利根はその場に立ち止まり、出航した船を観ながら、とうとう乗り遅れてちまったよと、近づいて来た静香に伝える。

船はそんな2人を港に残して遠ざかって行く。